近年、求められる印刷解像度等の高まりにより、媒体上に形成するインクのドットの密度が高まっている。また、これにより、媒体上に形成するドット間の距離が短くなり、ドットの接触(ドットどうしの接触)が生じやすくなっている。しかし、例えば異なる色のインクのドットが接触した場合、ドットの連結が生じることで色が混ざり合い、滲み(色間滲み)が発生することになる。
これに対し、近年、インクジェットプリンタでの印刷の方法として、マルチパス方式での印刷が広く用いられている。マルチパス方式を用いる場合、例えば、1回の主走査動作において形成するインクのドット間の距離を大きくすることが可能になる。また、マルチパス方式で印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化型インクを用いる場合、通常、各回の主走査動作を行う毎に、その主走査動作で形成したインクのドットに紫外線を照射し、ドットを硬化させる。そのため、このように構成すれば、例えば、液体状態のインクのドットの接触を生じにくくすることができる。
しかし、例えば媒体上に形成するインクのドットの密度が高くなる高印字率の設定で印刷を行う場合、単にマルチパス方式で印刷を行うのみでは、液体状態のインクのドットの接触を完全に防ぐことが難しい場合がある。また、これにより、ドットの接触による滲み等が発生し、印刷の品質が低下する場合がある。
また、マルチパス方式で印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化型インクを用いる場合、2回目以降の印刷パスでは、インク滴の着弾位置の近辺に、硬化済のインクのドットが既に形成されていることになる。この場合、硬化済とは、十分な量の紫外線が照射されて、完全に硬化した状態になっていることである。そして、この場合、硬化済のドットは、通常、液体状態のインクを弾く。液体状態のインクを弾くとは、より具体的に、例えば、硬化処理前の液体状態にあるインクによって濡れにくい状態のことである。そのため、新たに形成されるインクのドットは、硬化済のドットがない方向へのみ拡がることになる。また、その結果、新たに形成されるインクのドットの形状は、周囲の硬化済のドットの影響を受けることになる。
そのため、マルチパス方式で印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化型インクを用いる場合、例えば、ドットの形状が不均一になり、印刷の画質が低下する場合がある。また、より具体的に、例えば、高印字率の設定で印刷を行う場合等において、横幅の狭い領域内と硬化した突起状のインクのドットが一方向へ連なり、いわゆる硬化縞等が発生する場合がある。
そのため、従来、紫外線硬化型インクを用いるインクジェットプリンタにおいて、より適切な方法で印刷を行うことが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
尚、本願の出願人が先行技術を調査したところ、本発明と一見構成が似ている構成が開示されている特許文献1を発見した。しかし、特許文献1に開示されている構成は、シリアル方式の構成ではなく、いわゆるラインプリンタの場合の構成である。これに対し、本発明の構成は、上記及び以下に説明をするように、シリアル方式のインクジェットプリンタに特有の課題等を解決するものであり、特許文献1の構成とは、前提となる構成が異なっている。
硬化縞等の発生を防ぐためには、例えば、媒体の各位置について、印刷の途中段階ではインクのドットを完全に硬化させず、弱い紫外線を照射して仮硬化の状態に硬化させること等が考えられる。尚、この場合、弱い紫外線を照射するとは、例えば、紫外線の積算光量について、インクのドットが完全に硬化する積算光量と比べて小さくなるように紫外線を照射することを示す便宜的表現である。そのため、例えば、強度の大きな紫外線を短時間照射すること等も考えられる。この場合、紫外線の照射の強度とは、例えば、所定の単位時間あたりに照射する紫外線の光量のことである。
このように構成すれば、例えば、印刷の途中段階で硬化済のドットが存在しないため、新たに形成されるインクのドットの形状について、周囲の硬化済のドットの影響を受けることを適切に防ぐことができる。また、これにより、硬化縞等の発生を防ぐことができると考えられる。更には、仮硬化後においてもインクのドットが徐々に平坦化するため、インクのドットの形状をより均一化することもできる。
しかし、上記においても説明をしたように、インクジェットプリンタにおいては、媒体上でインクのドットが接触することにより生じる滲みについても、十分に考慮することが必要である。そして、上記のように仮硬化をさせる場合においても、弱い紫外線を照射する前に異なる色のインクのドットが接触すると、色間滲みが発生し、印刷の品質低下の原因になるおそれがある。
ここで、このような滲みの問題に対して、シリアル方式のインクジェットプリンタにおいては、例えば、マルチパス方式で印刷を行い、1回の主走査動作において形成するインクのドット間の距離を大きくすればよいようにも思われる。しかし、従来の通常の構成を有するインクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化型のインクを用い、マルチパス方式で印刷を行う場合、色間滲み等を適切に防ぐためには、各回の主走査動作を行う毎に、その主走査動作で形成したインクのドットに紫外線を照射することが必要になる。そのため、例えばインクのドットを仮硬化させる場合にも、各回の主走査動作を行う毎に弱い紫外線を照射し、インクのドットを仮硬化させることが必要になる。
しかし、マルチパス方式で印刷を行う場合、媒体上の各位置では、複数回の印刷パスに対応する複数回の主走査動作が行われる。そのため、インクのドットを仮硬化させる場合、弱い紫外線の照射も、印刷パスの回数分行われることになる。そして、この場合、媒体上のインクのドットは、いずれの回の印刷パスで形成されたかに応じて、異なる回数の紫外線の照射を受けることになる。
そして、この場合、例えば、最初の印刷パスで形成されたインクのドットと、最後の印刷パスで形成されたインクのドットとの間で、ドットの硬化度の差が大きくなる。そして、例えば従来のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を用いる場合、弱い紫外線の光量について、この両者を適切な仮硬化の状態にまで硬化させるように設定することは、実用上、困難である。
より具体的に、例えば、従来のインクジェットプリンタにおいて、複数色のインク(例えば、CMYKの各色のインク)を用いる場合、各回の主走査動作においてそれぞれの色のインクのドットを形成することが必要となる。そして、近年求められている高い解像度での印刷を行う場合において、このような構成において、色間滲みを十分に防ごうとすれば、必要な印刷パスの回数も増大する。例えば、色間滲みをほぼ完全に防ぐために、同一の主走査動作において隣接する画素の位置にインクのドットを形成しない構成にする場合、24〜36程度のパス数が必要になると考えられる。そして、この場合、最初と最後の印刷パス間でのドットの硬化度の差は非常に大きくなると考えられる。そのため、このような構成において、全てのドットを適切な仮硬化の状態にまで硬化させることは、実用上、困難である。また、この場合、印刷のパス数が多くなることで、印刷の速度の低下も問題になる。
このように、シリアル方式のインクジェットプリンタにおいて、紫外線硬化型のインクを用いる場合、弱い紫外線を照射して仮硬化させる構成を単に採用するのみでは、高品質の印刷を適切に行えない場合がある。これに対し、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、異なる色用のインクジェットヘッドの配置を従来の一般的な構成とは異ならせ、各回の主走査動作においてそれぞれの印刷パスに対応するバンド領域内に形成するインクのドットの色数を少なくすることを考えた。より具体的には、例えば、互いに異なるN色(Nは、2以上の整数)の紫外線硬化型インクを用いて印刷を行う場合において、それぞれの印刷パスに対応するバンド領域内に形成するインクのドットの色数をNよりも小さくすることを考えた。
このように構成した場合、例えば、より少ない印刷パス数により、例えば、色間滲みの発生を抑えることが可能になる。また、この場合、最初と最後の印刷パス間でのドットの硬化度の差が小さくなるため、各印刷パスで形成するインクのドットについて、より適切に仮硬化させることが可能になる。そのため、このように構成すれば、例えば、高品質の印刷をより適切に行うことが可能になる。
また、より具体的に、本願の発明者は、鋭意研究により、シリアル方式のインクジェットプリンタで紫外線硬化型のインクを用いる場合において、印刷の品質を高め、高画質化を実現するための構成として、以下の(1)、(2)の特徴を有する構成を考えた。すなわち、本願の発明者は、
(1)主走査動作により形成したインクのドットの粘度を滲みの発生しない範囲にまで高め、仮硬化させること。この場合、例えばUVLEDにより紫外線を照射し、照射する紫外線の強度について、インクのドットを適切に仮硬化させる範囲で最小にすることが好ましい。また、仮硬化用の紫外線は、例えば、各回の主走査動作の直後に照射する。そして、媒体上の各領域に対し、例えばUVLEDにより紫外線を照射により、全ての主走査動作が完了した後に、硬化を完了(本硬化)させる強い紫外線を照射する。
(2)主走査動作時にインクジェットヘッドを移動させる方向(主走査方向)において、同一の主走査動作において形成するインクのドットの配置について、ドット間距離をできるだけ離し、できるだけ接触を避けること。特に、異なる色のドットについては、液体状態で接触しないようにすることが好ましい。また、より具体的には、例えば、同一の色のドット間、及び異なる色のドット間で基準位置を異ならせることにより、ドットの接触を生じにくくすること等が考えられる。
以上のような(1)、(2)の条件を満たすことで、高品質の印刷を適切に行い得ることを見出した。以上のような鋭意研究によりなされた本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)互いに異なるN色(Nは、2以上の整数)の紫外線硬化型インクを用いて、媒体上の各位置に対して複数回の印刷パスにより印刷を行うマルチパス方式により、媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、N色のそれぞれの色の紫外線硬化型インクのインク滴をそれぞれ吐出するN個のインクジェットヘッドと、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をN個のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的にN個のインクジェットヘッドを移動させる副走査駆動部と、媒体上の紫外線硬化型インクを少なくとも表面が粘着性を有する状態である仮硬化の状態にまで硬化させる紫外線を照射する仮硬化用光源と、媒体上の紫外線硬化型インクの硬化を完了させる紫外線を照射する本硬化用光源と、マルチパス方式における各回の印刷パスにおいてインク滴を吐出する画素を選択する画素選択部とを備え、N個のインクジェットヘッドは、各回の主走査動作においてそれぞれの印刷パスに対応するバンド領域内に形成するインクのドットの色数がNよりも小さくなるように配設されており、仮硬化用光源は、媒体上の各位置に対し、予め設定された回数の主走査動作が行われる毎に、紫外線硬化型インクを仮硬化の状態にまで硬化させる紫外線を照射し、本硬化用光源は、媒体上に各位置に対し、全ての印刷パスにおける主走査動作が終了した後に、紫外線を照射する。
このように構成した場合、例えば、仮硬化用光源により弱い紫外線を照射することにより、媒体上の紫外線硬化型インクを適切に仮硬化させることができる。これにより、例えば、他の色の液体のインクと接触しても滲みが発生せず、かつ、他の色の液体のインクを弾かない状態にできる。そのため、このように構成すれば、例えば、色間滲みの発生や、硬化縞の発生等を適切に防ぐことができる。また、例えば仮硬化用光源により弱い紫外線を照射することにより、仮硬化の状態のインクの粘度について、時間の経過に伴ってインクのドットが徐々に平坦化する粘度に設定することができる。そして、この場合、仮硬化後、本硬化用光源で紫外線を照射するまでの時間を空けることにより、インクのドットを十分に平坦化させることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、インクのドットを十分に平坦化し、高光沢の印刷を行うこともできる。
また、各印刷パスに対応するバンド領域内に形成するインクのドットの色数について、印刷に使用する全ての色の数であるNよりも小さくなるようにインクジェットヘッドを配設することにより、バンド領域内に形成する各色のインクのドットについて、ドット間距離を大きくした配置を設定しやすくなる。また、これにより、液体状態のインクのドットの接触について、より生じにくくすることができる。
更に、この場合、例えば、色間滲み等を防ぐために必要な印刷のパス数を低減することもできる。これにより、例えば、仮硬化用光源により照射する紫外線の強度について、複数の印刷パスにより複数回の紫外線が照射されることを考慮しても設定可能な範囲が広がり、実用上可能な範囲で適切に設定することが可能になる。そのため、このように構成すれば、例えば、シリアル方式のインクジェットプリンタで紫外線硬化型のインクを用いる場合において、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。
尚、この構成において、仮硬化用光源が照射する紫外線の強度は、本硬化用光源が照射する紫外線の強度よりも小さくする。より具体的に、仮硬化用光源が照射する紫外線の強度は、例えば、本硬化用光源が照射する紫外線の強度の1/20〜1/3とすることが好ましい。また、仮硬化用光源が照射する紫外線の強度は、例えば、本硬化用光源が照射する紫外線の強度の1/10〜1/3とすることが更に好ましい。このように構成すれば、例えば、インクのドットを適切に仮硬化させることができる。
(構成2)画素選択部は、各回の印刷パスにおいてインク滴を吐出する画素の選択において、媒体上の同じ領域に対して連続して行う第1の印刷パスと、第2の印刷パスとについて、それぞれの印刷パスにおいてインク滴を吐出する複数の画素間の間隔を示す空間周波数を異ならせる。
本願の発明者は、更なる鋭意研究により、例えば構成1のような構成を用いた場合でも、印刷結果において、依然、意図しない濃淡等が生じて印刷品質が低下する場合があることを見出した。また、この原因について、インクのドットの位置について、印刷パス間でズレが生じているためであることを見出した。
そこで、本願の発明者は、このような問題点に対し、更に、媒体上の同じ領域に対して連続して行う複数の印刷パスについて、それぞれの印刷パスで形成する複数の画素間の間隔を示す空間周波数を互いに異ならせることを考えた。また、より具体的に、例えば、媒体上の同じ領域に対して連続して行う少なくとも2回の印刷パスについて、それぞれの印刷パスで形成する複数の画素間の間隔を示す空間周波数を互いに異ならせることを考えた。
ここで、インクのドットの位置について、印刷パス間でズレが生じた場合、それぞれの印刷パスに対応する空間周波数が同一であると、全てのドット間で同じだけのズレが生じることになる。そのため、この場合、印刷パス間に生じるドットの位置のズレの影響により、最終的な印刷結果の画像に濃淡が生じやすくなる。
これに対し、それぞれの印刷パスに対応する空間周波数を互いに異ならせた場合、ドットの位置のズレ方が印刷パス毎により変わるため、印刷パス間に生じるドットの位置のズレの影響が目立ちにくくなる。また、その結果、最終的な印刷結果の画像においても、不要な濃淡は生じにくくなる。そのため、このように構成すれば、例えば、高い品質の印刷をより適切に行うことが可能になる。
すなわち、本願の発明者は、上記の(1)、(2)の特徴に加え、更に、
(3)複数の印刷パスについて、それぞれの印刷パスに対応する空間周波数を異ならせることを考えた。
また、この場合、マルチパス方式で印刷を行う構成であるため、
(4)印刷パスの回数分(例えばkパス分)について、それぞれの印刷パスで形成するインクのドットに対応する画素を指定するマスクに関し、各アドレスが重複して印刷されず、かつ、kパスの総和が100%の印刷になるように、マスクのパターンを設定すること。も行う。
このように構成すれば、例えば、印刷パス間に生じるドットの位置のズレの影響で最終的な印刷結果の画像に濃淡が生じることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、干渉やモアレ等が生じることをより適切に防ぐことができる。尚、空間周波数については、できるだけ差を大きくし、周波数成分がより広く分布するように構成することが好ましい。また、例えば印刷に使用する各色の間でも、インクのドットの配置の空間周波数を互いに異ならせることが好ましい。
また、この場合、例えば、第1の印刷パス及び第2の印刷パスのそれぞれに対応する空間周波数を異ならせることにより、最終的な印刷結果の画像において、濃淡が生じ難くすることもできる。更には、マルチパス方式で印刷を行うことにより、印刷パスの回数分(例えばkパス分)の主走査動作で100%の印刷を行うように、マスクのパターンを適切に設定できる。そのため、このように構成すれば、例えば、シリアル方式のインクジェットプリンタで紫外線硬化型のインクを用いる場合において、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。
(構成3)同一の画素、及び主走査方向において隣接する画素のいずれにも異なる色のインク滴を同一の印刷パスで吐出しないように、マルチパス方式で印刷を行う。このように構成すれば、例えば、異なる色のインクのドットについて、同一パス内でのドット間距離を適切に空けることができる。また、これにより、異なる色のインクのドットが連結して色間滲みが発生することを適切に防ぐことができる。
(構成4)印刷装置は、パス数をk回(kは、2以上の整数)とするマルチパス方式により、媒体への印刷を行い、画素選択部は、各回の印刷パスにおいてインク滴を吐出する画素の選択において、k回の印刷パスにおける半数以上の印刷パスについて、主走査方向において隣接する画素に同一の印刷パスで同一色のインク滴を吐出しないように、画素を選択する。
このように構成すれば、例えば、少なくとも半数以上の印刷パスにおいて、同一の色のインクについて、同一パス内でのドット間距離を適切に空けることができる。また、これにより、ドットの連結を生じ難くすることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。尚、画素選択部は、全ての印刷パスについて、主走査方向において隣接する画素に同一の印刷パスで同一色のインク滴を吐出しないように、画素を選択することが好ましい。このように構成すれば、例えば、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。
また、連結したインクのドットは、媒体との接触角が大きくなるため、より短時間で平坦化しやすくなる。そのため、インクのドットの連結が生じると、インクのドットの平坦度等にもばらつきが生じやすい。これに対し、このように構成すれば、例えば、インクのドットの平坦度についても、より適切に均一化できる。
(構成5)仮硬化用光源は、媒体上に各位置に対し、各回の印刷パスにおける主走査動作で媒体上に吐出されたインク滴により形成されるインクのドットを、同じ位置に対する別の印刷パスに対応する主走査動作が行われる前に、仮硬化の状態にまで硬化させる。このように構成すれば、例えば、各回の主走査動作により形成するインクのドットについて、その後の主走査動作により形成するインクのドットとの間で連結等が生じることを適切に防ぐことができる。
(構成6)N個のインクジェットヘッドとして、少なくとも、第1の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第1色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第1色用ヘッドと、第1の色とは異なる第2の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第2色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第2色用ヘッドとを備え、第1色用ヘッドと、第2色用ヘッドとは、副走査方向における位置をずらして配設されており、媒体上の各位置に対し、第1色用ヘッドは、媒体上の位置に応じて決まる回の主走査動作において第1色インク滴を吐出し、第2色用ヘッドは、第1色用ヘッドが第1色インク滴を吐出した後の別の回の主走査動作において、第2色インク滴を吐出し、媒体上の各位置に対し、仮硬化用光源は、第1色用ヘッドが第1色インク滴を吐出した後であり、第2色用ヘッドが第2色インク滴を吐出する前に、媒体上の第1の色の紫外線硬化型インクを、仮硬化の状態に硬化させ、第2色用ヘッドは、第1の色の紫外線硬化型インクが仮硬化の状態にまで硬化している領域に対し、第2色インク滴を吐出する。
このように構成した場合、例えば、各印刷パスのバンド領域内に形成するインクのドットの色数を適切に低減できる。そのため、このように構成すれば、色間滲みの発生をより適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
(構成7)第1色用ヘッドと、第2色用ヘッドとは、副走査方向における位置が重ならないように、副走査方向において並べて配設されている。このように構成した場合、例えば、各回の主走査動作において形成するインクのドットの色数をより適切に低減できる。そのため、このように構成すれば、色間滲みの発生をより適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
尚、第1色用ヘッド及び第2色用ヘッドの位置について、副走査方向における位置が重ならないとは、例えば、副走査方向における位置が実質的に重ならないことであってよい。副走査方向における位置が実質的に重ならないとは、例えば、第1色用ヘッド及び第2色用ヘッドのノズル列の位置について、副走査方向における位置が重ならないことであってよい。
(構成8)N個のインクジェットヘッドとして、第1の色及び第2の色のいずれとも異なる第3の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第3色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第3色用ヘッドと、第1の色、第2の色、及び第3の色のいずれとも異なる第4の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第4色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第4色用ヘッドとを更に備え、第3色用ヘッドは、副走査方向の位置を揃えて、主走査方向において第1色用ヘッドと並べて配設され、第4色用ヘッドは、副走査方向の位置を揃えて、主走査方向において第2色用ヘッドと並べて配設され、媒体上の各位置に対し、第1色用ヘッド及び第3色用ヘッドのそれぞれは、媒体上の位置に応じて決まる回の主走査動作において第1色インク滴及び第3色インク滴をそれぞれ吐出し、第2色用ヘッド及び第4色用ヘッドのそれぞれは、第1色用ヘッド及び第3色用ヘッドが第1色インク滴及び第3色インク滴を吐出した後の別の回の主走査動作において、第2色インク滴及び第4色用インク滴をそれぞれ吐出し、媒体上の各位置に対し、仮硬化用光源は、第1色用ヘッド及び第3色用ヘッドが第1色インク滴及び第3色インク滴を吐出した後であり、第2色用ヘッド及び第4色用ヘッドが第2色インク滴及び第4色インク滴を吐出する前に、媒体上の第1の色の紫外線硬化型インクと、第3の色の紫外線硬化型インクとを、仮硬化の状態に硬化させ、第2色用ヘッド及び第4色用ヘッドは、第1の色及び第3の色の紫外線硬化型インクが仮硬化の状態にまで硬化している領域に対し、第2色インク滴及び第4色インク滴を吐出する。
このように構成した場合、例えば、各印刷パスのバンド領域内に形成するインクのドットの色数を適切に低減できる。そのため、このように構成すれば、色間滲みの発生をより適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
尚、この構成において、より具体的には、例えば、印刷に使用するN色が、それぞれ一以上の色を含むm個(mは、2以上N未満の整数)の群に分けられる。そして、それぞれの群に含まれる色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドは、他の群に含まれる色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、副走査方向における位置が重ならないように配設される。
(構成9)N個のインクジェットヘッドとして、少なくとも、第1の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第1色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第1色用ヘッドと、第1の色とは異なる第2の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第2色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第2色用ヘッドと、第1の色及び第2の色のいずれとも異なる第3の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第3色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第3色用ヘッドと、第1の色、第2の色、及び第3の色のいずれとも異なる第4の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第4色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第4色用ヘッドとを備え、第1色用ヘッド、第2色用ヘッド、第3色用ヘッド、及び第4色用ヘッドは、この順番で、一の印刷パスの副走査方向における幅であるパス幅の整数倍の距離だけ副走査方向における位置を順次ずらして、主走査方向において並べて配設されている。
このように構成した場合、例えば、各印刷パスのバンド領域内に形成するインクのドットの色数を適切に低減できる。そのため、このように構成すれば、色間滲みの発生をより適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
(構成10)N個のインクジェットヘッドとして、少なくとも、第1の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第1色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第1色用ヘッドと、第1の色とは異なる第2の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第2色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第2色用ヘッドとを備え、画素選択部は、各回の印刷パスでインク滴を吐出する画素の選択において、一の印刷パスに対応するバンド領域内でインク滴を吐出する複数の画素間の間隔を示す空間周波数について、第1色用ヘッドによりインク滴を吐出する画素の空間周波数と、第2色用ヘッドによりインク滴を吐出する画素の空間周波数とを異ならせる。
このように構成すれば、例えば、各回の印刷パスで媒体上の同じ領域に形成される画素の空間周波数についても、インクの色によって異ならせることができる。また、これにより、例えば、最終的な印刷結果の画像に濃淡がより生じ難くい構成を適切に実現できる。
尚、各回の主走査動作で同じバンド領域内に形成する画素の空間周波数については、印刷に使用する全ての色について、互いに異ならせることが好ましい。このように構成すれば、例えば、印刷結果の画像に濃淡がより生じ難くい構成をより適切に実現できる。
(構成11)第1色用ヘッド及び第2色用ヘッドのそれぞれは、複数のノズルが副走査方向へ並ぶノズル列を、それぞれ複数列有する。複数のノズル列は、例えば、主走査方向へ並ぶ。また、この場合、N色の全ての色用のインクジェットヘッドについて、複数のノズル列を有する構成にすることが好ましい。
このように構成した場合、例えば、各色のインクジェットヘッドについて、各回の主走査動作において、媒体上の同じ領域に対し、複数のノズル列のノズルからインク滴を吐出することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、1回の主走査動作により、ノズル列の数分のパス数での複数の印刷パスで印刷したのと同一又は同様の印刷を行うことができる。
(構成項12)互いに異なるN色(Nは、2以上の整数)の紫外線硬化型インクを用いて、媒体上の各位置に対して複数回の印刷パスにより印刷を行うマルチパス方式により、媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、N色のそれぞれの色の紫外線硬化型インクのインク滴をそれぞれ吐出するN個のインクジェットヘッドと、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をN個のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的にN個のインクジェットヘッドを移動させる副走査駆動部と、媒体上の紫外線硬化型インクを少なくとも表面が粘着性を有する状態である仮硬化の状態にまで硬化させる紫外線を照射する仮硬化用光源と、媒体上の紫外線硬化型インクの硬化を完了させる紫外線を照射する本硬化用光源と、マルチパス方式における各回の印刷パスにおいてインク滴を吐出する画素を選択する画素選択部とを用い、N個のインクジェットヘッドを、各回の主走査動作においてそれぞれの印刷パスに対応するバンド領域内に形成するインクのドットの色数がNよりも小さくなるように配設し、仮硬化用光源により、媒体上の各位置に対し、予め設定された回数の主走査動作が行われる毎に、紫外線硬化型インクを仮硬化の状態にまで硬化させる紫外線を照射し、本硬化用光源により、媒体上に各位置に対し、全ての印刷パスにおける主走査動作が終了した後に、紫外線を照射する。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
(構成13)互いに異なるN色(Nは、2以上の整数)の紫外線硬化型インクを用いて、媒体上の各位置に対して複数回の印刷パスにより印刷を行うマルチパス方式により、媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、N色のそれぞれの色の紫外線硬化型インクのインク滴をそれぞれ吐出するN個のインクジェットヘッドと、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をN個のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的にN個のインクジェットヘッドを移動させる副走査駆動部と、媒体上の紫外線硬化型インクを少なくとも表面が粘着性を有する状態である仮硬化の状態にまで硬化させる紫外線を照射する仮硬化用光源と、媒体上の紫外線硬化型インクの硬化を完了させる紫外線を照射する本硬化用光源と、マルチパス方式における各回の印刷パスにおいてインク滴を吐出する画素を選択する画素選択部とを備え、N個のインクジェットヘッドとして、少なくとも、第1の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第1色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第1色用ヘッドと、第1の色とは異なる第2の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第2色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第2色用ヘッドとを備え、仮硬化用光源は、媒体上の各位置に対し、予め設定された回数の主走査動作が行われる毎に、紫外線硬化型インクを仮硬化の状態にまで硬化させる紫外線を照射し、本硬化用光源は、媒体上に各位置に対し、全ての印刷パスにおける主走査動作が終了した後に、紫外線を照射し、画素選択部は、各回の印刷パスでインク滴を吐出する画素の選択において、一の印刷パスに対応するバンド領域内でインク滴を吐出する複数の画素間の間隔を示す空間周波数について、第1色用ヘッドによりインク滴を吐出する画素の空間周波数と、第2色用ヘッドによりインク滴を吐出する画素の空間周波数とを異ならせる。
このように構成すれば、例えば、各回の印刷パスで媒体上の同じ領域に形成される画素の空間周波数について、インクの色によって異ならせることができる。また、これにより、例えば、最終的な印刷結果の画像に濃淡がより生じ難くい構成を適切に実現できる。そのため、このように構成すれば、例えば、シリアル方式のインクジェットプリンタで紫外線硬化型のインクを用いる場合において、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
尚、求められる印刷の品質によっては、例えば、N個のインクジェットヘッドについて、各バンド領域内に形成するインクのドットの色数がNよりも小さくなるように配設せず、例えば従来と同様の構成で、各バンド領域内に形成するドットの色数をNとした場合にも、インクのドットを適切に仮硬化させ、適切に印刷をし得ると考えられる。そして、この場合も、構成13のように構成すれば、例えばパス間や色間で対応する空間周波数を異ならせることにより、例えば、構成2等と同様に、印刷結果の画像に濃淡がより生じ難くい構成をより適切に実現できる。
(構成14)互いに異なるN色(Nは、2以上の整数)の紫外線硬化型インクを用いて、媒体上の各位置に対して複数回の印刷パスにより印刷を行うマルチパス方式により、媒体に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、N色のそれぞれの色の紫外線硬化型インクのインク滴をそれぞれ吐出するN個のインクジェットヘッドと、予め設定された主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をN個のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的にN個のインクジェットヘッドを移動させる副走査駆動部と、媒体上の紫外線硬化型インクを少なくとも表面が粘着性を有する状態である仮硬化の状態にまで硬化させる紫外線を照射する仮硬化用光源と、媒体上の紫外線硬化型インクの硬化を完了させる紫外線を照射する本硬化用光源と、マルチパス方式における各回の印刷パスにおいてインク滴を吐出する画素を選択する画素選択部とを用い、N個のインクジェットヘッドとして、少なくとも、第1の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第1色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第1色用ヘッドと、第1の色とは異なる第2の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第2色インク滴を吐出するインクジェットヘッドである第2色用ヘッドとを用い、仮硬化用光源により、媒体上の各位置に対し、予め設定された回数の主走査動作が行われる毎に、紫外線硬化型インクを仮硬化の状態にまで硬化させる紫外線を照射し、本硬化用光源により、媒体上に各位置に対し、全ての印刷パスにおける主走査動作が終了した後に、紫外線を照射し、画素選択部により行う、各回の印刷パスでインク滴を吐出する画素の選択において、一の印刷パスに対応するバンド領域内でインク滴を吐出する複数の画素間の間隔を示す空間周波数について、第1色用ヘッドによりインク滴を吐出する画素の空間周波数と、第2色用ヘッドによりインク滴を吐出する画素の空間周波数とを異ならせる。このように構成すれば、例えば、構成13と同様の効果を得ることができる。
本発明によれば、シリアル方式のインクジェットプリンタで紫外線硬化型のインクを用いる場合において、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す。図1(a)、(b)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す正面図及び上面図である。尚、以下に説明をする点以外について、印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を有してよい。
印刷装置10は、インクジェットヘッドに主走査動作を行わせるシリアル方式で印刷を行うインクジェットプリンタである。また、本例において、印刷装置10は、インクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、互いに異なるN色(Nは、2以上の整数)の紫外線硬化型インクを用いて、媒体50上の各位置に対して複数回の印刷パスにより印刷を行うマルチパス方式により、媒体50に対して、印刷を行う。また、印刷装置10は、インクドット形成部12、主走査駆動部14、副走査駆動部16、プラテン18、及び制御部20を備える。
インクドット形成部12は、印刷する画像の各画素に対応するインクのドットを媒体50上に形成することで媒体50に対して印刷を行う部分である。本例において、インクドット形成部12は、インクジェットヘッド202、仮硬化用光源204、仮硬化用光源208、及び本硬化用光源206を有する。
インクジェットヘッド202は、紫外線硬化型インクのインク滴を媒体50へ吐出する印刷ヘッドである。本例において、インクドット形成部12は、印刷に用いるN色の紫外線硬化型インクに対応するN個のインクジェットヘッド202を有する。また、それぞれのインクジェットヘッド202は、例えば、インク滴を吐出するノズルが所定の方向へ並ぶノズル列を有する。
尚、本例において、紫外線硬化型インクとは、例えば、紫外線の照射により硬化するインクである。紫外線硬化型インクは、例えば、紫外線に反応する重合の開始剤と、モノマー又はオリゴマー等とを含むインクであってよい。また、紫外線硬化型インクは、例えば公知の各種添付剤等を更に含んでよい。本例における紫外線硬化型インクとしては、例えば、公知の紫外線硬化型インクを好適に用いることができる。また、本例の紫外線硬化型インクとしては、例えば、いわゆるソルベントUVインクや水性UVインク等の、有機溶剤や水が添加された紫外線硬化型インクを用いることも考えられる。
仮硬化用光源204及び仮硬化用光源208は、媒体50上の紫外線硬化型インクを仮硬化の状態にまで硬化させる紫外線を照射する紫外線光源である。仮硬化の状態とは、例えば、少なくとも表面が粘着性を有する状態にまで硬化した状態である。仮硬化の状態は、例えば、紫外線硬化型インクの硬化が途中まで進んだ半硬化の状態であってよい。また、より具体的に、本例において、仮硬化の状態は、例えば、他の色の液体のインクと接触しても滲みが発生せず、かつ、他の色の液体のインクを弾かない状態である。仮硬化の状態は、例えば粘度が1000〜50万mPa・secにまで高まった状態であってよい。
本硬化用光源206は、媒体50上の紫外線硬化型インクの硬化を完了(本硬化)させる紫外線を照射する紫外線光源である。仮硬化用光源204、仮硬化用光源208、及び本硬化用光源206としては、例えばUVLEDを好適に用いることができる。以上の構成により、インクドット形成部12は、媒体50上にインクのドットを形成する。尚、インクドット形成部12のより具体的な構成については、後に詳しく説明をする。
主走査駆動部14は、予め設定された主走査方向(図中のY方向)へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をインクドット形成部12におけるインクジェットヘッド202に行わせる構成である。本例において、主走査駆動部14は、キャリッジ102及びガイドレール104を有する。キャリッジ102は、インクジェットヘッド202のノズル列と媒体50と対向させた状態でインクドット形成部12を保持する。また、本例において、キャリッジ102は、主走査方向と直交する副走査方向(図中のX方向)へノズル列が延伸する向きで、インクドット形成部12を保持する。ガイドレール104は、主走査方向へのキャリッジ102の移動をガイドするレールであり、制御部20の指示に応じて、主走査方向へキャリッジ102を移動させる。
副走査駆動部16は、副走査方向へ媒体50に対して相対的に移動する副走査動作をインクドット形成部12におけるインクジェットヘッド202行わせる構成である。本例において、副走査駆動部16は、媒体50を搬送するローラであり、主走査動作の合間に媒体50を搬送することにより、インクジェットヘッド202に副走査動作を行わせる。
尚、印刷装置10の構成としては、例えば、媒体50の搬送を行わずに、位置を固定した媒体50に対してインクジェットヘッド202の側を動かすことで副走査動作を行う構成(例えば、X−Yテーブル型機)を用いることも考えられる。この場合、副走査駆動部16としては、例えば、ガイドレール104を副走査方向へ移動させることでインクジェットヘッド202を移動させる駆動部等を用いることができる。
プラテン18は、媒体50を載置する台状部材であり、インクドット形成部12のインクジェットヘッド202においてノズルが形成されているノズル面と対向させて媒体50を支持する。また、プラテン18には、例えば、媒体50を加熱するヒータ等が配設されていてもよい。このように構成すれば、例えば、紫外線硬化型インクが溶剤を含む場合等に、溶剤を除去し、インクの粘度を速やかに高めることができる。また、これにより、紫外線硬化型インクを半硬化させるために必要な紫外線の強度をより低減することができる。
制御部20は、例えば印刷装置10のCPUであり、例えばホストPCの指示に応じて、印刷装置10の各部の動作を制御する。また、本例において、制御部20は、マルチパス方式における各回の印刷パスにおいてインク滴を吐出する画素を選択する画素選択部としての機能を有している。画素選択部としての動作については、後に更に詳しく説明をする。以上の構成により、印刷装置10は、媒体50に対し、印刷を行う。
続いて。インクドット形成部12のより具体的な構成については、詳しく説明をする。図2は、インクドット形成部12のより具体的な構成の一例を示す。
上記においても説明をしたように、本例において、インクドット形成部12は、N色の紫外線硬化型インクに対応するN個のインクジェットヘッド202を有する。また、より具体的に、図2においては、印刷装置10(図1参照)においてCMYKの各色の紫外線硬化型インクを用いる場合について、CMYKの各色のインクをそれぞれ吐出する複数のインクジェットヘッド202y、202m、202c、202k(以下、インクジェットヘッド202y〜kと記載する)を有する場合の構成を図示する。
尚、図2に示した構成において、Y(イエロー)色は、N色のうちの第1の色の一例である。M(マゼンタ)色は、N色のうちの第1の色とは異なる第2の色の一例である。また、インクジェットヘッド202yは、第1の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第1色インク滴を吐出する第1色用ヘッドの一例である。インクジェットヘッド202mは、第1色用ヘッドと副走査方向における位置をずらして配設されるインクジェットヘッドであり、第2の色の紫外線硬化型インクのインク滴である第2色インク滴を吐出する第2色用ヘッドの一例である。また、印刷装置10の構成の変形例において、インクドット形成部12は、CMYK以外の色用のインクジェットヘッド202を更に有してもよい。例えば、インクドット形成部12は、W(白)、CL(クリア)や、その他の特色用のインクジェットヘッド202を更に有してもよい。
また、本例において、それぞれ異なる色のインク滴を吐出するインクジェットヘッド202y〜kは、副走査方向における位置を互いにずらして配設される。より具体的に、図2に示した構成において、インクジェットヘッド202y〜kは、副走査方向における位置が重ならないように、副走査方向へ並べて配設されている。これにより、インクジェットヘッド202y〜kは、副走査動作における媒体の搬送方向に沿って、順番に並ぶ。
このように構成した場合、各回の主走査動作において、インクジェットヘッド202y〜kのそれぞれは、媒体におけるそれぞれ異なる領域へインク滴を吐出する。また、媒体における同じ領域に対しては、間に副走査動作を挟んだ異なる回の主走査動作において、それぞれの色のインク滴を吐出する。より具体的に、例えば、媒体の各位置に対し、インクジェットヘッド202yは、媒体上の位置に応じて決まる回の主走査動作においてY色のインク滴を吐出する。また、インクジェットヘッド202yがY色のインク滴を吐出した領域に対し、インクジェットヘッド202mは、インクジェットヘッド202yがY色のインク滴を吐出した後の別の回の主走査動作において、M色のインク滴を吐出する。また、この領域に対し、インクジェットヘッド202c及びインクジェットヘッド202kは、その後のそれぞれ異なる回の主走査動作において、C色及びK色のインク滴を吐出する。これにより、インクジェットヘッド202y〜kは、媒体の各領域に対し、色毎に順次印刷を行う色順次の方式により、印刷を行う。
また、本例において、インクドット形成部12は、複数の仮硬化用光源208と、複数の仮硬化用光源204とを有する。複数の仮硬化用光源208のそれぞれは、図2に示すように、複数のインクジェットヘッド202y〜kのそれぞれに対し、主走査方向において隣接する位置に配設される。これにより、それぞれの仮硬化用光源208は、各回の主走査動作時において、各回の主走査動作において、媒体上に吐出された紫外線硬化型インクに対し、インクが完全には硬化しない強度の弱い紫外線を照射する。また、これにより、仮硬化用光源204は、媒体上の紫外線硬化型インクを、仮硬化の状態に硬化させる。
より具体的に、例えば、インクジェットヘッド202yと隣接する位置に配設された仮硬化用光源208の場合、各回の主走査動作において、インクジェットヘッド202yにより媒体上に吐出されたY色の紫外線硬化型インクに対し、弱い紫外線を照射し、仮硬化させる。また、本例のように、マルチパス方式で印刷を行う場合、各回の印刷パス毎に、その印刷パスで形成されるインクのドットを仮硬化させる。また、インクジェットヘッド202m、202c、202kと隣接する位置に配設された仮硬化用光源208についても、同様の動作により、対応する色の紫外線硬化型インクを仮硬化させる。これにより、それぞれの仮硬化用光源208は、媒体上に各位置に対し、各回の印刷パスにおける主走査動作で媒体上に吐出されたインク滴により形成されるインクのドットを、同じ位置に対する別の印刷パスに対応する主走査動作が行われる前に、仮硬化の状態にまで硬化させる。このように構成すれば、例えば、各回の主走査動作により形成するインクのドットについて、その後の主走査動作により形成するインクのドットとの間で連結等が生じることを適切に防ぐことができる。
尚、本例において、複数のインクジェットヘッド202y〜kは、例えば、主走査方向における所定の往路及び復路の両方について、主走査動作を行う。また、この動作に対応して、仮硬化用光源208は、主走査方向において、複数のインクジェットヘッド202y〜kのそれぞれの両側に配設される。そして、主走査動作時には、インクジェットヘッドの移動方向において後方側となる仮硬化用光源208により、弱い紫外線を照射する。
また、複数のインクジェットヘッド202y〜kは、例えば、主走査方向における往路及び復路のうちの一方においてのみ、主走査動作を行ってもよい。この場合、仮硬化用光源208は、主走査方向において、複数のインクジェットヘッド202y〜kのそれぞれの片側のみに配設されてもよい。
複数の仮硬化用光源204のそれぞれは、副走査方向において、インクジェットヘッド202y〜kの間にそれぞれ配設される。これにより、それぞれの仮硬化用光源204は、媒体の搬送方向においてその仮硬化用光源204よりも上流側に配設されているインクジェットヘッドにより媒体上に吐出された紫外線硬化型インクに対し、更に、インクを完全には硬化しない強度の弱い紫外線を照射する。また、これにより、仮硬化用光源204は、媒体上の紫外線硬化型インクの粘度を更に高め、他の色のインクと接触しても色間滲みが発生しない粘度の仮硬化の状態に硬化させる。
より具体的に、例えば、インクジェットヘッド202yとインクジェットヘッド202mとの間に配設された仮硬化用光源204の場合、媒体上の各位置に対し、インクジェットヘッド202yがY色のインク滴を吐出した後であり、インクジェットヘッド202mがM色のインク滴を吐出する前に、媒体上のY色の紫外線硬化型インクを仮硬化の状態に硬化させる。これにより、その後、インクジェットヘッド202mは、Y色の紫外線硬化型インクが仮硬化の状態にまで硬化している領域に対し、M色のインク滴を吐出する。また、他の位置の仮硬化用光源204も、搬送方向の上流側及び下流側のインクジェットヘッドの動作に対し、同様のタイミングで紫外線を照射する。
また、本例において、インクドット形成部12は、媒体の搬送方向においてインクジェットヘッド202y〜kよりも下流側に、本硬化用光源206を有する。これにより、本硬化用光源206は、媒体上に各位置に対し、全ての印刷パスにおける主走査動作が終了し、全ての色のインク滴が吐出された後に、紫外線硬化型インクの硬化を完了させる強い紫外線を照射する。
本例によれば、色順次の方式で印刷を行い、かつ、仮硬化の状態にまでインクを硬化させることにより、例えば、例えば、異なる色のインクのドットについて、低粘度で流動性の高い液体状態のまま媒体上で接触することを適切に防ぐことができる。また、これにより、異なる色のインクが混ざることで発生する色間滲み等を適切に防ぐことができる。
また、本例において、本硬化用光源206は、上記のように、全ての色のインク滴が吐出された後に、紫外線硬化型インクの硬化を完了させる強い紫外線を照射する。そのため、インクジェットヘッド202y〜kによる印刷時において、先に形成されたインクのドットにより液体状態のインクが弾かれることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、横幅の狭い領域内で硬化した突起状のインクのドットが一方向へ連なることで生じる硬化縞の発生等を適切に防ぐことができる。そのため、本例によれば、例えば、色順次の方式で印刷をより適切に行うことができる。
また、例えば仮硬化用光源204、208により弱い紫外線を照射することにより、仮硬化の状態のインクの粘度について、時間の経過に伴ってインクのドットが徐々に平坦化する粘度に設定することができる。そして、この場合、例えば、仮硬化後、本硬化用光源206で紫外線を照射するまでの時間を空けることにより、インクのドットを十分に平坦化させることができる。そのため、本例によれば、例えば、インクのドットを十分に平坦化し、高光沢の印刷を行うこともできる。
ここで、上記のように、本例においては、色順次の方式で印刷を行うことにより、異なる色のインクのドットが連結しない構成を実現している。また、これにより、色間滲みの発生を適切に防いでいる。
しかし、色間滲みの問題のみではなく、例えばインクのドットの形状を均一化することも考えた場合、同一のインクのドットについても、連結ができるだけ生じない構成にすることが望まれる。そのため、例えば印刷のパス数をk回(kは、2以上の整数)とした場合、制御部20(図1参照)による画素の選択において、k回のうちの半数以上の印刷パスについて、主走査方向において隣接する画素に同一の印刷パスで同一色のインク滴を吐出しないように、画素を選択することが好ましい。このように構成すれば、例えば、少なくとも半数以上の印刷パスにおいて、同一の色のインクについても、ドット間距離を適切に空けることができる。また、これにより、例えば、インクのドットの連結を生じ難くし、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。
また、上記のように、本例において、インクドット形成部12は、インクを仮硬化させるための紫外線光源として、2種類の光源(仮硬化用光源208及び仮硬化用光源204)を用いている。そして、この場合、各色の紫外線硬化型インクの仮硬化後の粘度について、仮硬化用光源204による紫外線の照射を行った時点で十分に高い粘度になればよい。
そのため、この場合、例えば、各回の主走査動作時に紫外線を照射する仮硬化用光源208について、仮硬化用光源204を用いない場合と比べ、紫外線の強度をより小さい強度に設定することもできる。これにより、例えば、マルチパス方式の印刷パス数分の主走査動作により、媒体上の同じ位置へ仮硬化用光源208により複数回紫外線を照射したとしても、紫外線の積算光量を適切に抑えることができる。また、これにより、仮硬化用光源208により照射する紫外線の強度について、実用的な範囲で、より容易かつ適切に設定することが可能になる。
尚、仮硬化用光源204、208が照射する紫外線の強度は、本硬化用光源206が照射する紫外線の強度に対し、例えば1/20〜1/3とすることが考えられる。また、仮硬化用光源204、208が照射する紫外線の強度は、例えば、本硬化用光源206が照射する紫外線の強度の1/10〜1/4とすることが更に好ましい。また、仮硬化用光源208により照射する紫外線強度は、仮硬化用光源204により照射する紫外線の強度以下にすることが望ましい。
より具体的に、それぞれの紫外線光源により照射する紫外線の強度について、例えば、仮硬化用光源208により照射する紫外線の強度A、仮硬化用光源204により照射する紫外線の強度B、本硬化用光源206により照射する紫外線の強度Cの比は、例えば、10〜20:20〜60:100程度の関係にすることが望ましい。このように構成すれば、例えば、媒体上の紫外線硬化型インクについて、より適切に仮硬化及び本硬化させることができる。
また、本例においては、例えば、仮硬化用光源208により照射する紫外線の強度を十分に小さくすることにより、仮硬化用光源208による仮硬化後のインクの粘度について、例えば、時間の経過に従ってインクのドットの平坦化がより進みやすい粘度に設定することもできる。そして、この場合、例えば、その後に仮硬化用光源204により紫外線を照射するまでの時間を適切かつ十分に空けることもできる。また、これにより、例えば、媒体に着弾したインク滴により形成されるインクのドットが十分に平坦化するのを待った後に、仮硬化用光源204により紫外線硬化型インクを仮硬化の状態に硬化させることもできる。この場合、例えば、媒体へのインク滴の着弾から数秒〜数十秒経過した後に、仮硬化用光源204に紫外線を照射させることが考えられる。
そのため、本例によれば、例えば、インクのドットをより適切かつ十分に平坦化させることができる。また、これにより、例えば、高光沢の印刷をより適切に行うことができる。
以上のように、本例によれば、例えば、シリアル方式のインクジェットプリンタで紫外線硬化型のインクを用いる場合において、色間滲みや硬化縞等の問題を適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。
尚、上記においても説明をしたように、本例において、印刷装置10は、媒体を搬送することで副走査動作を行う。そして、この場合、図中に示したように、媒体の搬送方向は、副走査方向と平行になる。そのため、この場合、インクジェットヘッド202y〜k等の配置については、媒体50の搬送方向へ並べて配設されているとも言える。また、印刷装置10の構成の変形例においては、例えばインクジェットヘッド202y〜kの側を移動させて副走査動作を行うことも考えられる。この場合、例えば、媒体に対する各構成の相対移動の方向が図2と同じになるように、インクジェットヘッド202y〜k、仮硬化用光源204、及び本硬化用光源206等を配設することが好ましい。
ここで、媒体上で紫外線硬化型インクが硬化する様子について、更に詳しく説明をする。図3は、紫外線硬化型インクの硬化の様子に関し、媒体上へ新たに形成されるインクのドットと、既に形成されている周囲のドットとの関係の一例を示す模式図であり、周囲のドットが液体、固体、及び仮硬化の状態の場合の一例を、説明のために簡略化して示す。図3(a)は、周囲のドットが液体の状態の場合の様子の一例を示す。図3(b)は、周囲のドットが既に硬化している固体の状態の場合の様子の一例を示す。図3(c)は、周囲のドットが仮硬化の状態の場合の様子の一例を示す。
図3に示すように、媒体上へ新たに形成されるインクのドットの状態は、既に形成されている周囲のドットの状態により、大きく異なる。例えば、図3(a)に示すように、周囲のドットが液体の状態の場合、新たに形成するインクのドットは、周囲のドットと連結し、一体化する。そのため、例えば周囲のドットが色の異なるインクのドットである場合、色間滲みが発生する。また、この場合、媒体との接触角が大きくなるため、短時間で平坦化する。
また、図3(b)に示すように、周囲のドットが既に硬化している固体の状態の場合、新たに形成するインクのドットを構成するインクは、周囲のドットに弾かれることになる。そのため、この場合、新たに形成するインクのドットは、横幅が縮まり、突起化しやすくなる。また、その結果、例えば高印字率の設定で印刷を行う場合等において、硬化縞が発生しやすくなる。
これに対し、図3(c)に示すように、周囲のドットが仮硬化の状態の場合、図1及び図2等に関連して説明をしたように、周囲のドットは、他のドットと連結せず、かつ、液体のインクを弾かない状態になっている。そのため、この場合、新たなドットを形成しても、滲みや硬化縞が発生することはない。また、この場合、例えば、周囲のドットや、新たに形成するドットについて、仮硬化させる硬化の程度に応じて、インクのドットを平坦化させること等もできる。
しかし、このような好ましい仮硬化の状態は、紫外線の照射量が一定の限られた範囲の場合にのみ実現できるものである。そのため、仮硬化用光源204及び仮硬化用光源208(図2参照)による紫外線の照射量については、使用する紫外線硬化型インクの特性に合わせ、適宜設定することが必要である。そこで、以下、この点について、更に詳しく説明をする。
図4は、紫外線の照射量(積算光量)と、紫外線硬化型インクの硬化状態との関係の一例を示すグラフであり、紫外線の照射量に対し、インクの粘度、硬度、滲みの生じやすさ、及び液体インクとの親和性の様子の一例を示す。グラフに示すように、紫外線の照射量(積算光量)が大きくなると、インクの粘度は高まり、硬化が進む。また、紫外線の照射量が増えると、インクの滲みやすさは低下する。一方、液体インクとの親和性は、紫外線の照射量が大きくなると、低下する。
また、これらの各特性は、いずれも、グラフに示すように、紫外線の照射量がある程度の量に達したところで、急な傾きで変化する。そして、紫外線硬化型インクについて、上記のような好ましい仮硬化の状態にまで硬化させるためには、紫外線の照射量について、通常、これらの各特性が急な傾きで変化する範囲内で設定することが必要になる。
ここで、本例においては、図2等に関連して説明をしたように、複数色の紫外線硬化型インクについて、色順次の方式により印刷を行う。これに対し、従来のインクジェットプリンタにおいては、異なる色用のインクジェットヘッドを主走査方向へ並べて配設し、各回の主走査動作で全ての色のインク滴を吐出する構成が広く用いられている。そして、この場合、各色のインクのドットを同一の主走査動作により形成する構成であるため、色間滲みの問題が発生しやすいと言える。そのため、この場合、仮硬化の状態にまで硬化させる紫外線の照射量を適切に設定するためには、例えば、図4のグラフに示した滲みの発生のしやすさ等について、十分に考慮する必要がある。
また、各色のインクのドットを同一の主走査動作により形成する構成の場合、色間滲みを防ぐためには、少なくとも、マルチパス方式で印刷を行い、かつ、各回の主走査動作を行う毎に紫外線の照射を行うことが必要と考えられる。そして、この場合、媒体上の各位置への紫外線の照射は、少なくとも印刷パスの回数分行われることになる。そして、この場合、媒体上のインクのドットは、いずれの回の印刷パスで形成されたかに応じて、異なる回数の紫外線の照射を受けることになる。その結果、この場合、例えば、最初の印刷パスで形成されたインクのドットと、最後の印刷パスで形成されたインクのドットとの間で、ドットの硬化度に差が生じる。
また、上記のような従来の構成の場合、色間滲みを適切に防ぐためには、印刷パスのパス数を十分に大きくすることが必要になる。そして、この場合、パス数の増加により、印刷にかかる時間が大きく増大するおそれがある。また、この場合、最初と最後の印刷パス間でのドットの硬化度の差も非常に大きくなると考えられる。そして、この場合、最初から最後までの全ての印刷パスについて、インクのドットを適切に仮硬化させることは、容易ではない。
これに対し、本例においては、上記のように、色順次の方式により印刷を行う。そのため、各回の主走査動作において、色間滲みは発生しない。そのため、各回の主走査動作を行う毎に紫外線を照射する場合において、紫外線の照射強度を十分に小さくすることができる。そのため、本例によれば、例えば、インクのドットを仮硬化させるために仮硬化用光源204等により照射する紫外線の強度について、実用的な範囲で、より容易かつ適切に設定することが可能になる。また、これにより、例えば、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。
尚、上記において説明をしたように、本例において、印刷装置10(図1参照)は、マルチパス方式での印刷を行う。この場合、主走査方向において隣接する画素に同一の印刷パスでインク滴を吐出しないように、マルチパス方式で印刷を行うことが好ましい。このように構成すれば、例えば、液体状態のインクのドットが接触することをより適切に防ぐことができる。この場合、液体状態のインクのドットが接触するとは、例えば、媒体に着弾したインクのドットどうしが接触することである。また、これにより、インクのドットの連結等を防ぎ、インクのドットの形状をより適切に均一化できる。
ここで、連結したインクのドットは、媒体との接触角が大きくなるため、より短時間で平坦化しやすくなる。そのため、インクのドットの連結が生じると、インクのドットの平坦度等にもばらつきが生じやすい。これに対し、このように構成すれば、例えば、インクのドットの平坦度についても、より適切に均一化できる。
以上のように、本例によれば、例えば、色順次の方式による印刷を行うことと、紫外線硬化型インクを仮硬化させることとを組み合わせることにより、高い品質の印刷を行うことが可能になる。しかし、インクジェットプリンタにおいて、高い品質での印刷をより適切に行うためには、媒体上に形成されるインクのドットの位置のズレについても、十分に考慮をすることが望まれる。そこで、以下、この点について、詳しく説明をする。
図5は、ドットの位置のズレの影響について説明をする図である。図5(a)は、ドットの位置のズレが生じていない状態の一例を示す。この場合、インクのドットは、印刷の解像度に応じて決まる一定の間隔(ピッチ)で並ぶことになる。
これに対し、インクジェットプリンタにおいては、例えば、媒体を搬送する送り量の誤差等により、インク滴の着弾位置にズレが生じる場合がある。また、その結果、媒体上に形成されるインクのドットの位置がズレる場合がある。そして、本例のように、マルチパス方式で印刷を行う構成において、このようなズレが生じた場合、印刷パス間に生じるドットの位置のズレの影響により、最終的な印刷結果の画像に濃淡が生じやすくなる。
図5(b)、(c)は、ドットの位置のズレが生じた状態の一例を示す。図5(b)は、1/2ピッチ分の位置のズレが生じた状態の一例を示す。図5(c)は、1ピッチ分の位置のズレが生じた状態の一例を示す。各図に示すように、このような位置のズレが生じた場合、図5(a)に示した正常な状態と比べ、印刷後の状態が変化する。
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、ドットの位置のズレの影響に関し、各印刷パスにおいてインク滴を吐出する複数の画素間の間隔を示す空間周波数との関係に着目した。そして、インクのドットの位置について、印刷パス間でズレが生じた場合、それぞれの印刷パスに対応する空間周波数が同一であると、全てのドット間で同じだけのズレが生じ、意図しない濃淡が生じやすいことを見出した。また、例えば、ドットのサイズが解像度に対応するピッチより大きい場合等について、各印刷パスで形成するドットのパターンの空間周波数の成分を同一にした場合等において、ドットの位置の少しのズレにより顕著な濃度が変化を生じることを見出した。
ここで、各印刷パスで形成するドットのパターンの空間周波数について、説明をする。図6は、媒体上に形成するインクのドットについて、ドットの並び方の一例を示す。
マルチパス方式で印刷を行う場合、各回の印刷パスにおいて、印刷装置10(図1参照)は、その印刷パスに対応するバンド領域内の全ての画素から一部の画素を選択し、選択した画素の位置に、インクのドットを形成する。そのため、各回の印刷パスにより形成されるインクのドットは、媒体上において、バンド領域内の一部の画素の位置に、離散的に並ぶことになる。この場合、印刷パスに対応するバンド領域とは、例えば、媒体上において、各回の印刷パスによる印刷の対象となる領域のことである。
また、各回の印刷パスで形成されるインクのドットの並び方は、それぞれの印刷パスで形成するインクのドットに対応する画素を指定するマスクの設定に応じて決まる。これにより、各回の印刷パスで形成されるインクのドットは、マスクの設定に応じて決まる一定のパターンの配置で、媒体上に並ぶことになる。また、その結果、各回の印刷パスで形成されるインクのドットは、マスクの設定に応じて、各回の印刷パスに対応する空間周波数のパターンで、媒体上に並ぶ。この場合、印刷パスに対応する空間周波数とは、例えば、その印刷パスにおいてインク滴を吐出する複数の画素間の間隔を示す空間周波数である。また、印刷パスに対応する空間周波数とは、例えば、その印刷パスで形成するインクのドットの間隔の分布を空間周波数の分布で表した場合に最大値(ピーク値)となる空間周波数であってよい。
より具体的に、例えば、印刷パスにおいて、図6の上側にドット分散型(ディザ型)として示したパターンでインクのドットを形成した場合、その印刷パスに対応する空間周波数F1は、1/L1になる。この場合、L1は、このパターンにおいて形成されるインクのドットの間隔である。
また、図6の下側にドット集中型(網点型)として示したパターンでインクのドットを形成した場合、その印刷パスに対応する空間周波数F2は、1/L2になる。この場合、L2は、このパターンにおいて形成されるインクのドットの間隔である。
また、これらの例において、ドット集中型の場合の空間周波数F2は、ドット分散型の場合の空間周波数F1の半分の値になってる。そのため、これらの例から、ドットの形成の仕方で空間周波数が変化することがわかる。
そこで、本願の発明者は、図5等を用いて説明をした濃度の変化を防ぐための方法として、媒体上の同じ領域に対して連続して行う複数の印刷パスについて、それぞれの印刷パスで形成する複数の画素間の間隔を示す空間周波数を互いに異ならせることを考えた。また、より具体的に、例えば、媒体上の同じ領域に対して連続して行う少なくとも2回の印刷パスについて、それぞれの印刷パスで形成する複数の画素間の間隔を示す空間周波数を互いに異ならせることを考えた。
図7は、印刷パス毎に空間周波数を異ならせる構成の一例を示す。図7(a)は、インクジェットヘッド202において各印刷パスに対応する領域と、設定する空間周波数との関係の一例を示す。
尚、図7(a)に示したインクジェットヘッド202は、例えば、図2に示したインクジェットヘッド202y〜kのそれぞれに対応するインクジェットヘッドである。また、図7においては、説明の簡略化のため、印刷パス数を4としている。印刷パス数は、4以外の数であってもよい。
図1等に関連して説明をしたように、本例において、制御部20(図1参照)は、マルチパス方式における各回の印刷パスにおいてインク滴を吐出する画素を選択する画素選択部としての機能を有する。より具体的に、制御部20は、例えば、印刷パス毎に予め設定されたマスクのパターンに応じて、各回の印刷パスにおいてインク滴を吐出する画素を選択する。
例えば、図7に示した場合において、制御部20は、最初の印刷パスについて、予め設定されたパターンAのマスクに基づき、画素を選択する。この場合、パターンAの空間周波数は、所定の空間周波数aに設定されている。また、2〜4番目のそれぞれの印刷パスについて、予め設定されたパターンB〜Dのそれぞれのマスクに基づき、画素を選択する。この場合、パターンB〜Dのそれぞれの空間周波数は、所定の空間周波数b〜dのそれぞれに設定されている。
図7(b)〜(e)は、各回の印刷パスにおいて選択する画素のパターンの一例を示す。本例において、制御部20は、最初の印刷パスにおいて、例えば図7(b)に示すように、16個の画素の中から文字Aを記した4個の画素を選択するパターンで、画素を選択する。この場合、このパターンで画素を選択するとは、例えば、バンド領域内の各画素について、このパターンを繰り返すように画素を選択することである。
また、制御部20は、2番目の印刷パスにおいて、例えば図7(c)に示すように、16個の画素の中から文字Bを記した4個の画素を選択するパターンで、画素を選択する。3番目の印刷パスにおいて、例えば図7(d)に示すように、16個の画素の中から文字Cを記した4個の画素を選択するパターンで、画素を選択する。また、4番目の印刷パスにおいて、例えば図7(e)に示すように、16個の画素の中から文字Dを記した4個の画素を選択するパターンで、画素を選択する。
このように画素を選択すれば、例えば、印刷パスの回数分である4回の主走査動作で100%の印刷を行うように、マスクのパターンを適切に設定できる。また、これにより、マルチパス方式での印刷を適切に行うことができる。
また、このように画素を選択した場合、例えば、媒体上の同じ領域に対して連続して行う印刷パスについて、それぞれの印刷パスに対応する空間周波数を適切に異ならせることができる。また、これにより、例えば、印刷結果の画像において、濃淡が生じ難くすることもできる。そのため、本例によれば、例えば、シリアル方式のインクジェットプリンタで紫外線硬化型のインクを用いる場合において、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。
尚、図7に示した例においては、説明の簡略化のため、パターンAの空間周波数とパターンCの空間周波数とが同じであり、かつ、パターンBの空間周波数とパターンDの空間周波数とが同じ場合の例を示した。この場合も、空間周波数が互いに異なる複数種類のパターンを用いることにより、印刷結果の画像に濃淡が生じることを適切に防ぐことができる。また、各印刷パスに対応する空間周波数については、例えば、全ての印刷パスについて、互いに異なることがより好ましい。このように構成すれば、例えば、濃淡の発生をより適切に防ぐことができる。
また、図5等を用いて説明をしたように、マルチパス方式を行うことで生じる濃淡は、例えば、媒体を搬送する送り量の誤差等により生じる。そのため、このような濃淡を適切に防ぐためには、例えば、各印刷パターンに対応する空間周波数のうち、副走査方向における空間周波数を印刷パス毎に異ならせることが重要であるとも考えられる。すなわち、各印刷パスに対応する空間周波数を異なら場合において、特に、副走査方向における空間周波数を異ならせることが好ましいとも考えられる。
続いて、各印刷パスにおいて選択する画素の設定について、更に詳しく説明をする。図8〜11は、マルチパス方式で印刷を行う場合について、一の色のインクに関し、それぞれの印刷パスで形成する画素の選択の例を示す。
尚、図8〜11において説明をする例は、印刷パス毎に空間周波数を異ならせる構成について、それぞれの印刷パスで形成する画素の選択の仕方のより具体的な例である。また、図8〜11に示すパターンは、例えば、図2に示したインクジェットヘッド202y〜kのそれぞれにより各回の印刷パスで形成する画素のパターンである。また、図8〜11においては、図示の便宜上、各回の印刷パスで形成する画素を示すマス目を、それぞれ異なるパターンで塗りつぶしている。
図8は、印刷パス毎に空間周波数を異ならせる構成の一例を示す図であり、網点型の配置を混在させたドット配置である網点型混在ドット配置で画素を選択する場合の例を示す。尚、図8においては、2回分の印刷パスに対する画素の選択の仕方がわかりやすいように、最初の2回の印刷パスについてのみ、選択する画素を示している。以降の印刷パスにおいては、例えば、最初の2回の印刷パスで選択した画素以外の画素について、適宜選択してよい。
図9及び図10は、印刷パス毎に空間周波数を異ならせる構成の他の例をそれぞれ示す図であり、印刷パス数を8とした場合について、空間周波数が異なる様々なパターンを混在させたドット配置である混在ドット配置で画素を選択する場合の例をそれぞれ示す。図11は、印刷パス毎に空間周波数を異ならせる構成の更なる他の例を示す図であり、印刷パス数を8とした場合について、網点型のパターンを用いたドット配置である網点型画素配置で画素を選択する場合の例を示す。
これらのように構成すれば、例えば、複数の印刷パスのそれぞれにおいて画素を選択するパターンとして、空間周波数が互いに異なる複数種類のパターンを適切に用いることができる。また、これにより、例えば、印刷結果の画像に濃淡が生じることを適切に防ぐことができる。
ここで、以上においては、主に、図2に示した構成のインクドット形成部12を用いる場合について、印刷パス毎に空間周波数を異ならせる構成等を説明した。しかし、インクドット形成部12としては、例えば、図2に示した構成と異なる構成を用いてもよい。そこで、以下、インクドット形成部12の構成の様々な変形例について、説明をする。図12は、インクドット形成部12の構成の変形例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図12において、図1〜11と同じ符号を付した構成は、図1〜11における構成と、同一又は同様の特徴を有する。
図12(a)は、インクドット形成部12の構成の第1の変形例を示す。本変形例において、インクドット形成部12は、図2等に示した構成に対し、仮硬化用光源204を省略した構成を有する。そのため、この構成において、インクドット形成部12は、仮硬化用光源208のみにより、媒体上の紫外線硬化型インクを仮硬化させる。
本変形例においても、インクジェットヘッド202y〜kの配置は、図2等を用いて説明をした構成と同様に、色順次の方式で印刷を行う構成である。そのため、マルチパス方式で印刷を行う場合において、例えば色間滲みを考慮する必要がないため、例えば従来のインクジェットプリンタのように各回の主走査動作で全ての色のインク滴を吐出する場合と比べ、印刷のパス数を適切に低減できる。また、仮硬化用光源208により照射する紫外線の強度についても、適切に低減できる。そのため、本変形例においても、インクのドットを仮硬化させるために仮硬化用光源208により照射する紫外線の強度について、実用的な範囲で、より容易かつ適切に設定することが可能になる。また、これにより、本変形例においても、例えば、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。
また、その他の点においても、例えば、図1〜11を用いて説明をした構成と同様の様々な効果を得ることができる。より具体的に、例えば、本変形例においても、媒体上の紫外線硬化型インクを仮硬化用光源208により仮硬化させることにより、硬化縞等の発生等を適切に防ぐことができる。
また、本変形例においても、マルチパス方式での印刷において、例えば図1〜11を用いて説明をした構成と同様に、印刷パス毎の空間周波数を異ならせる。これにより、例えば、印刷結果の画像に濃淡が生じることを適切に防ぐことができる。
図12(b)は、インクドット形成部12の構成の第2の変形例を示す。本変形例において、インクドット形成部12は、図2等に示した構成に対し、仮硬化用光源208を省略した構成を有する。そのため、この構成において、インクドット形成部12は、仮硬化用光源204のみにより、媒体上の紫外線硬化型インクを仮硬化させる。また、この場合、仮硬化用光源204は、媒体の搬送方向の上流側にあるインクジェットヘッドによる複数回の主走査動作が行われた後に、そのインクジェットヘッドにより媒体上へ形成されたインクのドットを仮硬化させる。
この場合も、仮硬化用光源204により弱い紫外線を照射することにより、媒体上の紫外線硬化型インクを適切に仮硬化させることができる。また、この場合、各回の主走査動作を行う毎に紫外線を照射するのではなく、媒体上の各位置に対し、印刷パス数分の複数回の主走査動作が行われる毎に弱い紫外線を照射する。そのため、マルチパス方式で印刷を行う場合にも、媒体上の各位置への弱い紫外線の照射は、例えば、1回のみで済む。そのため、本変形例によれば、例えば、仮硬化用光源204により照射する紫外線の強度について、実用的な範囲で、より容易かつ適切に設定することが可能になる。また、これにより、本変形例においても、例えば、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。
また、その他の点においても、例えば、図1〜11を用いて説明をした構成や、図12(a)に示した構成と同様の様々な効果を得ることができる。例えば、本変形例においても、媒体上の紫外線硬化型インクを仮硬化用光源204により仮硬化させることにより、硬化縞等の発生等を適切に防ぐことができる。また、印刷パス毎の空間周波数を異ならせることにより、例えば、印刷結果の画像に濃淡が生じることを適切に防ぐことができる。
ここで、図1〜12においては、全ての色の紫外線硬化型インクについて、色順次の方式により印刷を行う場合の構成について、説明をした。しかし、インクのドットを適切に仮硬化させるためには、必ずしも全ての色について色順次の方式により印刷を行わなくても、例えば、各回の主走査動作において形成するインクのドットの色数を低減すること等も考えられる。より具体的には、例えば、互いに異なるN色の紫外線硬化型インクを用いて印刷を行う場合について、N色の各色にそれぞれ対応するN個のインクジェットヘッドについて、各回の主走査動作においてそれぞれの印刷パスに対応するバンド領域内に形成するインクのドットの色数がNよりも小さくなるように配設すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、バンド領域内に形成する各色のインクのドットについて、ドット間距離を大きくした配置を設定しやすくなる。また、これにより、液体状態のインクのドットの接触について、より生じにくくすることができる。そのため、このように構成した場合も、色順次の方式で印刷を行う場合と同様に、色間滲みの発生等を適切に防ぐことができる。そこで、以下、このような場合について、インクドット形成部12の変形例を示す。
図13は、インクドット形成部12の構成の更なる変形例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図13において、図1〜12と同じ符号を付した構成は、図1〜12における構成と、同一又は同様の特徴を有する。また、図13に示した構成において、インクジェットヘッド202yは、第1色用ヘッドの一例である。インクジェットヘッド202cは、第2色用ヘッドの一例である。また、インクジェットヘッド202mは、第3色用ヘッドの一例である。インクジェットヘッド202kは、第4色用ヘッドの一例である。
図13(a)は、インクドット形成部12の構成の第3の変形例を示す。本変形例において、複数のインクジェットヘッド202y〜kは、それぞれ2色分のインクジェットヘッドを含む2個の群に分けられている。そして、それぞれの群に含まれるインクジェットヘッドは、他の群に含まれるインクジェットヘッドと、副走査方向における位置が重ならないように配設されている。
より具体的に、図13(a)に示した構成において、インクジェットヘッド202yとインクジェットヘッド202mは、第1の群に含まれる。また、インクジェットヘッド202cと、インクジェットヘッド202kは、第2の群に含まれる。そして、インクジェットヘッド202yと、インクジェットヘッド202cとは、主走査方向における位置を揃えて、副走査方向における位置が重ならないように、副走査方向において並べて配設される。また、インクジェットヘッド202mは、副走査方向の位置を揃えて、主走査方向においてインクジェットヘッド202yと並べて配設される。インクジェットヘッド202kは、副走査方向の位置を揃えて、主走査方向においてインクジェットヘッド202cと並べて配設される。
更に、本変形例において、インクドット形成部12は、第1の群のインクジェットヘッドであるインクジェットヘッド202y及びインクジェットヘッド202mと、第2の群のインクジェットヘッドであるインクジェットヘッド202c及びインクジェットヘッド202kとの間に、仮硬化用光源204を有する。また、第2の群のインクジェットヘッドに対して媒体の搬送方向の下流側に、本硬化用光源206を有する。
そして、これらの構成により、媒体上の各位置に対し、インクジェットヘッド202y及びインクジェットヘッド202mのそれぞれは、媒体上の位置に応じて決まる回の主走査動作においてY色及びM色のそれぞれのインク滴を吐出する。インクジェットヘッド202c及びインクジェットヘッド202kのそれぞれは、インクジェットヘッド202y及びインクジェットヘッド202mがY色及びM色のインク滴を吐出した後の別の回の主走査動作において、C色及びK色のそれぞれのインク滴を吐出する。また、媒体上の各位置に対し、仮硬化用光源204は、インクジェットヘッド202y及びインクジェットヘッド202mがY色及びM色のインク滴を吐出した後であり、インクジェットヘッド202c及びインクジェットヘッド202kがC色及びK色のインク滴を吐出する前に、媒体上のY色及びM色の紫外線硬化型インクを、仮硬化の状態に硬化させる。これにより、インクジェットヘッド202c及びインクジェットヘッド202kは、Y色及びM色の紫外線硬化型インクが仮硬化の状態にまで硬化している領域に対し、C色及びK色のインク滴を吐出する。
このように構成した場合、例えば、各回の主走査動作において、各印刷パスのバンド領域内に形成するインクのドットの色数を適切に低減できる。そのため、この場合も、各回の主走査動作で全ての色のインク滴を吐出する場合と比べ、色間滲みの発生を生じにくくすることができる。従って、本変形例においても、例えば、媒体上に形成されるインクのドットについて、適切に仮硬化させることができる。また、これにより、例えば、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
また、本変形例においても、マルチパス方式での印刷において、例えば図1〜11を用いて説明をした構成と同様に、印刷パス毎の空間周波数を異ならせる。これにより、例えば、印刷結果の画像に濃淡が生じることを適切に防ぐことができる。
ここで、本変形例においては、1色毎の色順次の方式で印刷を行う場合と異なり、各回の主走査動作において、一のバンド領域内へ、複数の色のインクのドットを形成する。そのため、この場合、同一の画素、及び主走査方向において隣接する画素のいずれにも異なる色のインク滴を同一の印刷パスで吐出しないように、マルチパス方式で印刷を行うことが望ましい。このように構成すれば、例えば、異なる色のインクのドットについて、同一パス内でのドット間距離を適切に空けることができる。また、これにより、異なる色のインクのドットが連結して色間滲みが発生することを適切に防ぐことができる。
また、インクジェットヘッドを分ける群の数は、2個に限らず、例えば3以上であってもよい。また、印刷に使用するインクの色数は、CMYKの4色に限らず、更に多くの数であってもよい。例えば、より一般的に、N色の紫外線硬化型インクを用いる場合について、N色を、それぞれ一以上の色を含むk個(kは、2以上N未満の整数、例えば2又は3等)の群に分けることが考えられる。この場合、N色のそれぞれの色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドは、例えば、群毎に、副走査方向における位置が重ならないように配設される。
図13(b)は、インクドット形成部12の構成の第4の変形例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、本変形例の構成は、図13(a)に示した構成と同一又は同様の特徴を有する。
本変形例において、インクドット形成部12は、図13(a)に示した仮硬化用光源204に代えて、複数の仮硬化用光源208を有する。それぞれの仮硬化用光源208は、それぞれの群に含まれるインクジェットヘッドに対し、主走査方向において隣接する位置に配設される。また、これにより、仮硬化用光源208は、各回の主走査動作において、その主走査動作で形成されたインクのドットを仮硬化させる。本変形例においても、例えば、媒体上に形成されるインクのドットについて、適切に仮硬化させることができる。また、これにより、例えば、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
また、本変形例においても、例えば、各印刷パスに対応するバンド領域内に形成するインクのドットの色数を適切に低減できる。そのため、この場合も、例えば図12(a)等に示した構成と同様に、仮硬化用光源208により照射する紫外線の強度について、実用的な範囲で、より容易かつ適切に設定することが可能になる。
また、本変形例においても、マルチパス方式での印刷において、例えば図1〜11を用いて説明をした構成と同様に、印刷パス毎の空間周波数を異ならせる。これにより、例えば、印刷結果の画像に濃淡が生じることを適切に防ぐことができる。
更に、本変形例の場合、例えば、各回の印刷パスに対応する主走査動作を行う毎に、インクのドットを仮硬化させることができる。そのため、本変形例によれば、例えば、同一の群に含まれる複数のインクジェットヘッドにより形成される複数の色に対し、色間滲みが発生することをより適切に防ぐことができる。
図13(c)は、インクドット形成部12の構成の第5の変形例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、本変形例の構成は、図13(a)、(b)に示した構成と同一又は同様の特徴を有する。
本変形例において、インクドット形成部12は、副走査方向において各群のインクジェットヘッドの間に配設される仮硬化用光源204に加え、主走査方向において各群のインクジェットヘッドと隣接する位置に、仮硬化用光源208を更に有する。この場合も、例えば、上記の各変形例に関連して説明した場合と同様に、媒体上に形成されるインクのドットについて、適切に仮硬化させることができる。また、これにより、例えば、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
また、本変形例においても、マルチパス方式での印刷において、例えば図1〜11を用いて説明をした構成と同様に、印刷パス毎の空間周波数を異ならせる。これにより、例えば、印刷結果の画像に濃淡が生じることを適切に防ぐことができる。
続いて、各回の主走査動作において同じ領域に形成するインクのドットの色数を低減する構成に関し、更なる変形例を示す。図14は、インクドット形成部12の更なる変形例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図14において、図1〜13と同じ符号を付した構成は、図1〜13における構成と、同一又は同様の特徴を有する。また、図14に示した構成において、インクジェットヘッド202yは、第1色用ヘッドの一例である。インクジェットヘッド202mは、第2色用ヘッドの一例である。また、インクジェットヘッド202cは、第3色用ヘッドの一例である。インクジェットヘッド202kは、第4色用ヘッドの一例である。
図14(a)は、インクドット形成部12の構成の第6の変形例を示す。図14(b)は、インクドット形成部12の構成の第7の変形例を示す。これらの変形例において、インクジェットヘッド202y〜kは、主走査方向において隣接するインクジェットヘッドと副走査方向における位置を一部重ねつつ、パス幅以上、副走査方向における位置をずらして配設されている。この場合、パス幅とは、一の印刷パスの副走査方向における幅である。
また、より具体的に、図14に示した変形例において、インクジェットヘッド202y〜kのそれぞれは、パス幅の整数倍の距離だけ副走査方向における位置を順次ずらして、主走査方向において並べて配設されている。例えば、図14(a)、(b)において、インクジェットヘッド202y〜k内を破線で区切った幅は、パス幅を示す。より具体的に、図14(a)、(b)において、インクジェットヘッド202y〜kのそれぞれについて破線で区切られた4個の領域について、パス幅は、各領域のX方向における幅である。そして、図14(a)に示した構成の場合、インクジェットヘッド202y〜kは、パス幅と同じ距離だけ副走査方向における位置を順次ずらして配設されている。また、図14(b)に示した構成の場合、インクジェットヘッド202y〜kは、パス幅の2倍(2パス分)と同じ距離だけ副走査方向における位置を順次ずらして配設されている。これらのように構成すれば、例えば、各回の主走査動作において、各印刷パスに対応するバンド領域内に形成するインクのドットの色数を適切に低減できる。
また、図14に示した各変形例において、インクドット形成部12は、主走査方向におけるインクジェットヘッド202y〜kの両側に、仮硬化用光源208を有する。これにより、仮硬化用光源208は、媒体上の各位置において各回の主走査動作で形成されたインクのドットについて、同じ位置に対する次の主走査動作が行われる前に仮硬化の状態に硬化させる。また、本硬化用光源206は、媒体上に各位置に対し、当該位置へインク滴を吐出する全ての主走査動作が行われた後に、紫外線を照射する。
この場合も、各回の主走査動作において各バンド領域内に形成するインクのドットの色数を低減することにより、仮硬化用光源208により照射する紫外線の強度について、実用的な範囲で、より容易かつ適切に設定することが可能になる。そのため、これらの変形例においても、例えば、各回の主走査動作で形成するインクのドットについて、適切に仮硬化させることができる。また、これにより、例えば、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
また、これらの変形例においても、マルチパス方式での印刷において、例えば図1〜11を用いて説明をした構成と同様に、印刷パス毎の空間周波数を異ならせる。これにより、例えば、印刷結果の画像に濃淡が生じることを適切に防ぐことができる。
ここで、上記においては、印刷に使用する各色のインクジェットヘッドについて、1色分のインクジェットヘッドに着目し、各印刷パスに対応する空間周波数等の説明をした。しかし、より高画質の印刷を行うためには、例えば、同じ回の主走査動作で同じバンド領域内に形成する画素の選択に関し、媒体上の同じ領域に形成される画素の空間周波数が色毎にも異なるように、画素を選択するマスクについて、パス間のみではなく色毎にも異ならせることも考えられる。このように構成すれば、例えば、複数の印刷パスのそれぞれに対応する空間周波数を異ならせることに加え、印刷に使用する各色に対応する空間周波数も異ならせることができる。また、これにより、より高画質の印刷を適切に行うことができる。そこで、以下、このような構成について、より具体的に説明をする。
図15は、各色に対応する空間周波数を互いに異ならせる場合の具体的な構成の例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図15において、図1〜14と同じ符号を付した構成は、図1〜14における構成と、同一又は同様の特徴を有する。
図15(a)は、各色に対応する空間周波数を互いに異ならせる構成の第1の例を示す図であり、図14(a)に示した構成でインクジェットヘッド202y〜kを配設した場合について、各色に対応する空間周波数を互いに異ならせる構成を示す。
この構成において、インクジェットヘッド202y〜kは、パス幅と同じ距離だけ副走査方向における位置を順次ずらして配設されている。そのため、この場合、図示のように、インクジェットヘッド202y〜kの対するマスクのパターンの設定を同一にすれば、同じバンド領域に対応する各インクジェットヘッドのマスクが異なることになる。
より具体的に、例えば、インクジェットヘッド202y〜kのそれぞれに対し、図7に示した構成と同様のマスクのパターンA〜Dを設定した場合、副走査方向の位置が同じ部分に設定されるパターンは、インクジェットヘッド毎に異なることになる。そのため、このように構成すれば、例えば、各回の印刷パスでインク滴を吐出する画素の選択において、一の印刷パスに対応するバンド領域内での画素間の空間周波数について、例えば、CMYKの各色のインクジェットヘッド毎に適切に異ならせることができる。また、これにより、例えば、最終的な印刷結果の画像に濃淡がより生じ難くい構成を適切に実現し、より高画質の印刷を適切に行うことができる。
また、空間周波数を色毎に異ならせることは、上記以外の構成においても有効である。そのため、例えば、図1〜14において説明をした各種のインクジェットヘッド202y〜kの配置の場合においても、空間周波数を色毎に異ならせることが好ましい。この場合、制御部20(図1参照)は、各回の印刷パスでインク滴を吐出する画素の選択において、一の印刷パスに対応するバンド領域内での画素間の空間周波数について、例えば、CMYKの各色のインクジェットヘッド毎に異ならせる。このように構成すれば、例えば、最終的な印刷結果の画像に濃淡がより生じ難くい構成を適切に実現し、より高画質の印刷を適切に行うことができる。
また、求められる印刷の品質によっては、例えば、N個のインクジェットヘッドについて、各バンド領域内に形成するインクのドットの色数がNよりも小さくなるように配設せず、例えば従来と同様の構成で、各バンド領域内に形成するドットの色数をNにすること等も考えられる。そして、このような場合においても、例えば、各回の印刷パスで媒体上の同じ領域に形成される画素の空間周波数についても、インクの色毎に異ならせることが考えられる。
図15(b)は、各色に対応する空間周波数を互いに異ならせる構成の第2の例を示す図であり、複数のインクジェットヘッド202y〜kについて、副走査方向における位置を揃えて配設した場合の例を示す。この場合、各バンド領域内に形成するドットの色数は、印刷に使用する全ての色の数と同じになる。
このような構成においても、例えば図示のようにマスクのパターンA〜Dのそれぞれを設定することにより、パス間や色間で対応する空間周波数を適切に異ならせることができる。そのため、この場合も、例えば、印刷結果の画像に濃淡が生じ難くい構成を適切に実現できる。
続いて、インクジェットヘッド202y〜kのより具体的な構成について、更に詳しく説明をする。上記において説明をした各構成において、インクジェットヘッド202y〜kのそれぞれとしては、例えば公知のインクジェットヘッドと同一又は同様のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、より具体的に、例えば、複数のノズルが副走査方向へ並ぶノズル列を有するインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、この場合、例えば、インクジェットヘッド202y〜kのそれぞれにおけるノズル列が1列である構成を好適に用いることができる。
また、インクジェットヘッド202y〜kのそれぞれにおけるノズル列の列数については、例えば、複数列にすること等も考えられる。そこで、以下、インクジェットヘッド202y〜kのそれぞれにおけるノズル列の列数を複数にした場合について、更に詳しく説明をする。
図16は、複数列のノズル列302を有するインクジェットヘッド202を用いる場合の構成及び動作の一例について説明をする図である。図16(a)は、インクジェットヘッド202の構成の一例を示す。図16(b)は、このインクジェットヘッド202を用いて行う印刷の動作の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図16において、図1〜15と同じ符号を付した構成は、図1〜15における構成と、同一又は同様の特徴を有する。また、図16におけるインクジェットヘッド202は、図1〜15におけるインクジェットヘッド202y〜kのそれぞれに対応するインクジェットヘッドである。
図16(a)に示すように、この場合、インクジェットヘッド202は、複数のノズルが副走査方向へ並ぶノズル列302を複数列有する。また、複数のノズル列302は、主走査方向へ並ぶ。より具体的に、図示した場合において、インクジェットヘッド202は、図中に符号A〜Dを付して区別した4列のノズル列302を有する。また、それぞれのノズル列302においては、1〜nの番号を付したn個のノズルが並んでいる。
そして、このように構成した場合、例えば、図16(b)に示すように、各回の主走査動作において、媒体50において主走査動作が行われる領域に対し、複数のノズル列302のノズルからインク滴を吐出することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、1回の主走査動作により、ノズル列の数分のパス数での複数の印刷パスで印刷したのと同一又は同様の印刷を行うことができる。
尚、図16(b)において、A1〜Anは、A列のノズル列302における1〜n番目のノズルで形成するインクのドットを示す。また、同様に、B1〜Bnは、B列のノズル列302における1〜n番目のノズルで形成するインクのドットを示す。C1〜Cnは、C列のノズル列302における1〜n番目のノズルで形成するインクのドットを示す。D1〜Dnは、D列のノズル列302における1〜n番目のノズルで形成するインクのドットを示す。また、1走査目、2走査目と示した部分は、間に副走査動作を挟んで行う異なる回の主走査動作でそれぞれ印刷を行う領域をそれぞれ示す。
また、図16(b)においては、図示の便宜上、バンド領域の幅をノズル列の長さと同じにした場合について、1走査目及び2走査目における印刷の様子を示した。しかし、複数列のノズル列302を有するインクジェットヘッド202を用いる場合においても、更に、マルチパス方式で印刷を行ってもよい。
例えば、ノズル列の列数が4本の構成において、印刷パス数を2回とするマルチパス方式での印刷を行うこと等が考えられる。このように構成すれば、例えば、1列のノズル列により8回の印刷パスで印刷を行うのと同様の印刷を行うことができる。また、例えば、ノズル列の列数が4本の構成において、印刷パス数を4回とするマルチパス方式での印刷を行うこと等が考えられる。このように構成すれば、例えば、1列のノズル列により16回の印刷パスで印刷を行うのと同様の印刷を行うことができる。
また、このようなマルチパス方式での印刷を行う場合、例えば、図1〜15を用いて説明をした場合と同様に、各色のインクジェットヘッドにおいて、複数の印刷パスのそれぞれに対応する空間周波数を異ならせることが考えられる。このように構成すれば、例えば、印刷結果の画像に濃淡が生じることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、高品質の印刷を適切に行うことができる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。