JP6242830B2 - 風車翼の損傷検知方法及び風車 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、複数の風車翼の各々に取り付けられたストレインゲージにより各風車翼の歪を検出し、この検出結果を風車翼の異常を監視する装置が記載されている。
この装置では、各翼でのストレインゲージの出力は、応力レベルに比例した電気信号に変換され、応力の変動の大きさを示す成分について、各翼間での差分が算出される。そして、算出された各翼間での差分が所定期間にわたり所定値を超えるときに、いずれかの風車翼に異常があると判定するようになっている。
一方、光ファイバセンサを用いて歪を計測することも知られている。しかしながら、実際には、光ファイバセンサを用いた歪の計測において、外気温の変化に伴い計測誤差が生じる場合がある。このような計測誤差は、光ファイバセンサを用いた歪の計測に基づく損傷検知の精度に影響を及ぼす可能性がある。
少なくとも1枚の風車翼を備える風車ロータにおける前記風車翼の損傷検知方法であって、
前記風車翼の各々に取り付けられ、且つ、長手方向において屈折率が周期的に変化する回折格子部を有する光ファイバセンサに光を入射する光入射ステップと、
前記回折格子部からの反射光を検出する光検出ステップと、
前記光検出ステップで検出した前記反射光の波長の経時変化から前記波長の変動量を示す波長変動指標を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで算出された前記波長変動指標に基づいて、風車翼の損傷の有無を検知する検知ステップと、を備える。
ただし、式(A)において、pは波長−歪換算係数、λoは反射波の波長、λiは初期波長、αは温度係数、ΔTは光ファイバ温度と基準温度の差分(温度変化)をそれぞれ表す。すなわち、歪εzは、検出された波長λoの項を、温度ΔTの項で補正することで算出される。
上記式(A)より、異なる2つの時点t1及びt2のそれぞれにおける歪εz1及びεz2の変化量εz1−εz2は、下記式(B)のようになる。
ただし、初期波長λiは固定値であり、温度変化ΔTはt1とt2との間の期間において実質的に不変であれば上記式(B)の右辺第2項はゼロである。例えば風車ロータの回転周期(通常はおよそ4〜7秒)のような短い期間においては、光ファイバ温度は変化しない(ΔT1≒ΔT2)と考えてよい。よって、この場合には下記式(C)が成立する。
式(C)により示されるように、歪の変化量は反射波の変動量(λo1−λo2)に依存し、光ファイバ温度又は温度変化には依存しない。例えば、季節の違い等により光ファイバセンサの周囲の外気温に差がある場合、光ファイバセンサにより計測される歪の大きさεz自体は温度の変化の影響を受け得る。例えば、外気温の差のため光ファイバ温度に差がある場合において、実際には歪量が同一であっても、温度係数αの精度や光ファイバセンサの個体差に起因して、上記式(A)によるεzの計算結果に差が出る可能性がある。一方、光ファイバセンサの周囲の外気温に差があったとしても、歪の変化量εz1−εz2は、式(C)からわかるように温度の影響を受けない。
上記(1)の方法では、波長の変動量を示す波長変動指標に基づいて風車翼の損傷の有無を検知するので、光ファイバセンサでの反射波の波長の計測値(即ち歪の計測値)に対する温度による影響を実質的に排除することができる。このため、温度が変化する環境下においても精度良好な損傷検知が可能である。
光ファイバセンサでの反射光の波長の経時変化における極大値と極小値との差は、反射光の波長が該極大値となった時刻と該極小値となった時刻との間の期間における反射光の波長の変動の大きさを示す。よって、上記(2)の方法によれば、反射光の波長の極大値と極小値との差を波長変動指標として、風車翼の損傷を検知することができる。
風車ロータの回転に伴って風車翼のアジマス角が変化すると、風車翼の高度も変化する。また、一般的に、高度が高いほうが風速は大きい。このため、風車の運転中、風車ロータの回転に伴い、風速に応じて風車翼に作用する風荷重が周期的に変化するため、風車翼の歪も周期的に変化するとともに、風車翼の歪を示す光ファイバセンサでの反射光の波長も同様に周期的に変化する。上記(3)の方法によれば、風車ロータの回転周期に対応して繰り返して交互に現れる極大値と極小値に基づいて、風車翼の損傷を検知に用いる波長変動指標をより的確に算出することができる。
風により風車翼に作用する荷重は、典型的には、風車翼が最上部に位置するときに最も大きく、風車翼が最下部に位置するときに最も小さい。このため、風車ロータの回転周期をTとしたとき、風車ロータの回転に伴う反射波の波長の極大値および極小値は、およそT/2毎に現れる。しかしながら、この風車ロータの回転に伴う極大値又は極小値以外にも、例えば風速の経時的な変動等により局所的な極大値又は極小値が現れることがある。光ファイバセンサの反射光の波長の経時変化から風車ロータの回転にともなう極大値及び極小値を的確にとらえるためには、このような局所的な極値を排除できることが望ましい。
上記(4)の方法によれば、風車ロータの回転に伴う極大値及び極小値が1回ずつ現れるT/2の期間において、第1極値(極大値又は極小値)が現れた時点から所定の期間tが終了するまでは、第1極値の次の第2極値(極小値又は極大値)の認定を行わないようにしたので、期間tにおいて発生する局所的な極大値又は極小値を排除して波長変動指標をより的確に算出することができる。
光ファイバセンサでの反射光の波長の規定長さの期間における標準偏差は、該期間における反射光の波長のばらつきの大きさ、すなわち変動の大きさを示す。よって、上記(5)の方法によれば、該期間における光ファイバセンサでの反射光の波長の標準偏差を波長変動指標として、風車翼の損傷を検知することができる。
波長の変動量を示す波長変動指標の大きさや変化率は、歪の大きさやその変化率に応じて変化する。また、歪の大きさはやその変化率は、風車翼に発生した損傷の進行の程度により変化する。よって、上記(6)の方法のように、波長変動指標の大きさ又は変化率の規定範囲を予め設定しておくことで、風車翼の損傷を検知することができる。
前記検知ステップでは、前記時間平均算出ステップで算出された前記平均値に基づいて、前記風車翼の損傷を検知する。
上記(7)の方法では、風車ロータの回転周期以上所定の期間における波長変動指標の平均値を用いる。このため、該期間よりも短い期間において、例えば突風などに起因して突発的に歪が増大する等して波長変動指標が急激に増大しても、平均化した波長変動指標を用いるため、より的確に風車翼の損傷を検知することができる。
前記取得ステップで算出された前記波長変動指標が有効データであるか無効データであるかを判定するデータ有効性判定ステップをさらに備え、
前記時間平均算出ステップでは、前記データ有効性判定ステップで有効データであると判定された前記波長変動指標のみを用いて前記平均値を算出する。
上記(8)の方法では、波長変動指標として適した有効データであると判定された波長変動指標のみを用いて平均値を算出するので、より的確に風車翼の損傷を検知することができる。
ここで、波長変動指標の算定に用いられる波長の極大値は、波長変動指標の算定に用いられる波長の極小値よりも大きいのが通常である。ところが、風車翼のピッチ制御や急激な風速変化の影響により、前記極小値が前記極大値よりも大きくなってしまうケースが起こり得る。
上記(9)の方法では、波長変動指標の算出対象である波長の値が前記光ファイバセンサの異常を示すものであるとき、又は、前記極小値が前記極大値よりも大きくなってしまうケース(すなわち、波長変動指標の算出が正常に行われなかったとき)では、これらの波長変動指標を無効データであると判定する。よって、正常に算出された有効データである波長変動指標のみを用いて平均値を算出するので、より的確に風車翼の損傷を検知することができる。
風車翼に加わる荷重は風速に依存するから、光検出ステップで検出される反射光の波長及び取得ステップで取得される波長変動指標は、反射光の波長を検出するときの風速に応じて値がばらつく。上記(10)の方法では、風速が風速規定範囲内であるときに検出した反射光の波長及び該波長に基づく波長変動指標のみを用いて風車翼の損傷を検出するので、風速に対する反射光の波長及び波長変動指標のばらつきの影響を低減することができ、風車翼の損傷検知をより的確に行うことができる。
前記風車ロータは複数の風車翼を備え、
前記複数の風車翼のうち1枚の検出対象風車翼の前記波長変動指標と、他の風車翼のうち1枚以上の比較対象風車翼の前記波長変動指標を反映した基準値との差分を算出する差分算出ステップをさらに備え、
前記検知ステップでは、前記差分算出ステップで算出される前記差分の経時変化に基づいて、前記検出対象風車翼の損傷を検知する。
上記(11)の方法によれば、複数の風車翼のうち1枚の検出対象風車翼の波長変動指標と、他の風車翼のうち1枚以上の比較対象風車翼の波長変動指標を反映した基準値との差分を風車翼の損傷の検知に用いるので、風速の変化等の運転状態による損傷検知に対する影響を排除することができる。このため、風車翼の損傷による異常をより的確に検知することが可能となる。
前記風車ロータは3枚以上の風車翼を備え、
前記風車翼の各々を前記検出対象風車翼として前記差分算出ステップを繰り返すことで、前記風車翼の各々について前記差分を算出し、
前記検知ステップでは、前記風車翼の各々についての前記差分に基づいて、損傷がある風車翼を特定する。
複数の風車翼のうち何れかの風車翼に損傷が生じると、その風車翼が検出対象風車翼であるか否かによって、前記差分の大きさ又は変化率が影響を受ける。したがって、上記(12)の方法のように、各風車翼を検出対象風車翼として繰り返し算出した各風車翼についての前記差分の大きさ又は前記差分の変化率から、損傷がある風車翼を特定することができる。
少なくとも1枚の風車翼を備える風車ロータと、
前記風車翼の各々に取り付けられ、且つ、長手方向において屈折率が周期的に変化する回折格子部を有する光ファイバセンサと、
前記光ファイバセンサに光を入射するための光入射部と、
前記回折格子部からの反射光を検出するための光検出部と、
前記風車翼の損傷を検知するための損傷検知部と、を備え、
前記損傷検知部は、前記光検出部で検出された前記反射光の波長の経時変化から前記波長の変動量を示す波長変動指標を取得し、前記波長変動指標に基づいて、風車翼の損傷の有無を検知するように構成される。
また、上記式(A)より、異なる2つの時点t1及びt2のそれぞれにおける歪εz1及びεz2の変化量εz1−εz2は、上記式(B)のようになる。温度変化ΔTはt1とt2との間の期間において実質的に不変であれば上記式(B)の右辺第2項はゼロである。よって、この場合には上記式(C)が成立する。
式(C)により示されるように、歪の変化量は反射波の変動量(λo1−λo2)に依存し、光ファイバ温度又は温度変化には依存しない。
上記(13)の構成では、波長の変動量を示す波長変動指標に基づいて風車翼の損傷の有無を検知するので、光ファイバセンサでの反射波の波長の計測値(即ち歪の計測値)に対する温度による影響を実質的に排除することができる。このため、温度が変化する環境下においても精度良好な損傷検知が可能である。
光ファイバセンサでの反射光の波長の経時変化における極大値と極小値との差は、反射光の波長が該極大値となった時刻と該極小値となった時刻との間の期間における反射光の波長の変動の大きさを示す。よって、上記(14)の構成によれば、反射光の波長の極大値と極小値との差を波長変動指標として、風車翼の損傷を検知することができる。
光ファイバセンサでの反射光の波長の規定長さの期間における標準偏差は、該期間における反射光の波長のばらつきの大きさ、すなわち変動の大きさを示す。よって、上記(15)の構成によれば、該期間における光ファイバセンサでの反射光の波長の標準偏差を波長変動指標として、風車翼の損傷を検知することができる。
図1及び図2に示すように、風車1は、風車翼3の各々の翼根部3aに取り付けられた光ファイバセンサ12(12A〜12D)と、光入射部17及び光検出部18を含む光源・信号処理ユニット10と、損傷検知部100と、を備える。
広帯域のスペクトルをもった光が光ファイバセンサ12に入射すると、屈折率が周期的に変化する回折格子部での反射は、格子間隔(グレーティング周期)に依存した特定の波長に対してのみ、互いに強めあう方向に干渉する。これによって光ファイバセンサ12は、構成の特定の波長成分のみを反射し、それ以外の波長を透過させる。
光ファイバセンサ12に加わる歪や周囲の温度が変化すると、回折格子部の屈折率や格子間隔が変化し、この変化に応じて反射光の波長が変化する。反射光の波長λoは、近似的に次の式(A’)で表される。
ただし、式(A’)において、εzは光ファイバの歪、λoは反射波の波長、λiは初期波長、αは温度係数、ΔTは光ファイバ温度と基準温度の差分(温度変化)、pは波長−歪換算係数、をそれぞれ表す。なお、温度係数αは、熱膨張係数αΛと熱−光係数αnとの和である(α=αΛ+αn)。αΛは温度による格子間隔の変化を示し、αnは温度による屈折率の変化を示す。
このように、光ファイバセンサ12における反射光の波長λoと初期波長λiとの差分は、光ファイバセンサ12の歪εzや温度ΔTの影響を受ける。よって、初期波長λiが既定値であれば、反射光の波長λoを計測することで、光ファイバセンサ12に生じる歪や光ファイバの温度を検出することができる。
一実施形態では、光ファイバセンサ12は、FBG(Fiber Bragg Grating)センサである。
また、これら4つの光ファイバセンサ12A、12B、12C及び12Dは、光ファイバケーブル16によってこの順に直列に接続されている。光ファイバケーブル16の両端部にはコネクタ(13,15)が設けられ、光ファイバセンサ12A〜12Dと光源・信号処理ユニット10とを接続するための光ファイバケーブル14と、光ファイバセンサ12A〜12Dを直列に接続する光ファイバケーブル16とが、コネクタ13又はコネクタ15を介して接続される。
なお、図2に示す実施形態では、1本の風車翼3に対して4つの光ファイバセンサ12A〜12Dが取り付けられているが、他の実施形態では、各風車翼3に対して、少なくとも1つの光ファイバセンサ12が取り付けられていればよい。一実施形態では、少なくとも風車翼3の腹側21(図2において光ファイバセンサ12Aが取り付けられている箇所)に光ファイバセンサ12が取り付けられる。また、一実施形態では、少なくとも風車翼3の腹側21及び背側22(図2において光ファイバセンサ12Cが取り付けられている箇所)のそれぞれに光ファイバセンサ12が取り付けられる。
また、上述においては、風車翼3の翼根部3aに光ファイバセンサ12が取り付けられた例について説明したが、風車翼3において光ファイバセンサ12が取り付けられる位置は翼根部3aに限定されない。例えば、光ファイバセンサ12は、風車翼3の先端部3b(図1参照)に取り付けられてもよい。また、複数の光ファイバセンサ12が、風車翼3の腹側(HP側)、後縁側、背側(LP側)、及び前縁側のそれぞれにおいて先端部3bの壁面に貼付けられてもよい。
また、風車翼3の翼根部3aと先端部3bの各々に、光ファイバセンサ12が取り付けられてもよい。
光入射部17は、光ファイバセンサ12A〜12Dに光を入射するように構成される。光入射部17は、例えば、広帯域のスペクトルをもつ光を発光可能な光源を有する。
また、光検出部18は、光ファイバセンサ12A〜12Dの各々の回折格子部からの反射光を検出するように構成される。
なお、光ファイバセンサ12A〜12Dは直列に接続されており、光入射部17から各光ファイバセンサ12A〜12Dまでの距離、及び、光ファイバセンサ12A〜12Dから光検出部18までの距離が互いに異なる。このため、光検出部18では、光入射部17により光が発されてから、各光ファイバセンサ12A〜12Dからの反射光が光検出部18により検出されるまでに経過した時間により、検出された各反射光が何れの光ファイバセンサ12によるものであるかを判断することができる。
なお、風車翼3の損傷とは、例えば、風車翼3に生じるクラック等のことをいう。風車翼3においてクラック等を含む損傷が発生及び進行すると、風車翼3の折損などの事故が起きる可能性がある。そこで、風車翼3の損傷検知を適切に行うことにより、例えば風車翼3のメンテナンスを行う時期を適切に判断することができ、風車1の運転を安全に行うことができる。
図3は、一実施形態に係る風車翼の損傷検知方法を示すフローチャートである。図3のフローチャートに示す風車翼3の損傷検知方法では、まず、風車翼3の各々に取り付けられた光ファイバセンサ12A〜12Dに光を入射し(S2:光入射ステップ)、光ファイバセンサ12A〜12Dの回折格子部にて反射された反射光を検出する(S4:光検出ステップ)。次に、光検出ステップ(S4)で検出した反射光の波長の経時変化から、反射光の波長の変動量を示す波長変動指標を取得する(S6:取得ステップ)。そして、取得ステップ(S6)で算出された波長変動指標に基づいて、風車翼3の損傷の有無を検知する(S12:検知ステップ)。
幾つかの実施形態では、取得ステップ(S6)で算出された波長変動指標の時間平均を算出し(S10:時間平均算出ステップ)、検知ステップ(S12)では、時間平均ステップ(S10)で算出された平均値に基づいて風車翼3の損傷の有無を検知してもよい。
また、幾つかの実施形態に係る風車翼3の損傷検知方法では、取得ステップ(S6)で算出された波長変動指標の有効性を判定し、(S8:データ有効性判定ステップ)、時間平均算出ステップ(S10)では、データ有効性判定ステップ(S8)で有効であると判定された波長変動指標のみを用いて、波長変動指標の平均値を算出してもよい。
これらのステップS2〜S12について、以下に説明する。
図4のグラフに見られるように、反射光の波長は、極大値λTnと極小値λBnを繰り返しながら時間の変化とともに変化する。典型的には、極大値λTnと極小値λBnは、風車ロータ5の回転周期に対応して繰り返して交互に現れる。これは、主に以下の理由による。
風車ロータ5の回転に伴って風車翼3のアジマス角が変化すると、風車翼3の高度も変化する。また、一般的に、高度が高いほうが風速は大きい。このため、風車1の運転中、風車ロータ5の回転に伴い、風速に応じて風車翼3に作用する風荷重が周期的に変化するため、風車翼3の歪も周期的に変化するとともに、風車翼3の歪を示す光ファイバセンサでの反射光の波長も同様に周期的に変化する。よって、上述のように、極大値λTnと極小値λBnは、風車ロータ5の回転周期に対応して繰り返して交互に現れる。また、風車ロータ5の回転周期をTとしたとき、風車ロータ5の回転に伴う反射波の波長の極大値λTnおよび極小値λBnは、およそT/2毎に現れる。
すなわち、通常は、風車翼3が最上部に位置するときに風車翼3に作用する風荷重が最も大きくなるため、このときに反射光の波長が極大値λTnとなる。また、通常は、風車翼3が最下部に位置するときに風車翼3に作用する風荷重が最も小さくなるため、このときに反射光の波長が極小値λBnとなる。
図4において、Anは極大値と極小値の差を示す。例えば、A1は、極大値λT1と極小値λB1との差分|λT1−λB1|であり、A2は、極大値λT2と極小値λB1との差分|λT2−λB1|である。A3以降についても同様に算出できる。
このようにして得られる極大値と極小値との差Anは、反射光の波長が極大値となった時刻と極小値となった時刻との間の期間における反射光の波長の変動の大きさを示す。波長の変動量を示す波長変動指標Anに基づいて風車翼の損傷の有無を検知することで、光ファイバセンサでの反射波の波長の計測値(即ち歪の計測値)に対する温度による影響を実質的に排除することができる。このため、温度が変化する環境下においても精度良好な損傷検知が可能である。
そこで、取得ステップ(S6)では、風車ロータ5の回転周期をTとしたとき、反射波の経時変化における極大値または極小値である第1極値(例えばλT1)が現れた時点t0から期間t(但し、0.1T≦t≦0.5T)が終了するまでは、第1極値(λT1)の次の第2極値の認定を行わないようにしてもよい。
このように、風車ロータ5の回転に伴う極大値λTn及び極小値λBnが1回ずつ現れるT/2の期間において、第1極値(極大値又は極小値)が現れた時点t0から所定の期間t(但し、0.1T≦t≦0.5T)が終了するまでは、第1極値の次の第2極値(極小値又は極大値)の認定を行わないようにすることで、期間tにおいて発生する局所的な極大値又は極小値を排除して波長変動指標をより的確に算出することができる。
ただし、上記式(D)において、λoは反射光の波長であり、Nは期間TSDにおけるλoのデータ数であり、mは下記式(E)で表される期間TSDにおけるλoの平均である。
なお、標準偏差σを算出するための規定の期間TSDは特に限定されない。
このデータ有効性ステップ(S8)で波長変動指標として適した有効データであると判定された波長変動指標のみをもちいて、以下に説明する時間平均算出ステップ(S10)で波長変動指標の平均値を算出することで、より的確に風車翼3の損傷を検知することができる。
また、無効データと判定されなかった波長変動指標を有効データとして判定してもよい。
正常に算出された有効データとして判定された波長変動指標のみを用いて時間平均算出ステップ(S10)において平均値を算出することで、より的確に風車翼3の損傷を検知することができる。
風車翼3の損傷を評価するためには、通常、週単位〜月単位等の長期にわたる風車翼3の監視が必要となる。そこで、目的に応じた適切な長さの期間TAVEにおける波長変動指標の平均値を算出することで、風車翼3の損傷検知を的確に行うことができる。
波長変動指標の平均値を算出するための期間TAVEは特に限定されないが、例えば10分としてもよい。
風速が風速規定範囲内であるときに検出した反射光の波長及び該波長に基づく波長変動指標のみを用いて風車翼3の損傷を検出することで、風速に対する反射光の波長及び波長変動指標のばらつきの影響を低減することができ、風車翼の損傷検知をより的確に行うことができる。
一実施形態において、風速規定範囲は、10〜13m/sであってもよい。
具体的には、3本の風車翼3を備える風車1において、各風車翼3の腹側(HP側)21及び背側(LP側)22に取り付けた光ファイバセンサ(12A,12C)を用いて、図3に示すS2〜S12の各ステップを行ったものである。ここで、取得ステップ(S6)では、所定期間における反射光の波長の標準偏差を波長変動指標として算出し、時間平均算出ステップ(S10)では該波長変動指標(反射光の波長の標準偏差)の1時間における平均値を算出している。
図5に示すグラフは、第1翼〜第3翼からなる3枚の風車翼3の腹側(HP側)21及び背側(LP側)22に取り付けられた光ファイバセンサにより得られた反射光の波長について、時間平均算出ステップ(S10)で算出された1時間毎の波長変動指標(反射光の波長の標準偏差)の平均値を、横軸を時間としてプロットしたものである。図5中のHPn及びLPn(但しnは1〜3の整数)は、それぞれ、第n翼の腹側(HP側)21及び背側(LP側)22に取り付けられた光ファイバセンサによる反射光の波長についての標準偏差であることを示す。
なお、図5、図7及び図8のグラフの横軸は時間を示す軸であり、日、月、または年等の特定の単位を示すものではないが、本明細書においては、グラフの説明において用いるための時間の単位を、便宜的に「単位時間」として表記する。
このことから、例えば、検知ステップ(S12)において、波長変動指標の標準偏差が0.1を下回った時に、その風車翼3に損傷が発生しているように判定するように予め閾値を設定しておけば、第18単位時間の時点で、第2翼に損傷が発生していると判断することができる。
この損傷検知方法では、上述において説明した取得ステップ(S6)で波長変動指標を取得し、データ有効性判定ステップ(S8)を経て時間平均算出ステップ(S10)で波長変動指標を算出した後、差分算出ステップ(S14)にて波長変動指標の翼間における差分を算出し、検知ステップ(S16)では、差分算出ステップ(S14)で算出した差分に基づいて、風車翼3の損傷を検知する。
上記基準値としては、例えば、他の風車翼3のうち1枚の比較対象風車翼の波長変動指標(又はその時間平均値)を用いることができる。また、上記基準値として、他の風車翼3のうち2枚以上の比較対象風車翼の波長変動指標(又はその時間平均値)の閉起因値や、他の風車翼3のうち2枚以上の比較対象風車翼と、一枚の検出対象風車翼の波長変動指標(又はその時間平均値)の平均値を用いることもできる。
図7中及び図8中のHPn及びLPn(但しnは1〜3の整数)は、それぞれ、第n翼の腹側(HP側)21及び背側(LP側)22に取り付けられた光ファイバセンサによる反射光の波長についての波長変動指標の時間平均値であることを示す。また、例えばHP1−HP2は、第1翼の腹側(HP側)21と、第2翼の腹側(HP側)21との間における、波長変動指標の時間平均値であることを示す。
これに対し、背側(LP側)22での反射光の波長データに基づいて算出された波長変動指標の差分を示す図8では、第2翼−第3翼間での差分(LP2−LP3)については横軸の第0単位時間〜第15単位時間及びそれ以降にわたり、一定の範囲(例えば−0.4以上0.4以下)に収まっている。その一方で、第1翼−第2翼間での差分(LP1−LP2)、及び第3翼−第1翼間での差分(LP3−LP1)については、横軸が第13単位時間を超えたあたりから急激にその絶対値が増加していることがわかる。このことから、第1翼−第2翼間での差分(LP1−LP2)、及び第3翼−第1翼間での差分(LP3−LP1)の2つの差分の両方に関与している第1翼において、損傷が発生及び進行しているものと特定することができる。
また、波長変動指標(又はその平均値)の差分について予め閾値を設定しておくことで、該差分の経時変化から損傷を検知し、損傷が発生した風車翼3を特定することができる。例えば、図7及び図8に示す例において、波長変動指標の平均値の差分の絶対値が0.4を超えたときに風車翼3のいずれかに損傷が発生しているものと判定するようにしてもよい。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
2 ハブ
3 風車翼
3a 翼根部
4 ナセル
5 風車ロータ
6 タワー
10 信号処理ユニット
12,12A〜12D 光ファイバセンサ
13 コネクタ
14 光ファイバケーブル
15 コネクタ
16 光ファイバケーブル
17 光入射部
18 光検出部
21 腹側
22 背側
23 前縁側
24 後縁側
100 損傷検知部
Claims (15)
- 少なくとも1枚の風車翼を備える風車ロータにおける前記風車翼の損傷検知方法であって、
前記風車翼の各々に取り付けられ、且つ、長手方向において屈折率が周期的に変化する回折格子部を有する光ファイバセンサに光を入射する光入射ステップと、
前記回折格子部からの反射光を検出する光検出ステップと、
前記光検出ステップで検出した前記反射光の波長の風車翼の回転に伴う周期的な経時変化から該経時変化における前記波長の時間的な変動成分を示す波長変動指標を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで算出された前記波長変動指標に基づいて、風車翼の損傷の有無を検知する検知ステップと、を備えることを特徴とする風車翼の損傷検知方法。 - 前記取得ステップでは、前記経時変化における前記波長の極大値と前記波長の極小値との差を前記波長変動指標として算出することを特徴とする請求項1に記載の風車翼の損傷検知方法。
- 前記取得ステップでは、前記風車ロータの回転周期に対応して繰り返して交互に現れる前記極大値と前記極小値との差を前記波長変動指標として算出することを特徴とする請求項2に記載の風車翼の損傷検知方法。
- 前記取得ステップでは、前記風車ロータの回転周期をTとしたとき、前記極大値または前記極小値である第1極値が現れた時点から期間t(但し、0.1T≦t≦0.5T)が終了するまでは、前記第1極値の次の第2極値の認定を行わないことを特徴とする請求項2又は3に記載の損傷検知方法。
- 前記取得ステップでは、規定長さの期間における前記波長の標準偏差を前記波長変動指標として算出することを特徴とする請求項1に記載の風車翼の損傷検知方法。
- 前記検知ステップでは、前記波長変動指標の大きさ又は変化率が規定範囲を逸脱したとき、前記風車翼の損傷を検知する請求項1乃至5の何れか一項に記載の風車翼の損傷検知方法。
- 前記風車ロータの回転周期以上の長さの期間における、前記取得ステップで算出した前記波長変動指標の平均値を算出する時間平均算出ステップをさらに備え、
前記検知ステップでは、前記時間平均算出ステップで算出された前記平均値に基づいて、前記風車翼の損傷を検知することを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の風車翼の損傷検知方法。 - 前記取得ステップで算出された前記波長変動指標が有効データであるか無効データであるかを判定するデータ有効性判定ステップをさらに備え、
前記時間平均算出ステップでは、前記データ有効性判定ステップで有効データであると判定された前記波長変動指標のみを用いて前記平均値を算出することを特徴とする請求項7に記載の風車翼の損傷検知方法。 - 前記データ有効性判定ステップでは、前記波長の値が前記光ファイバセンサの異常を示すものであるとき、又は、前記取得ステップで算出された前記波長変動指標が、前記波長の極大値と、該極大値よりも大きい前記極小値との差から得られたものであるときに、前記波長変動指標は無効データであると判定することを特徴とする請求項8に記載の風車翼の損傷検知方法。
- 前記検知ステップにおいて、前記波長のうち、風速が風速規定範囲内であるときに取得した波長のみを用いて前記風車翼の損傷を検出する請求項1乃至9の何れか一項に記載の風車翼の損傷検知方法。
- 前記風車ロータは複数の風車翼を備え、
前記複数の風車翼のうち1枚の検出対象風車翼の前記波長変動指標と、他の風車翼のうち1枚以上の比較対象風車翼の前記波長変動指標を反映した基準値との差分を算出する差分算出ステップをさらに備え、
前記検知ステップでは、前記差分算出ステップで算出される前記差分の経時変化に基づいて、前記検出対象風車翼の損傷を検知することを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の風車翼の損傷検知方法。 - 前記風車ロータは3枚以上の風車翼を備え、
前記風車翼の各々を前記検出対象風車翼として前記差分算出ステップを繰り返すことで、前記風車翼の各々について前記差分を算出し、
前記検知ステップでは、前記風車翼の各々についての前記差分に基づいて、損傷がある風車翼を特定する請求項11に記載の風車翼の損傷検知方法。 - 少なくとも1枚の風車翼を備える風車ロータと、
前記風車翼の各々に取り付けられ、且つ、長手方向において屈折率が周期的に変化する回折格子部を有する光ファイバセンサと、
前記光ファイバセンサに光を入射するための光入射部と、
前記回折格子部からの反射光を検出するための光検出部と、
前記風車翼の損傷を検知するための損傷検知部と、を備え、
前記損傷検知部は、前記光検出部で検出された前記反射光の波長の風車翼の回転に伴う周期的な経時変化から該経時変化における前記波長の時間的な変動成分を示す波長変動指標を取得し、前記波長変動指標に基づいて、風車翼の損傷の有無を検知するように構成されたことを特徴とする風車。 - 前記損傷検知部は、前記経時変化における前記波長の極大値と前記波長の極小値との差を前記波長変動指標として算出するように構成されたことを特徴とする請求項13に記載の風車。
- 前記損傷検知部は、規定長さの期間における前記波長の標準偏差を前記波長変動指標として算出するように構成されたことを特徴とする請求項13に記載の風車。
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