JP6241309B2 - ガラス化学強化用再生塩の製造方法及び化学強化ガラスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、化学強化処理に用いる溶融塩を再生させたガラス化学強化用再生塩の製造方法及び化学強化ガラスの製造方法に関する。
携帯電話、スマートフォンおよびタブレット端末といったディスプレイ装置などのカバーガラスおよびディスプレイのガラス基板には、イオン交換等で化学強化処理したガラス(以下、単に「化学強化ガラス」と称することがある。)が用いられている。
イオン交換による化学強化処理は、ガラス中に含まれる小さいイオン半径の金属イオン(例えば、Naイオン)とより大きいイオン半径の金属イオン(例えば、Kイオン)とを置換することにより、ガラス表面に圧縮応力層を生じさせてガラスの強度を向上させる処理である。
硝酸カリウムを含む溶融塩(硝酸カリウム溶融塩)中において、ガラス中のNaと溶融塩中のKとをイオン交換することにより化学強化ガラスを製造する場合、化学強化処理によりガラス中のNaイオンが溶融塩中に溶け出すことで溶融塩中のNa濃度が高くなる。化学強化の特性のひとつである表面圧縮応力(以下、CSともいう)は、硝酸カリウム溶融塩中のNa濃度増加に伴い低下するため、得られる化学強化ガラスのCSが基準値を下回ると、当該溶融塩を廃棄し、新たな溶融塩を使用する必要がある。
化学強化処理によって所望のCSが得られなくなった劣化した溶融塩は、通常放冷固化した後、小ブロックに粉砕してから廃棄される。しかし、当該処理方法だと劣化溶融塩(以下、劣化塩ともいう)を再度使用することができず、新しい塩を多量に追加しなければならない等の課題があった。
そこで特許文献1には、ガラス成分中のLi又はCsが不純物として溶融塩中に混入することが当該溶融塩のイオン交換能力が低下する原因であるとして、高温溶融状態の塩を槽内の水中にシャワー状に降らせ、当該水中に溶融塩を溶解、冷却及び分離することにより、再生塩を得る方法が開示されている。
特開昭58−194761号公報
ところで、硝酸カリウム等の硝酸塩は加熱時に酸素を発生させる性質を有し、特に硝酸塩が粉末状であると爆発の危険性があることが知られている。このような理由から、粉末状の硝酸塩の取り扱いには細心の注意を要する。これに加え、例えば日本では、消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)、危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)及び危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年二月十七日自治省令第一号)で定められた危険物判定試験により、硝酸塩が粉粒状の物品(目開きが2mmの網ふるいを回転させながら毎分160回の打振を与えてふるった場合に、当該網ふるいを30分間で通過するものが10%以上のもの)である場合に消防法上の危険物第一類(酸化性固体)と判定される場合があり、輸送及び保管に大幅な法的制約を受ける虞もある。
特許文献1に記載の方法は、劣化塩を再度使用することができる点で有用であるが、再生塩の取り扱い上の問題について何ら考慮されていなかった。
そこで本発明では、劣化塩の廃棄及び廃水コストの増加を抑制し、取り扱い性に優れたガラス化学強化用再生塩の製造方法及び化学強化ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研鑽を積んだ結果、化学強化処理に用いられた後の劣化塩を水に溶解し、水溶液を冷却して再生塩を析出させる際に所定の冷却速度を超えないように冷却することによって、再生塩の粉末率を下げることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記(1)〜(4)に関するものである。
(1) ガラス化学強化用再生塩の製造方法であって、
ガラス化学強化処理後の塩を水に溶解する溶解工程と、
前記溶解工程で得られた水溶液を冷却して再生塩を析出させる析出工程と、を備え、
前記析出工程の全ての期間において、前記水溶液を8.5℃/hを超えない冷却速度で冷却することを特徴とするガラス化学強化用再生塩の製造方法。
(2) 前記析出工程の後、前記再生塩を遠心分離又は濾過により脱水する脱水工程をさらに備えることを特徴とする(1)に記載のガラス化学強化用再生塩の製造方法。
(3) 前記ガラス化学強化用再生塩が主成分として硝酸カリウムを含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載のガラス化学強化用再生塩の製造方法。
(4) 上記(1)〜(3)に記載のガラス化学強化用再生塩の製造方法で得られた再生塩を用いてガラスを化学強化処理することを特徴とする化学強化ガラスの製造方法。
本発明に係るガラス化学強化用再生塩の製造方法によれば、従来廃棄されていた化学強化処理後の劣化塩を化学強化処理に再度使用することができるため、経済的に有用である。また、劣化塩の廃棄量を少なくすることができるため、廃棄する劣化塩の運搬等に伴う危険、コストを減らすこともでき、環境への負荷も低減できる。さらに、析出工程の全ての期間において水溶液を8.5℃/hを超えない冷却速度で冷却することで、再生塩の粉末率が低くなり、再生塩の取り扱い性及び安全性が向上する。
また、本発明に係る化学強化ガラスの製造方法によれば、新品の塩を用いて化学強化した化学強化ガラスと同等の表面圧縮応力、表面圧縮応力深さ(以下、DOLともいう)、機械的強度及び透過率を有する化学強化ガラスを製造することができる。
図1は、ガラス化学強化処理後の溶融塩に含まれ得る塩の、水100gに対する溶解性の測定値を示した溶解度曲線である。 (a)は水溶液を8.5℃/hを超えない冷却速度で約100℃から室温(約25℃)まで16時間かけて冷却することで得られた再生塩を、脱水し、乾燥させてある程度砕いた写真を示す図であり、(b)は、(a)を拡大した写真を示す図である。 (a)は水溶液を8.5℃/h以上の冷却速度で約100℃から室温(約25℃)まで2時間かけて冷却することで得られた再生塩を、脱水し、乾燥させた写真を示す図であり、(b)は、(a)を拡大した写真を示す図である。 冷却速度と粉末率の関係を示すグラフである。 冷却速度の算出方法を説明する温度履歴を示すグラフである。 劣化硝酸カリウムと再生硝酸カリウムに含まれる不純物分析結果を示す表である。 (a)は表面圧縮応力(CS)を示すグラフであり、(b)は表面圧縮応力深さ(DOL)を示すグラフである。 リングオンリング試験による破壊強度に基づくワイブルプロットを示すグラフである。 透過率測定による400〜1200nmの波長領域の透過率を示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。また、本明細書において、「Na濃度」と表記した際は、Naとしての濃度を意味するものである。
<溶融塩の再生>
本発明は、ガラス化学強化用再生塩の製造方法であって、ガラス化学強化処理後の溶融塩を水に溶解する溶解工程と、該溶解工程で得られた水溶液を冷却して再生塩を析出させる析出工程と、を備え、該析出工程の全ての期間において、水溶液を8.5℃/hを超えない冷却速度で冷却することを特徴とする。
ガラスの化学強化処理は、原料であるガラスをガラス強化用溶融塩(以下、単に溶融塩ともいう)中に浸漬することにより、ガラス中のNaイオンが溶融塩中のKイオンとイオン交換することで、ガラス表面に圧縮応力層が形成される処理である。
本発明における溶融塩は、無機カリウム塩を含有する。無機カリウム塩としては化学強化を行うガラスの歪点(通常500〜600℃)以下に融点を有するものが好ましく、本発明においては硝酸カリウム(融点330℃)を主成分として含有する溶融塩が好ましい。硝酸カリウムが主成分であれば、ガラスの歪点以下で溶融状態であり、かつ使用温度領域において取り扱いが容易となることから好ましい。ここで主成分とは溶融塩における含有量が50質量%以上であることを意味する。
溶融塩はさらに、KCO、NaCO、KHCO、NaHCO、KPO、NaPO、KSO、NaSO、KOH及びNaOHからなる群より選ばれる少なくとも1の塩を含有してもよい。
例えば硝酸カリウムを主成分とする溶融塩にKCOを添加してガラスの化学強化処理を行う場合には、溶融塩におけるKCOの含有量を0.1質量%以上とし、化学強化処理温度を350〜500℃とすると、化学強化処理時間は1分〜10時間が好ましく、5分〜8時間がより好ましく、10分〜4時間がさらに好ましい。
またさらに、本発明における化学強化処理に用いる溶融塩には、本発明の効果を阻害しない範囲で他の化学種を含んでいてもよく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等のアルカリ塩化塩やアルカリホウ酸塩などが挙げられる。これらは単独で添加しても、複数種を組み合わせて添加してもよい。
ガラスの化学強化処理に用いる溶融塩は、公知の方法で製造することができ、該溶融塩を用い、公知の方法によりガラスの化学強化処理を行うことができる。
化学強化処理によって、ガラスに所望のCSを生じさせられなくなった劣化溶融塩を、劣化溶融塩の融点未満の温度まで放冷又は冷却することにより、劣化溶融塩は固化する。溶融塩として硝酸カリウムを含む溶融塩を用いた場合、劣化塩には、硝酸カリウム及び硝酸ナトリウムが含まれる。また、溶融塩に添加する塩の種類によって、劣化塩には添加した塩のカリウム塩やナトリウム塩も含まれることとなる。すなわち、例えば炭酸カリウム(KCO)を添加した場合には、劣化塩には炭酸カリウムや炭酸ナトリウムも含まれる。
劣化塩中のNa濃度は、ガラスに生じさせたいCSにもよるが、一般的に3000〜20000質量ppmである。
劣化塩中には、化学強化処理を行う前の溶融塩中と比べてNaが高い濃度で存在している。このNa濃度の高い固体状態の劣化塩を取り出し、水に溶解させる(溶解工程)。
劣化塩を溶解する水としては、過剰に不純物を含有してさえいなければ特に制限はなく、純水、蒸留水、工水等を用いることができる。
劣化塩溶解後の水溶液の温度は該塩の融点未満の温度であり、60〜120℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。水溶液の温度は、ウォーターバス、オイルバス、恒温器等、公知の方法で適宜調整することができる。
なお、水溶液中の劣化塩の濃度は高いほど好ましく、60℃における飽和溶解度まで溶解していることがより好ましく、水溶液の沸点に達した時点での飽和溶解度まで溶解していることがさらに好ましい。
劣化塩を溶解させる際は、水溶液を攪拌しながら溶解させることが、水溶液の濃度分布を均一にできることから好ましい。攪拌速度は通常50〜2000rpmが好ましく、100〜1000rpmがより好ましい。
劣化塩が水に完全に溶解したら、水溶液を冷却する(析出工程)。また、劣化塩に含まれる所望の塩について飽和溶解度まで溶解させる場合には、塩の種類や劣化塩に含まれる割合によっては、その他の塩が溶けきれずに固体のまま水溶液中に残留する場合がある。その場合には、濾過等により溶解していない塩を除去し、濾液を上記方法により冷却する。
溶解工程における最大の塩の溶解度と、冷却した際の温度における塩の飽和溶解度との差により、冷却後の水溶液には析出物が生じる(晶析)。硝酸カリウムを含む溶融塩を用いた場合、劣化塩及び当該析出物には、硝酸カリウム及び硝酸ナトリウムが含まれる。また、溶融塩に添加する塩の種類によって、該析出物には添加した塩に応じたカリウム塩やナトリウム塩が含まれることとなる。
図1は、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムについて、水に対する溶解度の温度依存性を示した測定値の溶解度曲線(g/水100g)である。
例えば、硝酸カリウムを主成分とし、他に硝酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムの3種類の塩を含む劣化塩を、沸点まで加熱した水溶液に溶解させた場合、溶解工程における各化学種の最大の溶解度と、冷却した際の温度における各化学種の飽和溶解度との差分の塩が固体として析出する。再生塩として使用したい塩を硝酸カリウムとした場合、劣化塩の主成分である硝酸カリウムは、前記差分に相当する量の固体として析出する。一方で、他の化学種は、主成分である硝酸カリウムと比較して劣化塩に含まれている量が少ないため、溶解工程におけるそれぞれの溶解度は小さく、冷却した際の温度における各化学種の飽和溶解度を通常超えない。すなわち、他の化学種は固体としてほとんど析出しない。そのため、当該析出物はもとの劣化塩に比べて硝酸カリウムを高い割合で含んでおり、ガラス化学強化処理の溶融塩として再度使用することができ、「再生塩」と呼ぶことができる。
ここで、劣化塩が溶解した水溶液を冷却するに際し、水溶液を8.5℃/hを超えない冷却速度で冷却(徐冷)する。冷却は自然冷却(放冷)、風冷、水冷、氷冷等、公知の方法を用いることができる。冷却は沸点近傍から、例えば20℃以下且つ凝固点以上の温度まで行うことが好ましく、10℃以下且つ凝固点以上の温度まで冷却することが、収率を上げる点からより好ましい。冷却速度は、冷却時の水溶液の温度履歴から求めることができ、温度履歴は劣化塩が溶解した水溶液中に熱電対等の温度センサを配置することで得られる。温度センサは、複数用いることが好ましく、この場合、温度履歴は複数の温度センサの平均値から得られる。
このように水溶液を8.5℃/hを超えない冷却速度で冷却することで、8.5℃/h以上の冷却速度で冷却(急冷)する場合に比べ、再生塩の粉末率、即ち、目開きが2mmの網ふるいを回転させながら毎分160回の打振を与えてふるった場合に、当該網ふるいを30分間で通過するものの割合を小さくすることができる。粉末率は10%未満であることが取り扱い性及び安全性の点で好ましい。
本発明において、冷却速度とは、任意の時点から1時間における平均冷却速度のことをいう。例えば、冷却開始時点での冷却速度とは、冷却開始時点から1時間において測定された温度から得られる温度履歴に対して最小二乗法を用いることにより求めた近似直線の傾きである。これにより、析出工程における任意の時点での冷却速度を一義的に決定できる。
なお、特に冷却速度の下限値は限定されるものではないが、生産性の点で冷却速度が1.0℃/h以上であることが好ましく、3.0℃/h以上であることがより好ましい。
図2(a)は水溶液を8.5℃/hを超えない冷却速度で約100℃から室温(約25℃)まで16時間かけて徐冷することで得られた再生塩を、脱水し、乾燥させてある程度砕いた写真を示す図であり、図2(b)は、図2(a)を拡大した写真を示す図である。また、図3(a)は水溶液を8.5℃/h以上の冷却速度で約100℃から室温(約25℃)まで2時間かけて急冷することで得られた再生塩を、脱水し、乾燥させた写真を示す図であり、図3(b)は、図3(a)を拡大した写真を示す図である。
図2(a)及び(b)と、図3(a)及び(b)とを比較すると、水溶液を8.5℃/hを超えない冷却速度で冷却(徐冷)した方が、急冷した方に比べて、再生塩が塊で存在し、1つ1つの結晶が大きく成長していることがわかる。これに対し、急冷した方は、再生塩が粉末状で存在し、小さな結晶がたくさん存在している(大きな結晶が見えない)ことがわかる。実際に、粉末率を測定してみると、徐冷した方の粉末率は8.7%であったのに対し、急冷した方の粉末率は24.7%であった。
これは、徐冷した場合、劣化塩が溶解した水溶液を収容する容器の底面又は側面に接する部分から核が発生し、ゆっくり成長することでそれぞれの核が大きな結晶を形成するのに対し、急冷した場合、核の成長よりも早く次々と新たな核が発生し結晶が大きく成長しないためと推測される。
以上のように、本発明では、高温領域と低温領域の間での硝酸カリウムの飽和溶解度の差分を利用して、再結晶法により、高Na濃度の劣化塩を取り扱いが容易な低Na濃度の塩に再生することができる。
得られた再生塩は水溶液中に析出しているため、再度ガラスの化学強化処理に使用するためには、固液分離を行う。固液分離は、濾過、遠心分離等の公知の方法を用いることができる。
固液分離により再生塩を回収した後、化学強化処理に再利用する前によく遠心分離又は濾過等の方法で脱水処理することが好ましい(脱水工程)。脱水することによって、再生塩中の水分量を少なくすることができる。
また、遠心分離又は濾過等の脱水処理に続き、乾燥処理により再生塩を乾燥させてもよい。乾燥温度は通常40〜200℃であればよく、80〜200℃がより好ましい。乾燥時間は通常10分〜12時間であればよく、1〜4時間がより好ましい。また、乾燥時に加熱と同時に減圧してもよい。乾燥は、ホットプレートや加熱真空乾燥等の公知の方法を用いることができる。
脱水工程を経た再生塩は、ガラスの化学強化処理を行う温度まで加熱することで、ガラス化学強化処理用の溶融塩として使用することができる。
なお、本発明における化学強化処理に供されるガラスは、成形、化学強化処理による強化が可能な組成を有するものである限り、種々の組成のものを使用することができる。具体的には、例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等が挙げられる。中でも、アルミノシリケートガラスはガラス中のNa含有量が多いため、化学強化処理におけるNa置換量も多くなり、溶融塩の劣化が激しい。このため、本発明に係る溶融塩の再生方法の効果を顕著に得ることができることから好ましい。
化学強化処理に供されるガラスの製造方法、成形方法については特に限定されず、公知の方法に基づいて製造、成形することができる。また、化学強化処理に供するガラスの厚みや研磨の有無も任意である。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[粉末率測定]
化学強化処理によって所望のCSが得られなくなった硝酸カリウムの劣化塩(以下、単に劣化塩ともいう)を純水に溶解し、約85〜100℃から室温(25℃)まで冷却装置の冷却能力を変えながら冷却することで、硝酸カリウムの再生塩(以下、単に再生塩ともいう)を得た。冷却速度を測定するための温度センサは劣化塩を溶解した水溶液中の異なる3箇所に配置し、3つの温度センサから得られた温度から温度履歴を作成し、図5に示すように冷却開始時点から1時間における温度履歴の近似直線の傾きから冷却開始時点での冷却速度を算出した(後述の例3、4のみ表示)。この再結晶法による劣化塩の再生は、冷却速度が異なるよう冷却能力を変えて例1〜例6の6回行った。なお、いずれの例においても、析出工程の全ての期間における冷却速度の中で、冷却開始時点での冷却速度が最も高かった。以下、本実施例においては、単に冷却速度と言った場合、冷却開始時点での冷却速度を指す。
粉末率は得られた再生塩を水溶液から取り出し、目開きが2mmの網ふるいを回転させながら毎分160回の打振を与えてふるった場合に、当該網ふるいを30分間で通過するものの割合を測定した。表1に得られた冷却速度と粉末率を示す。
図4は、表1で得られた冷却速度を横軸に、粉末率を縦軸にグラフ化したものである。
図4から明らかなように、冷却速度と粉末率との間には、冷却速度が高くなればなるほど粉末率が上昇する関係が見られた。このことから、冷却速度を制限することにより、粉末率を低く抑えることができることが分かった。図4から、硝酸塩の取り扱い性及び安全性に優れる目安となる粉末率10%未満を実現するためには、冷却速度を8.5℃/h未満とすればよいことが実証された。したがって、表1中、例1〜例4が本発明の実施例に相当し、例5、6が比較例に相当する。
[不純物分析]
化学強化処理によって所望のCSが得られなくなった劣化塩(劣化KNO)に含まれる不純物とその量を測定した。測定は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;ICP)発光分析法により、ICP発光分析装置(日立ハイテク製 SPS5520)を用いて行った。
また、この劣化塩を純水に溶解し、得られた水溶液を8.5℃/hを超えない冷却速度で徐冷し、得られた再生塩(再生KNO)に含まれる不純物とその量を、劣化塩の分析と同様の方法で測定した。結果を図6に示す。また、図6には、比較のため、新品の硝酸カリウム(新品KNO、以下、単に新品塩ともいう)に含まれる不純物分析の結果も示している。
図6から、再結晶法により得られた再生塩において、硝酸カリウム中のNa、Cr、NO の濃度が大幅に低下したことが見受けられる。このように、新品塩には劣るものの、再結晶法により硝酸カリウムの高純度化が実現できた。
[化学強化ガラス評価]
続いて組成の異なる3種類のガラス(サンプル1〜3)を所定の大きさに切り出し、再生塩および新品塩を用いて以下に記載の各条件で化学強化処理を行い、化学強化ガラスのCS、DOL、リングオンリング強度、及び透過率を測定した。
A CS及びDOL
−化学強化条件−
硝材:サンプル1〜3
形状:50mm×50mm
厚さ:0.7mm
強化温度:450℃
強化時間:1時間
−測定条件−
化学強化処理後のガラスのCS及びDOLは表面応力測定装置(折原製作所製FSM−6000)で測定した。
図7(a)はCSを示すグラフであり、図7(b)はDOLを示すグラフである。図中、同じ形状の印(四角、菱形、三角)は同じ組成のガラスを表しており、黒塗りの印は再生塩、白抜きの印は新品塩を用いて化学強化処理したものである。図7(a)及び図7(b)を比較すると、ガラスの組成の違いによらず、新品塩を用いて化学強化処理しても、再生塩を用いて化学強化処理しても、同等のCS及びDOLが得られた。これは、図7(a)及び図7(b)に示すように、同じ溶融塩を用いて複数回の化学強化処理を行った場合も同様の結果となった。すなわち、CS及びDOLにおいて、再生塩による化学強化ガラスへの悪影響はほとんど見受けられなかった。
B リングオンリング強度
−化学強化条件−
硝材:サンプル1
形状:50mm×50mm
厚さ:0.56mm
強化温度:450℃
強化時間:1時間
−リングオンリング試験条件−
上リング径10mm、下リング径30mm、クロスヘッドスピード1.0mm/分のリングオンリング試験で化学強化処理後のガラスの破壊荷重を測定した。破壊試験機として、オリエンテック社製UTA−5kNを用いた。
図8はリングオンリング試験による破壊強度に基づくワイブルプロットを示している。縦軸は、破壊確率(Crack Probability)、横軸は破壊強度(RoR strength)を表わしている。図8から、新品塩を用いて化学強化処理しても、再生塩を用いて化学強化処理しても、得られた化学強化ガラスは同等の破壊強度を有していることが確認できた。すなわち、破壊強度においても、再生塩による化学強化ガラスへの悪影響はほとんど見受けられなかった。
C 透過率
−化学強化条件−
硝材:サンプル1
形状:50mm×50mm
厚さ:0.7mm
強化温度:450℃
強化時間:1時間
−透過率測定−
化学強化処理後のガラスの透過率を分光光度計(UV3100PC島津製作所製)を用いて測定した。
図9は400〜1200nmの波長領域の透過率を示している。図9から、1回目(1Batch後)の化学強化ガラスの透過率は、新品塩を用いた場合に対し、再生塩を用いた場合に0.1%未満の僅かな低下が見られたが、32回目(32Batch後)の化学強化ガラスの透過率は、再生塩を用いた場合であっても新品塩を用いた場合と同等の透過率であった。したがって、透過率においても、再生塩による化学強化ガラスへの悪影響はほとんど見受けられなかった。
このように、再生塩を用いて化学強化処理した化学強化ガラスは、いずれの測定においても、新品塩を用いて化学強化処理した化学強化ガラスと同等の特性を有しており、新品塩と同様に、再生塩を用いて化学強化処理できることが実証された。
本発明によれば、化学強化ガラスに供された使用済みの劣化塩に対して、再生処理を施すことで、新品の塩と同等の性能を持つ再生塩を得ることができる。当該再生処理により、使用済み劣化塩の廃棄量を減らすことができ、環境負荷を低減しつつ、化学強化ガラスの生産が低コストで可能となり、高い生産性の実現が可能となる。

Claims (4)

  1. ガラス化学強化用再生塩の製造方法であって、
    ガラス化学強化処理後の塩を水に溶解する溶解工程と、
    前記溶解工程で得られた水溶液を冷却して再生塩を析出させる析出工程と、を備え、
    前記析出工程の開始時において、前記水溶液を4.1℃/h以上の冷却速度で冷却し、かつ、
    前記析出工程の全ての期間において、前記水溶液を8.5℃/hを超えない冷却速度で冷却することを特徴とするガラス化学強化用再生塩の製造方法。
  2. 前記析出工程の後、前記再生塩を遠心分離又は濾過により脱水する脱水工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のガラス化学強化用再生塩の製造方法。
  3. 前記ガラス化学強化用再生塩が主成分として硝酸カリウムを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス化学強化用再生塩の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス化学強化用再生塩の製造方法で得られた再生塩を用いてガラスを化学強化処理することを特徴とする化学強化ガラスの製造方法。
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