以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載する具体的な数値は、あくまで一例であり、これに限定されるものではない。
(第1実施形態)
まず、図1および図2を参照して、第1実施形態によるプリンタ装置100の構成について説明する。なお、プリンタ装置100は、「画像形成装置」の一例である。
図1に示すように、プリンタ装置100は、CPU(Central Processing Unit)1と、NVRAM(Non Volatile Random Access Memory)2と、ROM(Read Only Memory)3と、RAM4とを備える。また、プリンタ装置100は、エンジン部5と、エンジンI/F(インターフェース)6と、表示パネル部7と、パネルI/F8と、埋め込み情報生成部9と、記憶ディスク部10と、ディスクI/F11と、ホストI/F12と、画像処理部13とを備える。
CPU1は、ROM3に格納された制御プログラムや、ユーザによる表示パネル部7の操作や、ホストI/F12に接続された後述するホストコンピュータ500からの制御コマンドなどに基づいて、プリンタ装置100の各部を制御するように構成されている。また、NVRAM2は、ユーザによる表示パネル部7の操作の内容などのデータを記憶する不揮発性のRAMである。また、RAM4は、CPU1のワークメモリや、入力データ用のバッファや、プリントデータ用のページバッファや、ダウンロードフォント用のメモリなどとして使用される。
また、エンジン部5は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色からなるプロセスカラーに対応するカラートナー5aと、略無色透明の記録剤であるクリアトナー5bとを用いて用紙などに画像を印刷する機構である。カラートナー5aは、画像の階調を再現する用途に主として用いられる。また、クリアトナー5bは、画像に所定の埋め込み情報(詳細は後述する)を付与する用途と、画像に光沢を付与する用途とに主として用いられる。なお、カラートナー5aは、「第1トナー」および「有色トナー」の一例である。また、クリアトナー5bは、「第2トナー」および「特色トナー」の一例である。また、エンジンI/F6は、エンジン部5と、プリンタ装置100のエンジン部5以外の各部との間の通信インターフェースとして機能する。
表示パネル部7は、タッチパネル形式の入出力部であり、プリンタ装置100の状態の表示や、ユーザのモード選択指示の入力などに用いられる。たとえば、第1実施形態では、プリンタ装置100は、通常動作モード(後述する図5および図6参照)と、トナー消費量低減モード(後述する図7〜図9参照)との2つのモードを有し、ユーザは表示パネル部7を操作することにより上記2つのモードの選択・指定を行うことが可能である。このユーザの操作結果は、NVRAM2に記憶される。なお、パネルI/F8は、表示パネル部7と、プリンタ装置100の表示パネル部7以外の各部との間の通信インターフェースとして機能する。
また、第1実施形態では、ユーザは、表示パネル部7を操作することにより、埋め込み情報付加モードの選択を行うことが可能である。具体的には、ユーザは、表示パネル部7を操作することにより、不正コピー防止用の地紋データを画像データに埋め込むか否かや、印刷される書類が原本であるか否かを示すバーコードデータを画像データに埋め込むか否かなどの選択・指定を行うことができる。ここで、埋め込み情報生成部9は、ユーザにより埋め込み情報付加モードが選択・指定された場合に、そのモードに対応する所定のパターン情報を生成して、後述するXデータを生成するように構成されている。また、第1実施形態では、ユーザは、表示パネル部7を操作することにより、出力画像の光沢度を指定する光沢度指定モードの設定を行うことが可能である。
記憶ディスク部10は、フォントデータや、プログラムや、印刷データなどを記憶するための記憶部(たとえば、ハードディスク)である。また、ディスクI/F11は、記憶ディスク部10と、プリンタ装置100の記憶ディスク部10以外の各部との間の通信インターフェースとして機能する。また、ホストI/F12は、RGB画像データを出力するホストコンピュータ500(たとえば、PC:Personal Computer)に接続されている。このホストI/F12は、ホストコンピュータ500とプリンタ装置100との間の通信インターフェースとして機能する。なお、ホストコンピュータ500からプリンタ装置100に出力されるRGB画像データは、テキスト、グラフィックおよびイメージの3種類のオブジェクトに分かれており、プリンタ装置100が解釈可能なデータ形式となっている。
画像処理部13は、ホストコンピュータ500から入力されるRGB画像データと、埋め込み情報生成部9により生成されるパターン情報に対応するXデータとに基づいて、エンジン部5のカラートナー5aの各色(シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック)にそれぞれ対応するC信号、M信号、Y信号およびK信号と、エンジン部5のクリアトナー5bの色(透明)に対応するT信号とからなる擬似中間調処理画像データを出力するように構成されている。なお、Xデータとは、主走査・副走査ともにRGBデータと同一の画素数を有するデータであり、どの画素に埋め込み情報を表すパターンを埋め込むかを示す1ビットのデータと、画像データがテキスト、グラフィックまたはイメージのいずれに該当するかを示す2ビットのデータとからなる合計3ビットのデータである。
図2に示すように、画像処理部13は、色変換処理部14と、特殊トナー画像生成部15と、総量規制部16と、中間調処理部17とを含む。なお、色変換処理部14、特殊トナー画像生成部15および総量規制部16は、それぞれ、「第1決定部」、「第2決定部」および「削減部」の一例である。また、色変換処理部14は、色空間変換部14aと、墨処理部14bとを有する。
色空間変換部14aは、RGB色空間に対応する画像データを変換する機能を有する。たとえば、色空間変換部14aは、RGB色空間に対応する画像データを、C’(シアン)、M’(マゼンタ)およびY’(イエロー)で表現される色空間に対応する画像データに変換したり、輝度情報を用いてグレースケール画像に変換したりすることが可能である。
また、墨処理部14bは、色空間変換部14aからの出力信号(C’M’Y’信号)に応じてK(ブラック)信号を生成する処理(墨処理)を行うとともに、C’M’Y’信号からK信号に対応する部分を除去する下色除去処理(UCR:Under Color Removal処理)を行うように構成されている。ここで、墨処理部14bから出力される信号は、エンジン部5のカラートナー5aの各色(C、M、YおよびK)に対応している。すなわち、墨処理部14bから出力される信号の総和(CMYK信号)の値は、エンジン部5のカラートナー5aの使用量に対応している。
特殊トナー画像生成部15は、墨処理部14bから出力されたCMYK信号と、上記Xデータとに基づいて、透明画像データ(T信号)を生成するように構成されている。この特殊トナー画像生成部15から出力されるT信号の値は、エンジン部5のクリアトナー5bの使用量に対応している。
ここで、第1実施形態では、総量規制部16は、特殊トナー画像生成部15から出力されたCMYK信号の値とT信号の値との総和が所定の上限値を超えないように規制することにより、色変換処理部14(墨処理部14b)および特殊トナー画像生成部15によりそれぞれ決定されたカラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を削減する機能を有する。この総量規制部16は、プロセスに過大な負荷を与えないようにするとともに、定着不良を起こさないようにするために設けられている。
具体的には、総量規制部16は、トナー消費量低減モードが設定されていない状態の通常動作モードにおいて、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を、クリアトナー5bの用途に応じた削減方式で、所定の閾値(第1閾値)以下に削減するように構成されている。詳細には、総量規制部16は、クリアトナー5bが画像に所定の埋め込み情報を付与する用途に用いられるか否かに応じて削減方式を切り替えることにより、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を削減するように構成されている。
たとえば、総量規制部16は、クリアトナー5bが画像に埋め込み情報を付与する用途に用いられる場合には、カラートナー5aの使用量を優先的に削減する第1削減方式(後述する図5および図6参照)で、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を削減するように構成されている。また、総量規制部16は、クリアトナー5bが画像に埋め込み情報を付与する用途に用いられない場合(画像に光沢を付与する用途に用いられる場合)には、クリアトナー5bの使用量を優先的に削減する第2削減方式(後述する図7〜図9参照)で、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を削減するように構成されている。
また、総量規制部16は、ユーザの設定に応じて、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を、上記第1閾値よりも小さい第2閾値以下に削減することも可能なように構成されている。すなわち、総量規制部16は、トナー消費量低減モードが設定された場合には、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を第2閾値以下に削減するように構成されている。そして、この場合においても、総量規制部16は、クリアトナー5bの用途に応じた削減方式で、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を第2閾値以下に削減するように構成されている。
また、後述するように、総量規制部16は、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を第2閾値以下に削減する場合(トナー消費量低減モードが設定されている場合)において、クリアトナー5bが画像に光沢を付与する用途で用いられる場合には、クリアトナー5bが画像に埋め込み情報を付与する用途で用いられる場合に比べて、少なくとも画像のハイライト領域におけるクリアトナー5bの使用量を削減するように構成されている。なお、中間調処理部17は、総量規制部16から出力されるCMYKT信号に対応する画像データに対して、所定のディザリング処理を施すように構成されている。
次に、図3〜図9を参照して、第1実施形態によるプリンタ装置100の画像処理部13の動作について説明する。
まず、図3および図4を参照して、画像処理部13の動作時における特殊トナー画像生成部15の処理フローについて説明する。この処理フローは、色空間変換部14aから特殊トナー画像生成部15に、CMYK信号に対応する画像データと、Xデータとが入力された場合に開始される。
この処理フローにおいては、まず、図3に示すように、ステップS1において、色空間変換部14aから入力された画像データ中に、地紋データやバーコードデータなどの埋め込み情報に対応する画像データが存在するか否かを判断する処理が行われる。このステップS1の判断処理は、色空間変換部14aから入力されるXデータの内容に基づいて行われる。
上記ステップS1において、埋め込み情報に対応する画像データが存在すると判断された場合には、ステップS2に進む。この場合、クリアトナー5bは、画像に埋め込み情報を付加する用途に用いられる。そして、ステップS2において、クリアトナー5bの使用量に対応するT(透明)信号の値が179に設定される。なお、この値179は、8ビットの2進数で表されるデータの最大値255の約70%に該当する。そして、処理が終了される。
一方、上記ステップS1において、埋め込み情報に対応する画像データが存在しないと判断された場合には、ステップS3に進む。そして、ステップS3において、色空間変換部14aから入力された画像データが、グラフィックオブジェクトまたはイメージオブジェクトのいずれか一方に該当するか否かを判断する処理が実行される。このステップS3の判断処理も、上記ステップS1の判断処理と同様に、色空間変換部14aから入力されるXデータの内容に基づいて行われる。
ステップS3において、色空間変換部14aから入力された画像データが、グラフィックオブジェクトおよびイメージオブジェクトのいずれにも該当しないと判断された場合(テキストオブジェクトに該当すると判断された場合)には、ステップS4に進む。この場合、クリアトナー5bは、画像に埋め込み情報を付加する用途にも画像に光沢を付与する用途にも用いられることはない。そして、ステップS4において、クリアトナー5bの使用量に対応するT信号の値が0に設定される。そして、処理を終了する。
一方、ステップS3において、色空間変換部14aから入力された画像データが、グラフィックオブジェクトまたはイメージオブジェクトのいずれか一方に該当すると判断された場合には、ステップS5に進む。この場合、クリアトナー5bは、光沢を付与する用途に主として用いられる。
ステップS5においては、クリアトナー5bの使用量に対応するT信号の値がユーザの設定に応じた値(光沢度指定モードにおけるユーザの指定に応じた値)に設定される。たとえば、図4に示すように、ユーザが光沢度指定モードにおいて「光沢なし」という設定を行っていた場合には、クリアトナー5bの使用量に対応するT信号の値が0に設定される。また、ユーザが「光沢弱」という設定を行っていた場合には、T信号の値が75に設定される。また、ユーザが「光沢強」という設定を行っていた場合には、T信号の値が135に設定される。そして、処理を終了する。
次に、図5および図6を参照して、第1実施形態によるプリンタ装置100においてトナー消費量削減モードが設定されていない場合におけるカラートナー5aおよびクリアトナー5bの総使用量の削減方式の詳細について説明する。なお、図5および図6は、総量規制部16に入力されるCMYK信号の値と、総量規制部16から出力されるCMYK信号の値(およびCMYK信号にT信号を加えたCMYKT信号の値)との関係を示したグラフである。
まず、図5を参照して、トナー消費量削減モードが設定されておらず、かつ、クリアトナー5bが画像に埋め込み情報を付与する用途に用いられる場合における削減方式について説明する。この場合においては、クリアトナー5bにより表現される透明画像データ(T信号)が重要であるため、総量規制部16から出力されるT信号の値(クリアトナー5bの使用量に対応する値)は、比較的大きい値(一定値)に設定される。たとえば、図5に示すように、T信号の値をT1とすると、T1=179に設定される。この値T1は、図5の2本の実線グラフ間の上下方向の間隔に相当する。
ここで、第1実施形態によるプリンタ装置100の印刷工程において許容されるカラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和をA1(=714)とする。すなわち、総量規制部16が、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を714以下に削減するように構成されているものとする。この場合、総量規制部16から出力されるCMYK信号の値(カラートナー5aの使用量に対応する値)の上限値をA2とすると、A2=A1(714)−T1(179)=535となる。
したがって、図5に示すように、総量規制部16は、入力信号の総和(CMYK信号)の値が上限値である535以下の場合には、入力信号をそのまま出力信号(CMYK信号)として出力する。また、総量規制部16は、入力信号の値が535を超えた場合には、出力信号の値が535以下になるように、出力信号の調整(削減)を行う。すなわち、総量規制部16は、出力信号の値が一定値(535)に保たれるように出力信号(CMYK信号)の調整(削減)を行う。
上記削減プロセスについてもう少し具体的に説明すると、総量規制部16に入力されるC信号、M信号、Y信号およびK信号の値をそれぞれC1、M1、Y1およびK1とし、総量規制部16から出力されるC信号、M信号、Y信号およびK信号の値をそれぞれC2、M2、Y2およびK2とした場合、これらのパラメータの間には、下記の関係式(1)〜(4)が成立する。
K2=K1 …(1)
C2=α×C1 …(2)
M2=α×M1 …(3)
Y2=α×Y1 …(4)
なお、上記の式(2)〜(4)において、α=(A1−K1)/(C1+M1+Y1)である。
次に、図6を参照して、トナー消費量削減モードが設定されておらず、かつ、クリアトナー5bが画像に埋め込み情報を付与する用途に用いられない場合(画像に光沢を付与する用途に用いられる場合)における削減方式について説明する。この場合、総量規制部16から出力されるT信号の値(クリアトナー5bの使用量に対応する値)は、基本的に、光沢度指定モードにおけるユーザの指定に応じた値(図4参照)に設定される。
しかしながら、クリアトナー5bが画像に光沢を付与する用途に用いられる場合では、クリアトナー5bにより表現される透明画像データ(T信号)は、上記埋め込み情報ほどには重要でなく、むしろカラートナー5aを用いた階調の再現の方が重要である。このため、クリアトナー5bが画像に光沢を付与する用途に用いられる場合では、T信号の値が削減されることなく一定に保たれていた上記図5の場合と異なり、総量規制部16は、T信号の値を優先的に削減する。すなわち、クリアトナー5bが画像に光沢を付与する用途に用いられる場合におけるT信号の値(図6の2本の実線グラフ間の上下方向の間隔)をT2とすると、この値T2は、図6に示すように、画像のハイライト領域(入力信号の値が0以上579以下の領域)、ミドル領域(入力信号の値が579よりも大きく、かつ、816以下の領域)およびシャドウ領域(入力信号の値が816よりも大きい領域)のそれぞれにおいて互いに異なる値となる。
たとえば、ユーザが光沢度指定モードにおいて「光沢強」という設定を行った場合、光沢制御に用いられるT信号の値(クリアトナー5bの使用量に対応する値)をT2とすると、T2=135(図4参照)に設定される。したがって、この場合、総量規制部16から出力されるCMYK信号の値(カラートナー5aの使用量に対応する値)の上限値をA3とすると、A3=A1(714)−T2(135)=579となる。
これにより、図6に示すように、総量規制部16は、入力信号(CMYK信号)の値が上限値である579以下の場合(画像のハイライト領域が形成される場合)には、入力信号をそのまま出力信号(CMYK信号)として出力する。そして、総量規制部16は、入力信号の値が579を上回るにしたがって、T信号の値T2を135から10まで徐々に減らす調整(削減)を行う。具体的には、入力信号の値が579よりも大きく、かつ、816以下の場合(画像のミドル領域が形成される場合)には、総量規制部16は、T信号の値T2を135から10まで徐々に減らす調整(削減)を行う。そして、入力信号の値が816よりも大きい場合(画像のシャドウ領域が形成される場合)には、T信号の値T2を10のまま一定に保つ調整を行う。このようにクリアトナー5bの使用量を削減しても、カラートナー5aの各色の重なりによって元々ある程度の光沢感は確保されているため、十分な光沢感を得ることが可能である。
次に、図7〜図9を参照して、第1実施形態によるプリンタ装置100においてトナー消費量削減モードが設定されている場合におけるカラートナー5aおよびクリアトナー5bの総使用量の削減方式の詳細について説明する。
まず、図7および図8を参照して、トナー消費量削減モードが設定されており、かつ、クリアトナー5bが画像に埋め込み情報を付与する用途に用いられる場合における削減方式の詳細について説明する。この場合においても、上記図5の場合と同様に、クリアトナー5bにより表現される透明画像データ(T信号)が重要であるため、総量規制部16から出力されるT信号の値(クリアトナー5bの使用量に対応する値)は、比較的大きい値(一定値)に設定される。しかしながら、この図7および図8の場合においては、トナー消費量削減モードが設定されているので、T信号の値は、上記図5の場合におけるT信号の値T1(179)よりも小さい値に設定するのが好ましい。そこで、図7に示すように、クリアトナー5bの使用量とユーザの情報認識率との関係性を予め実験的に測定しておき、情報認識率が下がり始める手前のクリアトナー5bの使用量を、T信号の値T3として採用する。すなわち、T3=165(一定値)に設定する。
ここで、トナー消費量削減モードが設定されている場合において許容されるカラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和をB1(=678)とする。この場合、総量規制部16から出力されるCMYK信号の値(カラートナー5aの使用量に対応する値)の上限値をB2とすると、B2=B1(678)−T3(165)=513となる。したがって、図8に示すように、総量規制部16は、入力信号(CMYK信号)の値が上限値である513以下の場合には、入力信号をそのまま出力信号(CMYK信号)として出力する。また、総量規制部16は、入力信号の値が513を超えた場合には、出力信号の値が513以下になるように、出力信号の調整(削減)を行う。すなわち、総量規制部16は、出力信号の値が一定値(513)に保たれるように、出力信号(CMYK信号)の値の調整(削減)を行う。なお、このとき、T信号の値T3(図8の2本の実線グラフ間の上下方向の間隔)は、165のまま一定に保たれている。
次に、図9を参照して、トナー消費量削減モードが設定されており、かつ、クリアトナー5bが画像に埋め込み情報を付与する用途に用いられない場合(画像に光沢を付与する用途に用いられる場合)における削減方式について説明する。この場合においても、上記図6の場合と同様に、総量規制部16は、クリアトナー5bの使用量に対応するT信号の値を優先的に削減する処理を行う。ここで、この図9の場合においては、上記図6の場合と異なり、トナー消費量削減モードが設定されているため、総量規制部16は、T信号の値を優先的に削減しつつ、CMYK信号の値も上記図6よりも大きく削減する。
ここで、総量規制部16から出力されるT信号の値(クリアトナー5bの使用量に対応する値)は、基本的に、光沢度指定モードにおけるユーザの指定に応じた値(図4参照)に設定される。たとえば、ユーザが光沢度指定モードにおいて「光沢強」という設定を行っており、かつ、トナー消費量削減モードが設定されていない上記図6の場合では、T信号の値T2は、10以上135以下の範囲内で変動する。しかしながら、この図9の場合では、上記図6の場合と異なり、トナー消費量削減モードが設定されているため、ユーザが光沢度指定モードにおいて「光沢強」という設定を行っていた場合、T信号の値T4は、上記図6の範囲よりも狭い10以上108以下の範囲内で変動する。これにより、図9の場合では、総量規制部16から出力されるCMYK信号の値(カラートナー5aの使用量に対応する値)の上限値をB3とすると、B3=B1(678)−T2の最小値(10)=668となる。なお、T4の最大値108は、上記図6における値T2の最大値135の8割に該当する。
図9に示すように、総量規制部16は、入力信号(CMYK信号)の値が816よりも大きい場合(画像のシャドウ領域が形成される場合)には、T信号の値T4を最小値である10のまま一定に保つ調整を行う。そして、総量規制部16は、入力信号の値が816以下になるにしたがって、T信号の値T4を最小値である10から徐々に大きくする調整を行う。なお、T信号の値T4が最大値である108になった場合、入力信号の値は560になっている。これにより、総量規制部16は、入力信号の値が816以下であり、かつ、560よりも大きい場合(画像のミドル領域が形成される場合)には、T信号の値T4を最小値である10から最大値である108まで徐々に大きくする調整を行う。そして、総量規制部16は、入力信号の値が560以下の場合(画像のハイライト領域が形成される場合)には、入力信号をそのまま出力信号(CMYK信号)として出力するとともに、T信号の値T4を108から10まで徐々に減らす調整を行う。このようにハイライト領域のクリアトナー5bの使用量を削減しても、ハイライト領域では元々カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和が少ないので、ある程度の光沢感を得ることは可能である。
次に、図10−1、図10−2および図10−3を参照して、画像のミドル領域が形成される場合における画像処理部13の色空間変換部14a、墨処理部14bおよび総量規制部16のそれぞれからの出力データの一例について説明する。
画像のミドル領域が形成される場合においては、一例として、まず、図10−1および図10−2に示すように、画像処理部13の墨処理部14bによりUCR処理が行われることによって、カラートナー5aのC、MおよびYに対応する出力が減少するとともに、Kの出力が増加する。そして、図10−2および図10−3に示すように、総量規制部16により、クリアトナー5bのTに対応する出力が削減される。
次に、図11−1、図11−2および図11−3を参照して、画像のハイライト領域が形成される場合における画像処理部13の色空間変換部14a、墨処理部14bおよび総量規制部16のそれぞれからの出力データの一例について説明する。
画像のハイライト領域が形成される場合においては、一例として、まず、図11−1および図11−2に示すように、画像処理部13の墨処理部14bによりUCR処理が行われることによって、カラートナー5aのC、MおよびYに対応する出力が減少するとともに、Kの出力が増加する。そして、図11−2および図11−3に示すように、総量規制部16により、クリアトナー5bのTに対応する出力が削減される。
上記のように、画像のミドル領域が形成される場合(図10−1〜図10−3参照)、および、画像のハイライト領域が形成される場合(図11−1〜図11−3参照)のいずれにおいても、総量規制部16は、カラートナー5aのC、M、YおよびKに対応する出力を大きく削減することなく、クリアトナー5bのTに対応する出力を主として削減する。したがって、カラートナー5aの階調が大きく損なわれることはない。
第1実施形態では、上記のように、総量規制部16は、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和(トナーの総使用量)を、クリアトナー5bの用途に応じた削減方式で、第1閾値(図5および図6参照)以下に削減するように構成されている。これにより、クリアトナー5bの用途に応じて、画像の階調の再現とトナーの総使用量の削減との両立を図ることが可能な最適な削減方式を選択することができる。その結果、画像の階調の再現性を確保しながら、トナーの総使用量を適切に削減することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、総量規制部16は、クリアトナー5bが画像に所定の埋め込み情報を付与する用途に用いられるか否かに応じて削減方式を切り替えることにより、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を削減するように構成されている。これにより、クリアトナー5bが画像に埋め込み情報を付与する用途に用いられるか否かに応じて、容易に、画像の階調の再現とトナーの総使用量の削減との両立を図ることが可能な最適な削減方式を選択することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、総量規制部16は、クリアトナー5bが画像に埋め込み情報を付与する用途に用いられる場合には、カラートナー5aの使用量を優先的に削減する第1削減方式(図5および図8参照)で、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を削減するように構成されている。これにより、クリアトナー5bの確保を優先する必要がある場合(クリアトナー5bが画像に埋め込み情報を付与する用途に用いられる場合)に、クリアトナー5bが削減されるのを抑制することができるので、画像に埋め込み情報を確実に付与しながら、トナーの総使用量を削減することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、総量規制部16は、クリアトナー5bが画像に埋め込み情報を付与する用途に用いられない場合には、クリアトナー5bの使用量を優先的に削減する第2削減方式(図6および図9参照)で、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を削減するように構成されている。これにより、クリアトナー5bの確保を優先する必要がない場合(クリアトナー5bが画像に光沢を付与する用途に用いられる場合)に、カラートナー5aの使用量の削減が優先されて、画像の階調の再現性が十分に確保されなくなるのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、総量規制部16は、ユーザの設定に応じて、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を、クリアトナー5bの用途に応じた削減方式で、第1閾値(図5および図6参照)よりも小さい第2閾値(図8および図9参照)以下に削減することも可能なように構成されている。これにより、ユーザの設定に応じて、画像の階調の再現性を確保しながら、トナーの総使用量をさらに削減することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、総量規制部16は、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量の総和を第2閾値以下に削減する場合(図7〜図9参照)において、クリアトナー5bが画像に所定の埋め込み情報を付与する用途に用いられない場合(図9参照)には、クリアトナー5bが埋め込み情報を付与する用途に用いられる場合(図8参照)に比べて、少なくとも画像のハイライト領域におけるクリアトナー5bの使用量を削減するように構成されている。これにより、クリアトナー5bが不必要に使用されるのを適切に抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、図1、図2および図12〜図14を参照して、第2実施形態によるプリンタ装置200について説明する。なお、プリンタ装置200は、「画像形成装置」の一例である。この第2実施形態では、トナー消費量削減モードが設定されていない場合に、パイルハイト(カラートナー5aおよびクリアトナー5bにより用紙の表面に形成される層の高さ)が略均一になるように画像形成が行われる例について説明する。
この第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、画像処理部213(図1参照)の特殊トナー画像生成部215(図2参照)は、上記図3の処理フローと同様の処理フローに基づいて動作する。しかしながら、第2実施形態では、上記図3のステップS5において実行される処理の内容(クリアトナー5bの使用量に対応するT信号の値の決定の仕方)が上記第1実施形態と異なる。
具体的には、第2実施形態による特殊トナー画像生成部215は、図12に示すように、T信号の出力を、入力信号の総和(CMYK信号)に対する関数として決定する。なお、図12の2本の実線グラフのうち、上側の実線グラフは、ユーザが光沢度指定モードにおいて「光沢強」という設定を行った場合に対応し、下側の実線グラフは、ユーザが光沢度指定モードにおいて「光沢弱」という設定を行った場合に対応している。
これにより、第2実施形態では、総量規制部216(図2参照)は、トナー消費量削減モードが設定されておらず、かつ、クリアトナー5bが画像に光沢を付与する用途に用いられる場合におけるカラートナー5aおよびクリアトナー5bの総使用量を、図13のように調整(削減)する。
すなわち、図13に示すように、第2実施形態では、トナー消費量削減モードが設定されておらず、かつ、クリアトナー5bが画像に光沢を付与する用途に用いられる場合において、カラートナー5aの使用量に対応する出力信号(CMYK信号)の値の上限は、入力信号の値に応じて変化する。そして、クリアトナー5bの使用量に対応するT信号の値T5(図13の2本の実線グラフ間の上下方向の間隔)は、上記CMYK信号にT信号を加えたCMYKT信号の値(パイルハイトに対応する値)が入力信号の値によらず一定(714)になるように設定される。
また、第2実施形態では、総量規制部216(図2参照)は、トナー消費量削減モードが設定されており、かつ、クリアトナー5bが画像に光沢を付与する用途に用いられる場合におけるカラートナー5aおよびクリアトナー5bの総使用量を、以下の図14のように調整(削減)する。
すなわち、図14に示すように、第2実施形態では、トナー消費量削減モードが設定されており、かつ、クリアトナー5bが画像に光沢を付与する用途に用いられる場合において、カラートナー5aの使用量に対応する出力信号(CMYK信号)の値の上限は、上記図13と同様に、入力信号の値に応じて変化する。ここで、図14の場合では、上記図13の場合と異なり、トナー消費量削減モードが設定されているため、パイルハイト(CMYKT信号の値に対応する値)を必ずしも均一にする必要がない。このため、図14では、画像のハイライト領域が形成される場合(入力信号の総和の値が560以下の場合)において、クリアトナー5bの使用量に対応するT信号の値T6が、上記図13の場合に比べて大きく削減されている。ただし、この図14の場合では、ハイライト領域におけるT信号の値T6が一定値(118)に保たれている。
なお、第2実施形態のその他の構成、動作および効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
次に、図1、図2および図15を参照して、第3実施形態によるプリンタ装置300について説明する。なお、プリンタ装置300は、「画像形成装置」の一例である。この第3実施形態では、トナー消費量削減モードが設定されている場合にパイルハイトが必ずしも均一にならない上記第2実施形態と異なり、トナー消費量削減モードが設定されている場合でもパイルハイトが略均一になるように画像形成が行われる例について説明する。
第3実施形態においても、上記第2実施形態と同様に、画像処理部313(図1参照)の特殊トナー画像生成部315(図2参照)は、上記図3の処理フローと同様の処理フローに基づいて動作する。しかしながら、第3実施形態では、上記図3のステップS5において実行される処理の内容(クリアトナー5bの使用量に対応するT信号の値の決定の仕方)が上記第2実施形態と異なる。
すなわち、第3実施形態では、総量規制部316(図2参照)は、トナー消費量削減モードが設定されており、かつ、クリアトナー5bが画像に光沢を付与する用途に用いられる場合におけるカラートナー5aおよびクリアトナー5bの総使用量を、以下の図15のように調整(削減)する。
図15に示すように、第3実施形態では、画像のミドル領域およびシャドウ領域が形成される場合(入力信号の総和(CMYK信号)の値が560よりも大きい場合)において、出力信号(CMYK信号およびCMYKT信号)に対応する2本の実線グラフが重なっている。すなわち、第3実施形態では、画像のミドル領域およびシャドウ領域が形成される場合において、T信号の値(クリアトナー5bの使用量に対応する値)が0に設定されている。このように設定されていても、ミドル領域およびシャドウ領域では、カラートナー5aの各色(C、M、YおよびK)が元々大きく重なっており、既にある程度の光沢感が得られているため、特に問題は生じない。そして、第3実施形態では、図15に示すように、画像のハイライト領域が形成される場合(入力信号の総和の値が560以下の場合)において、パイルハイトが均一になるように、T信号の値T7が、入力信号の値に応じた値に設定されている。これにより、カラートナー5aおよびクリアトナー5bの使用量を低減しながら、パイルハイトの均一化が図られている。
なお、第3実施形態のその他の構成、動作および効果は、上記第2実施形態と同様である。
ここで、上記第1〜第3実施形態によるプリンタ装置で実行される画像形成プログラム(画像処理プログラム)は、ROMなどに予め組み込まれて提供される。この画像形成プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、CD−ROMや、フレキシブルディスク(FD)や、CD−Rや、DVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録された状態で提供されるように構成されていてもよい。また、この画像形成プログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワークを介したダウンロードにより提供されるように構成されていても良い。また、この画像形成プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布されるように構成されていても良い。
また、上記画像形成プログラムは、上記各部(色変換処理部、特殊トナー画像生成部および総量規制部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしては、CPU(プロセッサ)がROMから上記画像形成プログラムを読み出して実行することにより、上記各部が主記憶装置上にロードされ、色変換処理部、特殊トナー画像生成部および総量規制部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、本発明を画像形成装置の一例としてプリンタ装置に適用する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機や、複写機や、スキャナ装置や、ファクシミリ装置などの、プリンタ装置以外の画像形成装置にも適用することができる。
また、上記実施形態では、本発明の特色トナー(第2トナー)の一例として、クリアトナーを用いる例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、特色トナーとして、緑色やオレンジ色などのプロセスカラー以外の特色トナーを用いることも可能である。このようなプロセスカラー以外の特色トナーを用いると、通常ではガマット範囲外となるような色を再現することができ、色の再現範囲が広がる事が主な利点の一つとしてあげられる。
ここで、上記のようなプロセスカラー以外の特色トナーは、原稿画像の高精度な色分解に用いるだけではなく、企業のロゴマークなど、特定の色で特定のロゴマークをスタンプする等の目的で用いられる事がある。このような場合には、特色トナーが原稿(入力)画像の色再現手段として用いられるとともに、画像に特定の情報を付与するための手段としても用いられる。
そこで、上記第1〜第3実施形態に示したようなクリアトナーおよびカラートナーの総量規制の手法を、上記特色トナーおよびカラートナーの総量規制の手法に置き換えることが可能である。すなわち、特色トナーを特定の色で特定のロゴマークをスタンプするなどの目的で用いることは、画像に広義の埋め込み情報を付与することであると考えられるため、たとえば上記図6および図9に示したように、特色トナーをカラートナーよりも優先的に確保する必要がある。その一方、特色トナーを高精度な色再現を求めるために使用している場合は、特色トナーをカラートナーよりも優先的に確保する必要はなく、K以外のカラートナーと同様の総量規制処理を行う。
具体的には、特色トナーとしてグリーン(G)トナーを用いる場合において、総量規制部に入力されるC信号、M信号、Y信号、K信号およびG信号の値をそれぞれC3、M3、Y3、K3およびG1とし、総量規制部から出力されるC信号、M信号、Y信号、K信号およびG信号の値をそれぞれC4、M4、Y4、K4およびG2とした場合、これらのパラメータの間には、下記の関係式(5)〜(9)が成立する。
K4=K3 …(5)
C4=β×C3 …(6)
M4=β×M3 …(7)
Y4=β×Y3 …(8)
G2=β×G1 …(9)
なお、上記の式(6)〜(9)において、β=(出力信号の値の上限値−K)/(C+M+Y+G)である。
なお、上記では、特定の色を用いて特定のロゴマークをスタンプするなどの目的で特色トナーを用いる場合について説明したが、特色トナーを地紋データやマーキングデータの記述、バーコードデータの記述に用いた場合でも同様である。