以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明を適用した車両10の一例を示す概略図である。車両10のパワートレーンは、動力源としてエンジン11および走行用モータ12を有している。すなわち、車両10は、動力の発生原理が異なる2種類の動力源を備えたハイブリッド車である。また、パワートレーンは、バリエータとしての無段変速機13を有しており、無段変速機13は、プライマリプーリ14およびセカンダリプーリ15を備えている。プライマリプーリ14の長手方向の端には、トルクコンバータ16を介してエンジン11が連結されている。トルクコンバータ16は、オイルの運動エネルギにより動力伝達を行う流体伝動装置であり、トルクを増幅する機能を有する。
一方、プライマリプーリ14の長手方向の他端には、走行用モータ12が連結されている。走行用モータ12のステータ78には、インバータ79を介して蓄電装置が接続されている。走行用モータ12は、発電機および電動機として機能する所謂モータ・ジェネレータである。このため、蓄電装置の電力を走行用モータ12に供給して電動機として起動させる制御と、プライマリ軸32の動力で走行用モータ12を発電機として起動させ、発生した電力を蓄電装置に蓄電する制御とを実行可能である。
また、セカンダリプーリ15には、ヒューズクラッチ17を介して駆動輪出力軸18が連結されている。この駆動輪出力軸18には、ディファレンシャル機構19およびアクスル軸20を介して駆動輪21が連結されている。また、エンジン11のクランク軸22には、駆動ベルト23を介して発電機24が連結されている。発電機24は、発電機とエンジン始動用モータを兼ねた、所謂ISG(Integrated Starter Generator)である。
トルクコンバータ16とプライマリプーリ14との間の動力伝達経路には、解放状態と締結状態とに切り換えられる入力クラッチ30が設けられている。入力クラッチ30を解放状態に切り換えることにより、プライマリプーリ14とエンジン11とを切り離すことが可能となる。具体的には、車両10の走行モードとしてモータ走行モードが選択されると、入力クラッチ30を解放し、かつ、エンジン11を停止させ、かつ、走行用モータ12の動力を駆動輪21に伝達する制御を実行可能である。
一方、入力クラッチ30を締結状態にすると、プライマリプーリ14とエンジン11とが動力伝達可能に接続される。例えば、車両10の走行モードとしてパラレル走行モードが選択されると、入力クラッチ30が係合され、かつ、走行用モータ12およびエンジン11の動力が、無段変速機13を経由して駆動輪21に伝達される。
なお、車両制御装置70は、運転者がモード切替スイッチを操作することにより、モータ走行モードとパラレルモードとを切り換える構成、または、運転者がモード切替スイッチを操作することなく、車両10の状況に応じて自動的に切り替えられる構成のいずれでもよい。
エンジン11及び走行用モータ12から、駆動輪21に至る動力伝達経路に設けられた無段変速機13は、走行用モータ12のロータ軸31に連結されるプライマリ軸32と、プライマリ軸32と平行なセカンダリ軸33とを有している。プライマリ軸32にはプライマリプーリ14が設けられており、プライマリプーリ14の背面側にはプライマリ室34が区画されている。プライマリプーリ14は、プライマリ軸32の長手方向に移動可能な可動シーブと、プライマリ軸32の長手方向には移動不可能な固定シーブとを有する。プライマリ室34の油圧は、プライマリプーリ14の可動シーブの背面に作用する。
また、セカンダリ軸33にはセカンダリプーリ15が設けられており、セカンダリプーリ15は、セカンダリ軸33の長手方向に移動可能な可動シーブと、セカンダリ軸33の長手方向には移動不可能な固定シーブとを有する。セカンダリプーリ15の背面側にはセカンダリ室35が区画されている。セカンダリ室35の油圧は、セカンダリプーリ15の可動シーブの背面に作用する。さらに、セカンダリ室35内にはリターンスプリングが設けられており、リターンスプリングは、セカンダリプーリ15の可動シーブを固定シーブに近づける向きの力を生じる。
さらに、プライマリプーリ14およびセカンダリプーリ15には駆動チェーン36が巻き掛けられている。このため、リターンスプリングの力によってセカンダリプーリ15は駆動チェーン36に挟圧力を加えている。
そして、プライマリ室34における作動油量を制御すると、駆動チェーン36の張力と、プライマリプーリ14の可動片に加わる推力との関係に基づきプライマリプーリ14の可動片が長手方向に移動し、プライマリプーリ14における駆動チェーン36の巻き掛け径が変化する。例えば、プライマリ室34の作動油量が増加すると、プライマリプーリ14における駆動チェーン36の巻き掛け径が大きくなり、無段変速機13でアップシフトが行われる。
これに対して、プライマリ室34の作動油量が減少すると、プライマリプーリ14における駆動チェーン36の巻き掛け径が小さくなり、無段変速機13でダウンシフトが行われる。このようにして、プライマリ軸32の回転速度と、セカンダリ軸33の回転速度との比、つまり、変速比を無段階に変更することができる。
また、セカンダリ室35の油圧を制御すると、セカンダリプーリ15から駆動チェーン36に加えられる挟圧力が変化し、無段変速機13のトルク容量を制御することができる。
前述したように、無段変速機13と駆動輪21との間には、ヒューズクラッチ17が設けられている。このヒューズクラッチ17は、入力されるトルクが設定トルクを超えると自動的にスリップ状態となる摩擦クラッチである。ヒューズクラッチ17は、無段変速機13に過大なトルクが入力されて駆動チェーン36が滑ることを防止する、トルクリミッタとして機能する。
前述した無段変速機13やトルクコンバータ16等のオイル必要部に対して、作動油を供給するため、トロコイドポンプ等のメカポンプ41が設けられている。また、オイル必要部に供給する作動油の流量または圧力を制御するため、バルブユニット42が設けられている。バルブユニット42は、流量制御弁、圧力制御弁、電磁バルブ、油圧回路等を有する公知の要素である。そして、メカポンプ41が駆動して、メカポンプ41から吐出された作動油は、バルブユニット42を経て、無段変速機13やトルクコンバータ16等に供給される。具体的には、プライマリ室34の作動油の流量、セカンダリ室35の作動油の油圧が制御される。
メカポンプ41は、アウタロータ43と、アウタロータ43に組み込まれるインナロータ44とを備えている。インナロータ44の一端には、ロータ軸45および従動スプロケット46が取り付けられている。ロータ軸45に平行となるプライマリ軸32には、一方向クラッチ47を介して駆動スプロケット48が取り付けられている。
駆動スプロケット48および従動スプロケット46にはチェーン49が巻き掛けられており、プライマリ軸32とインナロータ44とはチェーン機構50を介して連結されている。このように、メカポンプ41は、チェーン機構50によって構成される第1駆動系51を介して、動力伝達経路52の一部を構成するプライマリ軸32に連結されている。なお、動力伝達経路52は、無段変速機13、ヒューズクラッチ17、駆動輪出力軸18、ディファレンシャル機構19およびアクスル軸20等を含む。
メカポンプ41のインナロータ44の他端には、ロータ軸61および従動スプロケット62が取り付けられている。トルクコンバータ16のポンプシェルに固定されるとともにロータ軸61に平行となる中空軸64には、一方向クラッチ65を介して駆動スプロケット66が取り付けられている。駆動スプロケット66および従動スプロケット62にはチェーン67が巻き掛けられており、中空軸64とインナロータ44とはチェーン機構68を介して連結されている。このように、メカポンプ41は、チェーン機構68およびトルクコンバータ16によって構成される第2駆動系69を介して、エンジン11のクランク軸22に連結されている。
第1駆動系51を構成する一方向クラッチ47は、正転方向に回転するプライマリ軸32からインナロータ44に動力を伝達する一方、これとは逆向きの動力伝達を遮断している。同様に、第2駆動系69を構成する一方向クラッチ65は、正転方向に回転する中空軸64からインナロータ44に動力を伝達する一方、これとは逆向きの動力伝達を遮断する。すなわち、プライマリ軸32が中空軸64よりも速く回転する場合には、走行用モータ12側のプライマリ軸32によってメカポンプ41が駆動される一方、中空軸64がプライマリ軸32よりも速く回転する場合には、エンジン11側の中空軸64によってメカポンプ41が駆動される。なお、プライマリ軸32の正転方向とは、前進走行時におけるプライマリ軸32の回転方向である。また、中空軸64の正転方向とは、エンジン作動時におけるクランク軸22の回転方向である。
前述したように、メカポンプ41のインナロータ44には、プライマリ軸32と中空軸64とが連結されている。これにより、エンジン11が駆動されるパラレル走行モードにおいては、エンジン11によって常にメカポンプ41を駆動することができ、メカポンプ41から吐出された作動油を、無段変速機13及びトルクコンバータ16等に供給することが可能である。
また、モータ走行モードが選択されてエンジン11が停止され、かつ、走行用モータ12が駆動されると、プライマリ軸32の動力によってメカポンプ41を駆動することが可能となる。このように、メカポンプ41は、無段変速機13の入力側に設けられたプライマリ軸32の動力によって駆動される。
ところで、モータ走行モードが選択され、かつ、車両10が停止する時には、プライマリ軸32と共にメカポンプ41が停止することになる。しかしながら、この車両10の停止時においても、無段変速機13等のオイル必要部に対して作動油を供給する必要がある。
そこで、車両制御装置70は、モータ走行モードが選択され、かつ、車両10が停止している時、または、車両10の減速中等のように、メカポンプ41の作動油の吐出量が少ない場合、バルブユニット42の油圧回路の基本油圧、つまり、ライン圧を確保するため、電動モータ71によって駆動される電動ポンプ72を備えている。
図2に示すように、車両制御装置70は、電動ポンプ72、無段変速機13の変速比及びトルク容量、エンジン11、走行用モータ12、発電機24等を制御する制御ユニット73を有する。制御ユニット73は、制御信号等を演算するCPU、制御プログラム、演算式およびマップデータ等を格納するROM、一時的にデータを格納するRAM等によって構成される。
制御ユニット73には、駆動輪21の回転速度を検出する車輪速センサ74の信号、走行用モータ12が備えるロータ75の回転速度を検出するモータ回転センサ76の信号、運転者によるブレーキペダル80の踏み込み状況を検出するブレーキスイッチ77の信号、プライマリ軸32の回転数を検出するプライマリ軸センサ85の信号、セカンダリ軸33の回転数を検出するセカンダリ軸センサ86の信号、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ87の信号等が入力される。
制御ユニット73は、インバータ79を介して走行用モータ12の回転速度、回生トルク、力行トルク等を制御する。回生トルクは、走行用モータ12を発電機として起動させる場合のトルクであり、力行トルクは、走行用モータ12を電動機として起動させる場合のトルクである。
さらに、車両10はブレーキ装置84を備えている。このブレーキ装置84は、ブレーキペダル80と、ブレーキペダル80の踏力が倍力されて伝達され、かつ、伝達された力を液圧に変換するマスターシリンダ81と、ハイドロリックユニット83と、ホイールシリンダ82とを有する。マスターシリンダ81から出力された液圧は、ハイドロリックユニット83を介して、駆動輪21に設けられたホイールシリンダ82に伝達される。ホイールシリンダ82の液圧に応じて駆動輪21に制動力が加えられる。
そして、車両制御装置70は、ブレーキペダル80が踏まれて駆動輪21に制動力を加えるにあたり、走行用モータ12の回生トルクに応じて駆動輪21に与える制動力と、ホイールシリンダ82の液圧により駆動輪21に与える制動力との比率、もしくは割合を制御することができる。例えば、ブレーキペダル80が踏み込まれた場合は、駆動輪21に与える目標制動力を、基本的には走行用モータ12により負担する制御を実行する。
これに対して、駆動輪21に与える目標制動力の全てを走行用モータ12により負担することが困難な場合、あるいは、駆動輪21に与える目標制動力の全てを走行用モータ12により負担すると、ヒューズクラッチ17に過大なトルクが加わり滑る可能性がある場合は、ホイールシリンダ82及び走行用モータ12の両方により、目標制動力を確保する制御を実行可能である。
さらに、車両制御装置70はブレーキペダル80が踏み込まれて駆動輪21に制動力を与える際に、アンチロックブレーキ制御、つまり、ABS制御を実行することが可能である。ABS制御は、駆動輪21と路面との間の制動力が所定の範囲に維持されるように、ハイドロリックユニット83によりホイールシリンダ82の液圧を制御して駆動輪21のスリップ率を制御し、駆動輪21のロックを防止することである。なお、ABS制御を実行する際は、駆動輪21のロックを防止するため、基本的には、ホイールシリンダ82の液圧により駆動輪21に与える制動力を制御し、走行用モータ12では回生トルクを発生しない。
上記構成の車両10において、モータ走行モードが選択されてエンジン11が停止し、かつ、入力クラッチ30が解放されている状態で、車速が緩やかに低下して所定値未満になると、プライマリ軸32の回転数の低下に伴いメカポンプ41の吐出圧力が低下する。このため、メカポンプ41の吐出油圧では、油圧回路の実ライン圧が、オイル必要部の条件に応じた目標ライン圧未満となる可能性がある。制御ユニット73は、このような場合に電動ポンプ72を駆動する。
電動ポンプ72を駆動すると、メカポンプ41及び電動ポンプ72の両方から吐出された作動油がバルブユニット42に作動油が供給される。したがって、バルブユニット42の油圧回路におけるライン圧を確保することが可能となる。より具体的には、バルブユニット42における実ライン圧を、オイル必要部の条件に応じた目標ライン圧に制御することができる。
上記したメカポンプ41の吐出圧は、プライマリ軸32の回転数に依存する。具体的には、プライマリ軸32の回転数が上昇するほど、メカポンプ41吐出圧が上昇する。このため、モータ走行モードが選択されてエンジン11が停止している際に、電動ポンプ72を駆動するか否かは、基本的には、プライマリ軸32の回転数に基づいて制御すればよい。
例えば、プライマリ軸32の回転数が、第1しきい値brpmを超えていると、電動ポンプ72を停止する制御を実行し、プライマリ軸32の回転数が、第1しきい値brpm以下になると、電動ポンプ72を駆動する制御を実行できる。そして、電動ポンプ72が駆動されている状態で、プライマリ軸32の回転数が上昇して、第2しきい値arpmを超えると、電動ポンプ72を停止させる制御を実行可能である。ここで、第1しきい値brpmは第2しきい値arpmよりも低回転数である。また、第1しきい値brpmは、プライマリ軸32の回転数がこれを超えていれば、メカポンプ41の吐出圧で、目標ライン圧を賄うことができるものとして、実験、シミュレーション等を行って求めた値である。
しかしながら、プライマリ軸32の回転数のみに基づいて電動ポンプ72を制御すると、バルブユニット42の実ライン圧が目標ライン圧に達しているにも関わらず、バルブユニット42へ作動油が過剰に供給される可能性がある。そこで、本実施形態における車両制御装置70は、バルブユニット42の目標ライン圧に基づいて、電動ポンプ72の駆動及び停止を制御することが可能である。
以下、モータ走行モードが選択されていることを前提として、電動ポンプ72の駆動または停止する具体的な制御ロジックの一例を、図3のフローチャートを参照して説明する。まず、車両制御装置70は、ステップS10において、メカポンプ41の回転数が第1しきい値brpm以下であるか否かを判断する。このステップS10においてNoと判断されるということは、メカポンプ41の吐出圧で、バルブユニット42の目標ライン圧を得ることできることになる。そこで、車両制御装置70は、ステップS11において電動ポンプ72を停止する制御を実行し、ステップS10に戻る。
一方、車両制御装置70は、ステップS10でYesと判断すると、ステップS12に進み、ABS制御が実行されているか否かを判断する。車両制御装置70は、ステップS12でNoと判断すると、ステップS13に進み、無段変速機13の目標変速比が、予め定められた所定変速比以上であるか否かを判断する。ここで、所定変速比は、この変速比以下であれば、メカポンプ41の吐出圧で、目標ライン圧を確保できるものとして予め定められている値である。所定変速比は、実験、シミュレーション等によって求められ、制御ユニット73に記憶されている。
例えば、車両10における目標駆動力は、車速及びアクセル開度等から求められ、目標駆動力を満たすように走行用モータ12の目標出力、つまり、目標トルク及び目標回転数が定められる。また、無段変速機13の目標変速比は、走行用モータ12の実回転数を目標回転数とするために設定される。上記のように、ブレーキペダル80が踏まれて車両10が減速する場合は、車両10が再度発進する場合に備えて、予め無段変速機13の変速比を所定変速比以上とするダウンシフト制御を実行する。つまり、車両制御装置70は、車両10において減速要求がある場合に、無段変速機13の変速比を所定変速比以上とするダウンシフト制御を実行する。
そして、無段変速機13の目標変速比が大きいほど、トルク容量を高くするために、無段変速機13に供給するべきオイル量が増加する。したがって、無段変速機13の目標変速比と、所定変速比とを比較すれば、バルブユニット42の油圧回路における目標ライン圧を、メカポンプ41の吐出圧で達成可能か否かを判断できる。
そして、車両制御装置70は、ステップS13でYesと判断するとステップS14に進み、電動ポンプ72を駆動する制御を実行する。このステップS14の制御を実行すると、目標ライン圧に対するメカポンプ41の吐出圧の不足分を、電動ポンプ72の吐出圧により補うことができ、バルブユニット42の油圧回路の実ライン圧を、目標ライン圧とすることができる。
車両制御装置70は、ステップS14に次いでステップS15に進み、メカポンプ41の実回転数が、第2しきい値arpm以上であるか否かを判断する。車両制御装置70は、ステップS15でNoと判断するとステップS14に戻り、ステップS15でYesと判断すると、ステップS11に進む。なお、車両制御装置70は、ステップS13でNoと判断すると、ステップS11に進む。
つまり、車両制御装置70は、プライマリ軸32の回転数が第1しきい値brpm以下であっても、車両10を減速させる要求がなく、アクセルペダルが踏み込まれて無段変速機13の目標変速比が所定変未満に設定されている場合は、ステップS13でNoと判断し電動ポンプ72を停止する。
一方、車両制御装置70は、ステップS12でYesと判断されるとステップS14に進む。すなわち、ABS制御が実行されるということは、駆動輪21の回転数が低下しており、駆動輪21に無段変速機13を介して連結されているプライマリ軸32の回転数が低下していることになる。このため、メカポンプ41の吐出圧のみでは目標ライン圧を確保できない可能性がる。そこで、車両制御装置70は、無段変速機13の目標変速比に関わりなく、電動ポンプ72を駆動する。
次に、図3のフローチャートに対応するタイムチャートの一例を、図4に基づいて説明する。時刻t1以前においては、車速が一定であり、かつ、無段変速機の変速比が一定であり、かつ、メカポンプの回転数も第2しきい値brpm以上で一定である。時刻t1以前では、電動ポンプは停止している。また、図3では、無段変速機の目標変速比が「1」である例が示されている。
そして、時刻t1でブレーキペダルが踏み込まれて車速が低下し、かつ、無段変速機の目標変速比を大きくするダウンシフトが開始されている。また、時刻t1以降は、車速の低下に伴いメカポンプの回転数が低下するが、無段変速機でダウンシフトが実行されているため、メカポンプの回転数の低下勾配は、車速の低下勾配よりも緩やかである。
その後、無段変速機の目標変速比が最大値、図4では「2.4」に維持され、メカポンプの回転数の低下勾配が、急激になっている。そして、時刻t2でメカポンプの回転数が第2しきい値brpm未満になり、かつ、無段変速機の目標変速比が所定変速比ρ1以上であるため、電動ポンプが駆動される。その後、時刻t3で車両が停止している。車両が停止した時刻t3以降も、メカポンプの回転数が第2しきい値brpm未満であり、かつ、無段変速機の目標変速比が所定変速比ρ1以上であるため、電動ポンプが駆動されている。
さらに、時刻t4でアクセルペダルが踏み込まれて走行用モータが駆動され、走行用モータのトルクが駆動輪に伝達されて、車両が発進している。車両の発進時における無段変速機の目標変速比は、所定変速比ρ1以上で一定である。また、時刻t4以降、車速の上昇に伴いメカポンプの回転数が上昇するが、メカポンプの回転数が第1しきい値arpm未満であると、電動ポンプの駆動が継続される。
そして、時刻t5において、メカポンプの回転数が第1しきい値arpm以上になると、電動ポンプが停止される。また、時刻t6以降は車速が一定となり、かつ、無段変速機の目標変速比を小さくするアップシフトが実行されている。このため、無段変速機の目標変速比のアップシフトに伴い、時刻t6以降はメカポンプの回転数が低下している。
さらに、時刻t7以降は、無段変速機の目標変速比が所定値、例えば、「1」に維持されている。このため、時刻t7以降は、メカポンプの回転数は第1しきい値brpm未満になっている。しかし、無段変速機の目標変速比が所定変速比未満であるため、電動ポンプは停止されている。本実施形態において、無段変速機の最大変速比は例えば「2.4」とし、所定変速比ρ1は例えば「2.2」とすることができる。
上記のように、車両制御装置70は、モータ走行モードが選択されて、エンジン11が停止し、かつ、走行用モータ12のトルクで車両10が走行することを前提として、メカポンプ41の回転数が第2しきい値brpm以下であり、かつ、ABS制御が実行されていない場合は、無段変速機13の目標変速比が所定変速比以上であると電動ポンプ72が駆動される。したがって、バルブユニット42に供給する作動油の圧力を確保でき、バルブユニット42の油圧回路における実ライン圧を目標ライン圧に制御することができる。
一方、メカポンプ41の回転数が第2しきい値brpm以下であり、かつ、ABS制御が実行されていない場合に、無段変速機13の目標変速比が所定変速比未満であると、バルブユニット42に供給する作動油の圧力を、メカポンプ41で賄うことができるため、電動ポンプ72は停止される。したがって、バルブユニット42に、必要以上の作動油圧が供給されることを回避できる。また、電動ポンプ72を駆動するために、無駄な電力が消費されることを抑制できる。
また、車両制御装置70は、モータ走行モードが選択されて、エンジン11が停止し、かつ、走行用モータ12のトルクで車両10が走行することを前提として、メカポンプ41の回転数が第2しきい値brpm以下であり、かつ、ABS制御が実行されている場合は、無段変速機13の目標変速比に関わりなく、電動ポンプ72を駆動する。
次に、ABS制御と電動ポンプ72の制御との関係の一例を、図5のタイムチャートにより説明する。時刻t1以前においては、車速が一定であり、かつ、無段変速機の目標変速比が「1」に制御され、かつ、メカポンプの回転数は、第1しきい値brpm以上で一定である。また、ABS制御は実行されていない(OFF)。この時刻t1以前においては電動ポンプは停止している。
時刻t1でブレーキペダルが踏み込まれて車速が低下し、かつ、無段変速機でダウンシフト制御が開始され、かつ、メカポンプの回転数が低下する。メカポンプの回転数が第1しきい値brpm以上であると、電動ポンプは停止されている。次いで、時刻t2以降、ABS制御が実行(ON)されると、無段変速機でアップシフト制御が実行され、メカポンプの回転数が急激に低下している。
このように、ブレーキペダルが踏み込まれてABS制御が実行されている場合に、無段変速機でアップシフト制御を実行する理由は、以下の通りである。ABS制御は、駆動輪21のロックを防止するための制御であるから、無段変速機でアップシフト制御を実行することで、駆動輪21の回転が阻害されないようにしている。
そして、時刻t3でメカポンプの回転数が第1しきい値brpm未満になると、電動ポンプが駆動される。すなわち、ABS制御が実行されている場合は、無段変速機の目標変速比が所定変速比ρ1未満であっても、電動ポンプが駆動される。これは、前述したように、ブレーキペダルが踏み込まれ、かつ、ABS制御を実行する時には、走行用モータ12が回生制御されてメカポンプの回転数が低下し、メカポンプの吐出圧では、バルブユニットの目標ライン圧を達成できなくなるからである。
次いで、時刻t4以降は車両が停止し、かつ、メカポンプが停止している。また、時刻t4以降、車両は停止しているが、バルブユニットは電動ポンプの吐出圧を利用して、無段変速機のアップシフト制御を継続する。さらに、時刻t5になると無段変速機のダウンシフトが開始され、時刻t6でABS制御がOFFされ、次いで、無段変速機の目標変速比が最大変速比、例えば、「2.4」に維持されている。図5においても、所定変速比ρ1は例えば「2.2」としてある。
なお、図4のタイムチャートに示した時刻と、図5のタイムチャートに示した時刻とに、対応関係はない。さらに、図3のフローチャートにおいて、ステップS14の処理実行後、ステップS15の判断を省略して、リターンする制御ロジックを採用することも可能である。
以上のように、本実施形態の車両10においては、モータ走行モードが選択され、かつ、エンジン11が停止している場合は、メカポンプ41の回転数のみに基づいて電動ポンプ72の駆動及び停止を制御するのではなく、無段変速機13の目標変速比に基づいて、バルブユニット42で目標ライン圧を達成できるか否かを間接的に判断している。
そして、メカポンプ41の吐出圧だけでは、バルブユニット42で目標ライン圧を達成できない場合は、電動ポンプ72を駆動する。一方、メカポンプ41の吐出圧だけで、バルブユニット42で目標ライン圧を達成できる場合は、電動ポンプ72を停止する。したがって、バルブユニット42に対して、必要以上に作動油が供給されることを防止できる。
本明細書に記載された回転数は、単位時間あたりの回転数を意味する。また、メカポンプ41が、本発明の第1オイルポンプであり、電動ポンプ72が、本発明の第2オイルポンプであり、制御ユニット73が、本発明のポンプ制御部である。さらに、第2しきい値arpmが、本発明の所定回転数である。また、図4及び図5に示した変速比の数値は一例であり、図4及び図5に示された変速比に限定される訳ではない。さらに、第1のしきい値brpm以下が、本発明における所定回転数以下に相当し、所定変速比ρ1以上が、本発明の所定変速比以上に相当する。
本発明においては、第1オイルポンプの回転数と、無段変速機の変速比との間には相関関係があり、いずれも固定された数値ではない。但し、無段変速機の所定変速比は、車両が減速した後に、車両を再度発進させることを目的として、予め最大変速比の近辺に設定するのであるから、車両重量、車両の仕様等の諸元を考慮して、決定される。
そして、本発明のポンプ制御部は、第1オイルポンプの回転数から定まる実吐出圧が、無段変速機の目標変速比から定まる目標吐出圧未満であると、第2オイルポンプを駆動する。これは、図3のフローチャートにおいて、ステップS13でYesと判断される場合に相当する。一方、ポンプ制御部は、第1オイルポンプの回転数から定まる実吐出圧が、無段変速機の目標変速比から定まる目標吐出圧以上であれば、第2オイルポンプを停止する。これは、図3のフローチャートにおいて、ステップS13でNoと判断される場合に相当する。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、無段変速機としてチェーンドライブ式の無段変速機を示しているが、本発明における無段変速機は、ベルトドライブ式やトラクションドライブ式の無段変速機を含む。また、メカポンプや電動ポンプは、内接式のギヤポンプ、外接式のギヤポンプを含む。さらに、駆動輪は、前輪または後輪の少なくとも一方であればよい。さらに、本発明は、駆動輪に伝達する動力を発生する走行用モータを備えており、駆動輪に動力を伝達するエンジンが設けられていない電気自動車にも適用可能である。