JP6234901B2 - 無灰炭の製造方法、および無灰炭の製造装置 - Google Patents
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Description
図1〜図2を参照して第1実施形態の無灰炭製造方法(無灰炭の製造方法)、および、図1に示す無灰炭製造装置1(無灰炭の製造装置)について説明する。
ガス化炉51では、石炭が熱分解される。そして、酸素および水蒸気と、炭素と、が反応する。その結果、可燃ガス(例えばCOおよびH2)が発生する。さらに詳しくは、ガス化炉51では次の反応が生じる。
石炭(副生炭)の熱分解 → C、Hなど
C + O2 → CO2 + 97kcal/mol
C + 1/2O2 → 2CO + 29.4kcal/mol
C + CO2 → 2CO − 38.2kcal/mol
C + H2O → CO + H2 − 31.4kcal/mol
C + 2H2O → CO2 + 2H2 − 18.2kcal/mol
CO + H2O → CO2 + H2 +10.0kcal/mol
ガス化炉51の形式は、例えば固定床ガス化炉であり、例えば流動床ガス化炉であり、例えば噴流床ガス化炉である。ガス化炉51の形式により、使用される石炭の粒子径、ガス化温度、および、炭素転換率(ガス化炉51に投入した石炭中の炭素量に対する、生成ガス中の炭素量の割合)が異なる。
このプロセスガスG1は、加熱工程に用いられる。加熱工程は、ガス化炉51で得られたプロセスガスG1を燃料(エネルギー源)として、スラリーなど(スラリーおよび溶剤の少なくともいずれか)が加熱される工程である。加熱工程に用いられる装置(加熱装置)は、例えば予熱器23である。予熱器23は、プロセスガスG1を燃焼させることで生じる熱により、炉内のスラリーを加熱する。なお、加熱工程の他の具体例は後述する。
図1に示す本実施形態の無灰炭製造装置1と、図4に示す比較例1の無灰炭製造装置201(後述)とのランニングコストを比較した。
図1に示す無灰炭製造装置1では、予熱器23でのスラリーの加熱(以下「スラリー加熱」)の燃料は、副生炭から生成されたプロセスガスG1である。そのため、プロセスガスG1を生成するのに必要な副生炭は販売できなくなる。そこで、副生炭を販売できなくなることにより生じる損失(外販機会損失)を算出した。算出の一例は次の通りである。スラリー調製槽21が、原料の石炭500kg/h(水分10重量%)と溶剤1800kg/hとを混合することでスラリーを調製するとする。このとき、予熱器23によるスラリー加熱に必要なエネルギーは約0.037×106kcal/hである(後述する比較例1についても同様)。プロセスガスG1の低位発熱量基準(LHV;Lower Heating Value)を1100kcal/Nm3と想定する。すると、スラリー加熱に必要なプロセスガスG1は、約33.6Nm3/hである。副生炭1kgに対して得られるプロセスガスG1を約2.9Nm3/hと想定すると、スラリー加熱に必要なプロセスガスG1を生成するのに必要な副生炭は、約11.6kg/hである。副生炭価格を(一般炭価格より安価な)7000円/tonとすると、副生炭の外販機会損失は、80.5円/h(年間64.4万円)となる。
図4に、比較例1の無灰炭製造装置201を示す。無灰炭製造装置1(図1参照)に対する無灰炭製造装置201の相違点は、予熱器23の燃料が、天然ガス(NG;Natural Gas)のみ、またはLPガス(LPG;Liquefied Petroleum Gas)のみである点である。この比較例1の無灰炭製造装置201のランニングコスト(燃料コスト)を算出した。
加熱工程で燃料として用いられるプロセスガスG1は、ガス燃料である。固形燃料に対するガス燃料のメリットを説明する。
図5に、比較例2の無灰炭製造装置301を示す。比較例2の無灰炭製造装置301は、スラリーなどの加熱用の燃料が固形燃料である場合の一例である。無灰炭製造装置1(図1参照)に対する比較例2の無灰炭製造装置301の相違点は次の[相違a]および[相違b]である。[相違a]予熱器23の燃料は、ガス化していない副生炭(RC)であり、固形燃料である。[相違b]副生炭の水分を調整する加湿器370を備える。加湿器370は、副生炭のハンドリング性を向上させる(例えば風による飛散を抑制する)ために設けられる。
図1に示すように、本実施形態の無灰炭製造装置1では、予熱器23の燃料(加熱工程に用いられる燃料)は、ガス燃料であるプロセスガスG1である。よって、加熱工程に用いられる燃料が固形燃料の場合に比べ、次の[メリットa]〜[メリットe]がある。[メリットa]燃料のハンドリング(燃料の移動や貯留など)が容易である。例えば、比較例2の無灰炭製造装置301(図5参照)では、固形燃料のハンドリング性向上のために加湿器370(図5参照)が設けられるが、ガス燃料が用いられる無灰炭製造装置1では、加湿器370は不要である。[メリットb]予熱器23への燃料供給を安定して行うことができる。[メリットc]燃料の性状(例えば乾燥の度合いなど)が安定している。[メリットd]燃料の燃焼性能が良い。
加熱工程に用いられる予熱器23は、ガス焚き加熱炉である。ガス焚き加熱炉の特徴(性質)を説明する。流体の加熱手段としては、例えば、電気ヒータ、熱媒加熱ヒータ、誘導伝熱式加熱炉、ガス焚き加熱炉、およびオイル焚き加熱炉などが一般的に知られている。また、流体の加熱手段として、一般的には広まっていない石炭焚き加熱炉がある。各加熱手段の性質の概略(イメージ)を表1に示す。
図1に示す無灰炭製造装置1および無灰炭製造方法による効果を説明する。以下では、各工程を行うために用いられる機器(各工程に対応する機器)を、工程の名称の後に括弧を付して示す。
無灰炭製造方法(無灰炭製造装置1)は、分離工程(抽出槽24および分離装置25)と、無灰炭取得工程(第1溶剤分離装置31)と、副生炭取得工程(第2溶剤分離装置32)と、を備える。また、無灰炭製造方法(無灰炭製造装置1)は、ガス化工程(ガス化炉51)と、加熱工程(予熱器23)と、を備える。分離工程(の抽出工程(抽出槽24))は、石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して、溶剤に可溶な石炭成分を抽出する工程である。分離工程(分離装置25)は、スラリー(抽出工程(抽出槽24)で得られたスラリー)を、溶剤に可溶な石炭成分(溶剤可溶成分)が溶解した溶液と、溶剤に不溶な石炭成分(溶剤不溶成分)が濃縮した固形分濃縮液と、に分離する工程である。無灰炭取得工程(第1溶剤分離装置31)は、分離工程(分離装置25)で分離された溶液から溶剤を蒸発分離することで無灰炭(HPC)を得る工程である。副生炭取得工程(第2溶剤分離装置32)は、分離工程(分離装置25)で分離された固形分濃縮液から溶剤を蒸発分離することで副生炭(RC)を得る工程である。
[構成1−1]ガス化工程(ガス化炉51)は、副生炭取得工程(第2溶剤分離装置32)で得られた副生炭をガス化することでプロセスガスG1を得る工程である。
[構成1−2]加熱工程(予熱器23)は、ガス化工程(ガス化炉51)で得られたプロセスガスG1を燃料として、スラリーまたは溶剤を加熱する工程である(溶剤の加熱については後述)。
図3を参照して、第2実施形態の無灰炭製造装置101について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、無灰炭製造装置101のうち、第1実施形態との共通点については、第1実施形態と同一の符号(図1参照)を付し、説明を省略した。無灰炭製造装置101では、加熱工程(予熱器23)に用いられる燃料は、プロセスガスG1と、抽出槽生成ガスG2と、が混合された混合ガスG3である。抽出槽生成ガスG2は、加熱工程(予熱器23)の補助燃料として利用される。加熱工程(予熱器23)に用いられる燃料は、例えば混合ガスG3のみである。
[構成2]加熱工程(予熱器23)の燃料は、スラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出工程(抽出槽24)で発生した抽出槽生成ガスG2と、プロセスガスG1と、が混合された混合ガスG3である。
加熱工程は様々に変形できる。加熱工程の加熱の態様は、例えば下記の[直接的加熱]であり、また例えば下記の[間接的加熱]でもよく、[直接的加熱]および[間接的加熱]両方が行われてもよい。
[直接的加熱]プロセスガスG1を燃焼させることで生じる熱により、スラリーなどが直接加熱される。例えば、上記のように、予熱器23が、プロセスガスG1を燃焼させることで生じる熱により、炉内のスラリーを加熱する。
[間接的加熱]プロセスガスG1を燃焼させることで生じる熱により、熱交換媒体(例えば液体や気体)が加熱され、この熱交換媒体とスラリーなどとで熱交換が行われることにより、スラリーなどが加熱されてもよい。熱交換媒体の加熱は、図示しないガス焚き炉により行われる。熱交換媒体とスラリーなどとの熱交換は、例えば、熱交換器42、スラリー調製槽21、または抽出槽24などにより行われる。
[加熱対象a]加熱工程での加熱対象は、スラリー調製槽21で調製され、抽出槽24に供給される前のスラリーである。この場合、加熱工程を行う加熱装置は、予熱工程を行う予熱器23である。
[加熱対象b]加熱工程での加熱対象は、スラリー調製槽21内のスラリーでもよい。この場合、加熱工程を行う加熱装置は、スラリー調製槽21である(加熱装置とスラリー調製槽21とが兼用される)。
[加熱対象c]加熱工程での加熱対象は、抽出槽24内のスラリーでもよい。この場合、加熱工程を行う加熱装置は、抽出槽24である(加熱装置と抽出槽24とが兼用される)。
[加熱対象d]加熱工程での加熱対象は、スラリー調製槽21に供給される前の溶剤でもよい。例えば、加熱工程での加熱対象は、次の[加熱対象d−1]や[加熱対象d−2]である。
[加熱対象d−1]加熱工程での加熱対象は、循環路41を通る溶剤でもよい。この場合、加熱工程を行う加熱装置は、循環路昇温工程を行う熱交換器42である。
[加熱対象d−2]加熱工程での加熱対象は、循環路41を通らない溶剤であって、スラリー調製槽21に供給される溶剤でもよい。
21 スラリー調製槽(加熱装置)
23 予熱器(加熱装置)
24 抽出槽(加熱装置)
25 分離装置
31 第1溶剤分離装置
32 第2溶剤分離装置
42 熱交換器(加熱装置)
51 ガス化炉
G1 プロセスガス
G2 抽出槽生成ガス
G3 混合ガス
Claims (3)
- 石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して前記溶剤に可溶な石炭成分を抽出し、前記溶剤に可溶な前記石炭成分が溶解した溶液と、前記溶剤に不溶な前記石炭成分が濃縮した固形分濃縮液とに分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された溶液から前記溶剤を蒸発分離することで無灰炭を得る無灰炭取得工程と、
前記分離工程で分離された固形分濃縮液から前記溶剤を蒸発分離することで副生炭を得る副生炭取得工程と、
前記副生炭取得工程で得られた前記副生炭をガス化することでプロセスガスを得るガス化工程と、
前記ガス化工程で得られた前記プロセスガスを燃料として、前記スラリーまたは前記溶剤を加熱する加熱工程と、
を備える、無灰炭の製造方法。 - 前記加熱工程の前記燃料は、前記スラリーを加熱して前記溶剤に可溶な前記石炭成分を抽出する抽出工程で発生したガスと前記プロセスガスとが混合された混合ガスである、
請求項1に記載の無灰炭の製造方法。 - 石炭と溶剤とを混合して得られるスラリーを加熱して前記溶剤に可溶な石炭成分を抽出する抽出槽と、
前記抽出槽で得られた前記スラリーを、前記溶剤に可溶な前記石炭成分が溶解した溶液と、前記溶剤に不溶な前記石炭成分が濃縮した固形分濃縮液とに分離する分離装置と、
前記分離装置で分離された溶液から前記溶剤を蒸発分離することで無灰炭を得る第1溶剤分離装置と、
前記分離装置で分離された固形分濃縮液から前記溶剤を蒸発分離することで副生炭を得る第2溶剤分離装置と、
前記第2溶剤分離装置で得られた前記副生炭をガス化することでプロセスガスを得るガス化炉と、
前記ガス化炉で得られた前記プロセスガスを燃料として、前記スラリーまたは前記溶剤を加熱する加熱装置と、
を備える、無灰炭の製造装置。
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