本開示の実施形態では、硬化性組成物が提供される。種々の実施形態について、本開示の硬化性組成物は、ターポリマーを含む硬化剤成分を有する。本明細書で検討されるように、ターポリマーは、アニリンなどの芳香族アミンで変性されたスチレン無水マレイン酸(SMA)コポリマーである。本開示の硬化性組成物は、望ましい熱的特性および電気的特性を有する硬化生成物を与える。望ましい熱的特性としては、ガラス転移温度および分解温度を挙げることができ、望ましい電気的特性としては、誘電率および散逸率を挙げることができる。本開示の硬化性組成物の硬化生成物は、電気カプセル化材、複合体、電気積層品、接着剤、プリプレグおよび/または粉末コーティングに有用であり得る。
スチレンと無水マレイン酸とから誘導されるコポリマーは、コポリマーがマトリックス成分として用いられる電気用途(例えば、プリント基板)における使用を含めて、エポキシ系のための硬化剤として使用されてきた。スチレンと無水マレイン酸とのコポリマーは、低い誘電率または高いガラス転移温度を含み得る、許容できる特性の組合せを与え得る。スチレン対無水マレイン酸の比は、硬化生成物の特性を変えるために調整され得る。一般に、スチレン対無水マレイン酸の比が増加するにつれて、誘電率は低下し、これは望ましいが、ガラス転移温度が同時に低下し、これは望ましくない。
本明細書で検討されるように、ガラス転移温度を上昇させるために材料が硬化性組成物に添加されてきた。例えば、以前の手法は、ガラス転移温度の低下に対抗するために、スチレンと無水マレイン酸とから誘導されるコポリマーを含む硬化性組成物中にシアネートを含んでいた。しかしながら、シアネートは、高価であり、硬化性組成物から形成される生成物(例えば、電気積層品)を製造するコストを増加させ得る。
しかしながら、以前の手法とは違って、本開示の硬化性組成物は、シアネート基を含まないが、望ましい熱的特性および電気的特性を有する硬化生成物を依然として与える。言い換えれば、本開示の硬化性組成物は、シアネート基を含むものと同様の熱的および電気的特性を与えることができるが、それらがシアネートを含まないのであまり高価ではない。
種々の実施形態について、スチレン無水マレイン酸コポリマーは、芳香族アミン化合物(例えば、アニリン)を含むように変性される。芳香族アミン化合物(例えば、アニリン)は、スチレン無水マレイン酸コポリマー中の無水マレイン酸基の一部と反応させるために使用され得る。変性されたスチレン無水マレイン酸コポリマー(本明細書で「ターポリマー」とも称される)は、硬化性組成物中に組み入れられて、望ましい熱的特性および電気的特性を与え得る。種々の実施形態について、本開示の硬化性組成物は、エポキシ基対ターポリマーの第2の構成単位が、1.0:1.0から2.7:1.0の範囲、好ましくは1.1:1.0から1.9:1.0の範囲、より好ましくは1.3:1.0から1.7:1.0の範囲のモル比を有するように形成される。明本細書で提供される場合、1.0:1.0から2.7:1.0の範囲内のエポキシ基対第2の構成単位のモル比を有する硬化性組成物の形成は、望ましい熱的特性および電気的特性を有する硬化生成物を与える。本明細書で使用される場合、「構成単位」は、その繰り返しが巨大分子、例えば、ポリマーを構成する、最小構成単位(巨大分子の本質的な構造の一部を構成する原子の群)、またはモノマーを指す。
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの(at least one)」、および「1つまたは複数の(one or more)」は、同義的に使用される。「および/または(and/or)」という用語は、1つ、1つもしくは複数、または記載された項目のすべてを意味する。端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
さらに、本開示の硬化性組成物は、シアネートを含まず、かつシアネートを含む硬化性組成物と同様の熱的特性および電気的特性を依然として与えることができるが、製造費用が少なくて済む可能性がある。
種々の実施形態について、硬化性組成物は、エポキシ樹脂、および該エポキシ樹脂と硬化するための硬化剤化合物を含む。種々の実施形態について、硬化剤化合物は、式(I):
の第1の構成単位、式(II):
の第2の構成単位、および式(III):
の第3の構成単位を有するターポリマーを含み、
式中、それぞれのm、nおよびrは、独立して、該ターポリマー中のそれぞれの構成単位のモル分率を表す実数であり、それぞれのRは、独立して、水素、芳香族基または脂肪族基であり、Arは、芳香族基であり、かつエポキシ基対該第2の構成単位は、1.0:1.0から2.7:1.0の範囲のモル比を有する。種々の実施形態において、それぞれのRは水素であり、Arはフェニル基である。
種々の実施形態について、モル分率mは、0.50以上であり、モル分率nおよびrは、それぞれ独立して、0.45から0.05であり、ここで、(m+n+r)=1.00である。種々の実施形態について、第1の構成単位対第2の構成単位は、1:1から20:1の範囲のモル比を有し;例えば、第1の構成単位対第2の構成単位のモル比は、3:1から15:1の範囲を有し得る。
種々の実施形態について、第2の構成単位は、ターポリマーの重量で0.1パーセント(%)から41%を構成する。一実施形態において、第2の構成単位は、ターポリマーの重量で5%から20%を構成する。種々の実施形態について、第3の構成単位は、ターポリマーの重量で0.1%から62.69%を構成する。一実施形態において、第3の構成単位は、ターポリマーの重量で0.5%から50%を構成する。
種々の実施形態について、芳香族基(aromatic group)の例としては、限定されるものではないが、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニルまたはビフェニル、および置換ナフチルが挙げられる。脂肪族基の例としては、限定されるものではないが、アルキルおよび脂環式アルキルが挙げられる。芳香族基(aromatic radical)の例としては、限定されるものではないが、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニル、および置換ナフチルが挙げられる。
種々の実施形態について、ターポリマーは、3つの構成単位を含む。ターポリマーは、コポリマーとモノマーとを化学反応を介して結合させる、例えば、スチレン無水マレイン酸コポリマーをアミン化合物と反応させることによって得られ得る。さらに、ターポリマーは、3種以上のモノマーを化学反応を介して結合させる(例えば、スチレン化合物と、無水マレイン酸と、マレイミド化合物とを反応させる)ことによって得られ得る。反応させたモノマーおよび/またはコポリマーは、ターポリマーの構成単位を形成する。化合物は、化学結合において2種以上の元素の原子またはイオンから構成させる物質である。
スチレン化合物は、本明細書で使用される場合、明示的に特に断りのない限り、化学式C6H5CH=CH2を有する化合物スチレン、およびそれから誘導される化合物(例えば、スチレン誘導体)を含む。cis−ブテン二酸無水物、トキシル酸無水物、またはジヒドロ−2,5−ジオキソフランとも称され得る無水マレイン酸は、化学式:C2H2(CO)2Oを有する。
本明細書で検討されるように、スチレン無水マレイン酸コポリマーが、硬化性組成物で使用されてきた。このようなスチレン無水マレイン酸コポリマーの商業的な例としては、限定されるものではないが、SMA(登録商標)EF−40、SMA(登録商標)EF−60、およびSMA(登録商標)EF−80(これらのすべては、Sartomer Company,Inc.から入手可能である)、ならびにSMA(登録商標)EF−100(これは、Elf Atochem,Inc.から入手可能である)が挙げられる。
種々の実施形態について、スチレン無水マレイン酸コポリマーは、アニリンなどの芳香族アミン化合物と反応させて、ターポリマーを形成し得る。種々の実施形態について、スチレン無水マレイン酸コポリマーは、1:1から8:1のスチレン対無水マレイン酸のモル比を有し;例えば、コポリマーは、3:1から6:1のスチレン対無水マレイン酸のモル比を有し得る。
種々の実施形態について、スチレン無水マレイン酸コポリマーは、2,000から20,000の重量平均分子量を有することができ;例えば、コポリマーは、3,000から11,500の重量平均分子量を有することができる。重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により決定され得る。
種々の実施形態について、スチレン無水マレイン酸コポリマーは、1.1から6.1の分子量分布を有することができ;例えば、コポリマーは、1.2から4.0の分子量分布を有することができる。
種々の実施形態について、スチレン無水マレイン酸コポリマーは、1グラム当たり100ミリグラム水酸化カリウム(mgKOH/g)から480mgKOH/gの酸価を有することができ;例えば、コポリマーは、120mgKOH/gから285mgKOH/g、または156mgKOH/gから215mgKOH/gの酸価を有することができる。
種々の実施形態について、スチレン無水マレイン酸コポリマーは、芳香族アミン化合物で変性される。芳香族アミン化合物の具体例としては、限定されるものではないが、アニリン、置換アニリン、ナフタレンアミン、置換ナフタレンアミン、およびそれらの組合せが挙げられる。他の芳香族アミン化合物も可能である。
本明細書で検討されるように、本開示のターポリマーは、スチレン無水マレイン酸コポリマーを芳香族アミン化合物で変性することによって得られる。スチレン無水マレイン酸コポリマーを変性する方法は、イミド化を含み得る。
1つまたは複数の実施形態について、硬化性組成物はエポキシ化合物を含む。エポキシ化合物は、酸素原子が、炭素鎖または環系の2個の隣接または非隣接炭素原子に直接結合している化合物である。エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
1つまたは複数の実施形態について、硬化性組成物は、芳香族エポキシ化合物を含む。芳香族エポキシ化合物の例としては、限定されるものではないが、ポリフェノールのグリシジルエーテル化合物、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、トリスフェノール(トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、およびそれらの組合せが挙げられる。
1つまたは複数の実施形態について、硬化性組成物は、脂環式エポキシ化合物を含む。脂環式エポキシ化合物の例としては、限定されるものではないが、少なくとも1つの脂環式環を有するポリオールのポリグリシジルエーテル、またはシクロヘキセン環もしくはシクロペンテン環を含む化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキシドもしくはシクロペンテンオキシドを含む化合物が挙げられる。一部の特定の例としては、限定されるものではないが、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート;3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート;6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート;メチレン−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン);2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン;ジシクロペンタジエンジエポキシド;エチレン−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート);ジオクチルエポキシヘキサヒドロフタレート;ジ−2−エチルヘキシルエポキシヘキサヒドロフタレート;およびそれらの組合せが挙げられる。
1つまたは複数の実施形態について、硬化性組成物は、脂肪族エポキシ化合物を含む。脂肪族エポキシ化合物の例としては、限定されるものではないが、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルまたはそのアルキレン−オキシド付加物、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成されるホモポリマー、およびグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートと他のビニルモノマーとのビニル重合によって合成されるコポリマーが挙げられる。一部の特定の例としては、限定されるものではないが、ポリオールのグルシジルエーテル、例えば、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ソルビトールのテトラグリシジルエーテル;ジペンタエリトリトールのヘキサグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;およびポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル;1種または2種以上のアルキレンオキシドを脂肪族ポリオール(プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、およびグリセリンなど)に付加させることによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル;ならびにそれらの組合せが挙げられる。
本明細書で検討されるように、スチレン対無水マレイン酸の高い比(例えば、4:1以上)を有するスチレン無水マレイン酸コポリマーの使用は、誘電率を低下させ、これは望ましいが、ガラス転移温度が同時に低下し、これは望ましくない。しかしながら、本開示の硬化性組成物は、ガラス転移温度を低下させることなく、4:1以上のスチレン対無水マレイン酸比を有するスチレン無水マレイン酸コポリマーを組み入れ得る。例えば、スチレン無水マレイン酸コポリマーは、アミン化合物で変性され、本開示の硬化性組成物がエポキシ基対第2の構成単位のモル比を1.0:1.0から2.7:1.0の範囲内で有するように硬化性組成物中で使用される。種々の実施形態について、本開示の硬化性組成物は、エポキシ基対第2の構成単位のモル比を1.1:1.0から1.9:1.0の範囲内、より好ましくは1.3:1.0から1.7:1.0の範囲内で有する。本明細書で検討されるように、本開示の硬化性組成物の硬化生成物は、シアネートを硬化性組成物中に組み入れることなく、望ましい熱的特性および電気的特性を示す。
種々の実施形態について、硬化性組成物は溶媒を含み得る。溶媒は、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、プロピレングリコールメチルエーテル(PM)、シクロヘキサノン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DOWANOL(商標)PMA)、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。種々の実施形態について、溶媒は、硬化性組成物の全重量に基づいて、重量で30%から60%の量で使用され得る。
種々の実施形態について、硬化性組成物は触媒を含み得る。触媒の例としては、限定されるものではないが、2−メチルイミダゾール(2MI)、2−フェニルイミダゾール(2PI)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MI)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ)、ホウ酸、トリフェニルホスフィン(TPP)、テトラフェニルホスホニウム−テトラフェニルボレート(TPP−k)およびそれらの組合せが挙げられる。種々の実施形態について、触媒(重量で10%溶液)は、硬化性組成物中の固体成分重量に基づいて、重量で0.01%から2.0%の量で使用され得る。
種々の実施形態について、硬化性組成物は共硬化剤を含み得る。共硬化剤は、エポキシ化合物のエポキシド基に対して反応性であり得る。共硬化剤は、ノボラック類、アミン類、無水物類、カルボン酸類、フェノール類、チオール類、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。種々の実施形態について、共硬化剤は、ターポリマーの重量に基づいて、重量で1%から90%の量で使用され得る。
1つまたは複数の実施形態について、硬化性組成物は添加剤を含む。添加剤は、染料、顔料、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、潤滑剤、流動性改良剤、滴下防止剤(drip retardants)、難燃剤、ブロッキング防止剤、離型剤、強化剤(toughening agents)、低収縮添加剤(low-profile additives)、応力緩和添加剤(stress-relief additives)、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。添加剤は、当業者によって理解されるように、特定の用途のための有効量で用いられ得る。異なる用途について、有効量は、異なる値を有し得る。本明細書で検討されるように、本開示の硬化性組成物は、シアネート基を含まない。
1つまたは複数の実施形態について、硬化性組成物は、個々の値および/またはその中の部分的な範囲すべてを含めて、171℃で200秒(s)から400sのゲル化時間を有することができ;例えば、硬化性組成物は、171℃で205sから395s、または171℃で210sから390sのゲル化時間を有し得る。
ゲル化時間は、硬化性組成物の反応性(例えば、特定の温度における)を示すことができ、ゲル点までの秒数として表され得る。ゲル点は、初期ポリマーの網状組織形成の時点を指し、ここでは、本質的に網状組織のそれぞれの単位が網状組織のそれぞれ他の単位に連結されるように、その構造は実質的に分岐している。硬化性組成物がゲル点に達すると、残存する溶媒は実質的に分岐した構造内に取り込まれるようになる。捕捉された溶媒がその沸点に達すると、気泡が構造中に形成され得る(例えば、望ましくない生成物をもたらす、プリプレグ)。
本明細書で検討されるように、1つまたは複数の実施形態について、硬化性組成物は、171℃で200sから400sのゲル化時間を有する。場合によっては、171℃で400sを超えるゲル化時間を有する硬化性組成物は、本明細書で検討されるように、ゲル化時間を171℃で200sから400s、171℃で200sから375s、または171℃で200sから350sに調整するように、触媒および/または添加剤を添加することによって変性され得る。用途によっては、171℃で200s未満のゲル化時間を有する硬化性組成物は、反応性であり過ぎると考えられ得る。
本開示の実施形態は、本明細書で検討されるとおり、強化成分および硬化性組成物を含むプリプレグを提供する。プリプレグは、マトリックス成分を強化成分中に含浸させる工程を含む方法によって得ることができる。マトリックス成分は、強化成分を取り囲みおよび/または支持する。開示された硬化性組成物は、マトリックス成分用に使用され得る。プリプレグのマトリックス成分と強化成分とは、相乗作用を与える。この相乗作用は、プリプレグを硬化させることによって得られるプリプレグおよび/または生成物が、個々の成分だけで達成されない機械的および/または物理的特性を有することを規定する。
強化成分は、繊維であり得る。繊維の例としては、限定されるものではないが、ガラス、アラミド、炭素、ポリエステル、ポリエチレン、石英、金属、セラミック、バイオマス、およびそれらの組合せが挙げられる。繊維は、コーティングされ得る。繊維コーティングの一例としては、限定されるものではないが、ホウ素が挙げられる。
ガラス繊維の例としては、限定されるものではないが、A−ガラス繊維、E−ガラス繊維、C−ガラス繊維、R−ガラス繊維、S−ガラス繊維、T−ガラス繊維、およびそれらの組合せが挙げられる。アラミドは、有機ポリマーであり、その例としては、限定されるものではないが、Kevlar(登録商標)、Twaron(登録商標)、およびそれらの組合せが挙げられる。炭素繊維の例としては、限定されるものではないが、ポリアクリロニトリル、ピッチ、レーヨン、セルロース、およびそれらの組合せから形成される繊維が挙げられる。金属繊維の例としては、限定されるものではないが、ステンレススチール、クロム、ニッケル、白金、チタン、銅、アルミニウム、ベリリウム、タングステン、およびそれらの組合せが挙げられる。セラミック繊維の例としては、限定されるものではないが、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、ホウ化ケイ素、およびそれらの組合せから形成される繊維が挙げられる。バイオマス繊維の例としては、限定されるものではないが、木材、非木材、およびそれらの組合せから形成される繊維が挙げられる。
強化成分は、布地であり得る。布地は、本明細書で検討されるとおり、繊維から形成され得る。布地の例としては、限定されるものではないが、縫合布、織布、およびそれらの組合せが挙げられる。布地は、一方向性、多軸性、およびそれらの組合せであり得る。強化成分は、繊維と布地の組合せであり得る。
プリプレグは、マトリックス成分を強化成分中に含浸させることによって得られ得る。強化成分中へのマトリックス成分の含浸は、様々な方法によって達成され得る。プリプレグは、圧延、浸漬、噴霧、または他のこのような操作によって強化成分とマトリックス成分とを接触させることによって形成され得る。プリプレグ強化成分が、プリプレグマトリックス成分と接触させられた後、溶媒は揮発によって除去され得る。溶媒が揮発化される間および/または揮発化された後で、プリプレグマトリックス成分は、硬化、例えば、部分的に硬化され得る。溶媒の揮発および/または部分的硬化は、B−ステージングと称され得る。B−ステージ化生成物は、プリプレグと称され得る。
一部の用途の場合、B−ステージングは、60℃から250℃の温度への曝露によって起こることができ;例えば、B−ステージングは、65℃から240℃、または70℃から230℃の温度への曝露によって起こり得る。一部の用途の場合、B−ステージングは、1分間(min)から60分間の期間で起こることができ;例えば、B−ステージングは、2分間から50分間、または5分間から40分間の期間で起こり得る。しかしながら、一部の用途の場合、B−ステージングは、別の温度および/または別の期間で起こり得る。
1つまたは複数のプリプレグは、硬化されて(例えば、より完全に硬化されて)、硬化生成物を得てもよい。プリプレグは、さらに硬化される前にある形状に層状化および/または形成され得る。一部の用途の場合(例えば、電気積層品が製造されている場合)、プリプレグの層は、導電性材料の層と交互にされ得る。導電性材料の一例としては、限定されるものではないが、銅箔が挙げられる。次いで、プリプレグ層は、マトリックス成分がより完全に硬化されるような条件に曝露され得る。
より完全に硬化した生成物を得る方法の一例は、圧締(pressing)である。1つまたは複数のプリプレグは、それが所定の硬化時間間隔の間、硬化力を受けるプレス中に入れて、より完全に硬化した生成物を得ることができる。プレスは、80℃から250℃の硬化温度を有することができ;例えば、プレスは、85℃から240℃、または90℃から230℃の硬化温度を有することができる。1つまたは複数の実施形態について、プレスは、より低い硬化温度からより高い硬化温度に傾斜時間間隔にわたって傾斜をつけられている硬化温度を有する。
圧締の間、1つまたは複数のプリプレグは、プレスによって硬化力を受け得る。硬化力は、10キロパスカル(kPa)から350kPaである値を有してもよく;例えば、硬化力は、20kPaから300kPa、または30kPaから275kPaである値を有してもよい。所定の硬化時間間隔は、5秒間から500秒間である値を有してもよく;例えば、所定の硬化時間間隔は、25秒間から540秒間、または45秒間から520秒間である値を有してもよい。硬化生成物を得る他の方法について、他の硬化温度、硬化力値、および/または所定の硬化時間間隔が可能である。さらに、この方法は、プリプレグをさらに硬化させることを繰り返して、硬化生成物を得てもよい。
種々の実施形態について、本明細書で検討されるように、本開示の硬化性組成物から形成される硬化生成物は、少なくとも150℃のガラス転移温度を有し得る。
種々の実施形態について、本明細書で検討されるように、本開示の硬化性組成物から形成される硬化生成物は、300℃から500℃の熱分解温度を有することができ;例えば、熱分解温度は、359℃から372℃、または363℃から368℃であり得る。
種々の実施形態について、本明細書で検討されるように、本開示の硬化性組成物から形成される硬化生成物は、1GHzで3.1未満の誘電率を有することができ;例えば、1GHzでの誘電率は、2.92から3.02、または2.91から2.89であり得る。
種々の実施形態について、本明細書で検討されるように、本開示の硬化性組成物から形成される硬化生成物は、1GHzで0.01未満の散逸率を有することができ;例えば、1GHzでの散逸率は、0.003から0.01、または0.004から0.007であり得る。
以下の実施例は、本開示の範囲を例証するために示されるが、本開示の範囲を限定するものではない。実施例は、本開示のターポリマーを含む硬化性組成物の方法および具体的な実施形態を与える。本明細書で提供される場合、硬化性組成物は、とりわけ、シアネート基を組み入れることなく、望ましい熱的特性および電気的特性を与え得る。
材料
SMA(登録商標)EF−40(SMA40)、(スチレン化合物−無水マレイン酸コポリマー)、Sartomer Company,Inc.から入手可能。SMA40は、4:1のスチレン対無水マレイン酸モル比、10,500の重量平均分子量、2.3の分子量分布、および215mgKOH/mgの酸価を有する。
SMA(登録商標)EF−60(スチレン化合物−無水マレイン酸コポリマー)、Sartomer Company,Inc.から入手可能。SMA60は、6:1のスチレン対無水マレイン酸モル比、11,500の重量平均分子量、2.1の分子量分布、および156mgKOH/mgの酸価を有する。
SMA(登録商標)EF−100(スチレン化合物 無水マレイン酸コポリマー)、Elf Atochem,Inc.から入手可能。
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(溶媒)、Sinopharm Chemical Co.から入手可能。
アニリン(アミン化合物)、(99.0%以上の純度)、Sigma Aldrichから入手可能。
メタノール(分析等級)、Sinopharm Chemical Co.から入手可能。
無水酢酸(分析等級)、Sigma Aldrichから入手可能。
酢酸ナトリウム(分析等級)、Sigma Aldrichから入手可能。
テトラヒドロフラン(硬化剤)(THF)(HPLC)、Sigma Aldrichから入手可能。
無水マレイン酸(97%純度)、Sinopharm Chemical Co.から入手可能。
シクロヘキサノン(溶媒)、(分析等級)、Sinopharm Chemical Co.から入手可能。
メチルエチルケトン(溶媒)、(分析試薬)、Sinopharm Chemical Co.から入手可能。
2−メチルイミダゾール(触媒)、(分析等級)、Sinopharm Chemical Co.から入手可能。
D.E.R.560(エポキシ樹脂)、Dow Chemical Companyから入手可能。
DCPD EPICLONE HP7200L(商標)(HP7200)(エポキシ樹脂)、Dai Nippon Chemicalから入手可能。
トリエタノールアミン(TEA)(硬化剤)、Dow Chemical Companyから入手可能。
スチレン−無水マレイン酸コポリマーの変性
本開示のターポリマーを形成するために、スチレン−無水マレイン酸(SMA)コポリマーをアニリンで変性した。変性スチレン無水マレイン酸(すなわち、ターポリマー)は、「AN−SMA」と称される。スチレン無水マレイン酸コポリマーのSMA40およびSMA60を用いて、ターポリマーを形成した。スチレン−無水マレイン酸コポリマーの変性において、無水マレイン酸基の種々のモルパーセント(理論比)をアニリンと反応させる。
以下において、「SMA40−60」は、SMA40を、スチレン無水マレイン酸コポリマーとして使用し、かつ無水マレイン酸基の60モルパーセントをアニリンと反応させたことを示す。同様に、「AN−SMA60−60」は、SMA60をスチレン無水マレイン酸コポリマーとして使用し、かつ無水マレイン酸基の60モルパーセントを反応させたことを示す。言い換えれば、「AN−SMA40−60」の最初の数字(すなわち、「40」)は、どのスチレン−無水マレイン酸コポリマーが使用されたかを示し、「AN−SMA40−60」の2番目の数字(すなわち、「60」)は、アニリンと反応させた無水マレイン酸基のモルパーセントを示す。
ターポリマーの処方(すなわち、変性スチレン−無水マレイン酸コポリマー)を表Iに要約する。
AN−SMA40−60の調製
還流凝縮器、温度計および窒素注入口を備えた250mlの三つ口フラスコに、SMA40を添加する。フラスコ中で一定の窒素圧を保つために、窒素出口をU字管を介してシリコーン油で密封する。125ミリリットル(ml)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)をフラスコに注ぎ入れて、SMA40を溶解させる。窒素をフラスコに加えて、空気を5分間除去する。SMA40およびDMFの溶液を50℃に加熱し、維持する。この溶液に、SMA40がDMFに完全に溶解した後、1.65グラム(g)のアニリンを添加する。2時間(hrs)後、温度を50℃から100℃に上昇させる。温度が100℃に到達すると、7.26gの無水酢酸および1.50gの酢酸ナトリウムをフラスコに添加する。無水酢酸および酢酸ナトリウムを添加した5時間後、熱源を取り除いて反応を終了させ、フラスコの内容物をおおよそ20℃に自然冷却させる。反応物質を磁気式撹拌下で過剰のメタノール中に滴下することによって、AN−SMA40−60生成物をメタノール中で沈殿させる(反応物質溶液対メタノールの容量比は、1対10である)。ろ過後に最終的なAN−SMA40−60生成物を収集した。次いで、ポリマーをドラフト内に数時間入れ、メタノール残留物をさらに除去した。最後に、AN−SMA40−60ターポリマーを真空オーブン中120℃で12時間乾燥させた。
AN−SMA40−100の調製
以下の変更とともに、AN−SMA40−60における手順を繰り返す:2.75gのアニリン、12.1gの無水酢酸、および2.5gの酢酸ナトリウムの使用。
AN−SMA40−80の調製
以下の変更とともに、AN−SMA40−60における手順を繰り返す:2.20gのアニリン、9.68gの無水酢酸、および2.0gの酢酸ナトリウムの使用。
AN−SMA40−40の調製
以下の変更とともに、AN−SMA40−60における手順を繰り返す:1.10gのアニリン、4.84gの無水酢酸、および1.0gの酢酸ナトリウムの使用。
AN−SMA60−100の調製
以下の変更とともに、AN−SMA40−60における手順を繰り返す:SMA40に代えてSMA60、1.93gのアニリン、7.85gの無水酢酸、および1.70gの酢酸ナトリウムの使用。
AN−SMA60−60の調製
以下の変更とともに、AN−SMA40−60における手順を繰り返す:SMA40に代えてSMA60、1.16gのアニリン、4.71gの無水酢酸、および1.02gの酢酸ナトリウムの使用。
AN−SMA60−40の調製
以下の変更とともに、AN−SMA40−60における手順を繰り返す:SMA40に代えてSMA60、0.77gのアニリン、3.14gの無水酢酸、および0.368gの酢酸ナトリウムの使用。
ガラス転移温度
未変性SMA40コポリマー、未変性SMA60コポリマー、および変性スチレン無水マレイン酸ポリマー(すなわち、ターポリマー)のガラス転移温度(Tg)を決定した。
変性および未変性のSMA40およびSMA60のポリマーについてのガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)(TA Instruments Q2000)により決定した。変性および未変性ポリマーの試料(約6.0〜10.0mg)を、以下のサイクルでDSC中に置いた。サイクル1:初期温度:20℃、最終温度:180℃、および傾斜率=20℃/分。サイクル2:初期温度:180℃、最終温度:20℃、および傾斜率=マイナス(−)20℃/分。サイクル3:初期温度:23℃、最終温度:200℃、および傾斜率=10℃/分。ガラス転移温度は、DSC曲線の変曲点によって決定した。
未変性および変性のSMA40およびSMA60のポリマーのガラス転移温度を表IIに示す。
無水マレイン酸含有量
変性および未変性のSMA40およびSMA60のポリマーの無水マレイン酸の構成単位の濃度を、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)(Nicolet6700FTIR分光計)を用いて決定し、これらの結果を表IIに示す。分子篩によって乾燥させておいたテトラヒドロフラン中に無水マレイン酸を別個に溶解させることによって、検量線試料を調製した。SMA40、AN−SMA40−100、AN−SMA40−80、AN−SMA40−60、AN−SMA40−40、SMA60、AN−SMA60−100、AN−SMA60−60、およびAN−SMA60−40の部分を100℃の真空オーブン中に120分間入れ、それらの部分をデシケータ中で冷却し、冷却された部分のそれぞれをそれぞれのテトラヒドロフラン部分中に溶解させることによって、試験試料を調製した。検量線準備および未知の無水マレイン酸濃度試験用に、液体セルを備えたNicolet(商標)6700を用いた。FTIRスペクトルの1780cm−1ピークを、無水マレイン酸カルボニルの振動に割り当てた。ピーク高さは、無水マレイン酸濃度に比例し、検量線を確立するために用いた。検量線を用いて、表IIに示すデータを決定した。
表IIからわかるように、変性スチレン−無水マレイン酸ポリマーは、ガラス転移温度の増加を示す。例えば、未変性SMA40試料のTgを変性SMA40試料のTgと比較する際に、変性SMA40試料は、7℃から18℃のTgの増加を示す。さらに、未変性SMA60試料のTgを変性SMA60試料のTgと比較すると、変性SMA60試料は、16℃から18℃のTgの増加を示す。
実施例1〜4および比較例A〜B
実施例1〜4は、ターポリマー(すなわち、変性スチレン−無水マレイン酸ポリマー)を含む硬化性組成物である。比較例A〜Bは、未変性SMA40および未変性SMA60を含む硬化性組成物を示す。実施例1〜4の処方を表IIIに示し、比較例A〜Bの処方を表IVに示す。
実施例1〜4
ターポリマー(すなわち、変性スチレン−無水マレイン酸ポリマー)のそれぞれの部分を、メチルエチルケトンおよび/またはシクロヘキサノンのそれぞれの部分に別個に溶解させ、次いで、それぞれの部分のそれぞれにD.E.R.(商標)560を添加し、次いで、10wt%溶液を形成するようにメタノール中に溶解させた2−メチルイミダゾールをそれぞれの部分のそれぞれに添加することによって、実施例1〜4(硬化性組成物)を形成した。実施例1〜4は、50%の非揮発性有機物wt%を有した。表IIIは、実施例1〜4の組成を示す。
比較例A〜B
比較例A〜Bのために、未変性SMA40およびSMA60を、それぞれ用いた以外は、実施例1〜4のように、比較例A〜Bを形成した(ここで、実施例1〜2は、変性SMA40を用い、実施例3〜4は、変性SMA60を用いる)。表IVは、比較例A〜Bの組成を示す。
ゲル化時間試験
実施例1〜4および比較例A〜Bを、171℃ホットプレート上でストローク硬化によってゼラチン時間を評価した。実施例1〜4のゲル化時間の結果を表Vに示し、比較例A〜Bの結果を表VIに示す。
表Vのデータは、硬化性組成物(実施例1〜4)が、171℃の温度で247sから280のゲル化時間を有することを示す。実施例1〜4のゲル化時間は、比較例A〜B(これらは、表VIに示すように、それぞれ、242sおよび247sのゲル化時間を有する)よりわずかに高い。したがって、実施例1〜4のゲル化時間は、比較例A〜Bよりわずかに高いが、ゲル化時間は、依然として実質的に400s未満である。
熱的特性分析のための積層品試料
実施例1〜4および比較例A〜Bの硬化性組成物を、E−ガラス繊維マット表面に刷毛塗りした。このガラス繊維マットを良好な空気流を有する177℃オーブン中に180s入れ、プリプレグを得た。プリプレグを200℃で1から4時間ホットプレスして、熱的特性分析のための積層品を得た。実施例1〜4および比較例A〜Bの硬化条件、ガラス転移温度、および分解温度は、それぞれ、表VIIおよび表VIIIに示す。
電気的特性分析のためのエポキシプラーク試料
実施例1〜4および比較例A〜Bのプリプレグを粉に粉砕して、プリプレグ粉を形成し、このプリプレグ粉を1片の平坦なアルミニウムホイル上に置き、次いで、プリプレグ粉と一緒のアルミニウムホイルを金属平板上に置いた。この集合体を、プリプレグ粉が溶融するまで195℃に加熱した。溶融プリプレグ粉を別のアルミニウムホイルで覆い、次いで、金属平板をそのアルミニウムホイル上に置いた。この集合体を195℃で1時間ホットプレスした。0.3ミリメートル(mm)の厚さを有する気泡を含まないエポキシプラークを得た。実施例1〜4および比較例A〜Bの誘電率および散逸率の値を、それぞれ、表VIIおよび表VIIIに示す。
熱的特性分析
ガラス転移温度:実施例1〜4および比較例A〜Bの積層品試料のガラス転移温度を決定した。RSA III動的機械的熱分析器(DMTA)(TA Instruments)を用いて、実施例1〜4および比較例A〜Bのガラス転移温度を決定し、それらの結果を、それぞれ、表VIIおよび表VIIIに示す。DMTAは、周波数6.28ラジアン/s、初期温度30.0℃、最終温度350.0℃、および傾斜率3.0℃/分を用いた。
分解温度:熱安定性分析を用いて、実施例1〜4および比較例A〜Bの硬化生成物の分解温度を決定し、それらの結果を、それぞれ、表VIIおよび表VIIIに示す。熱安定性分析は、TA Instrumentsから入手可能なQ5000機械を用い、20.0℃/分の加熱速度を用いた。分解温度は、材料の5%重量減少が生じた時点の温度として決定した。
電気的特性分析
誘電率:実施例1〜4および比較例A〜Bの硬化生成物のそれぞれ0.3ミリメートル(mm)厚試料の誘電率を、Agilent E4991A RFインピーダンス/材料分析器を用いてASTM D−150によって決定し、それらの結果は、それぞれ、表VIIおよび表VIIIにある。
散逸率:実施例1〜4および比較例A〜Bの硬化生成物のそれぞれ0.3mm厚試料の散逸率を、Agilent分析器を用いてASTM D−150により決定し、それらの結果は、それぞれ、表VIIおよび表VIIIにある。
表VIIのデータは、実施例1〜4の硬化生成物が、169℃から193℃のガラス転移温度を有したことを示す。表VIIIのデータは、比較例A〜Bが、それぞれ、162℃および152℃のガラス転移温度を有したことを示す。本開示のターポリマーを組み入れる1〜4の硬化性組成物は、ターポリマーを組み入れない硬化性組成物と比較して、Tgを増加させることがわかる。
表VIIのデータは、実施例1〜4が、362℃から372℃の分解温度を有したことを示す。表VIIIのデータは、比較例A〜Bが、それぞれ354℃および343℃の分解温度を有したことを示す。
表VIIのデータは、実施例1〜4のそれぞれ0.3mm厚試料が、1GHzで2.83から3.06の誘電率を有したことを示す。表VIIIのデータは、比較例A〜Bが、それぞれ、1GHzで2.91および3.02の誘電率を有したことを示す。
表VIIのデータは、実施例1〜4のそれぞれ0.3mm厚試料が、1GHzで0.004から0.009の散逸率を有したことを示す。表VIIIのデータは、比較例A〜Bが、それぞれ、1GHzで0.006および0.011の散逸率を有したことを示す。
異なる硬化温度の効果を決定するために、実施例4は2つの異なる硬化条件で硬化させた。表VIIでわかるように、実施例4を用いて2つの硬化生成物間の結果を比較すると、異なる硬化条件が、硬化生成物の特性にわずかな影響を与え得ることがわかる。
積層品特性:表IXは、実施例3および比較例Bから調製した積層品の硬化条件、樹脂含有量、ガラス転移温度、誘電率、散逸率、および剥離強度を示す。剥離強度は、WILA008により決定する。
表IXのデータは、実施例3(変性SMA(AN−SMA60−60)を含む)から調製した積層品が、比較例B(未変性SMA60を含む)よりも20℃高いガラス転移温度を有することを示す。実施例3の誘電率および散逸率は、比較例Bをわずかに上回る改善を示す。さらに、実施例3から形成した積層品の剥離強度は、未変性SMA60から調製した積層品を26.06%上回る改善を示す。
実施例5〜16:エポキシ基対MAHのモル割当量の変化の効果
実施例5〜16は、硬化性組成物の形成におけるエポキシ基対無水マレイン酸のモル比の変化の効果を示す。実施例5〜16について、硬化性組成物は、AN−SMA60−40およびDCPD−エポキシ(HP7200)を用いることによって調製した。
実施例5〜16は、ターポリマーを含む硬化性組成物から形成した硬化生成物である。実施例5〜16は、AN−SMA60−40ターポリマーの部分をMEKのそれぞれの部分に別個に溶解させ、次いで、HP7200をそれぞれの部分のそれぞれに添加し、次いで、TEAを添加することによって形成した。実施例5〜16の処方を表Xに示す。
ガラス転移温度(Tg)
実施例5〜16の硬化樹脂のTgは、窒素流とともに、TA Instruments(Q2000 V24.7)からのDSCによって測定した。ソフトウェアは、「Universal Analysis V4.5A」であった。それぞれの実施例の試料(6〜10mg)をアルミニウム製パンに入れ、パン蓋で覆い、クリンプした。試料をDSC Q2000装置内に置いた。3回の同一加熱サイクルを行った。初期温度は40℃に設定した。試料を、10℃/分の傾斜率で40から250℃に加熱した。傾斜後、試料を250℃で5分間保持し、次いで、試料を−20℃/分の傾斜率で40℃に冷却した。これを、さらに2回繰り返した。Tgを、加熱傾斜上の3番目の温度サイクルで転移についてDSCソフトウェアにより決定した。実施例5〜16の結果を表XIに示す。
誘電率(Dk)/散逸率(Df)
実施例5〜16の誘電率および散逸率は、実施例1〜4に関して本明細書で記載した方法を用いて決定した。実施例5〜16の結果を表XIに示す。
無水マレイン酸含有量
実施例5〜16の硬化性組成物から形成した硬化生成物の無水マレイン酸含有量は、実施例1〜4に関して本明細書で記載した方法によって決定した。実施例5〜16の結果を表XIに示す。
表XIのデータは、エポキシ基対無水マレイン酸のモル比が、ガラス転移温度に影響を与えることを示す。例えば、1.0:1.0から2.7:1.0の範囲のモル比を有する硬化性組成物の硬化生成物は、150℃を超えるガラス転移温度を有する。さらに、1.3:1.0から1.9:1.0の範囲のモル比を有する硬化性組成物の硬化生成物は、173℃のガラス転移温度を有する。表XIIでわかるように、エポキシ対無水マレイン酸のモル比がいったん1.0:1.0から2.7:1.0の範囲外になると、ガラス転移温度、誘電率、および散逸率は、140℃および141℃に低下する。
比較変性スチレン無水マレイン酸A(AN−SMA1000)
比較変性スチレン無水マレイン酸A(AN−SMA1000)は、SMA1000をアニリンで変性することによって調製した。202gのSMA1000および134gのシクロヘキサノンを反応器に添加する。内容物を100℃に加熱し、次いで、結果として生じる混合物を97℃から103℃に維持しながら、46.5gのアニリンを反応器に添加する。アニリンの添加終了後、反応を100℃で4時間行い、次いで、反応混合物を160℃に加熱し、12時間還流下で反応させた。反応混合物を100℃に冷却し、それに159gのトルエンを添加して、スチレンと、無水マレイン酸と、N−フェニルマレイミドとのターポリマーを含む溶液を得た。この溶液の固形分は、48重量%であった。
残留アニリン分析
残留アニリンおよび無水マレイン酸(MAH)含有量は、本明細書で調製したAN−SMA60−40および比較変性スチレン無水マレイン酸Aについて決定した。残留アニリンは、Head Space(装置:Agilent G1888 Headspaceサンプラー/GCMS(装置:DB−VRXカラムを備える、Agilent 6890N ガスクロマトグラフィーシステム)により決定した。比較変性スチレン無水マレイン酸A〜Bの試料(0.5±0.05g)を、Head Space(HS)試料バイアルに添加し、HS/GCMS分析のために密封した。純アニリンを外部標準として用いた。アニリン標準を、DMF中約0.1g/5mLで調製した。溶液のアニリン(10マイクロリットル(μl))を、HS試料バイアルに注入した。アニリン濃度を、上記のとおりに作成した1点外部較正(one spot external calibration)によって計算した。無水マレイン酸含有量は、本明細書で記載したとおりに決定した。結果を表XIIに示す。
表XIIでわかるように、比較変性スチレン無水マレイン酸A(AN−SMA1000)中の残留アニリンは、AN−SMA60−40より非常に高い。
比較例C〜F
比較例C〜Fは、変性スチレン無水マレイン酸コポリマーを含む硬化性組成物であり、ここで、スチレン無水マレイン酸コポリマーは、SMA1000である。比較例C〜Fの処方を表XIIIに示す。
比較例C
比較例Cは、米国特許第6,667,107号の比較例13から取ったデータである。
比較例D
上で検討したとおりの、得られた比較変性スチレン無水マレイン酸A(AN−SMA1000)を用いる。手順は以下のとおりである:エポキシ樹脂(100重量部)およびAN−SMA1000(100重量部)を混合する。触媒(2−MI)を添加して、ゲル化時間を200sから300sの範囲内に調整する。
比較例E
15mlの得られた比較変性スチレン無水マレイン酸A(AN−SMA1000)(シクロヘキサノンおよびトルエン中48%溶液)を150mlのメタノールに一滴ずつ添加し、白色固体が沈殿した。10分間撹拌後、白色固体をろ過して取り出し、次いで、真空オーブン中100℃で6時間乾燥させた。得られた白色固体は、固体AN−SMA1000であり、次いで、これを用いて、溶媒としてメチルエチルケトンを用いてHP7200を硬化させた。得られたエポキシ対MAHのモル比は、5.8:1.0である。
比較例F
以下の変更とともに、比較例Eを繰り返す:得られたエポキシ対MAHのモル比は1.0:1.0である。
熱的特性分析のための積層品試料
比較例D〜F(比較例Cは、米国特許第6,667,107号の比較例13から取ったデータである)の硬化性組成物を、E−ガラス繊維マット表面に刷毛塗りした。このガラス繊維マットを、良好な空気流を有する177℃オーブン中に180s間置いて、プリプレグを得た。このプリプレグを200℃で1から4時間ホットプレスして、熱的特性分析のための積層品を得た。比較例C〜Fのガラス転移温度を、表XIVに示す。
電気的特性分析のためのエポキシプラーク試料
比較例D〜F(比較例Cは、米国特許第6,667,107号の比較例13から取ったデータである)のプリプレグを粉に粉砕し、プリプレグ粉を形成し、このプリプレグ粉を1片の平坦なアルミニウムホイル上に置き、次いで、プリプレグ粉と一緒のアルミニウムホイルを金属平板上に置いた。この集合体を、プリプレグ粉が溶融するまで195℃に加熱した。溶融プリプレグ粉を別のアルミニウムホイルで覆い、次いで、金属平板をそのアルミニウムホイル上に置いた。この集合体を195℃で1時間高温圧締めした。0.3ミリメートル(mm)の厚さを有する気泡を含まないエポキシプラークを得た。比較例C〜Fの誘電率および散逸率の値を、表XIVに示す。
ガラス転移温度(Tg)
比較例C〜Fの硬化樹脂のTgは、実施例5〜16に関して本明細書で記載した方法を用いて測定した。比較例C〜Fの結果を表XIVに示す。
誘電率(Dk)/散逸率(Df)
比較例C〜Fの誘電率および散逸率は、実施例1〜4に関して本明細書で記載された方法を用いて決定した。比較例C〜Fの結果を表XIVに示す。
無水マレイン酸含有量
比較例C〜Fの硬化性組成物から形成した硬化生成物の無水マレイン酸含有量は、実施例1〜4に関して本明細書で記載した方法によって決定した。比較例C〜Fの結果を表XIVに示す。
比較例C〜Eの表XIV中のデータは、比較変性スチレン無水マレイン酸A(すなわち、AN−SMA1000)が、実施例5〜16のものに匹敵するガラス転移温度を与えないことを示す。比較例Fは、エポキシ基対無水マレイン酸のモル比の変化によって、Tgが有意に上昇し得ることを示す。したがって、エポキシ対硬化剤の不適切な化学量論的比は、ガラス転移温度を低下させ得る。
実施例17〜18および比較例G〜H
実施例17〜18は、本明細書で記載したターポリマーを1.0:1.0から2.7:1.0の範囲内で用いることによって得られた所望の特性を示す。比較例Gは、硬化性組成物へのシアネート基の添加の効果を示し、比較例Hは、シアネートを有さず、かつターポリマーを1.0:1.0から2.7:1.0の範囲外で含む効果を示す。
実施例17〜18
実施例17〜18は、ターポリマーを含む硬化性組成物から形成した硬化生成物である。実施例17〜18は、AN−SMA60−60ターポリマーの部分をMEKのそれぞれの部分中に別個に溶解させ、次いで、DER(商標)560をそれぞれの部分のそれぞれに添加し、次いで、10wt%溶液を形成するようにメタノール中に溶解させた2−メチルイミダゾールをそれぞれの部分のそれぞれに添加することによって形成した。実施例17〜18の処方を表XVに示す。
比較例G〜H
比較例G〜Hは、比較変性スチレン−無水マレイン酸ポリマーの部分をテトラヒドロフランのそれぞれの部分に別個に溶解させ、次いで、DCPD EPICLONE HP7200L(商標)およびビスフェノールAシアネートをそれぞれの部分のそれぞれに添加することによって形成した。比較例G〜Hの処方を表XVに示す。
ガラス転移温度(Tg)
実施例17〜18および比較例G〜Hの硬化樹脂のTgは、実施例1〜4に関して本明細書で記載した方法を用いて測定した。実施例17〜18および比較例G〜Hの結果を表XVIに示す。
誘電率(Dk)/散逸率(Df)
実施例17〜18および比較例G〜Hの誘電率および散逸率は、実施例1〜4に関して本明細書で記載した方法を用いて決定した。実施例17〜18および比較例G〜Hの結果を表XVIに示す。
無水マレイン酸含有量
実施例17〜18および比較例G〜Hの硬化性組成物から形成した硬化生成物の無水マレイン酸含有量は、実施例1〜4に関して本明細書で記載した方法によって決定した。実施例17〜18および比較例G〜Hの結果を表XVIに示す。
実施例17〜18はそれぞれ、1.0:1.0から2.7:1.0の範囲内であるエポキシ対無水マレイン酸のモル比を有する。表XVIでわかるように、実施例17〜18のガラス転移温度は、150℃を超え、かつシアネートを含まない。
比較例Gは、シアネートと一緒にAN−SMA1000を用いる硬化性組成物の硬化生成物を示す。比較例Gのガラス転移温度は、197℃であるが、これは、シアネートが、硬化生成物のガラス転移温度を上昇させることを示す。比較例Hは、シアネートなしで、かつエポキシ基対第2の構成単位のモル比が3.77:1(これは、1.0:1.0から2.7:1.0の範囲外である)であるAN−SMA1000を用いる硬化性組成物の硬化生成物を示す。表XVIでわかるように、比較例Hのガラス転移温度は143℃であり、これは、シアネートを含む比較例Gよりもかなり低く、かつ実施例17〜18のガラス転移温度より低い。