[本発明の実施形態の説明]
最初に、本明細書に用いる用語について説明する。
実施形態に係る水中・水底ケーブル線路は、非陸上部(海底、湖底、川底などの水底や、海中、湖や川などの淡水中といった水中)に設けられる水上・水中設備同士の間、このような設備と陸上設備の間を電気的に接続するケーブル線路であって、水底に沿って布設されるケーブル線路や、浮遊設備に接続されて浮遊状態で布設されるケーブル線路に利用することができる。前者のケーブル線路は、代表的には、従来の海底ケーブルを利用した線路と同様である。後者のケーブル線路は、従来、ダイナミックケーブルなどと呼ばれるケーブルを利用した線路と同様である。従って、実施形態に係るケーブル線路を「水中・水底ケーブル線路」と呼ぶ。また、浮遊設備とは、海や湖、川などの水上又は水中に浮遊する水上・水中浮遊設備のことである。水上浮遊設備としては、代表的には、洋上プラント、洋上発電所(浮体式風力発電機、波力発電機)などが挙げられる。水中浮遊設備としては、代表的には、海中発電所(潮流発電機、海流発電機)などが挙げられる。
以下、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)実施形態に係る水中・水底ケーブル線路は、導体と、導体の外周に設けられた電気絶縁層と、電気絶縁層の外周に設けられたしゃ水層とを備える複数のケーブルコアと、複数のケーブルコアの長手方向の少なくとも一部を一つに纏める一体機構と、を備える。また、この水中・水底ケーブル線路は、複数のケーブルコアが水中に浮遊した状態で布設される浮遊部を有し、浮遊部の少なくとも一端が浮遊設備に接続される。
実施形態に係る水中・水底ケーブル線路は、上述した従来の多心一括型の水底ケーブルの線路とは異なり、多心のケーブルコアに対する一括のしゃ水層、一括の鉄線がい装、及びケーブルコアの撚り合わせた隙間を埋める介在のいずれも備えていない(以下、上記一括のしゃ水層、上記一括の鉄線がい装、上記介在をまとめて、従来の鉄線がい装・介在等と呼ぶ)。具体的には、実施形態に係る水中・水底ケーブル線路は、長手方向の少なくとも一部が、複数のケーブルコアが後述の周囲部材によって囲まれたり、撚り合わせられたりして一つに纏められた構造である。そのため、実施形態に係る水中・水底ケーブル線路に備える各ケーブルコアは、布設前後のいずれにおいても、それぞれが独立して(ある程度)挙動可能である。このことから、実施形態に係る水中・水底ケーブル線路は、複数のケーブルコアを備えていながら、例えば、同じ導体サイズの単心ケーブルと同等程度の機械的特性を有し、浮遊設備の挙動などに追従し易い構造、といえる。ここで、多心一括型ケーブルと、この多心の各導体サイズと同等の導体サイズを有する単心ケーブルとを比較した場合、単心ケーブルの外径の方が小さいため、同じ曲げ半径で生じる歪みは、単心ケーブルの方が小さくなる。従って、実施形態に係る水中・水底ケーブル線路は、(A)従来の多心一括型の水底ケーブルと同様の布設形態とする場合、曲げ歪みや繰り返し曲げといった機械的履歴に伴う歪み変化を軽減でき、機械的寿命を長くできる。また、上述の構造は、許容最小曲げ半径を小さくできることから、実施形態の水中・水底ケーブル線路は、(B)従来の多心一括型の水底ケーブルに比して、浮遊部に設ける弛み(S字状などに布設されて「スラック」と呼ばれることがある)を小さくできる。更には、実施形態の水中・水底ケーブル線路は、上記(A)及び(B)の双方の効果を享受できる。
その他、実施形態の水中・水底ケーブル線路を構成する水中・水底ケーブルは、ドラムに巻き付けるときの許容最小曲げ半径をも小さくできる。そのため、ドラムに巻き取り可能な長さ(1本のケーブルコアの長さ、又は複数のケーブルコアを撚り合わせた撚り合わせ体の長さ)を、従来の鉄線がい装・介在等を備える多心一括型の水底ケーブルに比べてより長くすることができる。換言すれば、陸上搬送可能なケーブル長を長くすることができる。実施形態に係る水中・水底ケーブル線路は、例えば、1本のケーブルコアを巻き取ったドラムを複数個陸上搬送して、陸上に据え付けた各ドラムからケーブルコアを繰り出し、適宜、複数のケーブルコアを周囲部材で纏めながら布設することが挙げられる。又は、予め複数のケーブルコアを撚り合わせた撚り合わせ体を巻き取ったドラムを陸上搬送して、陸上に据え付けたドラムから撚り合わせ体を繰り出して布設することが挙げられる。従って、実施形態に係る水中・水底ケーブル線路は、例えば、ターンテーブルなどを備える比較的大型な布設船(布設専用船や台船など)を用いることなく、容易に布設できるため、布設工事に要する期間の短縮や作業性の向上、更に工事費の削減を図ることもできる。
また、上述のように、布設時に、複数のケーブルコアを周囲部材で纏めることで、水中・水底ケーブル線路を容易に構築でき、作業性にも優れる。
線路構成としては、例えば、全長に亘って一体機構を備える形態、全長に亘って間隔をあけて一体機構を備える形態、一部の区間にのみ一体機構を備える形態が挙げられる。また、浮遊部のうち、一端側(浮遊設備に接続される側)の領域に一体機構を備えず、一端側以外の残部側の領域に一体機構を備える形態、一端側と残部側の双方の領域に一体機構を備える形態が挙げられる。更に、上述した着底部を有する場合は、浮遊部に一体機構を備えず、着底部に一体機構を備える形態が挙げられる。ここで、浮遊部又はその一端側に一体機構を備えていない形態では、浮遊部又はその一端側で各ケーブルコアが分離された状態であり、各ケーブルコアが分離されていることで、その部分の許容最小曲げ半径が、各ケーブルコアの許容最小曲げ半径に対応する。従って、この線路構成では、従来の多心一括型の水底ケーブルに比して、浮遊部又はその一端側において、繰り返し曲げに伴う歪み変化をより小さくしたり、浮遊部に設ける弛みをより小さくしたりできる。
(2)実施形態に係る水中・水底ケーブル線路として、一体機構は、複数のケーブルコアの外周を周囲部材で纏めた囲い構造である形態が挙げられる。
上記形態は、複数のケーブルコアがそれぞれ(ある程度)挙動可能であるため、上述のように同じ曲げ半径で生じる歪みを多心一括型ケーブルよりも小さくしたり、許容最小曲げ半径を小さくしたりできる。従って、上記形態は、曲げ歪みや繰り返し曲げに伴う歪み変化を小さくしたり、浮遊部に設ける弛みを小さくしたりすることができる。また、上記形態は、上述のように布設時に容易に構築でき、作業性に優れる。更に、上記形態は、複数のケーブルコアをそれぞれ独立して1本ずつドラムに巻き取った状態で布設現場に搬送して、布設時に、周囲部材を取り付けて、複数のケーブルコアを纏めながら布設することができる。例えば、3本のケーブルコアを備える水中・水底ケーブル線路を構築する場合、1つのドラムに1本のケーブルコアを巻き取り、このようなドラムを3つ用意して、布設時に全てのケーブルコアを周囲部材で纏めることで構築できる。また、(a)ドラムに巻き付けるケーブル長さは、ケーブル外径のほぼ2乗に反比例して長くなる、(b)ドラムに巻き付けるときの許容最小曲げ半径が小さいことから巻胴径が小さいドラムを利用できる。そのため、上述したように、ドラムに巻き取り可能な長尺体(ここではケーブルコア)の長さを、従来の鉄線がい装・介在等を備える多心一括型の水底ケーブルに比べて長くできる。なお、周囲部材は、線路の周囲環境などに応じて、材質、形状、大きさなどを適宜変更することが可能であり、例えば、上述の着底部と浮遊部とを有する線路の場合、着底部と浮遊部とで、取り付ける周囲部材の材質、形状、大きさなどを異ならせることができる。上記形態において、複数のケーブルコアを周囲部材で拘束した束ね構造としてもよい。
(3)実施形態に係る水中・水底ケーブル線路として、一体機構は、複数のケーブルコアを撚り合わせた撚り構造である形態が挙げられる。
上記形態は、撚り構造(撚り合わせ体)であるため、繰り返し曲げに伴う歪み変化をより小さくできる。また、上記形態は、撚り合わせ体の相対的な動きを浮遊設備の挙動追従に利用できる。撚り合わせ体の相対的な動きの大きさによっては、追従動作のために浮遊部に設ける弛みをより小さくしたり、省略したりすることができる。更に、上記形態は、同じ導体サイズのコア単体よりも曲げ剛性が高く、局所的な座屈が生じ難くなる。
(4)実施形態に係る水中・水底ケーブル線路として、浮遊部のうち、一端側以外の残部側に一体機構を備える形態が挙げられる。
浮遊部のうち、残部側に一体機構を備えることで、その部分で複数のケーブルコアが過度にばらけることを防止できる。各ケーブルコアが自由に動き過ぎてケーブルコア同士が衝突することを抑制し易い。
(5)実施形態に係る水中・水底ケーブル線路として、浮遊部の一端側は、一体機構を備えておらず、各ケーブルコアが分離されている形態が挙げられる。
上述したように、浮遊部、特にその一端側は、水中に浮遊した状態で浮遊設備に接続されるため、浮遊設備の挙動などに追従することによって、繰り返し曲げに伴う歪み変化が生じる。浮遊部の一端側で各ケーブルコアが分離された状態とすることで、その部分の許容最小曲げ半径が、各ケーブルコアの許容最小曲げ半径に対応する。従って、上記形態は、従来の多心一括型の水底ケーブルに比して、機械的特性(例、繰り返し曲げに対する疲労特性)により優れる。そして、繰り返し曲げに伴う歪み変化をより小さくしたり、浮遊部に設ける弛みをより小さくしたりできる。
(6)実施形態に係る水中・水底ケーブル線路として、浮遊部の一端側も、一体機構を備える形態が挙げられる。
浮遊部の一端側も一体機構を備えることで、浮遊部で複数のケーブルコアが過度にばらけることを防止できる。各ケーブルコアが自由に動き過ぎてケーブルコア同士が衝突することを抑制し易い。
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、実施形態に係る水中・水底ケーブル線路をより詳細に説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。図において、同一符号は、同一名称物を示す。
(水中・水底ケーブル)
まず、実施形態に係る水中・水底ケーブル線路に利用される水中・水底ケーブルについて説明する。先に、図1〜図4を参照して、一体機構として周囲部材で纏めた囲い構造を備える形態(形態1〜形態5)を説明し、次に、図5を参照して、一体機構として撚り構造を備える形態(形態6)を説明する。
始めに、以下に説明する水中・水底ケーブルに備える各構成要素の用語について説明する。各構成要素の詳細は、後述する。
(複数のケーブルコアを一括する部材)
・周囲部材
複数のケーブルコアが過度にばらけないように纏める機能を有する部材である。
代表的な形状は、環体、筒体(環体よりも長いもの)、螺旋体などが挙げられる。周囲部材には、複数のケーブルコアのそれぞれを相対的にある程度移動可能に纏める部材又は実質的に移動不可能に拘束する部材の他、次述する防護管や収納部材を含む。
・・防護管
複数のケーブルコアを機械的に保護する機能を有する。
周囲部材のうち、特に、筒体、螺旋体といった、内部に複数のケーブルコアを収納可能なものが挙げられる。
収納対象は、ジャケット(後述)や個別がい装(後述)を有していないケーブルコアが挙げられる。
・・収納部材
周囲部材のうち、特に、筒体といった、内部に複数のケーブルコアを収納可能なものが挙げられる。
収納対象は、ジャケット(後述)を備えるケーブルコアや、個別がい装(後述)を備えるケーブルコアが挙げられる。
(各ケーブルコアにそれぞれ個別に配置される部材)
・個別がい装
金属及び非金属の少なくとも一方からなる線材を所定のピッチで巻回して形成されるものとする。
従来の鉄線がい装と同程度の機械的強度(特に布設時の張力を確保可能な抗張力など)と、防護機能(投錨などによる外傷防止、及びその他の外因からの機械的保護)とを備え、剛性が比較的高い。
・ジャケット
金属及び非金属の少なくとも一方からなる帯状材を巻回して形成されるものとする。
防護機能(特に投錨以外の外因からの機械的保護)を備え、上記個別がい装を備えるケーブルコアに比較して柔軟性に優れ、曲げ易い。
[形態1]
<全体構成>
形態1に係る水中・水底ケーブル1は、図1に示すように、複数のケーブルコア10と、複数のケーブルコア10の長手方向の少なくとも一部を一つに纏める周囲部材20とを備える。以下、ケーブルコア10及び周囲部材20の概要を説明し、一具体例としてケーブルコア10A及び環体の結束部材20Aを説明し、最後に周囲部材20を備える水中・水底ケーブル1の製造方法・布設方法の一例を説明する。
図1に示すケーブルコア10Aは、内側から順に、導体101と、導体101の外周に設けられた電気絶縁層102と、電気絶縁層102の外周(直上でなくてもよい)に設けられたしゃ水層103とを備える。
導体101は、例えば、銅や銅合金からなる複数の素線を撚り合わせた撚り線によって構成される。電気絶縁層102は、種々の電気絶縁材によって構成される。例えば、電気絶縁層102は、CVケーブルに利用されている架橋ポリエチレンなどの現存する電力ケーブルの絶縁構造を適用することができる。ケーブルコア10は、電気絶縁層102の内側(導体102の直上)に内部半導電層(図示せず)を備え、電気絶縁層102の外側(電気絶縁層102の直上)に外部半導電層(図示せず)を備えることができる。内部半導電層や外部半導電層は、半導電性の樹脂などによって構成することができる。内部半導電層、電気絶縁層102(主絶縁層)、及び外部半導電層の三層は、上述の樹脂などを同時に押し出した押出層とすると、容易に形成できる。押出後、適宜、架橋することができる。その他、電気絶縁層102の外周にしゃへい層(図示せず)を備えることができる。しゃへい層は、種々の導電性材料、例えば、金属、導電性樹脂などによって構成することができる。
しゃ水層103(しゃ水シース)は、水密性を有する種々の構成が利用できる。例えば、しゃ水層103は、テープ材の巻回層や、押出層によって構成することができる。上記テープ材は、耐食性に優れる金属、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムやその合金、鉛などから構成されるもの、上記金属からなる金属層とポリエチレンなどの樹脂からなる樹脂層との積層体から構成されるもの(例えば、鉛ラミネートテープ)などが挙げられる。上記押出層の材質は、ポリエチレンなどの樹脂、鉛などの金属が挙げられる。その他、しゃ水層103の外周に、樹脂からなる防食層(図示せず)を備えることができる。水中・水底ケーブル1は、しゃ水層103を備えるケーブルコア10を構成要素とすることで、ケーブルコア10が海中などの水中に露出してもよく、周囲部材20内に海水などの水が浸漬した状態で線路を構築することができる。
上記した構成を備える複数のケーブルコア10は並列されて、その長手方向の少なくとも一部が周囲部材20によって覆われた囲い構造である。ここでの並列とは、図1に示すように俵積みなどの積み重ねられた状態が挙げられる。積み重ねた状態とすると、複数のケーブルコア10の群において、見かけのケーブル外径を小さくできる。水中・水底ケーブル1に備えるケーブルコア10の数(ここでは周囲部材20によって纏められる数)は、図1では3本を示すが、2本又は4本以上とすることができる。
周囲部材20は、複数のケーブルコア10の群がつくる外形を周方向に覆って、これらのケーブルコア10を一つに纏めた状態に維持する。この維持は、例えば、(1)3本のケーブルコア10を結束する場合、角を丸めた三角状となるように環状の周囲部材20を3本のケーブルコア10に接触させて結束する、(2)3本のケーブルコア10の外周に、その表面から間隔をあけて環状の周囲部材20を配置して、各ケーブルコア10がばらけないように纏める、などで行える。周囲部材20は、この機能を有していれば、種々の材質、任意の形状、任意の大きさとすることができる。
周囲部材20の材質は、例えば、金属、特に耐食性や機械的強度に優れるステンレス鋼などの金属、FRPといった繊維強化樹脂、その他の樹脂、ゴムなどの非金属、これら金属と非金属との複合材が挙げられる。金属製の周囲部材20は、特に、引張り強さといった機械的特性に優れる。非金属性の周囲部材20は、軽量である上に、耐食性に優れる。複合材から構成される周囲部材20は、優れた機械的特性、耐食性を有する上に、軽量でもある。
周囲部材20の形状は、上述の材質からなる帯状材(幅が狭いもの。図1)、線材、編組材、シート材(幅が広いもの)などの長尺材を環状又は渦巻き状に巻き付けて構成される環体(ケーブルコア10の長手方向に沿った長さが比較的短いもの)、上記した長尺材を螺旋状に巻回して構成される螺旋体(図示せず)、筒体(ケーブルコア10の長手方向に沿った長さが比較的長いもの。図3,図4)、複数の分割片を組み合わせて環状又は筒状に構成される組合体(図示せず)などが挙げられる。図1に示す結束部材20Aは、帯状材を環状に巻き付けた環体である。複数のケーブルコア10は、結束部材20Aによって束ねられ拘束された束ね構造である。環体や組合体などには、環状の状態又は筒状の状態を保持可能な止め部(図示せず)を備えると、複数のケーブルコア10の群の外周に周囲部材20を容易に取り付けられる。止め部は、例えば、ラチェット機構を有するものや、凹部又は貫通孔と凸部とをそれぞれ有し、凸部などの弾性により両者の係合状態を維持可能なものなどが挙げられる。螺旋体は、スパイラル鋼帯などのように、それ自体で螺旋形状を維持可能なものが挙げられる。螺旋体の巻回ピッチは適宜選択することができる。ギャップ巻きの螺旋体でも、密巻きの螺旋体(見掛けが筒体に類似する形態)でもよい。組合体は、例えば、一対の半円筒状の分割片を備える形態、断面が円弧状である複数の分割片を備え、これら分割片を組み合わせて環体や筒体になる形態などが挙げられる。
水中・水底ケーブル1の一形態として、並列された複数のケーブルコア10の群に対して、その長手方向に適宜な間隔をあけて複数個の周囲部材20を離散して備える形態が挙げられる。この形態の各周囲部材20はそれぞれ、上述の環体、螺旋体、筒体、及び組合体から選択される一つ、又は上述の環体、螺旋体、筒体、及び組合体から選択される二つ以上の組み合わせのいずれも利用できる。複数の螺旋体や筒体を備える場合には、各螺旋体の長さ(ケーブルコア10の長手方向に沿った長さ。以下、周囲部材の長さについて同様)や各筒体の長さが全て等しい形態、全て異なる形態、一部のものの長さが等しい形態のいずれも利用できる。螺旋体の長さや筒体の長さがある程度長い場合、一つの周囲部材20のみを備える形態とすることもできる。水中・水底ケーブル1に備える周囲部材20の個数が多いほど、又は一つの周囲部材20の長さ(単位長)が長いほど、並列された複数のケーブルコア10の群を周囲部材20によって囲む長さを長くできる(結束部材20Aの場合には拘束する長さを長くできる)ため、複数のケーブルコア10がばらけ難く、水中・水底ケーブル1を取り扱い易い。上記個数が少ないほど、又は上記単位長が短いほど、各ケーブルコア10のそれぞれが、相対的挙動が行い易い上に、曲げなども行い易い。そのため、複数のケーブルコア10と周囲部材20との一体化作業が行い易く、ケーブルを容易に構築できる。特に、図1に示す水中・水底ケーブル1Aでは、環体の周囲部材20(結束部材20A)としていることで、筒体などと比較して、周囲部材20の取り付け作業を行い易い。
上述の環体、螺旋体、筒体、及び組合体から選択される二つ以上の組み合わせとして、例えば、複数の環体(例えば、結束部材20A)と、複数の筒体や螺旋体とを備える形態が挙げられる。この形態では、環体に上記筒体や螺旋体の接続箇所を固定したり、環体に上記筒体や螺旋体の接続用の係合部を設けたりすることで、上記環体を筒体などの固定箇所に利用できる。この場合、環体は一定間隔ごとに設けることが好ましい。
周囲部材20とケーブルコア10との間の隙間に、少なくとも一つのスペーサ(図示せず)を介在させることができる。スペーサを配置することで、複数のケーブルコア10の相互の位置を保持し易い。複数のスペーサを配置する場合には、水中・水底ケーブル1の長手方向に局所的に配置させると、複数のケーブルコア10が過度に拘束されず、上述の追従動作を良好に行える。
<製造方法・布設方法>
周囲部材20を備える水中・水底ケーブル1は、複数のケーブルコア10を用意し、これらのケーブルコア10を並べた状態で、長手方向の適宜な箇所に周囲部材20を取り付けるなどすることで製造することができる。特に、周囲部材20の取り付けは、布設現場にて、布設時に行うことができる。具体的には、まず、各ケーブルコア10をそれぞれ巻き取ったドラムを用意して、これらのドラム(この場合では3つのドラム)を布設現場に搬送する。そして、これらのドラムをそれぞれ陸上に据付け(又は適宜な船に載置し)、各ドラムからそれぞれケーブルコア10を繰り出して、繰り出した複数のケーブルコア10を並べると共に、適宜、周囲部材20を取り付けるなどして、水中・水底ケーブル1を形成しながら布設する。布設するときは、例えば、水中・水底ケーブル1にブイ(図示せず)などを適宜取り付けて、水中・水底ケーブル1を海などの水面に浮かべていき、適宜ブイを取り外して、水中・水底ケーブル1を沈める。
<効果>
形態1の水中・水底ケーブル1は、並列された複数のケーブルコア10の群の外周に、複数のケーブルコアを一括した従来の鉄線がい装・介在等を備えていないため、ケーブルコア10同士が相対的にある程度動くことができる。従って、形態1の水中・水底ケーブル1は、曲げ歪みや繰り返し曲げに伴う歪み変化を小さくすることができて、疲労特性に優れる。特に、図1に示す水中・水底ケーブル1Aでは、環体の周囲部材20としていることで、筒体など備える場合と比較して、周囲部材20間に存在する各ケーブルコア10が相対的に動き易く、曲げや上述の追従動作などがより行い易いと期待される。水中・水底ケーブル1は、従来の鉄線がい装・介在等を備える多心一括型の水底ケーブルのケーブル外径と比較してケーブル外径が小さいことからも、曲げ歪みや歪み変化を小さくすることができる。
また、形態1の水中・水底ケーブル1は、許容最小曲げ半径が小さいことで、例えば、一端側が浮遊設備に接続され、少なくとも一部が水中に浮遊した状態で布設される場合に、浮遊設備の挙動などに追従するために必要な弛みを小さくできる。従って、水中・水底ケーブル線路における浮遊部が存在する領域(着底部と浮遊部との間隔)を小さくできる。形態1の水中・水底ケーブル1は、比較的短距離のニーズに良好に対応することができる。
更に、形態1の水中・水底ケーブル1は、上述したようにケーブルコア10を巻き取ったドラムを用意し、布設時に、周囲部材20の取り付けとケーブルの布設を同時に行うことができる。特に、図1に示す水中・水底ケーブル1Aでは、環体の周囲部材20としていることで、筒体などと比較して短い部材であるため、布設現場に周囲部材20を搬送し易い上に、布設時に周囲部材20を容易に取り付けられ、取り付け作業性に優れる。また、布設現場に搬送する状態を水中・水底ケーブル1ではなく、ケーブルコア10とすることで、ドラムに巻き取り可能な長さを、従来の鉄線がい装・介在等を備える多心一括型の水底ケーブルよりも長くできる。従って、形態1の水中・水底ケーブル1では、陸上搬送可能な長さを長くでき、布設専用船などを用いずに簡単に布設できる。
[形態2]
別の形態の水中・水底ケーブルとして、ケーブルコア10Aとは異なる構成のケーブルコアを備える形態を説明する。このケーブルコアは、それ自身が投錨などの外力に対する保護部材を備える。例えば、複数のケーブルコアのうち、少なくとも1本のケーブルコアが、しゃ水層の外周に個別がい装を備える。この個別がい装は、金属及び非金属の少なくとも一方からなる線材を所定のピッチで巻回して形成される。より具体的には、図2に示すケーブルコア10Bのように、内側から順に、導体101と、電気絶縁層102と、しゃ水層103とを備え、更に、その外周(直上でなくてもよい)に個別がい装12Bを備える形態が挙げられる。この形態の水中・水底ケーブルは、ケーブルコア10Bが個別がい装12Bを備える以外の点は、形態1と同様の構成とすることができるため、以下、個別がい装12Bを詳細に説明する。
個別がい装12Bは、複数の線材を所定のピッチで巻回して構成される線材層であり、ケーブルコア10Bに防護機能や抗張力機能を付与できる。各線材は、鉄、鋼、ステンレス鋼などといった金属からなる金属線(亜鉛などのめっきを有していてもよい)、FRPといった繊維強化樹脂やケブラー(登録商標)といったアラミド繊維などの高強度な非金属からなる非金属線などが挙げられる。各線材には、丸線が好適に用いられる。上記金属線と上記非金属線とを組み合わせて利用することもできる。また、個別がい装12Bは、単層構造及び多層構造のいずれも利用できる。ケーブルコアのほぼ全長に亘って個別がい装12Bを備えるケーブルコア10Bは、工場などで、しゃ水層103などを形成後、その外周に上記線材を巻回することで製造できる。
形態2の水中・水底ケーブルは、各ケーブルコア10Bが個別がい装12Bを備えることで、複数のケーブルコア10Bに対して一括した鉄線がい装を備えていなくても、ケーブルコア10B(特に個別がい装12Bよりも内側に位置する部材)が損傷し難く、機械的特性に優れる。例えば、複数のケーブルコア10Bと図1に示す環体の周囲部材20とを備える水中・水底ケーブルを利用して線路を構築した場合、各ケーブルコア10Bの外周面の大部分が、周囲部材20に覆われず、外部(海中などの水中や海底などの水底)に露出する。しかし、形態2の水中・水底ケーブルは、個別がい装12Bを備えるケーブルコア10Bを構成要素とすることで、従来の鉄線がい装・介在等を備える多心一括型の水底ケーブルと同様に、ケーブルコア10Bの損傷を効果的に抑制できる。また、個別がい装12Bは、その材質などによっては、水中・水底ケーブルに付与される張力に対する抗張力材としての機能も期待できる。個別がい装12Bを抗張力材に利用する場合、ケーブルコア10Bの全長に亘って個別がい装12Bを備えるケーブルとするとよい。
水中・水底ケーブルを構成する全てのケーブルコア10Bが、個別がい装12Bを備えると、全てのケーブルコア10Bの損傷を抑制でき、好ましい。水中・水底ケーブルを構成する複数のケーブルコアのうち、一部のみが個別がい装12Bを備えるケーブルコア10Bである形態でもよい。残部は、ケーブルコア10A(図1)又は後述するジャケット14Cを備えるケーブルコア10Cとすることができる。なお、この段落の記載事項は、後述する形態3のジャケット14Cについても同様に当てはまる。
[形態3]
機械的に保護可能な部材を備える別の形態のケーブルコアとして、ケーブルコア10Aとは異なる構成のケーブルコアを備える形態を説明する。このケーブルコアは、ジャケットを備える。具体的には、複数のケーブルコアのうち、少なくとも1本のケーブルコアが、しゃ水層の外周にケーブルコアを機械的に保護するジャケットを備える。このジャケットは、金属及び非金属の少なくとも一方からなる帯状材を巻回又は縦添えして形成される。より具体的には、図2に示すケーブルコア10Cのように、内側から順に、導体101と、電気絶縁層102と、しゃ水層103とを備え、更に、その外周(直上でなくてもよい)にジャケット14Cを備える形態が挙げられる。この形態の水中・水底ケーブルは、ケーブルコア10Cがジャケット14Cを備える以外の点は、形態1と同様の構成とすることができるため、以下、ジャケット14Cを詳細に説明する。
ジャケット14Cは、単数又は複数の帯状材を巻回して構成されるものであり、ケーブルコア10Cに保護機能を付与できる。帯状材は、テープ材、シート材、織物及び編組材の少なくとも1種が挙げられる。帯状材の材質は、鉄、鋼、ステンレス鋼などといった金属(亜鉛などのめっきを有していてもよい)、FRPといった繊維強化樹脂などの高強度な非金属などが挙げられる。上記金属の帯状材と上記非金属の帯状材とを組み合わせて利用することもできる。織物や編組材は、上記金属からなる金属線、上記非金属からなる非金属線、及びケブラー(登録商標)といったアラミド繊維などの繊維の少なくとも一つを織ったもの、又は編んだものが挙げられる。テープ材といった幅が狭い帯状材は、巻回対象の外周に、螺旋状に巻回(密巻き又はギャップ巻き)することでジャケット14Cを形成できる。シート材といった幅が広い帯状材は、巻回対象の周方向に渦巻き状に巻回することでジャケット14Cを形成できる。また、ジャケット14Cは、単層構造及び多層構造のいずれも利用できる。ジャケット14Cを備えるケーブルコア10Cは、しゃ水層103などの外周に帯状材を巻回などし、固定部材(図示せず)で適宜固定することで製造できる。帯状材の巻回状態を調整することで、ケーブルコア10Cのほぼ全長に亘ってジャケット14Cを連続して備える形態とすることもできるし、ジャケット14Cを設けることが望まれる部分にのみ、ジャケット14Cを備える形態(即ち、ケーブルコア10の一部にのみジャケット14Cを備える形態)とすることもできる。
形態3の水中・水底ケーブルは、各ケーブルコア10Cがジャケット14Cを備えることで、複数のケーブルコア10Cに対して一括した鉄線がい装を備えていなくても、ケーブルコア10C(特にジャケット14Cよりも内側に位置する部材)の損傷が損傷し難く、機械的特性に優れる。例えば、複数のケーブルコア10Cと図1に示す環体の周囲部材20とを備える水中・水底ケーブルを利用して線路を構築した場合、各ケーブルコア10Cの外周面の大部分が、周囲部材20に覆われず、外部(海中などの水中や海底などの水底)に露出する。しかし、形態3の水中・水底ケーブルは、ジャケット14Cを備えるケーブルコア10Cを構成要素とすることで、従来の鉄線がい装・介在等を備える多心一括型の水底ケーブルと同様に、ケーブルコア10Cの損傷を効果的に抑制できる。また、ジャケット14Cは、その材質や帯状材の配置形態などによっては、水中・水底ケーブルに付与される張力に対する抗張力材としての機能も期待できる。更に、ジャケット14Cは、線材によって構成する個別がい装12Bと比較して簡素な構成であるため、実施形態3の水中・水底ケーブルは、製造性にも優れる。ケーブルコア10Cは、個別がい装10Bを備えるケーブルコア10Bと比較して柔軟性に優れ、曲げ易いことから、周囲部材20の取り付けなども行い易い点でも、実施形態3の水中・水底ケーブルは、製造性に優れる。
[形態4]
複数のケーブルコアを纏める周囲部材20を備える別の形態として、図3に示す水中・水底ケーブル1Dのように、筒体の周囲部材として、収納部材20Dを備える形態を説明する。この形態の水中・水底ケーブル1Dは、周囲部材が筒体である以外の点は、形態1〜3と同様の構成とすることができるため、以下、収納部材20Dを詳細に説明する。
収納部材20Dの材質は、上述したように金属、非金属、及び複合材のいずれも利用できる。収納部材20Dは、ある程度の長さを有する筒体であることから、複数のケーブルコア10に対して、その長手方向に亘ってある程度の長さを一体に覆うことができる。このような収納部材20Dは、一体機構(=囲み構造)を構成する主要素としても機能する。加えて、ケーブルコア10に対する機械的な保護をある程度期待できる(特に、保護機能のある形態は、後述の形態5を参照)。
しかし、収納部材20Dが樹脂やゴムなどの比較的柔らかい材質から構成されている場合は、水中・水底ケーブル1Dを曲げ易いものの、ケーブルコア10に対する機械的な保護があまり期待できない。この場合でも、ケーブルコア10自体が機械的に保護可能な部材を備え、保護機能を十分に有していれば、ケーブルコア10が損傷し難い水中・水底ケーブル1Dを得ることができる。そこで、筒状の周囲部材(収納部材20D)に収納するケーブルコア10として、形態2で説明した個別がい装12Bを備えるケーブルコア10Bや、形態3で説明したジャケット14Cを備えるケーブルコア10Cとすることが挙げられる。更に、この形態では、収納部材20Dの外周にステンレス鋼や亜鉛めっき鋼などの高強度で耐食性に優れる金属からなる金属線や金属テープ(図示せず)などを用いた補強層などを備えることができる。この場合、強度などの機械的特性を向上させたり、補強層(金属線や金属テープ)を抗張力材として機能させることができる。上記した補強層は、金属線や金属テープを適宜なピッチで螺旋状に巻回した巻回層や、金属テープの縦添え層とすることが挙げられる。
その他、筒状の収納部材20Dは、種々の長さを選択することができる。即ち、水中・水底ケーブル1Dのほぼ全長に亘って収納部材20Dを備える形態、水中・水底ケーブル1Dの長手方向の一部にのみ収納部材20Dを備える形態のいずれも利用できる。前者の場合、複数の収納部材20Dによって、ケーブルコア10の全長を覆う形態とすることができる。この場合、各収納部材20Dは、上述した組合体とすると、取り付け作業性に優れる。また、各収納部材20Dの端部にそれぞれ、別の収納部材20Dを連結できるように連結部を具える構成とするとよい。この場合、一つの収納部材20Dの長さを陸上搬送可能な長さにすることで、布設現場に搬送し易い上に、布設時に取り扱い易い。また、連結構造とすることで、水中・水底ケーブル1Dのほぼ全長又は所定の区間に亘って収納部材20Dが存在する場合でも、水中・水底ケーブル1Dを曲げ易い。その他、上述のように環体の結束部材20Aと、筒体の収納部材20Dとを組み合わせた形態とすることができる。例えば結束部材20Aを収納部材20Dの固定箇所に利用する場合、結束部材20Aは一定間隔ごとに設けることが好ましい。なお、この段落の記載事項は、後述する形態5の防護管20Eについても同様に当てはまる。
[形態5]
複数のケーブルコアを纏める筒体を備える別の形態として、図4に示す水中・水底ケーブル1Eのように、防護管20Eを備える形態を説明する。この形態の水中・水底ケーブル1Eは、結束部材20Aに代えて防護管20Eを備える以外の点は、形態1と同様の構成とすることができるため、以下、防護管20Eを詳細に説明する。
防護管20Eは、複数のケーブルコア10を収納可能な中空体であり、特に、ケーブルコア10を機械的に保護する機能を有する。防護管20Dは、この保護機能を有していれば、種々の材質、形状のものが利用できる。例えば、防護管20Eは、ステンレス鋼などといった高強度な金属からなる金属管、FRPといった繊維強化樹脂などの高強度な非金属からなる非金属管、金属線と非金属線とを組み合わせた網目材からなる複合管などが挙げられる。また、防護管20Eは、コルゲート管などの表面が凹凸形状の波付き管(図示せず)とすると、可撓性に優れて曲げなどを良好に行える。即ち、三次元的な挙動を良好に行える水中・水底ケーブル1Eとすることができる。また、波付き管の外周、又は非金属管の外周に、上述した金属線や金属テープの補強層(図示せず)を備える防護管20Eとすると、保護機能を更に高められる。
防護管20Eは、上述した形態4の収納部材20Dと同様に、複数のケーブルコア10を一つに纏める一体機構としても機能する。また、防護管20Eは、上述した高強度な材料から構成されていることで、水中・水底ケーブル1Eに付与される張力に対する抗張力材としての機能も期待できる。つまり、形態5の水中・水底ケーブル1Eに備える防護管20Eは、一体機構、ケーブルコア10を保護する保護機能、抗張力材としての機能、という複数の機能を兼ね備える。
形態5の水中・水底ケーブル1Eは、防護管20Eを備えることで、複数のケーブルコア10に対して一括した鉄線がい装を備えていなかったり、各ケーブルコア10が上述の個別がい装を備えていなかったりしても、ケーブルコア10のいずれもが損傷し難い。更に、防護管に布設時の張力に対する抗張力機能を持たせた場合には、機械的特性にも優れ、従来の鉄線がい装・介在等を備える多心一括型の水底ケーブルと同様に、ケーブルコア10の保護を十分に図ることができる。従って、形態5の水中・水底ケーブル1Eは、ケーブルコア10が個別がい装12B(図2)やジャケット14C(図2)を備えていないケーブルコア10A(図1)であっても、ケーブルコア10が損傷し難く、機械的強度にも優れる。
その他、防護管20Eを備える水中・水底ケーブルの一形態として、複数のケーブルコア10の群に対し、その長手方向の一部に防護管20Eを備え、他部に環状の結束部材20Aや筒状の収納部材20D、螺旋状の周囲部材(図示せず)を備える形態とすることができる。また、防護管20Eを備える水中・水底ケーブルの別の形態として、防護管20Eに収納される複数のケーブルコア10のうち、少なくとも1本が個別がい装12Bを備えるケーブルコア10B(図2)又はジャケット14Cを備えるケーブルコア10C(図2)とすることができる。更に、防護管20E(図4)を備える水中・水底ケーブルの別の形態として、環体や筒体の周囲部材(図示せず)の外周に、防護管20Eを備える形態とすることができる。例えば、上述したように、環体の結束部材20Aを防護管20Eの固定箇所に利用する場合、結束部材20Aは一定間隔ごとに設けることが好ましい。
[形態6]
<全体構成>
別の形態の水中・水底ケーブルとして、図5に示す水中・水底ケーブル1Fのように、複数のケーブルコア10(図5ではケーブルコア10A)が撚り合わせられた撚り構造である形態を説明する。
水中・水底ケーブル1Fに備える複数のケーブルコア10は、形態1で説明した個別がい装12B(図2)及びジャケット14C(図2)の双方を有していないケーブルコア10A、形態2で説明した個別がい装12Bを備えるケーブルコア10B(図2)、及び形態3で説明したジャケット14Cを備えるケーブルコア10C(図2)から選択されるいずれか一つとすることができる。又は、複数のケーブルコア10は、ケーブルコア10A,ケーブルコア10B,及びケーブルコア10Cから選択される少なくとも二つを組み合わせることができる。水中・水底ケーブル1Fに備えるケーブルコア10の撚り合わせ数は、図5では3本を示すが、2本又は4本以上とすることができる。
更に、水中・水底ケーブル1Fは、複数のケーブルコア10を収納する筒体(収納部材)を備える形態とすることができる。この筒体は、例えば、複数のケーブルコア10が個別がい装12Bを備えるケーブルコア10B(図2)、又はジャケット14C(図2)を備えるケーブルコア10Cである場合、形態4で説明した筒状の収納部材20D(図3)を利用することができる。又は、例えば、複数のケーブルコア10が個別がい装12Bやジャケット14Cを備えていない場合、つまりケーブルコア10Aである場合、形態5で説明した防護管20E(図4)を利用することが好ましい。
<製造方法・布設方法>
形態6の水中・水底ケーブル1Fは、工場などで、複数のケーブルコア10(10A,10B,10C)を撚り合わせることで製造することができる。そして、撚り合わせ体を巻き取ったドラムを用意して、このドラムを布設現場に搬送し、ドラムを陸上に据付け(又は適宜な船に載置し)、ドラムから撚り合わせ体を繰り出して布設する。布設するときは、例えば、撚り合わせ体にブイ(図示せず)などを適宜取り付けて、水中・水底ケーブル1Fを海などの水面に浮かべていき、適宜ブイを取り外して、水中・水底ケーブル1Fを沈める。
上記した筒体(収納部材20Dや防護管20E)を備える形態では、上述したように撚り合わせ体を巻き取ったドラムと上記した筒体とを用意し、布設時に、撚り合わせ体の外周に筒体を取り付けるなどして撚り合わせ体を収納しながら布設する。
<効果>
形態6の水中・水底ケーブル1Fは、複数のケーブルコア10の撚り合わせ体であり、従来の鉄線がい装・介在等を備えていないため、ケーブルコア10同士が相対的にある程度動くことができる。従って、形態6の水中・水底ケーブル1Fは、例えば、曲げ歪みや繰り返し曲げに伴う歪み変化を小さくすることができる。特に、形態6の水中・水底ケーブル1Fは、撚り構造(撚り合わせ体)であること自体でも、曲げに対してケーブルコア10に加わる外側の伸び歪みと内側の圧縮歪みとが打ち消し合うように働くことから、曲げ歪みや繰り返し曲げに伴う歪み変化をより小さくできる。また、水中・水底ケーブル1Fのケーブル外径は、撚り合わせ体の包絡円の直径となり、従来の鉄線がい装・介在等を備える多心一括型の水底ケーブルのケーブル外径と比較して小さいことからも、曲げ歪みや歪み変化を小さくすることができる。よって、形態6の水中・水底ケーブル1Fは、曲げなどの機械的履歴による性能劣化をより抑制できると期待される。更に、形態6の水中・水底ケーブル1Fは、撚り合わせ体であることから、上述の追従動作や曲げなどがより行い易いと期待される。
また、形態6の水中・水底ケーブル1Fは、従来の多心一括型の水底ケーブルに比して、許容最小曲げ半径が小さいことで、少なくとも一部の一端側が浮遊設備に接続され、水中に浮遊した状態で布設される場合に、浮遊設備の挙動などに追従するために必要な弛みを小さくできる。場合によっては、上記した弛みを省略できる可能性がある。また、水中・水底ケーブル1Fは、撚り合わせ体の相対的な動きを浮遊設備の挙動追従に利用できる可能性がある。これらの点から、水中・水底ケーブル線路における浮遊部が存在する領域をより小さくできる。
更に、形態6の水中・水底ケーブル1Fは、布設現場に搬送する状態をケーブルコア10の撚り合わせ体とすることで、ドラムに巻き取り可能な長さを、従来の鉄線がい装・介在等を備える多心一括型の水底ケーブルよりも長くできる。従って、形態6の水中・水底ケーブル1Fは、陸上搬送可能な長さを長くでき、布設専用船などを用いずに簡単に布設できる。
上述した筒体(収納部材20D、防護管20E)を更に備える形態は、撚り構造に加えて、筒体という一体機構の主要素をも備えることで、取り扱い易い上に、筒体(特に防護管20E)によって、損傷し難い水中・水底ケーブル1Fとすることができる。
なお、浮遊部には、屈曲可能な支持・補強部材(図示せず)を備える形態とすることができる。支持・補強部材は、例えば、ケーブルコア10が巻き付けられてケーブルコア10を支持する複数の支持本体部と、棒状に並べられた支持本体部同士を、三次元的な挙動が可能なように接続する接続部とを備えるものが挙げられる。ケーブルコア10と支持本体部との間には、適切な間隔を設けて、ケーブルコア10を支持・補強部材によって支持する。このような支持・補強部材は、例えば、撚り合わせ体の中心部分につくられる隙間に配置させることが挙げられる。支持・補強部材を備えることで、ケーブルコア10の挙動を、支持・補強部材が屈曲可能な範囲内に制限することができる。そのため、例えば、ケーブルコア10の自重に起因する張力がケーブルコア10に過度に加わったり、局所的に曲げが集中したりすることを抑制できる。この結果、水中・水底ケーブル1Fに加えられる曲げなどを水中に浮遊した状態で布設される浮遊部全体に分散させたり、水中・水底ケーブル1Fの自重に起因する浮遊部の線形の偏歪などを防止したりすることができる。従って、水中・水底ケーブル1Fの機械的特性を向上することができ、ひいては、ケーブルの寿命の向上を図ったり、線路の信頼性を高めたりすることができる。
[その他の形態]
上述した形態1〜6の水中・水底ケーブルの変形例として、例えば、以下の構成の少なくとも一つを備える形態が挙げられる。
・複数のケーブルコアに加えて、光ファイバを備える光ファイバケーブルや金属導体を備える通信線などの通信用ケーブルを備える構成。
・複数のケーブルコアに加えて、張力を負担するテンションメンバを備える構成。
・複数のケーブルコアの群を周囲部材で纏めた囲み構造体及び複数のケーブルコアを撚り合わせた撚り構造体の少なくとも一方と、少なくとも1本のケーブルコア(少なくとも一つの囲み構造体、又は少なくとも一つの撚り構造体でもよい)とを周囲部材で更に纏めた部分を有する構成。
上記したテンションメンバには、ステンレス鋼線などの高強度で、耐食性に優れる金属線、更に樹脂などからなる防食層を備えた金属線、FRPといった繊維強化樹脂やアラミド繊維などの非金属線が利用できる。金属線と非金属線とを組み合わせて利用することもできる。テンションメンバは、特に、ケーブルコア10が個別がい装12Bやジャケット14Cを有していない場合や、防護管20Eを(全長に)有していない場合に備えることが好ましい。
通信用ケーブルやテンションメンバは、周囲部材で纏めた囲み構造では、上述したケーブルコアに周囲部材を取り付けなどするときに、即ち、布設時に、ケーブルコアに沿わせることができる。撚り構造では、工場などでケーブルコアを撚り合わせるときに通信用ケーブルやテンションメンバも同時に撚り合わせるとよい。
(水中・水底ケーブル線路)
上述した形態1〜形態6の水中・水底ケーブルは、海底などの水底や海中などの水中に布設される水底ケーブル線路や水中ケーブル線路の構築に利用することができる。以下、実施形態に係る水中・水底ケーブル線路を説明する。なお、以下に説明する実施形態の水中・水底ケーブル線路では、ケーブル線路に接続される浮遊設備として、代表的に、海上に浮遊する水上浮遊設備の場合を例に挙げ説明する。
<全体構成>
図6に示す水中・水底ケーブル線路は、水中・水底ケーブル1が海上に浮遊する浮遊設備60(例、洋上プラントや浮体式風力発電機など)と陸上設備200との間を電気的に接続するために布設され、ケーブル1(複数のケーブルコア)が海中に浮遊した状態で布設される浮遊部2を有し、浮遊部2の一端側が浮遊設備60に接続されている。一例としては、水中・水底ケーブル線路は、陸地Gから浮遊設備60に向けて布設される。図6に示す水中・水底ケーブル線路は、海底に沿って付設される着底部3と、浮遊部2を有し、陸地Gに設けられた陸上設備200(例、変電所など)と浮遊設備60との間をつないでいる。浮遊部2は、浮遊設備60の近傍に設けられ、水中・水底ケーブル1の中間部を水中中間ブイ70になどによって浮遊させ、水中中間ブイ70を介してS字状などのスラック(弛み)を設ける。この弛みは、潮の満干や波浪、台風の接近などによる上下左右移動やローリング、ピッチングなどの浮遊設備60の種々の挙動に対して、水中・水底ケーブル1自身の線形の変形でその動きを吸収できるように設けられる。
水中・水底ケーブル線路は、一連の水中・水底ケーブルで構築する他、複数の水中・水底ケーブルを海底で接続して線路を構築した形態、即ち中間接続部(図示せず)を有する形態とすることもできる。中間接続部を設ける箇所の一例しては、着底部3と浮遊部2との間(図6の破線円)が挙げられる。この場合、浮遊部2を有する区間を、上述した形態1〜6の水中・水底ケーブルで構成するとよい。また、浮遊部2の区間と、着底部3の区間では、それぞれ別の水中・水底ケーブルで構成して、ケーブルの仕様・構造を異ならせることができる。この場合、着底部3の区間は、浮遊部2の区間に比べて、投錨などによる外傷の可能性も高いことから、防護機能の高い構成を採用することが好ましい。例えば、浮遊部2の区間を、個別がい装12B(図2)やジャケット14C(図2)を有していない形態1の水中・水底ケーブル1A(図1)で構成し、着底部3の区間を、防護管20Eを備える形態5の水中・水底ケーブル1E(図4)で構成することが挙げられる。又は、浮遊部2の区間を、非金属製の個別がい装12Bを有する形態2の水中・水底ケーブル1B(図2)や、非金属製の防護管20Eを備える水中・水底ケーブル1Eで構成し、着底部3の区間を、金属製の個別がい装12Bを有する水中・水底ケーブル1Bや、金属製の防護管20Eを備える水中・水底ケーブル1Eで構成することが挙げられる。その他、浮遊部2の区間を、上述した形態1〜6の水中・水底ケーブル1で構成し、着底部3の区間を、従来の鉄線がい装・介在等を備える多心一括型の水底ケーブルで構成して、両ケーブルを接続した形態とすることもできる。
[実施例1]
浮遊部2についてより具体的に詳しく説明する。例えば図7に示す水中・水底ケーブル線路は、形態1で説明した周囲部材20を備える水中・水底ケーブル1A(図1)で構成されており、浮遊部2αを有する。上述したように、形態1の水中・水底ケーブル1は、複数のケーブルコアを一括する従来の鉄線がい装・介在等を備えていないため、ケーブルコア10同士が相対的にある程度動くことを許容できる。そのため、潮の満干や波浪、台風の接近などによる浮遊設備60の挙動などに対して、浮遊部2αに設けた弛み形状の変形によって追従しても、浮遊設備60の挙動などにより生じる繰り返し曲げに伴う歪み変化を小さくすることができる。或いは、その追従に必要な弛み(S字状などに設けられたスラック)を小さくできる。また、水中中間ブイ70の規模の縮小を図ることもできる。
[実施例2]
図8を参照して、浮遊部の別の一例を説明する。図8に示す水中・水底ケーブル線路は、浮遊部2βの一端側で各ケーブルコア10が分離されている以外の点は、図7に示す実施例1の浮遊部2αと同様の構成であるため、以下、相違点を中心に説明する。
浮遊部2の一端側、具体的には、水中中間ブイ70と浮遊設備60との間の区間は、浮遊設備60の挙動などに追従することに伴い、繰り返し曲げなどによる歪み変化を受ける。この例では、浮遊部2βの一端側は、その一部が周囲部材20を備えておらず、各ケーブルコア10が分離されている。そのため、各ケーブルコア10がそれぞれ独立して挙動することが可能であり、この部分の許容最小曲げ半径を、1本のケーブルコア10の許容最小曲げ半径と同程度にみなすことができる。従って、浮遊部2βにおいて、曲げ歪みや繰り返し曲げに伴う歪み変化を小さくしたり、浮遊設備60の挙動などに追従するために必要な上記した弛みをより小さくできる。また、水中中間ブイ70の規模の縮小を図ることもできる。
[実施例3]
図9を参照して、水中・水底ケーブル線路の別の形態を説明する。図9に示す水中・水底ケーブル線路は、形態6で説明した撚り構造の水中・水底ケーブル1F(図5)で構成されており、浮遊部2γを有する。上述したように、形態6の水中・水底ケーブル1は、複数のケーブルコアを一括する従来の鉄線がい装・介在等を備えていないため、ケーブルコア10同士が相対的にある程度動くことを許容できる。従って、浮遊部2γにおいて、曲げ歪みや繰り返し曲げに伴う歪み変化を小さくすることができる。特に、撚り構造であれば、曲げ歪みや繰り返し曲げに伴う歪み変化をより小さくできる。或いは、浮遊設備60の挙動などに追従するために必要な上記した弛みをより小さくできる。浮遊設備60の挙動が小さい環境であれば、実施例3の形態を利用すると、この弛みを省略することができる場合がある。よって、水中中間ブイ70の規模の縮小や、環境条件によっては水中中間ブイ70の省略を図ることもできる。浮遊部2γにおいて、適宜、ケーブルコア10の撚り構造の外周に周囲部材(例、形態1で説明した結束部材20A(図1)や形態4で説明した収納部材20D(図3)など)を取り付けてもよい(後述する実施例4の浮遊部2δにおいても同様)。
[実施例4]
図10を参照して、浮遊部の別の一例を説明する。図10に示す水中・水底ケーブル線路は、浮遊部2δの一端側で各ケーブルコア10が分離されている以外の点は、図9に示す実施例3の浮遊部2γと同様の構成であるため、以下、相違点を中心に説明する。
この例では、浮遊部2δの一端側は、その一部において撚りが解かれた状態で各ケーブルコア10が分離されている。そのため、各ケーブルコア10がそれぞれ独立して挙動することが可能であり、この部分の許容最小曲げ半径を、1本のケーブルコア10の許容最小曲げ半径と同程度にみなすことができる。従って、浮遊部2δにおいて、曲げ歪みや繰り返し曲げなどによる歪み変化を小さくしたり、浮遊設備60の挙動などに追従するために必要な上記した弛みをより小さくできる。また、水中中間ブイ70の規模の縮小を図ることもできる。なお、浮遊部2δの一端側は、布設時に、水中・水底ケーブル1Fの撚りを解いて布設するとよい。更に、図10に示すように、複数のケーブルコア10の過度のばらけを防止するため、浮遊部2δの一端側の各ケーブルコア10が分離された位置(図10では、周囲部材20と浮遊設備60との間)に、適宜、ケーブルコア10同士が相対的に過度に動くことを規制するばらけ防止部材80を取り付けてもよい。ばらけ防止部材80としては、例えば、ケーブルコア10同士を紐状のもので緩衝的に連結するものが挙げられる。図8に示す実施例2の浮遊部2βにおいても同様に、各ケーブルコア10が分離された位置に、適宜、ばらけ防止部材を取り付けてもよい。
[実施例5]
図11を参照して、浮遊部の別の一例を説明する。図11に示す水中・水底ケーブル線路は、浮遊部2εの一端側で、ケーブルコア10の撚りにゆとり(弛み)が設けられている以外の点は、図9に示す実施例3の浮遊部2γと同様の構成であるため、以下、相違点を中心に説明する。
この例では、浮遊部2εの一端側は、撚り構造(撚り合わせ体)にゆとり(弛み)を持たせた構造であるため、浮遊設備60の挙動などに追従し易く、その挙動を吸収するのに有効である。例えば、潮の満干や波浪などにより浮遊設備60が上下移動したときに、撚りが締まる・緩まることで浮遊設備60の挙動などに追従し、撚り構造そのものの変形で浮遊設備60の挙動を吸収できる。従って、実施例5の形態を利用すると、浮遊設備60の挙動などに追従するために必要な上記した弛みを更に小さくしたり、又は省略することがより容易になる。ケーブルコア10の撚り構造に弛みを持たせる手段としては、例えば、上述したジャケットなどの保護部材を各ケーブルコア10に取り付けたり、上述の支持・補強部材を配置したりすることにより、撚り合わせ体にゆとりを確保することが挙げられる。
上述した実施例の水中・水底ケーブル線路は、浮遊設備同士や、浮遊設備と着底設備との間をつなぐ電力線路にも適用することができる。