本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。以下の説明では、便宜的に、図1の右下側、左上側、左下側、右上側、上側、下側を、それぞれ印字装置1及びテープカセット30の前側、後側、左側、右側、上側、下側とする。
印字装置1を説明する。図2では、理解を容易にするために、カセットケース31の上面を取り除いている。図1に示すように、印字装置1は、略直方体形状の本体カバー2を備えている。印字装置1は、ケーブル(図示外)等を介してパーソナルコンピュータ(図示外。以下、PCという。)に接続可能である。例えば印字装置1は、PCから送信されるキャラクタ(文字、数字、図形等)のデータに基づいて、テープにキャラクタの印字を行う。
印字装置1の上面に、テープカセット30の交換時に開閉されるカセットカバー6が設けられている。本体カバー2に、テープカセット30を着脱可能な領域であるカセット装着部8が設けられている。カセット装着部8は、カセットカバー6が閉鎖位置にあるときに被覆され、カセットカバー6が開放位置にあるときに露出する。本体カバー2の左側面に、印字済みテープがカセット装着部8から排出される排出口111が設けられている。カセット装着部8と排出口111との間に、印字済みテープの搬送経路を形成するテープ排出部110が設けられている。テープ排出部110に、後述の切断機構80(図3参照)が設けられている。
図1及び図2に示すように、カセット装着部8の前部に、ヘッドホルダ74が立設されている。ヘッドホルダ74の前面に、発熱体(図示せず)を備えるサーマルヘッド10が設けられている。ヘッドホルダ74の後方に、リボン巻取軸95が立設されている。リボン巻取軸95は、テープカセット30のリボン巻取スプール44に着脱可能な軸体である。ヘッドホルダ74の左側に、テープ駆動軸100が立設されている。テープ駆動軸100は、テープカセット30のテープ駆動ローラ46に着脱可能な軸体である。
ヘッドホルダ74の前側に、軸支部121を中心に揺動可能なプラテンホルダ12が配置されている。プラテンホルダ12の左端部に、プラテンローラ15及び可動搬送ローラ14が回転可能に軸支されている。プラテンローラ15は、サーマルヘッド10に相対して、サーマルヘッド10と接離可能である。可動搬送ローラ14は、テープ駆動軸100に装着されているテープ駆動ローラ46に相対して、テープ駆動ローラ46と接離可能である。
テープカセット30を説明する。図1及び図2に示すように、テープカセット30は、箱状のカセットケース31を備えている。カセットケース31は、スプール類を回転可能に支持するための支持孔65〜68を有する。支持孔65は、第一のテープが巻回された第一テープスプール40を回転可能に支持する。支持孔67は、未使用のインクリボン60が巻回されたリボンスプール42を回転可能に支持する。支持孔68は、使用済みのインクリボン60を巻き取るためのリボン巻取スプール44を回転可能に支持する。支持孔66は、第二のテープが巻回された第二テープスプール(図示外)を回転可能に支持する。
図2は、レセプタタイプのテープカセット30を例示している。支持孔65は第一のテープである印字テープ57が巻回された第一テープスプール40を支持している。印字テープ57は、印字層と剥離層とが接着剤を介して積層されている積層テープである。レセプタタイプのテープカセット30では第二のテープが使用されないため、支持孔66は第二テープスプールを支持していない。
ユニット70を説明する。図3の右上側、左下側、右下側、左上側、上側、下側は、図1及び図2に示す印字装置1の前側、後側、左側、右側、上側、下側に対応する。図3では、図2に示すプラテンホルダ12の外装を省略している。
図3に示すように、ユニット70は、第一フレーム701、第二フレーム702、印字機構71、切断機構80等を備えている。第一フレーム701は、カセット装着部8(図1参照)の下側に配置された金属フレームである。印字機構71は、テープにキャラクタを印字するための機構であり、第一フレーム701に配置されている。印字機構71は、ヘッドホルダ74、サーマルヘッド10(図2参照)、プラテンホルダ12、プラテンローラ15、可動搬送ローラ14、リボン巻取軸95、テープ駆動軸100、図示外のテープ駆動モータ、複数のギア等を含む。
制御部20は、CPU、ROM、RAM等を有する電気基板であり、第一フレーム701の下側に配置されている。制御部20は、CPUがROMに記憶されているプログラムを実行することで、印字装置1の各種動作を制御する。
第二フレーム702は、金属フレームであり、第一フレーム701にねじ止めされている。第二フレーム702は、テープ排出部110(図1参照)の下側に配置される。切断機構80は、印字済みテープを切断するための機構であり、第二フレーム702に配置されている。第二フレーム702は、第二フレーム702の左端から上方に延びる支持板730を有する。支持板730の上端部に、後述のカッタ駆動モータ90が固定されている。
印字装置1の動作概要を説明する。図2に示す例では、レセプタタイプのテープカセット30が、カセット装着部8に装着されている。カセットカバー6(図1参照)が閉鎖されると、プラテンホルダ12はカセット装着部8に近接する。プラテンローラ15が印字テープ57及びインクリボン60を介してサーマルヘッド10を押圧する。同時に、可動搬送ローラ14が印字テープ57を介してテープ駆動ローラ46を押圧する。制御部20(図3参照)は印字動作の実行時に、図示外のテープ駆動モータを駆動する。駆動されたテープ駆動モータは、複数のギアを介してリボン巻取軸95、テープ駆動軸100、可動搬送ローラ14、及びプラテンローラ15が回転させる。
リボン巻取軸95がリボン巻取スプール44を回転することで、リボンスプール42から未使用のインクリボン60が引き出される。テープ駆動軸100がテープ駆動ローラ46を回転することで、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14とに挟まれる印字テープ57が搬送されて、第一テープスプール40から未使用の印字テープ57が引き出される。プラテンローラ15とサーマルヘッド10との間では、サーマルヘッド10が未使用のインクリボン60を使用して、未使用の印字テープ57の印字層に印字する。印字済みの印字テープ57は、テープ排出部110に搬送されて、後述するように切断機構80(図3参照)によって切断される。切断された印字テープ57は、排出口111から排出される。
切断機構80を説明する。以下の説明では、便宜的に、図3の左上側、右下側、右上側、左下側、上側、下側を、それぞれ切断機構80の前側、後側、左側、右側、上側、下側とする。理解を容易にするために、図9及び図10では、フルカット機構300から引張バネ330を取り除いている。
図3及び図4に示すように、切断機構80は、ハーフカット機構200、フルカット機構300、搬送機構400、カッタ駆動モータ90、ギア751〜755、駆動カム76等を含む。テープ排出部110(図1参照)には、テープの搬送経路に沿って、フルカット機構300、ハーフカット機構200、及び搬送機構400の順序で配置されている。ギア751は、カッタ駆動モータ90の駆動軸(図示略)に取り付けられている。ギア752〜755は、いずれも支持板730から前方に延びる軸部を中心に回転である。
図3、図5、図7に示すように、駆動カム76は、ギア755、カム板760、軸部761を含む。カム板760は、ギア755よりも大きい円盤状であり、ギア755の前側に固着されている。ギア755及びカム板760は、前後方向に延びる軸部761を中心に一体で回転可能である。
図4、図6、図8に示すように、第一駆動ピン763及び第二駆動ピン764が、カム板760に設けられている。第一駆動ピン763及び第二駆動ピン764は、いずれもカム板760から前側に突出する円柱体である。第一駆動ピン763は、ハーフカット機構200を作動させるための軸体である。第二駆動ピン764は、フルカット機構300を作動させるための軸体である。
ハーフカット機構200を説明する。ハーフカット機構200は、複数層が積層されたテープのうち、一部の層のみを切断するための機構である。図5〜図8に示すように、ハーフカット機構200は、固定部210、可動部220、引張バネ230、押圧バネ240、及び規制ピン250を含む。
固定部210は、正面視で略Lの字型の板状部材であり、第一板部211、第二板部212、及び受台213を含む。第一板部211は、左右方向に延びる板状部であり、第二フレーム702に固定されている。第二板部212は、第一板部211の右端部から上方向に延びる板状部である。受台213は、第二板部212の左辺部から後方に突出した、前後方向及び上下方向に平行な面部である。受台213は、上下方向に長く且つ前後方向に短い矩形状である。
可動部220は、背面視で略Lの字型の板状部材であり、第一板部221、第二板部222、切断刃223等を含む。可動部220は、固定部210の背面に重ねて配置され、且つ、カム板760の前側に配置されている。第一板部221は、略左右方向に延びる板状部であり、固定部210の背面側からカム板760の前面側まで延びている。第二板部222は、第一板部221の左端部から、第一板部221に対して略90度傾斜して上側に延びる板状部である。切断刃223は、第二板部222の右辺部に沿って延び、受台213に対して左側から対向する刃部である。
第一板部221及び第二板部222が連接する部位に、可動部220を貫通する支持穴(図示外)が設けられている。第一板部211及び第二板部212が連接する部位から後方に、固定部210の回転軸201が延びている。前後方向に延びる回転軸201は、可動部220の支持穴(図示外)に挿通されて、可動部220を回転自在に支持する。
係止板225,227、曲げ板部229,235、バネ軸部226、及びガイド溝233が、第一板部221に設けられている。バネ軸部226は、正面視で第二板部212とカム板760との間において、第一板部221から前方に延びる。係止板225,227、曲げ板部229,235は、いずれも第一板部221から前方に突出する突出片である。係止板225は、第一板部221の右上端部から前方に突出する。係止板227は、バネ軸部226の右下側から前方に突出する。曲げ板部229は、バネ軸部226の左上側且つ第二板部212の右側から前方に突出する。曲げ板部235は、係止板225の下側から前方に突出し、且つバネ軸部226から離間する方向に延びる。ガイド溝233は、第一板部221の上辺部から下方に凹む溝部であり、正面視で円弧状に凹んでいる。
図5〜図7に示すように、規制ピン250は、可動部220の前側において、第二フレーム702に立設する軸体である。規制ピン250は、円柱部251及びテーパ部252を含む。円柱部251は、第二フレーム702から上方に延びる円柱状である。円柱部251の周面は、平面視で曲げ板部235の前辺部に近接している。テーパ部252は、円柱部251の上端部に設けられた、上方に向けて縮径するテーパ状である。
隙間形成部231及びエンボス800が、第二板部222に設けられている。隙間形成部231は、切断刃223の上側から、切断刃223よりも受台213に向けて僅かに突出している。エンボス800は、第二板部222において固定部210と対向する位置に設けられている。エンボス800は、固定部210に向けて突出する突出部であり、可動部220と固定部210との隙間(所謂、ガタ)を抑制する。
図5〜図8に示すように、押圧バネ240は、第一板部221に保持されるねじりコイルバネであり、コイル部241と一対の腕部242,243とを含む。コイル部241の軸穴に、バネ軸部226が挿通されている。一対の腕部242,243は、それぞれコイル部241の両端部から、コイル部241の径方向外側に延びる。つまり、一対の腕部242,243は、互いに離間した前後方向位置に設けられている。後側の腕部242は、前側の腕部243よりもコイル部241からの突出幅が大きい。腕部242の先端部は、係止板225を下側から付勢することで、係止板225に係止されている。腕部243の先端部は、係止板227を上側から付勢することで、係止板227に係止されている。
引張バネ230の両端部は、第二板部222の取付部224と、第一板部211の取付部214とに連結されている。引張バネ230の弾性力によって、第二板部222は左側に付勢されている。可動部220に外力が加えられていない状態では、可動部220は回転軸201を中心に正面視で反時計回り方向に回転する。曲げ板部229が第二板部212に当接すると、可動部220の回転が規制される。これにより可動部220は、切断刃223が受台213から離隔する退避位置に保持される。
フルカット機構300を説明する。フルカット機構300は、複数層が積層されたテープの全ての層を切断するための機構である。図9及び図10に示すように、フルカット機構300は、固定部310、可動部320、及び引張バネ330(図4参照)を含む。
固定部310は、正面視で略Lの字型の板状部材であり、第一板部311、第二板部312、及び固定刃314を含む。第一板部311は、左右方向に延びる板状部であり、第二フレーム702(図3参照)に固定されている。第二板部312は、第一板部311の右端部から上方向に延びる板状部である。固定刃314は、第二板部312の左辺部に設けられた、上下方向に延びる刃部である。
可動部320は、背面視で略Lの字型の板状部材であり、第一板部321、第二板部322、可動刃324等を含む。可動部320は、固定部310の背面に重ねて配置され、且つ、カム板760の前側に配置されている。第一板部321は、略左右方向に延びる板状部であり、固定部310の背面側からカム板760の前面側まで延びている。第二板部322は、第一板部321の左端部から、第一板部321に対して略90度傾斜して上側に延びる板状部である。可動刃324は、第二板部322の右辺部に沿って延び、固定刃314に対して左側から対向する刃部である。
第一板部311及び第二板部312が連接する部位に、固定部310を貫通する支持穴(図示外)が設けられている。第一板部321及び第二板部322が連接する部位に、可動部320を貫通する支持穴(図示外)が設けられている。固定部310及び可動部320の各支持穴に、前後方向に延びる回転軸301が挿通されている。回転軸301は、固定部310及び可動部320を互いに重ねた状態で回転可能に軸支する。
ガイド溝323及びガイド穴325が、第一板部321に設けられている。ガイド溝323は、第一板部321の先端側に設けられた、第一板部321の上辺部から下方に凹む溝部である。ガイド穴325は、第一板部321の長手方向略中心に設けられた、第一板部321を貫通する穴である。ガイド穴325は、第一板部321の長手方向と平行に延びる長穴である。第一板部321の左端部近傍は、固定部310の背面に向けて斜め前方に傾斜している(図10参照)。
引張バネ330(図4参照)の両端部は、第一板部311の取付部313と、第二板部322の取付部329とに連結されている。引張バネ330の弾性力によって、第二板部322は左側に付勢されている。可動部320に外力が加えられていない状態では、可動部320は回転軸301を中心に正面視で反時計回り方向に回転する。これにより可動部320は、可動刃324が固定刃314から離隔する退避位置に保持される。
搬送機構400を説明する。搬送機構400は、フルカット機構300によって切断されたテープを、排出口111(図1参照)に向けて搬送するための機構である。図9及び図10に示すように、搬送機構400は、第一リンク410、第二リンク420、可動ローラ430、固定ローラ440等を含む。
テープ排出部110(図1参照)におけるテープの搬送経路に沿って、ガイド部材770(図3参照)が設けられている。ガイド部材770は、固定部210に設けられており、テープ排出部110で搬送される印字済みテープを排出口111に向けて案内するガイド面を有する。固定ローラ440は、ガイド部材770に設けられ、上下方向に延びる軸を中心に回転可能な回転体である。固定ローラ440は、固定刃314の後方に設けられている。固定ローラ440の下方では、板状の第一リンク410及び第二リンク420が前後に並んで回転軸401によって軸支されている。
第一リンク410の右端部に、第一リンク410から前方に突出する係止ピン411が設けられている。第一リンク410の左上端部に、可動ローラ430を回転させる作動機構412が設けられている。第二リンク420は、第一リンク410に対して、回転軸401に設けられた連結バネ402を介して連結されている。第二リンク420の左上端部に、ローラホルダ414が設けられている。ローラホルダ414は、回転体である可動ローラ430を回転支持する。ローラホルダ414は、作動機構412の右側に配置されている。可動ローラ430は、固定ローラ440に対して左側から対向している。作動機構412及びローラホルダ414の構造及び作用は、例えば特開平2000−71523号公報に記載されているように公知であるため、説明を省略する。
フルカット機構300の可動部320が回転するのに伴って、ガイド穴325に沿って係止ピン411が移動する。係止ピン411の移動に伴って、第一リンク410が回転軸401を中心に回転する。第一リンク410の回転に伴って、連結バネ402を介して第二リンク420も回転する。図9及び図10に示すように、可動部320が退避位置に向けて移動すると、係止ピン411はガイド穴325の左端部に向けて移動する。第一リンク410及び第二リンク420は、正面視で反時計回り方向に回転する。これにより第二リンク420は、可動ローラ430が固定ローラ440から離隔する退避位置に保持される。
切断機構80の連結構造を説明する。図4に示すようにハーフカット機構200の可動部220は、フルカット機構300の可動部320を跨って、左右方向に延びている。図4、図6及び図10に示すように、切断機構80の左側部分では、フルカット機構300の固定刃314、ハーフカット機構200の受台213、搬送機構400の固定ローラ440の順に、前側から後方に向けて並ぶ。フルカット機構300の可動刃324、ハーフカット機構200の切断刃223、及び搬送機構400の可動ローラ430が、前側から後方に向けて並ぶ。
切断機構80の右側部分では、ハーフカット機構200の第一板部221が、フルカット機構300の第一板部321の前側に配置され、且つ第一板部321よりも右側に延びている。搬送機構400の係止ピン411は、駆動カム76よりも左側で、フルカット機構300のガイド穴325に連結している。
カッタ駆動モータ90が駆動されていない場合、切断機構80は待機状態(図4〜図10参照)にある。待機状態の切断機構80では、可動部220,320及び第二リンク420が、いずれも退避位置にある。固定刃314と可動刃324との隙間、受台213と切断刃223との隙間、及び固定ローラ440と可動ローラ430との隙間が、互いに前後方向に連通する。テープ排出部110(図1参照)におけるテープの搬送経路は、これらの前後方向に連通する隙間を経由する。印字済みテープは、固定刃314、受台213、固定ローラ440に沿って搬送される。
図4、図6及び図10に示すように、切断機構80が待機状態にある場合、カム板760は基準位置にある。カム板760が基準位置にある場合、第一駆動ピン763は、軸部761の上方に位置する。第二駆動ピン764は、軸部761の左方に位置する。図5及び図6に示すように、第一駆動ピン763は係止板225に係止された押圧バネ240の腕部242に上側から接触する。図9及び図10に示すように、第二駆動ピン764は第一板部321のガイド溝323に上側から接触する。
切断機構80の作動態様を説明する。以下の説明では、印字済みのテープを切断する場合を例示する。切断機構80は、待機状態(図4〜図10参照)から切断動作を開始する。
ハーフカット機構200の作動態様を説明する。図11〜図13に示すように、制御部20(図3参照)は、ハーフカット機構200にテープを切断させる場合、カッタ駆動モータ90を正方向に回転(以下、正転)させる。カッタ駆動モータ90が正転すると、ギア751〜755(図3〜図5参照)を介してカム板760が正面視で時計回り方向に回転する。カム板760の回転に伴って、第一駆動ピン763は軸部761を中心として第一作動方向(本実施形態では、正面視で時計回り方向)に回転する。
第一作動方向に回転する第一駆動ピン763は、腕部242を下方に付勢する。腕部242に付与される外力に応じて、腕部243が係止板227を下方に付勢する。可動部220は引張バネ230の弾性力に抗って、回転軸201を中心に第一作動方向に回転する。第二板部222に設けられた切断刃223が、右側に移動する。つまり腕部242は、可動部220を回転させるための外力を受ける力点として機能する。腕部243は、腕部242で受けた外力に応じて可動部220を付勢する作用点として機能する。
カム板760が基準位置から第一作動方向に略90度回転すると、可動部220が退避位置から切断位置に移動する。切断位置は、切断刃223が受台213と近接する位置である。可動部220が切断位置にある場合、隙間形成部231が受台213に接触し、可動部220の回転が規制される。切断刃223と受台213との間に、テープの厚みよりも狭い隙間(具体的には、印字層の厚みと略等しい隙間)が形成される。可動部220を切断位置に移動させるカム板760の回転位置を、第一回転位置という。
可動部220が退避位置から切断位置に移動するとき、曲げ板部235は規制ピン250の後側を通って下方に移動する。このとき、固定部210と可動部220との隙間(所謂、ガタ)によって、可動部220が適正な姿勢から傾斜することがある。この場合、曲げ板部235はテーパ部252に接触して、テーパ部252の傾斜面に沿って円柱部251に向けて案内される。これにより、可動部220は適正な姿勢で切断位置まで回転するため、切断刃223が受台213に対して垂直に近接する。
カム板760が第一回転位置まで回転した場合、制御部20はカッタ駆動モータ90をさらに所定量だけ正転させる。第一作動方向に回転する第一駆動ピン763は、さらに腕部242を下方に付勢する。可動部220の回転が規制されているため、腕部242に加えられる付勢力によって、押圧バネ240は弾性変形する。腕部242は下方に曲がり、係止板225から離間する。
本実施形態では、押圧バネ240の力点(腕部242)及び作用点(腕部243)は、互いに異なる前後方向位置にある。上記のように弾性変形する押圧バネ240は、第一作動方向とは異なるベクトル成分を含む付勢力を生じる。例えば第一作動方向とは異なるベクトル成分は、腕部242から腕部243に向かう方向(本実施形態では、前側下方)に作用する。このベクトル成分によって、切断位置にある可動部220がバネ軸部226に沿って前方向に移動する可能性がある。つまり、受台213と近接した位置にある切断刃223の姿勢および位置が変化する可能性がある。
可動部220が切断位置にある場合、規制ピン250の円柱部251が曲げ板部235に対向している。押圧バネ240の弾性変形によって可動部220が前方向に移動した場合、曲げ板部235が円柱部251に接触するため、可動部220の前方向への移動が規制される。したがって押圧バネ240の弾性変形が生じた場合でも、受台213と近接した位置にある切断刃223は適正な姿勢および位置に維持される。
回転軸201から第一駆動ピン763までの距離は、回転軸201から規制ピン250までの距離と略等しい。可動部220が切断位置にある場合、第一駆動ピン763及び規制ピン250は、平面視で前後方向に並ぶ(図12の線Q参照)。つまり規制ピン250は、腕部242を押圧する第一駆動ピン763の前側に対向する。これにより規制ピン250は、可動部220を前方向に移動させるベクトル方向側で、可動部220の前方向への移動を確実に規制できる。
図14に示すように、第一作動方向に回転する第一駆動ピン763は、腕部242を下方に曲げながら、ガイド溝233の右端部から左端部まで摺動する。第一駆動ピン763をガイド溝233の左端部まで摺動させるカム板760の回転位置を、第二回転位置という。カム板760が第二回転位置まで回転した場合、第一駆動ピン763はガイド溝233の左端部を形成する壁部233Aに接触する。カム板760が第二回転位置まで回転した場合、制御部20はカッタ駆動モータ90の駆動を所定時間停止する。
カム板760が第二回転位置にある場合、腕部242の付勢力は上側に向けて作用する。腕部242の付勢力が作用する方向は、第一駆動ピン763から腕部242に延びる垂線Pと略平行である。腕部242の付勢力によって、第一駆動ピン763を第一作動方向に回転させる作用が働く。第一駆動ピン763は、壁部233Aによって第一作動方向への移動が規制されている。これにより腕部242が第一駆動ピン763を壁部233Aに付勢するため、第一駆動ピン763の移動(つまり、カム板760の回転)が規制される。カッタ駆動モータ90の駆動が停止されても、切断刃223が受台213に近接した状態が保持される。
以上の動作によって、印字済みのテープは次のように切断される。カム板760が基準位置から第一回転位置まで回転するのに伴って、切断刃223は受台213に近づく。テープ排出部110(図1参照)に搬送されたテープは、切断刃223によって受台213に押圧され、切断刃223と受台213との隙間に配置される。カム板760が第一回転位置から第二回転位置まで回転する間、及びカム板760が第二回転位置に保持される間、切断刃223がテープを受台213に向けて強く付勢する。テープの一部の層(具体的には、剥離層)が、切断刃223によって切断される。
その後、制御部20は、カッタ駆動モータ90を逆方向に回転(以下、反転)させる。カッタ駆動モータ90が反転すると、ギア751〜755を介してカム板760が正面視で第二作動方向(本実施形態では、正面視で反時計回り方向)に回転する。カム板760の回転に伴って、第一駆動ピン763は軸部761を中心として第二作動方向に回転する。第一駆動ピン763は、ガイド溝233の左端部から右端部に向けて摺動する。腕部242は第一駆動ピン763を持ち上げるように弾性移動して、係止板225に係止される。つまりカム板760が第二回転位置(図14参照)から第一回転位置(図11〜図13参照)まで回転する。
さらに、制御部20は、カム板760が第一回転位置(図11〜図13参照)から基準位置(図4、図6及び図10参照)に回転するまで、カッタ駆動モータ90を反転させる。可動部220は引張バネ230の弾性力によって、回転軸201を中心に第二作動方向に回転する。第二板部222に設けられた切断刃223が、左側に移動する。可動部220は切断位置から退避位置に移動する。以上の動作により、切断機構80は待機状態に復帰する。その後、制御部20は図示外のテープ駆動モータを所定量駆動する。これにより、剥離層が切断されたテープは、排出口111に向けて搬送される。
フルカット機構300及び搬送機構400の作動態様を説明する。制御部20は、フルカット機構300にテープを切断させる場合、カッタ駆動モータ90を反転して、カム板760を基準位置から第二作動方向に回転させる。
図15に示すように、第二作動方向に回転する第二駆動ピン764は、ガイド溝323において第一板部321を下方に付勢する。第一板部321が下方に移動するのに伴って、可動部320が引張バネ330の弾性力に抗って、回転軸301を中心に第一作動方向に回転する。カム板760が基準位置から第二作動方向に略45度回転すると、可動部320が退避位置から切断位置に移動する。切断位置は、可動刃324が固定刃314と交差する位置である。可動部320を切断位置に移動させるカム板760の回転位置を、第三回転位置という。
カム板760が基準位置から第三回転位置まで回転するのに伴って、第一リンク410の係止ピン411がガイド穴325の右端部に向けて移動する。係止ピン411の移動に伴って、第一リンク410が回転軸401を中心に第一作動方向に回転する。連結バネ402(図10参照)を介して、第二リンク420も第一リンク410と連動して回転する。これにより、第二リンク420は退避位置から搬送位置に移動する。第二リンク420が搬送位置にある場合、可動ローラ430は固定ローラ440(図9参照)に対して付勢される。第一リンク410の回転に伴って、作動機構412が可動ローラ430を半回転させる。
以上の動作によって、印字済みのテープは次のように切断される。カム板760が基準位置から第三回転位置まで回転するのに伴って、テープ排出部110(図1参照)に搬送されたテープを、可動ローラ430が固定ローラ440に押し付ける。可動ローラ430と固定ローラ440とに挟まれているテープの全ての層が、可動刃324と固定刃314との間で切断される。このとき、可動ローラ430に近接する作動機構412が、可動ローラ430を半回転させる。切断されたテープが、可動ローラ430を半回転に相当する距離分、排出口111に向けて搬送される。
その後、制御部20はカッタ駆動モータ90を正転して、カム板760を第三回転位置から基準位置まで回転させる。引張バネ330の弾性力によって、可動部320が回転軸301を中心に第二作動方向に回転する。可動部320は、切断位置から退避位置に移動する。可動部320の回転に伴って、係止ピン411がガイド穴325の左端部に向けて移動して、第一リンク410及び第二リンク420が回転軸401を中心に第二作動方向に回転する。第二リンク420は搬送位置から退避位置に移動する。
このとき、第一リンク410の回転に伴って、作動機構412が可動ローラ430を半回転させる。これにより、可動ローラ430が固定ローラ440から離れる前に、可動ローラ430は固定ローラ440を付勢しながら半回転する。切断されたテープが、可動ローラ430を半回転に相当する距離分、排出口111に向けて搬送される。以上の動作により、切断機構80は待機状態に復帰する。
以上説明したように、本実施形態の切断機構80によれば、切断刃223を有する可動部220は、切断刃223が受台213に対して近接又は離隔するように、回転軸201を中心に回転可能である。可動部220に設けられた押圧バネ240は、互いに異なる回転軸201の軸線方向の位置(本実施形態では、前後方向位置)にある力点(腕部242)及び作用点(腕部243)を有する。腕部242で所定方向(本実施形態では、下方向)に作用する外力を受けた場合、腕部243で可動部220に第一作動方向の付勢力が付与されて、切断刃223が受台213に近接する方向に移動する。押圧バネ240の弾性変形が生じたときに可動部220の軸線方向(本実施形態では前側)への移動を規制する規制ピン250が、可動部220に対する軸線方向側に設けられる。
したがって、テープの切断時に、可動部220が回転軸201の軸線方向へ移動することが規制ピン250によって規制される。受台213に対して近接する切断刃223の姿勢及び位置が安定するため、テープを安定して切断できる。切断刃223がテープに対して適正な切断方向とは異なる方向に押圧されることが抑制されるため、切断刃223の摩耗劣化を抑制できる。切断刃223の姿勢及び位置が安定することによって、テープの切断時における切断刃223と受台213との隙間が一定にできるため、テープを正確に切断できる。
押圧バネ240の弾性変形が生じたときに、腕部242は可動部220の係止板225から離れる。これにより、押圧バネ240の弾性変形時に生じる軸線方向側への付勢力が抑制されるため、可動部220が規制ピン250に付与する負荷を抑制できる。腕部242は係止板225に着脱容易であるため、押圧バネ240を可動部220に組み付ける製造作業が容易となる。
規制ピン250の少なくとも一部は、押圧バネ240の弾性変形が生じたときに可動部220と接触する円柱部251である。押圧バネ240の弾性変形時に、可動部220は円柱部251の外周面に平面視で一点で接触するため、円柱部251と可動部220との接触面積が小さい。したがって、押圧バネ240の弾性変形時に、より小さな接触面積で可動部220の移動が規制されるため、可動部220を正確な姿勢及び位置で保持できる。
規制ピン250における第二作動方向の端部(本実施形態では、上端部)は、上方向に向けて径が漸減するテーパ部252である。テーパ部252は、可動部220が第一作動方向に回転する場合、押圧バネ240の弾性変形が生じる前に可動部220と対向する。これにより、押圧バネ240の弾性変形が生じる前に、第一作動方向に回転する可動部220を円柱部251に向けて案内できる。
固定部210は、受台213が設けられた部材であって、可動部220に対して回転軸201の軸線方向に並んで固定される。エンボス800は、可動部220における固定部210と対向する位置に設けられ、固定部210に向けて突出する。これにより、可動部220と固定部210との隙間(所謂、ガタ)を抑制して、第一作動方向に回転する可動部220の姿勢及び位置を安定させることができる。
第一駆動ピン763は、押圧バネ240を押圧することによって、所定方向に作用する外力を可動部220に付与する。可動部220が第二回転位置まで第一作動方向に回転した場合、押圧バネ240は外力に応じて弾性変形する。回転軸201から第一駆動ピン763までの距離は、回転軸201から規制ピン250までの距離と略等しい。これにより、規制ピン250は、可動部220を軸線方向側に移動させるベクトル方向側で、可動部220の移動を確実に規制できる。
隙間形成部231は、切断刃223が受台213に対して近接した場合、テープに含まれる一部の層の厚みと略等しい隙間を、切断刃223と受台213との間に形成する。押圧バネ240は、隙間形成部231によって隙間が形成されている状態で、第一駆動ピン763の位置を保持する。これにより、カッタ駆動モータ90の駆動が停止しても、切断刃223が受台213に対して近接した状態を保持できる。
第一駆動ピン763は、カッタ駆動モータ90の正転と連動して、押圧バネ240を押圧する。これにより、カッタ駆動モータ90の駆動制御によって、切断刃223を受台213に対して近接させて、テープを切断できる。
第二駆動ピン764は、カッタ駆動モータ90の反転と連動して可動部320を押圧することによって、可動刃324を固定刃314に近接させる方向に作用する付勢力を可動部320に付与する。これにより、一つのカッタ駆動モータ90の駆動制御によって、テープのハーフカット及びフルカットを選択的に実行できる。
本実施形態の印字装置1では、印字機構71によってテープが印字され、切断機構80に供給される。したがって、テープを印字した後に、印字済みテープを安定して切断できる。
上記実施形態において、切断機構80が本発明の「切断装置」の一例である。受台213が本発明の「固定部材」の一例である。切断刃223が本発明の「切断刃」の一例である。可動部220が本発明の「第一可動部材」の一例である。押圧バネ240が本発明の「弾性部材」の一例である。規制ピン250が本発明の「規制部材」の一例である。固定部210が本発明の「設置部材」の一例である。エンボス800が本発明の「突出部」の一例である。第一駆動ピン763が本発明の「第一押圧部材」の一例である。隙間形成部231が本発明の「隙間形成手段」の一例である。カッタ駆動モータ90が本発明の「回転駆動手段」の一例である。可動部320が本発明の「第二可動部材」の一例である。第二駆動ピン764が本発明の「第二押圧部材」の一例である。印字機構71が本発明の「印字手段」及び「供給手段」の一例である。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。切断機構80は、印字装置1に設けられる必要はない。切断機構80は、単独で使用可能な装置であってもよいし、複数層が積層されたテープを使用する他の装置の一部でもよい。切断機構80は、カッタ駆動モータ90で駆動される態様に限定されず、ユーザの手動操作でテープを切断する態様でもよい。
押圧バネ240は、他の弾性部材(例えば、板バネ、弾性ゴム等)でもよい。フルカット機構300に押圧バネ240及び規制ピン250を設けてもよい。これにより、上記実施形態のハーフカット機構200と同様に、テープのフルカット時に可動部320の移動を規制して、テープを安定してフルカットできる。
図16に示すように、変形例の係止板225は、押圧バネ240の力点(腕部242)に接触し、且つ上下方向に延びる壁部である。変形例の係止板225は、押圧バネ240の弾性変形に応じて移動する力点(腕部242)を、下方向に案内する案内壁である。これによれば、押圧バネ240の弾性変形に応じて、可動部220を適正な姿勢で回転させることができる。テープの切断時に弾性変形する押圧バネ240によって、予め計算された設計値どおりのベクトル成分が可動部220に作用する。したがって、切断機構80の設計及び製造が容易となる。
規制ピン250の形状、全長、直径、位置などは、変更可能である。例えば、規制ピン250の円柱部251は、少なくとも押圧バネ240の弾性変形時に、可動部220と対向する位置に設けられればよい。円柱部251に代えて、角柱部又は円錐部を設けてよい。