以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、一実施形態に係る光計測装置の構成を模式的に示す図である。図2は、図1の光計測装置の要部を示す側断面図である。図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る光計測装置100は、測定対象となるサンプルとしての試料1について、フォトルミネッセンス法(PL法)によって蛍光特性等の光特性を計測又は評価する。試料1は、例えば、有機EL(Electroluminescence)材料や、白色LED(Light EmittingDiode)用やFPD(Flat Panel Display)用等の発光材料等の蛍光試料であり、例えば粉末状、液体状(溶液状)、固体状又は薄膜状のものを用いることができる。ここでの試料1は、主として色素等が溶解された液体試料であり、試料容器40に収容されている。
試料容器40は、セル41及びキャップ(蓋)42を有する。セル41は、試料1が入れられる容器である。セル41は、有底円筒形状を呈する。セル41は、ガラス等により形成されている。キャップ42は、セル41の開口端に着脱自在に設けられている。キャップ42は、セル41の内部を密閉する。キャップ42として、円筒キャップが用いられている。キャップ42の外径は、セル41の外径よりも大きい。このような試料容器40は、試料を収容する一般的な容器である。試料容器40としては、広く流通する汎用品を用いることができる。試料容器40の形状及び材質は特に限定されず、種々の公知の試料容器を用いることができる。例えば外形が円柱形状のセル41に代えて、外形が角柱形状等のセルを用いてもよい。
光特性としては、吸収率、内部量子効率(発光量子収率)及び外部量子効率が挙げられる。吸収率は、吸収されるフォトン数に関するパラメータである。内部量子効率は、吸収する光のフォトン数に対する、発光により放出される光のフォトン数の割合に関するパラメータである。外部量子効率は、放出されるフォトン数に関するパラメータである。外部量子効率は、吸収率と内部量子効率との積である。吸収率は、反射されるフォトン数に関するパラメータである反射率と表裏の関係を有する。吸収率は、「1−反射率」と同義である。
光計測装置100は、励起光供給部10と、積分器20と、分光検出器(光検出部)45と、解析部51と、入力部52と、表示部53、を備える。励起光供給部10は、所定波長の励起光を積分器20に供給する。励起光供給部10は、励起光源(光発生部)11と、入射用ライトガイド12と、を有する。励起光供給部10と、積分器20と、分光検出器45とは、光学的に接続されている。分光検出器45と解析部51とは、電気的に接続されている。
励起光源11は、励起光を発生させる光源であり、例えばキセノンランプや分光器等を含んで構成されている。励起光源11が発生させる励起光の波長は、可変であってもよい。励起光源11は、励起光の波長を、例えば250nm〜1600nmの波長範囲で可変に設定可能である。入射用ライトガイド12は、励起光源11で生じた励起光を積分器20へと導光する。入射用ライトガイド12としては、例えば光ファイバ等を用いることができる。
積分器20は、積分球であって、中空の球状を呈している。積分器20は、例えば取付ネジ(不図示)等によって架台3に取り付けられている。積分器20は、その内面20aに硫酸バリウム等の高拡散反射物質の塗布が施されるか、若しくはPTFEやスペクトラロン(登録商標)等の反射率が1に近い高反射物質により形成されている。積分器20には、試料1を導入するための試料導入開口21が設けられている。試料導入開口21には、固定部材70が挿入されて着脱自在に装着されている。固定部材70には、試料容器保持部材80が固定されている。試料容器保持部材80は、試料容器40を積分器20内に配置した状態で保持する(詳しくは後述)。
積分器20には、励起光が入射される入射開口22、及び、計測光を出射する出射開口23が設けられている。入射開口22には、入射用ライトガイド12を積分器20に接続する入射用ライトガイドホルダ220が、挿入されて装着されている。積分器20内において入射用ライトガイド12から出射した励起光は、試料1に照射される。
積分器20内では、入射開口22から入射した励起光は、多重拡散反射される。積分器20内では、試料1に対する励起光の照射によって生じた発生光が多重拡散反射される。そして、励起光及び発生光を含む計測光が、出射開口23から出射する。出射開口23から出射した計測光は、出射用ライトガイド32を介して後段の分光検出器45へと導光される。試料導入開口21、入射開口22及び出射開口23それぞれの中心線は、積分器20の中央を通り、互いに直交している。
分光検出器45は、計測光を検出する。検出した計測光の波長スペクトルデータを後段の解析部51に出力する。分光検出器45としては、例えば、BT(Back-Thinned)−CCDリニアイメージセンサ、CMOSリニアイメージセンサ、又は、InGaAsリニアイメージセンサ等を用いることができる。解析部51は、分光検出器45の検出結果を解析する。解析部51は、例えばコンピュータである。解析部51は、例えば、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、記録媒体であるRAM(Random Access Memory)、又はROM(Read Only Memory)等を含んで構成される。解析部51は、CPU及びRAM等のハードウェア上にプログラム等を読み込ませることにより動作する。解析部51は、CPUにより、分光検出器45で生成された波長スペクトルデータに対して必要なデータ解析を行い、試料1についての情報を取得する。解析部51は、CPUにより、RAMにおけるデータの読出し及び書込みを行う。解析部51には、データ解析等についての指示の入力、及び解析条件や測定条件等の入力等に用いられる入力部52と、得られたデータ解析結果の表示等に用いられる表示部53と、が電気的に接続されている。入力部52は、例えばマウス、キーボード又はタッチパネル等の入力機器である。表示部53は、ディスプレイ等である。
図3(a)は、固定部材70及び試料容器保持部材80を示す正面図である。図3(b)は、固定部材70及び試料容器保持部材80を示す側面図である。図4は、分割した固定部材70及び試料容器保持部材80を示す斜視図である。図2〜図4に示されるように、光計測装置100は、固定部材70と、支柱部81及び容器取付部82を含む試料容器保持部材80と、を備える。
図5は、固定部材70を示す分解斜視図である。図2〜図5に示されるように、固定部材70は、積分器20に試料容器保持部材80を着脱自在に取り付ける。固定部材70は、中心軸G0を有する円筒形状を呈する。固定部材70は、周方向に2分割可能に構成されており、第1半筒部72A及び第2半筒部72Bを含む。第1半筒部72A及び第2半筒部72Bは、互いに同一形状とされている。第1半筒部72A及び第2半筒部72Bは、中心軸G0に直交する直交方向に互いに付き合わされる。第1半筒部72A及び第2半筒部72Bは、突き合わせた状態において、キャップ部材98(図2参照)が取り付けられている。これにより、第1半筒部72A及び第2半筒部72Bは、突き合わせる方向に締め付けられ、互いに一体化されている。
第1半筒部72Aにおいて第2半筒部72Bとの突合せ面73Aには、中心軸G0に沿って延びる断面半円形状の溝部74Aが形成されている。第2半筒部72Bにおいて第1半筒部72Aとの突合せ面73Bには、中心軸G0に沿って延びる断面半円形状の溝部74Bが形成されている。溝部74A,74Bは、第1半筒部72A及び第2半筒部72Bを突き合わせた状態において、固定部材70の筒孔75を構成する。筒孔75は、中心軸G0に沿って固定部材70を貫通する円孔であって、支柱部81の支柱本体83(後述)の外径に対応する内径を有する。
溝部74Aの軸方向における一端部は、断面矩形の矩形凹部76Aを有する。矩形凹部76Aの底面には、シリコーン樹脂等で形成された矩形板形状の弾性部材77が接着固定されている。同様に、溝部74Bの軸方向における一端部は、断面矩形の矩形凹部76Bを有する。矩形凹部76Bの底面には、弾性部材77が接着固定されている。矩形凹部76A,76Bは、第1半筒部72A及び第2半筒部72Bを突き合わせた状態において、筒孔75の一端部に形成された矩形孔78を構成する。矩形孔78は、筒孔75の一端部が拡大されて成る直方体形状の空間であり、支柱部81の角柱部84(後述)に対応する形状を有する。
第1半筒部72Aの突合せ面73Aには、円柱状の突起部79Aが設けられている。第2半筒部72Bの突合せ面73Bには、円柱状の窪み部79Bが設けられている。第1半筒部72A及び第2半筒部72Bを突き合わせた状態において、突起部79Aが窪み部79B内に入り込み、第1半筒部72A及び第2半筒部72Bの位置ズレが防止される。
このような固定部材70において、筒孔75には、試料容器保持部材80の支柱部81が挿入されている。突き合わせて一体化された第1半筒部72A及び第2半筒部72Bは、支柱部81を挟持する。これにより、固定部材70は、試料容器保持部材80を固定する。そして、固定部材70は、試料容器保持部材80の容器取付部82が積分器20内に配置されるように、積分器20の試料導入開口21に挿入されている。この状態で、固定部材70は、架台3の台座部2aにネジ等によって着脱自在に固定されている。
図2〜図4に示されるように、試料容器保持部材80は、積分器20に固定部材70を介して着脱自在に取り付けられている。試料容器保持部材80は、試料容器40を積分器20内に配置した状態で保持する。ここでの試料容器保持部材80は、積分器20内の中央部に試料容器40(試料1)を配置する。試料容器保持部材80は、弾性材により形成されている。試料容器保持部材80は、反射率が一定以上の材料により形成されている。例えば試料容器保持部材80は、テフロン(登録商標)又はスペクトラロン(登録商標)等により形成されている。試料容器保持部材80は、固定部材70に固定される支柱部81と、支柱部81の軸方向における先端部に設けられ積分器20内に配置される容器取付部82と、を備える。支柱部81と容器取付部82とは、別体で構成されている。
図6(a)は、試料容器保持部材80の支柱部81を示す側面図である。図6(b)は、図6(a)のA−A線に沿う断面図である。図2〜図4、図6(a)及び図6(b)に示されるように、支柱部81は、中心軸G1を有する円柱形状の支柱本体83を含む。支柱本体83において軸方向の中央と基端(図中の左側の一端)との間には、角柱形状の角柱部84が形成されている。
角柱部84は、支柱本体83が径方向外側に拡大されて成る直方体形状の部分である。角柱部84は、軸方向と直交する断面形状が矩形状とされている。ここでの角柱部84の断面形状は、長方形状であって、固定部材70の矩形孔78の断面形状に対応する。角柱部84は、矩形孔78の内面に当接する。つまり、角柱部84は、支柱部81において固定部材70との接触部分に設けられている。角柱部84における基端側は、軸方向に対して傾斜するテーパ状とされている。
支柱本体83において角柱部84の基端側に近接する位置には、支柱本体83よりも大径の円柱形状の第1大径部85が形成されている。支柱本体83の先端部には、支柱本体83よりも大径の円柱形状の第2大径部86が形成されている。第2大径部86の先端面(支柱部81の先端面)は、軸方向との垂直面に対して傾斜する傾斜面86aとされている。傾斜面86aには、容器取付部82を着脱自在に固定するネジN(図2参照)が挿入されるネジ穴87が形成されている。
このような支柱部81は、その第1大径部85と第2大径部86との間が固定部材70の筒孔75に挿入されている。この状態において、角柱部84は、固定部材79の矩形孔78内に隙間無く配置(フィット)され、矩形孔78の内面に接触して係合している。これにより、支柱部81は、励起光の光軸方向K(図2参照)の直交方向を軸方向として、固定部材70に固定されている。支柱部81は、角柱部84が矩形孔78に接触し、軸回りの回転方向において位置決めされると共に、当該回転方向のずれが規制されている。
図7(a)は、試料容器保持部材80の容器取付部82を示す正面図である。図7(b)は、試料容器保持部材80の容器取付部82を示す底面図である。図8(a)は、図7(a)のB−B線に沿う断面図である。図8(b)は、図7(a)のC−C線に沿う断面図である。図2〜図4及び図7(a)〜図8(b)に示されるように、容器取付部82は、試料容器40が着脱自在に取り付けられる部位である。容器取付部82は、中心軸G2を有する。容器取付部82は、キャップ42を収容する収容部88と、セル41を着脱自在に保持する保持部89と、を含む。収容部88は、容器取付部82の基端側を構成し、保持部89は、容器取付部82の先端側を構成する。
収容部88は、基部90と基部90に立設された側部91とにより構成されている。基部90及び側部91は、キャップ42を収容する収容空間Rを画成する。基部90は、中心軸G2を基軸とした円板形状を呈する。基部90の外径は、キャップ42の外径よりも大きい。基部90の一方の表面90aは、キャップ42の天面41a(図10参照)に対向する。基部90の表面90aには、断面円形状の凹部92xが形成されている。凹部92xの底面には、基部90の他方の表面90bまで貫通する貫通孔92yが形成されている。
側部91は、基部90の表面90aの外周部の一部分に、中心軸G2に沿って立つように設けられている(立設されている)。具体的には、積分器20内に配置された容器取付部82において励起光が入射される側を「光入射側」とすると、側部91は、表面90aの光入射側とは反対側の一部分から突出するように設けられている。側部91の外側(光入射側とは反対側)の側面は、基部90の形状に沿った曲面とされている。側部91の内側(光入射側)の側面には、断面矩形の凹部91aが形成されている。凹部91aは、収容したキャップ42と接触しないように、当該キャップ42との間に隙間C(図10参照)を形成する。
保持部89は、側部91の先端部に連続して設けられている。保持部89は、光入射側が切り欠かれた筒形状に形成されている。保持部89は、中心軸G2を囲むように湾曲する一対のアーム93を含む。一対のアーム93の内面94は、中心軸G2に直交する断面がC字形状を呈する。すなわち、保持部89は、中心軸G2に直交する断面がC字形状の内面94を有する。内面94のC字形状は、光入射側に開口する。内面94は、セル41の外周面(外面)に対応する曲面である。ここでは、内面94の内径は、セル41の外径よりも小さい。
保持部89は、セル41の外周面の少なくとも3点に接触して試料容器40を保持する。具体的には、保持部89は、その内面94をセル41の外周面に沿って接触させ、中心軸G2をセル41の長手方向とした状態で試料容器40を保持する。換言すると、保持部89は、その内面94のC字形状でセル41の外周面と嵌合する。保持部89は、一対のアーム93によりセル41の外周面をクランプする。保持部89は、セル41の外周面に沿って内面94を接触させながら、セル41を挟持する。
内面94には、中心軸G2に沿って延在する溝部95が形成されている。溝部95は、内面94がC字形状となる断面と垂直な(交差する)方向に延びる。溝部95は、断面がU字状のU溝である。溝部95は、内面94におけるC字形状の中央位置に設けられている。溝部95は、光入射側からみて内面94における中央部に中心軸G2に沿って延設されている。溝部95は、当該溝部95を介して一対のアーム93が対称構造となる位置に配されている。
このような容器取付部82において、基部90の表面90bは、基部90の貫通孔92yが支柱部81のネジ穴87と連通するように、支柱部81の傾斜面86aに当接されている。この状態で、貫通孔92y及びネジ穴87にネジが挿入されて、基部90が支柱部81に固定されている。これにより、容器取付部82は、支柱部81の中心軸G1に対して中心軸G2を光入射側へ傾けながら、支柱部81の先端部に着脱自在に固定されている。つまり、中心軸G2は、支柱部81から離れるにつれて、中心軸G1に対して光入射側に傾いている。保持部89は、励起光の光軸方向Kの垂直方向に対して当該光軸方向Kおける一方側又は他方側にセル41の長手方向を傾斜させた状態で、試料容器40を保持する。
以上に説明した試料容器保持部材80によって、固定部材70を介して試料容器40を積分器20内に配置する試料容器配置方法では、まず、支柱部81を固定部材70に固定する(支柱部固定ステップ)。容器取付部82に試料容器40を取り付ける(容器取付ステップ)。固定部材70を架台3に固定して、試料容器40を積分器20内に配置する(容器配置ステップ)。このとき、試料容器40は、上述したように、積分器20内において、励起光の光軸方向Kに垂直な垂直方向に対して光入射側にセル41の長手方向を傾斜させた状態で配置される。
図9(a)は、試料容器保持部材80に試料容器40を保持させる場合を説明する図である。図9(b)は、図9(a)の続きを示す図である。図10は、図9(b)のD−D線に沿う断面図である。図9(a)及び図9(b)に示されるように、試料容器保持部材80に試料容器40を保持させる場合(つまり、容器取付ステップでは)、まず、セル41の軸方向である長手方向を容器取付部82の中心軸G2(図3(b)参照)と平行にしながら、容器取付部82の光入射側(内面94のC字形状の開口側)に試料容器40を位置させる。このとき、収容部88の収容空間Rにキャップ42を対向させ、保持部89にセル41を対向させる。
続いて、試料容器40を容器取付部82へ押し付ける。これにより、保持部89の一対のアーム93が弾性的に外側に撓み、内面94のC字形状の開口が開かれながら、当該内面94内にセル41が進入する。その結果、内面94がセル41の外周面に沿って接触して、試料容器40のセル41が保持部89により保持される。換言すると、保持部89にセル41の外面の少なくとも3点が接触されて試料容器40が保持される。これと共に、キャップ42が収容部88の収容空間R内に収容される。図10に示されるように、収容されたキャップ42の側面と収容部88の側部91との間には、隙間Cが形成されている。収容されたキャップ42の天面42aと収容部88の基部90との間には、隙間C2が形成されている。以上により、試料容器40が容器取付部82に着脱自在にはめ込まれて取り付けられる。
以上、試料容器保持部材80では、収容部88にキャップ42を収容しながら、保持部89によって当該キャップ42ではなくセル41を確実に保持できる。これにより、試料容器保持部材80に試料容器40を着脱する際にキャップ42を外れにくくし、セル41内の試料1が漏れるのを抑制できる。したがって、試料1が漏れて積分器20内を汚染してしまう可能性(汚染リスク)を低減することが可能となる。
更に試料容器保持部材80によれば、セル41及びキャップ42を有する一般的な試料容器40であっても、積分器20内に容易に配置することができる。このような試料容器40は安価であることから、ユーザの利便性を高めることができる。一般的な試料容器40を用いても、使いやすく高精度な測定を行うことができる。より幅広いユーザへ光計測装置100を提供することが可能となる。
また更に、試料容器保持部材80は、セル41の外面の少なくとも3点に接触して試料容器40を保持することで、試料容器40を積分器20内に配置する再現性を保つことが可能となる。複数の試料容器40をそれぞれ試料容器保持部材80に着脱したとしても、どの試料容器40も同じ角度(傾斜状態)で配置できるため、光計測装置100の計測精度を向上させることができる。
試料容器保持部材80では、保持部89は、励起光の光軸方向Kに垂直な垂直方向に対して光入射側(光軸方向Kおける一方側又は他方側)にセル41の長手方向を傾斜させた状態で、試料容器40を保持する。この構成によれば、次の効果を奏する。すなわち、セル41で反射した励起光の全て又は一部が励起光源11(入射開口22)の方向に戻ることを抑制できる。光軸方向K以外の方向にセル41を傾けて保持した場合には、励起光がセル41に当たらない可能性があることから、確実にセル41に励起光を当てることができる。
試料容器保持部材80では、支柱部81において固定部材70との接触部分の少なくとも一部に、角柱形状の角柱部84が形成されている。この構成によれば、中心軸G1の軸回りの回転方向において、試料容器保持部材80が固定部材70に対して回転するのを抑制できる。当該回転方向における試料容器40の角度が変わらないように構成できる。
特に、角柱部84の断面形状が長方形状であることから、支柱部81を固定部材70に組み付ける際において、例えば支柱部81の回転位置が正しい回転位置に対して90°誤っていると、組付けできないことになる。支柱部81の回転方向の位置決め容易となる。よって、回転位置を誤って支柱部81を組み付けてしまうことを防止できる。
試料容器保持部材80では、保持部89は、断面がC字形状の内面94を有し、当該内面94がセル41の外周面に接触して試料容器40を保持する。この構成では、試料容器40のセル41を保持部89にはめ込むことで保持できる。すなわち、容易且つ着脱自在に試料容器40を保持できる。
試料容器保持部材80では、試料容器保持部材80は、弾性材により形成されている。つまり、保持部89は、弾性材により形成されている。この構成では、試料容器保持部材80への試料容器40の着脱時に、弾性材の弾性を利用して保持部89のC字形状の開口を開くことができる。一層容易に試料容器40を保持できる。
試料容器保持部材80では、保持部89におけるC字形状の内面94の内径は、セル41の外径よりも小さい。この構成では、セル41を保持部89で保持した際に、弾性材の弾性を利用して、保持部89のC字形状が閉じるような力を作用させる(セル41に対して径方向内側へ力を加える)ことが可能となる。これにより、一層確実に試料容器40を保持できる。
試料容器保持部材80では、保持部89におけるC字形状の内面94には、溝部95が形成されている。試料容器保持部材80への試料容器40の着脱時に、溝部95によって保持部のC字形状の開口を開きやすくすることができる。また、溝部95を基準にセル41を位置決めすることが可能となる。
試料容器保持部材80では、支柱部81と容器取付部82とは、別体で構成されている。容器取付部82は、支柱部81の先端部に着脱自在に固定されている。この構成では、支柱部81に固定する容器取付部82を、例えば試料容器40の形状に応じたものへ取り替えることができる。様々な形状の試料容器40の保持に容易に対応できる。
試料容器保持部材80では、収容部88は、キャップ42の天面42aに対向する基部90と、基部90に立設された側部91と、を含む。基部90及び側部91は収容空間Rを画成する。側部91には、凹部91aが形成され、収容空間に収容したキャップ42と側部91との間には、隙間Cが形成されている。この構成では、試料容器保持部材80への試料容器40の着脱時において、キャップ42が試料容器保持部材80に接触しないように具体的に構成でき、キャップ42を一層外れにくくすることができる。保持部89で保持したセル41が、キャップ42と収容部88との干渉のためにずれてしまうことを抑制できる。
光計測装置100においても、試料容器保持部材80を備えることから、試料容器保持部材80による上記作用効果、すなわち、試料1が漏れて積分器20内を汚染してしまう可能性を低減できる等の効果が奏される。
試料容器配置方法においても、収容部88にキャップ42を収容しながら、保持部89によって当該キャップ42ではなくセル41を確実に保持できる。これにより、試料容器保持部材80に試料容器40を着脱する際にキャップ42を外れにくくし、セル41内の試料1が漏れるのを抑制できる。したがって、試料1が漏れて積分器20内を汚染してしまう可能性を低減できる。
試料容器配置方法では、セル41に照射される励起光の光軸方向Kに垂直な垂直方向に対して光入射側(光軸方向Kおける一方側又は他方側)にセル41の長手方向を傾斜させた状態で、試料容器40を配置する。これにより、セル41で反射した励起光の全て又は一部が励起光源11の方向に戻ることを抑制できる。光軸方向K以外の方向にセル41を傾けて配置した場合には、励起光がセル41に当たらない可能性があることから、確実にセル41に励起光を当てることができる。
試料容器配置方法では、試料容器40を保持部89へはめ込むことで取り付ける。これにより、容易且つ着脱自在に試料容器40を保持できる。
固定部材70の矩形孔78内には、弾性部材77が設けられている。これにより、試料容器保持部材80の支柱部81は、その支柱本体83が弾性部材77でしっかりと押し付けられて挟持される。試料容器保持部材80を固定部材70に確実に固定させることができる。
図11は、変形例に係る試料容器保持部材80Aを示す斜視図である。図11に示されるように、試料容器保持部材80Aは、筒形状の遮光部96を備える。遮光部96は、収容部88の外側に配置されている。遮光部96は、収容部88に収容されたキャップ42を囲うように設けられている。遮光部96は、照射される励起光に対して当該キャップ42を遮光する。遮光部96は、励起光に対して遮光性を有する材料により形成されている。例えば遮光部96は、セル41とは異なる材質(例えば樹脂等)により形成されている。また例えば、遮光部96には、積分器20の内面と同じ硫酸バリウム等の高拡散反射物質が塗布されていてもよい。
この試料容器保持部材80Aでは、保持部89で保持した試料容器40のキャップ42を遮光部96で覆い、キャップ42による励起光の吸収を抑制できる。分光検出器45(図1参照)の測定誤差を低減できる。キャップ42における励起光の吸収が測定精度へ及ぶ影響を低減できる。
なお、遮光部96は、例えば着脱自在に容器取付部82に固定されてもよい。また、遮光部96は、例えば中心軸G1に沿って可動するように構成されていてもよい。この場合、遮光部96は、試料容器40が容器取付部82に取り付けられた後に、キャップ42を囲う位置まで可動される。
図12(a)は、変形例に係る試料容器保持部材80Bを示す側面図である。図12(b)は、変形例に係る試料容器保持部材80Cを示す側面図である。上述したように、容器取付部82が支柱部81の端部に着脱自在に固定されていることから、容器取付部82を種々の容器取付部へ取り替えてもよい。例えば試料容器保持部材は、様々な形状の保持部89を含む複数種の容器取付部82を備え、これら容器取付部82のうち試料容器40の形状に応じた何れかを、支柱部81へ取り付けてもよい。
図12(a)に示されるように、試料容器40よりもサイズが大きい別の試料容器を保持する場合には、試料容器保持部材80Bを採用してもよい。試料容器保持部材80Bは、容器取付部82の各寸法を大きくした容器取付部82Bが支柱部81の端部に固定されている。図12(b)に示されるように、試料容器40よりもサイズが小さい別の試料容器を保持する場合には、試料容器保持部材80Cを採用してもよい。試料容器保持部材80Cは、容器取付部82の各寸法を小さくした容器取付部82Cが支柱部81の端部に固定されている。また、外形が角柱形状のセルを有する試料容器を保持する場合には、当該セルの外面に対応する内面を保持部が有する容器取付部が、支柱部81の端部に固定されていてもよい。
すなわち、光計測装置及び試料容器保持部材は、形状が互いに異なる複数の保持部をそれぞれ有する複数の容器取付部を有し、支柱部81の端部に固定された容器取付部は、複数の容器取付部の中で交換可能に構成されていてもよい。容器取付部82に試料容器40を取り付ける前に(容器取付ステップの前に)、支柱部81に設けられた容器取付部82を、当該容器取付部82とは異なる別の容器取付部に交換してもよい。これにより、様々な形状の試料容器40の保持に容易に対応できる。
図13は、他の試料容器97を固定部材70で積分器20に直接取り付けた場合の光計測装置100を示す側断面図である。図13に示されるように、光計測装置100では、試料容器97を採用することで、試料容器保持部材80(図2参照)を用いなくてもよい。つまり、固定部材70は、試料容器保持部材80(図2参照)を介さずに、試料容器97を積分器20に直接取り付けることができる。
試料容器97は、固定部材70に対応する独自の光学セルである。試料容器97は、石英又は合成石英で形成されている。試料容器97は、試料1が収容される四角柱形状の中空のセル本体97aと、セル本体97aから管状に延在する棒状の枝管97bと、を有する。試料容器97は、その枝管97bが固定部材70の筒孔75に挿入されて固定されている。枝管97bは、弾性部材77で押し付けられながら、第1半筒部72A及び第2半筒部72Bで挟持される。これにより、固定部材70は、試料1を入れたセル本体97aを積分器20内に配置した状態で試料容器97を保持する。
すなわち、光計測装置は、試料容器97を更に備えていてもよい。この場合、光計測装置では、試料容器97を用いることで、精度の高い計測を行うこと、及び、励起光として紫外光を用いることができる。これにより、試料容器保持部材80の使用と試料容器97の使用とを適宜選択することができ、精度や条件に応じた計測が可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
上記実施形態では、収容部88及び保持部89の構造について、光入射側から試料容器40をはめ込む構造としたが、これに限定されない。例えば収容部88及び保持部89の構造は、試料容器40のはめ込み側(C字形状の開口側)を光入射側の反対側とする構造であってもよいし、それ以外の方向側からはめ込める構造であってもよい。
上記実施形態では、試料容器40のセル41をガラスで形成したが、石英で形成してもよい。上記実施形態では、保持部89は、中心軸G1に対して光入射側にセル41の長手方向を傾斜させた状態で試料容器40を保持したが、中心軸G1に対して光入射側とは反対側にセル41の長手方向を傾斜させた状態で試料容器40を保持してもよい。
上記実施形態では、積分器20として積分球が用いられたが、その内部の光を空間的に積分する手段(光学コンポーネント)であればよく、例えば特開2009−103654号公報に開示されているような積分半球が用いられてもよい。上記実施形態の保持部89は、その内面94がセル41の外周面に沿って接触する構成であるが、これに限定されず、セル41の外面の少なくとも3点に接触する構成であればよい。上記支柱部固定ステップ、上記容器取付ステップ、及び、上記容器配置ステップは、順不同であり、何れの順序で実施してもよい。