JP6225410B2 - 亜硝酸性窒素濃度測定方法及びその装置 - Google Patents
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Description
亜硝酸イオンと電解質との反応特性の調査のために図1に示す電気化学測定用機器にて構成したバッチ式の亜硝酸性窒素濃度測定装置1(以下、測定装置1)にてCV(サイクリックボルタメタリー)試験をした。
検出セル11(バッチ式のセル):テフロン(登録商標)キャップ付きガラスセル(イーシーフロンティア製,型番:VB-2)
作用電極12:電極径3mmグラッシーカーボン電極(イーシーフロンティア製,型番:GC-6355)
参照電極13:Ag/AgCl電極(イーシーフロンティア製,型番:RE-2)
対極14:白金コイル(イーシーフロンティア製,型番:CE-2)
検出部15:ポテンショスタットアナライザ(イーシーフロンティア製,型番:ECstat-100)
演算・制御部16:パーソナルコンピュータ(検出部15で検出された電流値または電荷をデ−タ処理、演算、記録するプログラム(イーシ−フロンティア製,ECstat-100専用ソフト)がインストールされたもの)
CV試験に用いた電解質溶液(1)〜(7)を以下に示した。
電解質溶液(1):0.5M硫酸ナトリウム水溶液,中性(pH=7)
電解質溶液(2):0.5M硫酸ナトリウム水溶液+0.05M硫酸,酸性(pH=1)
電解質溶液(3):0.5M硫酸ナトリウム水溶液+0.05M水酸化ナトリウム水溶液,アルカリ性(pH=13)
電解質溶液(4):0.5M塩化ナトリウム水溶液,中性(pH=7)
電解質溶液(5):0.5M硝酸ナトリウム水溶液,中性(pH=7)
電解質溶液(6):0.5M酢酸ナトリウム水溶液,弱アルカリ性(pH=9.5)
電解質溶液(7):0.5M硫酸アンモニウム水溶液,弱酸性(pH=4.6)
電解質溶液(1)〜(7)と亜硝酸ナトリウム水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度:0,1,2,5,10mM)との混合液を検出セル11に投入した。検出部15は検出セル11内の混合液に浸漬された電極12〜14間に所定の電位を印加してCV(サイクリックボルタグラム)測定値及びピーク電流を検出した。この検出したデータに基づく亜硝酸性窒素濃度とピーク電流との関係を演算・制御部16にて算出しその結果を出力表示した。
開始電位:−400mV
折り返し電位:+1400mV
終了電位:50mV/s
掃引速度:50mV/s
サンプリング間隔:100ms
CV測定値とこの測定値に基づく亜硝酸性窒素濃度の検量線を図2〜図8に示した。図示された測定結果によれば電解質の種類に依らず+900mV前後で亜硝酸イオンの酸化ピークが確認され、検量線(濃度−ピーク電流曲線)は略直線となり本反応過程を利用した定量分析が可能であることがわかった。
図9に示す電気化学測定用機器にて構成したFIA方式の亜硝酸性窒素濃度測定装置2(以下、測定装置2)にて各種測定を行った。測定装置2の構成を以下に説明する。
ポンプ21:シングルプランジャーポンプ(フロム社製,型番:SP-11A-12P)
インジェクタ22:手動バルブ(フロム社製,型番:V200))
チューブ23:ポリテトラフルオロエチレン(外径1/16”,内径0.75mm)
フローセル24:全電解セル(イーシーフロンティア製,型番:VF-2,作用電極241:カーボンフェルト(直径18mm,厚さ5mm,表面面積約1900cm2),参照電極242:Ag/AgCl、対極243:白金線(直径0.4mm,長さ150mm))
検出部25:ポテンショスタットアナライザ(イーシーフロンティア製,型番ECstat-100)
演算・制御部26:パーソナルコンピュータ(各機器制御や検出部24で検出された電流値または電荷をデータ処理、演算、記録するプログラム(イーシーフロンティア製,ECstat-100専用ソフト)がインストールされたもの)
(2−1)印加電圧の検討
測定装置2にて亜硝酸イオンのハイドロダイナミックボルタグラムを測定した。
キャリア:0.5M硫酸ナトリウム水溶液
注入試料(濃度既知試料水+電解質溶液):水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度5mM+硫酸ナトリウム濃度0.5M)
注入試料量:100μL
キャリア流速:0.5mL/min
印加電圧:+350〜+1300mV
図10に示された測定装置2でのハイドロダイナミックボルタモグラムによると、亜硝酸イオンの測定を可能とする印加電位の範囲は+800mV〜+1200mV(vs.Ag/AgCl)であり、この範囲の電位であれば全電解されることが確認された。また、高電位になるにつれて酸素発生によるバックグラウンド電流の増加、及び+800mVよりも十分な過電圧を保持する必要があることを考慮し、印加電位として+1000mV(vs.Ag/AgCl)を選択した。但し、印加電圧は測定結果に支障がないことを条件に+800mV〜+1200mV(vs.Ag/AgCl)の範囲から選択できる。
(2−2−1)亜硝酸性窒素濃度とキャリア流速の関係
亜硝酸ナトリウムにより亜硝酸性窒素濃度5,10,20,30,40,50mMの水溶液を調製し、各濃度でのキャリア流速変化における電解効率について調べた。
キャリア:0.5M硫酸ナトリウム水溶液
注入試料(濃度既知試料水+電解質溶液):水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度5,10,20,30,40,50mM+硫酸ナトリウム濃度0.5M)
注入試料量:100μL
キャリア流速:0.25〜2.0mL/min
印加電圧:+1000mV
図11に亜硝酸性窒素濃度とキャリア流速に基づく電解率を示した。注入試料量100μLであるとき、キャリア流速0.25〜2mL/minの範囲において、亜硝酸性窒素濃度が10mM以下では全電解されることが確認された。また、亜硝酸性窒素濃度が10mMよりも高い濃度(図11においては20〜50mM)においては、亜硝酸性窒素濃度とキャリア流速の上昇にともなって電解率は低下するもののキャリア流速0.25〜0.5mL/minの範囲であれば全電解されることが確認された。
注入試料量及びキャリア流速変化における電解効率について調べた。注入試料の亜硝酸ナトリウム濃度は22mM(mg/L換算で約1012mg/L)とした。
キャリア:0.5M硫酸ナトリウム水溶液
注入試料(濃度既知試料水+電解質溶液):水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度22mM+硫酸ナトリウム濃度0.5M)
注入試料量:50,100,200,500μL
キャリア流速:0.25〜2.0mL/min
印加電圧:+1000mV
上記の測定条件で得られた図12に示した注入試料量とキャリア流速変化による電解率との関係によるとキャリア流速0.25〜2mL/minの範囲において亜硝酸性窒素濃度が22mMであるとき、注入試料量が50μLで全電解されることが確認された。
・注入試料量が100μL以下ならば、キャリア流速0.25〜1.5mL/min
・注入試料量が200μL以下ならば、キャリア流速0.25〜0.7mL/min
・注入試料量が500μL以下ならば、キャリア流速0.25mL/min
亜硝酸性窒素濃度が10mMより高い濃度において、例えば20〜50mMでは、図11に示された亜硝酸性窒素濃度とキャリア流速との関係での結果から、注入試料量100μL、キャリア流速0.25〜0.5mL/minの範囲であれば全電解され測定が可能である。
亜硝酸性窒素濃度0.005〜100mMの濃度範囲内で各濃度と電荷との関係を示す検量線を作成した。亜硝酸性窒素濃度の調製には亜硝酸ナトリウムを使用した。
測定条件を以下に示した。
キャリア:0.5M硫酸ナトリウム水溶液
注入試料(濃度既知試料水+電解質溶液):水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度0.001〜100mM+硫酸ナトリウム濃度0.5M)
注入試料量:100μL
キャリア流速:0.5mL/min
各濃度の注入試薬について連続3回の測定を行なった。50mM濃度以下においては注入間隔2min、50mM以上の濃度においては3minとした。図13(a)(b)には、亜硝酸性窒素濃度0.001〜0.02mMと60〜100mMの各濃度範囲内での時間‐電流曲線の測定結果の例を示す。そして、亜硝酸性窒素濃度0.001〜100mMの濃度範囲内の各濃度において測定した時間‐電流曲線の結果からピーク面積を算出し、図14の亜硝酸性窒素濃度とクーロン値(電荷)との関係を示す検量線を作成した。
亜硝酸イオンを測定する場合、排水中の濃度測定を目的とすることが多い。そのような排水は、多くの場合、嫌気性微生物や好気性微生物等を利用した生物学的脱窒処理が行われている。そのため、排水中には亜硝酸イオン以外に窒素の形態が変化したアンモニウムイオン、硝酸イオンが常に存在していることとなる。これら共存するイオンが亜硝酸イオンの測定を妨害する場合には測定の信頼性が得られない。
共存物質として試供するアンモニウムイオン源には硫酸アンモニウムを電解質と兼ねて用いた。注入する試料水の亜硝酸性窒素濃度は1mM一定とし、同時に注入する硫酸アンモニウム濃度を変化させることで妨害濃度依存性を調べた。測定条件を以下に示した。
キャリア:0.5M硫酸ナトリウム水溶液
注入試料(濃度既知試料水+妨害物質兼電解質溶液):水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度1mM+硫酸アンモニウム濃度1,10,100,1000mM)
注入試料量:100μL
キャリア流速:0.5mL/min
印加電位:+1000mV
表1は、1,10,100,1000mMの硫酸アンモニウムを含む1mM亜硝酸ナトリウム水溶液の測定で得られた電気量と、硫酸アンモニウムを含まない1mM亜硝酸ナトリウム水溶液の電気量から算出した変動率を示したものである。測定した硫酸アンモニウムの濃度範囲内では100+1〜2%のプラスの誤差を生じた。
共存物質として試供する硝酸イオン源には硝酸ナトリウムを電解質と兼ねて用いた。
注入する試料水の亜硝酸性窒素濃度は1mM一定とし、同時に注入する硝酸ナトリウム濃度を変化させることで妨害濃度依存性を調べた。測定条件を以下に示した。
キャリア:0.5M硫酸ナトリウム水溶液
注入試料(濃度既知試料水+妨害物質兼電解質溶液):水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度1mM+硝酸ナトリウム濃度1,10,100,1000mM)
注入試料量:100μL
キャリア流速:0.5mL/min
印加電位:+1000mV
表2は、1,10,100,1000mMの硝酸ナトリウムを含む1mM亜硝酸ナトリウム溶液の測定で得られた電気量と、硝酸ナトリウムを含まない1mM亜硝酸ナトリウムのみの電気量から算出した変動率を示したものである。測定した硝酸ナトリウムの濃度範囲内では100+2〜6%のプラスの誤差を生じた。
試験に供する酢酸イオン源として酢酸ナトリウムを電解質と兼ねて用いた。注入する亜硝酸性窒素濃度を1mM一定とし、同時に注入する酢酸ナトリウム濃度を変化させることで妨害濃度依存性を調べた。測定条件を以下に示した。
キャリア:0.5M硫酸ナトリウム水溶液
注入試料(濃度既知試料水+妨害物質兼用電解質溶液):水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度1mM+酢酸ナトリウム濃度1,10,100,1000mM)
注入試料量:100μL
キャリア流速:0.5mL/min
印加電位:+1000mV
表3は、1,10,100,1000mMの酢酸ナトリウムを含む1mM亜硝酸ナトリウム溶液の測定で得られた電気量と、酢酸ナトリウムを含まない1mM亜硝酸ナトリウムのみの電気量から算出した変動率を示したものである。測定した酢酸ナトリウムの濃度範囲内では100+2〜5%のプラスの誤差を生じた。
以上のように共存物質がアンモニウムイオン、硝酸イオン、酢酸イオンである場合の亜硝酸性窒素濃度の測定の妨害性について実験した結果、当該共存物質が直接反応に関与することや亜硝酸イオンの反応を阻害することはないことが確認された。
測定装置2にて各種測定と実試料の測定を行った。また、亜硝酸性窒素濃度の調製には亜硝酸ナトリウムを使用した。
以下に挙げた5種類の電解質溶液をキャリアとして、亜硝酸窒素濃度とクーロン値との関係を示す検量線の直線性、傾きの比較、バックグラウンド電流の比較を行った。
キャリア:0.5M塩化ナトリウム水溶液,0.5M硝酸ナトリウム水溶液,0.5M酢酸ナトリウム水溶液,0.5M硫酸アンモニウム水溶液,0.5M硫酸ナトリウム水溶液
注入試料(濃度既知試料水+電解質溶液):水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度2.5mM,5.0mM,10mM+前記キャリアのいずれかの0.5M水溶液)
注入試料量:100μL
キャリア流速:0.5mL/min
印加電圧:+1000mV
上記各キャリアでの各検量線の直線性を比較したところ、図15(a)〜(e)に示したように、いずれのキャリアを用いても直線性、傾きとも同じ結果となった。また、図16に示されたバックグラウンド電流の比較によると、塩化ナトリウム水溶液が最も小さく、次いで、硝酸ナトリウム水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、硫酸アンモニア水溶液、酢酸ナトリウム水溶液の順となった。特に酢酸ナトリウム水溶液は酸素過電圧が小さいことが分かる。以降の検討ではキャリアに塩化ナトリウム水溶液を採用した。
キャリアに塩化ナトリウム水溶液を採用し、その濃度を0.25,0.5,0.75,1.0Mにし、各々の濃度にて印加電位を+450〜+1100mVの範囲で変えて亜硝酸イオンのハイドロダイナミックボルタグラムを測定した。亜硝酸性窒素濃度は5mM及び測定上限値に近い50mMで行った。
キャリア:0.25,0.5,0.75,1.0M塩化ナトリウム水溶液
注入試料(濃度既知試料水+電解質溶液):水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度5,50mM+塩化ナトリウム濃度0.25,0.5,0.75,1.0M)
注入試料量:100μL
キャリア流速:0.5mL/min
印加電位:+450〜+1100mV
図17に示された5mM亜硝酸性窒素濃度でのハイドロダイナミックボルタモグラムの結果から明らかなように、印加電位+600mV付近より酸化が起こり始め、+850mVではほぼクーロン値が一定となった。塩化ナトリウムの濃度に関係なく同じ波形が得られた。
実試料においては、亜硝酸イオンのほかに酸化性物質が多く含まれることが想定される。そこで、亜硝酸イオンを検出するセルの前段に前処理用のセルを設け、亜硝酸イオンよりも酸化電位の低い電気化学活性な物質を除去する方法について検討した。本検討では電気化学活性な妨害物質としてフェロシアン化カリウム(ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム)を用いた。
フェロシアン化カリウムを妨害物質に見立て、亜硝酸イオンと共存した際のハイドロダイナミックボルタモグラムを測定した。測定条件は以下の通りである。
キャリア:1.0M塩化ナトリウム
注入試料(濃度既知試料水+妨害物質溶液+電解質溶液):水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度5mM+フェロシアン化カリウム濃度5mM+塩化ナトリウム濃度1.0M)
注入試料量:100μL
キャリア流速:0.5mL/min
印加電位:+10〜+1100mV
図19に示されたように印加電位+200mV付近からフェロシアン化カリウムがフェロシアン化カリウムに酸化する電流が流れ、以降一定となり、次に+650mV付近からフェロシアン化カリウムの反応に加え、亜硝酸イオンの酸化反応が見られた。濃度5mMの亜硝酸イオンは約100mCの電気量が得られるが、5mMフェロシアン化カリウムの還元体は安定ではなく約60mCの電気量であった。
亜硝酸ナトリウム濃度5mM及びフェロシアン化カリウム濃度5mMの水溶液を前処理工程で任意の電位で処理した水溶液を調製し、検出工程では前記水溶液を測定装置2のフローセル24で所定の印加電位にて電気量の変化を測定した。
(前処理工程)
注入試料(濃度既知試料水+妨害物質溶液+電解質溶液):水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度5mM+フェロシアン化カリウム濃度5mM+塩化ナトリウム濃度1.0M)
前処理用フローセル:全電解セル(イーシーフロンティア製,型番:VF-2)
注入試料の流速:0.5mL/min
印加電圧:+100〜+1100mV
(検出工程)
検出用フローセル:全電解セル(イーシーフロンティア製,型番:VF-2)
キャリア:1.0M塩化ナトリウム水溶液
注入試料:前記前処理工程にて試料(亜硝酸ナトリウム濃度5mM+フェロシアン化カリウム濃度5mM+塩化ナトリウム濃度1.0M)を電解処理した溶液
注入試料量:100μL
キャリア流速:0.5mL/min
印加電位:+1000mV
図20に示された+100mV及び+200mVで電解処理した溶液は、検出用フローセルで亜硝酸ナトリウム及びフェロシアン化カリウムの合算電気値が測定された。+200mV以上になると前処理用フローセルでフェロシアン化カリウムがフェリシアン化カリウム(ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム)に酸化し始め、図20に示された+400mVから+600mVの範囲Rではほぼ完全に亜硝酸イオンのみを検出することができた。+600mV以上では、前処理用セルで亜硝酸イオンも酸化反応を開始するため、亜硝酸イオンの測定値も小さくなる傾向を示した。
5,20,50mM濃度に調製した亜硝酸イオンを前処理用フローセルに通液し電解処理した溶液を用いて、検出用フローセルでその電気量を測定し検量線を作成した。比較例として前処理用フローセルを介さないで検出用フローセルにて電気量を測定した場合の検量線を作成した。
(前処理工程)
注入試料(濃度既知試料水+電解質溶液):水溶液(亜硝酸ナトリウム濃度5,20,50mM+塩化ナトリウム濃度1.0M)
前処理用フローセル:全電解セル(イーシーフロンティア製,型番:VF-2)
注入試料の流速:0.5mL/min
印加電圧:+500mV
(検出工程)
検出用フローセル:全電解セル(イーシーフロンティア製,型番:VF-2)
キャリア:1.0M塩化ナトリウム水溶液
注入試料:前記前処理工程にて試料(亜硝酸ナトリウム濃度5,20,50mM+塩化ナトリウム濃度1.0M)を電解処理した溶液
注入試料量:100μL
キャリア流速:0.5mL/min
印加電位:+1000mV
図21(a)は前処理工程を実行しない場合の亜硝酸性窒素濃度とクーロン値との関係を示す。図21(b)は前処理工程を実行した場合の亜硝酸性窒素濃度とクーロン値との関係を示す。両者の結果から明らかなように前処理用フローセルでの電解処理の有無に関わらず検量線の傾きはほぼ同一となった。これにより前処理用フローセルで亜硝酸イオンは酸化されていないことが確認された。
(3−4)実試料での評価
下水処理工程水の実試料としてAX膜ろ過水、PN膜ろ過水を個々に前処理用フローセルにて前処理工程を実行後、検出工程として計測装置2に供した。AX膜ろ過水は、実試料として生物学的脱窒処理システムにおける脱窒工程を経た活性汚泥液を分離膜によって固液分離した処理水である。PN膜ろ過水は、同システムにおける硝化工程(亜硝酸生成工程)を経た活性汚泥液を分離膜によって固液分離した処理水である。また、比較例として前処理用フローセルを介さないで検出用フローセルに実試料を直接供して亜硝酸性窒素濃度を測定した。尚、計測装置2の注入試料は、下水処理工程水の試料水であり導電性を有することから電解質を添加せずに前処理用フローセルにて電解処理を実行した。
(前処理工程)
注入試料:AX膜ろ過水,PN膜ろ過水
前処理用フローセル:全電解セル(イーシーフロンティア製,型番:VF-2)
注入試料の流速:0.5mL/min
印加電圧:+500mV
(検出工程)
検出用フローセル:全電解セル(イーシーフロンティア製,型番:VF-2)
キャリア:1.0M塩化ナトリウム水溶液
注入試料:前記前処理工程を経たAX膜ろ過水を2.0M塩化ナトリウム水溶液と1:1の割合で混合した混合液,同工程を得たPN膜ろ過水を2.0M塩化ナトリウム水溶液と1:1の割合で混合した混合液
注入試料量:100μL
キャリア流速:0.5mL/min
印加電位:+1000mV
AX膜ろ過水及びPN膜ろ過水について、前処理用フローセルによって電解処理した場合及び電解処理しない場合も含めた4パターンの試料について繰り返し10回測定を行なった場合の電気量の測定を測定した。試料は2M塩化ナトリウム水溶液で2倍に希釈したため実質的な電気量の値は測定値を2倍した値である。そして、この電気量の値を図21(b)の検量線に基づき亜硝酸性窒素濃度(mg−N/L)に換算した。その結果を表5に示した。
本実施形態の亜硝酸性窒素濃度測定装置はバッチ方式を採用している。バッチ式の測定装置の態様としては前述の図1に示された測定装置1が例示される。
本実施形態の亜硝酸性窒素濃度測定装置はFIA方式を採用している。FIA方式の測定装置の態様としては図22に示された測定装置3が例示される。
11…検出セル(検出容器)
12,241,311,411…作用電極
13,242,312,412…参照電極
14,243,313,413…対極
15,32…検出部
16,33…演算・制御部(演算部)
31…検出用フローセル(検出容器)
41…前処理用フローセル
Claims (2)
- 試料水と塩化ナトリウム水溶液との混合液をフローインジェクション方式の検出容器に供給し当該容器内の混合液に浸漬された電極間に所定の電圧を印加して検出される電流または電荷に基づき前記試料水の亜硝酸性窒素濃度を測定する亜硝酸性窒素濃度測定方法であって、
前記混合液に浸漬させた電極間に400〜600mVの電圧を印加して当該混合液を予め電解処理する工程と、
前記電解処理した混合液に浸漬させた電極間に800〜1200mVの電圧を印加して検出される電流または電荷に基づき前記試料水の亜硝酸性窒素濃度を測定する工程と
を有することを特徴とする亜硝酸性窒素濃度測定方法。 - 試料水と塩化ナトリウム水溶液との混合液を流通させる検出容器と、
この検出容器内に配置される電極と、
前記検出容器内の混合液に浸漬された電極間に400〜600mVの電圧を印加して当該混合液を予め電解処理する一方でこの電解処理した混合液に浸漬された当該電極間に800〜1200mVの電圧を印加して電流または電荷を検出する検出部と、
前記検出された電流または電荷を亜硝酸性窒素濃度に変換する演算部と
を備えたことを特徴とする亜硝酸性窒素濃度測定装置。
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