JP6222472B2 - 車両用挙動制御装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、前輪及び後輪の荷重は、車両の位置における路面の勾配の向き(上り勾配又は下り勾配)や大きさに応じて変化する。例えば路面が下り勾配である場合には、路面が平坦である場合よりも前輪に加わる荷重が大きいので、路面の勾配に関わらずヨーレート関連量のみに応じて駆動力低減量を決定すると必要以上の荷重が前輪に加わって車両の挙動が急になり、ドライバが違和感を覚えてしまう。一方、路面が上り勾配である場合には、路面が平坦である場合よりも前輪に加わる荷重が小さいので、路面の勾配に関わらずヨーレート関連量のみに応じて駆動力低減量を決定すると前輪に加わる荷重が不足し、車両の回頭性を十分に向上させることができない。
このように構成された本発明においては、切り返し操舵が行なわれていない場合(例えば、レーンチェンジ初期の切り返し前の状態)、車両の操舵が開始され、車両のヨーレート関連量が増大し始めると、駆動力の低減量を迅速に増大させるので、車両の操舵開始時において減速度を迅速に車両に生じさせ、十分な荷重を操舵輪である前輪に迅速に加えることができる。これにより、操舵輪である前輪と路面との間の摩擦力が増加し、前輪のコーナリングフォースが増大するので、カーブ進入初期における車両の回頭性を向上することができ、ステアリングの切り込み操作に対する応答性を向上できる。また、駆動力制御手段は、ヨーレート関連量が増大するほど、車両の駆動力の低減量の増大割合を低減させるので、カーブ走行中に車両に発生させる減速度が過大にならず、操舵終了時に減速度を迅速に減少させることができる。従って、カーブ脱出時において、ドライバが駆動力低減の引きずり感を感じることを防止できる。また、駆動力制御手段は、路面の勾配が下り勾配である場合、駆動力の低減量を減少させ、路面の勾配が上り勾配である場合、駆動力の低減量を増大させるように補正するので、路面の下り勾配により前輪に加わる荷重が増大していても、あるいは、路面の上り勾配により前輪に加わる荷重が減少していても、前輪に加わる荷重の合計値は路面が平坦である場合と同程度に調整され、ステアリングの切り込み操作中における車両の挙動は路面が平坦な場合と同様のものになる。これにより、勾配のある路面を走行している場合においても、平坦な路面を走行している場合と同様に、車両の回頭性を向上させることができ、車両のコーナリング時におけるドライバの操作が自然で安定したものとなるように車両の挙動を制御することができる。
このように構成された本発明においては、駆動力制御手段は、切り返し操舵が行なわれ且つ車両の操舵角の絶対値が減少している場合(例えば、レーンチェンジ後期においてドライバがステアリングを中立位置に戻そうとしている場合)、車両の駆動力を増大させるので、車両の直進復帰のための操舵時において加速度を車両に生じさせ、後輪の荷重を増大させることができる。これにより、後輪のコーナリングフォースが増大するので、車両の直進性を向上することができ、車両のヨーレートを確実に収束させることができる。さらに、駆動力制御手段は、切り返し操舵が行なわれ且つ車両の操舵角の絶対値が減少している場合において、路面の勾配が下り勾配である場合、駆動力の増大量を増大させ、路面の勾配が上り勾配である場合、駆動力の増大量を減少させるように補正するので、路面の下り勾配により後輪に加わる荷重が減少していても、あるいは、路面の上り勾配により後輪に加わる荷重が増大していても、後輪に加わる荷重の合計値は路面が平坦である場合と同程度に調整されるので、ステアリングの切り戻し操作中における車両の挙動は路面が平坦な場合と同様のものになる。これにより、勾配のある路面を走行している場合においても、平坦な路面を走行している場合と同様に、車両のヨーレートを収束させることができ、車両のコーナリング時におけるドライバの操作が自然で安定したものとなるように車両の挙動を制御することができる。
このように構成された本発明においては、路面の勾配に応じて前輪や後輪に加わる荷重が変化しても、その変化の度合い応じて駆動力制御量の補正量を変化させることができ、これにより、前輪や後輪に加わる荷重の合計値を、路面が平坦である場合と同程度に調整することができる。従って、勾配のある路面を走行している場合においても、平坦な路面を走行している場合と同様に、車両の回頭性を向上させ、あるいは、車両のヨーレートを収束させることができ、車両のコーナリング時におけるドライバの操作が自然で安定したものとなるように車両の挙動を制御することができる。
このように構成された本発明においては、駆動力制御手段は、車両のヨーレート関連量に応じてモータのトルクを低減させるので、直接的に車両の駆動力を低減させることができる。従って、油圧ブレーキユニットを制御することにより車両の駆動力を低減させる場合と比較して、駆動力低減の応答性を高めることができ、よりダイレクトに車両の挙動を制御することができる。
このように構成された本発明においては、駆動力制御手段は、モータが発生させる回生電力をバッテリに回収させるとバッテリが過充電になる場合や、バッテリの温度が許容温度範囲を超えてしまう場合、モータのトルクを低減させず、回生電力を発生させないので、過充電や許容温度範囲逸脱によるバッテリの損傷を防止することができる。また、駆動力制御手段は、車両の駆動力を低減させない旨の情報を表示手段に表示させるので、カーブ進入時に駆動力が低減されないことによりドライバが違和感を覚えることを防止できる。
まず、図1により、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載する車両について説明する。図1は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置を搭載する車両の全体構成を示すブロック図である。
さらに、車両1は、車両用挙動制御装置20による車両1の挙動制御に関する情報を表示するインジケータ22を有する。
また、バッテリ2は、このバッテリ2のSOC(State Of Charge)及び温度を検出するバッテリ状態検出部24を備えている。
車両用挙動制御装置20は、車両1の目標ヨー加速度を算出するヨー加速度算出部26と、車両1の位置における路面の勾配を取得する勾配取得部28と、車両1の駆動力を制御する駆動力制御部30とを備える。
この車両用挙動制御装置20には、操舵角センサ12が検出した操舵角、車速センサ14が検出した車速、ヨーレートセンサ16が検出したヨーレート、加速度センサ18が検出した車両1の前後方向の加速度、並びにバッテリ状態検出部24が検出したバッテリ2のSOC及び温度が入力される。
勾配取得部28は、例えば、車速センサ14から入力された車速を時間微分することにより算出した車両1の前後方向の加速度と、加速度センサ18から入力された車両1の前後方向の加速度とに基づき、車両1に働く重力加速度の前後方向成分を算出し、その前後方向成分の大きさに基づき、車両1の位置における路面の勾配を算出する。あるいは、勾配取得部28は、車両1の現在位置における路面の勾配を、GPSにより取得した車両1の現在位置と、路面の勾配を含む地図データとから取得する。
駆動力制御部30は、算出された目標ヨー加速度及びバッテリ2の状態に基づき、モータ6のトルク制御量(即ち駆動力低減量又は駆動力増大量)を決定し、そのモータ6のトルク制御量を実現するように、モータ6が発生させる回生電力量、又はモータ6に供給する電力量を制御する。また、駆動力制御部30は、駆動力制御部30がモータ6の駆動力を制御可能な状態か否かを示す情報をインジケータ22に出力する。
これらのヨー加速度算出部26、勾配取得部28、及び、駆動力制御部30は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。
図3は、本発明の実施形態による車両用挙動制御装置20が車両1の挙動を制御する挙動制御処理のフローチャートであり、図4は、図3に示した挙動制御処理における切り返し判定処理のフローチャートであり、図5は、図3に示した挙動制御処理における切り返し前挙動制御処理のフローチャートであり、図6は、図3に示した挙動制御処理における切り返し中挙動制御処理のフローチャートであり、図7は、本発明の実施形態による駆動力制御部30が目標ヨー加速度に基づいて基本制御介入トルクを決定する際に参照するマップであり、図8は、本発明の実施形態による駆動力制御部30が路面の勾配に基づいて駆動力制御量の補正係数を決定する際に参照するマップであり、(a)は基本制御介入トルクの補正係数を決定する際に参照するマップ、(b)は駆動制御介入トルクの補正係数を決定する際に参照するマップである。
一方、ステップS3において、切り返しフラグがOFFではない(ONである)場合、即ち車両1において切り返し操舵が行なわれた場合、ステップS5に進み、駆動力制御部30は、切り返し操舵が行なわれた場合の車両1の挙動を制御する切り返し中挙動制御処理を実行する。
具体的には、駆動力制御部30は、目標ヨー加速度と基本制御介入トルクとの関係を示すマップを参照し、ステップS25においてヨー加速度算出部26が算出した目標ヨー加速度に対応する基本制御介入トルクを特定する。
図7は、本発明の実施形態による駆動力制御部30が目標ヨー加速度に基づいて基本制御介入トルクを決定する際に参照するマップである。この図7における横軸は目標ヨー加速度を示し、縦軸は基本制御介入トルクを示す。図7に示すように、目標ヨー加速度が増大するに従って、この目標ヨー加速度に対応する基本制御介入トルクは、所定の上限値(図7においては12Nm)に漸近する。即ち、駆動力制御部30は、目標ヨー加速度が増大するほど、基本制御介入トルクを増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御する。
即ち、駆動力制御部30は、路面が平坦である場合には基本制御介入トルクの補正を行なわず、路面が下り勾配である場合には基本制御介入トルクを減少させ、路面が上り勾配である場合には基本制御介入トルクを増大させるように補正を行う。また、路面の勾配の絶対値が増大するほど(即ち勾配が急になるほど)、基本制御介入トルクの補正量が増大するようになっている。
具体的には、駆動力制御部30は、バッテリ2のSOC及び温度に基づき、バッテリ2がモータ6から回収可能な回生電力量及びバッテリ2に通電可能な最大電流を特定し、これらの回生電力量及び最大電流に基づき、モータ6に許容する回生電力を算出する。そして、この許容回生電力に対応する回生トルクを、制御介入受入可能トルクとして算出する。
以降、ステップS21において操舵角がθ2未満となるか、又は、ステップS22において操舵角の絶対値が一定又は減少中となるまで、駆動力制御部30は、ステップS21からS32の処理を繰り返し、ステップS21において操舵角がθ2未満となるか、又は、ステップS22において操舵角の絶対値が一定又は減少中となった場合、駆動力制御部30は図3の挙動制御処理に戻る。
以降、ステップS41において操舵角の絶対値が一定又は減少中となるまで、駆動力制御部30は、ステップS41からS54の処理を繰り返す。
例えば、駆動力制御部30は、基本制御介入トルクを決定する場合と同様に、図4に例示したマップを参照して駆動制御介入トルクを決定する。即ち、駆動力制御部30は、目標ヨー加速度が増大するほど、駆動制御介入トルクを増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御する。
具体的には、駆動力制御部30は、路面の勾配と補正係数K2との関係を示すマップを参照し、ステップS57において取得した路面の勾配に対応する補正係数K2を特定する。
図8(b)は、本発明の実施形態による駆動力制御部30が路面の勾配に基づいて駆動制御介入トルクの補正係数を決定する際に参照するマップである。この図8(b)における横軸は路面の勾配(上り勾配は正、下り勾配は負)を示し、縦軸は補正係数K2を示す。図8(b)に示すように、補正係数K2は、路面の勾配が0radである場合に1であり、勾配が正(上り勾配)の場合に1より小さく、勾配が負(下り勾配)の場合に1より大きく、路面の勾配が大きくなるほど値が減少するように設定されている。
即ち、駆動力制御部30は、路面が平坦である場合には駆動制御介入トルクの補正を行なわず、路面が下り勾配である場合には駆動制御介入トルクを増大させ、路面が上り勾配である場合には駆動制御介入トルクを減少させるように補正を行う。また、路面の勾配の絶対値が増大するほど(即ち勾配が急になるほど)、駆動制御介入トルクの補正量が増大するようになっている。
この図9(b)に示すように、位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、ステアリングの切り込み操作が行われることにより右向きの操舵角が徐々に増大し、位置Bにおいて右向きの操舵角が最大となる。その後、ステアリングの切り戻し操作が行われることにより右向きの操舵角が徐々に減少し、位置Cにおいて操舵角が0になる。次いで、位置Cから左向きに切り返し操舵が開始され、位置Dにおいて左向きの操舵角が最大となり、その後左向きの操舵角が徐々に減少し、位置Eにおいて再び操舵角が0になる。
この図9(c)に示すように、車両1の目標ヨーレートは、操舵角の変化に比例して変化する。即ち、位置Aにおいて右向きの操舵が開始されると、時計回り(CW)の目標ヨーレートが算出され、位置Bにおいて時計回りの目標ヨーレートが最大になる。その後、時計回りの目標ヨーレートは徐々に減少し、位置Cにおいて目標ヨーレートは0になる。次いで、位置Cにおいて左向きの切り返し操舵が開始されると、車両1には反時計回り(CCW)の目標ヨーレートが発生し、位置Dにおいて反時計回りの目標ヨーレートが最大になる。その後、反時計回りの目標ヨーレートは徐々に減少し、位置Eにおいて目標ヨーレートは0になる。但し、位置Bから位置Cにおいては、ステアリングの切り戻し操作が行われているので、図5の切り返し前挙動制御処理のステップS22において駆動力制御部30は操舵角の絶対値が増大中ではないと判定し、切り返し前挙動制御処理を終了する。従って、位置Bから位置Cにおいては、駆動力制御部30は目標ヨーレートの算出を行わない。
車両1の目標ヨー加速度は、車両1の目標ヨーレートの時間微分により表される。即ち、図9(d)に示すように、位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、時計回りの目標ヨーレートが算出されると、時計回り(CW)の目標ヨー加速度が算出され、位置Aと位置Bとの間において時計回りの目標ヨー加速度が極大になる。その後、時計回りの目標ヨー加速度は減少し、位置Bにおいて時計回りの目標ヨーレートが極大になると、目標ヨー加速度は0になる。更に、位置Bから位置Cまで時計回りの目標ヨーレートが減少すると、反時計回り(CCW)の目標ヨー加速度が算出され、位置Cにおいて極大になる。次いで、位置Cにおいて左向きの切り返し操舵が開始され、反時計回りの目標ヨーレートが算出され、位置Dにおいて反時計回りの目標ヨーレートが極大になるまで、反時計回りの目標ヨー加速度は減少し、位置Dにおいて目標ヨー加速度は0になる。その後、位置Dから位置Eまで反時計回りのヨーレートが減少すると、時計回りの目標ヨー加速度が算出され、位置Dと位置Eの間において時計回りの目標ヨー加速度が極大になった後、位置Eにおいて目標ヨー加速度は0になる。但し、位置Bから位置Cにおいては、ステアリングの切り戻し操作が行われているので、図5の切り返し前挙動制御処理のステップS22において駆動力制御部30は操舵角の絶対値が増大中ではないと判定し、切り返し前挙動制御処理を終了する。従って、位置Bから位置Cにおいては、駆動力制御部30は目標ヨー加速度の算出を行わない。
なお、この図9(e)は、図5の切り返し前挙動制御処理のステップS30において駆動力制御部30が決定した補正制御介入トルクが、ステップS28において決定した補正係数K1をステップS26において決定した基本制御介入トルクに乗じたトルク値であるケース、及び、図6の切り返し中挙動制御処理のステップS52において駆動力制御部30が決定した補正制御介入トルクが、ステップS50において決定した補正係数K1をステップS47において決定した基本制御介入トルクに乗じたトルク値であるケース(即ち、補正係数K1を基本制御介入トルクに乗じたトルク値が、制御介入受入可能トルクよりも小さいケース)を示している。
ここで、駆動力制御部30は、図5の切り返し前挙動制御処理のステップS28において決定した補正係数K1を基本制御介入トルクに乗じることにより補正制御介入トルクを決定し、その補正制御介入トルクに対応する大きさの駆動力を減少させる。上述したように、駆動力制御部30は、路面が平坦である場合には基本制御介入トルクの補正を行なわず、路面が下り勾配である場合には基本制御介入トルクを減少させ、路面が上り勾配である場合には基本制御介入トルクを増大させるように補正係数K1を決定する。従って、路面が下り勾配である場合、補正制御介入トルクは基本制御介入トルクよりも小さくなり、図9(e)に点線で示すように、トルク低減量は小さくなる。一方、路面が上り勾配である場合、補正制御介入トルクは基本制御介入トルクよりも大きくなり、図9(e)に破線で示すように、トルク低減量は大きくなる。
ここで、駆動力制御部30は、図6の切り返し中挙動制御処理のステップS50において決定した補正係数K1を基本制御介入トルクに乗じることにより補正制御介入トルクを決定し、その補正制御介入トルクに対応する大きさの駆動力を減少させる。上述したように、駆動力制御部30は、路面が平坦である場合には基本制御介入トルクの補正を行なわず、路面が下り勾配である場合には基本制御介入トルクを減少させ、路面が上り勾配である場合には基本制御介入トルクを増大させるように補正係数K1を決定する。従って、路面が下り勾配である場合、補正制御介入トルクは基本制御介入トルクよりも小さくなり、図9(e)に点線で示すように、トルク低減量は小さくなる。一方、路面が上り勾配である場合、補正制御介入トルクは基本制御介入トルクよりも大きくなり、図9(e)に破線で示すように、トルク低減量は大きくなる。
ここで、駆動力制御部30は、図6の切り返し中挙動制御処理のステップS58において決定した補正係数K2を駆動制御介入トルクに乗じることにより補正制御介入トルクを決定し、その補正制御介入トルクに対応する大きさの駆動力を増大させる。上述したように、駆動力制御部30は、路面が平坦である場合には駆動制御介入トルクの補正を行なわず、路面が下り勾配である場合には駆動制御介入トルクを増大させ、路面が上り勾配である場合には駆動制御介入トルクを減少させるように補正係数K2を決定する。従って、路面が下り勾配である場合、補正制御介入トルクは駆動制御介入トルクよりも大きくなり、図9(e)に点線で示すように、トルク増大量は大きくなる。一方、路面が上り勾配である場合、補正制御介入トルクは駆動制御介入トルクよりも小さくなり、図9(e)に破線で示すように、トルク増大量は小さくなる。
位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、時計回りの目標ヨー加速度が増大するにつれて図9(e)に示したようにトルク低減量が増大すると、車両1の操舵輪である前輪の荷重が増加する。その結果、前輪と路面との間の摩擦力が増加し、前輪のコーナリングフォースが増大するので、車両1の回頭性が向上する。
また、位置Cにおいて左向きの操舵が開始され、反時計回りの目標ヨー加速度に応じて図9(e)に示したようにトルク低減量が増大すると、車両1の操舵輪である前輪の荷重が増加し、前輪のコーナリングフォースが増大するので、車両1の回頭性が向上する。
ここで、図9(e)に示したように、ステアリングの切り込み操作が行われているときに、路面が下り勾配である場合、駆動力制御部30は、トルク低減量を路面が平坦である場合よりも小さくなるように補正し、トルク低減による前輪荷重の増大量を減少させる。これにより、路面の下り勾配により前輪に加わる荷重が増大していても、前輪に加わる荷重の合計値は路面が平坦である場合と同程度に調整されるので、ステアリングの切り込み操作中における車両1の挙動は路面が平坦な場合と同様のものになる。また、路面が上り勾配である場合、駆動力制御部30は、トルク低減量を路面が平坦である場合よりも大きくなるように補正し、トルク低減による前輪荷重の増大量を増大させる。これにより、路面の上り勾配により前輪に加わる荷重が減少していても、前輪に加わる荷重の合計値は路面が平坦である場合と同程度に調整されるので、ステアリングの切り込み操作中における車両1の挙動は路面が平坦な場合と同様のものになる。
更に、位置Dにおいて切り返し操舵におけるステアリングの切り戻し操作が開始され、時計回りの目標ヨー加速度が増大するにつれて図9(e)に示したようにトルク増大量が増大すると、車両1の後輪の荷重が増加する。その結果、後輪のコーナリングフォースが増大し、車両1の直進性が向上するので、位置Dと位置Eとの間においてモータ6のトルク制御を行わなかった場合よりも、モータ6のトルク制御を行った場合の方が実ヨーレートの収束が早くなる。
ここで、図9(e)に示したように、ステアリングの切り戻し操作が行われているときに、路面が下り勾配である場合、駆動力制御部30は、トルク増大量を路面が平坦である場合よりも大きくなるように補正し、トルク増大による後輪荷重の増大量を増大させる。これにより、路面の下り勾配により後輪に加わる荷重が減少していても、後輪に加わる荷重の合計値は路面が平坦である場合と同程度に調整されるので、ステアリングの切り戻し操作中における車両1の挙動は路面が平坦な場合と同様のものになる。また、路面が上り勾配である場合、駆動力制御部30は、トルク増大量を路面が平坦である場合よりも小さくなるように補正し、トルク増大による後輪荷重の増大量を減少させる。これにより、路面の上り勾配により後輪に加わる荷重が増大していても、後輪に加わる荷重の合計値は路面が平坦である場合と同程度に調整されるので、ステアリングの切り戻し操作中における車両1の挙動は路面が平坦な場合と同様のものになる。
上述した実施形態においては、車両用挙動制御装置20を搭載する車両1は、動力源としてバッテリ2を搭載すると説明したが、動力源としてガソリンエンジンやディーゼルエンジンを搭載する車両1に車両用挙動制御装置20を搭載してもよい。この場合、駆動力制御部30は、ヨー加速度に応じて燃料噴射量やトランスミッションを制御し、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンによる駆動力を低減させる。
例えば、ヨー加速度算出部26は、ヨーレートセンサ16から入力されたヨーレートに基づき、車両1に発生するヨー加速度を算出し、駆動力制御部30は、このように算出されたヨー加速度に基づき、モータ6のトルク制御量を決定するようにしてもよい。この場合、駆動力制御部30は、車両1に発生するヨー加速度が増大するほど、車両1のモータ6のトルク低減量又はトルク増大量を増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御する。
あるいは、車両1に搭載された加速度センサ18により、車両1の旋回に伴って発生する横加速度を検出し、この横加速度に基づき、駆動力制御部30がモータ6のトルク制御量を決定するようにしてもよい。この場合、駆動力制御部30は、車両1に発生する横加速度が増大するほど、車両1のモータ6のトルク低減量又はトルク増大量を増大させ且つこの増大量の増大割合を低減させるように制御する。
図10は、本発明の実施形態の変形例による車両用挙動制御装置20を搭載した車両1がレーンチェンジを行う場合における、車両用挙動制御装置20による挙動制御に関するパラメータの時間変化を示す線図であり、図10(a)から図10(d)は図9(a)から図9(d)と同じ線図を示している。また、図10(e)は、本実施形態の変形例による駆動力制御部30が目標ヨー加速度に基づいて決定したモータ6のトルク制御量の変化を示す線図である。図10における横軸は時間を示し、縦軸はトルク制御量を示す(トルク増大が正)。また、図10における実線は、駆動力制御部30が決定した基本制御介入トルク及び駆動制御介入トルクを示し、点線は、路面が下り勾配(路面の勾配が負)である場合に駆動力制御部30が決定した補正制御介入トルクを示し、破線は、路面が上り勾配(路面の勾配が正)である場合に駆動力制御部30が決定した補正制御介入トルクを示している。
さらに、駆動力制御部30は、切り返し操舵が行なわれ且つ車両1の操舵角の絶対値が減少している場合において、路面の勾配が下り勾配である場合、駆動力の増大量を増大させ、路面の勾配が上り勾配である場合、駆動力の増大量を減少させるように補正するので、路面の下り勾配により後輪に加わる荷重が減少していても、あるいは、路面の上り勾配により後輪に加わる荷重が増大していても、後輪に加わる荷重の合計値は路面が平坦である場合と同程度に調整されるので、ステアリングの切り戻し操作中における車両1の挙動は路面が平坦な場合と同様のものになる。これにより、勾配のある路面を走行している場合においても、平坦な路面を走行している場合と同様に、車両1のヨーレートを収束させることができ、車両1のコーナリング時におけるドライバの操作が自然で安定したものとなるように車両1の挙動を制御することができる。
2 バッテリ
4 駆動輪
6 モータ
8 インバータ
10 ステアリングホイール
12 操舵角センサ
14 車速センサ
16 ヨーレートセンサ
18 加速度センサ
20 車両用挙動制御装置
22 インジケータ
24 バッテリ状態検出部
26 ヨー加速度算出部
28 勾配取得部
30 駆動力制御部
Claims (5)
- 前輪が操舵される車両の挙動を制御する車両用挙動制御装置において、
上記車両のヨーレートに関連するヨーレート関連量を取得するヨーレート関連量取得手段と、
上記ヨーレート関連量取得手段により取得されたヨーレート関連量に応じて上記車両の駆動力を低減させるように制御する駆動力制御手段と、
上記車両の位置における路面の勾配を取得する勾配取得手段と、を有し、
上記駆動力制御手段は、上記ヨーレート関連量が増大するほど、上記車両の駆動力の低減量を増大させ且つこの増大量の増加割合を低減させるように、上記車両の駆動力を制御するための駆動力制御量を決定する駆動力制御量決定手段と、上記路面の勾配が下り勾配である場合、上記駆動力制御量決定手段により決定された駆動力制御量を減少させ、上記路面の勾配が上り勾配である場合、上記駆動力制御量決定手段により決定された駆動力制御量を増大させるように補正する駆動力制御量補正手段とを備え、この駆動力制御量補正手段により補正された駆動力制御量に基づき上記車両の駆動力を制御する、ことを特徴とする車両用挙動制御装置。 - さらに、上記車両において切り返し操舵が行われたか否かを判定する切り返し操舵判定手段を有し、
上記駆動力制御量決定手段は、上記切り返し操舵判定手段により切り返し操舵が行なわれたと判定され且つ上記車両の操舵角の絶対値が減少している場合、上記車両の駆動力を増大させるように上記駆動力制御量を決定し、
上記駆動力制御量補正手段は、上記切り返し操舵判定手段により切り返し操舵が行なわれたと判定され且つ上記車両の操舵角の絶対値が減少している場合において、上記路面の勾配が下り勾配である場合、上記駆動力制御量決定手段により決定された駆動力制御量を増大させ、上記路面の勾配が上り勾配である場合、上記駆動力制御量決定手段により決定された駆動力制御量を減少させるように補正する、請求項1に記載の車両用挙動制御装置。 - 上記駆動力制御量補正手段は、上記路面の勾配の絶対値が増大するほど、上記駆動力制御量の補正量を増大させる請求項1又は2に記載の車両用挙動制御装置。
- 上記車両は、車輪を駆動するモータと、このモータに電力を供給すると共にモータが発生させた回生電力を回収するバッテリと、を有する電動駆動車両であり、
上記駆動力制御手段は、上記ヨーレート関連量に応じて、上記モータが発生させる回生電力量を制御することにより、上記車両の駆動力を低減させる、請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用挙動制御装置。 - 上記電動駆動車両は、さらに、上記バッテリの状態を検出するバッテリ状態検出手段と、上記駆動力制御手段による制御に関する情報を表示する表示手段と、を有し、
上記駆動力制御手段は、上記バッテリの状態に基づき、上記モータが発生させる回生電力を上記バッテリが回収できないと判定した場合、上記車両の駆動力を低減させず、且つ、上記車両の駆動力を低減させない旨の情報を上記表示手段に表示させる、請求項4に記載の車両用挙動制御装置。
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