JP6217652B2 - 飲料充填装置及びその殺菌方法 - Google Patents
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Description
本発明は、PETボトル等の容器に飲料を充填する装置及びその殺菌方法に関する。
無菌飲料充填装置により飲料をボトル等の容器に充填する場合、飲料自体を殺菌して無菌状態にしておかなければならないことはもちろんのこと、無菌飲料充填装置におけるサージタンク、送液管、充填ノズル等を備えた飲料供給系配管内も予め洗浄し、殺菌して無菌状態にしておかなければならない。
従来、飲料充填経路内を通る飲料自体については、その飲料の殺菌値であるF値を測定し、その履歴情報に基づいて飲料の品質が保証できる程度に殺菌されているか否かを確認することが行われている(例えば、特許文献4参照。)。
また、無菌飲料充填装置の飲料供給系配管については、定期的にあるいは飲料の種類を切り替える際に、CIP(Cleaning in Place)処理をし、さらに、SIP(Sterilizing in Place)処理をしている(例えば、特許文献1,2,3参照。)。
CIPは、飲料充填経路の管路内から充填機の充填ノズルに至るまでの流路に、例えば水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加した洗浄液を流した後に、水に酸性薬剤を添加した洗浄液を流すことにより行われる。これにより、飲料充填経路内に付着した前回の飲料の残留物等が除去される(例えば、特許文献1、2、3参照。)。
SIPは、飲料の充填作業に入る前に、予め上記飲料供給系配管内を殺菌するための処理であり、例えば、上記CIPで洗浄した飲料充填経路内に加熱蒸気又は熱水を流すことによって行われる。これにより、飲料充填経路内が殺菌処理され無菌状態とされる(例えば、特許文献3第0003段落参照。)。
従来、飲食品については加熱時間の長短によって飲食品自体の味、風合い等の品質に変化を来すので、厳密なF値の管理が行われている。
しかし、無菌飲料充填装置の飲料供給系配管については、主としてステンレス鋼材等の金属で形成されており、飲料のような品質の変化は生じないことから、比較的大まかなF値管理が行われている。
例えば、130℃で30分加熱したとするとF値は233となるが、飲料供給系配管の殺菌処理はこの程度で十分であると経験上知られている。そこで、飲料供給系配管に加熱蒸気又は熱水を流しつつ飲料供給系配管の温度が上昇しにくい各所に配置された温度センサで温度を測定し、各温度センサからの温度が130℃に到達するとタイマーが作動し、タイマーが30分計測したところで、加熱蒸気等による飲料供給系配管の加熱を終了させている。
図6はこの飲料供給系配管の加熱方法を温度と時間との関係で示したものである。すなわち、飲料供給系配管の各箇所における温度センサの測定温度のうち最も低い温度が130℃に到達した時点から30分間蒸気等が送り続けられて飲料供給系配管が加熱され、30分経過したところで蒸気等の供給が停止され、代わりに無菌の冷却風等が供給されて飲料供給系配管内の冷却が行われる。図6中、135℃まで昇温させているのは、安全のため温度の変動を見込んでいることによる。図6において、滅菌条件は130℃以上、30分であり、ハッチング部分の面積が上記F値の233に対応する。ただし、実際は、130℃を超えた部分のF値の積算部分は無視している。
ところが、近年の省エネルギ化の進展に伴い、SIPで消費される熱エネルギの大きさが問題視されるようになってきた。また、SIPに要する時間の長さも飲料の生産効率の面から問題視されるようになってきた。
本発明はこのような問題点を解決することができる飲料充填装置及びその殺菌方法を提供することを目的とする。
本発明者は無菌充填装置の飲料供給系配管におけるSIPに要する熱エネルギやSIPに要する殺菌時間について見直しを行うべく、F値の管理について検討したところ、単に130℃に到達後の時間だけでなく、F値での積算で滅菌効果を管理すれば、121.1℃から130℃までのF値積算と130℃を超えた分のF値も積算することができるので、30分よりも短い時間で、F値233に到達できることを見出した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、次のような構成を具備することを特徴とする。
なお、本発明を理解しやすくするため図面の符号を括弧付きで付すが、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、請求項1に係る発明は、加熱殺菌部(18)を経て充填機(2)内へと飲料を送る飲料供給系配管(7)を備えた飲料充填装置の殺菌方法において、上記飲料供給系配管(7)に熱水又は加熱蒸気を送り、飲料供給系配管(7)の複数個所の温度を所定時間ごとに検知しつつ一番低い温度についてF値を演算し、そのF値が目標値に到達したところで、殺菌工程を終了する飲料充填装置の殺菌方法を採用する。
請求項2に記載されるように、請求項1に記載の飲料充填装置の殺菌方法において、飲料供給系配管(7)の加熱殺菌部(18)を経由する上流側配管部(7a)に対し上流側帰還路(6)を設けて上流側循環路を形成し、上流側循環路には熱水を流しつつF値を演算し、上記上流側配管部(7a)より下流側から充填機(2)内に至る下流側配管部(7b)に対し加熱蒸気を通しつつF値を演算し、各々の最小のF値が目標値に到達したところで、殺菌工程を終了することも可能である。
本発明によれば、飲料充填装置の飲料供給系配管(7)のSIP処理について、早期にF値の積算を開始し、F値が目標値に達したところで殺菌工程を終了するようにしたことから、飲料充填装置の飲料供給系配管(7)の無菌化処理を従来よりも正確かつ迅速に達成することができ、従って、飲料供給系配管(7)の殺菌のための熱水や加熱蒸気の使用量を低減することができ、飲料の充填作業に早期に着手することができ、飲料の切り替えの際の生産間時間を短縮し、生産効率を向上させることができる。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
最初に、飲料充填装置の構造について説明し、その次に、この装置の殺菌方法について説明する。
図1に示すように、飲料充填装置は、飲料の調合装置1と、飲料をボトル4に充填する充填機2とを具備する。調合装置1と充填機2内の充填ノズル2aとの間は、飲料供給系配管7で結ばれている。また、充填機2は無菌チャンバ3で囲まれている。
調合装置1は、例えば茶飲料、果実飲料等の飲料を各々所望の配合割合で調合するためのものであって、公知の装置であるからその詳細な説明は省略する。
充填機2は、多数の充填ノズル2aを水平面内で高速回転するホイール(図示せず)の回りに配置してなるもので、ホイールの回転と共に充填ノズル2aを旋回運動させつつ、充填ノズル2aの下をホイールの周速度に同調して走行する各ボトル4に、充填ノズル2aから飲料を定量充填するための機械である。この充填機2も公知の装置であるからその詳細な説明は省略する。
この飲料充填装置の飲料供給系配管7は、その調合装置1から充填機2に至る管路中に、飲料の流れから見て上流側から下流側へと順に、バランスタンク5、加熱殺菌部(UHT(Ultra High-temperature))18、マニホルドバルブ8、アセプティックタンク19、ヘッドタンク11を備える。
UHT18は、その内部に第一段加熱部12、第二段加熱部13、ホールディングチューブ14、第一段冷却部15、第二段冷却部16等を備え、バランスタンク5から供給される飲料又は水を第一段加熱部12から第二段加熱部13へと送りながら徐々に加熱し、ホールディングチューブ14内で目標温度まで加熱し、その後、第一段冷却部15、第二段冷却部16へと送って徐々に冷却するものである。加熱部や冷却部の段数は必要に応じて増減される。
その他、バランスタンク5、マニホルドバルブ8、アセプティックタンク19、ヘッドタンク11は共に公知の装置であるから、その詳細な説明は省略する。
図2中太線で示すように、上記飲料供給系配管7のうち、バランスタンク5とUHT18を経てマニホルドバルブ8に至る上流側配管部7aに対し帰還路6が設けられることによって、SIPを行うための循環路が形成される。
また、上流側配管部7aには、その中に熱水等が供給された際に温度が上昇しにくい箇所を含む各箇所において温度センサ10が配置される。この温度センサ10が配置される箇所としては、例えばUHT18内の第一段加熱部12からマニホルドバルブ8へと向かう管路のうち、UHT18内の各部間と、第二段冷却部16を出た箇所、マニホルドバルブ8の手前の箇所を挙げることができ、これらの箇所に温度センサ10が各々配置される。これらの温度センサ10によって各々測定された温度の情報はコントローラ17へ送信される。
図3中太線で示すように、上記飲料供給系配管7のうち、上記上流側配管部7aより下流側のマニホルドバルブ8から、アセプティックタンク19と、ヘッドタンク11とを経由して充填機2内に至る下流側配管部7bに対しても、その中に加熱蒸気等が供給された際に温度が上昇しにくい箇所を含む各箇所において温度センサ10が配置される。この温度センサ10が配置される箇所としては、例えばアセプティックタンク19から充填ノズル2aに向かう管路のうち、アセプティックタンク19の出口近傍、途中の屈曲部、ヘッドタンク11の入口近傍と出口近傍、充填機2内のマニホルド2bと充填ノズル2aとの間を挙げることができ、これらの管路に温度センサ10が各々配置される。これらの温度センサ10により各々測定された温度の情報はコントローラ17へ送信される。
また、下流側配管部7bに対しては、SIPのために充填機2の各充填ノズル2aの開口に対して各々接離可能なカップ9が配置される。SIPを行う際に各カップ9が図示しないアクチュエータによって充填機2の充填ノズル2aの先端の開口に被せられることで、ドレン管20の始端が、充填ノズル2aの開口に接続される。
なお、上記飲料供給系配管7には、上記マニホルドバルブ8、図示しないアクチュエータのほか、各種切換え弁、ポンプ等が設けられ、これらも上記コントローラ17からの出力によって制御される。
次に、上記飲料充填装置の殺菌方法について、図2乃至図5に基づいて説明する。
(1)コントローラ17の図示しないパネル上の操作ボタンが操作されると、飲料供給系配管7の上流側配管部7aと下流側配管部7bについてSIPが各々所定の手順で実行される(図2及び図3参照)。SIPの開始に際してはマニホルドバルブ8によって上流側配管部7aと下流側配管部7bとの間が遮断される。
上流側配管部7aのSIPと下流側配管部7bのSIPは互いに順を追って又は並行して行うことが可能である。
(2)まず、図示しない水供給源から水がバランスタンク5を経て循環路内に送られ、この水がUHT18により加熱され殺菌されつつ循環路内を循環する。これにより、上流側配管部7a内が殺菌される。
(3)この上流側配管部7a内を熱水が流れる際、上流側配管部7aの各所に配置された温度センサ10からコントローラ17に温度情報が一定時間間隔で送られる。
この実施の形態では、ボトルbに充填する製品液である飲料のpHが4.6以上とされ、基準温度Trが121.1℃、Z値が10℃とされる。
この実施の形態では、ボトルbに充填する製品液である飲料のpHが4.6以上とされ、基準温度Trが121.1℃、Z値が10℃とされる。
図5に示すように、熱水による加熱により昇温した各箇所の温度が121.1℃に達すると、その時点から各箇所のF値がコントローラ17によって演算される。演算式は次のとおりである。
上記演算式に基づいて演算された各F値のうち、最小のF値が目標値に到達したところで、上流側配管部7aは殺菌完了となり、第一段冷却部15、第二段冷却部16に、冷却水が供給され、熱水は冷却されて、循環し、飲料の殺菌開始まで連続循環待機となる。
このF値の目標値は、ある箇所の温度センサに関して言えば、図5のハッチング部分の面積に対応する。この図5のハッチング部分の面積は、図6のハッチング面積部分に対応する。
従来は、図6に示す通り、全ての温度センサが130℃に達したところで滅菌完了を検知するタイマーが作動し、30分後に滅菌完了を報知していた。また、130℃に達するまでに、熱水又は加熱蒸気の供給開始から10分を要していた。一方、本発明では全ての温度センサについて、各々の温度が121.1℃に達したところでF値の演算が開始されるので、演算開始までが6分に短縮されている。また、従来は演算開始から30分間は一律に熱水又は加熱蒸気を送りつつ加熱殺菌を行うので、飲料供給系配管7等への蓄熱量も多く、したがって、冷却にも20分を要しているが、本発明では加熱開始から6分後にF値の累積演算を開始し、加熱時間も10分と短く、飲料供給系配管7等への蓄熱量も少ないので、冷却時間も12分に短縮されている。従って、加熱から冷却までの時間は、従来は60分を要していたが、本発明によれば28分まで大幅に短縮される。
なお、上記F値の演算式において、製品液である飲料の種類に応じて基準温度Tr、Z値は変更可能である。
例えば、製品液のpHが4〜4.6未満のときは基準温度Tr=85℃、Z値=7.8℃とすることができ、製品液のpHが4未満のときは基準温度Tr=60℃、Z値=5℃とすることができる。
また、緑茶飲料、ミネラルウォーター、チルド飲料等、製品液の微生物発育特性、流通温度等に合わせて上記演算式に代入する値を適宜変更することも可能である。
(4)この後、調合装置1からバランスタンク5に飲料が送られ、飲料が殺菌され始める。水から飲料におき換わったところで、上流側配管部7aと帰還路との間が遮断され、アセプティックタンク19に滅菌された飲料がたまっていく。
(5)上記上流側配管部7aに対するSIPの開始と同時に、又は先立ってアセプティックタンク19も含めて、下流側配管部7bのSIPが開始される。
まず、カップ9が充填ノズル2aの開口にあてがわれ、充填ノズル2aにドレン管20が接続された後、アセプティックタンク19及びヘッドタンク11内へと加熱蒸気が図示しない加熱蒸気供給源から供給される。
この加熱蒸気は、アセプティックタンク19から、下流側配管部7b内を充填ノズル2a側へと流れ、各部を加熱した後にドレン管20から充填機2外へ排出される。
(6)この下流側配管部7b内を加熱蒸気が流れる際、下流側配管部7bの各所に配置された温度センサ10からコントローラ17に温度情報が一定時間間隔で送られる。
図5に示すように、加熱蒸気による加熱により昇温した各箇所の温度が121.1℃に達すると、その時点から各箇所のF値がコントローラ17によって上記演算式により演算される。
演算された各F値のうち、最小のF値が目標値に到達したところで、上記加熱蒸気はアセプティックタンク19やの下流側配管部7b内への供給が停止される。このF値の目標値は、上述した図5のハッチング部分の面積に対応する。図5と図6の対比から明らかなように、下流側配管部7b内のSIP時間についても、従来のSIP時間に比べ大幅に短縮される。
(7)この後、下流側配管部7b内に無菌エアが送り込まれ、下流側配管部7b内が例えば常温まで冷却される。そして、ドレン管20が遮断される。さらに、図示しないアクチュエータによって各充填ノズル2aの開口からカップ9が外される。
(8)アセプティックタンク19以降、下流側配管部7bのSIPが終了した後、加熱殺菌部18から上流側配管部7aを通ってアセプティックタンク19に飲料が貯められ、そこから飲料が下流側配管部7bを通って、ボトル4内への飲料の充填作業が開始される。
図4中、太線で示したごとく調合装置1で調合された飲料が殺菌処理された飲料供給系配管7の上流側配管部7aと下流側配管部7bを通って充填機2内に至り、充填機2の充填ノズル2aから容器であるボトル4に充填される。飲料が充填されたボトル4は、図示しないキャッパによりキャッピングされた後、充填機2の外に送り出される。
本発明は以上説明したように構成されるが、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では、上流側配管部のSIPと下流側配管部のSIPとを熱水と加熱蒸気のごとく互いに異なる流体で行うようにしたが、同じ種類の流体で行うことも可能である。また、マニホルドバルブを開放して上流側配管部と下流側配管部とを連通させ、流体を上流側配管部から下流側配管部へと流しつつSIPを行うようにすることも可能である。また、F値を測定、積算する時間間隔は、1分間隔のほか、1秒間隔であってもよく、その間隔は計測器の能力等に応じて種々変更可能である。
2…充填機
6…上流側帰還路
7…飲料供給系配管
7a…上流側配管部
7b…下流側配管部
18…加熱殺菌部
6…上流側帰還路
7…飲料供給系配管
7a…上流側配管部
7b…下流側配管部
18…加熱殺菌部
Claims (5)
- 加熱殺菌部を経て充填機内へと飲料を送る飲料供給系配管を備えた飲料充填装置の殺菌方法において、上記飲料供給系配管に熱水又は加熱蒸気を送り、飲料供給系配管の複数個所の温度を所定時間ごとに検知しつつF値を演算し、そのうち最小のF値が目標値に到達したところで、殺菌工程を終了することを特徴とする飲料充填装置の殺菌方法。
- 請求項1に記載の飲料充填装置の殺菌方法において、飲料供給系配管の加熱殺菌部を経由する上流側配管部に対し上流側帰還路を設けて上流側循環路を形成し、上流側循環路には熱水を流しつつF値を演算し、上記上流側配管部より下流側から充填機内に至る下流側配管部に対し加熱蒸気を通しつつF値を演算し、各々の最小のF値が目標値に到達したところで、殺菌工程を終了することを特徴とする飲料充填装置の殺菌方法。
- 加熱殺菌部を経て充填機内へと飲料を送る飲料供給系配管を備えた飲料充填装置において、上記飲料供給系配管に熱水又は加熱蒸気を送り、飲料供給系配管の複数個所に設けた温度センサにより各箇所の温度を所定時間ごとに検知しつつF値を演算し、そのうち最小のF値が目標値に到達したところで、殺菌工程を終了することを特徴とする飲料充填装置。
- 請求項4に記載の飲料充填装置において、飲料供給系配管の加熱殺菌部を経由する上流側配管部に対し上流側帰還路を設けて上流側循環路を形成し、上流側循環路には熱水を流しつつ、上流側循環路の所定箇所に設けた温度センサによりF値を演算し、上記上流側配管部より下流側から充填機内に至る下流側配管部に対し加熱蒸気を通しつつ、下流側循環路の所定箇所に設けた温度センサによりF値を演算し、各々の最小のF値が目標値に到達したところで、殺菌工程を終了することを特徴とする飲料充填装置。
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