以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係るジフルオロメタン冷媒用冷凍機油は、ジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルであって、上記脂肪酸における2−メチルペンタン酸の割合が20モル%以上であるエステルを、冷凍機油全量基準で10質量%以上含有する。また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、本実施形態に係る冷凍機油と、ジフルオロメタン冷媒とを含有する。
ジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステル(以下、場合により「ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル」という)の含有量は、冷凍機油全量基準で10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上含有するものである。本実施形態に係るジフルオロメタン冷媒用冷凍機油は、後述するようにジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外の基油や添加剤を含有してもよいが、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの含有量が10質量%未満であると、ジフルオロメタン冷媒との相溶性、ジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性および低温流動性の全てを高水準で達成することができなくなり、特に相溶性と潤滑性とを両立することが非常に困難となる。
なお、本実施形態に係るジペンタエリスリトール脂肪酸エステルには、ジペンタエリスリトールの全ての水酸基がエステル化された完全エステルと、ジペンタエリスリトールの水酸基の一部がエステル化せずに残っている部分エステルと、完全エステルと部分エステルとの混合物と、が包含されるが、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは完全エステルであることが好ましい。
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸において、2−メチルペンタン酸の割合は20モル%以上であり、好ましくは25モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上である。2−メチルペンタン酸の割合が前記下限値未満であると、ジフルオロメタン冷媒との相溶性、ジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性および低温流動性の全てを高水準で達成することができなくなり、特に相溶性と潤滑性とを両立することが非常に困難となる。なお、本発明でいう2−メチルペンタン酸の割合とは、冷凍機油に含有されるジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全量を基準とした値である。
本実施形態に係るジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、2−メチルペンタン酸を20モル%以上含有する限りにおいて、2−メチルペンタン酸以外の脂肪酸を構成酸成分として含有してもよい。
2−メチルペンタン酸以外の脂肪酸としては、具体的には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、2−メチルプロピオン酸、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、ヘキサン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、2,4−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、1,1,2−トリメチルブタン酸、1,2,2−トリメチルブタン酸、1−エチル−1メチルブタン酸、1−エチル−2−メチルブタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2−プロピルペンタン酸、ノナン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−メチルオクタン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸、2,2−ジイソプロピルプロピオン酸等の炭素数2〜9の脂肪酸;デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸等の炭素数10〜20の脂肪酸、等が挙げられる。
2-メチルペンタン酸とそれ以外の脂肪酸とを組み合わせる場合、2−メチルペンタン酸以外の脂肪酸としては、炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸を用いることが好ましい。2−メチルペンタン酸と炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸とを組み合わせて用いると、2−メチルペンタン酸と、炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸以外の脂肪酸と、を組み合わせて用いた場合に比べてジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性とジフルオロメタン冷媒との相溶性との双方がより向上する傾向にある。また、2−メチルペンタン酸と炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸とを組み合わせて用いる場合、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸における炭素数8〜9の分岐脂肪酸の割合は80モル%以下であることが必要であり、75モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。炭素数8〜9の分岐脂肪酸の割合が80モル%を超えるとジフルオロメタン冷媒との相溶性が不十分となる。
また、炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸に加えて、これらの脂肪酸以外の脂肪酸を使用する場合、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸における炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸の割合が60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。炭素数5〜7の脂肪酸および/または炭素数8〜9の分岐脂肪酸の割合が前記の範囲内であると、ジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性とジフルオロメタン冷媒との相溶性との双方がより高水準で両立される傾向にある。
本実施形態に係るジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの中でも、酸構成成分が2−メチルペンタン酸のみからなるもの、ならびに2−メチルペンタン酸と炭素数5〜7の脂肪酸とからなるものが、ジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性とジフルオロメタン冷媒との相溶性との両立の面で特に好ましい。
本実施形態においては、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸が上記の条件を満たす限りにおいて、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの分子構造が単一であってもよく、また、分子構造の異なるエステルの2種以上の混合物であってもよい。
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの分子構造が単一である場合、すなわちジペンタエリスリトール脂肪酸エステルが1種のエステル分子のみによって構成される場合、当然のことながら当該エステル分子はその分子構造において上記の条件を満たしていなければならない。一方、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルが分子構造の異なるエステルの2種以上の混合物である場合には、個々の分子については必ずしも上記の条件を満たしている必要はなく、冷凍機油中に含まれるジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸全体として上記条件を満たしていればよい。
上記した通り、本実施形態に係るジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、2−メチルペンタン酸を必須とし、必要に応じてその他の脂肪酸を構成成分として含むものである。すなわち、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは1種のみの脂肪酸を酸構成成分としているものであっても、2種以上の構造の異なる脂肪酸を酸構成成分としているものであってもよいが、当該ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、酸構成成分として、カルボニル基の炭素と隣接する炭素原子(α位炭素原子)が四級炭素でない脂肪酸のみを含有することが好ましい。ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸中に、α位炭素原子が四級炭素である脂肪酸が含まれる場合には、ジフルオロメタン冷媒存在下での潤滑性が不十分となる傾向にある。
本発明にかかるジペンタエリスリトール脂肪酸エステルを構成する酸構成成分の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
2−メチルペンタン酸;
2−メチルペンタン酸と、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる1〜7種との組合せ;
2−メチルペンタン酸と、3,5,5−トリメチルヘキサン酸との組合せ;
2−メチルペンタン酸と、3,5,5−トリメチルヘキサン酸と、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる1〜7種との組合せ;
2−メチルペンタン酸と、2−エチルヘキサン酸との組合せ;
2−メチルペンタン酸と、2−エチルヘキサン酸と、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる1〜7種との組合せ;
2−メチルペンタン酸と、2−エチルヘキサン酸と、3,5,5−トリメチルヘキサン酸との組合せ;
2−メチルペンタン酸と、2−エチルヘキサン酸と、3,5,5−トリメチルヘキサン酸と、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる1〜7種との組合せ;
2-メチルペンタン酸と、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、ヘキサン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、2,4−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、1,1,2−トリメチルブタン酸、1,2,2−トリメチルブタン酸、1−エチル−1メチルブタン酸、1−エチル−2−メチルブタン酸から選ばれる1種〜29種の脂肪酸、との組み合わせ;
2-メチルペンタン酸と、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2−プロピルペンタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−メチルオクタン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸、2,2−ジイソプロピルプロピオン酸から選ばれる1種〜23種の脂肪酸と、の組み合わせ;
及び2-メチルペンタン酸と、ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、ヘキサン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、2,4−ジメチルブタン酸、3,3−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、3−メチルヘキサン酸、4−メチルヘキサン酸、5−メチルヘキサン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、1,1,2−トリメチルブタン酸、1,2,2−トリメチルブタン酸、1−エチル−1メチルブタン酸、1−エチル−2−メチルブタン酸から選ばれる1種〜29種と、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2−プロピルペンタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−メチルオクタン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸、2,2−ジイソプロピルプロピオン酸から選ばれる1種〜23種の脂肪酸と、の組み合わせ。
本実施形態に係る冷凍機油において、上記ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルは主として基油として用いられる。本実施形態に係る冷凍機油の基油としては、上記ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルのみを単独(すなわちジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの含有量が100質量%)で用いてもよい。あるいは、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルに加えて、その優れた性能を損なわない程度に、上記ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルやコンプレックスエステル、脂環式ジカルボン酸エステル等のエステル、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテル等の酸素を含有する合成油(以下、場合により「他の含酸素合成油」という)を併用してもよい。
本実施形態に係るジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外の基油としては、鉱油、オレフィン重合体アルキルジフェニルアルカン、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン等の炭化水素系油、ならびに本実施形態に係るジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のエステル系基油(モノエステル、構成脂肪酸として直鎖脂肪酸のみを含むポリオールエステル、アルキル芳香族エステル、脂環式カルポン酸エステル等)、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテルなどの酸素を含有する合成油を併用して用いても良い。酸素を含有する合成油としては、上記の中でも本実施形態に係るジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のエステル、ポリグリコール、ポリビニルエーテルが好ましく、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルが特に好ましい。
ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと脂肪酸とのエステルが挙げられ、特に好ましいものは、ネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステルおよびペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルである。
ネオペンチルグリコールエステルとしては、炭素数5〜9の脂肪酸エステルであることが好ましい。このようなネオペンチルグリコールエステルとしては、具体的には例えば、ネオペンチルグリコールジ3,5,5−トリメチルヘキサネート、ネオペンチルグリコールジ2−エチルヘキサネート、ネオペンチルグリコールジ2−メチルヘキサネート、ネオペンチルグリコールジ2−エチルペンタネート、ネオペンチルグリコールと2−メチルヘキサン酸・2−エチルペンタン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと3−メチルヘキサン酸・5−メチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと2−メチルヘキサン酸・2−エチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと3,5−ジメチルヘキサン酸・4,5−ジメチルヘキサン酸・3,4−ジメチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールジペンタネート、ネオペンチルグリコールジ2−エチルブタネート、ネオペンチルグリコールジ2−メチルペンタネート、ネオペンチルグリコールジ2−メチルブタネート、ネオペンチルグリコールジ3−メチルブタネート等が挙げられる。
ペンタエリスリトールエステルとしては、ペンタエリスリトールと炭素数5〜7の脂肪酸のエステル、ペンタエリスリトールと炭素数5〜7の脂肪酸および炭素数8〜9の分岐脂肪酸のエステルが好ましい。このようなペンタエリスリトールエステルとしては、具体的には、ペンタエリスリトールと下記の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
ペンタン酸;2−メチルブタン酸;3−メチルブタン酸;ヘキサン酸;2−メチルペンタン酸;2−エチルブタン酸;2−エチルペンタン酸;2−メチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる2種;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる3種;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる4種;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる5種;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる6種;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる7種;ペンタン酸と2−メチルブタン酸と3−メチルブタン酸とヘキサン酸と2−メチルペンタン酸と2−エチルブタン酸と2−エチルペンタン酸と2−メチルヘキサン酸;ペンタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−メチルブタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;3−メチルブタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−メチルペンタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−エチルブタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−エチルペンタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−メチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸と2−エチルヘキサン酸;2−メチルブタン酸と2−エチルヘキサン酸;3−メチルブタン酸と2−エチルヘキサン酸;ヘキサン酸と2−エチルヘキサン酸;2−メチルペンタン酸と2−エチルヘキサン酸;2−エチルブタン酸と2−エチルヘキサン酸;2−エチルペンタン酸と2−エチルヘキサン酸;2−メチルヘキサン酸と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−メチルブタン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;3−メチルブタン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ヘキサン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−メチルペンタン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−エチルブタン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−エチルペンタン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−メチルヘキサン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる2種と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる2種と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる2種と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる3種と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる3種と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる3種と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる4種と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる4種と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる4種と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる5種と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる5種と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる5種と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる6種と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる6種と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる6種と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる7種と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる7種と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる7種と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸と2−メチルブタン酸と3−メチルブタン酸とヘキサン酸と2−メチルペンタン酸と2−エチルブタン酸と2−エチルペンタン酸と2−メチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸と2−メチルブタン酸と3−メチルブタン酸とヘキサン酸と2−メチルペンタン酸と2−エチルブタン酸と2−エチルペンタン酸と2−メチルヘキサン酸と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸と2−メチルブタン酸と3−メチルブタン酸とヘキサン酸と2−メチルペンタン酸と2−エチルブタン酸と2−エチルペンタン酸と2−メチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と2−エチルヘキサン酸。
本実施形態において、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルを配合する場合、冷凍機油全量基準で、90質量%以下であることが必要であり、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらにより好ましく、60質量%以下であることがさらにより一層好ましく、50質量%以下であることが最も好ましい。また、ポリオールエステル以外の含酸素合成油を配合する場合、冷凍機油全量基準で90質量%以下であることが必要であり、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルや他の含酸素合成油の配合量が前記上限値を超えると、ジフルオロメタン冷媒との相溶性と潤滑性とが高水準で両立されにくくなる。
なお、ポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステルであっても良く、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであっても良く、また部分エステルと完全エステルの混合物であっても良いが、水酸基価が好ましくは10mgKOH/g以下、さらには5mgKOH/g以下、最も好ましくは3mgKOH/g以下であることが好ましい。
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物はそれぞれ、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルとして、単一の構造のポリオールエステルの1種からなるものを含有してもよく、また、構造の異なる2種以上のポリオールエステルの混合物を含有してもよい。
また、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル以外のポリオールエステルは、1種の脂肪酸と1種の多価アルコールとのエステル、2種以上の脂肪酸と1種の多価アルコールとのエステル、1種の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとのエステル、2種以上の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとのエステルのいずれであってもよい。これらの中でも、混合脂肪酸を用いたポリオールエステル、特にエステル分子中に2種以上の脂肪酸を含んで構成されるポリオールエステルは、低温特性や冷媒との相溶性に優れる。
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、各種添加剤をさらに含有してもよい。なお、以下の説明において、添加剤の含有量については、冷凍機油全量を基準として示すが、冷凍機用作動流体組成物におけるこれらの成分の含有量は、冷凍機油全量を基準とした場合に後述する好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物の耐摩耗性、耐荷重性をさらに改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
リン酸エステルとしては、トリプチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、モノプチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
チオリン酸エステルとしては、トリプチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネートなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、酸性リン酸エステルと、炭素数1〜24、好ましくは5〜18の1〜3級の直鎖または分岐アルキル基のアミンとのアミン塩が挙げられる。
酸性リン酸エステルのアミン塩を構成するアミンとしては、直鎖またば分岐のメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、テトラコシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオレイルアミン、ジテトラコシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリヘプタデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリオレイルアミントリテトラコシルアミン、などのアミンとの塩が挙げられる。アミンは単独の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であっても良い。
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシァルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリプチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物が上記リン化合物を含有する場合、リン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.02〜3.0質量%であることがより好ましい。なお、上記リン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、テルペン化合物を添加することができる。本発明でいう「テルペン化合物」とは、イソプレンの重合した化合物およびこれらの誘導体を意味し、イソプレンの2〜8量体が好ましく用いられる。テルペン化合物としては、具体的には、グラニオール、ネロール、リナロール、シトラール(グラニアールを含む)、シトロネロール、メントール、リモネン、テルピネロール、カルポン、ヨノン、ツヨン、樟脳(カンファー)、ボルネオールなどのモノテルペン、ファルネセン、ファルネソール、ネロリドルー、幼若ホルモン、フムレン、カリオフイレン、エレメン、カジノール、カジネン、ツチンなどのセスキテルペン、グラニルグラニオール、フィトール、アビエチン酸、ピマラジェン、ダフネトキシン、タキソール、アビエチン酸、ピマール酸などのジテルペン、グラニルファルネセンなどのセスタテルペン、スクアレン、リモニン、カメリアゲニン、ホパン、ラノステロールなどのトリテルペン、カロテノイドなどのテトラテルペンなどが挙げられる。
これらのテルペン化合物の中でも、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンが好ましく、セスキテルペンがより好ましく、αファルネセン(3,7,11−トリメチルドデカ−1,3,6,10−テトラエン)および/またはβファルネセン(7,11−ジメチルー3−メチリデンドデカー1,6,10−トリエン)が特に好ましい。本実施形態において、テルペン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係る冷凍機油におけるテルペン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.05〜3質量%である。テルペン化合物の含有量が0.001質量%未満であると熱・化学的安定性の向上効果が不十分となる傾向にあり、また、10質量%を超えると潤滑性が不十分となる傾向にある。また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物におけるテルペン化合物の含有量については、冷凍機油全量を基準とした場合に上記の好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、Sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾェート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレンなどが例示できる。
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサンなどが例示できる。
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルポキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルポルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のプチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびプチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物およびエポキシ化脂肪酸モノエステルである。中でもフェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物およびグリシジルエステル型エポキシ化合物がより好ましく、フェニルグリシジルエーテル、プチルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステルもしくはこれらの混合物が特に好ましい。
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物が上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜2.0質量%であることがより好ましい。なお、上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来公知の冷凍機油用添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛などの摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
本実施形態に係る冷凍機油の動粘度は特に限定されないが、40℃における動粘度は、好ましくは3〜1000mm2/s、より好ましくは4〜500mm2/s、最も好ましくは5〜400mm2/sとすることができる。また、100℃における動粘度は好ましくは1〜100mm2/s、より好ましくは2〜50mm2/sとすることができる。動粘度が前記下限値未満の場合には潤滑性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限値を超えるとジフルオロメタン冷媒との相溶性が不十分となる傾向にある。
また、本実施形態に係る冷凍機油の体積抵抗率は特に限定されないが、好ましくは1.0×1012Ω・cm以上、より好ましくは1.0×1013Ω・cm以上、最も好ましくは1.0×1014Ω・cm以上とすることができる。特に、密閉型の冷凍機用に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、本発明において、体積抵抗率とは、JIS C2101「電気絶縁油試験方法」に準拠して測定した25℃での値を意味する。
また、本実施形態に係る冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
また、本実施形態に係る冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機または配管に用いられている金属への腐食を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本発明において、酸価とは、JISK2501「石油製品および潤滑油一中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
また、本実施形態に係る冷凍機油の灰分は特に限定されないが、本実施形態に係る冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JISK2272「原油および石油製品の灰分ならびに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
本実施形態に係る冷凍機油は、ジフルオロメタン冷媒とともに用いた場合に十分に高い潤滑性と十分に高い相溶性とを示すものであり、ジフルオロメタン冷媒用冷凍機の冷凍機油として幅広く使用することができる。本実施形態に係る冷凍機油が使用される冷凍機としては、具体的には、ルームエアコン、パッケージエアコン、冷蔵庫、自動車用エアコン、除湿機、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等が挙げられるが、中でも、密閉型圧縮機を有する冷凍機において特に好ましく用いられる。また、本実施形態に係る冷凍機油は、往復動式、回転式、遠心式等の何れの形式の圧縮機にも使用可能である。なお、これらの冷凍機において、本実施形態に係る冷凍機油は、後述するように、ジフルオロメタン冷媒と混合された冷凍機用作動流体組成物として用いられる。
ずなわち、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、上記本発明のジフルオロメタン冷媒用冷凍機油とジフルオロメタン冷媒とを含有する。ここで、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物中の冷凍機油とジフルオロメタン冷媒との配合比は特に制限されないが、冷凍機油の配合量は、通常、ジフルオロメタン100重量部に対して1〜1000重量部であり、好ましくは2〜800重量部である。
なお、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物においては、従来の冷凍機油を用いた場合には得られなかった十分に高い潤滑性と十分に高い相溶性とを両立することができるという点で、冷媒成分としてジフルオロメタン冷媒のみを含有する場合に最もその有用性が発揮されるが、ジフルオロメタン冷媒以外のHFC冷媒、不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒、3フッ化ヨウ化メタン冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ジメチルエーテル等の非フッ素含有エーテル系冷媒、アンモニア、二酸化炭素や炭化水素等の自然系冷媒を含有してもよい。
ジフルオロメタン以外のHFC冷媒としては、炭素数1〜3、好ましくは1〜2のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。具体的には例えば、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒としては、フッ素数が3〜5のフルオロプロペンが好ましく、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−C1234ye)、および3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)のいずれかの1種または2種以上の混合物であることが好ましい。冷媒物性の観点からは、HFO−1225ye、HFO−1234zeおよびHFO−1234yfから選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。HFO冷媒との混合冷媒として好ましいものは、ジフルオロメタン/1234yf=40〜60/60〜40重量%のもので、中でもジフルオロメタン/1234yf=50/50重量%のものが好ましい。
炭化水素冷媒としては、炭素数3〜5の炭化水素が好ましく、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2−メチルブタン、ノルマルペンタンまたはこれらの2種以上の混合物があげられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタンまたはこれらの混合物が好ましい。
含フッ素エーテル系冷媒としては、具体的には例えば、HFE−134p、HFE−245mc、HFE−236mf、HFE−236me、HFE−338mcf、HFE−365mcf、HFE−245mf、HFE−347mmy、HFE−347mcc、HFE−125、HFE−143m、HFE−134m、HFE−227meなどが挙げられ、これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択される。
本実施形態に係る冷凍機油は、通常、冷凍空調機器において、ジフルオロメタン冷媒あるいはジフルオロメタン冷媒と上述したような冷媒との混合冷媒と混合された冷凍機用作動流体組成物の形で存在している。この組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合、ならびに本発明の冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合は特に制限されないが、冷媒100質量部に対して冷凍機油が好ましくは1〜1000質量部、より好ましくは2〜800質量部である。
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、あるいは開放型または密閉型のカーエアコンに好ましく用いられる。また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等に好ましく用いられる。さらに、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、遠心式の圧縮機を有するものにも好ましく用いられる。
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、前述の通り様々なジフルオロメタン冷媒用冷凍機に好適に用いることが可能であるが、その冷凍機が備える冷媒循環サイクルの代表的な構成としては、圧縮機、凝縮器、膨張機構および蒸発器、ならびに必要に応じて乾燥器を具備するものが例示される。
圧縮機としては、冷凍機油を貯留する密閉容器内に回転子と固定子からなるモーターと、前記回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介して、前記モーターに連結された圧縮機部とを収納し、前記圧縮機部より吐出された高圧冷媒ガスが密閉容器内に滞留する高圧容器方式の圧縮機、冷凍機油を貯留する密閉容器内に回転子と固定子からなるモーターと、前記回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介して、前記モーターに連結された圧縮機部とを収納し、前記圧縮機部より吐出された高圧冷媒ガスが密閉容器外へ直接排出される低圧容器方式の圧縮機、等が例示される。
モーター部の電機絶縁システム材料である絶縁フィルムとしては、ガラス転移点50℃以上の結晶性プラスチックフィルム、具体的には例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドイミド、ポリイミド群から選ばれる少なくとも一種の絶縁フィルム、あるいはガラス転移温度の低いフィルム上にガラス転移温度の高い樹脂層を被覆した複合フィルムが、引っ張り強度特性、電気絶縁特性の劣化現象が生じにくく、好ましく用いられる。また、モーター部に使用されるマグネットワイヤとしては、ガラス転移温度120℃以上のエナメル被覆、例えば、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミドおよびポリアミドイミド等の単一層、あるいはガラス転移温度の低い層を下層に、高い層を上層に複合被覆したエナメル被覆を有するものが好ましく用いられる。複合被覆したエナメル線としては、ポリエステルイミドを下層に、ポリアミドイミドを上層に被覆したもの(AI/EI)、ポリエステルを下層に、ポリアミドイミドを上層に被覆したもの(AI/PE)等が挙げられる。
乾燥器に充填する乾燥剤としては、細孔径3.3オングストローム以下、25℃の炭酸ガス分圧250mmHgにおける炭酸ガス吸収容量が、1.0%以下であるケイ酸、アルミン酸アルカリ金属複合塩よりなる合成ゼオライトが好ましく用いられる。具体的には例えば、ユニオン昭和(株)製の商品名XH−9,XH−10,XH−11,XH−600等が挙げられる。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1〜2および比較例1〜9]
実施例1〜2および比較例1〜9においては、それぞれ以下に示す基油1〜11を用いて試料油を調製した。得られた各試料油の性状(40℃および100℃における動粘度、全酸価)を表1〜3に示す。
(基油)
基油1:ジペンタエリスリトールと2−メチルペンタン酸とのヘキサエステル
基油2:ジペンタエリスリトールと脂肪酸混合物(2−メチルペンタン酸50モル%、2−エチルブタン酸50モル%の混合物)
基油3:ペンタエリスリトールとn−ペンタン酸とのテトラエステル
基油4:ジペンタエリスリトールとn−ペンタン酸とのヘキサエステル
基油5:ネオペンチルグリコールと2−メチルペンタン酸とのジエステル
基油6:トリメチロールプロパンと2−メチルペンタン酸とのトリエステル
基油7:ペンタエリスリトールと2−メチルペンタン酸とのテトラエステル
基油8:ペンタエリスリトールと2−エチルブタン酸とのテトラエステル
基油9:ジペンタエリスリトールと2−エチルブタン酸とのヘキサエステル
基油10:ペンタエリスリトールとカルボン酸混合物(2−メチルヘキサン酸70モル%、2−エチルペンタン酸30モル%)とのテトラエステル
基油11:ペンタエリスリトールとカルボン酸混合物(2−エチルヘキサン酸50モル%、3,5,5−トリメチルヘキサン酸50モル%)とのテトラエステル
次に、上記の各試料油について、以下に示す試験を行った。
(冷媒との相溶性試験)
JIS−K−2211「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して、ジフルオロメタン冷媒(HFC−32)18gと試料油2gとの混合物を30℃から−40℃まで徐々に冷却し、混合物が相分離または白濁した温度を測定した。得られた結果を表1〜3に示す。なお、表1〜3中、「<−40」とは、本試験の測定温度域において相分離および白濁が認められなかったことを表し、「分離」とは、30℃で既に相分離または白濁していたことを表す。
(潤滑性試験)
密閉容器の内部に上側試験片にベーン(SKH−51)、下側試験片にディスク(FC250HRC40)を用いた摩擦試験機を装着した。摩擦試験部位に試料油を600g導入し、系内を真空脱気した後、HFC−32を導入して加熱した。密閉容器内の温度を100℃、冷媒圧力を1.5Mpaとした後、荷重ステップ10kgf(ステップ時間2分)で段階的に荷重を100kgfまで上げた。各試料油について60分間の試験後のベーンの摩耗巾およびディスクの摩耗深さを計測した。
(低温析出性試験)
試料油を試験管に入れ、ドライアイスを入れたエタノール浴(−70℃)に24時間浸漬し、白濁の有無を観察した。
(安定性試験)
200mlのオートクレーブに水分を1000ppmに調整した試料油85g,HFC−32を15g封入し、175℃で500時間加熱した後の試料油の酸価を測定した。