JP6213983B2 - 睡眠段階推定装置および方法並びにプログラム - Google Patents
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Description
具体的には、図30に示すように、以下の5stepから構成される。
Step2 決定した心拍数に高速フーリエ変換(FFT) を適用し、1 分間ごとの平均心拍数を求める。また、求めた平均心拍数を低周波帯域、中周波帯域、高周波帯域に分類する。
Step3 中周波帯域に対して、線形非巡回型バンドパスフィルタを適用し、ウルトラディアンリズム(約90 分周期) を抽出する。
Step4 一晩の心拍数変動の波形に離散フーリエ変換(DFT) を適用し、周期26-135 分の間でピークスペクトルを見つける。これは、フィルタの適切な遮断周期が、一般的にノンレム-レム振動周期が通常26-135 分の範囲にあるためである。
Step5 一晩の心拍数変動の平均周期を意味するピークスペクトル値から、バンドパスフィルタを構成する。ここで、心拍は変動的なものであるため、遮断周期が135min-平均周期の半分の中周波のデータを抽出し、それを睡眠段階判定に用いる。
Step2 ここでは、心拍と体動データを用いて睡眠段階を詳細に推定する。一般的に、観測した心拍数が増加し不規則である場合、REM 睡眠期であり、心拍数が減少した場合、Non-REM 睡眠期となる。加えて、体動が集中的に生じる場合、REM 睡眠期であり、 体動の大きさと発生頻度が減少する場合、Non-REM 睡眠期となる。さらに、睡眠時において、睡眠段階が変化する場合についても、体動データの変動が見られる。例えば、眠りの深いNon-REM 睡眠stage3(Non-REM3) から眠りの浅いNon-REM 睡眠stage1(Non-REM1) に移行する場合や、REM 睡眠期からNon-REM1 に移行する際に、大きな体動が発生する。このような心拍と体動の傾向を基に睡眠段階が推定可能となる。
具体的には、寝始めからある時間i までに得られた心拍と体動データから、心拍平均、体動平均、体動標準偏差を求め、時間i から1 分間の体動標準偏差を求める。次に、時間i から10 分前までの心拍平均を求め、発生している体動が、1) 睡眠段階の変化時に発生した体動か、2)REM 睡眠期に発生した体動かについて区別する。具体的な区別方法は、図32の表の関係性を基に、以下の2条件を用いて判定する。
・条件1: 一晩における体動の標準偏差 < 1 分間の体動の標準偏差
・条件2: 一晩における心拍の平均 < 10 分間の心拍の平均
その後、以下の判定法に従い、睡眠段階を推定する。
*判定1: 条件1 と条件2 を満たしたとき、REM 睡眠期と判定する。
*判定2: 条件1 のみ満たした時、REM 睡眠期以外で発生した体動と判定する。
*判定3: 条件1 と条件2 を満たさなかったとき、Non-REM 睡眠と判定する。
Step3 睡眠段階推定の学習として、決定した心拍数のうち、睡眠段階に近い周波数を抽出するマルチバンドパスフィルタを得るために遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA) を用いる。GA では、マルチバンドパスフィルタ(以下、フィルタと表記する) を個体とみなし、その評価(適応度:fitness) を判定した睡眠段階を基に計算する。
具体的には、まず、同手法では、6 つの睡眠段階を、覚醒とREM 睡眠期、Non-REM1、Non-REM2,3,4(Non-REM 睡眠期) の三段階に分類する。次に、フィルタにより推定した睡眠段階が、対応した各段階に一致すれば+1、一致しなければ-1 を与えることで、フィルタを評価し、fitness を計算する。この評価方法に基づいて、GA により、より評価の高いフィルタを獲得する。
Step4 学習から得られた最も評価の高いフィルタを用いて、周波数を抽出し、IFFT(逆フーリエ変換)を適用することで、睡眠段階を推定する。
しかしながら、渡辺らの手法では、全被験者のデータから睡眠段階の推定基準を算出(推定)しているため、人によって異なる判定基準に対応できない。
本発明の睡眠段階推定手法では、推定に適した心拍数の周波数成分を抽出するバンドパスフィルタを、遺伝的アルゴリズムによる学習手法を改良したDatabase-based Compact Genetic Algorithm(DcGA)を用いて生成する。本実施形態において、このバンドパスフィルタは、例えば、14ビットのビット列で表現される。各ビットは周波数(順に、1/16200秒・1/8100秒・1/4050秒・・・1/16秒・1/8秒・1/4秒・1/2秒)を表し、各ビットにおいて、値が”1”の場合にはそのビットで表される周波数を推定に使用し、値が”0”の場合にはそのビットで表される周波数を推定に使用しないことを意味する。
本発明において用いられるDcGAは、cGAを拡張した手法である。cGA は確率モデルを用いた遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA)である。対象となるデータは2値(0,1) のバイナリデータである。確率モデルが示す確率はビットが”1”となりうる確率であり、各データは遺伝子座に対応している。cGA はオーダーが1 の問題に対しては、トーナメント選択、一様交叉を採用したsimple Genetic Algorithm(sGA)と同等の振る舞いをする事が確認されている。
(1)個体生成
cGA は確率モデルの確率に従って、個体を生成する。個体は、問題に応じたデータ領域や配列を持つ遺伝子から成り、情報を保有する遺伝子の位置(遺伝子座) は決まっている。遺伝子を生物的に捉え、選択、交叉や突然変異の操作を通して遺伝子の形を変えることで、環境(問題) に適用させる個体を発見できる。cGA の確率モデルの確率はビットが”1”になる確率を表しており、例えば、確率モデルの要素が1.0 であれば対応する遺伝子座の要素は”1”に必ずなる。同操作を全遺伝子座に対してすることで、確率モデルから個体を生成できる。
図2 はcGA の更新方法を示しており、確率モデル(母集団確率) から個体a、b が生成される。生成された2 個体に対し評価関数により評価値を求める。ここで、評価値の高い個体をwinner とし、低い個体をloser とする。winner となった個体を基に、loser である個体の遺伝子を比較をする。遺伝子比較は各遺伝子座の要素(0,1) を比べ、異なる場合か同じ場合かを調べる。要素が異なる場合、1)winner の要素が”1”の時、確率モデルの対応する要素に対し更新率分加え、2)winner の要素が”0”の時、確率モデルの対応する要素に対し更新率分引く。同じ場合は何もしない。更新率は予め決定されている定数であり、1 から母集団上限数を割ることで求められる。更新後、再び確率モデルから個体を生成し、比較をすることで確率モデルの更新を繰り返す。
cGA は以下の5 ステップに分けることができる。
Step1 確率モデル(P Vector:P[i]) の各遺伝子座の確率要素を0.5 に初期化。
Step2 確率モデルの各確率要素の値に従って個体を2 個体分生成する。
Step3 生成された2 個体を評価関数により評価を行い、評価値の比較を行う。
Step4 評価値の高い個体をwinner、低い個体をloser とし、各遺伝子座の比較を行う。遺伝子座の要素が異なる場合、確率ベクトルを以下のように更新する。
P[i] = P[i] + 1/n (winner 側の要素が”1”の時)
P[i] = P[i] − 1/n (winner 側の要素が”0”の時)
Step5 P の各要素がすべて収束するまでStep2 からの処理を繰り返す。Step6 収束したP が求められた解である。
1.2.1 概要
一般的に、cGA は正しい評価関数(評価値) が正しく設計可能な問題で適用可能であるが、評価関数が雑音等により誤った評価を行う場合、cGA は適用不可能である。しかし、睡眠段階推定は、体調変化等により生体データの傾向が頻繁に変化するため、評価関数が正しく設計不可能な問題である。したがって、評価関数が不確定であるような問題に対しても、cGA を適用するために、cGA を拡張した学習手法(Database-based Compact Genetic Algorithm:DcGA) を構築する。図3 にDcGA のアルゴリズムの概要を示す。DcGA はcGA の枠組みを基にしたシステムであるが、与えられるデータを子個体として扱う点で異なる。この意味は、従来のcGA では確率モデルより子個体(似た解構造をもつ解) の生成を繰り返すことで、確率モデルは最適解のみの解構造を示すことになる(一つの解の特徴のみ表現する)。一方で、DcGA では、与えられたデータ(解空間から抽出した解) を子個体として扱うことで、解構造の偏った解による評価を避けることで、複数の評価値の高い解(準最適解) の探索が可能となる。さらに、確率モデルを用いることで、準最適解に共通する特徴を表現したモデルが獲得可能となる。
(1)DcGA における確率モデル
提案手法では、cGA と同様に確率モデルを用いるが、最適解のみならず準最適解の特徴を表現する点でcGA と異なる。例えば、図4 に示すように、個体群a、b、c、d は準最適解であるとき、各個体の遺伝子構造は異なるが、確率モデルを用いることで、共通する遺伝子を実数値により表現することができる。例えば、同図において、2 ビット目が”1”であり4 ビット目が”0”であり、1 ビット目と3 ビット目は”0”でも”1”でもあるとき、確率モデルはそれぞれ、1、0、0.5 の値を示し、遺伝子の特徴を表現している。また、cGA と同様に、確率モデルで扱う確率は”1”になる確率を示している。
提案手法では、cGA で扱う環境(問題) の代わりにデータセットを用いる。この意味は、不確定評価関数により評価値が変動する場合でも、誤った局所解の収束を防ぎ、準最適解を獲得するためである。具体的には、提案手法では、事前に評価されたデータから構成されるデータセットを用いる。次に、データセットからランダムにデータ(個体) 選択を行うことで、誤った局所解への収束を避ける。このように、データセットを用いることで、最適解のみならず、準最適解の特徴を確率モデルに反映することが可能となる。
図5は従来手法との比較図である。従来手法では個体評価を基に子個体生成を繰り返し、最適解を求める。提案手法ではデータセットからデータを選択し準最適解を求める。
図6に提案手法のアルゴリズムを示す。DcGA は以下の5 ステップから構成される。
Step1 事前に、各データ(個体)を評価し、データセットを生成する。ここで、データセット中の各データ(個体)には評価値が関連づけられている。
Step2 確率モデル(P Vector:P[i]) の各遺伝子座の確率要素を0.5(初期値) に設定する。
Step3 データセットからランダムに2 個体選択する。
Step4 選択された2 個体の評価値の比較を行う。
Step5 評価値の高い個体をwinner、低い個体をloser とし、各遺伝子座の比較を行う。
遺伝子座の要素が異なる場合、確率ベクトルを以下のように更新する。
P[i] = P[i] + 1/n (winner 側の要素が”1”の時)
P[i] = P[i] − 1/n (winner 側の要素が”0”の時)
Step6 P の各要素がすべて収束するまでStep3 から処理を繰り返す。
Step7 収束したP が求められた解である。
1.3.1 確率モデルのフィルタ化と選択
提案手法を睡眠段階推定問題に適用するために、実数値を持つ確率モデルのフィルタ化(バイナリデータ化) の方法とフィルタ化された確率モデルを基にした確率モデルの選択(解の抽出) 方法を示す。
提案手法により求められた確率モデル(P Vector) を睡眠段階推定問題に適用するために、数値のフィルタ化(バイナリデータ化) を以下の条件に従って行う。
条件1:確率モデルの値が0.25 以下の時は”0”
条件2:確率モデルの値が0.75 以上の時は”1”
条件3:確率モデルの値が条件1 と条件2 以外の時は”#”
条件3 における”#”は”0”と”1”任意の値を示す。図7はフィルタ化の例である。
提案手法を睡眠段階推定システムに導入した際、求められる確率モデルが変化し収束しなかった。これはランダム選択による解選択のバラつきにより、確率モデルの確率が変化してしまうのが原因である。図8は世代数100000までについて世代毎の確率モデルのフィルタ化された#の数の推移を示している。縦軸が14 ビットのバンドパスフィルタに含まれている#の数であり、横軸が世代数である。世代数が0 付近では#数が6 以上あるが、これは確率モデルを0.5 に初期化したためである。図にあるように、確率モデルは収束せず不規則に#の数が変化していることがわかる。
条件1:確率モデルの#数が最大となるもの(初期値である#数14 から収束するまでは含まない)
条件2:条件1 を満たす確率モデルの中で世代数が最小となるもの
DcGA を睡眠段階の推定のためのバンドパスフィルタの生成に適用した場合、以下の5stepにより、フィルタが生成される。
Step1 まず、無拘束エアマットレス型生体センサによって被験者の生体データを取得し、高速フーリエ変換(FFT) を適用しマルチバンドパスフィルタの生成をする。
Step2 生成されたマルチバンドパスフィルタから逆高速フーリエ変換(IFFT) を適用し、ある周波数帯域中周波帯域の成分の組を抽出する。
Step3 抽出された周波帯域の成分の組に離散フーリエ変換(DFT) を適用し、睡眠段階を変換することで推測評価値を求め、マルチバンドパスフィルタとその評価値を合わせたデータセットを生成する。
Step4 DcGA を用いて、データセットからデータを選択することにより確率モデルを更新する。
Step5 更新された確率モデルに対しバイナリデータ化を施し、確率モデルをマルチバンドパスフィルタ化する。
Step3.1 Step2の出力データが睡眠段階の時間的推移を表すものとみなして、各時点(例えば1秒ごと)における睡眠段階(覚醒・REM睡眠・Non-REM睡眠Stage1〜4)を求める。
・条件1: 一晩における体動の標準偏差 < 1 分間の体動の標準偏差
・条件2: 一晩における心拍の平均 < 10 分間の心拍の平均
その後、以下の判定法に従い、睡眠段階を推定する。
*判定1: 条件1 と条件2 を満たしたとき、REM 睡眠期と判定する。
*判定2: 条件1 のみ満たした時、REM 睡眠期以外で発生した体動と判定する。
*判定3: 条件1 と条件2 を満たさなかったとき、Non-REM 睡眠と判定する。
Step3.3 各時点においてStep3.1とStep3.2とで得られた睡眠段階を比較し、両方の睡眠段階が一致していれば+1、一致していなければ-1とするなどしてスコア化し、各時点でのスコアの和を、推測評価値として算出する。
DcGAにおいて、睡眠特有のグループ分けを考慮してもよい。グループ分けを考慮せずに、1日分のデータセットか全日分のデータセットをそのまま持つようにした場合、例えば起床時に向け眠りが浅くなる日のデータと眠りが深くなる日のデータを区別しないため、睡眠段階推定の精度が減少することが考えられる。そこで、心拍数推移の傾きを考慮したグループ分けをすることで、睡眠段階推定の高精度化を目指す。図9は、心拍数推移の傾きを示す。横軸は一晩の睡眠時間を正規化した値であり、縦軸は心拍数を示しており、図の傾きは2 軸に対し最小二乗法で求められたものである。図10に各被験者の心拍数の傾きとグループ分けの例を示す。グループ分けは、傾きの値が正であるIncrease と傾きの値が負であるDecrease の2 グループである。
DcGA を下記の4 つの手法において睡眠段階推定に適用できる。
・DcGA(1日分) によるフィルタ
図11に概要を示す。1 日分の学習データからマルチバンドパスフィルタを求める。
・DcGA(複数日分) によるフィルタ
図12に概要を示す。複数日分の学習データからマルチバンドパスフィルタを求める。
・DcGA(1日分のグループ分け) によるフィルタ
図13にIncrease グループでの概要を示す。グループ分けをした1日分の学習データからマルチバンドパスフィルタを求める。Increase グループとDecrease グループに対し、それぞれ確率モデルの更新をする。なお、図には示されていないが、Increaseグループのデータセットの位置にはDecreaseグループのデータセットも同様に存在しているものとする。
・DcGA(複数日分のグループ分け) によるフィルタ
図14に概要を示す。グループ分けをした複数日分の学習データからマルチバンドパスフィルタを求める。Increase グループとDecrease グループに対し、それぞれ確率モデルの更新をする。なお、図には示されていないが、Increaseグループのデータセットの位置にはDecreaseグループのデータセットも同様に存在しているものとする。
2.1 構成
図1は、本発明の実施形態となる睡眠段階推定装置の構成を表すブロック図である。図に示したように、睡眠段階推定装置1は、生体データ取得部2、生体データ記録部3、生体データ記憶部4、フィルタ生成部5、過去分個体記憶部6、フィルタ記憶部7、特定周波帯域抽出部8、睡眠段階判定部9から構成される。
例えば、睡眠段階推定装置1を介護施設入居者の毎晩の睡眠段階のリアルタイム・モニタリングに利用する場合、ある日(第n日)の朝の時点では、第n−1日の夜から第n日の朝までの生体データが生体データ記憶部4に記憶されていることになる。また、この時点では、過去分個体記憶部6には、例えば第n−7日〜第n−1日の昼間にフィルタ生成部5によって生成された個体のデータセットが記憶されている。フィルタ記憶部7には、第n−1日の昼間にフィルタ生成部5によって生成されたフィルタが記憶されている。すなわち、第n−1日の夜から第n日の朝にかけての睡眠段階のモニタリングでは、第n−1日の昼間に生成されたフィルタが特定周波帯域抽出部8で用いられる。
3.1 実験1:DcGA による睡眠段階推定の検証
3.1.1 実験内容
本章では先行研究とDcGA との比較をし、提案システムの有効性を検証する。比較をするために、Case1:非特許文献3記載の廣瀬手法(1日分)、Case2:DcGA(1日分)、Case3:DcGA(複数日分)の3 つの睡眠段階推定手法の実験を行う。
なお、比較・検証を行う上で用いる実験データは、以下の通りである。
・被験者年齢20 歳代男性
・被験者数3 人
・データ数各被験者9 日分
・圧力センサEmfit(後述)
・脳波系AlicePDx 脳波計(後述)
実験機材には以下のものを使用する。
・エアマットレス型圧力センサ:Emfit は、図15に示すフィンランドの国立技術開発センターによって開発された。Emfit は超高感度感圧センサでできており、マットレスの下に敷かれ無侵襲非拘束状態で心拍・呼吸数・体動を感知することができる。ネットワークにつながれたEmfit は、寝ている人の状態を別室から監視することができ、離床などの異変を感知するとモニターに表示される。実際に得られる生体データは、リアルタイムとフィルタにかけて1 秒ごとに記録するという2 種類から選択時間が設定でき、メモリにそれぞれの設定した状態で保存することが出来る。
・AlicePDx 脳波計:AlicePDx 脳波計は、図16に示すフィリップス・レスピロニクス合同会社から販売されている脳波測定装置である。被験者に直接センサを装着することで脳波・筋電図・眼球運動を記録できる機器である。また、記録した脳波、筋電図、眼球運動を基に睡眠段階を測定することができる。
評価方法としては、睡眠段階推定システムにより生成・評価された16384(14 ビット長のフィルタデータ:2の14乗) 個のテストデータセット(1 日分の推定データ) を複数日分用いて、個々の睡眠サイクルに存在する特徴を推定する。そのために、9 日分のデータセット(16384 個× 9 日データ) から提案システムを用いて確率モデルを求め、その確率モデルに従ってバンドパスフィルタを生成する。最後にバンドパスフィルタと同一のものが、各日のデータセット内において上位20 %に存在する割合を比較する。ここで、上位20 %とは、睡眠段階推定システムにより推定を行った波形と脳波計の波形の一致度を表す値(Accuracy)によってソーティングした結果、そのバンドパスフィルタが、一致度の高い方から上位20%に存在するという意味である。
Case1:廣瀬手法(1日分) による睡眠段階推定
図17にCase1 の概要を示す。特定の日のデータから従来手法により求められた最適なフィルタと同等のフィルタが他の日((全8 日分) において上位20 %に存在するかを求める。全8 日分中における存在する割合を日毎に求め、平均値を求める。
・Case2:DcGA(1日分) による睡眠段階推定
図18にCase2 の概要を示す。特定の日のデータから提案手法により求められたフィルタと同等のフィルタが他の日(全8 日分) において上位20 %に存在する割合を求める。全8 日分中における存在する割合を日毎に求め、その平均値も求める。
・Case3:DcGA(複数日分) による睡眠段階推定
図19にCase3 の概要を示す。特定の日以外のデータ(全8 日分) から提案手法により求められたフィルタと同等のフィルタが特定の日に対して上位20 %に存在する割合を求める。この操作を日毎に求め、その平均値も求める。
・入力データ長:14bit
・世代数:5000000
・母集団数(更新率): 250
・選択方法:ランダム選択
・Case1:従来手法によるバンドパスフィルタの睡眠段階推定
実験結果を図20に示す。縦軸は上位への存在率(%) を示しており、横軸はCase1〜Case3 を表す。存在率の平均値は全被験者に対して30 %程度であり、個人差はなく安定した値である。
・Case2:提案手法(1 日データ分) によるバンドパスフィルタの睡眠段階推定
実験結果を図20に示す。全被験者に対し、Case1 よりも存在率の平均値は上昇している。Case1 と比べると被験者A と被験者B、C のように、個人により平均値が異なった。
・Case3:提案手法(8 日データ分) によるバンドパスフィルタの睡眠段階推定
実験結果を図20に示す。存在率の平均値は被験者により異なり、被験者A ではCase1、2 よりも高い値を示しているが、被験者C は被験者A、B よりも値が小さかった。
提案手法が実現する頑強な推定精度の要因を調べるため、学習したフィルタの評価値(Fitness) と実際の正解値(Accuracy) を比較する。
3.2.1 実験内容
前章で、提案手法は従来手法よりも高い存在率を示したが、Case2 とCase3 の有効性は被験者により異なった。これは提案手法で用いる適切なデータ数が被験者により異なるためと考えられる。そこで、被験者毎に使用するデータ数の検証を行う。具体的には、非特許文献2に記載の渡辺らによる睡眠段階推定手法において用いられる、心拍数推移の傾きにより、データをグループ分けする。比較をするために下記の2 つの実験をする。実験に使用する機材、評価方法、パラメータは前章と同様である。
図24にCase4(Grouping Case2) の概要を示す。グループ分けされた特定の日のデータから提案手法により求められたフィルタと同等のフィルタが同グループの他の日において上位20 %に存在する割合を求める。グループ中に存在する割合を日毎に求め、その平均値を求める。なお、図ではIncreaseグループについて示しているが、Decreaseグループも同様である。
・Case5(提案手法(複数日分) によるグループ化への睡眠段階推定):
図25にCase5(Grouping DcGA) の概要を示す。グループ分けされた特定の日の以外のデータから提案手法により求められたフィルタと同等のフィルタが同グループの特定日において上位20 %に存在する割合を求める。グループ中の存在する割合を求め、その平均値を求める。なお、図ではIncreaseグループについて示しているが、Decreaseグループも同様である。
実験結果を図26、図27に示す。図26の縦軸は上位への存在率(%) を示しており、横軸はCase4(Grouping Case2)とCase5(DcGA)、そして比較のためにCase2 とCase3 を表す。被験者A とB において、Case5 の存在率はCase2〜4 よりも高い。被験者C はDcGAのCase5の値は低いが、Case4の値はCase2 の値と近い。また、図27はグループ毎の存在率(%) を示している。被験者C のCase5 の値が低いのは、Increase グループでの学習が効果的にできず、存在率が0 %であったことが原因であることがわかる。
(1)追加実験内容
被験者C のIncrease グループが0 %であった原因に、2 日目の睡眠データが特殊であることが挙げられる。具体的には、2 日目の上位のフィルタデータは”0”を多く含んでおり、他の日や他の被験者のデータでは”1”を多く含んでいるフィルタが上位に存在している。そこで、2day のデータを特殊データとして扱い、グループから取り除く。だが、実験では同グループデータにおいて他の日を推定するため、Increase のデータ数が足りなくなってしまう。この問題を解決するために、傾きの絶対値が最小である8 日目のデータを、グループ内のデータ数が少ないIncrease グループとして扱い、同条件で追加実験を行う。被験者B のデータ内にも被験者C の8 日目の傾きと同値のデータ(1 日目データ)があるため、同様にIncrease グループとして扱う。
実験結果を図28、図29 に示す。図28 の縦軸は上位への存在率(%) を示しており、横軸はCase4 とCase5、そして比較のためにCase2 とCase3 を表し、図29はグループ毎の存在率(%) を示している。被験者A、B の存在率はほぼ変わらず、被験者C の存在率を大幅に上昇させることができ、提案手法の中でもグループ分けを用いたDcGA が最も頑強な抽出規則を学習できた。
2 生体データ取得部
3 生体データ記録部
4 生体データ記憶部
5 フィルタ生成部
6 過去分個体記憶部
7 フィルタ記憶部
8 特定周波帯域抽出部
9 睡眠段階判定部
Claims (6)
- 所与の周波数帯域を透過させるフィルタと、
生体データ取得部によって取得された特定の被験者の生体データから、前記フィルタを用いて前記周波数帯域のデータを抽出する特定周波帯域抽出手段と、
抽出されたデータに基づいて前記生体データの取得時点における睡眠段階を判定する睡眠段階判定手段とを備えた睡眠段階推定装置であって、
前記フィルタは、
前記生体データに含まれるそれぞれ異なる周波数帯域を透過させる複数のバンドパスフィルタと、前記複数のバンドパスフィルタの内で睡眠段階の推定に使用する周波数帯域を選んだマルチバンドパスフィルタを得るフィルタ生成部とを備え、
前記フィルタ生成部は、前記特定の被験者のn個(nは任意の数)の生体データのそれぞれについて、前記複数のバンドパスフィルタを任意に組み合わせたマルチバンドパスフィルタを使って睡眠段階を判定した結果に対する評価値を得る処理を行い、その評価値から各周波数帯域のバンドパスフィルタの確率モデルを更新し、更新された確率モデルに基づいて、前記特定の被験者の睡眠段階を推定するための前記マルチバンドパスフィルタを得るようにした
ことを特徴とする睡眠段階推定装置。 - 前記評価値を得る際には、心拍数推移の傾きがインクリースグループとデクリースグループに分け、
前記インクリースグループと前記デクリースグループのそれぞれ毎に、前記特定の被験者の睡眠段階推定用の前記マルチバンドパスフィルタを得るようにした
請求項1に記載の睡眠段階推定装置。 - 生体データ取得部によって取得された特定の被験者の生体データから、所与の周波数帯域を透過させるフィルタを用いて前記周波数帯域のデータを抽出するステップと、
抽出されたデータに基づいて前記生体データの取得時点における睡眠段階を判定するステップとを有する睡眠段階推定方法であって、
前記フィルタは、前記生体データに含まれるそれぞれ異なる周波数帯域を透過させる複数のバンドパスフィルタを用意し、
前記特定の被験者のn個(nは任意の数)の生体データのそれぞれについて、複数のバンドパスフィルタを任意に組み合わせたマルチバンドパスフィルタを使って睡眠段階を判定した結果に対する評価値を得る処理を行い、その評価値から各周波数帯域のバンドパスフィルタの確率モデルを更新し、更新された確率モデルに基づいて、前記特定の被験者の睡眠段階を推定するための前記マルチバンドパスフィルタを得るようした
ことを特徴とする睡眠段階推定方法。 - 前記評価値を得る際には、心拍数推移の傾きがインクリースグループとデクリースグループに分け、
前記インクリースグループと前記デクリースグループのそれぞれ毎に、前記特定の被験者の睡眠段階推定用の前記マルチバンドパスフィルタを得るようにした
請求項3に記載の睡眠段階推定方法。 - コンピュータに、
生体データ取得部によって取得された特定の被験者の生体データから、所与の周波数帯域を透過させるフィルタを用いて前記周波数帯域のデータを抽出するステップと、
抽出されたデータに基づいて前記生体データの取得時点における睡眠段階を判定するステップとを実行させる睡眠段階推定プログラムであって、
前記フィルタは、前記生体データに含まれるそれぞれ異なる周波数帯域を透過させる複数のバンドパスフィルタを使用し、
前記特定の被験者のn個(nは任意の数)の生体データのそれぞれについて、複数のバンドパスフィルタを任意に組み合わせたマルチバンドパスフィルタを使って睡眠段階を判定した結果に対する評価値を得るステップと、
得られた評価値から各周波数帯域のバンドパスフィルタの確率モデルを更新し、更新された確率モデルに基づいて、前記特定の被験者の睡眠段階を推定するための前記マルチバンドパスフィルタを得るステップと、を含む
ことを特徴とする睡眠段階推定プログラム。 - 前記評価値を得る際には、心拍数推移の傾きがインクリースグループとデクリースグループに分け、
前記インクリースグループと前記デクリースグループのそれぞれ毎に、前記特定の被験者の睡眠段階推定用の前記マルチバンドパスフィルタを得るようにした
請求項5に記載の睡眠段階推定プログラム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013123257A JP6213983B2 (ja) | 2013-06-11 | 2013-06-11 | 睡眠段階推定装置および方法並びにプログラム |
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