JP6206867B2 - 自動車安全運転能力測定システム - Google Patents
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Description
高齢者による交通事故の増加は、加齢による運転能力の低下に起因するところが大きいと考えられている。
本願発明者らは、高齢者、特に大脳に白質病変を有する高齢者と交通事故の間には相関可能性が高いことを解明し、大脳の白質病変の程度の検査結果に基づいて運転者の運転適性を判断する運転適性診断装置を提案している(下記特許文献1参照)。
上記運転適性診断装置によれば、大脳の白質病変の程度の検査結果に基づいて運転者の運転適性を判断することから、若者に比べて大脳に白質病変を有する割合が高い高齢者の交通事故を抑制する効果が期待できる。
そのため、全ての運転者の安全運転能力を精度良く測定することができれば、交通事故抑制対策や安全運転対策をとり得ると考えられる。
また、上記運転適性診断装置は、大脳の白質病変の程度を検査するための専用装置(MRI)を必要とすることから、このような専用装置を必要としない簡易な安全運転能力の測定方法の創出が望まれている。
このことから、操舵時のぶれに基づいて安全運転能力が判定されることとなるため、年齢に関わらず運転者の安全運転能力を精度良く測定することが可能となる。また、方向転換時を含む特定時間帯におけるぶれ評価値に基づいて安全運転能力を判定するため、カーブを曲がる時などの操舵時にぶれが生じ易い時間帯におけるぶれ評価値を用いることができ、安全運転能力の測定精度を向上させることが可能となる。また、操舵時のぶれと白質病変の程度には相関性がみられるが、本発明では、白質病変の程度を検査するための専用装置(MRI)を用いることなく簡易な装置で安全運転能力を測定することができる。
また、安全運転能力の測定結果は、例えば、タクシー会社において安全運転能力が低い運転者を運転業務から外す、或いは保険会社において安全運転能力が低い運転者について自動車保険料を高くする等、実社会において幅広く利用することが可能である。
このことから、実際の運転時に与えられた負荷に起因する操舵時のぶれに基づいて安全運転能力が判定されることとなるため、年齢に関わらず運転者の安全運転能力を精度良く測定することが可能となる。また、方向転換時を含む特定時間帯において、負荷状態と無負荷状態におけるぶれ評価値を比較するため、カーブを曲がる時などの操舵時にぶれが生じ易い時間帯におけるぶれ評価値を比較することができ、安全運転能力の測定精度を向上させることが可能となる。
図1は、本発明に係る自動車安全運転能力測定システムの第一実施形態の全体構成を示すブロック図である。
本発明の第一実施形態に係る自動車安全運転能力測定システムは、測定対象者(1)が運転する車両(2)の走行軌跡データを取得する走行軌跡データ取得手段(3)と、運転中の測定対象者に対して注意力を分散させる負荷を与える負荷手段(4)と、前記車両のハンドル回転角を計測する計測手段(5)と、前記ハンドル回転角を解析して操舵のぶれ評価値を算出する解析手段(6)と、前記走行軌跡データに基づいて、車両の走行時間帯のうち方向転換時を含む特定時間帯を抽出する時間帯抽出手段(7)と、前記特定時間帯において、負荷状態と無負荷状態における前記ぶれ評価値を比較して、両状態のぶれ評価値の差の程度に基づいて測定対象者の安全運転能力を判定する判定手段(8)と、を備えている。
負荷手段(4)は、音声を記憶したCDやICレコーダ等の記憶部(41)と、記憶部に記憶された音声を出力するスピーカ等の出力部(42)と、制御部(43)とを備えており、測定対象者が運転する車両(2)に搭載される。
制御部(43)は、CPU、メモリ(RAM、ROM)、入出力部(I/Oインターフェイス)等を備えたコンピュータからなり、メモリに記憶されたプログラムに従って所定の時間間隔で負荷手段(4)を作動させる。尚、制御部(43)が後述する制御ユニット(9)に含まれる形態としてもよい。
負荷手段(4)は、記憶部(41)に記憶された音声を、制御部(43)から送信される制御信号に基づいて出力部(42)から出力し、車両(2)を運転する測定対象者に対して聞かせることにより、測定対象者(1)に対して負荷(音声負荷)を与える。
負荷手段(4)は、制御部(41)による制御信号に基づいて所定の時間間隔で間欠的に作動し、測定対象者(運転者)に負荷を加えた状態(負荷状態)と、当該負荷を加えていない状態(無負荷状態)とをつくりだす。
PASATとは、図3に示す如く、音声で一桁の数字が連続的に提示され、数字を聞いた直後に先に聞いた数字と加算して解答する作業である。数字は3秒ごと(PASAT-3)もしくは2秒ごと(PASAT-2)に提示され、注意力を分散させる効果が得られる。
但し、運転中の負荷が大きくなりすぎることを防ぐため、例えば解答が一桁となるようにするなど、難易度を下げる調整を行うことが好ましい。
6軸加速度センサを使用する場合は、ハンドルの中心に固定する第一センサと、車体の不動部分(操作されない部分)に固定する第二センサを使用し、第一センサでハンドルの回転角を計測し、第二センサで地面に対する車両の回転角を計測する。
解析手段(6)は、CPU、メモリ(RAM、ROM)、入出力部(I/Oインターフェイス)、ディスプレイ等を備えたコンピュータからなる制御ユニット(9)に含まれる。
制御ユニット(9)を構成するコンピュータのメモリには、ハンドル回転角を解析してぶれ評価値を算出するためのプログラム(評価値算出プログラム)が記憶されている。コンピュータは、CPUがメモリに記憶された評価値算出プログラムを読み出して実行することによって、解析手段(6)として機能する。
解析手段(6)は、データ取得部(61)と、記憶部(62)と、解析部(63)とを備えている。
データ取得部(61)は、所定の時間間隔で、計測手段(5)により計測されたハンドル回転角のデータを取得する。記憶部(62)は、取得されたハンドル回転角を時系列的に記憶する。解析部(63)は、記憶部(62)から所定サンプリング時間分のハンドル回転角の時系列データ(時系列ハンドル回転角データ)を読み出して、この時系列ハンドル回転角データに基づいて操舵のぶれ評価値を算出する。
時間帯抽出手段(7)は、制御ユニット(9)に含まれる。
制御ユニット(9)を構成するコンピュータのメモリには、走行軌跡データ取得手段(3)により取得された走行軌跡データを解析して車両の走行時間帯のうち方向転換時を含む特定時間帯を抽出するためのプログラム(特定時間帯抽出プログラム)が記憶されている。コンピュータは、CPUがメモリに記憶された特定時間帯抽出プログラムを読み出して実行することによって、時間帯抽出手段(7)として機能する。
制御ユニット(9)を構成するコンピュータのメモリには、時間帯抽出手段(7)により抽出された前記特定時間帯において、負荷状態と無負荷状態における前記ぶれ評価値を比較して、両状態のぶれ評価値の差の程度に基づいて測定対象者の安全運転能力を判定するためのプログラム(判定プログラム)が記憶されている。コンピュータは、CPUがメモリに記憶された判定プログラムを読み出して実行することによって、判定手段(8)として機能する。
判定手段(8)を構成する上記判定プログラムは、運転中の負荷状態と無負荷状態とを自動的に判別する機能を発揮する。判別方法としては、例えば上記制御部(41)による制御信号が発信されている状態を負荷状態と判定し、発信されていない状態を無負荷状態と判定する方法を例示することができる。
予め幅広い年代(若者から高齢者まで)の多数の被検者に、本発明のシステムを利用して自動車教習所内等のテストコースで運転してもらい、負荷状態と無負荷状態におけるぶれ評価値の差についてのサンプリングデータを取得する。このサンプリングデータをぶれ評価値の差の少ない方から順番に並べる。そして例えば、上位20%の順位に含まれる差の範囲をランクA、上位20%超40%以下の順位に含まれる差の範囲をランクB、上位40%超60%以下の順位に含まれる差の範囲をランクC、上位60%超80%以下の順位に含まれる差の範囲をランクD、上位80%超100%以下の順位に含まれる差の範囲をランクEと規定する。
ここで、理解を容易にするため、ぶれ評価値の差が0以上の整数値で表わされ、被検者数が100名であり、ぶれ評価値の差の少ない方から1位の人のぶれ評価値の差が0、20位の人が5、21位の人が6、40位の人が23、41位の人が24、60位の人が38、61位の人が39、80位の人が50、81位の人が51、100位の人が77であったとすると、下記表1のようにまとめられる。
例えば、表1の場合、判定基準は、ぶれ評価値の差の範囲が0〜5の場合はランクA、6〜23の場合はランクB、24〜38の場合はランクC、39〜50の場合はランクD、51を超える場合はランクEとなる。そして下記表2に示すように、各ランクについて判定結果が対応付けられて記憶される。
例えば、測定対象者のぶれ評価値の差が45であったとすると、判定手段(8)は測定対象者の安全運転能力を「ランクD:安全運転能力がやや低い。」と判定し、その結果をディスプレイ等に表示する。
測定対象者が車両を運転する(S1)と、走行軌跡データ取得手段(3)により車両の走行軌跡データが取得される(S2)とともに、計測手段(5)により車両のハンドルのハンドル回転角が計測される(S3)。また、負荷手段(4)により運転中の測定対象者に対して注意力を分散させる負荷が所定時間間隔で与えられる(S4)。
本発明の第二実施形態に係る自動車安全運転能力測定システムは、測定対象者(1)が運転する車両(2)の走行軌跡データを取得する走行軌跡データ取得手段(3)と、前記車両のハンドル回転角を計測する計測手段(5)と、前記ハンドル回転角を解析して操舵のぶれ評価値を算出する解析手段(6)と、前記走行軌跡データに基づいて、車両の走行時間帯のうち方向転換時を含む特定時間帯を抽出する時間帯抽出手段(7)と、前記特定時間帯において前記ぶれ評価値に基づいて測定対象者の安全運転能力を判定する判定手段(8)と、を備えている。
第二実施形態における判定手段(8)は、時間帯抽出手段(7)により抽出された特定時間帯において、解析手段(6)により算出されたぶれ評価値に基づいて測定対象者の安全運転能力を判定する。
制御ユニット(9)を構成するコンピュータのメモリには、時間帯抽出手段(7)により抽出された前記特定時間帯において、解析手段(6)により算出されたぶれ評価値に基づいて測定対象者の安全運転能力を判定するためのプログラム(判定プログラム)が記憶されている。コンピュータは、CPUがメモリに記憶された判定プログラムを読み出して実行することによって、判定手段(8)として機能する。
予め幅広い年代(若者から高齢者まで)の多数の被検者に、本発明のシステムを利用して自動車教習所内等のテストコースで運転してもらい、ぶれ評価値のサンプリングデータを取得する。このサンプリングデータをぶれ評価値の小さい方から順番に並べる。そして例えば、上位20%の順位に含まれる範囲をランクA、上位20%超40%以下の順位に含まれる範囲をランクB、上位40%超60%以下の順位に含まれる範囲をランクC、上位60%超80%以下の順位に含まれる範囲をランクD、上位80%超100%以下の順位に含まれる範囲をランクEと規定する。
ここで、理解を容易にするため、ぶれ評価値が0以上の整数値で表わされ、被検者数が100名であり、ぶれ評価値の小さい方から1位の人のぶれ評価値が0、20位の人が10、21位の人が11、40位の人が33、41位の人が34、60位の人が49、61位の人が50、80位の人が70、81位の人が71、100位の人が97であったとすると、下記表3のようにまとめられる。
例えば、表3の場合、判定基準は、ぶれ評価値の範囲が0〜10の場合はランクA、11〜33の場合はランクB、34〜49の場合はランクC、50〜70の場合はランクD、71を超える場合はランクEとなる。そして下記表4に示すように、各ランクについて判定結果が対応付けられて記憶される。
例えば、測定対象者のぶれ評価値が25であったとすると、判定手段(8)は測定対象者の安全運転能力を「ランクB:安全運転能力がやや高い。」と判定し、その結果をディスプレイ等に表示する。
測定対象者が車両を運転する(S1)と、走行軌跡データ取得手段(3)により車両の走行軌跡データが取得される(S2)とともに、計測手段(5)により車両のハンドル回転角が計測される(S3)。
本発明の第三実施形態に係る自動車安全運転能力測定システムは、測定対象者(1)が運転する車両(2)の走行軌跡データを取得する走行軌跡データ取得手段(3)と、前記車両のハンドル回転角を計測する計測手段(5)と、前記ハンドル回転角を解析して操舵のぶれ評価値を算出する解析手段(6)と、前記走行軌跡データに基づいて、車両の走行時間帯のうち方向転換時を含む特定時間帯を抽出する時間帯抽出手段(7)と、運転中の交通量、時刻、路面状態の少なくとも1つ以上の条件に関する情報を取得する情報取得手段(10)と、前記特定時間帯において前記情報取得手段により取得された情報に含まれる条件が所定の特定条件に該当する場合と該当しない場合におけるぶれ評価値を比較して、両方の場合のぶれ評価値の差の程度に基づいて測定対象者の安全運転能力を判定する判定手段(8)と、を備えている。
情報取得手段(10)の速度センサは、上述した走行軌跡データ取得手段(3)が備える速度センサと兼用することができる。
情報取得手段(10)のメモリは、上述した制御ユニット(9)を構成するコンピュータのメモリと兼用することができる。
制御ユニット(9)を構成するコンピュータのメモリには、速度センサにより計測された走行速度と上記メモリに予め記録された通常時の走行速度とを比較し、計測された走行速度が通常時の走行速度に比べて所定速度以上遅い(例えば20km/h以上遅い)場合に「交通量が多い」と判断するためのプログラム(交通量判断プログラム)が記憶されている。通常時の走行速度としては、例えば過去に同じ車両が同じ道を走行した時の複数回の速度の平均値が使用される。コンピュータは、CPUがメモリに記憶された交通量判断プログラムを読み出して実行することによって、交通量判断手段として機能する。
制御ユニット(9)を構成するコンピュータのメモリには、計測手段により計測された時間又は距離とメモリに記録された通常時の時間又は距離とを比較し、計測された時間又は距離が通常時の時間又は距離に比べて所定時間以上長い又は所定距離以上長い場合に「路面状態が悪い」と判断するためのプログラム(路面状態判断プログラム)が記憶されている。コンピュータは、CPUがメモリに記憶された路面状態判断プログラムを読み出して実行することによって、路面状態判断手段として機能する。
制御ユニット(9)を構成するコンピュータのメモリには、時間帯抽出手段(7)により抽出された前記特定時間帯において、該当状態と非該当状態における前記ぶれ評価値を比較して、両状態のぶれ評価値の差の程度に基づいて測定対象者の安全運転能力を判定するためのプログラム(判定プログラム)が記憶されている。コンピュータは、CPUがメモリに記憶された判定プログラムを読み出して実行することによって、判定手段(8)として機能する。
判定手段(8)を構成する上記判定プログラムは、運転中の該当状態と非該当状態とを自動的に判別する機能を発揮する。判別方法としては、情報取得手段(10)により取得された情報を利用して下記判別基準に基づいて判別する方法を例示することができる。
情報取得手段(10)により取得された情報に含まれる条件が、運転中の交通量である場合、所定の特定条件としては、上述した交通量判断手段により「交通量が多い」と判断される条件が使用される。従って、この場合、所定の特定条件に該当する場合は「交通量が多い」と判断された場合であり、該当しない場合は「交通量が多い」と判断されない場合である。
情報取得手段(10)により取得された情報に含まれる条件が、運転中の時刻である場合、所定の特定条件としては、時刻が夜間であるという条件が使用される。「夜間」の時刻は予め定義されてメモリに記憶されており、例えば「4月〜9月は午後7時〜午前6時、1月〜3月と10月〜12月は午後6時〜午前7時」と定義される。従って、この場合、所定の特定条件に該当する場合は「夜間」に該当する時刻である場合であり、該当しない場合は「夜間」に該当しない時刻である場合である。
情報取得手段(10)により取得された情報に含まれる条件が、運転中の路面状態である場合、所定の特定条件としては、上述した路面状態判断手段により「路面状態が悪い」と判断される条件が使用される。従って、この場合、所定の特定条件に該当する場合は「路面状態が悪い」と判断された場合であり、該当しない場合は「路面状態が悪い」と判断されない場合である。
測定対象者が車両を運転する(S1)と、走行軌跡データ取得手段(3)により車両の走行軌跡データが取得される(S2)とともに、計測手段(5)により車両のハンドルのハンドル回転角が計測される(S3)。また、情報取得手段(10)により、運転中における、交通量、時刻、路面状態の少なくとも1つ以上の条件に関する情報が取得される(S4)。
2 車両
3 走行軌跡データ取得手段
4 負荷手段
5 計測手段
6 解析手段
7 時間帯抽出手段
8 判定手段
9 制御ユニット
10 情報取得手段
Claims (3)
- 測定対象者が運転する車両の走行軌跡データを取得する走行軌跡データ取得手段と、
前記車両のハンドル回転角を計測する計測手段と、
前記ハンドル回転角を解析して操舵のぶれ評価値を算出する解析手段と、
前記走行軌跡データに基づいて、車両の走行時間のうち方向転換時を含む特定時間を抽出する時間抽出手段と、
前記特定時間において、前記ぶれ評価値に基づいて測定対象者の安全運転能力を判定する判定手段と、
運転中の交通量、時刻、路面状態の少なくとも1つ以上の条件に関する情報を取得する情報取得手段を備えており、
前記判定手段は、前記特定時間において、前記情報取得手段により取得された情報に含まれる条件が所定の特定条件に該当する場合と該当しない場合における前記ぶれ評価値を比較して、両方の場合のぶれ評価値の差の程度に基づいて測定対象者の安全運転能力を判定する、
ことを特徴とする自動車安全運転能力測定システム。 - 運転中の測定対象者に対して注意力を分散させる負荷を与える負荷手段を備えており、
前記判定手段は、前記特定時間において、負荷状態と無負荷状態における前記ぶれ評価値を比較して、両状態のぶれ評価値の差の程度に基づいて測定対象者の安全運転能力を判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の自動車安全運転能力測定システム。 - 前記ぶれ評価値は、計測したハンドル回転角の微分値の絶対値の平均もしくは、ステアリングエントロピー値で表されるいずれかのハンドル回転角の滑らかさを評価する指標値であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車安全運転能力測定システム。
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