前記課題を解決するためになされた本発明は、親機と、前記親機との間で確立された所定周期の同期タイミングに基づいて無線回線を通じて電波を送受信するマイクとを備えるワイヤレスマイクシステムであって、前記マイクは、前記所定周期と等しい周期に設定された音声取り込み期間毎に取得した音声信号を圧縮処理して圧縮信号を生成する音声処理部と、前記圧縮信号を前記同期タイミングに基づいて前記親機に周期的に送信する無線部と、を備え、前記音声処理部は、前記同期タイミングに基づいて前記圧縮処理を開始するタイミングを決定するようにしたものである。
これによって、時分割多元接続によって親機との間で動的に同期が確立されたマイクにおいて、圧縮信号を親機に送信するタイミングである同期タイミングに基づいて、音声信号の圧縮処理を開始するタイミングを決定することで、親機には圧縮処理が完了した直後に圧縮信号が送信されるため、使用者がマイクに音声を入力してから、親機で音声が再生され始めるまでの遅延時間を短縮することが可能となる。
また、本発明は、前記音声処理部は、前記同期タイミングに基づいて前記音声取り込み期間の始期を決定するようにしたものである。
これによって、音声取り込み期間は一定の周期で発生し、ハードウェアの動作タイミングを一定に保ち、更に音声信号を一時的に格納するバッファメモリの容量を削減することが可能となる。
また、本発明は、前記親機および前記マイクは、時分割多元接続によってデータの送受信を実行し、前記時分割多元接続のフレーム期間には複数の送信スロットが含まれ、前記複数の送信スロットには、前記マイクから前記親機へ前記圧縮信号を送信する第1マイク送信スロットが含まれ、前記音声処理部は、前記第1マイク送信スロットの直前の送信スロットの期間中に、前記圧縮処理が完了するように前記圧縮処理を開始するタイミングを決定するようにしたものである。
これによって、親機には圧縮処理が完了した直後に設定された第1マイク送信スロットで圧縮信号が送信されるため、DECT方式のような同期伝送を行うシステムにおいて、使用者がマイクに音声を入力してから、親機で音声が再生され始めるまでの遅延時間を短縮することが可能となる。
また、本発明は、前記音声処理部は、前記音声取り込み期間の終期よりも前に前記圧縮処理を開始するようにしたものである。
これによって、音声の取り込みと圧縮処理とを並列に実行することで、遅延時間を更に短縮することが可能となる。
また、本発明は、前記時分割多元接続のフレーム期間には、前記第1マイク送信スロットと1つのチャネルを構成して前記親機から前記マイクへデータを送信する子機受信スロットとが含まれ、前記親機は、前記時分割多元接続のフレーム期間において、前記子機受信スロットを、前記マイクから前記親機へ前記圧縮信号を送信する第2マイク送信スロットに変更し、前記マイクは前記第1マイク送信スロットおよび前記第2マイク送信スロットを用いて前記圧縮信号を送信するようにしたものである。
これによって、本来の子機受信スロットを第2マイク送信スロットとして用いることで、1つのフレーム期間中に2回のマイク送信スロットが設けられ、同期タイミング、音声取り込み期間も2つ設けられることから、遅延時間を更に短縮することが可能となる。
また、本発明は、前記親機は、前記フレーム期間において、前記第1マイク送信スロットと前記第2マイク送信スロットとの中間のタイミングに、更に第3マイク送信スロットを設定するようにしたものである。
これによって、各フレーム期間にはより多数の同期タイミングが設定される。これによって、遅延時間を更に短縮することが可能となり、更にハードウェアの動作タイミングが一定化され、安定した動作が確保される。
また、本発明は、前記親機は、前記フレーム期間において、前記親機から前記マイクに少なくともエラー情報を通知するエラー通知スロットを設定するようにしたものである。
これによって、遅延時間を短縮しつつ、更にマイクと親機との間で伝送エラーの発生を相互に把握することが可能となる。
また、本発明は、前記親機は、前記フレーム期間毎に前記マイクとの間で同期を維持する制御スロットを設定し、前記制御スロットの一部を、少なくともエラー情報を通知するエラー通知スロットとして用いるようにしたものである。
これによって、独立したエラー通知スロットを設けることなく、親機はマイクにエラーの発生を通知することが可能となる。
また、本発明は、前記親機は、前記エラー通知スロットにおいて、データビットフィールドを更に付加して送信するようにしたものである。
これによって、制御スロットで送信する制御信号の制御ビットフィールドに空きがない場合であっても、親機はマイクにエラーの発生を通知することが可能となる。
また、本発明は、前記親機は、複数の前記フレーム期間で構成されるマルチフレーム期間において、前記エラー通知スロットを1度送信するようにしたものである。
これによって、通常はマイクと親機との間で、識別符号を送受信して双方のペアリングを確保しつつ、伝送エラーが発生したときは、マイクにエラーの発生を通知することが可能となる。
また、本発明は、前記親機は、前記マイクから受信した前記圧縮信号に伝送エラーが含まれるか否かを検出する親機制御部を備え、前記親機制御部は、前記圧縮信号に伝送エラーが含まれることを検出すると、前記子機との間で前記同期タイミングを再確立し、前記無線部は、前記親機との間で再確立された同期タイミングに基づいて、前記圧縮信号を前記親機に周期的に送信し、前記音声処理部は、前記再確立された同期タイミングに基づいて、前記圧縮処理を開始するタイミングを決定するようにしたものである。
これによって、伝送エラーが発生したときに送受信で用いるスロット(即ち同期タイミング)が変更されても、圧縮処理開始タイミングが動的に変更され、常に遅延時間を短縮することが可能となる。
また、本発明は、前記親機は、前記マイクから受信した圧縮信号を伸長処理して音声信号を生成する親機音声処理部を更に備え、前記親機制御部が、前記マイクから受信した前記圧縮信号に伝送エラーが含まれることを検出した場合、前記親機音声処理部は、前記再確立した同期タイミングに基づいて前記音声信号が生成されるまでの期間、音声信号の再生を停止するようにしたものである。
これによって、伝送エラーが発生した際に、親機に接続あるいは内蔵されたスピーカから異音が発生するのを防止することが可能となる。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係るワイヤレスマイクシステム1におけるマイク2と親機3との関係を示す説明図である。図1に示すように、ワイヤレスマイクシステム1は、マイク2と親機3とスピーカ29とで構成される。マイク2はマイクアンテナ12を、親機3は親機アンテナ22を備え、マイク2と親機3とは両者の間で確立された所定周期の同期タイミングに基づいて無線回線を通じて音声信号や制御信号を送受信する。使用者はマイク2に音声を入力すると、その音声信号が無線回線を通じて親機3に送信され、親機3に接続されたスピーカ29から音声が再生される。なお、スピーカ29は親機3に内蔵されていてもよい。
第1実施形態では、主にDECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)方式に準拠してデータを送受信するワイヤレスマイクシステム1を例示して説明する。DECTは2011年に策定されたディジタルコードレス電話機の標準規格であり、1.9GHz帯(1,895,616KHz〜1,902,528KHz)の周波数を使用し、通信方式はTDMA−WB(時分割多元接続方式)を採用している。DECTでは他機器との電波干渉による通信障害を低減できることや、使用する周波数帯である1.9GHzは無線LANや電子レンジと干渉しないので、ファクスや電話による通話品質を維持できるとされている。またDECTは、広帯域の音声データ等を通信できる方式として知られ、周波数チャネルの使用状況を常時モニタリングし、ワイヤレスマイクシステム1自身が最適なチャネルを選択することで効率良く周波数帯域を利用できる。第1実施形態では、マイク2がディジタルコードレス電話機における子機として機能する。
図2は、ワイヤレスマイクシステム1におけるマイク2の概略構成を示すブロック構成図である。以降、図2を用いてマイク2の全体構成について説明する。マイク2は、マイク制御部10と、マイク無線部11と、マイク無線部11に接続されたマイクアンテナ12と、ユーザインタフェースとしての音質設定ボタンや電源をON/OFFするスイッチを含む操作部13と、操作部13による設定内容等を表示する表示部14と、不揮発性メモリで構成された記憶部15と、マイク2の各構成要素に電源を供給する電池16と、デュアルポートRAM(Random Access Memory)で構成されてリングバッファとして機能するメモリ17と、マイク音声処理部18と、音声を入力するマイクロフォン19とで構成される。
マイク制御部10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を備え、CPUは制御プログラム等を格納したROM(Read Only Memory)やEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)で構成された記憶部15とバス等で結合されている。マイク制御部10は制御手段としてマイク2の全体を制御しており、例えば上述した音質設定ボタンが押下された否かはマイク制御部10によって検出され、押下の有無が認識される。また、マイク制御部10は、マイク無線部11やマイク音声処理部18にアクセスして、これらの動作タイミングを設定する。
図3は、マイク音声処理部18およびその周辺構成を示すブロック構成図である。マイク音声処理部18は、A/D変換部18aと、ディジタルスピーチプロセッサ18bと、圧縮処理部18cとで構成される。以降、マイクロフォン19に入力された音声を圧縮処理するまでの信号処理について説明する。
マイクロフォン19に入力された音声は、図示しない増幅器によって所定の信号レベルに増幅されアナログ音声信号が生成される。アナログ音声信号はA/D変換部18aに出力され、A/D変換部18aによってディジタル音声信号に変換されて、ディジタルスピーチプロセッサ18bに入力される。ディジタルスピーチプロセッサ18bはディジタル音声信号に対して、人の聴覚範囲外の周波数成分の除去、平滑化、暗号化等を実行する。もちろん、マイク2の入力ソースとして音楽等を対象とする場合は、ディジタルスピーチプロセッサ18bによる音声信号処理の内容を適宜変更することができる。
ディジタルスピーチプロセッサ18bにおける信号処理は、一般的には畳み込み演算によるフィルタリング処理を基本とすることが多く、これらの信号処理に特化したDSP(Digital Signal Processor)等で構成してもよく、もちろん図示しないCPUとディジタルスピーチプロセッサ10cとを1つのプロセッサで構成してもよい。ディジタルスピーチプロセッサ18bで処理されたディジタル音声信号は、メモリ17に一時的に格納される。
メモリ17に格納されたディジタル音声信号は圧縮処理部18cに出力される。圧縮処理部18cは、ディジタルスピーチプロセッサ10cの出力を符号化する。圧縮処理部18cは、例えばCELP(Code Excited Linear Prediction coder)方式によって音声信号に対して圧縮処理を行い、圧縮信号を生成する。この圧縮処理はDECT方式の1フレーム期間(一般には10msの周期で設けられる)と同期して実行され、圧縮処理部18cは、圧縮処理を開始する直前の10ms(音声取り込み期間)の間にメモリ17に格納されたディジタル音声信号を圧縮処理する。このように、1フレーム期間と音声取り込み期間とは同一周期に設定されるが、後述するように、それぞれが開始されるタイミングは時間的にシフトしている。
圧縮処理部18cで圧縮処理された圧縮信号は、再度メモリ17に一時的に格納されて、マイク無線部11に出力される。ここでは、圧縮される前のディジタル音声信号と圧縮信号とを同一のメモリ17に格納しているが、これらを個別に設けても構わない。
図4は、マイク無線部11およびその周辺構成を示すブロック構成図である。マイク無線部11は、フレーム処理部11aと、アンプモジュール11bと、変調/復調部11cとで構成される。以降、メモリ17に格納された圧縮信号をマイク無線部11から送信するまでの信号処理について説明する。
なお、マイク2はマイク音声処理部18で生成した圧縮信号を親機3に送信するとともに、親機3から制御信号を受け取っており、この観点ではマイク2は親機3との間で双方向にデータを送受信する。なお、双方向にデータを送受信することから、マイク無線部11と親機3における親機無線部21とは共通の構成を備えている。
フレーム処理部11aは、図示しないTDD/TDMA(Time Division Duplex/Time Division Multiple Access)プロセッサを備えている。TDD/TDMAプロセッサは、周期的に設けられたフレーム内をスロットと呼ばれる単位に分割して、同一周波数において複数の通信を可能にする(時分割多元接続)。このように同一周波数を共有して、ごく短い間にデータ送受信を行うため、実質的に送信と受信とを同時に実行しているかのように見せることができる。更に、TDMAでは、周波数帯域を分割するFDMA(Frequency Division Multiple Access:周波数分割多元接続)を併用することにより、多数のチャンネルを確保し、かつ周波数の干渉を避けることができる。このようにフレーム処理部11aは、短時間のうちに送信(Tx)と受信(Rx)とを周期的に切り替えている。なお、DECTのフレームの構造については、後に説明する。
マイク制御部10は、フレーム処理部11aを制御して、マイク2が親機3に圧縮信号を送信する送信タイミングを設定する。上述したように、親機3の親機無線部21はマイク無線部11と同様の構成を備えており、親機3においても、マイク2と同一のタイミングで受信タイミングが設定されて、マイク2から送信された圧縮信号を受信する。
以降、マイク2が親機3に圧縮信号の送信を開始するタイミング(親機3がマイク2から送信された圧縮信号の受信を開始するタイミングでもある)、を「同期タイミング」と呼称する。なお、後述するように、DECT方式ではスロットの単位でデータが送受信され、圧縮信号を送受信する一のスロットは対となる他のスロットとチャネルを構成する。以降の説明では、この他のスロットが生成されるタイミングも「同期タイミング」に含むものとする。即ち、「同期タイミング」とは、「送受信に使用するスロットを生成するタイミング」を意味するものである。
フレーム処理部11aには、同期制御部11dが設けられている。同期制御部11dは、マイク2の送信タイミングおよび親機3の受信タイミングを整合させて、同期タイミングを確立する。例えば電源投入当初において、マイク2は自律的に所定のタイミングで受信動作を行っており、その際に、同期制御部11dが親機3の同期要求(同期を図るべきスロットのタイミングからどれだけずれているかの相対値がデータとして含まれる制御信号を複数のフレーム期間にわたって連続送信する)を受信すると、そのずれを補正するように圧縮信号の送信タイミングを決定し、フレーム処理部11aは、この補正された送信タイミングに応じて信号処理のハードウェアの調停等を行う。親機3は予め各チャネルをスキャンして混信の少ないスロットを選択した上で同期要求を行っており、これによって、マイク2が親機3を特定して圧縮信号を送信するスロットが決定され、同期タイミングが確立する。
また、フレーム処理部11aには図示しないD/A変換器とA/D変換器とが内蔵されている。フレーム処理部11aは、メモリ17を介して入力された圧縮信号を、D/A変換器によってアナログ信号に変換してアンプモジュール11bに出力し、他方、親機3から無線回線を介して入力されアンプモジュール11bで増幅されたアナログ信号(受信信号)をA/D変換器によってディジタル信号に変換する。このように、フレーム処理部11aと変調/復調部11cとの間には、アンプモジュール11bを含むアナログ信号のインタフェースが構成されている。
変調/復調部11cでは、アンプモジュール11bが出力した送信信号(アナログ信号)を図示しない送信回路を介してマイクアンテナ12から放出し、他方、マイクアンテナ12によって受信した受信信号(アナログ信号)を図示しない受信回路を介してアンプモジュール11bに出力する。
図5は、ワイヤレスマイクシステム1における親機3の概略構成を示すブロック構成図である。以降、図5を用いて親機3の全体構成について説明する。
親機3は、親機制御部20と、親機無線部21と、親機無線部21に接続された親機アンテナ22と、ユーザインタフェースとしての音量ボリュームや電源スイッチを含む操作部23と、操作部23による設定内容等を表示する表示部24と、不揮発性メモリで構成された記憶部25と、親機3の各構成要素に電力を供給する電源26と、デュアルポートRAMで構成されてリングバッファとして機能するメモリ27と、親機音声処理部28と、音声を再生するスピーカ29と、外部インタフェース部30とで構成される。
親機3は、外部インタフェース部30によって図示しない電話回線に接続されており、電話回線を介して他の機器との間で音声信号をやりとりする。親機3は無線回線を介してマイク2から音声信号を受信しており、これによってマイク2は親機3を経由して電話回線に音声信号を伝送することができる。なお、外部インタフェース部30はインターネット等のネットワークに接続にされていてもよく、この場合は、ネットワークを介して音声信号を配信することができる。
親機制御部20は、上述したマイク制御部10(図2参照)と同様の構成を備え、不揮発性メモリで構成される記憶部25とバス等で結合されている。親機制御部20は制御手段として親機3の全体を制御しており、操作部23を介して入力された操作内容は親機制御部20によって検出される。また、親機制御部20は、親機無線部21や親機音声処理部28にアクセスして、これらの動作タイミングを設定する。また、親機制御部20は、マイク2から送信された圧縮信号の伝送エラーを検出する。具体的には、親機無線部21(図4参照)がマイク2から送信された圧縮信号を受信した際に、エラー検出フィールド(後述するCRC2フィールド54(図7参照))を参照することで、伝送エラーの有無が検出される。
図6は、親機音声処理部28およびその周辺構成を示すブロック構成図である。親機音声処理部28は、伸長処理部28aと、ディジタルスピーチプロセッサ28bと、D/A変換部28cとで構成される。以降、マイク2から受信した圧縮信号をスピーカ29で再生するまでの信号処理について説明する。なおここでは、圧縮信号は既に親機無線部21を介してメモリ27に格納されているものとする。
メモリ27に格納された圧縮信号は伸長処理部28aに出力され、伸長処理部28aはスロット単位で受信されてメモリ27に格納された圧縮信号をディジタル音声信号に伸長(復号)する。この伸長処理はDECT方式の1フレーム期間と同期して実行され、伸長処理部28aは、伸長処理を実行した直後の10ms(音声再生期間)の間に親機3で再生すべきディジタル音声信号を生成する。このように、1フレーム期間と音声再生期間とは同一周期に設定されるが、後述するように、それぞれが開始されるタイミングは時間的にシフトしている。
伸長処理部28aで伸長処理されたディジタル音声信号は、再度メモリ27に一時的に格納されて、ディジタルスピーチプロセッサ28bに出力される。ここでは、伸長される前の圧縮信号と伸長後のディジタル音声信号とを同一のメモリ27に格納しているが、これらを個別に設けても構わない。
ディジタルスピーチプロセッサ28bは、伸長後のディジタル音声信号に対して、特定音声周波数の強調処理(マイク2のディジタルスピーチプロセッサ18bのフィルタ処理で除去された周波数成分の復元)や、ディジタル音声信号が暗号化されている場合は復号化等を実行する。ディジタルスピーチプロセッサ28bはディジタル音声信号をD/A変換部28cに出力する。
ディジタル音声信号は、D/A変換部28cに入力されアナログ音声信号に変換される。アナログ音声信号は図示しない増幅器によって増幅されて、スピーカ29によって再生される。
上述したように親機無線部21の基本的な構成および機能は、図4を用いて説明したマイク無線部11と実質的に同じである。よって親機3におけるこれらの詳細な説明は省略する。
図7(a)、(b)、(c)は、DECTのフレーム構成を説明する説明図である。図7(a)に示すように、DECT方式では一般的に10ms周期の1フレーム期間に24スロット(アップリンク用に12スロット、ダウンリンク用に12スロット)を含んで構成される。通常は、スロットS0〜スロットS11は親機3からマイク2(以降、DECTのスロット構成や、データの送受信シーケンスを説明する際に、マイク2を「子機2」と呼称することがある)への通信に使用され、スロットS12〜スロットS23は子機2から親機3への通信に使用される。即ちこの例では、子機2側からみると、S0〜S11はそれぞれ子機受信スロット61であり、S12〜S23はそれぞれ子機送信スロット60である。親機3と子機2との間の通信では、スロットS0およびスロットS12、スロットS1およびスロットS13のように5ms離れた位置関係にあるスロットを組み合わせて(ペアスロット)使用され、このペアスロットが1つのチャネルを構成する。
なお、DECT方式では、時分割多元接続方式における1搬送波当たりのチャネルの数は6、7、8、9、10、11または12が許容されており、親機3と子機2とが使用するチャネルの数は上述した同期タイミングを確立する際に決定される。
そして、親機3から子機2へ送信が行われる12スロット(子機受信スロット61)の中の少なくとも1つのスロット(例えばスロットS0)は制御信号を送るための制御スロットとされている。制御信号は、フレーム内の1つのスロットで親機3から常時(周期的に)送信される。なお、親機3から子機2への制御通信中に電波干渉が発生したときなどに備えて、遊休中のスロット(例えば、スロットS0)を制御スロットとして使用している場合は、スロットS1〜スロットS11について、そのスロットが他機器により使用されているか否か(即ち混信の有無)を検出し、実際にスロットS0で電波干渉等が発生した場合は、制御スロットをスロットS1に移してもよい。そして、これと連動して、制御スロットに対する応答スロット(制御スロットに対する応答に用いられるスロット。子機2から親機3へのデータ送信の際に使用する)はスロットS13に設定される。
また、制御スロットとは別に、親機3と子機2との間で音声信号等を送受信するスロットが決定され、これによって上述した「同期タイミング」が確立する。制御スロットや音声信号等を送受信するスロットとしてどのスロットを使用するかは、親機3と子機2とが送受信を行う際の電波状況等に応じて動的に決定される。
図7(b)に示すように、各スロットはそれぞれ416.67μs(=10ms/24)幅で規定され、各スロットでは同期信号フィールド50と、制御ビットフィールド51と、CRC1フィールド52と、データビットフィールド53と、CRC2フィールド54とが規定されている。
同期信号フィールド50は、ビット同期を取るためのデータ列とスロット同期を取るためのデータ列とから構成される固定データを含んでいる。CRC1フィールド52には、制御ビットフィールド51のデータ列に基づいて算出されたCRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)符号が書き込まれ、制御ビットフィールド51の伝送誤りを検出する。CRC2フィールド54は、同様にしてデータビットフィールド53の伝送誤りを検出する。
図7(c)に示すように、制御ビットフィールド51は、ヘッダ51aとメッセージ領域51bとから構成される。メッセージ領域51bは親機3から子機2に制御信号を渡すためのフィールドであり、発呼・着呼時および待ち受け時等に必要な制御信号をやりとりする。具体的には、制御信号には識別情報(いわゆるID)、機器能力、通信品質、呼設定や切断、伝送誤りが検出された際の再送制御信号、送受信に使用するスロットを変更する際に新たに使用するスロットに関する情報などを付加することができる。
一方、データビットフィールド53は、音声信号、画像信号等のパケットを格納するフィールドである。ワイヤレスマイクシステム1において、子機2から親機3へ圧縮信号を送信する際は、データビットフィールド53に圧縮信号のビット列が書き込まれる。
図8(a)は、親機3における信号処理のタイミングを決定する過程を示すフロー図、図8(b)は、マイク2における信号処理のタイミングを決定する過程を示すフロー図である。以降、図8(a)、(b)を用いて、第1実施形態のワイヤレスマイクシステム1における信号処理の過程について説明する。
DECT方式の性質上、親機3とマイク2とは互いに連携して動作するため、図8(a)、(b)の処理は同時進行する。以降、親機3およびマイク2の各処理が同時進行する前提で説明する。親機3の電源を投入すると、親機3は音声通信が開始されているかを確認する(ST801)。具体的には、親機3は所定の周期(例えば2秒)で、少なくも子機2の初期の受信周期よりも長期にわたって上述した同期要求を継続して送信する。この同期要求に対してマイク2が応答を返すと、音声通信が開始されたと判断する。また、親機3は音声通信が開始されたと判断すると(ST801でYes)、送受信に使用するスロットが決定されたか否かを判定する(ST802)。音声通信が開始されない場合はST801に戻る。
マイク2においても音声通信が開始されている否かを確認する(ST811)。具体的には、マイク2は親機3から送信された同期要求を検出した時点で音声通信が開始されたと判定する。音声通信が開始されたと判断すると(ST811でYes)マイク2は送受信に使用するスロットが決定されたか否かを判定する(ST812)。音声通信が開始されない場合(ST811でNo)はST811に戻る。
上述したように、親機3(親機無線部21(図5参照))は混信などの影響が少ないと判断したスロット(チャネル)を選択する。そして、親機無線部21が送信する同期要求には選択されたスロットとの相対的な時間差情報が含まれる。マイク無線部11(図2参照)は電源投入後に所定の周期(初期の受信周期。例えば0.5秒)で親機3からの信号を受信して、同期要求に含まれる時間差情報を取得する。そして、マイク無線部11はこの時間差情報に基づいて、マイク2が親機3との間で送受信に使用するスロットを決定、即ち「送受信に使用するスロットを生成するタイミング」を決定する。具体的には、親機無線部21がマイク2に送信した同期要求に含まれる時間差情報は、マイク無線部11のフレーム処理部11a(図4参照)に設けられたA/D変換器(図示せず)で数値データに変換され、マイク無線部11は、この時間差情報を実際に受信したタイミングに、時間差情報の数値データを加算することで、同期タイミングを決定する。そしてマイク無線部11は親機3が選択したスロットで送受信を行うことを親機3に通知する。
即ち、マイク無線部11はST812において、時間差情報に基づいて送受信を行うスロットを決定した際に使用スロットが決定されたと判断する。また、親機無線部21はST802において、親機無線部21が選択したスロットで送受信を行う旨を通知した際に、使用スロットが決定されたと判断する。使用スロットが決定されない場合(ST802、ST812でNo)は、親機3ではST802に戻り、マイク2ではST812に戻る。
使用スロットが決定された場合(ST802でYes)は、親機無線部21は、親機制御部20に送受信に使用スロットを生成するタイミングを通知する(ST803)。親機無線部21は送受信に使用するスロットを自ら指定しており、同期タイミングは既知の情報である。
一方、マイク無線部11は、使用スロットが決定された場合(ST812でYes)は、マイク制御部10に同期タイミングを通知する(ST813)。同期タイミングはマイク制御部10に渡されて記憶部15(図2参照)に記憶される。
次に、親機無線部21は、親機音声処理部28に同期タイミングを通知する(ST804)。なお、同期タイミングは上述のように親機制御部20に渡されているので、親機制御部20によって親機音声処理部28に設定されるようにしてもよい。この同期タイミングの通知は、図5に破線で示したパスが相当する。
一方、マイク無線部11は、マイク音声処理部18に同期タイミングを通知する(ST814)。なお、同期タイミングは上述のようにマイク制御部10に渡されているので、マイク制御部10によってマイク音声処理部18に設定されるようにしてもよい。この同期タイミングの通知は、図2に破線で示したパスが相当する。
次に、親機音声処理部28は通知された同期タイミングに基づいて、伸長処理部28a(図6参照)における伸長処理の開始タイミングを決定する(ST805)。または、使用するスロットを決定した後に1回のみ音声伸張信号の再生タイミングを決定し、以後は同期タイミングに基づいて伸張処理の開始タイミングを決定するようにしてもよい。また、マイク音声処理部18は通知された同期タイミングに基づいて、圧縮処理部18c(図3参照)における圧縮処理の開始タイミングを決定する(ST815)。マイク音声処理部18においても、使用するスロットを決定した後に1回のみ音声伸張信号の再生タイミングを決定し、以後は同期タイミングに基づいて伸張処理の開始タイミングを決定するようにしてもよい。
図9は、同期タイミングとマイク2で圧縮処理を開始するタイミングと親機3で伸長処理を開始するタイミングとの関係を説明する説明図である。なお、図9においてはスロット構成にはスロットの番号のみを表示しているが、上述してきたように、スロットS0のように記載する。また、図9においては説明を簡単にするために、上述した制御スロットおよびこれに応答するスロットについては図示を省略している(図10、図12、図13、図15、図18において同じ)。
図9においては、図8を用いて説明したST801〜ST802(親機3)およびST811〜ST812(マイク2)の過程を経て同期タイミングが確立されており、更に、ST803〜ST805(親機3)およびST813〜ST815(マイク2)の過程を経て、親機音声処理部28では圧縮データの伸長を開始するタイミングが決定され、かつマイク音声処理部18ではディジタル音声データの圧縮を開始するタイミングが決定されているものとする。
また、図9において、スロット構成に示す「子機送信スロット60」は、マイク2が親機3に対して圧縮信号を送信する際に使用可能なスロットを、「子機受信スロット61」は、マイク2が親機3から制御信号等を受信する際に使用可能なスロットを意味する。図9に示すように、マイク2と親機3とは同期タイミングTS1およびTS2で同期が確立されており、マイク2は、同期タイミングTS1を始期とするスロットS16(第1マイク送信スロット)を用いて親機3へ圧縮信号を送信する。なお、「音声圧縮フレーム」とは、圧縮処理に供せられるディジタル音声信号を取り込む期間を意味し、ここでは同期タイミングTS1の周期と等しく10ms周期に設定されている。
上述したように、マイク音声処理部18では、同期タイミング(ここではTS1)に基づいて圧縮処理部18c(図3参照)で圧縮処理を開始するタイミングが決定されている。圧縮処理に要する時間は圧縮アルゴリズムが実行する操作の回数に比例する。CELPでは音質の設定に応じてフレーム長、圧縮率、ビットレートが既知であるため、操作回数も既知であり、予め処理時間を計算しておくことができる。従って、同期タイミングTS1が決定すれば、これに基づいて圧縮処理を開始するタイミング(圧縮処理開始タイミングTC1)を、圧縮信号を送信するスロット(スロットS16)の始期(即ち、同期タイミングTS1)の直前に設定することができる。スロット構成との関係で言えば、圧縮処理開始タイミングTC1は、圧縮処理の完了(終期)が同期タイミングTS1を始期とするスロットS16の直前のスロットS15期間中となるように決定される。このようにすることで、親機3には圧縮処理が完了した直後に設定された同期タイミングTS1で圧縮信号が送信されるため、DECT方式のような同期伝送を行うシステムにおいて、使用者がマイク2に音声を入力してから、親機3で音声が再生され始めるまでの遅延時間を短縮することが可能となる。
なお、圧縮処理部18c(図3参照)は、音声圧縮フレームにおいてディジタル音声信号をメモリ17(図3参照)に取り込んだ直後に圧縮処理を実行することから、音声圧縮フレーム(音声取り込み期間)の終期TVG2は実質的に圧縮処理開始タイミングTC1と一致し、結果的に同期タイミングに基づいて音声圧縮フレームの始期TVG1も決定されることになる。これによって、音声圧縮フレームは一定の周期で発生し、ハードウェアの動作タイミングを一定に保ち、更に音声信号を一時的に格納するバッファメモリとして機能するメモリ17の容量を削減することが可能となる。
ワイヤレスマイクシステム1の使用者は、操作部13(図2参照)を操作して、音声信号の品質を選択できるようになっている。使用者が高音質を指定した場合、音声圧縮フレームにおけるサンプリング数が多くなるため、圧縮処理開始タイミングTC1はより早期に設定される。逆に使用者が低音質を指定した場合、音声圧縮フレームにおけるサンプリング数が少なくなるため、圧縮処理開始タイミングTC1はより遅く設定される。音質の設定によって、圧縮処理部18cが圧縮処理を開始するタイミングを変化させることで、音質の設定を変えても、遅延時間を短縮する効果が維持される。また、圧縮処理開始タイミングTC1の変更にともなって、音声圧縮フレーム期間(TVG1〜TVG2)の時間軸上の位置が前後にシフトする。
同期タイミングTS1を始期とするスロットS16を用いて圧縮信号は親機3に送信される。即ち、親機3が圧縮信号の受信を開始するタイミングも同期タイミングTS1となる。親機3は圧縮信号の受信が完了すると、伸長処理開始タイミングTE1で伸長処理部28a(図6参照)による伸長処理を開始してディジタル音声信号に変換する。伸長処理もサンプリング数に比例し、伸長に要する時間も予め算出しておくことが可能であり、伸長処理を実行した後に直ちに上述した親機音声処理部28によって音声を再生することで、音声が途切れなく再生される。
図9に示す「音声伸長フレーム」とは、伸長処理されたディジタル音声信号を再生する期間を意味する。伸長処理開始タイミングTE1はスロットS16の終期でもあり、図7を用いて説明したように、1つのスロット期間長は既知(416.67μs)であるから、結局、伸長処理部28aによる伸長処理も同期タイミングTS1に基づいて開始されることになる。音声伸長フレームは一定の周期(ここでは10ms)で発生し、ハードウェアの動作タイミングを一定に保ち、更に音声信号を一時的に格納するバッファメモリとして機能するメモリ27の容量を削減することが可能となる。
なお、図9に示すシーケンスにおいて、使用者がマイク2に音声を入力してから、親機3で音声が再生され始めるまでには、音声圧縮フレーム+圧縮処理時間+送信(受信)時間+伸長処理時間の遅延が生じるものの、圧縮処理の直後に圧縮信号が親機3に送信されることから、使用者がマイク2に音声を入力してから、親機3で音声が再生され始めるまでの遅延時間は最小限に抑えられる。
また、マイク2は、同期タイミングTS2を始期とするスロットS4を用いて親機3から送信されたエラー情報を受信する。このエラー情報には、親機3がマイク2から受信した圧縮信号にエラー(図7に示すCRC2フィールド54を用いて判定する)が検出された場合の通知の他に、電波状況が悪化して使用するスロットを変更する際に、新たに使用するスロット番号の情報等が含まれる。
図10は、同期タイミングとマイク2で圧縮処理を開始するタイミングと親機3で伸長処理を開始するタイミングとの関係の変形例を説明する説明図である。変形例においても、マイク音声処理部18では、同期タイミングTS1に基づいて圧縮処理部18c(図3参照)で圧縮処理を開始するタイミングが決定され、圧縮処理の完了(終期)が同期タイミングTS1を起点とするスロットS16の直前のスロットS15期間中となるように、圧縮処理開始タイミングTC1が決定される。
変形例では、圧縮方式としてADPCMのように逐次処理を行うアルゴリズムを想定している。この場合、図示するように、音声圧縮フレームの終期TVG2よりも前に設定された、圧縮処理開始タイミングTC1から圧縮処理を開始することができる。そして、圧縮処理の終期は音声圧縮フレームの終期TVG2と一致させている。上述したように、マイク2のメモリ17はデュアルポート構成であるから、マイク音声処理部18はディジタルスピーチプロセッサ18bの出力をメモリ17に書き込みながら、同時に圧縮処理部18cでメモリ17(いずれも、図3参照)の内容を読み出すこと、即ち、音声の取り込みと圧縮処理とを並列に実行することができる。
また変形例では、親機3の親機音声処理部28(図6参照)は、同期タイミングTS1において送信された圧縮信号の伸長処理を伸長処理開始タイミングTE1から開始するとともに、直ちに音声伸長フレームにおいて音声の再生を開始する。親機3においても、メモリ27はデュアルポート構成としているため、マイク2の場合と同様にメモリ27への書き込みと読み出しを並列して行うことができる。このように図10に示す変形例のシーケンスでは、使用者がマイク2に音声を入力してから、親機3で音声が再生され始めるまでに生じる遅延時間は、理論上、音声圧縮フレーム+送信(受信)時間+伸長処理時間となり、より遅延時間の短縮を図ることが可能となる。
変形例の構成は、特に、マイク2で実行される圧縮処理や親機3で実行される伸長処理に比較的長期間を要する場合に有用である。変形例では、理論上、圧縮処理や伸長処理に要する時間が1フレーム期間を超えなければよいため、これらの処理を高速化する必要がなく、動作クロックを低速にして消費電力を低減し、更にハードウェア資源等を低コスト化することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、図9を用いて説明したように「子機送信スロット60」はマイク2が親機3に対して圧縮信号を送信する際に使用可能なスロットであり、「子機受信スロット61」は、マイク2が親機3からエラー情報等を受信する際に使用可能なスロットであった。第2実施形態では、子機受信スロット61を子機送信スロット60に変更して使用する。DECT方式においては、このようにスロットの属性を変更して使用することが可能である。
図11は、第2実施形態に係るワイヤレスマイクシステム1において、子機受信スロット61を子機送信スロット60に変更する処理内容を示すフロー図である。以降、図11では、説明を簡単にするためマイク2における処理について説明するが、第1実施形態で図8を用いて説明したように、実際はマイク2と親機3とは、互いに連携をとって処理を進めている。
図11において、音声通信が開始されている否かの判定(ST1101)および送受信に使用するスロットが決定されたか否かの判定(ST1102)は、それぞれ上述したST811およびST812と同等であるので説明を省略する。ST1102によって、マイク2と親機3との間で送受信に使用するスロットが決定、即ち同期タイミングが決定される。同期が確立することで、マイク2と親機3とは相互にデータの送受信が可能となる。
上述したように、親機3の親機無線部21(図5参照)は、マイク2に対してエラー情報等を定期的に送信しており、親機3はこのエラー情報に子機受信スロット61を子機送信スロット60に変更するコマンドを付加してマイク2に送信する。このコマンドは上述したデータビットフィールド53(図7参照)に書き込むことができる。このコマンドを受信したマイク無線部11(図4参照)は、データビットフィールド53の内容をマイク制御部10(図4参照)に送り、マイク制御部10はデータビットフィールド53からコマンドを抽出する。マイク制御部10はコマンドに従って、フレーム処理部11a(図4参照)を制御して、それまで子機受信スロット61として用いていたスロットを子機送信スロット60(第2マイク送信スロット)に変更する(ST1103)。
これによってマイク2は従前に用いていた第1マイク送信スロットに加え、第2マイク送信スロットを用いて圧縮信号を親機3に送信することが可能となる。即ち、第2実施形態では、コマンドの発行以前は親機3からマイク2にエラー情報等を送信していたスロットを第2マイク送信スロットとして使用するのである。
その後、マイク無線部11は、マイク制御部10に同期タイミングを通知する(ST1104)。第2実施形態では、第1マイク送信スロットおよび第2マイク送信スロットの2つについて、同期タイミングが通知される。同期タイミングはマイク制御部10に渡されて記憶部15(いずれも、図2参照)に記憶される。
更に、マイク無線部11は、マイク音声処理部18に同期タイミングを通知し(ST1105)、マイク音声処理部18は通知された同期タイミングに基づいて、圧縮処理部18c(図3参照)における、圧縮処理の開始タイミングを決定する(ST1106)。第2実施形態では、圧縮処理の開始タイミングは第1マイク送信スロットおよび第2マイク送信スロットのそれぞれについて決定される。
図12は、第2実施形態に係るワイヤレスマイクシステム1において、子機受信スロット61を子機送信スロット60に変更した場合の、同期タイミングと圧縮処理を開始するタイミングとの関係を説明する説明図である。図11を用いて説明したように、第2実施形態では、本来の子機受信スロット61は子機送信スロット60に変更されている。2つの子機送信スロットはそれぞれ5ms周期で設けられている。
図12においては、スロットS16が第1マイク送信スロットに相当し同期タイミングTS1に対応する。また、スロットS4が第2マイク送信スロットに相当し、同期タイミングTS2に対応する。第2実施形態においても、同期タイミングに基づいて圧縮処理開始タイミングが決定される。即ち、同期タイミングTS1に基づいて、第1マイク送信スロット(スロットS16)で送信すべきディジタル音声信号(取り込み期間である音声圧縮フレームはTVG1〜TVG2の期間)に対する圧縮処理開始タイミングTC1が決定され、同期タイミングTS2に基づいて、第2マイク送信スロット(スロットS4)で送信すべきディジタル音声信号(音声圧縮フレームはTVG2〜TVG3の期間)に対する圧縮処理開始タイミングTC2が決定される。
圧縮処理開始タイミングTC1は、同期タイミングTS1を始期とするスロットS16の直前のスロットS15期間中に圧縮処理が完了するように決定され、圧縮処理開始タイミングTC2は、同期タイミングTS2を始期とするスロットS4の直前のスロットS3期間中に圧縮処理が完了するように決定される。また、同期タイミングTS1に基づいて音声圧縮フレームの始期(TVG1,TVG2..)が決定される。
そして、スロットS16およびスロットS4でマイク2から親機3に送信された圧縮信号は、親機3において、それぞれ伸長処理開始タイミングTE1およびTE2において伸長処理が開始される。
第2実施形態では、本来の子機受信スロット61を子機送信スロット60として用いることで、1つのフレーム期間(10ms)中に2回の子機送信スロット60が設けられ、音声圧縮フレーム、圧縮処理、送信(受信)、伸長処理、音声伸長フレームのそれぞれが5msの周期で実行される。これによって、第1実施形態と比較して遅延時間が約1/2に半減されることになる。なお、第2実施形態においても、図10を用いて説明したように、音声取り込みと圧縮処理とを並行して実行することにより、遅延時間は更に低減される。
図13は、第2実施形態に係るワイヤレスマイクシステム1において、第1、第2マイク送信スロットに加え、更に第3、第4マイク送信スロットを設けた場合の、同期タイミングと圧縮処理を開始するタイミングとの関係を説明する説明図である。図13は第2実施形態の変形例を示している。
この変形例では、子機送信スロット60のスロットS16および本来の子機受信スロット61のスロットS4に加えて、子機送信スロット60のスロットS22と本来の子機受信スロット61のスロットS10とを、マイク2から親機3へと圧縮信号を送信するスロットとして利用する。ここで、スロットS22が第3マイク送信スロットに相当し、スロットS10が第4マイク送信スロットに相当する。このように、変形例では1つのフレーム期間(10ms)に4つのマイク送信スロットが設定される。
変形例においても、圧縮処理開始タイミングTC1〜TC4は同期タイミングTS1〜TS4に基づいて決定され、同期タイミングTS1〜TS4に基づいてマイク2から親機3へ圧縮信号が送信され、親機3では圧縮信号を受信するとTE1〜TE4のタイミングで音声伸長処理を開始する。
変形例では、第3マイク送信スロット(スロットS22)の始期は同期タイミングTS3であり、同期タイミングTS3は、第1マイク送信スロット(スロットS16)の始期(同期タイミングTS1)と第2マイク送信スロット(スロットS4)の始期(同期タイミングTS2)との中間のタイミングに設定される。即ち、ここでは同期タイミングTS3は、同期タイミングTS1、TS2のいずれに対しても2.5msの時間的間隔をもって設けられる。即ち、音声圧縮フレーム、圧縮処理、送信(受信)、伸長処理、音声伸長フレームのそれぞれが2.5msの周期で実行される。即ち、各フレーム期間には4つの送信タイミングが設定される。これによって、第2実施形態と比較して遅延時間が更に短縮されることになる。
新たなマイク送信スロットを設ける際に、各マイク送信スロットの始期(同期タイミング)を一定周期で行うようにすることで、マイク2におけるマイク制御部10、マイク無線部11、マイク音声処理部18(いずれも図2参照)および親機3における親機制御部20、親機無線部21、親機音声処理部28(いずれも図5参照)を構成するハードウェアの動作タイミングが一定化され、安定した動作が確保される。
(第3実施形態)
さて、上述したように第2実施形態およびその変形例では、本来の子機受信スロット61を子機送信スロット60に転用する。このため、電波状態が不安定な環境でワイヤレスマイクシステム1を使用する場合等、親機3においてマイク2から送信された圧縮信号に伝送エラーを検出しても、マイク2にエラー情報を通知することができない事態が想定される。
図14は、第3実施形態に係るワイヤレスマイクシステム1において、エラー通知スロットを設定する際の処理内容を示すフロー図である。第3実施形態においては、第2実施形態で説明した複数のマイク送信スロット(図12、図13参照)とは別に、新たに親機3からマイク2にエラー情報を通知するエラー通知スロットを設けている。なお、図14においては、説明を簡単にするためマイク2における処理について説明するが、第1実施形態で図8を用いて説明したように、実際はマイク2と親機3とは、互いに連携をとって処理を進めている。
図14において、音声通信が開始されている否かの判定(ST1401)および送受信に使用するスロットが決定されたか否かの判定(ST1402)は、それぞれ上述したST811およびST812と同等であるので説明を省略する。ST1402によって、マイク2と親機3との間で送受信に使用するスロットが決定、即ち同期タイミングが決定される。同期が確立することで、マイク2と親機3とは相互にデータの送受信が可能となる。
上述したように、親機3の親機無線部21(図5参照)は、マイク2に対して制御スロットを用いて定期的に制御信号を送信しており、親機3は制御信号に子機受信スロット61を子機送信スロット60に変更するコマンド、およびエラー通知スロットとして使用するスロットを指定するコマンドを付加してマイク2に送信する。マイク制御部10(図2参照)はコマンドに従って、それまで子機受信スロット61として用いていたスロットを子機送信スロット60に変更する(ST1403)。
更に、マイク制御部10は、コマンドに従ってマイク無線部11を制御してエラー通知のための送受信スロット(エラー通知スロット)を確立する(ST1404)。親機3はマイク2から受信した圧縮信号に伝送エラーがあることを検出すると、エラー通知スロットを用いてマイク2に通知を行なう。他方、マイク2も親機3から送信された制御信号またはエラー通知スロットに含まれる情報に伝送エラーがあることを検出すると、エラー通知スロットを用いて親機3に通知を行なう(ST1405)。
そして、伝送エラーの発生頻度が所定の頻度を越えると、親機3はマイク送信スロットを変更するコマンドを含む制御信号を送信する。この制御信号の送信そのものに伝送エラーが含まれる場合は、マイク2と親機3との間でスロット変更のネゴシエーションが取られるまで、親機3から制御信号の送信が繰り返し行われる。そして、マイク2はコマンドを正常に受信すると、圧縮信号の送信に使用するマイク送信スロットを変更する(ST1406)。
図15は、第3実施形態に係るワイヤレスマイクシステム1において、エラー通知スロットを設定した場合の、マイク2と親機3との送受信状況を説明する説明図である。なお、図15は、図12を用いて説明した子機受信スロット61を子機送信スロット60に変更した状況において、エラー通知スロットを付加した状態を示している。
図15において、同期タイミングTS1を始期とするスロットS16は、マイク2から親機3に圧縮信号を送信する第1マイク送信スロットであり、同期タイミングTS2を始期とするスロットS4もマイク2から親機3に圧縮信号を送信する第2マイク送信スロットである。また、タイミングTS10を始期とするスロットS18は、マイク2から親機3にエラー情報を送信する第1エラー通知スロットであり、タイミングTS20を始期とするスロットS16は、親機3からマイク2にエラー情報を送信する第2エラー通知スロットである。第1エラー通知スロットと第2エラー通知スロットとは5ms離間して設けられ、1つのエラー通知チャネルを構成する。このエラー通知チャネルではDECT方式の原則どおりに、子機送信スロット60においてマイク2から親機3にエラー情報が送信され、本来の子機受信スロット61において親機3からマイク2にエラー情報が送信される。
このように、子機受信スロット61を子機送信スロット60に変更した場合に、エラー通知スロット(チャネル)を追加することで、使用者がマイク2に音声を入力してから、親機3で音声が再生され始めるまでの遅延時間を短縮しつつ、更にマイク2と親機3との間で伝送エラーの発生を相互に把握することが可能となる。
以降、エラー通知チャネルを設定するタイミングについて、図13を併用して説明する。図13では、同期タイミングとしてTS1、TS2、TS3、TS4をそれぞれ、マイク2から親機3に圧縮信号を送信するマイク送信スロットとして用いたが、この状態からマイク送信スロットを増やそうとすると、TSX1(スロットS13の始期)、TSX2(スロットS19の始期)、TSX3(スロットS1の始期)、TSX4(スロットS7の始期)の4つの同期タイミングを追加すること(即ち、計24個のスロットのうち、時間的に均等間隔に設けられた8個のスロットをマイク送信スロットとして使用すること)が可能である。即ち、仮にスロットS0の始期を同期タイミングとして決定した場合に、スロットS[3×n](n=0〜7)をマイク送信スロットとして設定することが可能である。
理論上は、24のスロット全てをマイク送信スロットとして使用することが可能だが、エラーの通知が困難となり、また12のスロットとしても周波数の切替先がなく(空いているタイミングが一通りのみなので)、システムに支障が発生する。このため、実施形態ではマイク送信スロットを8つに設定している。そして、スロットS[3×n](n=0〜7)以外のスロットにエラー通知スロットを設定する、つまり、同期タイミングを始期とする可能性がないスロットを選択してエラー通知スロットに設定することが好ましい。
実際に、図15に示すエラー通知スロットの始期(TS10およびTS20)は、「仮にスロットS0の始期を同期タイミングとして決定した場合に、スロットS[3×n](n=0〜7)以外のスロットをエラー通知スロットとして利用する」という要件に合致するものである。このようにすることで、ハードウェア構成になんら影響を与えることなく、エラー通知スロットを追加することができる。
図16(a)、(b)、(c)は、第3実施形態に係るワイヤレスマイクシステム1における制御信号のスロット構成を示す説明図、図17は、第3実施形態に係るワイヤレスマイクシステム1において、制御信号を用いてエラー情報を通知する過程を説明する説明図である。以降、制御信号を用いたエラー情報の通知について、図7を併用して説明する。なお、図16においては、図7で示した伝送エラー検出用のCRC1フィールド52およびCRC2フィールド54は省略している。
上述したように、ワイヤレスマイクシステム1では、親機3からマイク2に対して1フレーム期間(ここでは10ms)に1回の割合で制御信号が送信される。DECT方式においては通常、制御ビットフィールド51には送受信のペアを識別するための識別符号や呼制御情報が書き込まれる。この識別符号等は親機3にあっては40ビット、親機以外にあっては、36ビットと規定されている。即ち、制御信号においては、メッセージ領域51bが識別符号を書き込む領域として使用され、その他の情報を伝送するには、データビットフィールド53が利用される。ただし、制御ビットフィールド51には、識別符号等に替えて、他の情報を書き込むことも可能である。
図16(a)に示すように、親機3がマイク2に送信する制御信号は同期信号フィールド50と制御ビットフィールド51とで構成される。また、図16(b)に示すように、マイク2が親機3に送信する制御信号は、同期信号フィールド50と制御ビットフィールド51とデータビットフィールド53とで構成される。マイク2は伝送エラーを検出すると所定のフラグを制御ビットフィールド51に書き込んで親機3に送信する。またマイク2は、ディジタル音声信号を圧縮処理した圧縮信号をデータビットフィールド53に書き込んで親機3に送信する。
親機3がマイク2に送信する制御信号は、図16(c)に示すように、拡張が可能となっており、親機3は通常の制御信号の構成にデータビットフィールド53を付加してマイク2に送信することが可能である。
図17においても、本来の子機受信スロット61は子機送信スロット60として使用され、スロットS16およびスロットS4はマイク送信スロットとされている。DECT方式では、1フレーム期間(10ms)に1回の割合で親機3からマイク2に制御信号が送信され、図17では、制御信号は本来の子機受信スロット61のうち、スロットS11でマイク2に受信されている。親機3は、マイク2から送信された圧縮信号について伝送エラーを検出すると、制御信号のフィールドを図16(c)に示すように拡張し、付加されたデータビットフィールド53にエラー情報を書き込んでマイク2に対してエラー発生を通知する。これによって、制御スロットで送信する制御信号の制御ビットフィールド51(図16参照)に空きがない場合であっても、親機3はマイク2に伝送エラーの発生や新たに使用するスロット番号を通知することが可能となる。または、制御ビットフィールド51に識別符号に替えてエラー情報等を書き込んでマイク2に対してエラー発生を通知してもよい。
即ち、親機3は、フレーム期間毎にマイク2との間で同期を維持する制御スロットを設定し、制御スロットの一部を、少なくともエラー情報を通知するエラー通知スロットとして用いる。これによって、独立したエラー通知スロットを設けることなく、親機3はマイク2にエラーの発生を通知することが可能となる。
またDECT方式では、複数のフレームを結合してマルチフレームを構成することができる。マルチフレームの周期は160msとされており、上述したエラー情報を含む制御信号を各マルチフレーム周期に1回送信するようにしてもよい。これによって、通常はマイク2と親機3との間で、識別符号を送受信して双方のペアリングを確保しつつ、伝送エラーが発生したときは、マイク2にエラーの発生を通知することができる。
図18は、第3実施形態に係るワイヤレスマイクシステム1において、送受信スロットを変更した際の、同期タイミングと圧縮処理を開始するタイミングとの関係を説明する説明図である。図18では、電波状態が悪化したような場合に、上述したST1406の処理によってスロットを変更する過程を示している。なお、図18では、説明を簡単にするために、チャネル数=6(スロット数=12)としている。
上述したようにDECT方式では、チャネルの数を変更することが可能である。ここでは、スロットS0〜スロットS5が子機送信スロット60、スロットS6〜スロットS11が子機受信スロット61として設定されている。そして、子機受信スロット61のうちスロットS10は親機3からマイク2へとエラー通知を行うエラー通知スロットとして用いられる。なお、上述したように、スロットS10を制御スロットとして用い、データビットフィールド53(図16参照)を付加した制御信号を送信してもよい。
当初、マイク2から親機3への圧縮信号の送信は、同期タイミングTS1、TS2を始期とするスロットS4(マイク送信スロット)を用いて行われている。そして圧縮処理は、同期タイミングTS1、TS2までに圧縮処理が完了するように、圧縮処理開始タイミングTC1、TC2が設定されている。親機3は、マイク2から送信される圧縮信号の伝送エラーを検出しており、図18では、タイミングTSXを始期とするエラー通知スロット(スロットS10)において、親機3からマイク2にエラー通知が行われている。エラー通知には親機3が新たに指定した送受信スロットの生成タイミングが付加されており、ここでは、マイク2が親機3にマイク送信スロットをスロットS4からスロットS2に変更する指示(スロット変更命令)がなされている。
マイク音声処理部18(図3参照)は、スロット変更命令に従って、スロットS2の始期であるNTS3を新たな同期タイミングとして設定し、この同期タイミングNTS3に基づいて圧縮処理部18c(図3参照)における圧縮処理開始タイミングNTC1を決定し、更に新たな音声圧縮フレームの始期NTVG1、NTVG2・・を決定する。そして、圧縮信号は新たな同期タイミング(即ち、再確立された同期タイミング)であるNTS3を始期とするマイク送信スロット(スロットS2)で親機3に送信され、親機3ではタイミングNTE1を始期として伸長処理を開始する。これによって、伝送エラーが発生したときに送受信で用いるスロット(即ち同期タイミング)が変更されても、圧縮処理開始タイミングが動的に変更され、常に遅延時間を短縮することができる。
ここで、親機制御部20(図6参照)は、同期タイミングTS1で受信した圧縮信号に伝送エラーがあることを検出しているから、これを受信して伝送エラーを検出した直後、即ち伸長処理開始タイミングTE1以降は、親機音声処理部28を制御して音声再生を停止(または減衰)することができる。このミュート期間は、再同期を確立した後、新たな同期タイミングNTS3に基づいて音声圧縮フレームの始期NTVG1が決定されて、親機音声処理部28において、タイミングNTE2を始期とする伸長処理を完了するまで継続される(第2ミュート期間)。即ち、親機制御部20は、マイク2から受信した圧縮信号に伝送エラーが含まれることを検出した場合、親機音声処理部28は、再確立した同期タイミングに基づいてディジタル音声信号を生成するまでの期間、音声信号の再生を停止するのである。これによって伝送エラーが発生した際に、親機3に接続あるいは内蔵されたスピーカ29(図1、図5参照)から異音が発生することを防止できる。
さて、タイミングTSXを始期とするエラー通知スロットでマイク2に送信された伝送エラーは、同期タイミングTS1を始期とするマイク送信スロット(スロットS4)において親機3が検出した伝送エラーに基づくから、TVG1〜TVG2〜TVG3の音声圧縮フレームで取り込まれた音声信号は、親機3に送信したとしても伝送エラーを生じる可能性が高い。そこでマイク音声処理部18(図3参照)は、圧縮処理開始タイミングTC2においてミュート処理を実行してミュート信号を生成するようにしてもよい。ここでミュート信号は、TVG1〜TVG2〜TVG3の音声圧縮フレームに取り込まれたディジタル音声信号をNULLデータとして圧縮処理を実行して生成してもよく、予めメモリ17(図3参照)にミュート用のデータ領域を設けておき、圧縮処理部18c(図3参照)にデータを渡す際のDMA(Direct Memory Access)ソースアドレスを切り替えるようにして生成してもよい。
これによって、同期タイミングTS2を始期とするマイク送信スロット(スロットS4)では、ミュート信号が親機3に送信される。これを受信した親機3は、伸長処理開始タイミングTE2で伸長処理を実行する。伸長されたディジタル音声信号は無音状態であるから、これによって親機3のスピーカ29(図6参照)からの音声再生が停止(ミュート)される。このミュート期間(第1ミュート期間)も上述した第2ミュート期間と同様に、親機音声処理部28において、タイミングNTE2を始期とする伸長処理を完了するまで継続される。もちろん、上述したように親機制御部20で第2ミュート期間を設けることから、マイク音声処理部18でミュート信号を生成しなくても構わない。
以上、本発明に係るワイヤレスマイクシステム1について特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、各実施形態では、DECT方式を用いたワイヤレスマイクシステム1について説明したが、DECT方式のみならず、例えばPHS(Personal Handy-phone System)やsPHS(Super PHS)にも応用することができる。また、各実施形態では、マイク2と親機3とを1対1に対応させて説明したが、マイク2は複数本としてもよい。また、本発明に係るワイヤレスマイクシステム1はマイク2から親機3へと音声信号を単方向に送信するものであるが、親機3からマイク2へも音声信号を送信する、音声信号を双方向に送受信するワイヤレスマイクシステム1(いわゆるインターカムシステム)を構成してもよい。また、本発明はコードレス電話システムに応用することもできる。なお、上述した実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。