本発明の吸収性物品は、液体の供給を受ける表面領域を有する液体透過性のトップシートと、液体不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に設けられた吸収体とを備えた吸収性物品であって、前記トップシートは、親水化処理された熱可塑性樹脂繊維を含有する不織布であり、前記吸収体は、フラッフパルプを含有する吸収性コアと、前記吸収性コアのトップシート側表面に接着剤によって接合されたトップシート側被覆シートと、前記吸収性コアのバックシート側表面に接着剤によって接合されたバックシート側被覆シートとを有し、前記トップシート側被覆シートは、親水化処理された熱可塑性樹脂繊維を含有する不織布であり、前記バックシート側被覆シートは、親水性繊維を含有するエアレイド不織布であり、直接又は接着剤層を介して前記バックシートに積層されており、前記吸収性物品は、前記トップシートの前記表面領域から前記バックシート側被覆シートのバックシート側表面に達する貫通孔を有する、前記吸収性物品に関する。
本発明の吸収性物品において、トップシートのうち、液体の供給を受ける表面領域(以下「液体被供給領域」という場合がある)に供給された液体は、貫通孔を通じてバックシート側被覆シートに移行する。バックシート側被覆シートは直接又は接着剤層を介してバックシートに積層されているので、吸収性物品の厚み方向への液体の移行は、バックシートで遮断され、バックシート側被覆シートに移行した液体は、バックシート側被覆シートの面方向に拡散する。バックシート側被覆シートは、親水性繊維を含有するエアレイド不織布であり、その内部には、親水性繊維の三次元骨格構造により形成された空隙が存在する。液体がバックシート側被覆シートの面方向に拡散する際、この空隙が液体流路として機能し、効率的な液体の拡散が可能となる。
本発明の吸収性物品において、吸収性コアとトップシート側被覆シート及びバックシート側被覆シートとは接着剤によって接合されているので、吸収性物品の使用時に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、吸収性コアとトップシート側被覆シート及びバックシート側被覆シートとの離間が防止され、これにより貫通孔の形態が維持されやすい。
本発明の吸収性物品において、トップシート及びトップシート側被覆シートは親水化処理された熱可塑性樹脂繊維を含有するので、トップシート及びトップシート側被覆シートの強度が増加している。したがって、吸収性物品の使用時に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、貫通孔の形態が維持されやすい。
本発明の吸収性物品において、吸収性コアは、フラッフパルプの親水性に基づく吸収性を発揮することができる。また、吸収性コアに含有されるフラッフパルプは、貫通孔の形成時に加えられる力により圧着されるので、吸収性物品の使用時に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、貫通孔の形態が維持されやすい。なお、フラッフパルプの圧着には、セルロース繊維間の水素結合が関与する。
本発明の吸収性物品は、トップシートからバックシート側被覆シートへの貫通孔を通じた液体の移行、バックシート側被覆シートの面方向への液体の拡散、及びに貫通孔の形態の維持により、トップシートからバックシート側被覆シートへの液体の移行を効果的に実現することができる。このため、本発明の吸収性物品は、トップシートに残存する液体を低減させることができ、これにより、トップシートのべたつき感を防止し、サラサラ感を維持することができる。この作用効果は、トップシートに供給される液体が、高粘度の液体(例えば、経血)である場合に特に有用である。
本発明の吸収性物品の好ましい一態様(態様1)では、前記トップシート及び前記トップシート側被覆シートが、エアスルー不織布である。エアスルー不織布は繊維間の距離が比較的広く、貫通孔を形成する際にエアスルー不織布中の繊維が分断されにくいので、態様1によれば、吸収性物品の使用時に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、貫通孔の形態が維持されやすい。また、貫通孔を形成する際にエアスルー不織布が圧縮され、貫通孔の周囲部分における繊維密度が高くなるので、態様1によれば、液体が貫通孔に導かれやすい。また、エアスルー不織布は、繊維密度が比較的低いので、態様1によれば、トップシート及びトップシート側被覆シートに残存する液体を低減させることができる。
本発明の吸収性物品の好ましい一態様(態様2)では、前記バックシート側被覆シートが、熱可塑性樹脂繊維を含有する。態様2によれば、バックシート側被覆シートの強度が増加する。したがって、吸収性物品の使用時に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、貫通孔の形態が維持されやすい。また、吸収性物品の使用時に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、バックシート側被覆シートとして使用されるエアレイド不織布内部の空隙が維持されるので、液体がバックシート側被覆シートの面方向に拡散する際の、空隙の液体流路としての機能が維持される。なお、態様2は、態様1と組み合わせることができる。
本発明の吸収性物品の好ましい一態様(態様3)では、前記吸収体が、前記バックシート側被覆シートを前記吸収性コアの方向へ圧搾することにより形成された圧搾凹部を有する。態様3によれば、圧搾凹部及び圧搾凹部とバックシートとの間の空間が液体流路として機能するので、液体がバックシート側被覆シートの面方向に拡散する際、効率的な液体の拡散が可能となる。なお、態様3は、態様1及び/又は態様2と組み合わせることができる。
態様3に係る吸収性物品の好ましい一態様(態様4)では、前記圧搾凹部が、高圧搾凹部及び低圧搾凹部を有し、前記低圧搾凹部が、網目状パターンで形成されており、前記高圧搾凹部が、前記網目状パターン内に点在するように形成されている。態様4によれば、液体流路として機能する低圧搾凹部が網目状パターンで形成されているので、液体がバックシート側被覆シートの面方向に拡散する際、効率的な液体の拡散が可能となる。
態様4に係る吸収性物品の好ましい一態様(態様5)では、前記高圧搾凹部が、前記網目状パターンの交差領域内に形成されている。態様5によれば、吸収性物品の使用時に力が加わりやすい網目状パターンの交差領域内に高圧搾凹部が設けられているので、吸収性物品の使用時に力が加わっても、吸収性コアとバックシート側被覆シートとの離間が防止され、これにより、低圧搾凹部の網目状パターンが維持されやすい。
態様3〜5のいずれか一態様に係る吸収性物品の好ましい一態様(態様6)では、前記吸収体が、前記吸収体の長手方向中央に位置する中央部分と、前記中央部分に対して前記吸収体の長手方向両側に位置する両側部分とを有しており、前記中央部分において、前記貫通孔は形成されているが、前記圧搾凹部は形成されておらず、前記両側部分において、前記圧搾凹部は形成されているが、前記貫通孔は形成されていない。態様6によれば、貫通孔は形成されているが、圧搾凹部は形成されていない(したがって、繊維密度が低い)吸収体の中央部分においては、トップシートの液体被供給領域に供給された直後の比較的流速の速い液体を吸収することができるとともに、圧搾凹部は形成されている(したがって、繊維密度が高い)が、貫通孔は形成されていない吸収体の両側部分においては、トップシート表面をつたって流れる比較的流速の遅い液体を吸収体へ引き込むことができる。この作用効果は、トップシートに供給される液体が、高粘度の液体(例えば、経血)である場合に特に有用である。なお、態様6は、態様3〜5のうち1つの態様又は並立し得る2つ以上の態様と組み合わせることができる。
本発明の吸収性物品の好ましい一態様(態様7)では、前記表面領域のうち少なくとも前記貫通孔の開口部周囲に、40℃における動粘度が0.01〜80mm2/s、抱水率が0.01〜4.0質量%、重量平均分子量が1,000未満である血液滑性付与剤が塗工されている。態様7は、トップシートの液体被供給領域に供給される液体が血液(例えば、着用者から***された経血)である場合に特に有用である。すなわち、トップシートの液体被供給領域に供給された血液は、貫通孔の開口部周囲に存在する血液滑性付与剤とともに貫通孔に滑落し、バックシート側被覆シートに移行することができる。したがって、態様7によれば、トップシートに残存する血液を低減させることができ、これにより、トップシートのべたつき感を防止し、サラサラ感を維持することができる。なお、態様7は、態様1〜6のうち1つの態様又は並立し得る2つ以上の態様と組み合わせることができる。
態様7において、前記血液滑性付与剤のIOBは、好ましくは0.00〜0.60である。
態様7において、前記血液滑性付与剤は、好ましくは、次の(i)〜(iii):
(i)炭化水素、
(ii) (ii−1)炭化水素部分と、(ii−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、及び
(iii) (iii−1)炭化水素部分と、(iii−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基と、(iii−3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される(ここで、(ii)又は(iii)の化合物において、オキシ基が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基は隣接していない)。
態様7において、前記血液滑性付与剤は、好ましくは、次の(i’)〜(iii’):
(i’)炭化水素、
(ii’) (ii’−1)炭化水素部分と、(ii’−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合とを有する化合物、及び
(iii’) (iii’−1)炭化水素部分と、(iii’−2)前記炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、(iii’−3)前記炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される(ここで、(ii’)又は(iii’)の化合物において、2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接していない)。
態様7において、前記血液滑性付与剤は、好ましくは、次の(A)〜(F):
(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル、
(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル、
(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル、
(D)鎖状炭化水素部分と、前記鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物、
(E)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコール、又はそのアルキルエステル若しくはアルキルエーテル、及び
(F)鎖状炭化水素、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
態様7において、前記血液滑性付与剤は、好ましくは、(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d2)ジアルキルケトン、(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、(d4)ジアルキルカーボネート、(e1)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコール、(e2)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e3)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、及び(f1)鎖状アルカン、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
本発明の吸収性物品の種類及び用途は特に限定されない。吸収性物品としては、例えば、生理用ナプキン、使い捨てオムツ、パンティーライナー、失禁パッド、汗取りシート等の衛生用品・生理用品が挙げられ、これらはヒトを対象としてもよいし、ペット等のヒト以外の動物を対象としてもよい。吸収性物品が吸収対象とする液体は特に限定されず、例えば、着用者から***される液状***物(例えば、経血、尿、下り物等)等が挙げられる。
以下、生理用ナプキンを例として、図面に基づいて、本発明の吸収性物品の実施形態を説明する。
図1〜図3に示すように、本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1は、液体透過性のトップシート2と、液体不透過性のバックシート3と、トップシート2及びバックシート3の間に設けられた吸収体4と、トップシート2及び吸収体4を貫通する貫通孔5とを備える。
図1〜図3に示すように、生理用ナプキン1は、互いに直交する短手方向X、長手方向Y及び厚み方向Zを有する。トップシート2、吸収体4及びバックシート3は、厚み方向Zに順次積層されており、厚み方向Zは、トップシート2、吸収体4及びバックシート3の積層方向と一致する。以下、別段の規定がない限り、「幅」は、短手方向Xの寸法を意味し、「長さ」は、長手方向Yの寸法を意味し、「厚み」は、厚み方向Zの寸法を意味する。
生理用ナプキン1は、着用時において、着用者の肌側に位置する肌側表面と、着用者の着衣(下着)側に位置する着衣側表面とを有する。生理用ナプキン1の肌側表面は、トップシート2の一方の面(図2及び図3において上面)によって構成されており、生理用ナプキン1の着衣側表面は、バックシート3の一方の面(図2及び図3において下面)によって構成されている。
生理用ナプキン1は、着用者から***される液状***物(特に経血)を吸収する目的で着用される。この際、トップシート2が着用者の肌側に、バックシート3が着用者の着衣(下着)側に位置するように着用される。着用者から***された液状***物は、トップシート2を透過して吸収体4に至り、吸収体4で吸収・保持される。吸収体4で吸収・保持された液状***物の漏れは、バックシート3によって防止される。
図1に示すように、トップシート2及びバックシート3は、長手方向の端部同士がシール部11a,11bによって接合され、本体部6を形成するとともに、幅方向の端部同士がシール部12a,12bによって接合され、本体部6から幅方向に延出する略矩形状のウイング部7a,7bを形成している。
本体部6の形状は、女性の身体、下着等に適合する範囲で適宜変更可能であり、例えば、略長方形、略楕円形、略瓢箪形等であってもよい。本体部6の長さは、通常100〜500mm、好ましくは150〜350mmであり、本体部6の幅は、通常30〜200mm、好ましくは40〜180mmである。
シール部11a,11b,12a,12bによる接合様式としては、例えば、ヒートエンボス処理による接合、超音波エンボス処理による接合、ホットメルト型接着剤による接合等が挙げられる。接合強度を高めるために、2種以上の接合様式を組み合わせてもよい(例えば、ホットメルト型接着剤による接合と、その後に実施されるエンボス加工との組み合わせ等)。
図2に示すように、ウイング部7a,7bを形成するバックシート3の着衣側には、粘着部13a,13bが設けられており、本体部6を形成するバックシート3の着衣側には、粘着部13cが設けられている。粘着部13cが下着のクロッチ部に貼付されるとともに、ウイング部7a,7bが下着の外面側に折り曲げられ、粘着部13a,13bが下着のクロッチ部に貼付されることにより、生理用ナプキン1は下着に安定して固定される。
粘着部13a,13b,13cに含有される粘着剤としては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等の粘着付与剤;リン酸トリクレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤;ビニル重合体、ポリエステル等のポリマー可塑剤等が挙げられる。
トップシート2は、着用者から***される液状***物が透過し得る不織布である。トップシート2として使用される不織布の種類、厚み、坪量等は、着用者から***される液状***物が透過し得る限り特に限定されない。
トップシート2として使用される不織布は、親水化処理された熱可塑性樹脂繊維を含有する。これにより、トップシート2の強度が増加するので、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、貫通孔5の形態が維持されやすい。
熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリブチレン、これらを主体とした共重合体(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、アイオノマー樹脂)等が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンタレフタレート(PET)、ポリトリメチレテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレタレート(PBT)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸をはじめとする直鎖状又は分岐状の炭素数20までのポリヒドロキシアルカン酸等のポリエステル、これらを主体とした共重合体、アルキレンテレフタレートを主成分として他の成分を少量共重合してなる共重合ポリエステル等が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン等が挙げられる。熱可塑性樹脂繊維の繊度は、通常1.1〜8.8dtex、好ましくは2.2〜5.6dtexであり、繊維長は、通常20〜100mm、好ましくは35〜65mmである。熱可塑性樹脂繊維の親水化処理としては、例えば、界面活性剤、親水剤等を利用した処理(例えば、繊維内部への界面活性剤の練り込み、繊維表面への界面活性剤の塗布等)等が挙げられる。
トップシート2として使用される不織布は、親水化処理された熱可塑性樹脂繊維以外の繊維を含有することができる。この場合、トップシート2における親水化処理された熱可塑性樹脂繊維の含有量は、通常1〜100質量%、好ましくは5〜50質量%である。不織布を構成するその他の繊維としては、例えば、天然繊維(例えば、羊毛,コットン等)、再生繊維(例えば、レーヨン,アセテート等)、無機繊維(例えば、ガラス繊維,炭素繊維等)等が挙げられる。
トップシート2として使用される不織布を構成する繊維は、芯鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空タイプの繊維;扁平、Y型、C型等の異型繊維;潜在捲縮又は顕在捲縮の立体捲縮繊維;水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維等であってもよい。
不織布の製造方法としては、例えば、ウェブ(フリース)を形成し、繊維同士を物理的・化学的に結合させる方法が挙げられ、ウェブの形成方法としては、例えば、スパンボンド法、乾式法(カーディング法、メルトブローン法、エアレイド法等)、湿式法等が挙げられ、結合方法としては、例えば、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法、スパンレース法等が挙げられる。
トップシート2として使用される不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例えば、スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)不織布等)等が挙げられるが、これらのうちエアスルー不織布が好ましい。
エアスルー不織布は、熱可塑性樹脂繊維を含有するウェブに熱風を吹き付けて熱可塑性樹脂繊維を熱融着させることにより得られる不織布である。エアスルー不織布は、繊維間の距離が比較的広く、貫通孔5を形成する際にエアスルー不織布中の繊維が分断されにくいので、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、貫通孔5の形態が維持されやすい。また、貫通孔5を形成する際にエアスルー不織布が圧縮され、貫通孔5の周囲部分における繊維密度が高くなるので、液状***物が貫通孔5に導かれやすい。また、エアスルー不織布は繊維密度が比較的低いので、トップシート2に残存する液状***物を低減させることができる。トップシート2として使用されるエアスルー不織布の厚みは、通常0.1〜15mm、好ましくは0.3〜10mmであり、坪量は、通常10〜200g/m2、好ましくは15〜100g/m2である。
図1〜図3に示すように、トップシート2は、着用者から***された液状***物の供給を受ける表面領域20(液体の供給を受ける表面領域の一例)を有する。表面領域20は、吸収体配置領域の略中央に位置しており、表面領域20の周縁には、内側圧搾条溝5aが断続的に形成されている。なお、吸収体配置領域は、吸収体4をトップシート2に投影したときに、吸収体4がトップシート2と重なる領域である(図1参照)。表面領域20の位置及び大きさは、着用者の***口(例えば、小***、大***等)が当接する***口当接領域の位置及び大きさを考慮して適宜調整することができる。表面領域20は、液状***物の外部への漏れ出しを防止する点から、***口当接領域とその周囲領域とを含む、***口当接領域よりも大きい領域として設定されることが好ましい。表面領域20の長さは通常50〜200mm、好ましくは70〜150mmであり、表面領域20の幅は通常10〜80mm、好ましくは20〜50mmである。
トップシート2の隠ぺい性を高める観点から、トップシート2として使用する不織布に酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機フィラーを含有させてもよい。不織布が芯鞘型複合繊維を含有する場合、芯鞘型複合繊維の芯のみに無機フィラーを含有させてもよいし、芯鞘型複合繊維の鞘のみに無機フィラーを含有させてもよい。
生理用ナプキン1は、トップシート2以外の液体透過性シートを備えていてもよい。トップシート2以外の液体透過性シートとしては、例えば、トップシート2及び吸収体4の間に配置されたセカンドシートが挙げられる。セカンドシートとして使用される液体透過性シートとしては、例えば、不織布、織布、液体透過孔が形成された合成樹脂フィルム等が挙げられる、これらのうち不織布が好ましい。不織布を構成する繊維の具体例及び不織布の製造方法の具体例は、トップシート2に関して記載した具体例と同様である。
バックシート3は、着用者から***される液状***物が透過し得ない液体不透過性シートである。バックシート3は、着用時のムレを低減させるために、液体不透過性に加えて、透湿性を有することが好ましい。バックシート3として使用される液体不透過性シートの種類、厚み、坪量等は、着用者から***される液状***物が透過し得ない限り特に限定されない。バックシート3として使用される液体不透過性シートとしては、防水処理を施した不織布、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート(例えば、スパンボンド、スパンレース等の不織布に通気性の合成樹脂フィルムが接合された複合フィルム)、耐水性の高いメルトブローン不織布を強度の強いスパンボンド不織布で挟んだSMS不織布等が挙げられる。
図2及び図3に示すように、吸収体4は、吸収性コア41と、吸収性コア41のトップシート2側表面に接着剤によって接合されたトップシート側被覆シート42と、吸収性コア41のバックシート側表面に接着剤によって接合されたバックシート側被覆シート43と、バックシート側被覆シート43を吸収性コア41の方向へ圧搾することにより形成された圧搾凹部45とを有する。
トップシート側被覆シート42と吸収性コア41との界面及びバックシート側被覆シート43と吸収性コア41との界面には、接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)が塗工されており、吸収性コア41の一方の面にはトップシート側被覆シート42が、他方の面にはバックシート側被覆シート43が接合されている。これにより、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、吸収性コア41とトップシート側被覆シート42及びバックシート側被覆シート43との離間が防止されるので、貫通孔5の形態が維持されやすい。液体透過性の点から、接着剤は、界面全体には塗工されておらず、例えば、ドット、スパイラル、ストライプ等のパターンで塗工されている。接着剤としては、例えば、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のゴム系を主体とした、又は直鎖状低密度ポリエチレン等のオレフィン系を主体とした感圧型接着剤又は感熱型接着剤;水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ゼラチン等)又は水膨潤性高分子(例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸ナトリウム等)からなる感水性接着剤等が挙げられる。接着剤の塗布方法としては、例えば、スパイラル塗工、コーター塗工、カーテンコーター塗工、サミットガン塗工等が挙げられる。接着剤の塗工量(坪量)は、通常0.1〜200g/m2、好ましくは0.5〜100g/m2である。
本実施形態において、被覆シート42,43の長さ及び幅は、吸収性コア41の長さ及び幅よりも大きく、被覆シート42,43のうち吸収性コア41から延出する部分は、被覆シート42,43のうち少なくとも一方に塗布された接着剤(例えば、ホットメルト接着剤等)によって接合されている。したがって、本実施形態では、吸収性コア41の全体が被覆シート42,43によって被覆されている。被覆シート42,43による吸収性コア41の被覆により、吸収性コア41の崩壊の防止、吸収体4のクッション性の向上、吸収体4の隠蔽性の向上、吸収体4のリウェットバックの低減、貫通孔5の形態維持性の向上等が実現可能となる。但し、このような被覆シート42,43による被覆形態は、トップシート側被覆シート及びバックシート側被覆シートによる吸収性コアの被覆形態の一例であり、トップシート側被覆シート及びバックシート側被覆シートによる吸収性コアの被覆形態は、本実施形態に限定されるものではない。例えば、トップシート側被覆シートの長さ及び幅は、吸収性コアのトップシート側表面の長さ及び幅と略同一又はそれ以下であってもよい。また、バックシート側被覆シートの長さ及び幅は、吸収性コアのバックシート側表面の長さ及び幅と略同一又はそれ以下であってもよい。
吸収性コア41は、着用者から***される液状***物を吸収・保持可能な吸収性材料として、フラッフパルプを含有する。したがって、吸収性コア41は、フラッフパルプの親水性に基づく吸収性を発揮することができる。また、吸収性コア41に含有されるフラッフパルプは、貫通孔5の形成時に加えられる力により圧着されるので、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、貫通孔5の形態が維持されやすい。なお、フラッフパルプの圧着には、セルロース繊維間の水素結合が関与する。
フラッフパルプは、原料パルプのフラッフ化処理により得られるパルプである。フラッフ化処理は、原料パルプを機械的に解繊し得る限り特に限定されない。フラッフ化処理は、例えば、繊維塊を単繊維化し得る解繊装置を使用して実施することができる。解繊装置としては、例えば、ワーリングブレンダー、回転ディスクリファイナー、その他の公知のフラッファー等が挙げられる。原料パルプとしては、例えば、針葉樹又は広葉樹を原料として得られる木材パルプ(例えば、クラフトパルプ、サルファイドパルプ、アルカリパルプ等の化学パルプ等)、木材パルプに化学処理を施して得られるマーセル化パルプ又は架橋パルプ、バガス、ケナフ、竹、麻、綿(例えばコットンリンター)等の非木材パルプ等が挙げられる。
吸収性コア41は、フラッフパルプ以外の材料(例えば、親水性繊維、高吸収性材料、熱可塑性樹脂繊維)を含有することができる。吸収性コア41がフラッフパルプ以外の材料を含有する場合、吸収性コア41におけるフラッフパルプの含有量は、通常20〜100質量%、好ましくは50〜98質量%である。
親水性繊維は、親水基(例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基等)を有する限り特に限定されるものではない。親水性繊維としては、例えば、セルロース系繊維が挙げられ、セルロース系繊維としては、例えば、針葉樹又は広葉樹を原料として得られる木材パルプ(例えば、砕木パルプ、リファイナーグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等の機械パルプ;クラフトパルプ、サルファイドパルプ、アルカリパルプ等の化学パルプ;半化学パルプ等);木材パルプに化学処理を施して得られるマーセル化パルプ又は架橋パルプ;バガス、ケナフ、竹、麻、綿(例えばコットンリンター)等の非木材パルプ;レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース;アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース等が挙げられる。
高吸収性材料としては、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の高吸収性材料が挙げられる。デンプン系又はセルロース系の高吸収性材料としては、例えば、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物等が挙げられ、合成ポリマー系の高吸収性材料としては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系等の高吸収性樹脂(Superabsorbent Polymer:SAP)等が挙げられるが、これらのうちポリアクリル酸塩系(特に、ポリアクリル酸ナトリウム系)の高吸収性樹脂が好ましい。高吸収性材料の形状としては、例えば、粒子状、繊維状、鱗片状等が挙げられ、粒子状である場合、粒径は、好ましくは50〜1000μmであり、さらに好ましくは100〜600μmである。吸収性コア41における高吸収性材料(例えば、高吸収性樹脂、高吸収性繊維等)の含有量は、吸収性コア41の通常0〜70質量%、好ましくは1〜50質量%である。
吸収性コア41が熱可塑性樹脂繊維を含有する場合、熱可塑性樹脂繊維は親水化処理されていてもよい。吸収性コア41に含有される熱可塑性樹脂繊維の具体例、及び熱可塑性樹脂繊維の親水化処理の具体例は、トップシート2に関して記載した具体例と同様である。吸収性コア41における熱可塑性樹脂繊維の含有量は、吸収性コア41の通常0〜80質量%、好ましくは2〜50質量%である。
吸収性コア41は、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤等の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
吸収性コア41の厚み、坪量等は、生理用ナプキン1が備えるべき特性(例えば吸収性、強度、軽量性等)に応じて適宜調整することができる。吸収性コア41の厚みは、通常0.1〜20mm、好ましくは1〜15mmであり、坪量は、通常30〜1500g/m2、好ましくは50〜1000g/m2である。
トップシート側被覆シート42は、着用者から***される液状***物が透過し得る不織布である。トップシート側被覆シート42として使用される不織布の種類、厚み、坪量等は、着用者から***される液状***物が透過し得る限り特に限定されない。
トップシート側被覆シート42として使用される不織布は、親水化処理された熱可塑性樹脂繊維を含有する。これにより、トップシート側被覆シート42の強度が増加するので、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、貫通孔5の形態が維持されやすい。トップシート側被覆シート42は、親水化処理された熱可塑性樹脂繊維以外の繊維を含有することができる。この場合、トップシート側被覆シート42における親水化処理された熱可塑性樹脂繊維の含有量は、通常1〜100質量%、好ましくは5〜50質量%である。熱可塑性樹脂繊維の具体例、熱可塑性樹脂繊維の親水化処理の具体例、不織布を構成する繊維の具体例、及び不織布の製造方法の具体例は、トップシート2に関して記載した具体例と同様である。
トップシート側被覆シート42として使用される不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例えば、スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)不織布等)等が挙げられるが、これらのうちエアスルー不織布が好ましい。
エアスルー不織布は、熱可塑性樹脂繊維を含有するウェブに熱風を吹き付けて熱可塑性樹脂繊維を熱融着させることにより得られる不織布である。エアスルー不織布は、繊維間の距離が比較的広く、貫通孔5を形成する際にエアスルー不織布中の繊維が分断されにくいので、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、貫通孔5の形態が維持されやすい。また、貫通孔5を形成する際にエアスルー不織布が圧縮され、貫通孔5の周囲部分における繊維密度が高くなるので、液状***物が貫通孔5に導かれやすい。また、エアスルー不織布は繊維密度が比較的低いので、トップシート側被覆シート42に残存する液状***物を低減させることができる。トップシート側被覆シート42として使用されるエアスルー不織布の厚みは、通常0.1〜15mm、好ましくは0.3〜10mmであり、坪量は、通常10〜200g/m2、好ましくは15〜100g/m2である。
バックシート側被覆シート43は、親水性繊維を含有するエアレイド不織布である。エアレイド不織布は、親水性繊維を含有するウェブをエアレイド法により形成した後、ウェブを構成する繊維間をバインダーで結合させることにより得られる不織布である。親水性繊維を含有するエアレイド不織布の内部には、親水性繊維の三次元骨格構造により形成された空隙が存在する。液状***物がバックシート側被覆シート43の面方向に拡散する際、この空隙が液体流路として機能し、効率的な液状***物の拡散が可能となる。被覆シート43として使用されるエアレイド不織布の厚みは、通常0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mmであり、坪量は、通常10〜500g/m2、好ましくは20〜300g/m2である。
エアレイド不織布に含有される親水性繊維は、親水基(例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基等)を有する限り特に限定されるものではない。エアレイド不織布に含有される親水性繊維の具体例は、吸収性コア41に関して記載した具体例と同様である。エアレイド不織布に含有される親水性繊維の繊維長は、通常20〜100mm、好ましくは35〜65mmであり、エアレイド不織布における親水性繊維の含有量は、通常30〜100質量%、好ましくは50〜100質量%である。
バックシート被覆シート43として使用されるエアレイド不織布は、親水性繊維に加えて、熱可塑性樹脂繊維を含有することが好ましい。熱可塑性樹脂繊維は親水化処理されていてもよい。熱可塑性樹脂繊維の具体例、及び熱可塑性樹脂繊維の親水化処理の具体例は、トップシート2に関して記載した具体例と同様である。エアレイド不織布における熱可塑性樹脂繊維の含有量は、通常5〜70質量%、好ましくは10〜50質量%である。エアレイド不織布に含有される熱可塑性樹脂繊維の繊度は、通常0.5〜20dtex、好ましくは1〜5dtexであり、繊維長は、通常0.5〜30mm、好ましくは1〜10mmである。
エアレイド不織布に熱可塑性樹脂繊維を含有させることにより、エアレイド不織布の強度を増加させることができる。特に、エアレイド不織布の製造プロセス(特に、乾燥工程又は熱処理工程)において生じる熱可塑性樹脂繊維の熱融着により、エアレイド不織布の強度を増加させることができる。エアレイド不織布の強度の増加により、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、貫通孔5の形態が維持されやすい。また、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、エアレイド不織布内部の空隙が維持されるので、液状***物がバックシート側被覆シート43の面方向に拡散する際の、空隙の液体流路としての機能が維持される。
エアレイド不織布は、エアレイド法により形成されたウェブを構成する繊維間を結合するバインダーを含有する。バインダーとしては、例えば、アクリル系バインダー(例えば、アクリル・スチレン共重合体等)、ビニル系バインダー(例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等)等が挙げられる。バインダーは、好ましくは、エマルジョンタイプのバインダーである。エアレイド不織布におけるバインダーの含有量は、通常0.5〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。バインダーを付与する方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、プリント法等の常法を使用することができる。バインダーを付与した後、乾燥工程及び熱処理工程が実施される。エアレイド不織布に熱可塑性樹脂繊維が含有される場合、乾燥工程及び熱処理工程において、熱可塑性樹脂繊維の熱融着が生じる。
エアレイド不織布は、例えば、空中に分散させた繊維を吸引し、スクリーンメッシュベルトで受け止めることによりウェブを形成する工程、ウェブにエマルジョンタイプのバインダーを噴霧することによりウェブを構成する繊維間を結合する工程、並びに、乾燥工程及び熱処理工程を経て製造することができる。
図2及び図3に示すように、バックシート側被覆シート43は、接着剤層44を介してバックシート3に積層されている。なお、接着剤層44は、バックシート側被覆シート43とバックシート3との界面のうち、部分的に(例えばドット、スパイラル、ストライプ等のパターンで)設けられている。すなわち、バックシート側被覆シート43とバックシート3とは、部分的には接着剤層44によって接合されており、部分的には非接合状態で直接積層されている。バックシート側被覆シート43が直接又は接着剤層44を介してバックシート3に積層されているので、生理用ナプキン1の厚み方向Zへの液状***物の移行は、バックシート3で遮断され、バックシート側被覆シート43に移行した液状***物は、バックシート側被覆シート43の面方向に拡散する。また、バックシート側被覆シート43とバックシート3とが接着剤層44によって接合されているので、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、バックシート側被覆シート43とバックシート3との離間が防止され、これにより貫通孔5の形態が維持されやすい。接着剤層44に含有される接着剤としては、例えば、ホットメルト接着剤が挙げられ、その具体例としては、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のゴム系を主体とした、又は直鎖状低密度ポリエチレン等のオレフィン系を主体とした感圧型接着剤又は感熱型接着剤;水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ゼラチン等)又は水膨潤性高分子(例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸ナトリウム等)からなる感水性接着剤等が挙げられる。接着剤の塗布方法としては、例えば、スパイラル塗工、コーター塗工、カーテンコーター塗工、サミットガン塗工等が挙げられる。接着剤の塗工量(坪量)は、通常0.1〜200g/m2、好ましくは1〜100g/m2である。
本実施形態では、バックシート側被覆シート43及びバックシート3が、部分的には接着剤層44によって接合されており、部分的には非接合状態で直接積層されているが、バックシート側被覆シート43及びバックシート3の全体が非接合状態で直接積層されていてもよい。
バックシート側被覆シート43とバックシート3との界面と同様に、トップシート側被覆シート42とトップシート2との界面も接着剤によって接合されていてもよい。これにより、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、トップシート側被覆シート42とトップシート2との離間が防止され、貫通孔5の形態が維持されやすい。
図3及び図4に示すように、吸収体4は、バックシート側被覆シート43を吸収性コア41の方向へ圧搾することにより形成された圧搾凹部45を有する。図3に示すように、圧搾凹部45は、トップシート2の方向に向かって凹状の表面を有しており、圧搾凹部45及びバックシート3の間には空間が形成されている。バックシート側被覆シート43に移行した液状***物がバックシート側被覆シート43の面方向に拡散する際、圧搾凹部45及び圧搾凹部45とバックシート3との間の空間が液体流路として機能するので、効率的な液状***物の拡散が可能となる。
図3及び図4に示すように、圧搾凹部45は、高圧搾凹部451及び低圧搾凹部452を有する。「高圧搾」及び「低圧搾」は、圧搾の相対的な高低を意味し、図3及び図4に示すように、高圧搾により形成された高圧搾凹部451の厚みは、低圧搾凹部452の厚みと比較して相対的に小さく、低圧搾により形成された低圧搾凹部452の厚みは、高圧搾凹部451の厚みと比較して相対的に大きい。高圧搾凹部451の厚みは、好ましくは0.05〜0.3mm、さらに好ましくは0.05〜0.2mmであり、低圧搾凹部452の厚みは、好ましくは0.3〜0.8mm、さらに好ましくは0.3〜0.7mmである。高圧搾により形成された高圧搾凹部451の繊維密度は、低圧搾凹部452の繊維密度と比較して相対的に大きく、低圧搾により形成された低圧搾凹部452の繊維密度は、高圧搾凹部451の繊維密度と比較して相対的に大きい。高圧搾凹部451の繊維密度は、好ましくは0.15〜0.30g/cm3、さらに好ましくは0.15〜0.25g/cm3であり、低圧搾凹部452の繊維密度は、好ましくは0.06〜0.2g/cm3であり、さらに好ましくは0.08〜0.15g/cm3である。なお、低圧搾凹部452の厚みは、高圧搾凹部451及び低圧搾凹部452によって囲まれる領域46の厚みより小さいので、低圧搾凹部452の繊維密度は領域46の繊維密度よりも大きく、低圧搾凹部452の剛性は領域46の剛性より高い。
図4及び図5に示すように、吸収体4をバックシート側被覆シート43側から平面視したとき、低圧搾凹部452は、網目状パターンで形成されており、高圧搾凹部451は、網目状パターン内に点在するように形成されている。液体流路として機能する低圧搾凹部452が網目状パターンで形成されているので、液状***物がバックシート側被覆シー43トの面方向に拡散する際、効率的な液状***物の拡散が可能となる。
本実施形態では、図4及び図5に示すように、高圧搾凹部451が、網目状パターンの交差領域内に形成されている。言い換えれば、高圧搾凹部451は、短手方向X及び長手方向Yに点在しており、低圧搾凹部452は、短手方向X及び長手方向Yにおいて、高圧搾凹部451を連結するように形成されている。生理用ナプキン1の使用時に力が加わりやすい網目状パターンの交差領域に高圧搾凹部451を設けることにより、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、吸収性コア41とバックシート側被覆シート43との離間が防止され、低圧搾凹部452の網目状パターンが維持されやすい。
本実施形態では、図4及び図5に示すように、低圧搾凹部452の網目状パターンにおける各網目の形状が正六角形状であり、高圧搾凹部451が正六角形の頂点に配置されており、低圧搾凹部452が正六角形の辺に配置されている。また、本実施形態では、図5に示すように、1つの高圧搾凹部451が、互いに近接する4つの構成要素451a,451b,451c,451dによって構成されており、構成要素451a,451b,451c,451dがそれぞれ平面視矩形状に形成されている。また、本実施形態では、図4及び図5に示すように、低圧搾凹部452が正六角形の辺に配置されているので、1つの高圧搾凹部451に関して、その高圧搾凹部451から延びる3つの低圧搾凹部452(その高圧搾凹部451から下方、左上方及び右上方へ向けて延びる低圧搾凹部452を、それぞれ、第1低圧搾凹部452p、第2低圧搾凹部452q及び第3低圧搾凹部452rとよぶ)が存在しており、第1低圧搾凹部452pと第2低圧搾凹部452qとが成す角θ1、第1低圧搾凹部452pと第3低圧搾凹部452rとが成す角θ2、及び第2低圧搾凹部452qと第3低圧搾凹部452rとが成す角θ3は、いずれも120度である。すなわち、本実施形態では、1つの高圧搾凹部451から延びる3つの低圧搾凹部452において、任意に選択した1つの低圧搾凹部452の延びる第1方向と、残りの低圧搾凹部452から任意に選択した1つの低圧搾凹部452の延びる第2方向とが180度とならないように(直線状とならないように)、複数の低圧搾凹部452が配置されている。このような高圧搾凹部451及び低圧搾凹部452の配置パターンは、高圧搾凹部及び低圧搾凹部の配置パターンの一例であり、高圧搾凹部及び低圧搾凹部の配置パターンは、本実施形態に限定されるものではない。
圧搾凹部45は、吸収体4を被覆シート43側からヒートエンボス処理することにより形成される。ヒートエンボス処理において、バックシート側被覆シート43の表面のうち所定部位を、吸収性コア41の方向へ、トップシート側被覆シート42に至るまで圧縮するとともに加熱することにより、バックシート側被覆シート43、吸収性コア41及びトップシート側被覆シート42を一体化する高圧搾凹部451が形成される。ヒートエンボス処理において、バックシート側被覆シート43の表面のうち所定部位を、吸収性コア41の方向へ、吸収性コア41に至るまで圧縮するとともに加熱することにより、バックシート側被覆シート43及び吸収性コア41を一体化する低圧搾凹部452が形成される。ヒートエンボス処理は、例えば、凸部が外周表面に設けられたエンボスロールと、外周表面が平滑であるフラットロールとの間に、バックシート側被覆シート43、吸収性コア41及びトップシート側被覆シート42が順次積層された積層体を通過させ、バックシート側被覆シート43側からエンボス加工することにより実施される。この際、エンボスロール及び/又はフラットロールの加熱により、圧縮時の加熱が可能である。エンボスロールの凸部は、高圧搾凹部451及び低圧搾凹部452の形状、配置パターン等に対応するように設けられている。高圧搾凹部451及び低圧搾凹部452を含む圧搾凹部45の形成方法は、特開2013−78366号公報に詳細に記載されている。
高圧搾凹部451は、バックシート側被覆シート43、吸収性コア41及びトップシート側被覆シート42を一体化しているため、トップシート側被覆シート42のトップシート側表面に現れる。一方、低圧搾凹部452は、バックシート側被覆シート43及び吸収性コア41を一体化しているため、トップシート側被覆シート42のトップシート側表面に現れない。本実施形態において、高圧搾凹部451は、バックシート側被覆シート43、吸収性コア41及びトップシート側被覆シート42を一体化していているが、バックシート側被覆シート43及び吸収性コア41を一体化していてもよい。
ヒートエンボス処理において、熱可塑性樹脂繊維の熱融着により、バックシート側被覆シート43及び吸収性コア41を効果的に一体化する点から、バックシート側被覆シート43及び/又は吸収性コア41が熱可塑性樹脂繊維を含有することが好ましい。ヒートエンボス処理において、熱可塑性樹脂繊維の熱融着により、バックシート側被覆シート43、吸収性コア41及びトップシート側被覆シート42を効果的に一体化する点から、バックシート側被覆シート43、吸収性コア41及びトップシート側被覆シート42のうち1又は2以上が熱可塑性樹脂繊維を含有することが好ましい。熱可塑性樹脂繊維は親水化処理されていてもよい。熱可塑性樹脂繊維の具体例、及び熱可塑性樹脂繊維の親水化処理の具体例は、トップシート2に関して記載した具体例と同様である。
図4に示すように、吸収体4は、長手方向Yの中央に位置する中央部分40aと、中央部分40aに対して長手方向Yの両側に位置する両側部分40b,40cとを有しており、中央部分40aにおいて、貫通孔5(吸収体貫通部分)は形成されているが、圧搾凹部45は形成されておらず、両側部分40b,40cにおいて、圧搾凹部45は形成されているが、貫通孔5(吸収体貫通部分)は形成されていない。貫通孔5は形成されているが、圧搾凹部45は形成されていない(したがって、繊維密度が低い)吸収体4の中央部分40aにおいては、トップシート2の表面領域20に供給された直後の比較的流速の速い液状***物を吸収することができるとともに、圧搾凹部45は形成されている(したがって、繊維密度が高い)が、貫通孔5は形成されていない吸収体4の両側部分40b,40cにおいては、トップシート2の表面をつたって流れる比較的流速の遅い液状***物を吸収体4へ引き込むことができる。この作用効果は、トップシート2の表面領域20に供給される液状***物が、高粘度の液体(例えば、経血)である場合に特に有用である。
図1〜図3に示すように、貫通孔5は、トップシート2の表面領域20からバックシート側被覆シート43のバックシート側表面に達する。すなわち、貫通孔5は、一方の開口部をトップシート2の表面領域20に有し、他方の開口部をバックシート側被覆シート43のバックシート側表面に有する。貫通孔5の径は、通常0.1〜10mm、好ましくは0.3〜5mmであり、貫通孔5の間隔は、通常1〜30mm、好ましくは2〜20mmであり、表面領域20の単位面積当たりの貫通孔5の個数は、通常0.5〜10個/cm2、好ましくは1〜5個/cm2である。本実施形態では、図1に示すように、生理用ナプキン1をトップシート2側から平面視したとき、貫通孔5は千鳥格子状に形成されているが、貫通孔5の形成パターンは適宜変更可能である。
本実施形態において、貫通孔5は、トップシート2及び吸収体4の穿孔により形成される。本実施形態では、貫通孔5のうちトップシート貫通部分及び吸収体貫通部分が一体的に形成されるが、トップシート貫通部分及び吸収体貫通部分を別々に形成してもよい。この際、トップシート貫通部分及び吸収体貫通部分の位置及び大きさは、トップシート貫通部分と吸収体貫通部分とが通じるように調整される。
図1〜図3に示すように、生理用ナプキン1は、トップシート2を吸収体4の方向へ圧搾することにより形成された内側圧搾条溝8a及び外側圧搾条溝8bを有する。図1に示すように、内側圧搾条溝8aは、トップシート2の表面領域20の周縁に断続的に形成されており、外側圧搾条溝8bは、内側圧搾条溝8bの外側に形成されている。なお、このような圧搾条溝は、生理用ナプキン1に必須ではなく、内側圧搾条溝及び外側圧搾条溝の有無、形成パターン等は適宜変更可能である。
内側圧搾条溝8a及び外側圧搾条溝8bは、ヒートエンボス処理により形成された凹部である。ヒートエンボス処理では、トップシート2の肌側表面のうち、所定部位が、吸収体4の方向へ、吸収性コア41に至るまで圧縮されるとともに加熱される。これにより、トップシート2、トップシート側被覆シート42及び吸収性コア41を一体化する内側圧搾条溝8a及び外側圧搾条溝8bが、凹部として形成される。
ヒートエンボス処理は、例えば、凸部が外周表面に設けられたエンボスロールと、外周表面が平滑であるフラットロールとの間に、トップシート2及び吸収体4の積層体を通過させて、トップシート2側からエンボス処理することにより実施される。この際、エンボスロール及び/又はフラットロールの加熱により、圧縮時の加熱が可能である。エンボスロールの凸部は、内側圧搾条溝8a及び外側圧搾条溝8bの形状、配置パターン等に対応するように設けられる。加熱温度は通常80〜180℃、好ましくは120〜160℃であり、圧力は10〜3000N/mm、好ましくは50〜500N/mmであり、処理時間は通常0.0001〜5秒、好ましくは0.005〜2秒である。
ヒートエンボス処理において、熱可塑性樹脂繊維の熱融着により、トップシート2、トップシート側被覆シート42及び吸収性コア41を効果的に一体化するために、トップシート2、トップシート側被覆シート42及び吸収性コア41のうち1又は2以上が熱可塑性樹脂繊維を含有することが好ましい。
生理用ナプキン1において、トップシート2の表面領域20に供給された液状***物は、貫通孔5を通じてバックシート側被覆シート43に移行する。バックシート側被覆シート43は直接又は接着剤層44を介してバックシート3に積層されているので、生理用ナプキン1の厚み方向Zへの液状***物の移行は、バックシート3で遮断され、バックシート側被覆シート43に移行した液状***物は、バックシート側被覆シート43の面方向に拡散する。バックシート側被覆シート43は、親水性繊維を含有するエアレイド不織布であり、その内部には、親水性繊維の三次元骨格構造により形成された空隙が存在する。液状***物がバックシート側被覆シート43の面方向に拡散する際、この空隙が、液体流路として機能し、効率的な液状***物の拡散が可能となる。
生理用ナプキン1において、吸収性コア41とトップシート側被覆シート42及びバックシート側被覆シート43とが接着剤によって接合しているので、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、吸収性コア41とトップシート側被覆シート42及びバックシート側被覆シート43との離間が防止され、これにより貫通孔5の形態が維持されやすい。
生理用ナプキン1において、トップシート2及びトップシート側被覆シート42は、親水化処理された熱可塑性樹脂繊維を含有する不織布であるので、トップシート2及びトップシート側被覆シート42の強度を増加している。したがって、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、貫通孔5の形態が維持されやすい。
生理用ナプキン1において、吸収性コア41に含有されるフラッフパルプは、貫通孔5の形成時に加えられる力により圧着されるので、生理用ナプキン1に力(例えば、着用者の体圧)が加わっても、貫通孔5の形態が維持されやすい。なお、フラッフパルプの圧着には、セルロース繊維間の水素結合が関与する。
生理用ナプキン1は、トップシート2からバックシート側被覆シート43への貫通孔5を通じた液状***物の移行、バックシート側被覆シート43の面方向への液状***物の拡散、及びに貫通孔5の形態の維持により、トップシート2からバックシート側被覆シートへ43の液状***物の移行を効果的に実現することができる。このため、生理用ナプキン1は、トップシート2に残存する液状***物を低減させることができ、これにより、トップシート2のべたつき感を防止し、サラサラ感を維持することができる。この作用効果は、トップシート2に供給される液状***物が、高粘度の経血である場合に特に有用である。
トップシート2に供給される液状***物が経血である場合、トップシート2の表面領域20のうち少なくとも貫通孔5の開口部周囲に、40℃における動粘度が0.01〜80mm2/s、抱水率が0.01〜4.0質量%、重量平均分子量が1,000未満である血液滑性付与剤が塗工されていることが好ましい。
血液滑性付与剤は、表面領域20のうち少なくとも貫通孔5の開口部周囲に塗工されている限り、表面領域20のうち貫通孔5の開口部周囲以外に塗工されていてもよいし、トップシート2の肌側表面のうち表面領域20以外の領域(例えば、表面領域20の周辺領域)に塗工されていてもよい。例えば、血液滑性付与剤は、トップシート2の肌側表面の略全体又は吸収体配置領域の略全体に塗工することができる。
血液滑性付与剤が、表面領域20のうち少なくとも貫通孔5の開口部周囲に塗工されていることにより、次の作用効果が発揮される。トップシート2の表面領域20に供給された経血は、貫通孔5の開口部周囲に存在する血液滑性付与剤とともに貫通孔5に滑落し、バックシート側被覆シート43に移行することができる。したがって、トップシートのべたつき感を防止し、サラサラ感を維持することができる。このような血液滑性付与剤の作用効果は、月経時の経血排出量の変化に関わらず(すなわち、一度に排出される経血が大量であっても少量であっても)発揮される。
なお、血液滑性付与剤は、潤滑剤としても作用し、繊維同士の摩擦を低減させるので、トップシート2全体のしなやかさを向上させることができる。
生理用ナプキン1は、スキンケア組成物、ローション組成物等を含む公知の吸収性物品とは異なり、エモリエント剤、固定化剤等の成分は不要であり、血液滑性付与剤は、単体で、トップシート2に適用することができる。
血液滑性付与剤の坪量は、通常約1〜30g/m2、好ましくは約2〜20g/m2、さらに好ましくは約3〜10g/m2である。血液滑性付与剤の坪量が、約1g/m2を下回ると、経血がトップシート2に残存しやすくなる一方、血液滑性付与剤の坪量が約30g/m2を超えると、着用中のべたべた感が増加しやすい。
血液滑性付与剤の坪量は、例えば、以下のように測定することができる。
(1)トップシートの測定すべき範囲を、鋭利な刃物、例えば、カッターの替え刃を用いて、できるだけその厚さを変化させないように切り出して、サンプルを得る。
(2)サンプルの面積:SA(m2)及び質量:SM0(g)を測定する。
(3)サンプルを、血液滑性付与剤を溶解させることができる溶媒、例えば、エタノール、アセトン等の中で、少なくとも3分間攪拌し、血液滑性付与剤を溶媒中に溶解させる。
(4)サンプルを、質量を測定したろ紙の上でろ過し、ろ紙上で、サンプルを溶媒で十分に洗浄する。ろ紙上のサンプルを、60℃のオーブン内で乾燥させる。
(5)ろ紙及びサンプルの質量を測定し、そこからろ紙の質量を減ずることにより、乾燥後のサンプルの質量:SM1(g)を算出する。
(6)血液滑性付与剤の坪量BBS(g/m2)を、次の式:
BBS(g/m2)=[SM0(g)−SM1(g)]/SA(m2)
により算出する。
なお、誤差を少なくするために、サンプルの総面積が100cm2を超えるように、複数の吸収性物品から複数のサンプルを採取し、複数回実験を繰り返し、それらの平均値を採用する。
血液滑性付与剤は、トップシート2の繊維間の空隙を閉塞しないように塗工されていることが好ましい。例えば、血液滑性付与剤は、トップシート2の繊維の表面に液滴状又は粒子状で付着しているか、又は繊維の表面を覆っている。
血液滑性付与剤は、その表面積が大きくなるように塗工されていることが好ましい。これにより、血液滑性付与剤と経血との接触面積が大きくなり、血液滑性付与剤が経血とともに滑落しやすくなる。血液滑性付与剤が液滴状又は粒子状で存在する場合には、粒径を小さくすることにより、表面積を大きくすることができる。
血液滑性付与剤の塗工方法としては、例えば、塗布装置(例えば、スパイラルコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ディップコーター等の非接触式のコーター、接触式のコーター等)を用いる方法が挙げられる。好ましい塗布装置は、非接触式のコーターである。これにより、液滴状又は粒子状の血液滑性付与剤を全体に均一に分散させることができるとともに、トップシート2に与えるダメージを低減することができる。
血液滑性付与剤は、所望により、揮発性溶媒、例えば、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、芳香族系溶媒等を含む塗布液として塗装することができる。塗布液が揮発性溶媒を含むことにより、血液滑性付与剤を含む塗布液の粘度が下がるために、塗布が容易になる、塗装時の加温が不要になる等の塗布工程の簡易化が図れる。
血液滑性付与剤は、例えば、室温で液体の場合にはそのまま、又は粘度を下げるために加熱して、室温で固体の場合には液化するように加熱して、コントロールシームHMA(Hot Melt Adhesive)ガンによって塗工することができる。コントロールシームHMAガンのエアー圧を高くすることにより、微粒子状の血液滑性付与剤を塗工することができる。なお、血液滑性付与剤の塗布量は、例えば、コントロールシームHMAガンからの塗出量を増減することにより調節することができる。
血液滑性付与剤は、トップシート2を製造する際に塗工してもよいし、生理用ナプキン1の製造ラインにおいて塗工してもよい。設備投資を抑制する観点からは、生理用ナプキン1の製造ラインにおいて、血液滑性付与剤を塗工することが好ましく、さらに、血液滑性付与剤が脱落し、ラインを汚染することを抑制するためには、製造ラインの川下工程、具体的には、製品を個包装に封入する直前に、血液滑性付与剤を塗工することが好ましい。
以下、血液滑性付与剤について詳細に説明する。
血液滑性付与剤は、40℃における動粘度が約0.01〜約80mm2/sであり、抱水率が約0.05〜約4.0質量%であり、重量平均分子量が約1,000未満である。
血液滑性付与剤の40℃における動粘度は、約0〜約80mm2/sの範囲において適宜調整することができるが、好ましくは約1〜約70mm2/s、さらに好ましくは約3〜約60mm2/s、さらに一層好ましくは約5〜約50mm2/s、さらに一層好ましくは約7〜約45mm2/sである。なお、本明細書では、40℃における動粘度を、単に「動粘度」と称する場合がある。
動粘度は、a)血液滑性付与剤の分子量が大きくなるほど、b)極性基、例えば、カルボニル結合(−CO−)、エーテル結合(−O−)、カルボキシル基(−COOH)、ヒドロキシル基(−OH)等の比率が高いほど、そしてc)IOBが大きくなるほど、高くなる傾向がある。
40℃において、約0〜約80mm2/sの動粘度を有するためには、血液滑性付与剤の融点が45℃以下であることが好ましい。血液滑性付与剤が40℃で結晶を含むと、その動粘度が高くなる傾向があるからである。
血液滑性付与剤における動粘度の意義については後述するが、動粘度が約80mm2/sを超えると、血液滑性付与剤の粘性が高く、トップシートの肌当接面に到達した経血と共に、凸部から凹部に滑落し、次いで吸収体内部に移行することが難しくなる傾向がある。
動粘度は、JIS K 2283:2000の「5.動粘度試験方法」に従って、キャノンフェンスケ逆流形粘度計を用いて、40℃の試験温度で測定されることができる。
血液滑性付与剤の抱水率は、約0.01〜約4.0質量%の範囲で適宜調整することができるが、好ましくは約0.02〜約3.5質量%、さらに好ましくは約0.03〜約3.0質量%、さらに一層好ましくは約0.04〜約2.5質量%、さらに一層好ましくは約0.05〜約2.0質量%である。
本明細書において、「抱水率」は、物質が、保持することができる水の比率(質量)を意味し、以下の通りに測定することができる。
(1)40℃の恒温室に、20mLの試験管、ゴム栓、測定すべき物質及び脱イオン水を一昼夜静置する。
(2)恒温室で、試験管に、測定すべき物質5.0gと、脱イオン水5.0gを投入する。
(3)恒温室で、試験管の口をゴム栓をし、試験管を1回転させ、5分間静置する。
(4)恒温室で、測定すべき物質の層(通常は、上層)3.0gを、直径90mmの、質量:W0(g)のガラス製シャーレに採取する。
(5)シャーレを、オーブン内で、105℃で3時間加熱し、水分を蒸発させ、シャーレごと、質量:W1(g)を測定する。
(6)抱水率を、以下の式に従って算出する。
抱水率(質量%)=100×[W0(g)−W1(g)]/3.0(g)
測定は3回実施し、平均値を採用する。
血液滑性付与剤における抱水率の意義については後述するが、抱水率が低くなると、血液滑性付与剤と、経血との親和性が低下し、トップシートの肌当接面に到達した経血と共に吸収体に移行しにくくなる傾向がある。一方、抱水率が高くなると、界面活性剤のように、経血との親和性が非常に高くなり、トップシートの肌当接面に、吸収した血液が残存し、トップシートの肌当接面が赤く着色しやすくなる傾向がある。
抱水率は、a)血液滑性付与剤の分子量が小さくなるほど、そしてb)極性基、例えば、カルボニル結合(−CO−)、エーテル結合(−O−)、カルボキシル基(−COOH)、ヒドロキシル基(−OH)等の比率が高いほど、値が大きくなる傾向がある。血液滑性付与剤が、より親水性を有するからである。また、抱水率は、IOBが大きくなるほど、すなわち、無機性値が高いほど、そして有機性値が小さいほど、値が大きくなる傾向がある。血液滑性付与剤が、より親水性を有することになるからである。
血液滑性付与剤における動粘度と、抱水率との意義について説明する。
着用者から***された経血が***口当接領域に到達すると、凸部に存在する血液滑性付与剤と接触し、これとともに凹部に滑落し、トップシートを通過して吸収体に移行する。
より詳細には、40℃において約0.01〜約80mm2/sの動粘度を有する血液滑性付与剤は、着用者の体温付近で非常に低粘度であり且つ経血と一定の親和性を有するため、経血とともに、凸部から凹部に滑落し、その滑落の際の勢いを利用して、経血が、トップシートを通過し、吸収体に迅速に移行することができると考えられる。また、凸部に存在する血液滑性付与剤は、約0.01〜約4.0質量%の抱水率を有するため、経血中の、主に親水性成分(血漿等)と親和性を有しないため、経血をトップシート上に残存させにくいと考えられる。
着用者から排出された経血が大量である場合には、経血そのものの運動エネルギーが大きく、血液滑性付与剤の動粘度の値が比較的高く経血と共に滑落しにくい場合であっても、抱水率の値が比較的高く経血の親水性成分と親和性が高い場合であっても、重量分子量の値が比較的高く経血と共に滑落しにくい場合であっても、そしてトップシートの肌当接面に凹凸構造がない場合であっても、経血は吸収体に移行しやすいと考えられる。
一方、着用者から排出された経血が少量である場合には、経血の運動エネルギーが小さく、トップシートの肌当接面に到達した経血が、その場に留まりやすい傾向がある。従って、血液滑性付与剤が、経血とともに、凸部から凹部に滑落し、そして経血をトップシートの内部に引き込み、次いで吸収体に引き込むことにより、経血を迅速に吸収体に移行させることができる。
血液滑性付与剤は、約1,000未満の重量平均分子量を有し、そして好ましくは約900未満の重量平均分子量を有する。重量平均分子量が約1,000以上であると、血液滑性付与剤そのものにタック性が生じ、着用者に不快感を与える傾向があるからである。また、重量平均分子量が高くなると、血液滑性付与剤の粘度が高くなる傾向があるため、加温により、血液滑性付与剤の粘度を、塗工に適した粘度に下げることが難しくなり、その結果、血液滑性付与剤を、溶媒で希釈しなければならない場合も生じうる。
血液滑性付与剤は、約100以上の重量平均分子量を有することが好ましく、そして約200以上の重量平均分子量を有することがより好ましい。重量平均分子量が小さくなると、血液滑性付与剤の蒸気圧が高くなり、保存中に気化し、量の減少、着用時の臭気等の問題が発生する場合があるからである。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」は、多分散系の化合物(例えば、逐次重合により製造された化合物、複数の脂肪酸と、複数の脂肪族1価アルコールとから生成されたエステル)と、単一化合物(例えば、1種の脂肪酸と、1種の脂肪族1価アルコールから生成されたエステル)とを含む概念であり、Ni個の分子量Miの分子(i=1、又はi=1,2・・・)からなる系において、次の式:
Mw=ΣNiMi 2/ΣNiMi
により求められるMwを意味する。
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる、ポリスチレン換算の値を意味する。
GPCの測定条件としては、例えば、以下が挙げられる。
機種:(株)日立ハイテクノロジーズ製 高速液体クロマトグラム Lachrom Elite
カラム:昭和電工(株)製 SHODEX KF−801、KF−803及びKF−804
溶離液:THF
流量 :1.0mL/分
打込み量:100μL
検出:RI(示差屈折計)
なお、本明細書の実施例に記載される重量平均分子量は、上記条件により測定したものである。
血液滑性付与剤は、約0.00〜約0.60のIOBを有することができる。
IOB(Inorganic Organic Balance)は、親水性及び親油性のバランスを示す指標であり、本明細書では、小田らによる次式:
IOB=無機性値/有機性値
により算出される値を意味する。
無機性値及び有機性値は、藤田穆「有機化合物の予測と有機概念図」化学の領域Vol.11,No.10(1957)p.719−725)に記載される有機概念図に基づく。
藤田氏による、主要な基の有機性値及び無機性値を、下記表1にまとめる。
例えば、炭素数14のテトラデカン酸と、炭素数12のドデシルアルコールとのエステルの場合には、有機性値が520(CH2,20×26個)、無機性値が60(−COOR,60×1個)となるため、IOB=0.12となる。
血液滑性付与剤において、IOBは、約0.00〜約0.60であることが好ましく、約0.00〜約0.50であることがより好ましく、約0.00〜約0.40であることがさらに好ましく、そして約0.00〜約0.30であることがさらに好ましい。IOBが上述の範囲にあると、抱水力及び動粘度が、上述の要件を満たしやすくなるからである。
血液滑性付与剤は、45℃以下の融点を有することが好ましく、40℃以下の融点を有することがさらに好ましい。血液滑性付与剤が45℃以下の融点を有することにより、血液滑性付与剤が、上述の範囲の動粘度を有しやすくなるからである。
本明細書において、「融点」は、示差走査熱量分析計において、昇温速度10℃/分で測定した場合の、固形状から液状に変化する際の吸熱ピークのピークトップ温度を意味する。融点は、例えば、島津製作所社製のDSC−60型DSC測定装置を用いて測定することができる。
血液滑性付与剤は、約45℃以下の融点を有すれば、室温(約25℃)で液体であっても、又は固体であってもよい、すなわち、融点が約25℃以上でも、又は約25℃未満でもよく、そして例えば、約−5℃、約−20℃等の融点を有することができる。
血液滑性付与剤は、その融点に下限は存在しないが、その蒸気圧が低いことが好ましい。血液滑性付与剤の蒸気圧は、25℃(1気圧)で約0〜約200Paであることが好ましく、約0〜約100Paであることがより好ましく、約0〜約10Paであることがさらに好ましく、約0〜約1Paであることがさらに一層好ましく、約0.0〜約0.1Paであることがさらに一層好ましい。
本開示の吸収性物品が、人体に接して用いられることを考慮すると、上記蒸気圧は、40℃(1気圧)で約0〜約700Paであることが好ましく、約0〜約100Paであることがより好ましく、約0〜約10Paであることがさらに好ましく、約0〜約1Paであることがさらに一層好ましく、約0.0〜約0.1Paであることがさらに一層好ましい。血液滑性付与剤の蒸気圧が高いと、保存中に気化し、その量の減少、着用時の臭気等の問題が発生する場合があるからである。
また、血液滑性付与剤の融点を、気候、着用時間の長さ等に応じて選択することができる。例えば、平均気温が約10℃以下の地域では、約10℃以下の融点を有する血液滑性付与剤を採用することにより、経血が***された後、周囲温度によって冷却された場合であっても、血液滑性付与剤が機能しやすいと考えられる。
また、吸収性物品が長時間にわたって使用される場合には、血液滑性付与剤の融点は、約45℃以下の範囲で高い方が好ましい。汗、着用時の摩擦等の影響を受けにくく、長時間着用した場合であっても、血液滑性付与剤が偏りにくいからである。
当技術分野では、経血の表面張力等を変化させ、経血を迅速に吸収することを目的として、トップシートの肌当接面を、界面活性剤でコーティングすることが行われている。しかし、界面活性剤がコーティングされたトップシートは、経血中の親水性成分(血漿等)と親和性が高く、それらを引き寄せ、むしろ経血をトップシートに残存させるようにはたらく傾向がある。血液滑性付与剤は、従来公知の界面活性剤と異なり、経血と親和性が低く、経血をトップシートに残存させず、迅速に吸収体に移行させることができる。
血液滑性付与剤は、好ましくは、次の(i)〜(iii)、
(i)炭化水素、
(ii) (ii−1)炭化水素部分と、(ii−2)炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、及び
(iii) (iii−1)炭化水素部分と、(iii−2)炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル基(−CO−)及びオキシ基(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基と、(iii−3)炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
本明細書において、「炭化水素」は、炭素と水素とから成る化合物を意味し、鎖状炭化水素、例えば、パラフィン系炭化水素(二重結合及び三重結合を含まない、アルカンとも称される)、オレフィン系炭化水素(二重結合を1つ含む、アルケンとも称される)、アセチレン系炭化水素(三重結合を1つ含む、アルキンとも称される)、及び二重結合及び三重結合から成る群から選択される結合を2つ以上含む炭化水素、並びに環状炭化水素、例えば、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素が挙げられる。
炭化水素としては、鎖状炭化水素及び脂環式炭化水素であることが好ましく、鎖状炭化水素であることがより好ましく、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、及び二重結合を2つ以上含む炭化水素(三重結合を含まない)であることがさらに好ましく、そしてパラフィン系炭化水素であることがさらに好ましい。
鎖状炭化水素には、直鎖状炭化水素及び分岐鎖状炭化水素が含まれる。
上記(ii)及び(iii)の化合物において、オキシ基(−O−)が2つ以上挿入されている場合には、各オキシ基(−O−)は隣接していない。従って、上記(ii)及び(iii)の化合物には、オキシ基が連続する化合物(いわゆる、過酸化物)は含まれない。
また、上記(iii)の化合物では、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子がカルボキシル基(−COOH)で置換された化合物よりも、炭化水素部分の少なくとも1つの水素原子が、ヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物の方が好ましい。カルボキシル基は、経血中の金属等と結合し、血液滑性付与剤の抱水率が高くなり、所定の範囲を超える場合があるからである。これは、IOBの観点からも同様である。表1に示すように、カルボキシル基は、経血中の金属等と結合し、無機性値が150から、400以上へと大幅に上昇するため、カルボキシル基を有する血液滑性付与剤は、使用時にIOBの値が約0.60を上回る場合がありうる。
血液滑性付与剤は、より好ましくは、次の(i’)〜(iii’)、
(i’)炭化水素、
(ii’) (ii’−1)炭化水素部分と、(ii’−2)炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合とを有する化合物、及び
(iii’) (iii’−1)炭化水素部分と、(iii’−2)炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)、及びエーテル結合(−O−)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる結合と、(iii’−3)炭化水素部分の水素原子を置換する、カルボキシル基(−COOH)及びヒドロキシル基(−OH)から成る群から選択される、一又は複数の、同一又は異なる基とを有する化合物、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
上記(ii’)及び(iii’)の化合物において、2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合、すなわち、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート結合(−OCOO−)及びエーテル結合(−O−)から選択される2以上の同一又は異なる結合が挿入されている場合には、各結合は隣接しておらず、各結合の間には、少なくとも、炭素原子が1つ介在する。
血液滑性付与剤は、さらに好ましくは、炭化水素部分に、炭素原子10個当たり、カルボニル結合(−CO−)を約1.8個以下、エステル結合(−COO−)を2個以下、カーボネート結合(−OCOO−)を約1.5個以下、エーテル結合(−O−)を約6個以下、カルボキシル基(−COOH)を約0.8個以下、そして/又はヒドロキシル基(−OH)を約1.2個以下有することができる。
血液滑性付与剤は、さらに好ましくは、次の(A)〜(F)、
(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル、
(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル、
(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル、
(D)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物、
(E)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコール、又はそのアルキルエステル若しくはアルキルエーテル、及び
(F)鎖状炭化水素、
並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
以下、(A)〜(F)に従う血液滑性付与剤について詳細に説明する。
[(A) (A1)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル]
(A)(A1)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(A2)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物とのエステル(以下、「化合物(A)」と称する場合がある)は、上述の動粘度、抱水率及び重量平均分子量を有する限り、全てのヒドロキシル基がエステル化されていなくともよい。
(A1)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(A1)」と称する場合がある)としては、例えば、鎖状炭化水素テトラオール、例えば、アルカンテトラオール、例えば、ペンタエリトリトール、鎖状炭化水素トリオール、例えば、アルカントリオール、例えば、グリセリン、及び鎖状炭化水素ジオール、例えば、アルカンジオール、例えば、グリコールが挙げられる。
(A2)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のカルボキシル基とを有する化合物としては、例えば、炭化水素上の1つの水素原子が、1つのカルボキシル基(−COOH)で置換された化合物、例えば、脂肪酸が挙げられる。
化合物(A)としては、例えば、(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、及び(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
[(a
1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、次の式(1):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステル、次の式(2):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステル、次の式(3):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステル、次の式(4):
のペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
(式中、R
1〜R
4は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルを構成する脂肪酸(R1COOH、R2COOH,R3COOH,及びR4COOH)としては、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルが、動粘度、抱水率及び重量平均分子量の要件を満たすものであれば、特に制限されないが、例えば、飽和脂肪酸、例えば、C2〜C30の飽和脂肪酸、例えば、酢酸(C2)(C2は、炭素数を示し、R1C、R2C,R3C又はR4Cの炭素数に相当する、以下同じ)、プロパン酸(C3)、ブタン酸(C4)及びその異性体、例えば、2−メチルプロパン酸(C4)、ペンタン酸(C5)及びその異性体、例えば、2−メチルブタン酸(C5)、2,2−ジメチルプロパン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)及びその異性体、例えば、2−エチルヘキサン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、オクタデカン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ドコサン酸(C22)、テトラコサン酸(C24)、ヘキサコサン酸(C26)、オクタコサン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等、並びに列挙されていないこれらの異性体が挙げられる。
脂肪酸はまた、不飽和脂肪酸であることができる。不飽和脂肪酸としては、例えば、C3〜C20の不飽和脂肪酸、例えば、モノ不飽和脂肪酸、例えば、クロトン酸(C4)、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、ガドレイン酸(C20)、エイコセン酸(C20)等、ジ不飽和脂肪酸、例えば、リノール酸(C18)、エイコサジエン酸(C20)等、トリ不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸、例えば、α-リノレン酸(C18)及びγ-リノレン酸(C18)、ピノレン酸(C18)、エレオステアリン酸、例えば、α-エレオステアリン酸(C18)及びβ-エレオステアリン酸(C18)、ミード酸(C20)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20)、エイコサトリエン酸(C20)等、テトラ不飽和脂肪酸、例えば、ステアリドン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコサテトラエン酸(C20)等、ペンタ不飽和脂肪酸、例えば、ボセオペンタエン酸(C18)、エイコサペンタエン酸(C20)等、並びにこれらの部分水素付加物が挙げられる。
ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルとしては、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステル、すなわち、ペンタエリトリトールと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルとしては、抱水率の値を小さくする観点から、ジエステル、トリエステル又はテトラエステルであることが好ましく、トリエステル又はテトラエステルであることがより好ましく、そしてテトラエステルであることがさらに好ましい。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(1)において、R1C、R2C、R3C及びR4C部分の炭素数の合計が、約15であることが好ましい(炭素数の合計が15の場合に、IOBが0.60となる)。
ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステルでは、例えば、ペンタエリトリトールと、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)、例えば、2−エチルヘキサン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)及び/又はドデカン酸(C12)とのテトラエステルが挙げられる。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(2)において、R1C、R2C及びR3C部分の炭素数の合計が、約19以上であることが好ましい(炭素数の合計が19の場合に、IOBが0.58となる)。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、上記式(3)において、R1C及びR2C部分の炭素数の合計が、約22以上であることが好ましい(炭素数の合計が22の場合に、IOBが0.59となる)。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルでは、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルを構成する脂肪酸の炭素数、すなわち、上記式(4)において、R1C部分の炭素数が、約25以上であることが好ましい(炭素数が25の場合に、IOBが0.60となる)。
なお、IOBの計算に当たっては、二重結合、三重結合、iso分岐、及びtert分岐の影響は、考慮していない(以下、同様である)。
ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、ユニスター H−408BRS、H−2408BRS−22(混合品)等(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
[(a
2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、次の式(5):
のグリセリンと脂肪酸とのトリエステル、次の式(6):
のグリセリンと脂肪酸とのジエステル、及び次の式(7):
(式中、R
5〜R
7は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のグリセリンと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
グリセリンと脂肪酸とのエステルを構成する脂肪酸(R5COOH、R6COOH及びR7COOH)としては、グリセリンと脂肪酸とのエステルが、動粘度、抱水率及び重量平均分子量の要件を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙される脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、グリセリンと脂肪酸とのエステル、すなわち、グリセリンと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、グリセリンと脂肪酸とのエステルとしては、抱水率の値を小さくする観点から、ジエステル又はトリエステルであることが好ましく、そしてトリエステルであることがより好ましい。
グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、トリグリセリドとも称され、例えば、グリセリンとオクタン酸(C8)とのトリエステル、グリセリンとデカン酸(C10)とのトリエステル、グリセリンとドデカン酸(C12)とのトリエステル、及びグリセリンと、2種又は3種の脂肪酸とのトリエステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。
グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのトリエステルとしては、例えば、グリセリンと、オクタン酸(C8)及びデカン酸(C10)とのトリエステル、グリセリンと、オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)及びドデカン酸(C12)とのトリエステル、グリセリンと、オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)及びオクタデカン酸(C18)とのトリエステル等が挙げられる。
融点を約45℃以下とする観点から考察すると、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(5)において、R5C、R6C及びR7C部分の炭素数の合計が、約40以下であることが好ましい。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(5)において、R5C、R6C及びR7C部分の炭素数の合計が、約12以上であることが好ましい(炭素数の合計が12の場合に、IOBが0.60となる)。
グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、いわゆる、脂肪であり、人体を構成しうる成分であるため、安全性の観点から好ましい。
グリセリンと脂肪酸とのトリエステルの市販品としては、トリヤシ油脂肪酸グリセリド、NA36、パナセート800、パナセート800B及びパナセート810S、並びにトリC2L油脂肪酸グリセリド及びトリCL油脂肪酸グリセリド(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
グリセリンと脂肪酸とのジエステルは、ジグリセリドとも称され、例えば、グリセリンとデカン酸(C10)とのジエステル、グリセリンとドデカン酸(C12)とのジエステル、グリセリンとヘキサデカン酸(C16)とのジエステル、及びグリセリンと、2種の脂肪酸とのジエステル、並びにこれらの混合物が挙げられる。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、グリセリンと脂肪酸とのジエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのジエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計、すなわち、式(6)において、R5C及びR6C部分の炭素数の合計が、約16以上であることが好ましい(炭素数の合計が16の場合にIOBが0.58となる)。
グリセリンと脂肪酸とのモノエステルは、モノグリセリドとも称され、例えば、グリセリンのオクタデカン酸(C18)モノエステル、グリセリンのドコサン酸(C22)モノエステル等が挙げられる。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、グリセリンと脂肪酸とのモノエステルでは、グリセリンと脂肪酸とのモノエステルを構成する脂肪酸の炭素数、すなわち、式(7)において、R5C部分の炭素数が、約19以上であることが好ましい(炭素数が19の場合に、IOBが0.59となる)。
[(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、C2〜C6の鎖状炭化水素ジオール、例えば、C2〜C6のグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールと、脂肪酸とのモノエステル又はジエステルが挙げられる。
具体的には、鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、次の式(8):
R8COOCkH2kOCOR9 (8)
(式中、kは、2〜6の整数であり、そしてR8及びR9は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪酸とのジエステル、及び次の式(9):
R8COOCkH2kOH (9)
(式中、kは、2〜6の整数であり、そしてR8は、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルにおいて、エステル化すべき脂肪酸(式(8)及び式(9)において、R8COOH及びR9COOHに相当する)としては、C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルが、動粘度、抱水率及び重量平均分子量の要件を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、式(8)に示されるブチレングリコール(k=4)と脂肪酸とのジエステルでは、R8C及びR9C部分の炭素数の合計が、約6以上であることが好ましい(炭素数の合計が6の場合に、IOBが0.60となる)。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、式(9)に示されるエチレングリコール(k=2)と脂肪酸とのモノエステルでは、R8C部分の炭素数が、約12以上であることが好ましい(炭素数が12の場合に、IOBが0.57となる)。
C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステル、すわなち、C2〜C6グリコールと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、抱水率の値を小さくする観点から、炭素数の大きいグリコールに由来する、グリコールと脂肪酸とのエステル、例えば、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールに由来するグリコールと脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
さらに、C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、抱水率の値を小さくする観点から、ジエステルであることが好ましい。
C2〜C6グリコールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、例えば、コムポールBL、コムポールBS(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
[(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル]
(B) (B1)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物と、(B2)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエーテル(以下、「化合物(B)」と称する場合がある)は、上述の動粘度、抱水率及び重量平均分子量を有する限り、全てのヒドロキシル基がエーテル化されていなくともよい。
(B1)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する2〜4個のヒドロキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(B1)」と称する場合がある)としては、「化合物(A)」において化合物(A1)として列挙されるもの、例えば、ペンタエリトリトール、グリセリン、及びグリコールが挙げられる。
(B2)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物(以下、「化合物(B2)」と称する場合がある)としては、例えば、炭化水素の1個の水素原子が、1個のヒドロキシル基(−OH)で置換された化合物、例えば、脂肪族1価アルコール、例えば、飽和脂肪族1価アルコール及び不飽和脂肪族1価アルコールが挙げられる。
飽和脂肪族1価アルコールとしては、例えば、C1〜C20の飽和脂肪族1価アルコール、例えば、メチルアルコール(C1)(C1は、炭素数を示す、以下同じ)、エチルアルコール(C2)、プロピルアルコール(C3)及びその異性体、例えば、イソプロピルアルコール(C3)、ブチルアルコール(C4)及びその異性体、例えば、sec−ブチルアルコール(C4)及びtert−ブチルアルコール(C4)、ペンチルアルコール(C5)、ヘキシルアルコール(C6)、ヘプチルアルコール(C7)、オクチルアルコール(C8)及びその異性体、例えば、2−エチルヘキシルアルコール(C8)、ノニルアルコール(C9)、デシルアルコール(C10)、ドデシルアルコール(C12)、テトラデシルアルコール(C14)、ヘキサデシルアルコール(C16)、へプラデシルアルコール(C17)、オクタデシルアルコール(C18)、及びエイコシルアルコール(C20)、並びに列挙されていないこれらの異性体が挙げられる。
不飽和脂肪族1価アルコールとしては、飽和脂肪族1価アルコールのC−C単結合の1つを、C=C二重結合で置換したもの、例えば、オレイルアルコールが挙げられ、例えば、新日本理化株式会社から、リカコールシリーズ及びアンジェコオールシリーズの名称で市販されている。
化合物(B)としては、例えば、(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、例えば、モノエーテル、ジエーテル、トリエーテル及びテトラエーテル、好ましくはジエーテル、トリエーテル及びテトラエーテル、より好ましくはトリエーテル及びテトラエーテル、そしてさらに好ましくはテトラエーテル、(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、例えば、モノエーテル、ジエーテル及びトリエーテル、好ましくはジエーテル及びトリエーテル、そしてより好ましくはトリエーテル、並びに(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、例えば、モノエーテル及びジエーテル、そして好ましくはジエーテルが挙げられる。
鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、例えば、次の式(10)〜(13):
(式中、R
10〜R
13は、それぞれ、鎖状炭化水素である。)
の、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテル、トリエーテル、ジエーテル及びモノエーテルが挙げられる。
鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、例えば、次の式(14)〜(16):
(式中、R
14〜R
16は、それぞれ、鎖状炭化水素である。)
の、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテル、ジエーテル及びモノエーテルが挙げられる。
鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、次の式(17):
R17OCnH2nOR18 (17)
(式中、nは、2〜6の整数であり、そしてR17及びR18は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪族1価アルコールとのジエーテル、及び次の式(18):
R17OCnH2nOH (18)
(式中、nは、2〜6の整数であり、そしてR17は、鎖状炭化水素である)
のC2〜C6グリコールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルが挙げられる。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(10)において、R10、R11、R12及びR13部分の炭素数の合計が、約4以上であることが好ましい(炭素数の合計が4の場合に、IOBが0.44となる)。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(11)において、R10、R11及びR12部分の炭素数の合計が、約9以上であることが好ましい(炭素数の合計が9の場合に、IOBが0.57となる)。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのジエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、上記式(12)において、R10及びR11部分の炭素数の合計が、約15以上であることが好ましい(炭素数の合計が15の場合に、IOBが0.60となる)。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数、すなわち、上記式(13)において、R10部分の炭素数が、約22以上であることが好ましい(炭素数が22の場合に、IOBが0.59となる)。
また、IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(14)において、R14、R15及びR16部分の炭素数の合計が、約3以上であることが好ましい(炭素数の合計が3の場合に、IOBが0.50となる)。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのジエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数の合計、すなわち、式(15)において、R14及びR15部分の炭素数の合計が、約9以上であることが好ましい(炭素数の合計が9の場合に、IOBが0.58となる)。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルを構成する脂肪族1価アルコールの炭素数、すなわち、式(16)において、R14部分の炭素数が、約16以上であることが好ましい(炭素数が16の場合に、IOBが0.58となる)。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、式(17)に示されるブチレングリコール(n=4)と脂肪族1価アルコールとのジエーテルでは、R17及びR18部分の炭素数の合計が、約2以上であることが好ましい(炭素数の合計が2の場合に、IOBが0.33となる)。
また、IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、式(18)に示されるエチレングリコール(n=2)と脂肪族1価アルコールとのモノエーテルでは、R17部分の炭素数が、約8以上であることが好ましい(炭素数が8の場合に、IOBが0.60となる)。
化合物(B)としては、化合物(B1)と、化合物(B2)とを、酸触媒の存在下で、脱水縮合することにより生成することができる。
[(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル]
(C) (C1)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、(C2)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物とのエステル(以下、「化合物(C)」と称する場合がある)は、上述の動粘度、抱水率及び重量平均分子量を有する限り、全てのカルボキシル基がエステル化されていなくともよい。
(C1)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する、2〜4個のカルボキシル基とを含むカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸(以下、「化合物(C1)」と称する場合がある)としては、例えば、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素カルボン酸、例えば、鎖状炭化水素ジカルボン酸、例えば、アルカンジカルボン酸、例えば、エタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸及びデカン二酸、鎖状炭化水素トリカルボン酸、例えば、アルカントリカルボン酸、例えば、プロパン三酸、ブタン三酸、ペンタン三酸、ヘキサン三酸、ヘプタン三酸、オクタン三酸、ノナン三酸及びデカン三酸、並びに鎖状炭化水素テトラカルボン酸、例えば、アルカンテトラカルボン酸、例えば、ブタン四酸、ペンタン四酸、ヘキサン四酸、ヘプタン四酸、オクタン四酸、ノナン四酸及びデカン四酸が挙げられる。
また、化合物(C1)には、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ヒドロキシ酸、例えば、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸等、2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素アルコキシ酸、例えば、O−アセチルクエン酸、及び2〜4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素オキソ酸が含まれる。
(C2)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分の水素原子を置換する1個のヒドロキシル基とを有する化合物としては、「化合物(B)」の項で列挙されるもの、例えば、脂肪族1価アルコールが挙げられる。
化合物(C)としては、(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、例えば、モノエステル、ジエステル、トリエステル及びテトラエステル、好ましくはジエステル、トリエステル及びテトラエステル、より好ましくはトリエステル及びテトラエステル、そしてさらに好ましくはテトラエステル、(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、例えば、モノエステル、ジエステル及びトリエステル、好ましくはジエステル及びトリエステル、そしてより好ましくはトリエステル、並びに(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、例えば、モノエステル及びジエステル、好ましくはジエステルが挙げられる。
化合物(C)の例としては、アジピン酸ジオクチル、O−アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられ、そして市販されている。
[(D)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物]
(D)鎖状炭化水素部分と、鎖状炭化水素部分のC−C単結合間に挿入された、エーテル結合(−O−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)、及びカーボネート結合(−OCOO−)から成る群から選択されるいずれか1つの結合とを有する化合物(以下、「化合物(D)」と称する場合がある)としては、(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d2)ジアルキルケトン、(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、及び(d4)ジアルキルカーボネートが挙げられる。
[(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル]
脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、次の式(19):
R19OR20 (19)
(式中、R19及びR20は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
を有する化合物が挙げられる。
エーテルを構成する脂肪族1価アルコール(式(19)において、R19OH及びR20OHに相当する)としては、エーテルが、上述の動粘度、抱水率及び重量平均分子量の要件を満たすものであれば、特に制限されず、例えば、「化合物(B)」の項で列挙される脂肪族1価アルコールが挙げられる。
[(d2)ジアルキルケトン]
ジアルキルケトンとしては、次の式(20):
R21COR22 (20)
(式中、R21及びR22は、それぞれ、アルキル基である)
を有する化合物が挙げられる。
ジアルキルケトンは、市販されている他、公知の方法、例えば、第二級アルコールを、クロム酸等で酸化することにより得ることができる。
[(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル]
脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルとしては、例えば、次の式(21):
R23COOR24 (21)
(式中、R23及びR24は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
を有する化合物が挙げられる。
エステルを構成する脂肪酸(式(21)において、R23COOHに相当する)としては、例えば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。エステルを構成する脂肪族1価アルコール(式(21)において、R24OHに相当する)としては、例えば、「化合物(B)」の項で列挙される脂肪族1価アルコールが挙げられる。
脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルの例としては、例えば、ドデカン酸(C12)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル、テトラデカン酸(C14)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル等が挙げられ、脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルの市販品としては、例えば、エレクトールWE20、及びエレクトールWE40(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
[(d4)ジアルキルカーボネート]
ジアルキルカーボネートとしては、次の式(22):
R25OC(=O)OR26 (22)
(式中、R25及びR26は、それぞれ、アルキル基である)
を有する化合物が挙げられる。
ジアルキルカーボネートは、市販されている他、ホスゲンとアルコールとの反応、塩化ギ酸エステルとアルコール又はアルコラートとの反応、及び炭酸銀とヨウ化アルキルとの反応により合成することができる。
抱水率、蒸気圧等の観点から考察すると、(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d2)ジアルキルケトン、(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、及び(d4)ジアルキルカーボネートでは、重量平均分子量が約100以上であることが好ましく、そして約200以上であることがより好ましい。
なお、(d2)ジアルキルケトンにおいて、炭素数の合計が約8の場合、例えば、5−ノナノンでは、融点は約−50℃であり、蒸気圧は20℃で約230Paである。
[(E)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコール、又はそのアルキルエステル若しくはアルキルエーテル]
(E)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコール、又はそのアルキルエステル若しくはアルキルエーテル(以下、化合物(E)と称する場合がある)としては、(e1)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコール、(e2)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e3)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルが挙げられる。以下、説明する。
[(e1)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコール]
ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールは、i)オキシC3〜C6アルキレン骨格、すなわち、オキシプロピレン骨格、オキシブチレン骨格、オキシペンチレン骨格、及びオキシヘキシレン骨格から成る群から選択されるいずれか1種の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するホモポリマー、ii)上記群から選択される2種以上の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するブロックコポリマー、又はiii)上記群から選択される2種以上の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するランダムコポリマーを意味する。
ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールは、次の式(23):
HO−(CmH2mO)n−H (23)
(式中、mは3〜6の整数である)
により表わされる。
本発明者が確認したところ、ポリプロピレングリコール(式(23)において、m=3のホモポリマーに相当する)では、重量平均分子量が約1,000未満の場合には、抱水率の要件を満たさないことが見いだされた。従って、血液滑性付与剤の範囲に、ポリプロピレングリコールのホモポリマーは含まれず、プロピレングリコールは、他のグリコールとのコポリマー又はランダムポリマーとして、(e1)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールに含まれるべきである。
なお、本発明者が確認したところ、ポリエチレングリコール(式(23)において、m=2のホモポリマーに相当する)では、重量平均分子量が1,000未満では、動粘度及び抱水率の要件を満たし得ないことが示唆された。
IOBを約0.00〜約0.60とする観点から考察すると、例えば、式(23)がポリブチレングリコール(m=4のホモポリマー)である場合には、n≧約7であることが好ましい(n=7の場合に、IOBが0.57となる)。
ポリC3〜C6アルキレングリコールの市販品としては、例えば、ユニオール(商標)PB−500及びPB−700(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
[(e2)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、「(e1)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC3〜C6アルキレングリコールのOH末端の一方又は両方が、脂肪酸によりエステル化されているもの、すなわち、モノエステル及びジエステルが挙げられる。
ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルにおいて、エステル化すべき脂肪酸としては、例えば、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸、すなわち、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。
[(e3)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル]
ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、「(e1)ポリオキシC3〜C6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC3〜C6アルキレングリコールのOH末端の一方又は両方が、脂肪族1価アルコールによりエーテル化されているもの、すなわち、モノエーテル及びジエーテルが挙げられる。
ポリオキシC3〜C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルにおいて、エーテル化すべき脂肪族1価アルコールとしては、例えば、「化合物(B)」の項で列挙されている脂肪族1価アルコールが挙げられる。
[(F)鎖状炭化水素]
鎖状炭化水素としては、例えば、(f1)鎖状アルカン、例えば、直鎖アルカン及び分岐鎖アルカンが挙げられる。直鎖アルカンは、融点が約45℃以下の場合には、炭素数が約22以下となり、そして蒸気圧が1気圧及び25℃で約0.01Pa以下である場合には、炭素数が約13以上となる。分岐鎖アルカンは、直鎖アルカンよりも、同一炭素数において融点が低い傾向がある。従って、分岐鎖アルカンは、融点が約45℃以下の場合でも、炭素数が22以上のものも含むことができる。
炭化水素の市販品としては、例えば、パールリーム6(日油株式会社)が挙げられる。
***口当接領域20のうち少なくとも凸部8には、血液滑性付与剤が単独で塗工されていてもよいし、血液滑性付与剤と、少なくとも1種の他の成分とを含有する血液滑性付与剤含有組成物が塗工されていてもよい。
以下、血液滑性付与剤含有組成物について説明する。なお、血液滑性付与剤含有組成物の塗工に関しては、血液滑性付与剤の塗工と同様であるので、説明を省略する。
[血液滑性付与剤含有組成物]
血液滑性付与剤含有組成物は、上述の血液滑性付与剤と、少なくとも1種の他の成分とを含有する。他の成分としては、血液滑性付与剤の作用効果を阻害しないものであれば特に制限されず、当業界で吸収性物品、特にトップシートに慣用的に適用されるものを使用することができる。
他の成分としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーン、シリコーン系レジン等が挙げられる。
他の成分としては、例えば、酸化防止剤、例えば、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)、没食子酸プロピル等が挙げられる。
他の成分としては、例えば、ビタミン、例えば、天然ビタミン又は合成ビタミンが挙げられる。ビタミンとしては、例えば、水溶性ビタミン、例えば、ビタミンB群、例えば、ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンB3,ビタミンB5,ビタミンB6,ビタミンB7,ビタミンB9,ビタミンB12等、ビタミンCが挙げられる。
ビタミンとしては、例えば、脂溶性ビタミン、例えば、ビタミンA群、ビタミンD群、ビタミンE群、およびビタミンK群等が挙げられる。ビタミンにはまた、それらの誘導体も含まれる。
他の成分としては、例えば、アミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、プロリン、ヒドロキシプロリン等、並びにペプチドが挙げられる。
他の成分としては、例えば、ゼオライト、例えば、天然ゼオライト、例えば、方沸石、菱沸石、輝沸石、ナトロライト、束沸石、及びソモソナイト、並びに、合成ゼオライトが挙げられる。
他の成分としては、例えば、コレステロール、ヒアルロン酸、レシチン、セラミド等が挙げられる。
他の成分としては、例えば、薬剤、例えば、皮膚収斂剤、抗ニキビ剤、抗シワ剤、抗セルライト剤、美白剤、抗菌剤、抗カビ剤等が挙げられる。
皮膚収斂剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸アルミニウム、タンニン酸等、油溶性皮膚収斂剤、例えば、油溶性ポリフェノールが挙げられる。油溶性ポリフェノールとしては、天然の油溶性ポリフェノール、例えば、オオバクエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、カモミラエキス、ゴボウエキス、サルビアエキス、シナノキエキス、セイヨウボダイジュエキス、シラカバエキス、スギナエキス、セージエキス、サルビアエキス、テウチグルミエキス、ハイビスカスエキス、ビワ葉エキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マロニエエキス、ヨクイニンエキス等が挙げられる。
抗ニキビ剤としては、例えば、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、レゾルシノール、イオウ、エリスロマイシン、亜鉛等が挙げられる。
抗シワ剤としては、例えば、乳酸、サリチル酸、サリチル酸誘導体、グリコール酸、フィチン酸、リポ酸、リソフォスファチド酸が挙げられる。
抗セルライト剤としては、例えば、キサンチン化合物、例えば、アミノフィリン、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン等が挙げられる。
美白剤としては、例えば、ナイアシンアミド、コウジ酸、アルブチン、グルコサミン及び誘導体、フィトステロール誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにクワ抽出物及び胎盤抽出物が挙げられる。
他の成分としては、例えば、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤、香料、色素、染料、顔料、植物抽出エキス等が挙げられる。
抗炎症成分としては、例えば、天然由来の抗炎症剤、例えば、ボタン、オオゴン、オトギリソウ、カモミール、甘草、モモノハ、ヨモギ、シソエキス等、合成抗炎症剤、例えば、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム等が挙げられる。
pH調整剤としては、皮膚を弱酸性に保つためのもの、例えば、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。
顔料としては、例えば、酸化チタンが挙げられる。
血液滑性付与剤含有組成物は、血液滑性付与剤及び少なくとも1種の他の成分を、それぞれ、好ましくは約50〜約99質量%及び約1〜約50質量%、より好ましくは約60〜約99質量%及び約1〜約40質量%、さらに好ましくは約70〜約99質量%及び約1〜約30質量%、さらに一層好ましくは約80〜約99質量%及び約1〜約20質量%、さらに一層好ましくは約90〜99質量%及び約1〜約10質量%、さらに一層好ましくは約95〜99質量%及び約1〜約5質量%含む。血液滑性付与剤及び他の成分の作用効果の観点からである。
血液滑性付与剤含有組成物は、界面活性剤を、トップシート又はセカンドシートの親水化処理に由来する量以下で含むことが好ましい。より具体的には、血液滑性付与剤含有組成物は、界面活性剤を、好ましくは約0.0〜約1.0g/m2、より好ましくは約0.0〜約0.8g/m2、さらに好ましくは約0.1〜約0.5g/m2、さらに一層好ましくは約0.1〜約0.3g/m2の坪量の範囲で含む。
界面活性剤の量が増えると、経血がトップシートに残存しやすい傾向があるからである。なお、界面活性剤は、抱水率の値を有しない。水と混和するため、測定すべき物質の層が存在しないからである。
血液滑性付与剤含有組成物は、水を、好ましくは約0.0〜約1.0g/m2、より好ましくは約0.0〜約0.8g/m2、さらに好ましくは約0.1〜約0.5g/m2、さらに一層好ましくは約0.1〜約0.3g/m2の坪量の範囲で含む。水は、吸収性物品の吸収性能を低下させるため、少ないことが好ましい。
血液滑性付与剤含有組成物は、血液滑性付与剤と同様に、組成物として、40℃において、約0〜約80mm2/sの動粘度を有することが好ましく、約1〜約70mm2/sの動粘度を有することがより好ましく、約3〜約60mm2/sの動粘度を有することがさらに好ましく、約5〜約50mm2/sの動粘度を有することがさらに一層好ましく、約7〜約45mm2/sの動粘度を有することがさらに一層好ましい。
血液滑性付与剤含有組成物の動粘度が約80mm2/sを超えると、粘性が高く、トップシートの肌当接面に到達した経血と共に、血液滑性付与剤組成物が吸収性物品の内部に滑落することが難しくなる傾向があるからである。
血液滑性付与剤含有組成物が、少なくとも1種の他の成分として血液滑性付与剤と混和する成分を含む場合には、その他の成分は、好ましくは約1,000未満の重量平均分子量を有し、より好ましくは約900未満の重量平均分子量を有する。重量平均分子量が約1,000以上であると、血液滑性付与剤含有組成物そのものにタック性が生じ、着用者に不快感を与える傾向があるからである。また、重量平均分子量が高くなると、血液滑性付与剤含有組成物の粘度が高くなる傾向があるため、加温により、血液滑性付与剤組成物の粘度を、塗布に適した粘度に下げることが難しくなり、その結果、血液滑性付与剤を、溶媒で希釈しなければならない場合も生じうる。
血液滑性付与剤含有組成物は、組成物として、約0.01〜約4.0質量%の抱水率を有し、約0.02〜約3.5質量%の抱水率を有することが好ましく、約0.03〜約3.0質量%の抱水率を有することがより好ましく、約0.04〜約2.5質量%の抱水率を有することがさらに好ましく、そして約0.05〜約2.0質量%の抱水率を有することがさらに好ましい。
抱水率が低くなると、血液滑性付与剤組成物と、経血との親和性が低下し、トップシートの肌当接面に到達した経血が吸収性物品の内部に滑落しにくくなる傾向がある。
なお、血液滑性付与剤含有組成物が固形物を含む場合には、動粘度及び抱水率の測定において、それらを濾過により取り除くことが好ましい。