JP6198207B2 - 新規糖供与体及びそれを用いた糖鎖の合成方法 - Google Patents
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Description
現在までに、LacdiNAc糖鎖の合成研究は行われているものの、その報告は限られている。近年、非特許文献4において、NakaharaらはLacdiNAc構造を有するアスパラギン結合型糖鎖の合成を報告している。
糖鎖の化学合成において糖と糖をつなぎあわせるグリコシル化反応をおこなう際に、糖部分を保護する必要がある。本発明では、糖残基に導入する保護基のパターンを最適化することで、立体かつ位置選択的にグリコシル化反応を進行させることに成功し、その結果、水酸基の保護、脱保護工程を大幅に短縮し、複合型糖鎖の効率的構築に成功した。すなわち、上記の課題に合致した糖鎖の効率的な化学合成技術が達成されることを知見し、本発明を完成した。
アセチル基で保護された水酸基を示し、R4aは保護されていてもよい水酸基を示し、R5aは同一又は異なって保護されていてもよい水酸基又は保護されていてもよいアミノ基を示し、R6aは同一又は異なって水素原子又は水酸基の保護基を示し、nは1〜3の整数を示す。〕で表される糖誘導体。
R3で示される水酸基の保護基の脱保護を行い、遊離の水酸基の立体反転反応を行うことを特徴とする、下記式(IV)
本発明では、LacdiNAc構造を有する複合型糖鎖9糖骨格の構築を達成した。
一般に用いられる保護基のパターンの3糖を、4カ所遊離水酸基がある糖受容体3糖に対してグリコシル化反応を行ったところ、12糖、9糖、6糖など、10種類を越える複雑な混合物を与えたのに対し、本発明の保護基のパターンを用いた糖供与体3糖を用いた場合、9糖を単一の化合物として与えた。この9糖は抗体医薬品においてポテリジェント効果を発揮する複合型糖鎖と極めて類似した骨格である。
したがって、本発明により、水酸基の保護、脱保護工程を大幅に短縮し、従来よりも簡便に目的糖鎖を得ることができる。
本発明の方法は、無駄な保護脱保護過程を省略、簡便かつ均一な糖鎖を得ることができるため、バイオ医薬品製造のボトルネックである均一糖鎖構造の供給を可能にする技術である。
Ac : Acetyl group
Asn : Asparagine
Bn : Benzyl group
COSY : Correlation spectroscopy
CSA : 10-camphorsulfonic acid
CsOAc : cesium acetate
DAST : N, N-diethylaminosulfur trifluoride
oC : degrees Celsius
DIPEA : N, N-diisopropylethylamine
DMF : N, N-dimethylformamide
DMAP : 4-dimethylaminopyridine
DBU : 1,8-diazabicyclo[5.4.0]undeca-7-ene
DTBMP : 2,6-di-tert-butyl methyl pyridine
EDA : ethylenediamine
Gal : D-galactose
GalNAc : N-acetylgalactosamine
GlcNAc : N-acetylglucosamine
HSQC : Heteronuclear single quantum correlation
Man : D-Mannose
MeOTf : methyltrifluroromethanesulfonate
MS : molecular sieves
NBS : N-bromosuccinimide
NIS : N-iodosuccinimide
Phth : Phthaloyl
Ph : Phenyl
Py : pyridine
r. t. : room temerature
TBAF : tetrabutylammonium fruoride
TBDMS : tert-buthyldimethylsilyl
TBDPS : tert-buthyldiphenylsilyl
Tf : (trifluoromethyl)sulfonyl
THF : tetrahydrofuran
TMSN3 : trimethylsilylazide
TMSOTf : trimethylsilyltrifruoromethanesulfonate
TLC : Thin layer chromatography
本発明者らは、LacdiNAc糖鎖を有する複合型糖鎖の効率的合成について、下記スキームに示すような合成戦略をたてた。まず大きな糖鎖を効率よく構築できるブロック合成法により糖鎖構築を行うこととした。さらに共通の合成シントンを利用することで合成工程の軽減を行うこととした。また分岐部分を糖水酸基の反応性の差を利用した位置選択的グリコシル化反応を利用することで9糖骨格を1段階で合成、保護脱保護工程の省略を目指した。一方、複合型糖鎖合成の共通の問題であるβ−マンノシド結合の構築は水酸基の反転反応を用いることとした。
具体的には目的の糖鎖を、共通シントンから成るガラクトシルキトビオースブロックとキトビオシルマンノースブロックの2つのブロックに分けて合成後、4か所の水酸基に対する位置選択的グルコシル化反応によって9糖骨格を構築し、水酸基の反転反応によって分岐のβ−ガラクトースをβ−マンノースへ、非還元末端側のキトビオース構造をLacdiNAc構造へと導くことにより目的の糖鎖を得ることとした。9糖の構築に用いる単糖ユニットはグルコサミン、マンノース、ガラクトースの3つである。それぞれの単糖誘導体を合成後、2残基のグルコサミンを縮合することでキトビオース誘導体を合成する。キトビオー
スに対し、マンノース誘導体を結合することでキトビオシルマンノースを合成する。
本発明は、前述の合成方法等に用いることができる、特定の保護基のパターンを用いた新規糖供与体に関する。具体的には、下記式(Ia)
保護されたアミノ基としては、好ましくは炭素数2〜6のアルカノイルアミド、フタルイミド等が挙げられる。
酸基の保護基、R6a及びR6bで示される水酸基の保護基としては、エーテル系保護基、エステル系保護基、アシル系保護基等が挙げられる。当該エーテル系保護基としては、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、アリル基、有機シリル基、トリチル基等が挙げられる。カルバメート系保護基としてはアリルオキシカルボニル基等が挙げられる。アシル系保護基としては、アセチル基等のアルカノイル基;o−ニトロフェニルチオアセチル基等のアリールチオアセチル基等が挙げられる。アシル系保護基として好ましくは、炭素数2〜6のアルカノイル基である。
3糖供与体(5)を例として、化合物(Ia)の合成方法を記載する。
4,6位にベンジリデン基を導入した化合物(45)を出発原料にピリジン存在下、1.5当量の塩化ピバロイルと反応させることで3位選択的にピバロイル基を導入し、4,6位にベンジリデン基、3位にピバロイル基を有するマンノース誘導体(7)を合成する。
マンノース誘導体(7)とキトビオース誘導体(48)とのカップリング反応を行い、新規キトビオースシルマンノース供与体を合成する。3糖供与体(5)の合成は、ジクロロメタン中、キトビオース供与体(48)とマンノース受容体(7)を、TMSOTfをプロモーターとして反応させることで行う。反応混合物をゲルろ過クロマトグラフィーにて精製し、 (5)を得る。
さらに、本発明は、LacdiNAc構造を有する複合型糖鎖の中間体としての糖誘導体の合成方法に関する。
具体的には、下記式(Ib)
3糖受容体(6)を例として、化合物(II)の合成方法を記載する。
まず、公知化合物から化合物(8)を調製する。NIS/TfOHをプロモーターとして用い、CH2Cl2中、-20℃で2時間、キトビオース受容体(8)及びチオグリコシド(9')のカップリングを行い、トリサッカライド(6')を得る。NaOMe/MeOHを用い、THF中、0℃でトリサッカライド(6')の脱アセチル化を行い、ガラクトシルキトビオース受容体(6)を得る。(Matsuo et al., J. CARBOHYDRATE CHEMISTRY, 18(7), 841-850 (1999))
化合物(Ib)と化合物(II)との反応は、化合物(Ib)及び化合物(II)をそれぞれジクロロメタン、クロロホルム、エーテル、トルエン、ジクロロエタン等の溶媒に懸濁し、これらを混合し、NIS, AgOTf等の活性化剤を加え、-78℃〜40℃、好ましくは-40
℃〜-20℃で、10分〜72時間、好ましくは1〜12時間反応させる。常法により、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水にて洗浄、乾燥濃縮することにより、化合物(III)を得る。
本合成方法を行った後、所望により、通常の脱保護反応を用いて、保護基を脱保護することも可能である。また、通常の保護反応を用いて、保護基を導入することも可能である。また、通常の有機合成手法を用いて、置換基を導入することも可能である。例えば、R5bで示される保護されたアミノ基を、アセチルアミノ基等に置換することも可能である。通常の洗浄、濃縮、精製を行うことも可能である。このような化合物も本発明の範囲に包含される。
さらに、本発明は、LacdiNAc構造を有する複合型糖鎖の合成方法に関する。
具体的には、下記式(Ib)
下記式(Ib)
R3で示される水酸基の保護基の脱保護を行い、遊離の水酸基の立体反転反応を行うことを特徴とする、下記式(IV)
R3で示される水酸基の保護基の脱保護反応は、R3で示される水酸基の保護基の脱保護に適した常法により、行うことができる。
1H-NMR スペクトルは、JEOL-JNM-ECA300 MHZ型、JEOL-JNM-ECA400 MHZ型、JEOL-JNM-ECA600 MHZ型核磁気共鳴装置を用い、特に断りのない限り重クロロホルム溶液でテトラメチルシランを内部標準として測定し、ケミカルシフトはδ値で、カップリング定数はHzで示した。図に示すように1H NMRの解析では便宜的に、還元末端の糖をaとし、非還元末端側へ行くに従いb,c,dとアルファベットで表記することとした。
薄層クロマトグラフィー(TLC)には、MERCK silica gel 60 F254CEを使用した。
シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、MERCK Silica Gel 60(0.040-0.063 mm) あるいは、KANTO CHEMICAL Silica Gel 60N (spherical,neutral) 0.040-0.063 mmを用いた。
ゲル濾過クロマトグラフィーはBIO-RAD Bio-Beads(登録商標) S-X1(200-400mesh)を使用した。
前述のように、3糖供与体Bと3糖受容体Cのカップリング反応を用いて、位置選択的グリコシル化反応を行った結果、目的とする化合物以外に複数の9糖異性体が生成した。この際、種々の脱離基や溶媒を検討したが化合物を単一で得る決定的な条件は得られなかった。そこで本発明者らは、Freiser-Reidらが提唱したarmed-disarmed効果に着目した。すなわち、糖供与体の保護基パターンを変えることで反応性を変化させ、選択性の向上を目指すこととした。
保護基のパターンを変える位置として、グリコシル化反応において、反応に与える影響力が最も強いと考えられる、すなわち反応点であるマンノース残基に着目した。以下にマンノースの保護基パターンを変えた3種類の化合物を示す。4,6位をベンジリデン基、3位をピバロイル基で保護したマンノース誘導体(7)、4,6位にAc基を有するマンノース誘導体(43)、4,6位をベンジリデン基、3位をベンジル基で保護したマンノース誘導体(44)をデザインした。アシル基系の保護基は電子的効果を、ベンジリデン基には環固定効果を、さらに保護基の導入位置による電子的効果の違いを期待した。
先に述べたコンセプトに基づきデザインしたマンノース誘導体をそれぞれ合成した。4,6位にベンジリデン基、3位にピバロイル基を有するマンノース誘導体(7)の合成は、4,6位にベンジリデン基を導入した化合物(45)を出発原料にピリジン存在下、1.5当量の塩化ピバロイルと反応させることで3位選択的にピバロイル基を導入した。収率は81%だった。(7)の構造は1H NMRスペクトルにて、5.3ppmにベンジリデン基由来のピークを確認したこと、1.0ppm付近にピバロイル基由来の9H分のピークを確認したこと、また、3位のHの低磁場シフトから決定した。4,6位ベンジリデン基、3位ベンジルマンノース誘導体(44)の合成は、(45)に対し、酸化ジブチルスズによるスズ化、続けてTBABr、BnBrを用いて反応させることで3位に位置選択的にBn基を導入した。収率は96%だった。3位ベンジルマンノース誘導体(44)の構造は1H NMRスペクトルにて、4.5ppmにベンジル基由来の2H分のピークを観測したことにより決定した。また、得られた(44)をアセチル化することで、2位のプロトンが低磁場シフトしたことからもその構造を確認した。4,6位diAcマンノース誘導体(43)の合成は、(44)の2位に対し、2,6-lutidine存在下、TBDPOTfと反応させることでTBDPS基を導入、(46)とした後に、酸加水分解することでベンジリデン基を除去した。その後、4位
および6位のAc化、HF・Py.を用いたTBDPS基の除去を行い、(43)を得た。(44)から4工程で収率39%だった。(43)の構造は、4位と6位に相当するプロトンの低磁場シフトならびに2.0ppm付近に2つのAc基に由来する6H分のピークを確認したことから決定した。
以上、保護基パターンを変えた3種類のマンノース誘導体(7), (43), および(44)を合成した。
先に合成した3種類のマンノース誘導体(7), (44), (43)とキトビオース誘導体(48), (25), (49)とのカップリング反応を行い、新規キトビオースシルマンノース供与体の合成を検討した。3糖供与体(5)の合成は、ジクロロメタン中、キトビオース供与体(48)とマンノース受容体(7)を、TMSOTfをプロモーターとして反応させることで行った。反応混合物をゲルろ過クロマトグラフィーにて精製し、収率23%で(5)を得た。(5)の構造は1H NMRスペクトルにより、1.0ppm付近にピバロイル基由来の9プロトン分のピークを確認したこと、5.0ppm付近にベンジリデン基のメチンのピークを観測したこと、およびキトビオース由来の1位のピークを観測したこと、またMALDI-TOF MSにて目的とする分子イオンピークを観測したことから構造を確認した。一方、3位をベンジル基で保護した3糖供与体(50)の合成は、キトビオース供与体(25)とマンノース受容体(44)を上記と同様の条件で反応させ、反応終了後、反応混合物をゲルろ過クロマトグラフィーにて精製することで得た。収率は70%だった。(50)の構造は、1H NMRスペクトルにより、5.0ppm付近にベンジリデン基のメチンのピークを、またキトビオース由来のグルコサミンの1位のプロトンを観測したピークを観測したことから、糖受容体と供与体が結合したことを、またMALDI-TOF MSにて目的とする分子イオンピークを観測したことから構造を確認した。新規3糖供与体(51)の合成は、キトビオース供与体(49)と4,6位にAc基を有するマンノース受容体(43)を用いて合成した。反応混合物をゲルろ過クロマトグラフィーにて精製後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製、収率61%で目的とした3糖供与体(51)を得た。(51)の構造は、1H NMRスペクトルより、2.0ppm付近のAc基由来のピークが2つ、またキトビオース由来のグルコサミンの1位のプロトンを観測したことから、またMALDI-TOF MSにて目的とする分子イオンピークを観測したことから構造を決定した。
電気吸引性の置換基を導入した最も反応性を低くした(5)を用い、2,3,4および6位が遊離のガラクトシルキトビオース(6)と反応させた。反応条件は今まで行ってきた条件と同様に-78℃でNIS、AgOTfを用いた。しかし、この条件では糖供与体が活性化されず、反応温度を室温にしたところ、反応の進行を確認した。反応混合物をゲルろ過クロマトグラフィーで精製し収率78%で9糖画分を得た。得られた9糖画分をHPLCにより解析した。その結果を図1に示す。観測されたピークは1つであった。得られた化合物を1H NMRにて解析した結果、糖供与体と糖受容体が3,6位にα結合した目的とする構造の9糖(4)であることがわかった。次に4,6位をベンジリデン基、3位を電子供与性のBn基で保護した(50)を用いて反応を行った。NIS、AgOTfを用いて-78℃から-20℃に昇温することで反応させた。得られた反応混合物はゲルろ過クロマトグラフィーで精製し、収率94%で9糖画分を得た。得られた9糖画分をHPLCにより解析した結果を図2に示した。最後に4,6位を電子吸引性の保護基であるAc基、3位を電子供与性の保護基であるBn基で保護した(51)を用いたグリコシル化反応を行った。NIS、AgOTfを用いて-78℃から-20℃に昇温することで反応させた。得られた反応混合物はゲルろ過クロマトグラフィーで精製し、収率58%で9糖画分を得た。得られた9糖画分をHPLCにより解析した結果を図3に示した。
単一で得られた(4)のNMRの解析結果について説明する。化合物(4)の、糖供与体と糖受容体の結合位置を決めるために分岐部分のガラクトース残基のAc化を行い(54)とし(下記スキーム)、NMRを測定した。
β−マンノシド結合はN-型糖鎖のコア構造に含まれる重要な結合である。β−マンノシド結合を構築する方法の1つに水酸基の反転反応がある。Matsuoらはβ−ガラクトシルキトビオース誘導体の3,6位にマンノース誘導体を導入後、β−ガラクトース残基の2,4位2つの水酸基をTf化、水酸基の立体を反転することでβ−マンノシド結合を構築、アスパラギン結合型糖鎖の共通コア5糖の効率的構築に成功している。そこで、我々はこの方法を参考に、5糖よりもさらに立体的に込み合った状態の9糖に対し、非還元末端側のグルコサミン残基4位とβ−ガラクトース残基の2,4位、合わせて4つの水酸基の同時立体反転反応に挑戦することとした。
まず9糖誘導体(4)をHF・Py.を用いて、非還元末端側4位のTBDPS基を除去、PTLCにより精製し、収率49%で(55)を得た。(55)の構造は1H NMRを測定した結果、1.0ppm付近に観測されていたTBDPS基由来のピークの消失を確認したこと、またMALDI-TOF MSにより目的化合物の分子イオンピークを確認したことから決定した。得られた9糖脱TBDPS体(55)に対し、4つの水酸基の同時立体反転を行った。まず始めにトリフルオロメタンスルホン酸無水物とピリジンを用いて水酸基のトリフラート化を行った。Tf2Oを飽和重曹水にて反応停止した後、溶媒を除去、トルエンによる共沸を行い真空乾燥した。その後、得られた残渣をトルエンに溶解させ、超音波存在下、酢酸セシウムと18-クラウン-6と反応させた。反応混合物をPTLCによって精製した後、1H NMRスペクトルを測定した結果、3:1の混合物であった。得られた混合物の画分をHPLCにより分析した結果からも3:1の混合物であることを確認した。分取用のHPLCにより各ピークを分取しそれぞれNMRスペクトルを測定した。そ
の結果、主生成物として得られたのは化合物が、4つの水酸基が反転した目的物(2)であることが明らかとなった。収率は28%だった。(2)の構造は以下のように決定した。まず、HSQCスペクトルにより、分岐部分のマンノースの1位を決定した。決定した1位からH-H COSYスペクトルにてプロトンの相関をたどり、マンノースの2位、3位、4位を決定した。2位および4位の低磁場シフトが観測されたため分岐部分の水酸基が反転され、β-マンノシド結合を構築したことを確認した。LacdiNAc構造は、1H NMRスペクトルにて5.6ppmにガラクト配座に特徴的なピークを2プロトン分確認したことにより決定した。さらにMALDI-TOF MSにより目的とする分子イオンピークを観測したことからも構造を確認した。なお、副生成物は2.0ppm付近に観測されたAc基のピークが3つであったことと、MALDITOF MSによる分析結果により、3つの水酸基が反転反応し、2位の水酸基が脱離したデオキシ糖であると結論づけた。このことから副生成物が生成した原因を考察した。脱離体が得られたことから、SN2反転反応とE2脱離反応が競合して起きたと考えた。アンチ脱離が優先するため5位のプロトンが引き抜かれ、4位のTf体が脱離したと考えている。
既知化合物(7)の合成は文献の方法に従って合成した。
ベンジリデン体(44)(500g, 1.4mmol)をピリジン15mLに溶解した。アルゴン気流下、ピバロイルクロリドl(340μg, 2.8mmol)を室温で滴下、16時間撹拌した。反応液を氷零後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止した。反応混合物を酢酸エチルに溶解、酢酸エチル層を1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水にて順位洗浄、硫酸ナトリウムにて有機層を乾燥後、溶媒を減圧留去した。残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane:EtOAc,4 : 1) にて精製、(7) (518mg, 88%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ : 5.616(1H, s, PhCH), 5.59(1H, d, H-1), 5.59(1H, dd, J
= H-3), 4.33(H, ddd, H-5), 4.31(1H, d, H-6), 4.25(1H, dd, H-6), 4.19(1H, dd, H-2), 3.86(1H, dd, H-4), 2.31(1H, brs, OH), 1.24(9H, s,( C=O(CHMALDI-TOF-MS Calcd for C24H28NaO6S m/z [M+Na]+ : 467.15 found : 467.79.
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ : 7.72-6.50(38H, Ar), 5.24(1H, d, J = 8.4Hz, H-1a) , 5.12(1H, d, J = 9.2 Hz, H-1b), 4.76(1H, d, H-1a), 4.74-4.31(8H, m), 4.18(1H, dd, J = 8.8 Hz), 4.11-3.96(5H, m), 3.82(1H, d, J = 12.8 Hz), 3.71(1H, J = 9.6 Hz), 3.571-3.47(3H, m), 3.41(1H, dd, J = 3.6 Hz, J = 11.2 Hz), 3.31(1H, dd, J = 2.4 Hz, J = 9.6 Hz), 0.97((CH3)3CSiPh2).
13C NMR (150MHz, CDCl3) δ : 96.81, 85.61, 80.95, 76.42, 75.21, 74.58, 73.09, 72.96, 72.77, 72.39, 67.95, 56.66, 55.23, 27.03.
MALDI-TOF-MS : calcd for C72H69N5O12SiNa(M+Na)+ m/z: 1246.46, found:1247.43.
K2CO3 (9mg, 0.10mmol)を加えた1時間撹拌した。反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane:EtOAc,3 : 1, TEA0.1%) にて精製、(48) (40mg, 92%)を得た。
Rf = 0.6 (Toluene : EtOAc = 3 : 1), 0.27(Hexane : EtOAc = 3 : 1).
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ : 7.79-6.47(38H, Ar), 5.37(1H, s, PhCH), 5.14(1H, d, J
= 8.4 Hz, H-1 c), 5.03(1H, s, H-1a), 4.90(1H, dd, J1,2 = 3.2 Hz, H-3c), 4.88(1H, d, J = 8.8 Hz, H-1b), 4.91(1H, dd, J3,2 = 3.6 Hz), 4.74-4.19(8H, d, CH2-Ph), 4.24(1H, dd, J = 1.6 Hz), 4.13-3.93(6H, m), 3.82(1H, m), 3.54-3.46(3H, m), 3.38-3.30(2H, m), 3.11(1H, dd, J = 2.4 Hz, J = 10.0 Hz), 2.94(1H, dd, J = 10.0 Hz), 1.14(9H, s, (CH3)3CC=O), 0.96((CH3)3CSiPh2).
MALDI-TOF-MS : calcd for C96H96N2O18SiNa(M+Na)+ m/z: 1647.80, found:1648.74.
[α]D+8 c (c1.0, CHCl3)
1H NMR (500MHz, CDCl3) δ : 5.29(1H, d, J = 8.6 Hz, H-1b), 5.26(1H, dd, J = 0.7 Hz, J = 3.4 Hz, H-4c), 5.15(1H, dd, J = 0.7 Hz, J = 3.4 Hz, H-4c), 5.15(1H, d, J
= 9.5 Hz, H-1a), 5.14(1H, dd, J = 10.5 Hz, H-2c), 4.62(1H, d, J = 8.1 Hz, H-1c), 2.04, 1.99, 1.962, 1.958(3H×4, s, Ac)
13C NMR (125MHz, CDCl3) δ : 100.45(C-1 c), 97.09(C-1b), 85.62(C-1a)
Anal. Calcd for C70H69O21N5 : C, 63.87; H, 5.28; N 5.32
Found: C, 64.13; H, 5.31; N, 5.39
Rf = 0.33 (CHCl3:MeOH = 15:1)
[α]D+24 c (c1.0, CHCl3)
1H NMR (500MHz, CDCl3) δ : 5.32(1H, d, J = 7.9 Hz, H-1b), 5.16(1H, d, J = 9.5 Hz, H-1a)
13C NMR (125MHz, CDCl3) δ : 102.95(C-1 c), 97.08(C-1b), 85.63(C-1a), 73.76(C-3c), 62.67(C-6c)
Anal. Calcd for C62H61O17N5 : C, 64.86; H, 5.35; N 6.10
Found: C, 64.33; H, 5.36; N, 6.11
ゲルろ過後、HPLCにて解析した結果、単一のピークを与えた。
1H NMR (600MHz, CDCl3) δ : 7.86-6.43(114H, m, Ar), 5.38, 5.33(1H, s, PhCH), 5.16-5.05(3H, m), 4.93-3.06(55H, m), 2.97-2.86(3H, m), 2.71(1H, J = 10.2Hz), 1.14, 1.10(9H, s, (CH3)3CC=O), 0.95, 0.94(9H, s, (CH3)3CSiPh2).
MS(MALDI-TOF) calcd for C242H241N9O57Si2Na(M+Na)+ m/z: 4199.59, found: 4201.80.
1H NMR (600MHz, CDCl3) δ : 7.87-6.70(96H, m, Ar), 5.38, 5.33(1H, s, PhCH), 5.26(1H, d, J = 8.4Hz), 5.23(1H, d, J = 7.8Hz), 5.21(1H, d, J = 8.4Hz), 5.13(1H, d, J = 8.4Hz), 4.97-4.65(10H, m), 4.61-4.42(19H, m), 4.35-4.01(21H, m), 3.86-3.55(1
5H, m), 3.51-3.31(13H, m), 3.25-3.18(4H, m), 3.10(1H, d, J = 9.6Hz), 2.99(1H, dd, J = 3.0Hz), 2.93(1H, dd, J = 4.8Hz), 2.84(1H, d, J = 4.8Hz), 1.11, 1.07(9H, s,
(CH3)3CC=O).
MS(MALDI-TOF) calcd for r C210H205N9O53Na(M+Na)+ m/z: 3723.35, found: 3723.35.
1H NMR (600MHz, CDCl3) δ : 7.87-6.70(96H, m, Ar), 5.59(2H, d, J = 3.0Hz, H-4f, H-4i), 5.31(1H, d, H-1, J = 9.0Hz), 5.30 5.29(1H, s, PhCH), 5.26(1H, d, J = 9.0Hz), 5.19(1H, d, J = 7.8Hz), 5.11(1H, d, J = 8.4Hz), 5.08(1H, d, J = 3.0Hz, H-2c), 4.91-4.78(7H, m), 4.82(1H, dd, J = 10.2Hz, H-4c), 4.74(1H, dd, J = 3.0Hz), 4.63-3.99(47H, m), 3.87(1H, bs), 3.81(1H, bd, J = 3.0Hz), 3.69-3.25(27H, m), 3.15(1H, d, J = 9.6Hz), 3.05(1H, dd, J = 9.0Hz), 2.90(1H, m, J = 3.0Hz), 2.77(1H, dd, J = 10.2Hz), 2.69(1H, dd, J = 10.2Hz), 2.02, 1.99, 1.97, 1.93(3H, s, CH3C=O), 1.05, 1.00(9H, s, (CH3)3CC=O).
MS(MALDI-TOF) calcd for r C218H213N9O57Na(M+Na)+ m/z: 3891.39, found: 3891.20.
1H NMR (600MHz, CDCl3) δ : 7.85-6.63(94H, m, Ar), 5.58(1H, d, J = 3.6Hz), 5.30,
5.28(1H, s, PhCH), 5.26-5.19(3H, m), 5.14(1H, d, J = 9.6Hz), 4.96, 4.79(1H, dd,
J = 3.0Hz), 4.93(1H, d, J = 8.4Hz), 4.88(1H, d, J = 12.0Hz), 4.58-4.45(13H, m),
4.37-3.87(30H, m), 3.74-3.26(26H, m), 3.14(1H, d, J = 3.6Hz, J = 9.6Hz), 3.01(1H, bd, J = 9.0Hz), 2.97(1H, dd, J = 3.0Hz, J = 9.6Hz), 2.90(1H, m), 2.77(2H, m),
2.34(1H, d, (1H, d, J = 3.6Hz), 1.99, 1.92(3H, s, CH3CO), 1.02, 0.95(9H, s, (CH3)3CSiPh2).
MS(MALDI-TOF) calcd for C242H241N9O57Si2Na(M+Na)+ m/z: 4199.59, found: 4199.88
Claims (3)
- 下記式(Ia)
- 下記式(Ib)
- 下記式(Ib)
R3で示される保護された水酸基の保護基の脱保護を行い、遊離の水酸基の立体反転反応を行うことを特徴とする、下記式(IV)
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-
2013
- 2013-05-15 JP JP2013103322A patent/JP6198207B2/ja active Active
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