JP6196854B2 - オフセット印刷用インキ組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、オフセット印刷用インキ組成物に関する。
オフセット印刷は、油性であるオフセット印刷用インキ組成物(以下、「インキ組成物」又は「インキ」と適宜省略する。)が水に反発する性質を利用した印刷方式であり、凹凸を備えた印刷版を用いる凸版印刷方式とは異なり、親油性の画像部と親水性の非画像部とを備えた、凹凸のない印刷版を用いることを特徴とする。この印刷版を用いて印刷を行う場合、まず、湿し水を印刷版に接触させて非画像部の表面に水膜を形成させた後に、インキ組成物を印刷版に供給する。すると、供給されたインキ組成物は、水膜の形成された非画像部には反発して付着せず、親油性の画像部のみに付着する。こうして、印刷版の表面にインキ組成物による画像が形成され、次いでそれがブランケット及び紙に順次転移することにより印刷が行われる。
上記オフセット印刷方式は、印刷版の作製が比較的簡単でありながら、高い美粧性を備えた印刷物を得たり、大量の印刷物を短時間で得たりする分野に適するという特性を備える。そこで、オフセット印刷方式は、パンフレット、ポスター、カレンダー等といった高い美粧性が要求される分野から、新聞、雑誌、電話帳等といった高速かつ大量に印刷されることが要求される分野まで広く利用されている。
これらの分野のうち、高速かつ大量に印刷することが必要な分野では、オフセット輪転機を用いるのが一般的である。オフセット輪転機では、印刷用紙を巻き取りの状態で用紙供給部に装着し、この巻き取りを巻き解くことで印刷用紙を印刷部へ供給し印刷を行う。印刷された印刷用紙は、裁断部で裁断を受けたあと、折り加工等といった必要な加工を受けて製品となる。このような印刷方法によれば、数万部から数十万部程度の印刷を一度に行うことができるので効率的である。そして、その印刷速度も1時間あたり、十万部以上という高速に達することもある。このような中、オフセット印刷用のインキ組成物においても、高速印刷適性を付与した製品が数多く提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
ところで、新聞印刷に用いられるオフセット輪転機では、印刷版への湿し水の供給方式としてAD(Arch typed Dampner)方式を用いるものとITD(Ink Train Dampner)方式を用いるものとの二種類がある。AD方式では、湿し水を供給するためのローラーが印刷版に直接接触しており、このローラーの表面に存在する湿し水が、ローラーと印刷版との接触部分を通して印刷版の表面に転移し、印刷版の非画像部に供給される。その後、印刷版にはインキ着けローラーからインキが供給されて、画像部にインキ皮膜による画像が形成される。
一方、ITD方式では、湿し水を供給するためのローラーが、インキをインキ供給部から印刷版まで運搬するためのローラー群(インキローラー)における一本のローラーに直接接触しており、この接触を通して、インキローラーの表面に湿し水が供給される。このとき、インキローラーの表面には皮膜状に薄膜となったインキが存在する。そして、インキローラーの表面に供給された湿し水は、インキローラー上において皮膜状に存在するインキとともに印刷版まで運搬されることになる。ところで、インキと湿し水とは水と油の関係になるため、通常、インキ皮膜の表面に湿し水を単に滴下するとそれは水滴となる。しかしながら、印刷機では、湿し水を供給するためのゴム製のローラーと金属製であるインキローラーとの間に、互いに強く押しつけ合って圧力(ニップと呼ばれる。)を生じさせる関係となるようなローラー配置がなされており、インキと水とが一緒にこの隙間を通過する際にこの圧力によって両者が互いに混じりあい、湿し水がインキ中に乳化した状態となってインキ着けローラーを介して印刷版へ供給される。そして、乳化した湿し水は、印刷版へ供給された際に乳化破壊してインキから分離され、印刷版の非画像部へ供給される。このとき、湿し水を分離したインキは、印刷版の画像部に付着し、インキ皮膜による画像を形成させるとされる(より詳しくは、非特許文献1を参照)。
特開2000−281954号公報
色材協会誌,70(3),205−213(1997)
ところで、オフセット印刷によって得られる印刷物の美しさは、ベタ部(網点でなく全面的にインキで塗りつぶされる部分)において均一かつ緻密にインキが付着することにより、より一層向上するといってもよい。つまり、新聞の見出し部分などに代表されるように、印刷物におけるベタ部というものは、読者の注意を引くために設けられることが多く、極めて目立つものであるので、これが均一かつ緻密に再現されているとメリハリの利いた綺麗な印刷物であるとの印象を読者に与えることができる。したがって、いかに均一かつ緻密にベタ部を再現できるかということが印刷における重要なポイントとなる。
印刷物のベタ部に均一にインキを付着させるためには、当然ながら、印刷版にインキを供給するインキ着けローラーの表面に均一なインキの皮膜を形成させなければならない。この点、ITD方式では、上記のようにインキローラーに供給された湿し水の全てがインキ中に乳化され、両者が一様な状態の乳化インキの皮膜となって印刷版に供給されれば、印刷版のベタ部に均一にインキが供給されることになる。しかしながら、現実には、供給された湿し水の全てがインキ中に乳化されるわけではなく、一部の湿し水はインキローラー上に水滴となって存在することが多い。この場合、インキローラー間をインキが転移していく過程で、水滴となった湿し水の存在する箇所では水滴の表面張力によりインキが押しのけられてしまい、インキ着けローラーの表面におけるインキ皮膜が極端に薄くなる。すると、印刷物のベタ部では、上記のようにインキ皮膜が薄くなった部分に対応する箇所にて、涙粒形状にインキ濃度が薄くなる現象を生じる。この現象は「水跡(みずあと)」と呼ばれ、ベタ部にこれを生じた印刷物では均一性が損なわれてしまい、商品価値が低下する。
こうした「水跡」は、インキを乳化しやすいものとすることで解消することが可能である。しかしながら、インキを過度に乳化しやすいものにすると、湿し水がインキ中に乳化されたままとなって非画像部へ供給されず、非画像部上に十分な水膜が形成されなくなって、意図しない箇所(すなわち非画像部)へインキの付着を生じることにつながる。この現象は「汚れ」と呼ばれ、これを生じた場合も印刷物の商品価値は著しく低下することになるので、単にインキを乳化しやすいものとするだけでは問題の解決にはならない。
水跡発生のメカニズムについての上記説明はITD方式に関するものだが、AD方式においても、印刷版に供給された湿し水がインキ着けローラーを介してインキローラー群まで移送されることが多々あり、この場合には、上記のITD方式の場合と同様に水跡を生じ得ることになる。この場合も、単にインキを乳化しやすいものとするだけでは、非画像部に供給された湿し水までインキ中に取り込まれて汚れを生じるので、問題の解決にはならない。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、非画像部への汚れ耐性を維持しながら、ベタ部における水跡の発生を抑制することのできるオフセット印刷用インキ組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、インキのリソトロニック試験にて所定量の水を一度に添加した際の水の取り込み速度と、印刷の際の水跡の発生頻度との間に相間があることを見出し、この試験における水の取り込み速度を所定の基準以上にすることによって、インキを過度に乳化しやすいものとしなくても印刷物における水跡の発生を顕著に抑制できるようになることを知見した。本発明は以上の知見に基づいて完成されたものであり、具体的には以下のような内容となる。
本発明は、着色顔料と、バインダー樹脂と、油成分と、を含んでなるオフセット印刷用インキ組成物であって、リソトニック乳化試験機を用いた乳化試験において、上記オフセット印刷用インキ組成物の乳化率が20%となる質量の水を一度に添加した際の水の取り込み速度が4秒以下であり、滴下により水を添加した際の乳化限度率が40〜50%であり、体質顔料としてカオリナイトを2〜7質量%含み、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種のグリコールエーテル化合物を含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物である。
Figure 0006196854
(上記一般式(1)及び(2)中、Rは、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、nは、1〜3の整数である。)
上記オフセット印刷用インキ組成物において、ラレー粘度計による25℃における粘度が7.5Pa・s以上であり、スプレッドメーターによる流動性の60秒値が40〜51mmであることが好ましい。
上記グリコールエーテル化合物は、2−エチルヘキシルジグリコールであることが好ましい。
本発明によれば、非画像部への汚れ耐性を維持しながら、ベタ部における水跡の発生を抑制することのできるオフセット印刷用インキ組成物が提供される。
以下、本発明のオフセット印刷用インキ組成物の一実施形態について説明する。
本発明のインキ組成物は、オフセット印刷用として使用されるものであり、印刷紙面における非画像部の汚れ耐性を犠牲にすることなく、印刷面のベタ部における水跡の発生を抑制することができるので、新聞印刷等のような、輪転機を用いた高速印刷用として好ましく用いられる。また、本発明のインキ組成物は、上記のように水跡の発生を抑制することができるので、比較的水跡の発生しやすい印刷機であるITD方式のオフセット輪転機において好ましく用いられることは勿論、AD方式のオフセット輪転機においても好ましく用いられる。本発明のインキ組成物は、着色顔料と、バインダー樹脂と、油成分と、を含んでなり、リソトロニック乳化試験機を用いた乳化試験において、インキ組成物の乳化率が20%となる質量の水を一度に添加した際の水の取り込み速度が4秒以下であり、滴下により水を添加した際の乳化限度率が40〜50%であることを特徴とする。また、本発明のインキ組成物には、良好な印刷適性を付与するとの観点から、体質顔料やグリコールエーテル化合物を含まれることが好ましい。以下、各事項について説明する。
[着色顔料]
着色顔料は、インキ組成物に着色力を付与するための成分である。着色顔料としては、従来からインキ組成物に使用される有機及び/又は無機顔料を特に制限無く挙げることができる。
このような着色顔料としては、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー等のイエロー顔料、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド等のマゼンタ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等のシアン顔料、カーボンブラック等の黒色顔料等が例示される。
着色顔料の添加量としては、インキ組成物全体に対して8〜30質量%程度が例示されるが、特に限定されない。なお、イエロー顔料を使用してイエローインキ組成物を、マゼンタ顔料を使用してマゼンタインキ組成物を、シアン顔料を使用してシアンインキ組成物を、黒色顔料を使用してブラックインキ組成物をそれぞれ調製するに際しては、補色として、他の色の顔料を併用したり、他の色のインキ組成物を添加したりすることも可能である。
[バインダー樹脂]
バインダー樹脂(以下、単に「樹脂」とも呼ぶ。)は、印刷用紙の表面で上記着色顔料を固定するバインダーとして機能する成分であり、また、上記着色顔料をインキ組成物中に分散させるために用いられる成分でもある。このような樹脂としては、インキ組成物の分野で通常使用されるものを特に制限なく挙げることができ、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性石油樹脂、ロジンエステル樹脂、石油樹脂変性フェノール樹脂、アクリル変性フェノール樹脂、アルキド樹脂、植物油変性アルキド樹脂、石油樹脂等が例示される。これらの樹脂の重量平均分子量としては、3000〜30万程度を好ましく例示することができる。
これらの樹脂の中でも、顔料分散性、印刷品質及び長時間にわたる安定な印刷適性といった観点からは、重量平均分子量が1万〜15万であるロジン変性フェノール樹脂及びロジン変性マレイン酸樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、顔料の分散性を向上させるために、これらの樹脂とアルキド樹脂とを併用することも好ましい。この場合、ロジン変性フェノール樹脂及びロジン変性マレイン酸樹脂の合計100質量部に対して、アルキド樹脂を3〜10質量部程度用いるのが好ましい。樹脂の添加量としては、インキ組成物全体に対して、10〜35%程度を好ましく例示できる。
樹脂は、後述する油成分とともに加熱されることにより溶解され、ワニスとされた状態で使用される。ワニスを調製する際、樹脂を溶解させて得られた溶解ワニス中に金属キレート化合物や金属石けん等のゲル化剤を投入し、ゲル化ワニスとしてもよい。樹脂からゲル化ワニスを調製し、これをインキ組成物の調製に用いることにより、インキ組成物に適度な粘弾性を付与することができるので好ましい。
[油成分]
油成分は、上記樹脂を溶解させてワニスとしたり、インキ組成物の粘度を調節したりするために使用される。油成分としては、植物油及び/又は鉱物油を挙げることができ、これまでインキ組成物の調製に使用されてきたものを特に制限なく使用できる。
本発明において、植物油には、植物油の他に植物油由来の脂肪酸エステル化合物が含まれてもよい。植物油としては、大豆油、綿実油、アマニ油、サフラワー油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油、カノーラ油等の乾性油や半乾性油等が例示される。また、植物油由来の脂肪酸エステル化合物としては、上記植物油に由来する脂肪酸のモノアルキルエステル化合物等が例示される。この脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成する脂肪酸としては、炭素数16〜20の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく例示され、このような飽和又は不飽和脂肪酸としては、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が好ましく例示される。脂肪酸モノアルキルエステル化合物を構成するアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく例示され、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基等が好ましく例示される。
これらの植物油は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。植物油としては、大豆油、大豆油脂肪酸エステル等が好ましく例示される。インキ組成物における植物油の含有量としては、インキ組成物全体に対して20〜60質量%程度を例示することができる。
本発明において、鉱物油としては、溶剤成分と呼ばれる軽質の鉱物油や、潤滑油状である重質の鉱物油等が挙げられる。
軽質の鉱物油としては、沸点160℃以上、好ましくは沸点200℃以上の非芳香族系石油溶剤が例示される。このような非芳香族系石油溶剤としては、JX日鉱日石エネルギー株式会社製の0号ソルベント、同AFソルベント5号、同AFソルベント6号、同AFソルベント7号等が例示される。
重質の鉱物油としては、スピンドル油、マシン油、ダイナモ油、シリンダー油等として分類されてきた各種の潤滑油を挙げることができる。これらの中でも、米国におけるOSHA基準やEU基準に適応させるとの観点からは、縮合多環芳香族成分の含有量が抑制されたものであることが好ましい。このような鉱物油としては、JX日鉱日石エネルギー株式会社製のインクオイルH8、同インクオイルH35、三共油化工業株式会社製のSNH8、同SNH46、同SNH220、同SNH540等が例示される。
これらの鉱物油は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。インキ組成物における鉱物油の含有量としては、インキ組成物全体に対して0〜50質量%程度を例示することができる。なお、財団法人日本エコマーク事務局が認定する、インキ組成物におけるエコマーク基準(類型名:印刷インキVersion2.0、基準:インキ組成物中の石油系溶剤が30質量%以下)に適合させるとの観点からは、インキ組成物における鉱物油の含有量を30質量%以下とすることが好ましい。
[体質顔料]
本発明のインキ組成物は、体質顔料を含むことが好ましい。体質顔料は、着色成分でない顔料成分であり、多くの場合、無色の無機粒子である。インキ組成物が体質顔料を含むことにより、適切な粘弾性や、良好な印刷性能等が付与されるので好ましい。こうした体質顔料としては、クレー、タルク、カオリナイト(カオリン)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、ベントナイト、酸化チタン等が例示される。これらの体質顔料は、表面処理により疎水性が付与されたものであってもよい。また、これらの体質顔料は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。体質顔料の添加量としては、インキ組成物全体に対して0〜33質量%程度が例示されるが、特に限定されない。
これらの体質顔料の中でも、インキ組成物における水の取り込み速度を向上させ、印刷物における水跡の発生を抑制するとの観点からは、カオリナイトが好ましく用いられる。本発明者らの検討によれば、カオリナイトを体質顔料とインキ組成物に用いることにより、意外にも、インキ組成物を過度に乳化しやすいものとすることなく、インキ組成物への湿し水の取り込み速度を向上させることが可能になる。このときに用いられるカオリナイトは、疎水化の表面処理を受けていない、親水性のものであることが好ましい。カオリナイトの添加量としては、インキ組成物全体に対して2〜7質量%が好ましく挙げられ、3〜7質量%がより好ましく挙げられ、4〜6質量%がさらに好ましく挙げられる。
[グリコールエーテル化合物]
本発明のインキ組成物は、グリコールエーテル化合物を含むことが好ましい。グリコールエーテル化合物は、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。グリコールエーテル化合物は、印刷中におけるインキ組成物の過剰な乳化を抑制するとともに、インキ組成物への湿し水の取り込み速度を向上させるので、本発明のインキ組成物において好ましく用いられる。
Figure 0006196854
(上記一般式(1)及び(2)中、Rは、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、nは、1〜3の整数である。)
インキ組成物にグリコールエーテル化合物が添加されることにより、過剰な乳化が抑制されたり、湿し水の取り込み速度が向上したりする理由は必ずしも明らかでないが、概ね次のようなものと推察される。グリコールエーテル化合物は、水酸基や複数のエーテル基といった親水性の高い部分と、アルキル基等のような疎水性の高い部分とを併せ持つものである。そのため、油性環境であるインキ組成物中にあって、グリコールエーテル化合物は、速やかに湿し水をインキ組成物中に取り込むのを助ける一方で、取り込んだ湿し水を比較的大きな水滴の状態としてインキ組成物中に乳化させる働きを持つものと推察される。そのため、インキ組成物中に乳化水として取り込まれた湿し水が、その水滴の大きさ故に、印刷機のローラーでせん断力を受けたり、親水性である印刷版の非画像部に接触したりした際に、容易に乳化破壊されてインキ組成物と分離することができ、結果として、印刷中におけるインキ組成物の過剰な乳化が抑制されると考えられる。
グリコールエーテル化合物としては、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2−エチルヘキシルジグリコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルグリコール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピルプロピレンジグリコール及びフェニルプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種を好ましく例示できる。これらの中でも、2−エチルヘキシルジグリコールをより好ましく例示できる。これらのグリコールエーテル化合物は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
インキ組成物中におけるグリコールエーテル化合物の含有量は、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましく、0.3〜2質量%がさらに好ましい。インキ組成物におけるグリコールエーテル化合物の含有量が上記の範囲であることにより、印刷中のインキ組成物の乳化が適切な範囲となって汚れ耐性が得られるとともに、インキ組成物の乳化バランスが良好になって着肉不良の発生が抑制されるので好ましい。
[その他の成分]
本発明のインキ組成物には、印刷性能を向上させる等の観点から、必要に応じて上記の各成分の他に各種成分を添加することができる。このような各種成分としては、リン酸塩等の塩類、ポリエチレン系ワックス・オレフィン系ワックス・フィッシャートロプシュワックス等のワックス類、アルコール類、酸化防止剤等が例示される。
[インキ組成物の調製方法]
上記の各成分を用いて本発明のインキ組成物を製造するに際しては、従来公知の方法を用いることができる。このような方法としては、上記の各成分を混合した後にビーズミルや三本ロールミル等で練肉することで着色顔料を分散させた後、必要に応じて鉱物油や添加剤(酸化防止剤、アルコール類、ワックス類等)等を加えてよく撹拌し、さらに粘度調整することを例示できる。その際、本発明のインキ組成物では、ラレー粘度計による25℃における粘度やスプレッドメーターによる流動性の60秒値が所定の数値以上であることが好ましい。次に、これらのことについて説明する。
[粘度]
本発明のインキ組成物は、ラレー粘度計による25℃における粘度(以下、単に「粘度」とも呼ぶ。)が7.5Pa・s以上となるように調節されることが好ましい。ラレー粘度計は、JIS K5701−1にてL型粘度計として規定されたものであり、この粘度計で測定された粘度は、ラレー粘度と呼ばれる。本発明のインキ組成物は、7.5Pa・s以上のラレー粘度を備えることにより、インキ組成物における湿し水の取り込み速度が向上し、印刷物における水跡の発生が抑制されるほか、高い耐汚れ性とミスチングの抑制効果とを実現することができる。ラレー粘度は、7.7Pa・s以上であることが好ましく、8.0Pa・s以上であることがさらに好ましい。また、ラレー粘度の上限は、12.0Pa・sであることが好ましく、10.0Pa・sであることがより好ましい。ラレー粘度の範囲が上記であることにより、印刷物における水跡の抑制効果、高い耐汚れ性、及びミスチングの抑制効果を得ながら、ローラー上に平滑にインキが乗り、良好な着肉性のある紙面を得ることができるので好ましい。粘度は、インキ組成物中に油成分を添加して撹拌することにより調整される。
[流動性]
本発明のインキ組成物は、スプレッドメーターによる流動性の60秒値(以下、単に「60秒値」とも呼ぶ。)が40mm〜51mmであることが好ましい。スプレッドメーターとは、平行板粘度計としてJIS K5701−1に規定された測定装置であり、所定の量のインキ組成物の上方から所定の質量のガラス板を落下させ、ガラス板にかかる重力によってインキ組成物が潰されて円状に拡がる程度を測定する装置である。「60秒値」とは、測定開始から60秒後における、円上に拡がったインキ組成物の直径の大きさである。この数値が大きいほど、インキ組成物の流動性が高く、応力が加わった際のインキ組成物の伸びが良好であることになる。スプレッドメーターは、例えば、株式会社東洋精機製作所から入手することができる。本発明のインキ組成物において、60秒値は、42mm〜47mmであることがより好ましい。60秒値の範囲が上記であることにより、印刷ローラー上で良好なインキ組成物の伸びを確保して印刷物におけるベタ部の均一な着肉を得ながら、インキ組成物の凝集力が低くなりすぎることによる汚れの発生を抑制することができる。流動性は、インキ組成物中にワニス、ゲル化ワニス、分散剤、油成分等を添加して撹拌することにより調整される。
[リソトロニック乳化試験機を用いた水の取り込み速度]
本発明のインキ組成物は、リソトロニック乳化試験機を用いた乳化試験において、インキ組成物の乳化率が20%となる質量の水を一度に添加した際の水の取り込み速度が4秒以下であることを特徴とする。本発明者らは、非画像部への汚れ耐性を維持しながら、ベタ部における水跡の発生を抑制することのできるオフセット印刷用インキ組成物を得るべく検討を重ねた結果、リソトロニック乳化試験で観察された、インキ組成物の乳化率が20%となる質量となる水を一度に添加した際の取り込み速度と、印刷物のベタ部における水跡の発生状況との間に良好な相間を見出し、上記取り込み速度が4秒以下であれば水跡の十分な抑制効果を得られることを知見した。本発明は、以上の知見に基づいて完成されたものである。なお、「インキの乳化率」とは、乳化インキの質量に対する、乳化インキ中に含まれる水の質量の割合である。例えば、乳化インキ100g中に水が20g含まれている(この場合、乳化インキに含まれるインキ組成物の質量は80gとなる。)とすれば、その乳化インキの乳化率は20%となる。
リソトロニック乳化試験機とは、インキ組成物の乳化量の測定機として当業者に広く用いられているノボコントロール(novocontrol)社製の高速リソトロニック乳化試験機である。通常、この装置は、所定量のインキを所定のカップに入れて撹拌し、一定の添加速度となるように水等の液体を滴下して添加したときにおける撹拌トルクの時間的な変化を測定するものであり、その結果は、横軸が時間軸であり縦軸が撹拌トルクである曲線として得られる。水等の液体は一定の添加速度となるように定量ずつ滴下により添加されるので、時間軸である横軸は水等の液体の添加量として読み替えることが可能であり、この試験で得られた曲線を用いることで、測定対象とされたインキ組成物の乳化限度率や乳化に伴う粘弾性変化等を調べることができる。
本発明におけるリソトロニック乳化試験機を用いた乳化試験では、後述するように上記のような一定の速度で水を添加する乳化試験も実施されるが、それに加えて、試験対象となるインキ組成物の乳化率が20%となる質量の水を一度に添加し、その後の時間経過に伴う撹拌トルク変化を観察する乳化試験を実施する。この試験に際して添加される水は、初回に一度に添加される所定量のみである。このような試験を行うと、水を一度に添加した直後に、インキ組成物と水とが分離状態となって撹拌羽根がインキ組成物を完全には掴むことができなくなり、撹拌トルクが急激に減少する。その後、インキ組成物と水とが分離した状態の低撹拌トルク状態が続き、インキ組成物中への水の乳化が完了する直前付近から急激に撹拌トルクが立ち上がり、その後、高撹拌トルク状態が続くようになる。
上記のような手順で試験を実行すると、未乳化状態のインキ組成物のみが撹拌されている状態の高撹拌トルク状態から、水の添加に伴って撹拌トルクが急激に減少してしばらくの間低撹拌トルク状態となり、その後急激に撹拌トルクが立ち上がって高撹拌トルク状態となる状況が観察される。撹拌トルクが急激に減少する(すなわち高撹拌トルク→低撹拌トルクとなる)ときや、急激に立ち上がる(すなわち低撹拌トルク→高撹拌トルクとなる)ときには、横軸を時間軸とし縦軸をトルク軸とした撹拌トルク曲線は、シグモイド曲線に類似したカーブを描く。そして、高撹拌トルク状態→低撹拌トルク状態、及び低撹拌トルク状態→高撹拌トルク状態の2つのシグモイド曲線の各々の変曲点を結んだ横軸の長さは、インキ組成物が所定量の水を取り込むのに要する時間(これを水の取り込み速度とする。)と解釈できる。この横軸の長さは、上記撹拌トルク曲線の微分曲線にて現れる二つのピークトップの間隔でもある。
上記のようなリソトロニック試験機を用いた水の取り込み速度試験を行うに際しては、ノボコントロール社製のリソトロニック乳化試験機に付属の羽根及びカップを用い、まず、測定対象となるインキ組成物(例えば25g)をカップに入れてから、上記羽根で1200rpmにて5分間にわたって撹拌することで撹拌トルクを安定させ、次いで試験用の水(インキ組成物が25gであれば6.25g)を一度に添加してトルク変化を観察すればよい。
本発明のインキ組成物は、上記のようなリソトロニック試験により求められた水の取り込み速度が4秒以下であることを特徴とする。水の取り込み速度が4秒以下であることにより、印刷物のベタ部分における水跡が顕著に抑制される。上記の水の取り込み速度は、3秒以下であることが好ましく、2秒以下であることがより好ましく、1秒以下であることがさらに好ましい。なお、この試験で用いられる水は、イオン交換水である。
上記の水の取り込み速度を4秒以下とする方法については、特に限定されない。このような方法として、インキ組成物中に上記体質顔料や上記グリコールエーテル化合物を添加することや、インキ組成物の粘度を高く設定することを挙げることができる。また、より親水性の高い着色顔料や樹脂を用いてもよい。既に述べたように、インキ組成物中に体質顔料を添加する場合にはカオリナイトを好ましく用いることができ、インキ組成物中にグリコールエーテル化合物を添加する場合には2−エチルヘキシルジグリコールを好ましく用いることができる。
[リソトロニック乳化試験機を用いた乳化限度率]
本発明のインキ組成物は、リソトロニック乳化試験機を用いた乳化試験において、滴下により水を添加したときの乳化限度率が40〜50%であることを特徴とする。この試験は、上記の「水の取り込み速度」と同様にリソトロニック乳化試験機を用いて実施されるが、測定によって求められる性能指標が乳化限度率である点が異なる。乳化限度率とは、所定の測定条件下で、インキ組成物が限界まで水を取り込んで乳化し、それ以上水を乳化させることができなくなったときの乳化率である。これは、上記のようにリソトロニック乳化試験機を用いて水を一定速度で滴下したときの撹拌トルク変化を観察し、撹拌トルクが急激に低下したときのインキ組成物の乳化率として観察される。インキ組成物を撹拌しながらゆっくりとした滴下速度で水を添加すると、添加された水は速やかにインキ組成物に取り込まれ、通常は撹拌トルクの上昇が観察される。しかし、ある程度の量の水が乳化されると、インキ組成物はそれ以上水を乳化させることができなくなる乳化限度率に到達し、インキ組成物と水とが互いに分離した状態となる。分離した水が存在すると、撹拌羽根はインキ組成物を完全には掴むことができなくなって撹拌トルクが急激に減少するので、この撹拌トルクの急激な減少が観察されたときのインキ組成物の乳化率が乳化限度率となる。なお、この試験で用いられる水はイオン交換水である。
上記のようなリソトリニック試験機を用いた乳化限度率試験を行うに際しては、ノボコントロール社製のリソトロニック乳化試験機に付属の羽根及びカップを用い、まず、測定対象となるインキ組成物(例えば25g)をカップに入れてから、上記羽根で1200rpmにて5分間にわたって撹拌することで撹拌トルクを安定させ、次いで一定の滴下速度で水を添加しながらトルク変化を観察すればよい。なお、このときの水の滴下速度は、2mL/分である。
本発明のインキ組成物が上記のような乳化限度率の範囲を示すことにより、インキ組成物が過剰に湿し水を取り込んでしまうことに伴う、非画像部への汚れの発生が抑制されるとともに、湿し水の取り込み不良に伴う水跡の発生が抑制される。本発明のインキ組成物は、上記のように、湿し水を取り込むのが速いことを特徴とするものだが、同時に、せん断力等の外力を受けた際に容易に湿し水を分離させる能力を備える。そして、本発明のインキ組成物では、印刷機上における乳化率が比較的低くなる領域で、湿し水の取り込みと分離との間の平衡関係が成り立っていると考えられる。
このような平衡関係を成立させるには、既に述べたように、インキ組成物にグリコールエーテル化合物を添加したり、カオリナイト等の体質顔料を添加したりすることを好ましく挙げることができる。こうした手段が採用されたインキ組成物では、速やかに湿し水がインキ組成物中に取り込まれる一方で、取り込まれた湿し水が比較的大きな水滴の状態でインキ組成物中に乳化されているものと推察される。その結果、インキ組成物中に乳化水として取り込まれた湿し水が、その水滴の大きさ故に、外力を受けた際に容易に乳化破壊してインキ組成物と分離できるようになり、上記のように、印刷機上における乳化率が比較的低くなる領域で湿し水の取り込みと分離との間の平衡関係が成り立つものと考えられる。上記乳化率は、41〜49%であることがより好ましく、42〜48%であることがさらに好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明のインキ組成物をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載では、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
[インキ組成物用ワニスの調製]
冷却管、温度計及び撹拌機を装着した4つ口フラスコに、重量平均分子量10万のロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業株式会社製、KG−2212)35部、大豆油20部及びAFソルベント6号(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)44.5部を仕込んだ後200℃に昇温し、同温度を1時間維持することにより樹脂を溶解させた後、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH)を0.5部仕込み、その後170℃で60分間加熱保持して、ワニスを得た。
[インキ組成物用ベースAの調製]
上記ワニス42部、カーボンブラックMA70(三菱化学株式会社製)20部、炭酸カルシウム(白艶華DD、白石カルシウム株式会社製)5部、ギルソナイトワニス13部、及び大豆油5部を混合し、三本ロールミルにて練肉することでインキ組成物用ベースA(ベースA)を調製した。なお、上記ギルソナイトワニスは、ギルソナイト(American Gilsonite Company社製、製品名:ギルソナイト S325L)20部を、AFソルベント6号(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)80部で溶解させたものである。
[インキ組成物用ベースBの調製]
上記ワニス42部、カーボンブラックMA70(三菱化学株式会社製)20部、カオリナイト(製品名:ASP−200、BASF社製)5部、上記ギルソナイトワニス13部、及び大豆油5部を混合し、三本ロールミルにて練肉することでインキ組成物用ベースB(ベースB)を調製した。
[インキ組成物の調製]
上記ベースA、ベースB、2−エチルヘキシルジグリコール(「グリコールエーテル」と略す。)、アルキッド樹脂(製品名:SB−81、東新油脂株式会社製)、及び大豆油を表1に示す配合割合(質量部)にて混合して、実施例1〜5、及び比較例1〜2のインキ組成物を調製した。なお、調製されたインキ組成物のそれぞれについて、ラレー粘度、及びスプレッドメーターで測定された流動性の60秒値を表1に記載した。
[水の取り込み速度]
実施例1〜5及び比較例1〜2のインキ組成物のそれぞれについて、ノボコントロール社製のリソトロニック乳化試験機を用いて水の取り込み速度を求めた。まず、当該乳化試験機に付属の羽根を所定の位置に取り付け、インキ組成物25gをリソトロニック乳化試験機のカップに量り取り、撹拌トルクが安定するまで、5分間にわたってリソトロニック乳化試験機の撹拌羽根で1200rpmにて撹拌した。この撹拌を続けながら、6.25gのイオン交換水を上記カップの中へ一度に注ぎ入れ、このイオン交換水がインキ組成物中に乳化されて撹拌トルクが回復するまで撹拌を続けた。この手順で得られたトルク曲線について、イオン交換水を添加したことによって撹拌トルクが急激に低下した箇所と、インキ組成物の乳化が完了することによって撹拌トルクが立ち上がった箇所の2箇所についてカーブの変曲点をそれぞれ求め、得られた2つの変曲点を結んだ線の横軸の長さから水の取り込み速度(秒)を求めた。求めた水の取り込み速度を表1に示す。
[乳化限度率]
実施例1〜5及び比較例1〜2のインキ組成物のそれぞれについて、ノボコントロール社製のリソトロニック乳化試験機を用いて乳化限度率を求めた。まず、当該乳化試験機に付属の羽根を所定の位置に取り付け、インキ組成物25gをリソトロニック乳化試験機のカップに量り取り、撹拌トルクが安定するまで、5分間にわたってリソトロニック乳化試験機の撹拌羽根で1200rpmにて撹拌した。この撹拌を続けながら2mL/分の速度でイオン交換水を滴下し、インキ組成物とイオン交換水とが分離することに伴う撹拌トルクの急激な低下が観察された際のインキ組成物の乳化率を乳化限度率とした。求めた乳化限度率を表1に示す。
[印刷試験(汚れ及び水跡)]
実施例1〜5及び比較例1〜2のインキ組成物のそれぞれについて、湿し水の供給方式をITD方式に組み替えたN−750型印刷実験機(東浜精機株式会社製)を使用して、印刷速度12万部/時で用紙を新聞用更紙として5千部の印刷試験を行った。湿し水としては水道水にN−4(サカタインクス株式会社製、中性H液)を0.7%加えたものを使用し、湿し水の供給にはスプレーダンプナーSSD−12(サカタインクス株式会社製)を使用した。印刷に際しては、水幅の下限付近での印刷状態の比較を行うために、水幅の下限値よりもSSD−12のダイヤルを2ポイント上げた状態とした。また、印刷時のベタ紙面濃度は、1.20±0.02とした。なお、ベタ紙面濃度は、印刷物におけるベタ部の濃度をSpectroeye濃度計(Gretagmacbeth社製)により測定した数値である。
(汚れ評価)印刷試験終了直前の紙面の非画像部の汚れを目視で評価した。評価結果を表1に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:非画像部に汚れが全く観察されない
○:平網部(50%網点)にて若干のからみ汚れが観察されるが、その他の非画像部では汚れが全く観察されない
△:咥え尻部の非画像部にてやや汚れが観察される
×:非画像部にて目立った汚れが観察される
(水跡評価)印刷試験終了直前の紙面の50部を採取し、ベタ部における水跡の発生状態を目視で観察した。評価結果を表1に示す。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:水跡は全く観察されない
○:水跡はほとんど観察されない
△:水跡が確認されるのが3部以内である
×:水跡が確認されるのが4部以上である
Figure 0006196854
表1から明らかなように、本発明のインキ組成物によれば、良好な汚れ耐性を備えながら、印刷物のベタ部における水跡の発生が抑制されることがわかる。特に、インキ組成物の乳化を高めるアルキッド樹脂のような材料を添加することによって湿し水の取り込みを速くした場合には、比較例2に示すように、ベタ部における水跡が観察されなくなる一方で非画像部での汚れが観察されるようになるが、本発明のインキ組成物によれば、水跡の抑制と汚れの抑制とを両立させることができて良好であることがわかる。

Claims (3)

  1. 着色顔料と、バインダー樹脂と、油成分と、を含んでなるオフセット印刷用インキ組成物であって、
    リソトニック乳化試験機を用いた乳化試験において、前記オフセット印刷用インキ組成物の乳化率が20%となる質量の水を一度に添加した際の水の取り込み速度が4秒以下であり、滴下により水を添加した際の乳化限度率が40〜50%あり、体質顔料としてカオリナイトを2〜7質量%含み、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種のグリコールエーテル化合物を含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物。
    Figure 0006196854
    (上記一般式(1)及び(2)中、Rは、それぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、nは、1〜3の整数である。)
  2. ラレー粘度計による25℃における粘度が7.5Pa・s以上であり、スプレッドメーターによる流動性の60秒値が40〜51mmである請求項1記載のオフセット印刷用インキ組成物。
  3. 前記グリコールエーテル化合物が、2−エチルヘキシルジグリコールである請求項記載のオフセット印刷用インキ組成物。
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