JP6193842B2 - 軸受用鋼線材 - Google Patents

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Description

本発明は、ニードルコロなどの軸受部品に使用される軸受用鋼線材に関する。
自動車等の車両や各種産業機械等で軸受の材料として、JIS G 4805(2008)で規定される高炭素クロム軸受鋼鋼材、即ちSUJ材が使用されることが多い。
軸受用鋼は、軸受製造工程において、熱間圧延材を用いた中間伸線時の良好な伸線加工性を確保するため、従来は、熱間圧延材に対して球状化焼鈍が実施されていた。しかしこの中間伸線前の球状化焼鈍には数十時間という長時間を要する。近年は、コスト削減やCO2排出量低減が一層求められていることから、前記中間伸線前の球状化焼鈍を省略することが求められている。
また、中間伸線後は一般に、仕上伸線時や冷間鍛造時の加工性確保や、最終製品である軸受に求められる転動疲労特性、耐摩耗性等を確保する観点から、炭化物を球状化する球状化焼鈍が実施される。この中間伸線後の球状化焼鈍は必須であるものの、長時間を要することから、簡略化することが求められる。該球状化焼鈍の簡略化により、消費電力量を低減でき生産性を高めることもできる。しかし球状化焼鈍を簡略化すると、硬さが低減され難く、冷間加工時の変形抵抗が高くなりやすい。その結果、例えば冷間鍛造時に使用の工具寿命が短くなる等の問題がある。よって、中間伸線後の球状化焼鈍を簡略化した場合であっても、該球状化処理後の硬さが抑えられ、冷間加工、特には冷間鍛造を良好に実施できることが求められる。
つまり、熱間圧延を行って得られる軸受用鋼線材には、熱間圧延後であって中間伸線前に焼鈍を施さなくとも中間伸線時に優れた伸線加工性を示すこと;中間伸線後の球状化焼鈍を簡略化しても硬さが十分に低減されてその後に行う仕上伸線や冷間鍛造といった冷間加工を良好に行えること;および、前記球状化焼鈍を簡略化しても、球状化焼鈍の本来の目的である球状化を十分に達成できること;が求められる。
これまでにも、焼鈍を施すことなく熱間圧延のままで優れた伸線加工性を示す鋼線材が下記の通り提案されている。
特許文献1には、上記鋼線材の製造方法が示されている。詳細には、成分組成を規定した鋼を熱間圧延後、550〜700℃の範囲まで冷却速度8〜20℃/秒で急冷した後、400℃までの温度範囲を平均冷却速度0.5〜2℃/秒で冷却することにより、初析セメンタイトの面積率を3%以下、大きさを3μm以下にすることが示されている。即ち、この技術では、熱間圧延後に急冷して初析セメンタイトの面積率と大きさを低減することによって、鋼線材の伸線加工性を高め得たことが示されている。本方法では伸線加工性は向上するが、後述の通り、球状化焼鈍後の硬さを抑えて冷間加工性を確保することは難しいと思われる。
特許文献2には、最終製品である転動部品に優れた転動疲労特性を付与することができる、生引きが可能な圧延線材および伸線材が提案されている。該軸受用圧延線材は、mass%で、C:0.8〜1.3%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.2〜2.0%、Cr:0.8〜2.0%を含み、パーライトのコロニーが6μm以下とされたものである。またこの線材は、初析セメンタイトが面積率で3%超であることも示されている。つまり特許文献2には、パーライトコロニーの微細化と初析セメンタイトの増加により圧延線材の伸線加工性を向上させたことが示されている。この技術は、特別な設備を必要としないが、後述の通り、より優れた伸線加工性を確保することは難しく、また、球状化焼鈍後の硬さを抑えて冷間加工性を確保することも難しいと思われる。
特許文献3には、圧延ままで球状化組織を有し冷間成形性が優れた軸受け用線材・棒鋼、及びこのような軸受け用線材・棒鋼を経済的でかつ操業容易に製造できる方法が示されている。前記軸受け用線材・棒鋼として、鋼組成を規定すると共に、セメンタイトのうちアスペクト比(長径/短径)が2以下であるものの割合を70%以上とすることが提案されている。また製造方法として、熱間圧延の仕上圧延を鋼素材の(Ar1−50℃)〜(Ar1+50℃)の温度域で減面率が20%以上となるように行い、直ちに冷却速度0.5℃/s以下で、500℃以下まで冷却する方法が開示されている。この特許文献3は、直接球状化技術に関するものであるが、球状化焼鈍後の硬さ低減、つまり冷間加工性の確保については検討されていない。
特許文献4には、質量割合にて、C:0.80〜1.30%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下を含み、組織が実質的に初析セメンタイトとパーライトとからなり、初析セメンタイトの面積率が3%超、パーライトラメラ間隔が0.15μm以下であることを特徴とする軸受用圧延線材が示されている。この技術は、パーライト組織のラメラ間隔微細化、初析セメンタイト増加によって、圧延線材の伸線加工性向上を図った技術である。この技術は特別な設備を必要としないが、後述の通り、より優れた伸線加工性を確保することは難しく、また、球状化焼鈍後の硬さを抑えて冷間加工性を確保するには、更なる検討が必要であると思われる。
特許文献5には、熱間加工ままで軟質の冷間成形性に優れる軸受け用鋼材として、規定の成分組成を満たし、熱間加工後の組織におけるセメンタイト相の球状化率を70%以上とした鋼材が提案されている。つまり圧延ままでセメンタイトの球状化を図る技術であるが、この技術の実現には低温圧延を必要とするため、汎用性に欠けると思われる。
上記の通り、先行技術はいずれも中間伸線前の球状化焼鈍の省略可能な技術ではあるが、特許文献3、5は、特殊な設備を必要とし設備投資・製造コストが高くなるか、または低温圧延などの装置負荷がかかり制御も難しいため汎用性が低いと思われる。一方、特許文献1、2および4は、上記特許文献3、5の様な特殊な設備を必要としないが、後に詳述の通り、熱間圧延後に焼鈍を施さないで伸線加工する場合の優れた伸線加工性と;球状化焼鈍後の硬さが抑えられて優れた冷間加工性を発揮することと;球状化焼鈍による十分な球状化と;の全てを確保することは難しいと思われる。
特開平8−260046号公報 特開2004−100016号公報 特開2004−190127号公報 特開2003−171737号公報 特開2003−193199号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、熱間圧延後に焼鈍を施さなくとも中間伸線時に優れた伸線加工性を示し、かつ、中間伸線後に行う球状化焼鈍後は硬さが抑えられて、その後の仕上伸線や冷間鍛造を良好に行うことができ、更には、前記球状化焼鈍によって十分な球状化を達成することのできる軸受用鋼線材を提供することを目的とする。
上記課題を解決し得た本発明の軸受用鋼線材は、成分組成が、質量%で、C:0.95〜1.10%、Si:0.15〜0.75%、Mn:0%超1.70%以下、Cr:0.90〜2.05%、P:0%超0.025%以下、S:0%超0.025%以下、Al:0%超0.050%以下、Ti:0%超0.015%以下、N:0%超0.025%以下、およびO:0%超0.0025%以下を含有し、残部は鉄および不可避的不純物からなり、鋼組織が、平均パーライトコロニーサイズ:3.2μm以下、全組織に占める初析セメンタイトの面積率:2.0%以上5.0%以下、およびパーライトノジュールサイズ:7.0μm以上13.5μm以下の全てを満たすところに特徴を有する。
上記軸受用鋼線材は、更に、下記(A)〜(E)のいずれか1以上を含んでいてもよい。
(A)質量%で、Cu:0%超0.25%未満、Ni:0%超0.25%未満、およびMo:0%超0.25%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
(B)質量%で、Nb:0%超0.5%以下、V:0%超0.5%以下、およびB:0%超0.005%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
(C)質量%で、Ca:0%超0.05%以下、REM:0%超0.05%以下、Mg:0%超0.02%以下、Li:0%超0.02%以下、およびZr:0%超0.2%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
(D)質量%で、Pb:0%超0.5%以下、Bi:0%超0.5%以下、およびTe:0%超0.1%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
(E)質量%で、As:0%超0.02%以下
本発明によれば、鋼線材の組織を規定の範囲内に制御しているので、該鋼線材は、熱間圧延後に焼鈍を施さなくとも中間伸線時に優れた伸線加工性を示す。また、中間伸線後に実施の球状化焼鈍後の硬さが低く優れた冷間加工性を示す。特には前記球状化焼鈍が簡略化した条件であっても硬さが低減され優れた冷間加工性を示し、その後の仕上伸線や冷間鍛造を良好に行うことができる。更には、前記球状化焼鈍により高い球状化を達成できる。この様に熱間圧延後であって中間伸線前の球状化焼鈍を省略できるので、生産性が向上すると共に、環境負荷や製造コストも低減できる。また前記冷間鍛造時の変形抵抗が低減されて、冷間鍛造用金型の寿命を向上させることができる。
図1は、過共析鋼の組織を示す模式図である。 図2は、本発明の鋼線材を用いて軸受を製造する工程の一部を例示する図である。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。即ち(a)熱間圧延後に焼鈍を施さなくとも伸線加工時、即ち中間伸線時に優れた伸線加工性を示すと共に、(b)中間伸線後に実施の球状化焼鈍後は硬さが低減されて優れた冷間加工性を示し、かつ(c)前記球状化焼鈍により十分に球状化される、軸受用鋼線材を実現すべく鋭意研究を行った。更には、この軸受用鋼線材を、低温圧延や再加熱などの特殊な設備を必要とすることなく、製造時の加熱、熱間圧延、および熱間圧延後の冷却の条件を制御することによって得るべく併せて検討した。
その結果、まず上記(a)〜(c)の全ての特性を満たすには、圧延材組織、つまり本発明の鋼線材の組織を下記の通りとすることが有効であることを見出した。
平均パーライトコロニーサイズが3.2μm以下、全組織に占める初析セメンタイトの面積率が2.0%以上5.0%以下、およびパーライトのノジュールサイズが7.0μm以上13.5μm以下
まずは、焼鈍を省略しても良好に伸線加工できるよう、熱間圧延材の伸線加工性を向上させるべく、パーライト主体の組織に着目して鋭意研究を行った。
軸受鋼のパーライト組織が伸線加工性に及ぼす影響について、先行技術には次の様な知見が示されている。即ち、軸受鋼は過共析鋼であり初析セメンタイトが特性に大きく影響するという観点から、特許文献1には、初析セメンタイトを低減した方が良いという技術が示されている。一方、特許文献2や特許文献4には、初析セメンタイトを増加させた方が良いといった特許文献1とは相反する知見が開示されている。また、パーライトに関する他の因子として、図1に示す通り、パーライトノジュール1やパーライトコロニー2のサイズ、ラメラ間隔3が挙げられる。尚、図1において4は旧オーステナイト粒界である。特許文献2には、前記パーライトコロニー2の微細化が良いといった知見があり、また、特許文献4には、前記ラメラ間隔3の微細化が良いといった知見が開示されている。
しかしながら、これらの従来技術では本発明で要求する、上記(a)〜(c)の全ての特性を満足することができない。そこで上記全ての特性を兼備する軸受用鋼線材を得るべく、パーライト主体の組織についてあらためて検討を行った。その結果、まず伸線加工性に関し、(i)伸線加工性の向上にはパーライトコロニー2のサイズの微細化が有効であること;および(ii)初析セメンタイト量は、少なすぎても多すぎても伸線加工性が劣化すること;つまり、上記パーライトコロニーサイズと初析セメンタイト量が共に、伸線加工性の向上にとって重要な因子である点に着目した。
まず上記(i)について説明する。パーライトコロニーは、前記図1に示す通りパーライトラメラの向きが揃った領域であるが、このパーライトコロニー2のサイズが大きいと伸線加工により塑性変形を受けた際に伸線方向へ結晶回転しにくく加工限界が低い。微細なほど結晶回転しやすく有利であると考える。この知見から本発明では、平均パーライトコロニーサイズを3.2μm以下と規定した。該コロニーサイズは、好ましくは3.0μm以下である。後述する製造条件等を考慮すると、その下限は1.5μm程度となる。
次に(ii)の初析セメンタイト量について述べる。初析セメンタイトは、低減した場合、相対的にパーライト中のセメンタイト量が増加し、パーライト内部の塑性変形能が低下する。一方、初析セメンタイト量が増加すると、粗大な初析セメンタイトがパーライト間の塑性変形を阻害し、塑性変形能が低下する。つまり、初析セメンタイト量には最適範囲があることをまず見出した。そして、所望の伸線加工性を得るべく、初析セメンタイトの具体量について検討を行ったところ、全組織に占める初析セメンタイトの面積率の下限は2.0%以上とする必要があることを見出した。前記初析セメンタイトの面積率は、好ましくは2.5%以上である。一方、前記初析セメンタイトの面積率の上限は、5.0%以下とする必要がある。前記初析セメンタイトの面積率は、好ましくは4.5%以下、より好ましくは4.0%以下である。
球状化焼鈍後の硬さと球状化度に対しては、パーライトノジュールサイズが影響する。パーライトノジュールサイズと、球状化処理の加熱中の結晶粒径、例えばオーステナイト粒径とは正相関があり、パーライトノジュールが粗大であると加熱時のオーステナイト粒径も粗大となる。オーステナイト粒径が粗大であると、球状化焼鈍後のフェライト粒径も粗大化する。この様にパーライトノジュールサイズが粗大であると、球状化焼鈍後はフェライト粒径が粗大化して硬さは低減するが、球状化処理後の冷却中に棒状の炭化物が生成しやすくなり球状化度が悪化する。この観点から本発明では、パーライトノジュールサイズを13.5μm以下とする。パーライトノジュールサイズは好ましくは13.0μm以下である。
一方、パーライトノジュールが微細である場合、球状化処理後の冷却中に棒状の炭化物は生成し難く、球状化度を高めることができる。しかし球状化焼鈍後の硬さが増加しやすくなるため、良好な冷間加工性の確保が難しくなる。この観点から本発明では、パーライトノジュールサイズを7.0μm以上とする。パーライトノジュールサイズは好ましくは8.0μm以上である。
この様に本発明では、パーライトノジュールサイズを適正範囲に制御することで、球状化焼鈍後の硬さ低減による冷間加工性確保、および高い球状化度を両立できた。以下、パーライトノジュールサイズを単に「ノジュールサイズ」、平均パーライトコロニーサイズを単に「コロニーサイズ」ということがある。尚、ノジュールサイズは、「ブロックサイズ」と呼ばれることもある。
本発明の鋼線材の組織は、パーライトを主体とする組織である。本発明においてパーライトを主体とする組織とは、例えば全組織に占めるパーライトの割合が90面積%以上、更には95面積%以上であることをいう。尚、残部組織として、例えば初析セメンタイト、フェライト、ベイナイト、マルテンサイトが合計10面積%以下の範囲内で存在しうる。
次に本発明の鋼線材の成分組成について説明する。
C:0.95〜1.10%
Cは、焼入れ硬さを増大させ、室温および高温における強度を維持して耐摩耗性を付与するために必須の元素である。従って、0.95%以上含有させる必要がある。C含有量は、好ましくは0.98%以上である。しかしながら、C含有量が多くなりすぎると巨大炭化物が生成しやすくなり、転動疲労特性の低下を招くので、C含有量は1.10%以下、好ましくは1.05%以下とする。
Si:0.15〜0.75%
Siは、マトリックスの固溶強化および焼入れ性を向上させるために有用な元素である。このような作用を発揮させるためには、Siを0.15%以上含有させる必要がある。Si含有量は好ましくは0.20%以上、より好ましくは0.25%以上である。一方で、Si含有量が多くなり過ぎると、加工性や被削性が著しく低下するので、Si含有量は0.75%以下とする。Si含有量の好ましい上限は0.70%、より好ましい上限は0.65%である。
Mn:0%超1.70%以下
Mnは、マトリックスの固溶強化および焼入れ性を向上させるために有用な元素である。しかしMn含有量が多くなり過ぎると、加工性や被削性が著しく低下する。従って、Mn含有量は1.70%以下とする。Mn含有量は、好ましくは1.50%以下、より好ましくは1.00%以下である。下限については特に定めていないが、上記の固溶強化や焼入れ性向上の作用を得るには、0.10%以上含有させることが好ましい。Mn含有量は、より好ましくは0.15%以上、更に好ましくは0.20%以上である。
Cr:0.90〜2.05%
Crは、Cと結びついて微細な炭化物を形成し、耐摩耗性を付与すると共に、焼入れ性の向上に寄与する元素である。また、Crが炭化物に濃化することで加熱時に溶けにくくなり、球状化促進に寄与する。このような作用を発揮させるためには、Crを0.90%以上含有させる必要がある。Cr含有量は好ましくは1.00%以上、より好ましくは1.10%以上である。しかし、Cr含有量が過剰になると、粗大な炭化物が生成し、転動疲労寿命が低下する。従って、Cr含有量は2.05%以下とする。Cr含有量は、好ましくは1.80%以下、より好ましくは1.55%以下である。
P:0%超0.025%以下、S:0%超0.025%以下
Pは、偏析部での靭性、加工性を劣化させ、Sは、介在物を形成して転動疲労特性を劣化させるため、いずれも0.025%以下とする。いずれの元素の含有量も、好ましくは0.020%以下、より好ましくは0.015%以下である。
Al:0%超0.050%以下
Alは、窒化物を形成し、組織を微細化させ、転動疲労特性を向上させる作用を有する。この観点からは、Alを0.0040%以上含有させることもできる。一方、Alを過剰に含有させると脱炭が進んで、転動疲労特性等に不具合を生じる。従って、本発明では、Al含有量を0.050%以下とする。Al含有量は、好ましくは0.030%以下、より好ましくは0.020%以下である。
Ti:0%超0.015%以下
Tiは、Alと同様に窒化物を形成するが、窒化物が比較的粗大であるため組織微細化への寄与は小さい上、転動疲労特性を劣化させる場合がある。よって本発明では、Ti含有量を0.015%以下とする。Ti含有量は、好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.005%以下、更に好ましくは0.0020%以下である。
N:0%超0.025%以下
Nは、固溶強化に有効な元素であって、前記したように転動疲労特性の向上にも寄与する。この観点からは、N量が0.0010%以上、更には0.0020%以上含まれていてもよい。但し、その含有量が過剰になると、歪時効による加工性の劣化などの不具合を招くため、積極的に含有させる場合でも0.025%以下とする。好ましい上限は0.020%、より好ましい上限は0.010%、更に好ましい上限は0.0050%である。
O:0%超0.0025%以下
軸受部品は、転動疲労により酸化物を主とする介在物を起点として破壊することが知られており、Oは、極力低減することが好ましい。本発明では、O含有量の上限を0.0025%とする。好ましい上限は0.0020%、より好ましい上限は0.0015%、更に好ましい上限は0.0010%である。
本発明の鋼線材の成分は、上記元素を含み、残部は鉄および不可避的不純物である。本発明の鋼線材には、上記元素と共に、必要に応じて以下に示す元素が下記範囲内で含まれていてもよい。
Cu:0%超0.25%未満、Ni:0%超0.25%未満、およびMo:0%超0.25%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
Cu、Ni、Moは、いずれも焼入れ性を向上させる作用を有し、転動疲労特性の向上にも寄与する。これらの元素は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。但し、それらの含有量が過剰になると、加工性の劣化などの不具合を招くため、Cu:0.25%以下、Ni:0.25%以下、Mo:0.25%以下とする。いずれも、好ましい上限は0.20%、より好ましい上限は0.15%、更に好ましい上限は0.10%である。尚、MoはSUJ4材およびSUJ5材の必須含有元素であって、いずれも0.10〜0.25%含有される。
Nb:0%超0.5%以下、V:0%超0.5%以下、およびB:0%超0.005%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
Nb、V、Bは、いずれも焼入れ性を向上させる作用を有し、転動疲労特性の向上にも寄与するため、必要に応じて含有される。これらの元素は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。但し、それらの含有量が過剰になると、特性劣化を招くため、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、B:0.005%以下とする。Nb含有量とV含有量の好ましい上限は、それぞれ0.25%、より好ましい上限はそれぞれ0.10%、更に好ましい上限はそれぞれ0.05%である。また、B含有量の好ましい上限は0.004%、より好ましい上限は0.003%、更に好ましい上限は0.002%である。
Ca:0%超0.05%以下、REM:0%超0.05%以下、Mg:0%超0.02%以下、Li:0%超0.02%以下、およびZr:0%超0.2%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
Ca、REM(Rare Earth Metal)、Mg、Li、Zrは、いずれも酸化物や硫化物の介在物を微細化する作用を有し、転動疲労特性の向上に寄与するため、必要に応じて含有される。これらの元素は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。但し、それらの含有量が過剰になると、特性劣化を招くため、Ca:0.05%以下、REM:0.05%以下、Mg:0.02%以下、Li:0.02%以下、Zr:0.2%以下とする。Ca含有量とREM含有量の好ましい上限は、それぞれ0.02%、より好ましい上限はそれぞれ0.01%、更に好ましい上限はそれぞれ0.005%である。また、Mg含有量とLi含有量の好ましい上限は、それぞれ0.01%、より好ましい上限はそれぞれ0.005%、更に好ましい上限はそれぞれ0.001%である。また、Zr含有量の好ましい上限は0.1%、より好ましい上限は0.05%、更に好ましい上限は0.01%である。尚、本発明において、前記REMとは、スカンジウム、イットリウム、およびランタノイド元素、即ちLaからLnまでの15元素を含む意味である。好ましくは、Ce、Y、La、Ndである。
Pb:0%超0.5%以下、Bi:0%超0.5%以下、およびTe:0%超0.1%以下よりなる群から選択される1種以上の元素
Pb、Bi、Teは、いずれも被削性を向上する作用を有し、必要に応じて含有される。これらの元素は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。但し、それらの含有量が過剰になると、熱間加工特性の劣化、疵の発生などの不具合を招くため、Pb:0.5%以下、Bi:0.5%以下、Te:0.1%以下とする。Pb含有量とBi含有量の好ましい上限は、それぞれ0.2%、より好ましい上限はそれぞれ0.1%、更に好ましい上限はそれぞれ0.05%である。また、Te含有量の好ましい上限は0.05%、より好ましい上限は0.02%、更に好ましい上限は0.01%である。
As:0%超0.02%以下
Asは、鋼材の脆化を招く有害元素であり、極力低減するのが好ましい。但し、必要以上の低減はコスト増を招くため工業上好ましくない。従って、As:0.02%以下とする。好ましい含有量の上限は0.01%、より好ましい上限は0.005%、更に好ましい上限は0.002%である。
次に、軸受用鋼線材、特には上述した鋼組織を確保するための製造条件について説明する。
本発明者らは、低温圧延や再加熱などの特殊な設備を必要とせずに、製造時の加熱、熱間圧延、および熱間圧延後の冷却の条件を制御して、本発明で規定の組織を得ることを目的として検討を行った。まず本発明者らは、先行技術に示された製造方法について検討を行った。
特許文献2には、パーライトコロニーの微細化のために、加熱温度を1000℃以下、かつ圧延終了温度を850℃以下として旧オーステナイトを制御する必要があり、その上で3℃/s以下で冷却すればよいことが段落0018以降に示されている。しかし、まず比較的低温で圧延を行っていることから、圧延機の負荷が大きくなることやノジュールサイズが必要以上に微細化することが考えられる。
また、本発明で制御するコロニーサイズは、旧オーステナイト粒径よりも変態温度の影響を受ける。コロニーサイズの微細化には、変態温度の低下が必要であり、そのためには比較的速やかに冷却する必要がある。しかし冷却速度を速めると、ノジュールサイズも必要以上に微細化しやすくなる。ノジュールサイズを本発明で規定の範囲内とするには、上記冷却速度を適正範囲に制御する必要があると考える。
更に特許文献2では、初析セメンタイト増量のために、熱間圧延終了後の700℃までの冷却速度を0.5℃/s以下の徐冷とすることが示されている。しかし熱間圧延後に徐冷するとノジュールサイズの粗大化を招く。また、本発明では上述の通り初析セメンタイト量に適正範囲があり、この適正量の初析セメンタイト量を確保する観点からも、冷却速度を適正範囲とする必要があると考える。
特許文献4には、初析セメンタイト増量のために、圧延後700〜800℃まで0.1〜2℃/sで徐冷することが示されている。また、ラメラ間隔微細化のため、前記徐冷に引き続き650〜500℃まで5〜20℃/sで急冷することが示されている。しかしながら、上述の通り熱間圧延後に徐冷するとノジュールサイズの粗大化を招く。
一方、特許文献1では、初析セメンタイト量低減のために、熱間圧延後550〜700℃まで8〜20℃/sで急冷することが示されている。しかしながら、熱間圧延後に比較的低温域まで急冷すると、ノジュールサイズが必要以上に微細化し、上述した規定の範囲内とすることが難しい。
これら先行技術の製造方法の検討から、本発明で規定の組織は、特許文献2や特許文献4の様な連続冷却、特に連続して徐冷するのでは確保が困難であり、また特許文献1の様に、熱間圧延後、比較的低温域まで急冷しても確保が困難であり、よって加熱温度・圧延温度制御および冷却時の多段冷却パターンが有効であることをまず見出した。以下、本発明の鋼線材を得るための具体的な製造条件について説明する。
熱間圧延時の加熱温度T1:900〜1050℃
前記成分組成の鋼を溶製して鋳造し、熱間圧延を行う。熱間圧延に際して行う加熱の温度が低温であると、未固溶炭化物が熱間圧延後に偏析バンドとして残存し、最終製品、つまり軸受の耐久性が劣化する。よって加熱温度は900℃以上とする。好ましくは920℃以上である。一方、上記加熱温度が高すぎると、脱炭が促進され、この場合も最終製品である軸受の耐久性が劣化する。よって、加熱温度は1050℃以下、好ましくは1020℃以下とする。
仕上圧延温度T2:790〜850℃
仕上圧延温度は、旧オーステナイト粒径に影響し、変態後のパーライトの特にノジュールサイズへの影響が大きい。仕上圧延温度が低温になるほど、旧オーステナイト粒径が小さくなり、変態後のパーライトのノジュールサイズは微細になる。ノジュールサイズが微細化し過ぎると球状化焼鈍後の硬さが上昇する。よって、本発明では仕上圧延温度を790℃以上とする。仕上圧延温度は好ましくは800℃以上であり、より好ましくは810℃超である。一方、仕上圧延温度が高温になるほど、旧オーステナイト粒径が大きくなり、変態後のパーライトのノジュールサイズは粗大になる。ノジュールサイズが粗大になると、球状化焼鈍時に球状化が進まない。よって本発明では、仕上圧延温度の上限を850℃以下とする。仕上圧延温度は好ましくは840℃以下である。
仕上圧延温度T2から、760〜820℃の温度域の冷却停止温度T3までの平均冷却速度:30℃/s以上
熱間圧延後の比較的高温域の冷却では、その冷却速度が、旧オーステナイト粒径および初析セメンタイト量に影響する。この高温域での冷却速度が小さいほど、旧オーステナイト粒径は粗大化し、初析セメンタイト量は増加する。本発明者らは、旧オーステナイト粒径の粗大化を抑制することによりノジュールサイズの粗大化を抑制する観点から、仕上圧延温度T2から760〜820℃の温度域の冷却停止温度T3までを、平均冷却速度CR1:30℃/s以上で冷却するのがよいことを見出した。平均冷却速度CR1はより好ましくは35℃/s以上である。尚、平均冷却速度CR1の上限は、線材表層部の過冷却防止の観点からおおよそ100℃/sとなる。
前記T3で示す冷却停止温度も、前記平均冷却速度と同様に旧オーステナイト粒径と初析セメンタイト量に影響する。冷却停止温度T3が高いほど旧オーステナイト粒径は粗大化し、初析セメンタイト量は増加する。本発明では、旧オーステナイト粒径の粗大化を抑制してノジュールサイズの粗大化を抑制する観点および初析セメンタイト量を5.0%以下に抑える観点から、冷却停止温度T3を820℃以下とした。冷却停止温度T3はより好ましくは810℃以下である。一方、冷却停止温度T3が低いほど旧オーステナイト粒径は微細になり、かつ初析セメンタイト量は減少する。初析セメンタイトを2.0面積%以上確保する観点から冷却停止温度T3を760℃以上とした。冷却停止温度T3はより好ましくは780℃以上である。
前記冷却において、前記仕上圧延温度T2と前記冷却停止温度T3との差は15℃以上とすることが好ましい。この温度差を設けることによって、旧オーステナイト粒径の粗大化を十分に抑制することができる。前記温度差は好ましくは20℃以上である。
前記冷却停止温度T3から650℃までの平均冷却速度CR2:1.0℃/s以上4.5℃/s以下
前記冷却停止温度T3以下の温度域はパーライト変態域にあたる。よってこの温度域の冷却制御は、パーライト組織因子のうち本発明で規定のコロニーサイズとノジュールサイズの制御のための重要なプロセスである。変態温度が低いほどコロニーサイズ、ノジュールサイズが共に微細化する。また、この温度域での冷却速度が高いほど変態温度が低くなり、その結果、コロニーサイズ、ノジュールサイズが共に微細化する。これらの観点から、コロニーサイズを本発明で規定の通り微細化するには、前記冷却停止温度T3から650℃までの平均冷却速度CR2を1.0℃/s以上とする必要がある。前記平均冷却速度CR2は好ましくは1.5℃/s以上である。一方、前記平均冷却速度CR2が速すぎると、ノジュールサイズが微細化しすぎてしまい、前述の通り冷間加工性の確保が難しくなる。よって本発明では前記平均冷却速度CR2を4.5℃/s以下とするのがよい。前記平均冷却速度CR2は好ましくは4.0℃/s以下である。
本発明では制御冷却の温度域は650℃まででよく、それ以下の温度域の冷却条件は問わない。
本発明の鋼線材は、その後、図2に例示する通り、例えば、酸洗・皮膜、中間伸線、球状化焼鈍、酸洗・皮膜、仕上伸線、更には冷間鍛造等の工程に供されるが、これらの実施条件は一般的に行われている条件を採用することができる。前記球状化焼鈍も特に問わず、一般的に行われている条件を採用することができるが、本発明によれば、例えば785℃で6時間加熱後、30℃/hで冷却といった簡略化した条件を採用した場合であっても、硬さを十分低減でき、仕上伸線や冷間鍛造を良好に行うことができる。本発明の鋼線材は、図2の熱間圧延後であって前記中間伸線前に行われていた球状化焼鈍を省略できる。また本発明の鋼線材は、図2の中間伸線後に実施の球状化焼鈍後、仕上伸線や冷間鍛造を良好に行うことができる。軸受は、仕上伸線後、切断してから所定の形状に冷間鍛造し、図2には示していないが、焼入れ焼戻し処理し、最後に仕上げ加工を施すことで製造される。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。即ち、下記では、実施例としてJIS規格のSUJ2を使用し評価したが、本発明はSUJ2のみでなく、JIS規格のSUJ3〜5に相当する軸受鋼鋼材全般に活用可能である。
表1に示す成分組成を満たす鋼材を、連続鋳造により製造した。得られた鋳片を、分塊圧延して155mm角の鋼片を作製した後、表2に示す加熱温度T1まで加熱してから熱間圧延を実施して、供試材として、サイズが直径10mmの圧延材を得た。熱間圧延の条件は次の通りである。即ち、仕上圧延温度T2は、表2に示す通りである。仕上圧延温度T2から、表2に示す冷却停止温度T3までを、表2に示す平均冷却速度CR1で冷却し、更に冷却停止温度T3から650℃までを、表2に示す平均冷却速度CR2で冷却した。650℃から室温までは放冷または風冷とした。
下記表2のNo.11〜13は、比較例として、特許文献1、2に記載の条件で実施した例である。
得られた供試材を用いて、組織の観察、伸線加工性の評価、および球状化焼鈍後の硬さ測定と球状化度の測定を下記の通り行った。
(1)組織の観察
得られた供試材の組織を観察し、平均パーライトコロニーサイズ、ノジュールサイズ、および初析セメンタイトの面積率を求めた。
(1−1)平均パーライトコロニーサイズ
鏡面研磨の後、ピクラールエッチングを行って試料を調製した。該試料を用い、SEM(Scanning Electron Microscope)観察を行い、3000〜5000倍で3視野撮影した。そして顕微鏡写真の縦方向または横方向に線を引き、線分法によりパーライトコロニーサイズを測定した。このとき1写真につき、5本以上の線を引いた。そして合計3枚の顕微鏡写真の平均パーライトコロニーサイズを求めた。
(1−2)初析セメンタイトの面積率
鏡面研磨の後、ピクラールエッチングを行って試料を調製した。該試料を用い、SEM観察を行って、2000〜3000倍で3視野撮影した。そして写真の縦方向および横方向に20本ずつ線を引いたときの交点合計400点が、初析セメンタイト上に有り・無しを判断し、下記式(1)により初析セメンタイトの面積率を求めた。
初析セメンタイトの面積率=(初析セメンタイト上にある交点数/全交点数)×100
・・・(1)
(1−3)パーライトノジュールサイズ
鏡面研磨の後、ピクラールエッチングを行って試料を調製した。該試料を用い、光学顕微鏡観察を行い、100〜400倍で3視野観察した。各視野につき、比較法によりノジュール粒度Gを測定し、下式によりパーライトノジュールサイズDnに換算した。そして3視野の平均値を求めた。
Figure 0006193842
上記式において、Dnはパーライトノジュールサイズ、Gはノジュール粒度を示す。
(2)伸線加工性の評価
球状化焼鈍を省略し、熱間圧延ままでの鋼線材の伸線加工性を評価した。詳細には、万能試験機を用いて引張試験を行い、伸線加工性の評価指標として下記式により絞り値を測定した。伸線加工における一回の減面加工率は通常20%程度であることから、本実施例では、この絞り値が20%以上であるものをOK、即ち、熱間圧延後に焼鈍を施さなくとも伸線加工時に優れた伸線加工性を示すと判断した。
絞り値=[(引張試験前の試験片の断面積−引張破断部の断面積)/引張試験前の試験片の断面積]×100
(3)球状化焼鈍後の冷間加工性の評価
球状化焼鈍後の冷間加工性を評価するため、鋼線材に下記の条件で球状化焼鈍を施して球状化材を得た。そしてこの球状化材を用い、冷間加工時の変形抵抗の指標としてビッカース硬さ試験を下記方法で実施した。そして本実施例では、このビッカース硬さが190Hv以下の場合をOK、即ち、球状化焼鈍後の硬さが低減されて冷間加工性に優れる、と評価した。
球状化焼鈍条件:785℃で6時間加熱後、650℃まで平均冷却速度30℃/hで冷却
ビッカース硬さ試験:球状化焼鈍後の球状化材の長手方向に垂直な断面の直径D/4位置にて、荷重1kgの条件で4点の測定を行い、平均値を求めた。
(4)球状化度の測定
また、球状化焼鈍により得られる球状化材は、炭化物の球状化度が一般に評価される。球状化度は冷間鍛造時の割れや、最終製品である軸受に求められる転動疲労特性、耐摩耗性等に影響するため、最低限要求される品質の一つである。本実施例では、球状化材の長手方向に垂直な断面を観察できるよう、鏡面研磨の後、ピクラールエッチングを行って試料を調製した。この様にして試料を8個用意した。そして各試料につき、上記断面の直径D/4の位置の組織を、倍率1000倍にて光学顕微鏡で1視野観察した。そして「層状パーライトがない視野の合計÷8×100」を球状化度として求めた。本実施例では、球状化度が100%の場合をOKと評価した。
これらの結果を表2に併記する。
Figure 0006193842
Figure 0006193842
表2より次のことがわかる。No.2、3、および5〜7は、本発明で規定の成分組成を満たし、推奨される条件で製造して規定の組織が得られたため、引張試験での絞りが大きく、熱間圧延後に焼鈍を施さなくとも伸線加工時に優れた伸線加工性を示す。かつ、球状化焼鈍後の硬さが抑えられて冷間加工性にも優れていることがわかる。また球状化焼鈍により十分に球状化度が高められたこともわかる。
これに対してNo.1は、仕上圧延温度T2が高くかつ冷却停止温度T3も高く、更には冷却停止温度T3から650℃までの平均冷却速度CR2も小さいため、コロニーサイズとノジュールサイズがいずれも大きくなった。その結果、引張試験での絞りが小さく伸線加工性に劣る結果となった。また球状化焼鈍による球状化が不十分となった。
No.4は、冷却停止温度T3が低すぎであり、かつこの冷却停止温度T3から650℃までの平均冷却速度も小さいため、コロニーサイズとノジュールサイズが規定の上限を超え、かつ初析セメンタイト量も多めとなった。そしてその結果、引張試験での絞りが小さく伸線加工性に劣る結果となった。また球状化焼鈍による球状化が不十分となった。
No.8は、冷却停止温度T3から650℃までの平均冷却速度が大きすぎるため、ノジュールサイズが必要以上に微細となって規定の下限値を下回り、球状化焼鈍後の硬さが高い、即ち球状化焼鈍後の良好な冷間加工性を確保できない結果となった。
No.9は、仕上圧延温度T2から冷却停止温度T3までの平均冷却速度CR1が小さすぎるため、ノジュールサイズが粗大化し球状化焼鈍による球状化が不十分となった。
No.10は、仕上圧延温度T2が高すぎると共に冷却停止温度T3も高すぎるため、ノジュールサイズが粗大化しまた初析セメンタイト量が不足して、引張試験での絞りが小さく伸線加工性に劣る結果となった。また球状化焼鈍による球状化が不十分となった。
No.11〜13は、上述の通り特許文献1、2に記載の条件で製造した例である。No.11および12の通り、仕上圧延後、400℃まで平均冷却速度0.8℃/sまたは1.7℃/sで連続冷却した場合は、コロニーサイズとノジュールサイズが共に粗大となりかつ初析セメンタイトも増加した。その結果、引張試験での絞りが小さく伸線加工性に劣る結果となった。また球状化焼鈍による球状化が不十分となった。またNo.13の通り仕上圧延温度T2から650℃まで平均冷却速度10℃/sで急冷後、1.7℃/sで徐冷した場合には、ノジュールサイズが微細となり、球状化焼鈍後の硬さを低減できなかった。
1 パーライトノジュール
2 パーライトコロニー
3 ラメラ間隔
4 旧オーステナイト粒界

Claims (6)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C:0.95〜1.10%、
    Si:0.15〜0.75%、
    Mn:0%超1.70%以下、
    Cr:0.90〜2.05%、
    P:0%超0.025%以下、
    S:0%超0.025%以下、
    Al:0%超0.050%以下、
    Ti:0%超0.015%以下、
    N:0%超0.025%以下、および
    O:0%超0.0025%以下
    を含有し、残部は鉄および不可避的不純物からなり、
    鋼組織が、
    平均パーライトコロニーサイズ:3.2μm以下、
    全組織に占める初析セメンタイトの面積率:2.0%以上5.0%以下、および
    パーライトノジュールサイズ:7.0μm以上13.5μm以下
    の全てを満たすことを特徴とする軸受用鋼線材。
  2. 更に、質量%で、
    Cu:0%超0.25%未満、Ni:0%超0.25%未満、およびMo:0%超0.25%以下よりなる群から選択される1種以上の元素を含む請求項1に記載の軸受用鋼線材。
  3. 更に、質量%で、
    Nb:0%超0.5%以下、V:0%超0.5%以下、およびB:0%超0.005%以下よりなる群から選択される1種以上の元素を含む請求項1または2に記載の軸受用鋼線材。
  4. 更に、質量%で、
    Ca:0%超0.05%以下、REM:0%超0.05%以下、Mg:0%超0.02%以下、Li:0%超0.02%以下、およびZr:0%超0.2%以下よりなる群から選択される1種以上の元素を含む請求項1〜3のいずれかに記載の軸受用鋼線材。
  5. 更に、質量%で、
    Pb:0%超0.5%以下、Bi:0%超0.5%以下、およびTe:0%超0.1%以下よりなる群から選択される1種以上の元素を含む請求項1〜4のいずれかに記載の軸受用鋼線材。
  6. 更に、質量%で、
    As:0%超0.02%以下を含む請求項1〜5のいずれかに記載の軸受用鋼線材。
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