JP6191268B2 - コイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
(1) 質量%で、
C :0.05%以上、0.2%以下、
Si:0.01%以上、0.6%以下、
Mn:0.5%以上、2.5%以下、
P:0.001%以上、0.1%以下、
S:0.0005%以上、0.05%以下、
Al:0.01%以上、0.2%以下、
N:0.0001%以上、0.010%以下、
Mo:0.05%以上、0.5%以下、
Ti:48N/14+0.01%以上、0.14%以下、
B:0.0003%以上、0.005%以下
を、下記式(1)を満足する範囲で含有し残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋼組成を有し、降伏強度が960MPa以上、降伏比が0.83以上であり、かつ板幅方向の降伏強度のばらつきが50MPa以内であり、−40℃での衝撃吸収エネルギーが−32J超であることを特徴とするコイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板。
70≦300×C(質量%)+33×Mn(質量%)+22×Cr(質量%)+11×Mo(質量%)+11×Si(質量%)+17×Ni(質量%)≦100 … (1)
(2) さらに、質量%で、
Nb:0.005%以上、0.09%以下を含有することを特徴とする(1)に記載のコイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板。
(3) さらに質量%で、
W:0.01%以上、2.0%以下、
Cu:0.04%以上、2.0%以下、
Ni:0.02%以上、1.0%以下、
V:0.001%以上、0.10%以下、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)又は(2)のいずれか1項に記載のコイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板。
(4) 更に質量%で、
Mg、Zrの1種または2種以上を合計で0.0005%以上、0.05%以下含有することを特徴とする(1)〜(3)の何れか一項に記載のコイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板。
(5) (1)〜(4)の何れかに記載の高強度熱延鋼板を製造する方法であって、(1)〜(4)のいずれかに記載の鋼成分を有するスラブを1100℃以上1250℃以下に加熱した後、仕上温度が850℃以上、950℃以下となる条件で熱間圧延を行い、その後10℃/秒以上の冷却速度で冷却し、200℃以下の温度でコイル状に巻き取り一旦室温まで冷却した後、150〜350℃の温度範囲でバッチ焼鈍炉による焼鈍(BAF焼鈍)を施すことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載のコイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。
70≦300×C(質量%)+33×Mn(質量%)+22×Cr(質量%)+11×Mo(質量%)+11×Si(質量%)+17×Ni(質量%)≦100 ・・・(1)
以下に、本発明における鋼特性および製造条件の限定理由について詳しく説明する。
[(C:炭素)0.05%以上、0.2%以下]
Cは、安価に強度を確保出来る元素であり、本発明の必須元素である。強度を満足するためにはCを0.05%未満では本発明で規定している強度が満足できない。また、Cが0.2%を超えると強度が上がりすぎ、延性が低下すると共に、溶接性も劣化する。
このため、本発明では、Cの含有量を0.05%以上、0.2%以下に規定した。Cの含有量のより好ましい範囲は、0.10%以上、0.15%以下である。
Siは強度を確保するために0.01%以上添加する。また、溶接性の観点からは、Siを0.1%以上添加することが望ましい。しかし、Siを0.6%超添加すると表面にSiスケールと呼ばれる欠陥が発生し、表面品位を著しく低下させることから、0.6%を上限とする。また、この観点から、Siの添加量は、より好ましくは0.3%以下、更に好ましくは0.15%以下である。
Mnは強度確保の観点から0.5%以上添加する。また、この観点からは、Mnは1.0%以上添加することが望ましく、更に望ましくは1.3%以上である。また、Mn添加量が2.5%を超えると、溶接割れ感受性が劣化することから上限を2.5%以下とする。この観点からはMnの添加量を2.2%以下とすることが望ましく、更に望ましくは2.0%以下である。
Pは鋼板の強度を上げる元素として必要な強度レベルに応じて添加する。しかしながら、Pの添加量が多いと粒界へ偏析するために局部延性、溶接性、靭性を劣化させる。従って、P上限値は0.1%とする。この観点からは、Pは0.05%以下とする事が望ましい。一方、0.001%未満ではPの劣化効果は無視できる他、これ未満にするにはコストの上昇を招くことから0.001%を下限とする。
Sは、MnSを生成することで局部延性、溶接性、靭性を劣化させる元素であり、鋼中に存在しない方が好ましい元素であることから、上限を0.05%とする。この観点からはSは0.01%以下とすることが望ましい。一方、Sを0.0005%未満にするにはコストの上昇を招くことからこれを下限とする。
Alは脱酸材として0.01%以上添加する必要がある。一方、Alを過度に添加しても、かえって鋼を脆化させるとともに、溶接性も低下させるため、0.2%を上限とする。
Nは、鋼中に不可避的に含まれる元素であるが、BNを形成し、固溶Bを低減させ焼き入れ性を劣化させることから、その含有量を0.010%以下とする。また、この観点からはNは0.006%以下の添加が望ましい。一方、不必要にNを低減することは製鋼工程でのコストが増大するのでその含有量を0.0001%以上に制御する。
Moは本発明において重要な元素である。Moは焼き入れ性向上元素であるが、Bと複合添加することによって焼き入れ性の冷却速度依存性を小さくする効果がある。このため、コイル内の強度ばらつきを抑える事が可能である。又、Mnに比べて靭性の劣化が少ないことから、0.05%以上添加する。この観点からは、Moは0.1%以上添加することが望ましい。一方、Moを0.5%以上添加しても特段の効果が得られず、合金コストの上昇を招くばかりであることから、0.5%を上限とする。この観点からは、Moの添加量は0.3%以下が望ましい。
Bも本発明において重要な元素である。Bは安価な焼き入れ性向上元素であり、また、Moと複合添加することによって強度の冷却速度依存性を小さくし、コイル内の強度ばらつきを低減する効果がある。そのため、本発明ではBを0.0003%以上添加する。この観点からは、Bは0.0006%以上の添加が望ましい。一方、Bを0.005%超添加しても特段の効果が得られないばかりでなく、靭性の劣化を招くことから0.005%を上限とする。また、この観点からは、Bは0.003%以下の添加が望ましい。
Tiは高温でTiNを形成することでBNの析出を阻害すると共に炭化物形成や固溶によって強度上昇に寄与することから、次式{48N/14+0.01}%以上添加する。式中のNは窒素(N)の含有率(質量%)である。一方、Tiを0.14%超で添加してもそれ以上の強度上昇が得られないばかりでなく、靭性や溶接性の低下を招くことからこの値を上限とする。
本発明においては、上記の必須元素に加え、更に、Nbを所定範囲で添加することが望ましい。ここで、Nbも、Tiと同様、再結晶の抑制、組織の微細化、炭化物の析出を介して強度上昇、特に降伏強度の向上に寄与することから、0.005%以上添加することが望ましい。一方、Nbの0.09%超の添加は靭性の靭性や延性を著しく劣化させることからこの値を上限とする。Nbのより好ましい範囲は、0.015%以上、0.05%以下であり、更に好ましい範囲は、0.015%以上、0.03%以下である。
[(W:タングステン)0.01%以上、2.0%以下]
Cr、Wは、いずれも焼入性を向上させると共に炭化物を形成して強度を高める効果を有する元素である。そのため、各々0.1%(Cr)以上、0.01%(W)以上添加することが望ましい。一方、各々2.0%超(Cr)、2.0%超(W)の添加は、延性や溶接性を低下させる。以上の観点から、Crは0.1%以上、2.0%以下、Wは0.01%以上、2.0%以下の範囲で必要に応じて添加することが望ましい。
Cuは鋼板強度を上げると共に、耐食性やスケールの剥離性を向上させる元素であることから0.04%以上添加することが望ましい。一方Cuの2.0%超の添加は表面疵の原因となるため、0.04%以上、2.0%以下の範囲で必要に応じて添加することが望ましい。
Niは鋼板強度を上げると共に、靭性を向上させる元素であることから、0.02%以上添加することが望ましい。一方、Niの1.0%超の添加は延性劣化の原因となるため、0.02%以上、1.0%以下の範囲で必要に応じて添加することが望ましい。
Vは、強度の向上に効果がある元素である。しかしながら、0.001%未満のVの添加ではその効果が得られず、0.10%を超える添加では、逆に靱性の低下を招くため、その範囲を0.001〜0.10%とする。
さらに、本発明においては、鋼特性を改善するための元素として、Ca、Mg、Zr、REM(希土類元素)の1種または2種以上を、単独または合計で0.0005%以上、0.05%以下含有することができる。
Ca、Mg、Zr、REMは、硫化物や酸化物の形状を制御して靭性を向上させる。この目的のためには、これらの元素の1種または2種以上を単独または合計で0.0005%以上添加する必要がある。しかしながら、これらの元素の過度の添加は加工性を劣化させるため、その上限を0.05%とした。
また、本発明の鋼は、以上の元素の他、Sn、Asなどの不可避的に混入する元素を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる。
次に、各元素の関係式である下記(1)式について説明する。
本発明の高強度熱延鋼板において、上記各本発明の効果を得るためには、鋼組成が下記(1)式の関係を満足する必要がある。
本発明の高強度熱延鋼板においては、降伏強度(YP)を960MPa以上に規定している。
本発明では、鋼組成を上述した範囲に制御し、さらに、各製造条件を後述の条件とすることで、降伏強度が960MPa以上の高強度熱延鋼板が実現できる。このように、降伏強度を960MPa以上に高めることにより、例えば、鋼板の板厚を4.0〜10mm程度まで薄肉化して用いる場合であっても、部材として十分に高い強度が確保でき、軽量化に寄与することが出来る。なお、高強度熱延鋼板の降伏強度を測定するにあたり、鋼板の板幅方向の両エッジから、全板幅の1/20〜1/5の長さ離れた位置および板厚中央部の3か所から作製した引張試験片の降伏強度がそれぞれ960MPa以上であることが好ましい。
一方、最高強度(TS)の過剰な上昇は部材成形時に装置に過大な負荷を貸し、部材の形状不良や成形装置の破損などを招く。したがって、YPとTSの比である降伏強度比YR(=YP/TS)は0.83以上とする。
コイル幅方向(板幅方向)の降伏強度のばらつきが50MPa超となると鋼板を切断後の反りやプレスの際の形状不良の原因となることからばらつきは50MPa以下とする。この場合のばらつきは両エッジから、全板幅の1/20〜1/5の長さ離れた位置および板厚中央部の3か所から作製した引張試験片の降伏強度の最大・最小値の差を指す事とする。
本発明に係るコイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板の製造方法について以下に説明する。
本発明の高強度熱延鋼板の製造方法は、上記鋼成分を有するスラブを1100℃以上1250℃以下に加熱した後、仕上温度が850℃以上、950℃以下となる条件で熱間圧延を行い、その後10℃/秒以上の冷却速度で冷却し、200℃以下の温度でコイル状に巻き取り一旦室温まで冷却した後、150〜350℃の温度範囲でバッチ焼鈍炉による焼鈍(BAF焼鈍)を施す方法である。
本実施例においては、まず、下記表1に示す組成を有する鋼を溶製し、下記表2、3に示す条件で熱間圧延とBAF炉での焼鈍を施した。下記表2、3には得られた熱延板の特性を調査した結果も併せて示す。
表2、表3に示す結果から明らかなとおり、本発明で規定する化学成分を有する鋼を適正な条件で熱間圧延した場合には、降伏強度が960MPa以上、降伏強度比が0.83以上、板幅方向の降伏強度のばらつきが50MPa以内、−40℃での衝撃吸収エネルギーが32J超の靭性に優れた熱延鋼板を得る事が出来た。ただし、No.11、12、16、17、23、24は参考例である。
表4には表1の鋼No.Jのスラブを用いて、BAF焼鈍温度を変化させた場合の機械的性質の変化を示す。
Claims (5)
- 質量%で、
C :0.05以上、0.2%以下、
Si:0.01%以上、0.6%以下、
Mn:0.5%以上、2.5%以下、
P:0.001%以上、0.1%以下、
S:0.0005%以上、0.05%以下、
Al:0.01%以上、0.2%以下、
N:0.0001%以上、0.010%以下、
Mo:0.05%以上、0.5%以下、
Ti:48N/14+0.01%以上、0.14%以下、
B:0.0003%以上、0.005%以下
を、下記(1)式を満足する範囲で含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる鋼組成を有し、降伏強度が960MPa以上、および降伏比が0.83以上であり、かつ板幅方向の降伏強度のばらつきが50MPa以内であり、−40℃での衝撃吸収エネルギーが−32J超であることを特徴とするコイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板。
70≦300×C(質量%)+33×Mn(質量%)+22×Cr(質量%)+11×Mo(質量%)+11×Si(質量%)+17×Ni(質量%)≦100 … (1) - さらに質量%で、
Nb:0.005%以上、0.09%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載のコイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板。 - さらに、質量%で、
W:0.01%以上、2.0%以下、
Cu:0.04%以上、2.0%以下、
Ni:0.02%以上、1.0%以下、
V:0.001%以上、0.10%以下、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板。 - 更に、質量%で、
Mg、Zrの1種または2種以上を合計で0.0005%以上、0.05%以下含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のコイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の鋼成分を有するスラブを1100℃以上1250℃以下に加熱した後、仕上温度が850℃以上、950℃以下と条件で熱間圧延を行い、その後10℃/秒以上の冷却速度で冷却し、200℃以下の温度でコイル状に巻き取り一旦室温まで冷却した後、150〜350℃の温度範囲でバッチ焼鈍炉による焼鈍を施すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。
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