JP6189048B2 - 複合体 - Google Patents

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Description

本発明は、塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体とが接合された複合体およびその製造方法に関する。
金属板やそのプレス成形品、あるいは、鋳造、鍛造、切削、粉末冶金などにより成形されたいわゆる「金属素形材」は、自動車をはじめとするあらゆる工業製品を製造する上で欠かせない部材である。これら金属素形材と樹脂組成物の成形体とが接合された複合体は、金属のみからなる部品よりも軽量である一方、樹脂のみからなる部品よりも強度が高く、携帯電話機やパーソナルコンピューターなどの電子機器に使用されている。従来、このような複合体は、金属素形材と樹脂組成物の成形体を嵌合させることにより製造されていた。しかしながら、嵌合による複合体の製造方法は、作業工程数が多く、生産性が低かった。そこで、近年は、インサート成形により金属素形材と樹脂組成物の成形体とを接合して、複合体を製造するのが一般的である。
インサート成形により複合体を製造する場合、金属素形材と樹脂組成物の成形体との密着性を向上させることが重要である。金属素形材と樹脂組成物の成形体との密着性を高める方法としては、例えば、インサート成形を行う前に、金属素形材の表面を粗面化処理することが提案されている(特許文献1〜3参照)。特許文献1〜3の方法では、アルミニウム合金の表面を粗面化処理することで、アルミニウム合金と樹脂組成物の成形体との密着性を向上させている。
特開2006−027018号公報 特開2004−050488号公報 特開2005−342895号公報
特許文献1〜3に記載の複合体では、アンカー効果を利用するために、金属素形材の表面を粗面化している。このように、アンカー効果を目的として微細な凹凸を金属素形材の表面に形成すると、金属素形材と樹脂組成物の成形体との間に微細な隙間が形成されやすい。このため、特許文献1〜3に記載の複合体では、金属素形材に対して樹脂組成物が十分な接合強度で接合しないことがある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、金属素形材に熱可塑性樹脂組成物の成形体が十分に高い強度で一体化している複合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、有機樹脂層を介して金属素形材と熱可塑性樹脂組成物とを接合し、そして、金属素形材および熱可塑性樹脂組成物の成形時の熱による膨張、収縮の程度に着目し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の複合体に関する。
[1] 金属素形材およびその上に配置された有機樹脂層を有する塗装金属素形材と、前記塗装金属素形材の表面に射出成形または加熱圧着によって接合された、熱可塑性樹脂組成物の成形体と、を有し、前記有機樹脂層は、酸変性ポリプロピレンを含み、前記熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率は、1.1%以下であり、前記金属素形材の線膨張係数αmに対する前記熱可塑性樹脂組成物の線膨張係数αpの比αp/αmは、6以下である、複合体。
[2] 前記有機樹脂層は、前記有機樹脂層中の全樹脂の質量に対して40質量%以上の酸変性ポリプロピレンを含み、前記有機樹脂層の厚さは、0.2μm以上である、[1]に記載の複合体。
また、本発明は、以下の複合体の製造方法に関する。
[3] 金属素形材およびその上に配置された有機樹脂層を有する塗装金属素形材と、前記塗装金属素形材の表面に接合された熱可塑性樹脂組成物の成形体と、を有する複合体を製造する方法であって、前記有機樹脂層の表面に、前記熱可塑性樹脂組成物の成形体を射出成形または加熱圧着によって接合する工程を含み、前記有機樹脂層は、酸変性ポリプロピレンを含み、前記熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率は、1.1%以下であり、前記金属素形材の線膨張係数αmに対する前記熱可塑性樹脂組成物の線膨張係数αpの比αp/αmは、6以下である、複合体の製造方法。
[4] 前記有機樹脂層は、前記有機樹脂層中の全樹脂の質量に対して40質量%以上の酸変性ポリプロピレンを含み、前記有機樹脂層の厚さは、0.2μm以上である、[3]に記載の複合体の製造方法。
本発明によれば、金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体とが有機樹脂層を介して十分に高い強度で一体化している複合体を提供することができる。
本発明に係る複合体の一例を概略的に示す図である。
1.複合体
本発明に係る複合体は、塗装金属素形材と、その表面に接合された熱可塑性樹脂組成物の成形体とを有する。以下、本発明に係る複合体の各構成要素について説明する。
(1)塗装金属素形材
上記塗装金属素形材は、金属素形材と、金属素形材の表面に配置された有機樹脂層とを有する。以下、塗装金属素形材の各構成要素について説明する。
(金属素形材)
金属素形材を構成する金属の種類は、特に限定されない。たとえば、上記金属の種類は、鉄であってもよいし、鉄以外の金属であってもよいし、合金であってもよい。金属素形材の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板などの金属板や、そのプレス加工品、あるいは、アルミダイカスト、亜鉛ダイカストなどの鋳造・鍛造物や、切削加工、粉末冶金などにより成形された各種金属部材などが含まれる。金属素形材は、必要に応じて、脱脂、酸洗などの公知の塗装前処理が施されていてもよい。
(化成処理皮膜)
金属素形材と有機樹脂層との間には、化成処理皮膜が配置されていてもよい。化成処理皮膜は、金属素形材の表面に配置され、金属素形材と有機樹脂層の間の密着性および塗装金属素形材の耐食性を向上させる。化成処理皮膜は、金属素形材の表面のうち、少なくとも熱可塑性樹脂組成物の成形体と接合する領域(接合面)に配置されていればよいが、通常は金属素形材の表面全体に配置されている。
化成処理皮膜を形成する化成処理の種類は、特に限定されない。化成処理の例には、クロメート処理、クロムフリー処理、リン酸塩処理などが含まれる。化成処理によって形成された化成処理皮膜の付着量は、塗膜密着性および耐食性の向上に有効な範囲内であれば特に限定されない。たとえば、クロメート皮膜の場合、全Cr換算付着量が5〜100mg/mとなるように付着量を調整すればよい。また、クロムフリー皮膜の場合、Ti−Mo複合皮膜では10〜500mg/m、フルオロアシッド系皮膜ではフッ素換算付着量または総金属元素換算付着量が3〜100mg/mとなるように付着量を調整すればよい。また、リン酸塩皮膜の場合、0.1〜5g/mとなるように、各化成処理皮膜の付着量を調整すればよい。
(有機樹脂層)
有機樹脂層は、金属素形材(または化成処理皮膜)の表面に配置されている。有機樹脂層は、金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との密着性を向上させる。
有機樹脂層は、酸変性ポリプロピレンを含む。上記酸変性ポリプロピレンは、ポリプロピレンの構成単位中にカルボキシル基またはその無水物基が導入されたポリプロピレンである。酸変性ポリプロピレンは、カルボキシル基などの、金属素形材と水素結合する官能基を有することから、金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との両方に十分な接着性を有する。酸変性ポリプロピレンは、カルボキシル基以外の、金属素形材と水素結合する他の官能基をさらに有していてもよい。
上記酸変性ポリプロピレンの含有量は、有機樹脂層中の全樹脂に対して40質量%以上であることが、塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との密着性を向上させる観点から好ましい。有機樹脂層の酸変性ポリプロピレン含有量が40質量%未満の場合、有機樹脂層と熱可塑性樹脂組成物の成形体との相溶性が低下してしまうことがある。これにより、塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との接合力が得られないおそれがある。酸変性ポリプロピレンの上記含有量の上限値は、特に限定されない。
酸変性ポリプロピレンの酸価は、1〜500mgKOH/gであることが好ましい。酸変性ポリプロピレンの酸価が上記の範囲内であれば、後述のエマルジョンを作製する際に酸変性ポリプロピレンを中和することで、酸変性ポリプロピレン自体が界面活性剤として働く。
上記酸変性ポリプロピレンは、融点が60〜120℃の範囲内であり、かつ結晶化度が5〜20%の範囲内であることが好ましい。融点および結晶化度が上記範囲内の酸変性ポリプロピレンは、金属素形材の表面に対する濡れ性が高いため、金属素形材の表面の凹凸に隙間なく密着した有機樹脂層を形成する。酸変性ポリプロピレンの融点が60℃未満または結晶化度が5%未満の場合、比較的低温で有機樹脂層が軟化してしまうため、保管時などの塗装金属素形材の耐ブロッキング性が劣るおそれがある。一方、酸変性ポリプロピレンの融点が120℃超または結晶化度が20%超の場合、塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との接合性が低下するおそれがある。なお、酸変性ポリプロピレンの融点および結晶化度は、塗料に含まれる状態(焼き付け前)と有機樹脂層の状態(焼き付けた後)とでほとんど変化しない。したがって、有機樹脂層中の酸変性ポリプロピレンの結晶化度は、酸変性ポリプロピレンを含む後述の塗料を、Ruland法によるX線回折により測定することで調べることができる。
上記酸変性ポリプロピレンは、例えば、酸変性ポリプロピレンを分散質とする酸変性ポリプロピレン系エマルジョンとして調製されうる。酸変性ポリプロピレン系エマルジョンは、酸変性ポリプロピレンを調製した後、酸変性ポリプロピレンを水に配合して分散することで調製されうる。また、酸変性ポリプロピレン系エマルジョンには、乳化剤として各種界面活性剤を添加してもよい。
ポリプロピレンには、アイソタクティク、アタクティク、シンジオタクティク、ヘミアイソタクティクおよびステレオタクティクの立体規則性が知られている。ポリプロピレンの立体規則性は、成形後に要求される剛性や衝撃強さなどの力学特性または耐久性の観点から、アイソタクティクであることが好ましい。
ポリプロピレンの重量平均分子量は、1000〜300000の範囲内であることが好ましく、5000〜100000の範囲内であることがさらに好ましい。ポリプロピレンの重量平均分子量が1000未満の場合、有機樹脂層の強度が低下するおそれがある。一方、ポリプロピレンの重量平均分子量が300000超の場合、後述の変性工程において、粘度が増大してしまうため、作業が困難になるおそれがある。
ポリプロピレンの酸変性は、ポリプロピレンをトルエンまたはキシレンに溶解させ、ラジカル発生剤の存在下で、α,β−不飽和カルボン酸および/またはα,β−不飽和カルボン酸の酸無水物および/または1分子当たり1個以上の二重結合を有する化合物を用いて行うことができる。または、ポリプロピレンの軟化温度あるいは融点以上まで昇温させることができる機器を使用し、ラジカル発生剤の存在下または非存在下で、α,β−不飽和カルボン酸および/またはα,β−不飽和カルボン酸の酸無水物および/または1分子当たり1個以上の二重結合を有する化合物を用いて行うことができる。ポリプロピレンの変性反応をトルエンおよび/またはキシレンなどの有機溶剤中で溶液状態として行う場合、または水系などでの非溶媒中で行う不均一分散系での反応の場合には、窒素置換を充分に行う必要がある。このようにして、酸変性ポリプロピレンが調製されうる。
ラジカル発生剤の種類には、ジ−tert−ブチルパーフタレート、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシエチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイドや、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリルなどのアゾニトリルが含まれる。ラジカル発生剤の配合量は、ポリプロピレン100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲内であることが好ましい。また、特に好ましくは、0.5〜30質量部の範囲内である。
α,β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物の種類には、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸が含まれる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。2種以上の化合物を組み合わせて使用すると有機樹脂層の物性が良好になる場合が多い。
1分子当り1個以上の二重結合を有する化合物には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、ジ(メタ)アクリル酸(ジ)エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸系モノマーや、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン系モノマーが含まれる。さらに、上記化合物に加えて、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、バーサチック酸のビニルエステルなどのビニル系モノマーを併用することができる。
これらの二重結合を有する化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの二重結合を有する化合物の配合量は、ポリプロピレン100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲内であることが好ましい。特に好ましくは、0.5〜30質量部の範囲内である。
または、上記酸変性ポリプロピレンは、市販品として入手することが可能である。また、有機樹脂層中の酸変性ポリプロピレンの存在は、NMR、IR、GC−MSなどの通常の分析機器によって確認することが可能である。
上記酸変性ポリプロピレンは、架橋されていてもよい。上記酸変性ポリプロピレンの架橋は、例えば、酸変性ポリプロピレン中の、金属素形材と水素結合する官能基(カルボキシル基など)と反応する二以上の基を有する架橋剤によって行うことができる。上記酸変性ポリプロピレンを架橋することは、有機樹脂層の強度を向上させる観点から好ましい。上記架橋剤には、上記酸変性ポリプロピレンの架橋に用いられる公知の架橋剤を用いることができる。架橋剤の例には、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系架橋剤、または金属塩を有する架橋剤が含まれる。架橋剤の使用量は、金属素形材に対する有機樹脂層の接着性と、上記酸変性ポリプロピレンにおける架橋による効果との両方が得られる範囲で適宜に決められる。
有機樹脂層は、本発明の効果が得られる範囲において、前述した酸変性ポリプロピレン以外の他の樹脂をさらに含有していてもよい。有機樹脂層がこのような他の樹脂をさらに含有すると、塗装金属素形材に対して熱可塑性樹脂組成物の成形体を射出成形または加熱圧着するときに、有機樹脂層中の樹脂成分が熱可塑性樹脂組成物とより相溶しやすく、有機樹脂層と熱可塑性樹脂組成物とがより強固に結合する。したがって、有機樹脂層が上記他の樹脂をさらに含有することは、有機樹脂層に対する熱可塑性樹脂組成物の成形体の密着性を向上させる観点から好ましい。このような他の樹脂は、公知の樹脂から適宜に選ばれる。上記他の樹脂の例には、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリル系樹脂、アクリル・スチレン系樹脂、酢酸ビニル、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、フッ素系樹脂、エステル系樹脂、ポリプロピレン以外のオレフィン系樹脂、およびこれらの組み合わせが含まれる。有機樹脂層における上記他の樹脂の含有量は、上記他の樹脂の配合による効果が得られる範囲であればよく、例えば上記酸変性ポリプロピレン100質量部に対して0〜150質量部である。
また、有機樹脂層は、防錆剤を含有していてもよい。防錆剤は、上記塗装金属素形材および本発明に係る複合体の耐食性を向上させる。防錆剤の種類は、特に限定されない。防錆剤の例には、Ti、Zr、V、MoおよびWからなる群から選択される金属(バルブメタル)の酸化物、水酸化物またはフッ化物、あるいはこれらの組み合わせを含むことが好ましい。これらの金属化合物を化成処理皮膜中に分散させることで、塗装金属素形材の耐食性をより向上させることができる。特に、これらの金属のフッ化物は、自己修復作用により、皮膜欠陥部における腐食を抑制することも期待できる。
有機樹脂層は、さらに、可溶性または難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩を含んでいてもよい。可溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩は、上記金属のフッ化物の自己修復作用を補完することにより、金属素形材の耐食性をより向上させる。また、難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩は、有機樹脂層中に分散してその強度を向上させる。たとえば、可溶性または難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩は、Al、Ti、Zr、Hf、Znなどの塩である。
また、有機樹脂層は、潤滑剤を含有していてもよい。潤滑剤は、塗装金属素形材の表面におけるカジリの発生を抑制することができる。潤滑剤の種類は、特に限定されない。潤滑剤の例には、フッ素系やポリエチレン系、スチレン系、ポリプロピレン系などの有機ワックス、二硫化モリブデンやタルクなどの無機潤滑剤が含まれる。有機樹脂層中の潤滑剤の配合量は、有機樹脂層中の樹脂の合計質量100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましい。潤滑剤が1質量部未満の場合、カジリの発生を十分に抑制することができないおそれがある。一方、潤滑剤が20質量部超の場合、カジリの発生を抑制する効果に著しい向上は認められず、潤滑性が高すぎて取り扱い性が劣るおそれがある。
また、有機樹脂層は、消泡剤を含有していてもよい。消泡剤は、後述する有機樹脂層用の塗料の調製時に気泡を発生させにくくする。消泡剤の種類は、特に限定されないが、既知のシリコーン系などの消泡剤を必要に応じて適量添加すればよい。
有機樹脂層を構成する樹脂組成物の融点は、上記熱可塑性樹脂組成物の成形体と同等以下が好ましく、例えば60〜160℃であることが好ましい。上記樹脂組成物の融点が60℃未満であると、比較的低温で有機樹脂層が軟化してしまうため、塗装金属素形材の耐ブロッキング性が不十分となることがある。上記樹脂組成物の融点が160℃よりも高いと、塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との接合性が不十分となることがある。
有機樹脂層の厚さは、0.2μm以上であることが好ましい。有機樹脂層の厚さが0.2μm未満の場合、金属素形材表面を均一に覆うことができないことがある。これにより、厚さが0.2μm未満の有機樹脂層を有する複合体は、金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との間に微細な隙間が生じるおそれがある。微細な空隙が生じると、前述の複合体における封止性が、低下するおそれがある。一方、有機樹脂層の厚さの上限値は特に制限されないが、10μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。有機樹脂層の厚さを10μm超としても、著しい性能向上は認められず、また、生産性の観点およびコストの観点からも不利である。
(2)熱可塑性樹脂組成物の成形体
熱可塑性樹脂組成物の成形体は、塗装金属素形材の表面(金属素形材上の有機樹脂層の表面)に接合されている。熱可塑性樹脂組成物の成形体の形状は、塗装金属素形材における前述した接合面で接する形状であれば特に限定されず、用途に応じて適宜選択されうる。
成形体を構成する熱可塑性樹脂組成物の例には、PVC(ポリ塩化ビニル)系樹脂組成物、PMMA(メタアクリル酸)系樹脂組成物などの非結晶性樹脂組成物、またはPE(ポリエチレン)系樹脂組成物、PP(ポリプロピレン)系樹脂組成物、POM(ポリアセタール)系樹脂組成物などの結晶性樹脂組成物、および、これらの組み合わせ、が含まれる。熱可塑性樹脂組成物の成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択されうる。
前記熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率は、1.1%以下である。熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率は、公知の方法で調整することができる。たとえば、熱可塑性エラストマーを含む熱可塑性樹脂組成物にフィラーなどを添加することで、成形収縮率を調整することができる。また、結晶性樹脂および非結晶性樹脂の混合割合を変化させることでも、成形収縮率を調整することができる。
熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率(%)は、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物(例えば熱可塑性樹脂の融点の熱可塑性樹脂組成物あるいは射出成形の金型のキャビティーの容積)の体積をVa、当該溶融状態から冷却して固化した熱可塑性樹脂組成物(例えば室温(20℃)の熱可塑性樹脂組成物)の体積をVbとしたときに、下記式で求められる。
{(Va−Vb)/Va}×100
上記成形収縮率が1.1%よりも大きいと、塗装金属素形材に対して熱可塑性樹脂組成物の成形体が十分強固に接合しないことがある。上記成形収縮率は、塗装金属素形材に対する熱可塑性樹脂組成物の成形体の接合力をより高める観点から、0.9%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましい。上記成形収縮率は、例えば、熱可塑性樹脂組成物中のフィラーの含有量または非結晶性樹脂の含有量が多いと小さくなる。
また、熱可塑性樹脂組成物の線膨張係数をαpとしたときに、金属素形材の線膨張係数αmに対する熱可塑性樹脂組成物の線膨張係数αpの比αp/αmが6以下である。当該比が6よりも大きいと、塗装金属素形材に対して熱可塑性樹脂組成物の成形体が十分強固に接合しないことがある。上記の比αp/αmは、塗装金属素形材に対する熱可塑性樹脂組成物の成形体の接合力をより高める観点から4.5以下であることが好ましい。αmおよびαpは、それぞれ、例えばTMA(Thermal Mechanical Analysis:熱機械分析法)により、材料の温度変化に伴う寸法変化量を測定することによって求められる。αpは、例えば、熱可塑性樹脂組成物中のフィラーの含有量が多いと小さくなる。
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果が得られる範囲において、上記有機樹脂以外の他の成分をさらに含有していてもよい。このような他の成分の例には、フィラーが含まれる。熱可塑性樹脂組成物にフィラーを配合することは、熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率および熱可塑性樹脂組成物の線膨張係数αpを調整する観点から好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物にフィラーを配合することによって、熱可塑性樹脂組成物の成形体の剛性を向上させることができる。
上記熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂組成物の成形体の耐衝撃性を向上させる。熱可塑性エラストマーの種類は、特に限定されない。熱可塑性エラストマーの例には、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂およびこれらの組み合わせなどが含まれる。
フィラーは、熱可塑性樹脂組成物の成形体の成形収縮率を低減させるとともに、剛性を向上させる。フィラーの種類は、特に限定されず、既知の物質を使用することができる。フィラーの例には、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド樹脂などの繊維系フィラー;カーボンブラック、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、ガラス、粘土、リグニン、雲母、石英粉、ガラス球などの粉フィラー;炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物などが含まれる。フィラーは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱可塑性樹脂組成物におけるフィラーの含有量は、5〜60質量%の範囲内が好ましく、10〜40質量%の範囲内がより好ましい。
熱可塑樹脂組成物の成形収縮率は、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とを混合することによっても調整されうる。一般的に、結晶性樹脂の成形収縮率は、非結晶性樹脂の成形収縮率より大きい。よって、結晶性樹脂に対する非結晶性樹脂の混合比率を高くすれば、熱可塑樹脂組成物の成形収縮率を低くすることができる。
本発明に係る複合体の製造方法は、特に限定されない。たとえば、本発明に係る複合体は、次に説明する方法により製造されうる。
2.複合体の製造方法
本発明に係る複合体は、例えば、上記有機樹脂層の表面に、熱可塑性樹脂組成物の成形体を射出成形または加熱圧着によって接合する工程を含む方法によって製造されうる。このような方法は、例えば、(1)上記塗装金属素形材を準備する第1工程と、(2)塗装金属素形材の表面に加熱された熱可塑性樹脂組成物を接触させて、塗装金属素形材の表面に熱可塑性樹脂組成物の成形体を接合する第2工程と、を有する。以下、各工程について説明する。
(1)第1工程
第1工程では、上記塗装金属素形材を準備する。塗装金属素形材の有機樹脂層を形成する前に、金属素形材には、化成処理皮膜を形成してもよい。化成処理皮膜は、金属素形材の表面に化成処理液を塗布し、乾燥させることで形成されうる。化成処理液の塗布方法は、特に限定されず、既知の方法から適宜選択すればよい。そのような塗布方法の例には、ロールコート法やカーテンフロー法、スピンコート法、スプレー法、浸漬引き上げ法などが含まれる。化成処理液の乾燥条件は、化成処理液の組成などに応じて適宜設定すればよい。たとえば、化成処理液を塗布した金属素形材を水洗することなく乾燥オーブン内に投入し、金属素形材の到達温度が80〜250℃となるように加熱することで、金属素形材の表面に均一な化成処理皮膜を形成することができる。
塗装金属素形材は、金属素形材の表面に有機樹脂層を形成することによって作製される。有機樹脂層は、有機樹脂層の材料を含有する、有機樹脂層用の塗料を金属素形材の表面に塗布し、塗布された当該塗料を加熱することによって作製される。
上記有機樹脂層用の塗料は、例えば、前述した酸変性ポリプロピレンを含有する。上記有機樹脂用の塗料は、必要に応じて、前述した架橋剤および他の樹脂をさらに含有してもよい。さらに、上記有機樹脂用の塗料は、必要に応じて溶媒を含有してもよい。溶媒の種類は、上記有機樹脂用の塗料中の各種成分を均一に溶解または分散しうる液体であり、有機樹脂層の形成過程で蒸発する液体であれば特に限定されず、好ましくは水である。たとえば、上記有機樹脂層用の塗料は、酸変性ポリプロピレン系水性エマルジョン、酸変性されていない水系樹脂エマルジョン、架橋剤、防錆剤、潤滑剤、安定化剤および消泡剤を含有する。上記有機樹脂層用の塗料中の固形分の含有量は、当該塗料の塗布性や形成される塗膜の厚さに応じて適宜に決めることができ、例えば5〜30質量%である。また、上記有機樹脂層用の塗料中の酸変性ポリプロピレンの含有量は、例えば、酸変性ポリプロピレン系エマルジョンと酸変性されていない水系樹脂エマルジョンとを配合することで、調製することができる。
有機樹脂層は、上記有機樹脂層用の塗料を金属素形材(または化成処理皮膜)の表面に塗布し、例えば加熱乾燥により、溶媒(水)を蒸発させることで形成される。上記有機樹脂層用の塗料の塗布方法は、特に限定されず、既知の方法から適宜選択すればよい。そのような塗布方法の例には、ロールコート法やカーテンフロー法、スピンコート法、スプレー法、浸漬引き上げ法などが含まれる。金属素形材に塗布された上記有機樹脂層用の塗料の加熱方法は、特に限定されない。加熱時の金属素形材の到達温度は、特に限定されないが、金属素形材(または化成処理皮膜)の表面に隙間なく密着した有機樹脂層を形成する観点から、例えば、有機樹脂層における樹脂組成物の融点以上250℃以下であることが好ましい。
(2)第2工程
第2工程では、塗装金属素形材の表面に加熱された熱可塑性樹脂組成物の成形体を接触させて、塗装金属素形材の表面に熱可塑性樹脂組成物の成形体を接合する。塗装金属素形材は、予め、プレス加工などにより所望の形状に加工されていてもよい。
たとえば、第1工程で準備した塗装金属素形材を射出成形金型の内部に挿入した後、射出成形金型の内部に溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を高圧で射出(すなわち射出成形)すればよい。このとき、射出成形金型にガス抜きを設けて、熱可塑性樹脂組成物が円滑に流れるようにすることが好ましい。溶融状態の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形金型の内部で成形されて成形体となるとともに、金属素形材の表面に形成された有機樹脂層と相溶しする。このため、熱可塑性樹脂組成物と有機樹脂層との間には、ナノオーダーの厚さを有する相溶層が形成される。このとき、射出成形金型の温度は、熱可塑性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の融点近傍であることが好ましい。また、射出成形により得られた複合体は、成形後にアニール処理をして、成形収縮による内部歪みを解消してもよい。
または、第1工程で準備した塗装金属素形材と、熱可塑性樹脂組成物の成形体とを熱圧着プレス機内にセットした後、これらの塗装金属素形材および熱可塑性樹脂組成物に熱および圧力を加えれば(すなわち加熱圧着すれば)よい。このとき、加熱および加圧を、塗装金属素形材および熱可塑性樹脂組成物の成形体の全部に対して行ってもよいし、一部に行ってもよい。少なくとも、熱可塑性樹脂組成物の成形体および塗装金属素形材の一方または両方の接合面に対して、加熱および加圧を行うことが必要である。加熱および加圧された有機樹脂層の一部と熱可塑性樹脂組成物の成形体の一部は、溶融して相溶する。このため、熱可塑性樹脂成形体と有機樹脂層との間には、ナノオーダーの厚さを有する相溶層が形成される。塗装金属素形材および熱可塑性樹脂組成物の成形体を加熱する方法および加圧する方法は、特に限定されない。加熱方法の例には、ヒーター加熱、電磁誘導加熱、超音波加熱が含まれる。加圧方法の例には、人力による加圧、バイスなどを用いた加圧が含まれる。
さらに、上記の製造方法は、本発明の効果が得られる範囲において、前述した第1工程および第2工程以外の他の工程を含んでいてもよい。
以上の手順により、塗装金属素形材の表面に熱可塑性樹脂組成物の成形体を接合させて、本発明に係る複合体を製造することができる。
前述したように、本発明では、熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率は、1.1%以下と十分に小さい。また、金属素形材の線膨張係数αmと熱可塑性樹脂組成物の線膨張係数αpの比αp/αmも、6以下と十分に小さい。よって、熱可塑性樹脂組成物を塗装金属素形材に熱によって接合するときに、冷却時における熱可塑性樹脂組成物の収縮量と金属素形材の収縮量との差を小さくすることができる。このため、冷却時に接合面において熱可塑性樹脂組成物の成形体と金属素形材とがずれたとしても、このずれは、両者の接合状態に影響を及ぼさない、と考えられる。
また、熱可塑性樹脂組成物の成形体と金属素形材との間に配置される有機樹脂層は、一方では金属素形材には水素結合などによって強く結合し、他方では熱可塑性樹脂組成物の成形体との間に相溶層を形成し、この相溶層を介して熱可塑性樹脂組成物の成形体と強く結合する。さらに、有機樹脂層は、金属素形材および熱可塑性樹脂組成物の成形体のいずれと比べても、分子の密度がより低いと考えられ、したがって、よりフレキシブルな構造を有していると考えられる。このため、有機樹脂層は、接合時の温度から室温まで複合体が冷却される間、金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との両者に密着し、両者のそれぞれに対する前述の強い結合が成形時から成形後まで維持されるものと考えられる。
以上のように、本発明に係る複合体は、有機樹脂層と金属素形材、および、有機樹脂層と熱可塑性樹脂組成物の成形体、が強固に接合されているため、塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との密着性に優れている。
以下、本発明について、金属素形材として金属板を用いた場合の実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
1.複合体の作製
(1)塗装基材(金属素形材)
A.塗装基材1
板厚が0.8mmのSUS430の表面をNo.4仕上げして塗装基材1を準備した。TMAを用いて20〜100℃までの平均線膨張係数として塗装基材1の熱膨張係数(αm)を求めたところ、塗装基材1の線膨張係数(αm)は10×10−6/Kであった。
B.塗装基材2
板厚が0.8mmの冷間圧延鋼板(SPCC)に、片面あたりのめっき付着量が45g/mの溶融Zn−6質量%Al−3質量%Mg合金めっき鋼板を塗装基材2として準備した。塗装基材2の線膨張係数(αm)は12×10−6/Kであった。
C.塗装基材3
板厚が0.8mmの冷間圧延鋼板(SPCC)に、片面あたりのめっき付着量が45g/mの溶融Al−9質量%Si合金めっき鋼板を塗装基材3として準備した。塗装基材3の線膨張係数(αm)は12×10−6/Kであった。
D.塗装基材4
板厚が0.8mmのアルミ合金板(A1050)を塗装基材4として準備した。塗装基材4の線膨張係数(αm)は23×10−6/Kであった。
(2)塗料の調製
樹脂合計質量に対する酸変性ポリプロピレンの質量の割合が95質量%になるように、酸変性ポリプロピレン(PP)樹脂(A)、ポリエチレン(PE)ワックス(C)、エポキシ系架橋剤(D)を水に添加して、不揮発成分が20質量%のプレ塗料1を調製した。このプレ塗料1に、防錆剤としてモリブデン酸アンモニウム(キシダ化学株式会社):0.5質量%、炭酸ジルコニウムアンモニウム(ジルコゾールAC−7;第一稀元素化学工業株式会社):0.5質量%、シリコーン系消泡剤(KM−73;信越化学工業株式会社):0.05質量%をそれぞれ配合し、塗料1を調製した。なお、「ジルコゾール」は、第一稀元素化学工業株式会社の登録商標である。
同様に、酸変性PP樹脂(A)の上記含有量が40質量部であり、ポリウレタン(PU)系樹脂(B)の含有量が55質量%である塗料2、酸変性PP樹脂(A)の上記含有量が35質量%であり、ポリウレタン(PU)系樹脂(B)の含有量が60質量%である塗料3、および、ポリウレタン(PU)系樹脂(B)の含有量が95質量%である塗料4、をそれぞれ調製した。
A.酸変性ポリプロピレン樹脂
酸変性PP樹脂(A)には、酸価が2.0mgKOH/gである市販の酸変性ポリプロピレン(ハードレンEW−5303;東洋紡株式会社)を用いた。なお、「ハードレン」は、東洋紡株式会社の登録商標である。
B.ポリウレタン系樹脂
樹脂合計質量に対する酸変性PPの割合を調整するためのPU系樹脂(B)として、ポリウレタン樹脂エマルジョン(スーパーフレックス830;第一工業製薬株式会社)を使用した。なお、「スーパーフレックス」は、第一工業製薬株式会社の登録商標である。
C.ポリエチレンワックス
ポリエチレンワックス(HYTEC E−9015;東邦化学工業株式会社)を樹脂合計質量に対して、5.0質量%添加した。なお、「HYTEC」は、東邦化学工業株式会社の登録商標である。
D.エポキシ系架橋剤
市販のエポキシ系架橋剤(HUX−XW3;株式会社ADEKA)を樹脂合計質量に対して、3.0質量%添加した。
(3)有機樹脂層の形成
塗装基材1を液温40℃のアルカリ脱脂水溶液(サーフクリーナーSD−270;日本ペイント株式会社、pH=12)に1分間浸漬して、表面を脱脂した。次いで、脱脂した塗装基材1の表面に、乾燥膜厚が2.0μmとなるように、ロールコータ−で塗料1を塗布し、塗装基板1の到達板温が150℃となる温度で、塗布された塗料1を熱風乾燥機によって乾燥させて、有機樹脂層を形成した。この有機樹脂層を有する塗装金属素形材を基材Iとする。また、塗装基材および塗料を表1に示すように変えた以外は基材Iと同様にして塗装基材の表面に有機樹脂層を形成し、基材II〜VIIを作製した。さらに、塗料を塗布しない塗装基材2を基材VIIIとして用意した。基材I〜基材VIIIの材料およびその物性を表1に示す。なお、「サーフクリーナー」は、日本ペイント株式会社の登録商標である。
Figure 0006189048
(4)熱可塑性樹脂組成物
ポリエチレン(PE)系樹脂組成物として、ニポロンハード1000(射出温度230℃;東ソー株式会社)を用意した。この樹脂組成物は、フィラーとしてのガラス繊維を5質量%含有している。この樹脂組成物を樹脂組成物iとする。なお、「ニポロンハード」は、東ソー株式会社の登録商標である。
また、ポリプロピレン(PP)系樹脂組成物として、ノバテックPP、BC06C(射出温度250℃;日本ポリプロ株式会社)とプライムポリプロR−350G(射出温度250℃;株式会社プライムポリマー)を用意した。前者は、ガラス繊維を含有せず、後者は、フィラーとしてのガラス繊維を40質量%含有している。前者の樹脂組成物を樹脂組成物iiとし、後者の樹脂組成物を樹脂組成物iiiとする。なお、「ノバテック」は、日本ポリプロ株式会社の登録商標であり、「プライムポリプロ」は、三井化学株式会社の登録商標である。
また、アクリル樹脂組成物(PMMA)として、パラペットGF(射出温度210℃;株式会社クラレ)を用意した。この樹脂組成物は、フィラー(ガラス繊維)を含有していない。この樹脂組成物を樹脂組成物ivとする。なお、「パラペット」は、株式会社クラレの登録商標である。
熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率は、幅100mm×長さ100mm×厚さ3mmのキャビティー形状を持つ金型に、各樹脂組成物i〜ivの射出温度にて、金型温度:60℃、保圧:80MPaで各樹脂組成物i〜ivの射出成形を行い、20℃に冷却したときの、各樹脂組成物i〜ivの成形収縮率である。また、各樹脂組成物i〜ivの線膨張係数(αp)として、各樹脂組成物i〜ivのTMAを用いた20℃〜100℃までの平均線膨張係数を求めた。樹脂組成物i〜ivの組成および物性を表2に示す。なお、樹脂組成物ivの明確な融点は、確認されなかった。
Figure 0006189048
(5)塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との接合
A.射出接合による接合力測定用の塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の接合
射出成形金型に基材Iを挿入し、溶融状態の樹脂組成物iiiを射出成形金型のキャビティーに射出し、図1に示されるような、基材I(符号11)の表面に樹脂組成物iii(符号12)を射出成形によって接合させた複合体1(符号13)を作製した。キャビティーの形状は、幅(W1)30mm×長さ(L1)100mm×厚さ(T1)4mmである。基材Iの形状は、幅(W2)30mm×長さ(L2)100mm×厚さ(T2)0.8mmである。基材Iと樹脂組成物iiiは、互いの端部から長さ30cmの部分で接合している。複合体Iは、樹脂組成物iiiをキャビティーに260℃の射出温度で射出した後、冷却固化させることによって作製した。基材および樹脂組成物を表3に示すように変更し、射出温度を各樹脂組成物の前述した射出温度に変更する以外は、複合体1と同様にして、複合体1〜8,12,14および15をそれぞれ作製した。各複合体における基材と樹脂組成物の組み合わせを表3に示す。
B.熱圧着による接合力測定用の塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の接合
射出成形法で作製した幅30mm×長さ100mm×厚さ4mmである樹脂組成物ivの成形体を、160℃に加熱した幅30mm×長さ100mm×厚さ0.8mmの基材IIIに、図1に示されるように、それぞれの端部における幅30mm×長さ30mmの領域で重ね、0.3MPaで60秒間加圧した後、冷却固化させて、複合体9を得た。基材および樹脂組成物を表3に示すように変更する以外は、複合体9と同様にして、複合体10,11,13および16を作製した。各複合体における基材と樹脂組成物の組み合わせを表3に示す。
(6)複合体の接合力の評価
上記(5)で得られた各複合体の成形体と基材を、基材の表面に平行かつ互いに逆向きの方向に100mm/分の速度で引っ張り、破断したときの強さ(剥離強度)を測定した。剥離強度が1.0kN未満の場合を「×」と評価し、剥離強度が1.0kN以上であって1.5kN未満の場合を「△」と評価し、剥離強度が1.5kN以上であって2.0kN未満の場合を「○」と評価し、剥離強度が2.0kN以上の場合を「◎」と評価した。結果を表3に示す。複合体の接合力は、「△」、「○」または「◎」が合格である。
Figure 0006189048
表3から明らかなように、射出成形または加熱圧着では、熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率が1.1%以下であり、かつ金属素形材αmに対する熱可塑性樹脂組成物の線膨張係数αpの比(αp/αm)が6以下である複合体1〜10では、熱可塑性樹脂組成物の成形体が塗装金属素形材に十分強固に接合した。
一方、射出成形および加熱圧着のいずれにおいても、熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率が1.1%以下であっても、線膨張係数比αp/αmが6よりも大きな複合体11および12と、有機樹脂層に酸変性ポリプロピレンを含まない複合体14では、熱可塑性樹脂組成物の成形体と塗装金属素形材の接合力が劣っており、熱可塑性樹脂組成物の成形体が塗装金属素形材に実質的に接合しなかった。また、熱可塑性樹脂組成物の成形収縮率が1.1%を越え、線膨張係数比αp/αmが6よりも大きな複合体13と、有機樹脂層そのものが形成されていない複合体15および16では、熱可塑性樹脂組成物の成形体が塗装金属素形材に接合しなかった。
本発明の塗装金属素形材を含む複合体は、塗装金属素形材と熱可塑性樹脂組成物の成形体との密着性が優れているため、例えば各種電子機器、家庭用電化製品、医療機器、自動車車体、車両搭載用品、建築資材などに好適に用いられる。
11 基材
12 樹脂組成物
13 複合体

Claims (2)

  1. 金属素形材およびその上に配置された有機樹脂層を有する塗装金属素形材と、前記塗装金属素形材の表面に射出成形または加熱圧着によって接合された、熱可塑性樹脂組成物の成形体と、を有し、
    前記有機樹脂層は、酸変性ポリプロピレンを含み、
    前記有機樹脂層の厚さは、0.2μm以上1.0μm未満であり、
    前記金属素形材の線膨張係数αmに対する前記熱可塑性樹脂組成物の線膨張係数αpの比αp/αmは、6以下である、
    複合体。
  2. 前記有機樹脂層は、前記有機樹脂層中の全樹脂の質量に対して40質量%以上の酸変性ポリプロピレンを含む、
    請求項1に記載の複合体。
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