以下、添付の図面を参照しながら、本発明による有機発光ダイオード、有機発光ダイオード用基板の製造方法、画像表示装置および照明装置の実施の形態を詳細に説明する。
まず、図1および図2を参照しながら、本発明による有機発光ダイオードの第1の実施の形態について説明する。
なお、図1には、本発明の第1の実施の形態による有機発光ダイオードの一例を示す概略構成説明図が示されている。
この図1に示す有機発光ダイオード10に関する説明においては、説明の便宜上、有機発光ダイオード10を構成する各層の高さ方向における上方側の表面を上面と適宜に称し、各層の高さ方向における下方側の表面を下面と適宜に称する。
また、以下の説明においては、本発明を用いるものである限り、必ずしも対象とする有機発光ダイオードの構造および方式を限定するものではない。
この図1に示す有機発光ダイオード10は、一般に3波長型の陰極トップエミッション型と称されるタイプの有機発光ダイオードであり、基板12上に反射層22と陽極導電層14と有機EL層16と陰極導電層18とが順次積層されている。
そして、陽極導電層14と陰極導電層18とには、電源20により電圧を印加することができるようになされている。
この有機発光ダイオード10においては、陽極導電層14と陰極導電層18とに電圧を印加すると、陽極導電層14から有機EL層16中の発光層16−3(後述する。)にホールが注入されるとともに、陰極導電層18から有機EL層16中の発光層16−3(後述する。)に電子が注入され、陰極導電層18側から有機EL層16で発生した光が取り出されるようになる。
なお、本発明による第1の実施の形態の有機発光ダイオード10は、3波長型の陰極トップエミッション型と称される有機発光ダイオードであり、発光層16−3は3つの有機発光材料が層(発光層16−3a、発光層16−3b、発光層16−3cであり、その詳細は後述する。)を形成して構成される。以降、まとめて発光層16−3と説明して差し障りのない場合は、上記3層を発光層16−3として記載する。
反射層22は、有機EL層16からの光を反射して基板12から当該光が取り出されないように設けられた層である。
従って、反射層22は、可視光を反射する金属材料により構成されており、例えば、AgあるいはAlを用いて構成される。
また、こうした反射層22の厚さは、例えば、100〜200nmが好ましい。
なお、反射層22を含む有機発光ダイオード10を構成する各層の厚さは、分光エリプソメーター、接触式段差計あるいは原子力間顕微鏡(Atomic Force Microscope(AFM))などにより測定することができる。
陽極導電層14は、電源20の陽極と接続され、可視光を透過する透明導電材料により構成されている。こうした透明導電材料は、特に限定されず、透明導電材料として公知のものを用いることができる。
具体的には、陽極導電層14に用いる透明導電材料としては、インジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide(ITO))、インジウム−亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide(IZO))、酸化亜鉛(Zinc Oxide(ZnO))あるいは亜鉛−スズ酸化物(Zinc Tin Oxide(ZTO))などが挙げられる。
また、こうした陽極導電層14の厚さは、例えば、50〜200nmが好ましい。
有機EL層16は、電源20からホールが注入されるホール注入層16−1と、ホール注入層16−1において注入されたホールを後述する発光層16−3に輸送するとともに、当該発光層16−3からの電子を遮断するホール輸送層16−2と、互いに異なる波長の光を発光する複数の有機発光材料を含有するとともに、ホール輸送層16−2から輸送されたホールと後述する電子輸送層16−4から輸送された電子とが結合して発光する発光層16−3と、後述する電子注入層16−5において注入された電子を発光層16−3に輸送するとともに、当該発光層16−3からのホールを遮断する電子輸送層16−4と、電源20から電子が注入される電子注入層16−5とにより構成されている。
なお、発光層16−3は、所定の波長の光を発光する有機発光材料よりなる発光層16−3aと、発光層16−3aを形成する有機発光材料と異なる波長の光を発光する有機発光材料よりなる発光層16−3bと、発光層16−3a、16−3bを形成する有機発光材料と異なる波長の光を発光する有機発光材料よりなる発光層16−3cとを有して構成されている。そして、この発光層16−3a、16−3b、16−3cはそれぞれ発光することにより、発光層16−3から白色光が発光するよう、用いられる有機発光材料が選択されている。
そして、有機EL層16は、陽極導電層14上に、ホール注入層16−1、ホール輸送層16−3、発光層16−3(発光層16−3a、発光層16−3b、発光層16−3c)、電子輸送層16−4、電子注入層16−5の順で7層で積層されている。
なお、これらの層は、一層の役割が1つの場合もあるし、2つ以上の役割を兼ねる場合もあり、例えば、電子輸送層16−4と発光層16−3cとを一つの層で兼ねることができるものである。
つまり、有機EL層16は、少なくとも、有機発光材料を含有する発光層16−3を含む層であればよく、発光層16−3のみから構成されてもよいが、一般的には、発光層16−3以外の他の層が含まれるものである。こうした発光層16−3以外の層は、発光層16−3の機能を損なわない限り、有機材料から構成されるものであっても無機材料から構成されるものであってもよい。
ここで、有機EL層16の各層を構成する材料は、特に限定されず、これまで有機ELの発光層を構成する有機発光材料として公知のものを用いることができ、例えば、蛍光または燐光を発生する有機化合物、蛍光および燐光を発生する有機化合物、該有機化合物を他の物質(ホスト材料)にドープした化合物、該有機化合物にドーピング材料をドープした化合物などが挙げられる。
また、蛍光または燐光を発生する有機化合物、蛍光および燐光を発生する有機化合物としては、色素系、金属錯体型、高分子系、などが知られており、いずれを用いてもよい。
即ち、発光層16−3(つまり、発光層16−3a、16−3b、16−3cである。)を構成する材料としては、有機発光材料が用いられ、こうした有機発光材料としては、例えば、色素系の具体例として、1,4−bis[4−(N,N−diphenylaminostyrylbenzene)](DPAVB)、2,3,6,7−tetrahydro−1,1,7,7−tetramethyl−1H,5H,11H−10−(2−benzothiazolyl)quinolizine[9,9a,1−gh](C545T)、ジスチルアリーレン誘導体である4−4’−bis(2,2−diphenyl−ethen−1−yl)biphenyl(DPVBi)などが挙げられる。また、金属錯体系の具体例として、Tris[1−phenylisoquinoline−C2,N]iridium(III)(Ir(piq)3)、Bis[2−(2−benzoxazolyl)phenolate]Zinc(II)(ZnPBO)などが挙げられる。
また、ホール注入層16−1、ホール輸送層16−2ならびに電子輸送層16−4を構成する材料としては、それぞれ有機材料が一般的に用いられる。
ホール注入層16−1を構成する材料としては、例えば、4,4’,4”−tris(N,N−2naphthylphenylamino)triphenylamine(2−TNATA)、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT−CN)、酸化モリブデン(MoOx、x=1〜3)などの化合物が挙げられる。
また、ホール輸送層16−2を構成する材料としては、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−(1−1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(NPD)、銅フタロシアニン(CuPc)、N,N’−Diphenyl−N−N’−di(m−tolyl)benzidine(TPD)などの芳香族アミン化合物などが挙げられる。
さらに、電子輸送層16−4を構成する材料としては、例えば、2,5−Bis(1−naphthyl)−1,3,4−oxadiazole(BND)、2−(4−tert−Butylphenyl)−5−(4−biphenylyl)−1,3,4−oxadiazole(PBD)などのオキサジオール系化合物、Tris(8−quinolinolate)aluminium(Alq3)などの金属錯体系化合物などが挙げられる。
さらにまた、電子注入層16−5を構成する材料としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)などが挙げられる。
こうした電子注入層16−5を電子輸送層16−4と陰極導電層18との間に設けると、仕事関数の差を少なくすることができ、陰極導電層18から電子輸送層16−4に電子が移行しやすくなる。
なお、陰極導電層18としてMg/Ag=10/90などのマグネシウム合金を使用すると、電子注入層16−5を設けなくても、電子注入効果を得ることが可能となる。
こうした有機EL層16の全体の厚さとしては、例えば、30〜500nmが好ましい。
また、陰極導電層18は、電源20の陰極と接続された金属層18−1と透明導電層18−2とにより構成されており、有機EL層16上に金属層18−1と透明導電層18−2とが順次積層されている。
金属層18−1は、Ag、Agの含有率が10%以上の合金、AlまたはAlの含有率が10%以上の合金からなり、当該合金としては、例えば、上記したMg/Ag=10/90などのマグネシウム合金が挙げられる。
この金属層18−1の厚さとしては、例えば、10〜30nmが好ましく、有機EL層16からの光を透過可能としている。
透明導電層18−2は、陽極導電層14と同様に、可視光を透過する透明導電材料により構成されており、こうした透明導電材料としては、特に限定されず、透明導電材料として公知のものを用いることができる。
具体的には、透明導電層18−2に用いる透明導電材料としては、インジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide(ITO))、インジウム−亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide(IZO))、酸化亜鉛(Zinc Oxide(ZnO))あるいは亜鉛−スズ酸化物(Zinc Tin Oxide(ZTO))などが挙げられる。
ここで、有機発光ダイオード10は、陰極導電層18側から光を取り出すトップエミッション型である。
このため、有機EL層16からの光を透過することを可能とするために、金属層18−1を薄層で形成している。
このとき、陰極導電層18を金属層18−1のみとすると、金属層18−1が薄層であるため体積抵抗が大きくなる。
このため有機発光ダイオード10においては、陰極導電層18として金属層18−1とともに透明導電層18−2を補助電極層として設けることにより導電性の向上を図っている。
こうした透明導電層18−2の厚さは、例えば、50〜200nmが好ましい。
また、基板12は、可視光を透過する透明体または可視光を透過しない不透明体が用いられ、基板12を構成する材料としては、無機材料でも有機材料でもよく、それらの組み合わせであってもよい。
具体的には、基板12を構成する材料として、透明体の無機材料としては、石英ガラス、無アルカリガラス、ソーダライムガラスなどのアルカリガラス、白板ガラスなどの各種ガラス、マイカなどの透明無機鉱物などが上げられ、不透明体の無機材料としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの金属、各種セラミックスなどが挙げられる。
また、有機材料としては、シクロオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂フィルム、当該樹脂フィルム中にセルロースナノファイバーなどの微細繊維を混入した繊維強化プラスチック材料などが挙げられる。なお、有機材料についても透明体、不透明体の両方が使用可能である。
さらに、基板12の陽極導電層14が積層される側の表面12a(つまり、基板12の上面である。)には、複数の凸部12bを周期的に二次元に配列した構造(以下、「周期的に二次元に配列した構造」を、「二次元格子構造」と適宜に称することとする。)が設けられている。
そして、この二次元格子構造が形成された基板12上に反射層22、陽極導電層14、有機EL層16、陰極導電層18が順次積層されることで、各層の表面(つまり、各層の上面であり、基板12が位置する側と反対側の面である。)には、基板12の表面12aと同様の複数の凸部による二次元格子構造が形成されることとなる。
また、各層の裏面(つまり、各層の下面であり、基板12が位置する側の面である。)には、基板12の表面12aに形成された構造が反転した構造、即ち、複数の凹部が周期的に配列した構造、つまり、複数の凹部による二次元格子構造が形成されることとなる。
具体的には、金属層18−1について着目すると、金属層18−1の表面18−1a(つまり、金属層18−1の上面であり、透明導電層18−2が位置する側の面である。)には、基板12の表面12aに形成された複数の凸部12bと同等の二次元格子構造を形成して複数の凸部が形成される。
一方、金属層18−1の裏面18−1c(つまり、金属層18−1の下面であり、有機EL層16が位置する側の面であり、陰極導電層18の裏面18aである。)には、基板12の表面12aに形成された構造が反転した構造、即ち、複数の凹部18bが周期的に二次元に配列した構造、つまり、複数の凹部18bによる二次元格子構造が形成されることとなる。
こうした二次元格子構造は、内部量子効率が低い、あるいは寿命の短い有機発光材料の波長を増強するように設計される(例えば、白色中の波長470nm(青))ことで、陰極導電層18における金属層18−1において励起される表面プラズモンが伝搬光として取り出される。
ここで、発光層16−3で発光分子から発光する際には、ごく近傍に近接場光が発生するものであるが、この近接場光は、発光層16−3と金属層18−1との距離が非常に近いため、金属層18−1の表面18−1aおよび裏面18−1cで伝搬型の表面プラズモンに変換される。
金属表面の伝搬型表面プラズモンは、入射した電磁波(近接場光など)により生じる自由電子の粗密波が表面電磁場を伴うものである。
平坦な金属表面に存在する表面プラズモンの場合、当該表面プラズモンの分散曲線と光(空間伝搬光)の分散曲線とは交差しないため、表面プラズモンのエネルギーを光として取り出すことができない。これに対し、金属表面に格子構造が形成されていると、当該格子構造によって回折された表面プラズモンの分散曲線が空間伝搬光の分散曲線と交差するようになり、表面プラズモンを輻射光として取り出すことができる。
このように、二次元格子構造が設けられていることにより、表面プラズモンとして失われていた光のエネルギーが取り出されるようになる。こうして取り出されたエネルギーは、輻射光として陰極導電層18における金属層18−1から放射される。
このとき、金属層18−1から輻射される光は指向性が高く、適切な設計をすればその大部分が光取り出し面たる陰極導電層18の表面18c(つまり、陰極導電層18の上面であり、透明導電層18−2における金属層18−1が位置する側と反対側の面である。)に向かう。
そのため、有機発光ダイオード10においては、光取り出し面から内部量子効率が低い、あるいは寿命の短い有機発光材料の強度が強められた光が出射するため、最終的に内部量子効率が低い有機発光材料であっても、あるいは、寿命が比較的短い有機発光材料であっても、過度な印加電圧を加えることがなく、寿命を狭めることなく光取り出し効率を向上させることができる。
こうした二次元格子構造では、例えば、陰極導電層18に着目すると、裏面18a(つまり、陰極導電層18の下面であり、金属層18−1の裏面18−1cである。)に形成された凹部18bが二次元に配列されることにより、一次元の場合(つまり、配列方向が一方向であることであり、例えば、複数の溝が一方向に並んで配置されたような構造である。)よりも取り出し効率が高くなる。
こうした二次元格子構造の好ましい具体例としては、配列方向が2方向で、その交差角度が90°であるもの(正方格子)、配列方向が3方向で、その交差角度が60°であるもの(三角格子(六方格子ともいう。))などが挙げられ、三角格子構造が特に望ましい。これは、配列方向が多い方が、回折光を得られる条件が多くなり、高効率で表面プラズモンを回折できるためである。
こうした二次元格子構造において三角格子構造を形成するには、粒子が二次元的な六方最密充填配置をとる粒子単層膜を形成し、当該粒子単層膜をエッチングマスクとしてドライエッチングを行うことにより、簡単に取得することができる。なお、こうした粒子単層膜による三角格子構造を形成する方法については、後述する。
凹部18bの深さD1としては、15nm≦D1≦180nmとし、30nm≦D1≦100nmが好ましく、D1<15nmあるいはD1>180nmであるときには、光取り出し効率の向上効果が不十分となってしまう。
上記した凹部18bの深さD1の範囲は、以下の理由に基づく。
即ち、凹部18bの深さD1が15nm未満であると(つまり、D1<15nmのときである。)、二次元格子構造として十分な表面プラズモンの回折波を生成できなくなり、表面プラズモンを輻射光として取り出す効果が低下する。
また、凹部18bの深さD1が180nmを超えると(つまり、D1>180nmのときである。)、表面プラズモンが局在型の性質を持ち始め、伝搬型ではなくなってくるため、輻射光の取り出し効率が低下する。さらに、この場合には、有機発光ダイオード10の反射層22、陽極導電層14、有機EL層16、陰極導電層18を順次積層する際に、凹凸が急峻であるため陽極導電層14と陰極導電層18とが短絡する可能が高くなってくるため好ましくない。
さらに、凹部18bの深さD1は、基板12の表面12aに形成された凸部12bの高さH1と同じとなっているため、凸部12bの高さをAFMにより測定することで間接的に定量することができる。
例えば、まず、二次元格子構造内の無作為に選択された5μm×5μmの領域1カ所についてAFM像を取得し、次に、取得したAFM像の対角線方向に線を引き、この線と交わった凸部12bの最大高さをそれぞれ単独に算出する。その後、算出した凸部12bの高さの平均値を算出する。こうした処理を無作為に選択された合計25カ所の5μm×5μmの領域について同様に実行し、各領域における凸部12bの平均値を算出し、得られた25カ所の領域における平均値をさらに平均した値を凸部12bの高さとする。
この凸部12bの形状は、特に限定されず、例えば、円柱形状、円錐形状、円錐台形状、正弦波形状、ドーム形状あるいは、それらを基本とした派生形状などが挙げられる。
次に、有機発光ダイオード10の製造方法について説明する。この有機発光ダイオード10の製造方法は、特に限定されるものではないが、好ましくは、表面12aに複数の凸部12bが二次元格子構造で形成された基板12の当該表面12a上に反射層22と、陽極導電層14と、有機EL層16(ホール注入層16−1、ホール輸送層16−2、発光層16−3(発光層16−3a、16−3b、16−3c)、電子輸送層16−4、電子注入層16−5)と、陰極導電層18(金属層18−1、透明導電層18−2)とを順次積層する。
この場合、陰極導電層18の裏面18a(つまり、陰極導電層18の下面であり、金属層18−1の裏面18−1cである。)に形成された複数の凹部18bによる二次元格子構造は、基板12の表面12aに形成された複数の凸部12bによる二次元格子構造に対応したものとなる(図2(a)(b)を参照する。)。
即ち、陰極導電層18の裏面18aに形成された複数の凹部18bにおける隣り合う凹部18b間の中心間距離P1(以下、「隣り合う凹部18b間の中心間距離P1」を、「凹部18bの中心間距離P1」と称することとする。)は、基板12の表面12aに形成された複数の凸部12bにおける隣り合う凸部12b間の中心間距離P2(以下、「隣り合う凸部12b間の中心間距離P2」を、「凸部12bの中心間距離P2」と称することとする。)と一致し、凹部18bの深さD1は凸部12bの高さH1と一致するものとなる。
このため、基板12の表面12aに形成された凸部12bの中心間距離P2および凸部12bの高さH1をそれぞれ測定することで、陰極導電層18の裏面18aに形成された凹部18bの中心間距離P1および凹部18bの深さD1を測定することができる。
なお、こうした凹部18bの中心間距離P1は、凸部12bの中心間距離P2をレーザー回折法で測定することにより間接的に測定することができ、また、凹部18bの深さD1は、凸部12bの高さH1をAFMにより測定することにより間接的に測定することができる。
以下、有機発光ダイオード10の製造方法について詳細に説明することとする。
まず、基板12の表面12aに形成された複数の凸部12bによる二次元格子構造の作製方法には、例えば、電子ビームリソグラフィー、機械式切削加工、レーザー加工、二光束干渉露光、縮小露光などを用いることができる。また、原版を先に作製しておけば、ナノインプリント法による微細構造の転写・複製も可能である。
こうした手法のうち、二光束干渉露光およびナノインプリント法以外の手法は、大面積の周期格子構造を作製するのに適さないため、工業的な利用面において面積の制約を受ける。
また、二光束干渉露光は、ある程度の小面積は作製可能であるが、一辺が数cm以上の大面積の場合には、光学セットアップ全体に対する振動、風、熱収縮、膨張、空気の揺らぎ、波長変動などの様々な外乱要因が影響して、均一で正確な周期格子構造を作製することは極めて困難である。
そこで、有機発光ダイオード10における基板12の表面12aに形成された複数の凸部12bによる二次元格子構造の作製方法としては、粒子単層膜をエッチングマスクとしたドライエッチング方法(以下、「粒子単層膜をエッチングマスクとしてドライエッチングを行う方法」を、「粒子単層膜を用いたエッチング方法」と称することとする。)が好ましい。
この方法は、基板12の表面12aに発光波長以下の一次粒子径を有する粒子の単層膜を、ラングミュア・ブロジェット法(以下、「LB法」と適宜に称する。)の原理を用いて作製することで、粒子間隔の制御が高精度で行われた二次元的最密充填格子が得られることを利用した方法であり、こうした方法は、例えば、上記した特許文献7に開示されている。
この粒子単層膜においては、粒子が二次元に最密充填しているため、これをエッチングマスクとして基板原板(つまり、二次元格子構造を形成する前の基板12のことである。)表面をドライエッチングすることにより、高精度な三角格子(六方格子)状の二次元格子構造を形成することができる。
このような二次元格子構造を有する基板を用いて形成された陰極導電層18の裏面18aの二次元格子構造も同様に高精度となることから、こうした方法を用いることによって、大面積の場合であっても高効率で表面プラズモンの回折波を得ることができ、光取り出し効率が向上した高輝度の有機発光ダイオード10を得ることができる。
この粒子単層膜を用いたエッチング方法では、基板原板の表面を粒子単層膜で被覆する被覆工程と、当該粒子単層膜をエッチングマスクとして用いて基板原板をドライエッチングする工程(ドライエッチング工程)とを行うことにより基板12に複数の凸部12bによる二次元格子構造を形成するようにしている。
以下、上記した被覆工程およびドライエッチング工程について詳細に説明することとする。
(1)被覆工程
基板原板の表面を粒子単層膜により被覆する被覆工程は、水槽に、その液面上で粒子を展開させるための液体(以下、「液面上に粒子を展開させるための液体」を、「下層液」と適宜に称する。)を入れ、この下層液の液面に有機溶剤中に粒子が分散した分散液を滴下し、滴下した分散液から有機溶剤を揮発させることにより、粒子からなる粒子単層膜を下層液の液面上に形成する粒子単層膜形成工程と、粒子単層膜を基板12上に移し取る移行工程とを行うことにより実施される。
なお、以下の説明では、下層液として親水性の液体を使用し、分散液においては有機溶剤および粒子としてそれぞれ疎水性のものを使用する場合について説明する。なお、下層液として疎水性の液体を使用してもよく、その場合には、粒子として親水性のものを使用する。
(1−1)粒子単層膜形成工程
この工程では、まず、揮発性が高い有機溶剤(例えば、クロロホルム、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサンなどである。)中に、表面が疎水性の粒子を加えて分散液を調製する。また、水槽を用意し、当該水槽に下層液として水(以下、下層液としての水を「下層水」と適宜に称する。)を入れる。
そして、調製した分散液を水槽に貯留された下層水の液面に滴下すると、分散液中の粒子が分散媒によって下層水の液面に展開する。その後、この分散媒である有機溶剤が揮発することにより、粒子が二次元的に最密充填した粒子単層膜が形成される。
なお、粒子単層膜の形成に用いる粒子の粒径は、形成しようとする凸部12bの中心間距離P2を考慮して設定される。即ち、使用する粒子の粒径により、基板12の表面12aに形成される凸部12bの中心間距離P2が決定され、凸部12bの中心間距離P2が決定されることにより、凹部18bの中心間距離P1が決定されることとなる。
この粒子単層膜を形成する粒子の粒径については、内部量子効率および有機発光材料の寿命時間のうちの少なくとも一方が、他の有機発光材料より劣る所定の有機発光材料の発光スペクトルのピーク波長、即ち、取り出したい有機発光材料の発光スペクトルのピーク波長に対応する陰極導電層に生じる表面プラズモンの波数(伝搬定数)を算出し、次に、表面プラズモンの波数から格子ピッチ(つまり、凹部18bの中心間距離P1であり、凸部12aの中心間距離P2に相当する。)を求め、最終的に粒径を算出する。
ここで、粒子単層膜を形成する粒子の粒径の具体的な決定方法について、図3を参照しながら説明することとする。
まず、波長λの光に対応する表面プラズモンの波数(伝搬定数)の求め方について説明する。
この表面プラズモンの波数の求め方は、凹凸のない場合の有機発光ダイオードの層構成に対するものと同じであり、また、有機発光ダイオードはボトムエミッション型、トップエミッション型双方とも考え方は同じである。
図3に示すように、有機発光ダイオードが、基板から空気までが第1層から第J層までの複数の層を積層して成り立っている場合に、第1層は基板により構成され、また、第J層は空気より構成されることとなる。
ここで、有機発光ダイオードの層を構成する一つの層である第j層について、その厚さをdjであるものとし、また、その比誘電率はεjで与えられているものとする。
すると、第J層の厚さdjは無限大となる。また、第1層の厚さd1も無限大として差し支えない。
次に、j=Mである第M層が表面プラズモンを担持する金属層であるとすると、まず、この第M層の両側の界面を伝搬する表面プラズモンの伝搬定数を求める。
ここで、この金属層の界面を伝搬する表面プラズモンモードは2つ存在する。
1つは、エネルギーが主として第M層の直下の層である第(M−1)層と第M層との界面に集中するモードであり、もう一つは、主として第M層と第M層の直上の層である第(M+1)層との界面に集中するモードである。
以下、前者をM−モード、後者をM+モードと称することとする。これらの各モードにおける表面プラズモンの伝搬定数は、系の固有方程式を解くことによって得られる。
一般に、この固有方程式は解析的に解くことはできず、非線形最適化の手法を用いて数値的に解くしかない。パラメーター総数が多くなるに従い、この計算は困難になってくる。
表面プラズモンの伝搬定数は、複素数であり、上記の固有方程式は、この複素伝搬定数を正確に与える。しかし、ここで必要となるものは、表面プラズモンの伝搬定数の実部だけであるため、この場合には、簡易的な計算により求める方法が適用できる。
層構造が有する伝搬モード(表面プラズモンモードと導波路モード)は、伝搬定数で特徴づけられる。この伝搬定数は、伝搬モードの波数のうち界面に平行な成分(以下、面内波数と称する。)に関する。
この層構造中に振動双極子を配置すると、そのエネルギーは、この層構造が有する各モードに散逸する。それぞれのモードは異なる伝搬定数、即ち、面内波数を有するため、双極子からの散逸エネルギーの面内波数依存性を調べれば、この層構造がどの伝搬モードを有するのかが分かる。
ここで、双極子の散逸エネルギーの面内波数依存性の具体的な計算手順は、以下の通りである。
まず、任意の層に双極子を1個置くものとする。この双極子が置かれた層を第N層とする。
ここで、図3には、有機発光ダイオードの層構造が示されており、j=Nである第N層には、当該層構造中におかれた双極子を示す説明図が示されている。
この図3においては、第N層内に双極子が置かれており、矢印d−および矢印d+はそれぞれ、双極子から第N層の下方側界面および第N層の上方側界面までの距離をそれぞれ示している。
また、双極子のモーメントをμとし、取り出し角周波数ωで振動しているものとする。
上記の各種値を用いた場合、この双極子のエネルギー散逸の面内波数(k||)依存性は、双極子の向きが界面に垂直な場合には、下記の(7)式で与えられる。
また、双極子の向きが界面に平行な場合には、下記の(8)式で与えられる。
ここで、ε0は真空の誘電率である。rp −およびrs ーはそれぞれN層側から見た(N−1)/N界面での面内波数k||を持つp偏光およびs偏光の反射係数(振幅反射率)で、rp +およびrs +はそれぞれN層側から見たN/(N+1)界面での面内波数k||を持つp偏光およびS偏光の反射係数である(図3を参照する。)。もちろん、これらの反射係数には、基板あるいは空気までの全ての層の影響が含まれる。また、kNは第N層における光波の波長ベクトルで、kN=εN 1/2ω/cにより与えられる。さらに、kNは第N層における光波の波数ベクトルの法線成分で、k|| 2+kz 2=kN 2により与えられる。また、cは真空中の光速である。
上記エネルギー散逸の面内波数依存性W⊥(k||)およびW||(k||)の極大が各伝搬モードに対応し、その極大を与える面内波数がそのモードの伝搬定数の実部となっている。
次に、上記の計算によって得られた複数の導波モードの中から表面プラズモンモードを同定する方法について述べる。
得られた導波モードには、TE導波路モード、TM導波路モードおよび表面プラズモンモードが含まれる。この中でTE導波路モードは双極子の向きが界面に平行な場合にしか得られない。
したがって、双極子の向きを界面に垂直として計算した結果と比較することで、TM導波路モードが同定できる。
また、表面プラズモンモードは、金属が存在するときのみ存在し、その数は金属界面の数と一致する。なお、それぞれの金属界面は、主としてその界面に局在するそれぞれの表面プラズモンモードと一対一の関係にある。
したがって、金属層を適当な誘電体層に置き換えることで、表面プラズモンモードは除去される。そして、このときに除去された導波モードが表面プラズモンモードと同定できる。
得られた表面プラズモンモードが、主としてどの金属界面に存在するのかは次のようにして求めることができる。
即ち、双極子の位置をそれぞれの金属界面の近傍に置き、エネルギー散逸をそれぞれ計算し、表面プラズモンモードに対応するピークの高さを比較する。
このとき、最も高いピーク値を与える双極子の最も近傍に位置する金属界面がその表面プラズモンが主として局在する界面とである。
次に、有機EL素子の層構成が与えられたとき、全発光エネルギーに対する各モードへのエネルギー散逸の割合を計算する方法について説明する。
界面に対して垂直および水平な向きを持つ双極子の散逸エネルギーの面内波数依存性は、上記(7)式および(8)式によって求められる。
なお、低分子系の有機EL素子では発光層内に生成される励起子の双極子の向きはランダムである。この場合の平均の散逸エネルギーの面内波数依存性は下記の(9)式によって与えられる。
まず、発光層内に双極子を置き、上記(9)式により、差に津エネルギーの面内波数依存性を算出する。全発光エネルギーは、W(k||)を面内波数k||=0から無限大まで積分したものに等しく、各モードへの散逸エネルギーW(k||)をそのモードのピーク領域に対応した面内波数範囲で積分したものに等しい。両者の比が全発光エネルギーに対するそのモードへの散逸エネルギーの割合を与える。
格子ピッチP(つまり、凹部18bの中心間距離P1であり、凸部12aの中心間距離P2に相当する。)は、取り出したい表面プラズモンモードによって異なる式で与えられる。
具体的には、格子ピッチP0は、二次元格子構造として三角格子構造を形成する場合には、下記の(10)式で与えられる。
また、格子ピッチP0は、二次元格子構造として正方格子構造を形成する場合には、下記の(11)式で与えられる。
なお、上記した(10)式および(11)式で与えられる格子ピッチPと粒子の粒径(つまり、粒子の直径)Dは等しいものとなる。
即ち、取り出される表面プラズモンモードは、二次元格子構造として三角格子構造を形成する場合と、正方格子構造をとる場合とでは異なるものであり、上記した(10)式を満足する格子ピッチP0で三角格子構造を作製した場合および上記した(11)式を満足する格子ピッチP0で正方格子構造を作製した場合には、表面プラズモンのエネルギーを光として取り出すことができるようになる。
ただし、どのような発光材料もその発光スペクトルにおいては発光波長に幅を有するものであるため、そうした幅に対応するように格子ピッチPは、下記の(1)式に与えられる範囲の変動許容値をもつものとする。
このようにして与えられた(10)式、(11)式および(1)式から粒子単層膜を用いたエッチング方法において粒子単層膜を形成するための粒子の粒径を算出する。なお、こうした粒子単層膜を用いたエッチング方法で作成できるのは、二次元格子構造として三角格子構造を形成する場合のみである。
具体的には、有機発光ダイオード10を、基板12上に形成されたAl(反射層22に相当する。)側からIZO(陽極導電層14に相当する。)/HAT−CN[膜厚80nm](ホール注入層16−1)に相当する。)/T400[膜厚70nm](ホール輸送層16−2に相当する。)/ADNにMDP3FL(2,7−Bis{2−[phenyl(m−tolyl)amino]−9,9−dimethyl−fluorene−7−yl}−9,9−dimethyl−fluorene)を7%濃度でドープしたもの[膜厚40nm](発光層16−3aに相当する。)/Alq3(tris(8−hydroxyquinolinato)aluminium)にC545Tを1%濃度でドープしたもの[膜厚10nm](発光層16−3bに相当する。)/CBPにIr(piq)3を8.5%濃度でドープしたもの[膜厚20nm](発光層16−3cに相当する。)/E913[膜厚50nm](電子輸送層16−4に相当する。)/Al[膜厚10nm](金属層18−1に相当する。)/IZO[膜厚110nm](透明導電層18−2に相当する。)とし、内部量子効率および有機発光材料の寿命が他の有機発光材料に劣るため、増強したい発光スペクトルのピーク波長値λ1を630nmとするとき、図4に示すようなエネルギー散逸を示す。
また、計算においては反射層の厚さは無限大とした。
なお、ADNは、9,10−di(2−naphthyl)anthraceneであり、C545Tは、2,3,6,7−tetrahydro−1,1,7,7−tetramethyl−1H,5H,11H−10−(2−benzothiazolyl)quinolizine[9,9a,1−gh]である。
また、CBPは、4,4−N,N’−dicarbazole−biphenylであり、T400は、バンドー化学社製のホール輸送材料であり、E913は、サンファインケミカル社製の電子輸送材料である。
陰極トップエミッション型の構成の場合、表面プラズモンモードは、反射層/陽極導電層間、有機層/金属層間、金属層/陽極導電層間の3種類が得られるが、エネルギー散逸図から判断し、相対的にエネルギー量が大きい有機層/金属層間に着目して表面プラズモンのエネルギーを光として取り出すための格子ピッチPおよび粒径を算出した。
図4は、金属層18−1の裏面18−1c(つまり、金属層18−1の下面であり、陰極導電層18の裏面18aである。)より基板側60nmの距離、即ち、発光層16−3cの中央(該発光層内で上方側界面と下方側界面までの距離が等距離な位置である。)に双極子を置いたときのエネルギー散逸を上記した(9)式を用いて計算した結果を示すものである。なお、計算においては反射層の厚さは無限大とした。
図4では、面内波数k||=21.6μm−1、k||=18.1μm−1およびk||=12.8μm−1の位置にそれぞれピークQ1、Q2、Q3が認められる。これらピークQ1、Q2、Q3が表面プラズモンモードに対応する。
ここで、面内波数の大きい方から1つ目のモード(ピークQ1)、即ち、k||=21.6μm−1は、金属層18−1の表面18−1a(つまり、金属層18−1の上面であり、透明導電層18−2が位置する側である。)にエネルギーが集中する表面プラズモンモードであり、面内波数の大きい方から2つ目のモード(ピークQ2)、即ち、k||=18.1μm−1は、反射層22の表面(つまり、反射層22の上面であり、透明導電層14が位置する側である。)にエネルギーが集中する表面プラズモンモードであり、面内波数の大きい方から3つ目のモード(ピークQ3)、即ち、k||=12.8μm−1は、金属層18−1の裏面18−1c(つまり、陰極導電層18の裏面18aである。)にエネルギーが集中する表面プラズモンモードである。
図4に示すエネルギー散逸図に表れる複数の導波モードから表面プラズモンモードを同定する方法は、上記した方法を用いた。
ここで、図4において、面内波数の大きい方から4つ目のモード(ピークQ4)はTE導波路モードに関わるピークである。TE導波路モードは表面プラズモンモードに比べて散逸エネルギーが小さい。
ここでは、面内波数の大きい方から3つめのモード(ピークQ3)、即ち、金属層18−1の裏面18−1cに集中する表面プラズモンモード(k||=12.8μm−1)のエネルギーが大きいため、この表面プラズモンの波数(伝搬定数)を利用して上記した(10)式、(11)式および(1)式から粒子の粒径を算出することができる。
こうした粒子は、粒径の変動係数(つまり、標準偏差を平均値で除算した値である。)が15%以下であることが好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
このように粒径の変動係数が小さく、粒径のばらつきが小さい粒子を使用すると、形成される粒子単層膜に粒子が存在しない欠陥箇所が生じにくくなり、配列のずれが小さい粒子単層膜を形成することができる。
この粒子単層膜の配列のずれが小さいと、最終的に陰極導電層18の裏面18a(金属層18−1の裏面18−1c)に形成される二次元格子構造における配列のずれも小さくなる。そして、二次元格子構造のずれが小さいほど、陰極導電層18における金属層18−1において表面プラズモンが効率的に光に変換されるため好ましい。
粒子単層膜を構成する粒子材料としては、例えば、Al、Au、Ti、Pt、Ag、Cu、Cr、Fe、Ni、Siなどの金属、SiO2、Al2O3、TiO2、MgO2、CaO2などの金属酸化物、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどの有機高分子、その他の半導体材料、無機高分子などが挙げられる。これらは、いずれか1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用するようにしてもよい。
取得したい格子ピッチに基づいて、上記した(10)式などから、この粒子の粒径を算出することができる。
また、粒子は、下層液として水(または、親水性の液体)を使用する場合には、表面が疎水性であるものが好ましい。粒子の表面が疎水性であれば、水槽の下層液の液面上に粒子の分散液を展開させて粒子単層膜を形成する際に、下層液として水を用いて容易に粒子単層膜を形成できるとともに、粒子単層膜を基板12上に容易に移行させることができる。
上記において示した粒子材料のうち、ポリスチレンなどの有機高分子の粒子材料では、表面が疎水性であるため、そのまま使用することができるが、金属や金属酸化物の粒子材料では、表面を疎水化剤により疎水性にすることにより使用することができる。こうした疎水化剤としては、例えば、界面活性剤、アルコキシシランなどが挙げられる。
界面活性剤を疎水化剤として使用する方法は、幅広い材料の疎水化に有効であり、金属や金属酸化物などの粒子材料に対して適している。
こうした界面活性剤としては、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム、4−オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤を用いることができる。さらに、アルカンチオール、ジスルフィド化合物、テトラデカン酸、オクタデカン酸なども用いることができる。
このような界面活性剤を用いた疎水化処理は、有機溶剤や水などの液体に粒子を分散させて液中で行ってもよいし、乾燥状態にある粒子に対して行ってもよい。
液中で疎水化処理を行う場合には、例えば、クロロホルム、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、エチルエチルケトン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの少なくとも1種類からなる揮発性有機溶剤中に、疎水化対象の粒子を加えて分散させ、その後、界面活性剤を混合してさらに分散を行えばよい。このように粒子を分散させた後に界面活性剤を加えると、当該粒子の表面をより均一に疎水化することができる。
このような疎水化処理後の分散液は、そのまま下層水の液面に滴下するための分散液として使用することができる。
疎水化対象の粒子が水分散体の状態である場合には、この水分散体に界面活性剤を加えて水相で粒子表面の疎水化処理を行った後、有機溶剤を加えて疎水化処理済みの粒子を油相抽出する方法も有効である。こうして得られた分散液(つまり、有機溶剤中に粒子が分散した分散液である。)は、そのまま下層水の液面に滴下するための分散液として使用することができる。
なお、この分散液の粒子分散性を高めるためには、有機溶剤の種類と界面活性剤の種類とを適切に選択し、組み合わせるようにする。粒子分散性の高い分散液を使用することによって、粒子が凝集することを抑制することができ、各粒子が高精度で二次元に最密充填した粒子単層膜が得られやすくなる。
例えば、有機溶剤としてクロロホルムを選択した場合には、界面活性剤として臭化デシルトリメチルアンモニウムを使用することが好ましい。こうした分散液の粒子分散性を高めるための有機溶剤と界面活性剤との組み合わせとしては、エタノールとドデシル硫酸ナトリウム、メタノールと4−オクチルベンセンスルホン酸ナトリウム、メチルエチルケトンとオクタデカン酸など挙げられる。
疎水化対象の粒子と界面活性剤の比率は、疎水化対象の粒子の質量に対して、界面活性剤の質量が1〜20%の範囲が好ましい。
また、こうした疎水化処理の際には、処理中の分散液を撹拌したり、分散液に超音波照射したりすることも粒子分散性向上の点で効果的である。
アルコキシシランを疎水化剤として使用する方法は、Si、Fe、Alなどの粒子材料やSiO2、Al2O3、TiO2などの粒子材料を疎水化する際に有効である。なお、これらの粒子材料に限らず、基本的には、水酸基などを表面に有する粒子であればどのような粒子材料に対しても適用することができる。
アルコキシシランとしては、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランフェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
疎水化剤としてアルコキシシランを用いる場合には、アルコキシシラン中のアルコキシシリル基シラノール基に加水分解し、このシラノール基が粒子表面の水酸基に脱水縮合することで疎水化が行われる。従って、アルコキシシランを用いた疎水化は、水中で行うことが望ましい。
このように、水中で疎水化を行う場合には、例えば、界面活性剤などの分散剤を併用して、疎水化前の粒子の分散状態を安定化するのが好ましい。なお、分散剤の種類によってはアルコキシシランの疎水化効果を低減することもあるため、分散剤とアルコキシシランとの組み合わせは適切に選択する。
アルコキシシランにより疎水化する具体的方法としては、まず、水中に粒子を分散させておき、これとアルコキシシラン含有水溶液(つまり、アルコキシシランの加水分解物を含む水溶液である。)とを混合し、室温から40℃の範囲で適宜撹拌しながら所定時間、好ましくは0.5〜12時間反応させる。
このような条件で反応させることによって、反応が適度に進行し、十分に疎水化された粒子の分散液を取得することができる。このとき、反応が過度に進行すると、シラノール基同士が反応して粒子同士が結合してしまい、分散液の粒子分散性が低下し、得られる粒子単層膜は、粒子が部分的にクラスター状に凝集した2層以上のものになりやすい。一方、反応が不十分であると、粒子表面の疎水化も不十分となり、得られる粒子単層膜は粒子間のピッチが広がったものになりやすい。
また、アミン系以外のアルコキシシランは、酸性またはアルカリ性の条件下で加水分解するため、反応時には分散液のpHを酸性またはアルカリ性に調製する必要がある。pHの調整法には制限はないが、0.1から2.0質量%濃度の酢酸水溶液を添加する方法によれば、加水分解促進のほかにシラノール基安定化の効果の得られるために好ましい。
疎水化対象の粒子とアルコキシシランの比率としては、疎水化対象の粒子の質量に対してアルコキシシランの質量が1〜20倍の範囲が好ましい。
所定時間反応後、この分散液に対して上記した揮発性有機溶剤のうちの1種類以上を加え、水中で疎水化された粒子を油相抽出する。この際、添加する有機溶剤の体積は、有機溶剤添加前の分散液に対して0.3〜3倍の範囲が好ましい。
油相抽出して得られた分散液(つまり、有機溶剤中に粒子が分散した分散液である。)は、そのまま下層水の液面に滴下するための分散液として使用することができる。
なお、こうした疎水化処理においては、処理中の分散液の粒子分散性を高めるために、撹拌、超音波照射などを実施することが好ましく、分散液の粒子分散性を高めることによって、粒子がクラスター状に凝集することを抑制することができ、各粒子が高精度で二次元に最密充填した粒子単層膜が取得しやすくなる。
分散液の粒子の濃度は1〜10質量%とすることが好ましく、また、分散液の下層水への滴下速度を0.001〜0.01ml/秒とすることが好ましい。
分散液中の粒子の濃度や滴下量が上記したような範囲であると、粒子が部分的に凝集して2層以上となる、粒子が存在しない欠陥箇所が生じる、粒子間のピッチが広がるなどの傾向が抑制され、各粒子が高精度で二次元に最密充填した粒子単層膜を取得しやすくなる。
粒子単層膜形成工程は、超音波照射条件下で実施することが好ましく、下層水中から液面に向けて超音波を照射しながら粒子単層膜形成工程を行うと、粒子の凝集状態が低減する効果や粒子の最密充填が促進される効果が得られ、各粒子が高精度で二次元に最密充填した粒子単層膜を取得することができる。
この際、超音波の出力は、1〜1200Wが好ましく、50〜600Wがより好ましい。また、超音波の周波数は特に制限はないが、例えば、28kHz〜5MHzが好ましく、700kHz〜2MHzがより好ましい。
一般に、振動数(ここでは超音波の周波数を指す。)が高すぎると水分子のエネルギー吸収が始まり、水面から水蒸気または水滴が立ち上る現象が生じるため好ましくない。また、一般に振動数が低すぎると、下層水中のキャビテーション半径が大きくなり、水中に泡が発生して水面に向かって浮上してくる。このような泡が下層水の液面に形成された粒子単層膜の下に集積すると、水面の平坦性が失われることになり、適当な粒子単層膜の形成ができなくなってしまう。
また、超音波照射によって水面に定常波が発生する。いずれの周波数でも出力が大きすぎたり、超音波振動子と発振器のチューニング条件によって当該水面の波高が高くなりすぎると、粒子単層膜が水面波で破壊される可能性がある。
こうしたことから超音波の周波数を適切に設定すると、形成されつつある粒子単層膜を破壊することなく、効果的に粒子の単層化を促進することができる。しかし、粒径が、例えば、100nm以下などの小さな粒子になると、粒子の固有振動数は非常に高くなってしまうため、計算結果の通りの超音波振動を与えることは困難となる。
この場合には、粒子2量体、3量体、・・・20量体程度までの質量に対する固有振動を与えると仮定して計算を行うと、必要な振動数を現実的な範囲まで低減させることができる。粒子の会合体の固有振動数に対応する超音波振動を与えた場合でも、粒子の単層化は促進される。
超音波の照射時間は、粒子の単層化の促進に十分であればよく、粒径、超音波の周波数、下層水の温度などによって所要時間が変化する。
しかし、通常の作製条件では、10秒間〜60分間で行うことが好ましく、3分間〜30分間で行うことがより好ましい。
超音波照射によって得られる利点は粒子の最密充填化(つまり、ランダム配列を六方最密化することである。)のほかに、粒子分散液調整時に発生しやすい粒子の軟凝集体を破壊する効果、一度発生した点欠陥、線欠陥、または、結晶転移などもある程度の修復効果を有する。
上記した水面における粒子単層膜の形成は、粒子の自己組織化によるものであり、その原理は、粒子が水面上に浮いており、かつ、互いにランダムに動ける状態から、粒子同士が集結する状態になる際、粒子間に存在する分散媒に起因して表面張力が作用し、その結果、粒子同士はバラバラの状態で存在するのではなく、水面上で二次元に最密充填した構造を自動的に形成するというものである。このような表面張力による最密充填構造の形成は、別の表現をすると、横方向の毛細管力による粒子同士の相互吸着とも言える。
特に、例えば、コロイダルシリカのように球形であって、粒径の均一性の高い粒子が水面に浮いた状態で3つ集まり接触すると、粒子群の喫水線の合計長を最小にするように表面張力が作用し、3つの粒子は正三角形を基本とする配置で安定化する。
仮に、喫水線が粒子群の頂点にくる場合、つまり、粒子が当該液面下に潜ってしまう場合には、このような自己組織化は起こらず、粒子単層膜は形成されない。従って、粒子と下層水は一方が疎水性である場合には、他方を親水性にして粒子群が水面下に潜らないようにすることが重要である。
下層液としては、以上の説明のように水を使用することが好ましく、水を使用すると、比較的大きな表面自由エネルギーが作用して、いったん生成した粒子の最密充填配置が液面上安定的に持続しやすくなる。
(1−2)移行工程
移行工程では、粒子単層膜形成工程により下層水の液面上に形成された粒子単層膜を、単層状態のままエッチング対象物である基板原板上に移し取る。
粒子単層膜を基板原板上に移し取る具体的な方法は、特に制限されるものではなく、例えば、疎水性の基板原板を粒子単層膜に対して略平行な状態に保ちつつ、上方から降下させて粒子単層膜に接触させ、ともに疎水性である粒子単層膜と基板原板との親和力により、粒子単層膜を基板原板に移行させて、基板原板に粒子単層膜を移し取る方法を用いることができる。
より具体的には、粒子単層膜を形成する前に、予め水槽の下層水内に基板原板を略水平方向に配置しておき、粒子単層膜を下層水の液面上に形成した後に当該液面を徐々に降下させることにより、基板原板上に粒子単層膜を移し取るようにする。
こうした方法によれば、特別な装置を使用せずに粒子単層膜を基板原板上に移し取ることができるが、より大面積の粒子単層膜であっても、その二次元的な最密充填状態を維持したまま基板原板上に移し取りやすいという点では、所謂、LBトラフ法を採用することが好ましい。
LBトラフ法では、水槽内の下層水中に基板原板を当該下層水の液面に対して略垂直方向に浸漬しておき、その状態で上記した粒子単層膜形成工程を行い、当該液面上に粒子単層膜を形成する。
そして、粒子単層膜形成工程後に、基板原板を上方に引き上げることによって、下層水の液面上に形成された粒子単層膜を基板原板上に移し取ることができる。
このとき、粒子単層膜は、粒子単層膜形成工程により下層水の液面上で既に単層の状態に形成されているため、移行工程の温度条件(つまり、下層水の温度である。)や基板原板の引き上げ速度などを多少変動しても、粒子単層膜が崩壊して多層化するなどの恐れはない。
移行工程の温度条件たる下層水の温度は、通常、季節や天候により変動する環境温度に依存し、およそ10〜30℃程度である。
また、この際の水槽として、粒子単層膜の表面圧を計測するウィルヘルミープレートなどを原理とする表面圧力センサーと、粒子単層膜を下層水の液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを具備するLBトラフ装置を使用すると、より大面積の粒子単層膜をより安定的に基板原板上に移し取ることができる。
こうした装置によれば、粒子単層膜の表面圧を計測しながら、粒子単層膜を好ましい拡散圧(密度)に圧縮することができ、また、基板原板の方に向けて一定の速度で移動させることができる。このため、粒子単層膜の下層水の液面から基板原板上への移行が円滑に進行し、小面積に粒子単層膜しか基板原板上に移行できないなどの不具合が生じにくくなる。
好ましい拡散圧としては、5〜80mNm−1であり、より好ましくは10〜40mNm−1である。このような拡散圧であると、各粒子がより高密度で二次元に最密充填した粒子単層膜を取得しやすい。また、基板原板を引き上げる速度としては、0.5〜20mm/分が好ましい。
こうした移行工程により、基板原板表面を粒子単層膜で被覆した後に、さらに、必要に応じて、粒子単層膜を基板原板上に固定するための固定処理を行うようにしてもよい。
固定処理により粒子単層膜を基板原板上に固定することによって、この後のドライエッチング時に粒子が基板原板上を移動してしまう可能性が抑えられ、より安定的に高精度に基板原板表面をエッチングすることができるようになる。なお、ドライエッチングが進むにつれて、各粒子の粒径が徐々に小さくなるため、基板原板上を移動する可能性は大きくなる。
こうした固定処理方法としては、バインダーを使用する方法や焼結法がある。バインダーを使用する方法では、粒子単層膜が形成された基板原板の当該粒子単層膜側にバインダー溶液を供給して粒子単層膜と基板原板との間にこれを浸透させる。
バインダーの使用量としては、粒子単層膜の質量の0.001〜0.002倍が好ましい。このような範囲であれば、バインダーが多すぎて粒子間にバインダーが詰まってしまい、粒子単層膜の精度に悪影響を与えるという問題を生じることがなく、十分に粒子を固定することができるものである。
バインダー溶液を多く供給してしまった場合には、バインダー溶液が浸透した後に、スピンコーターを使用したり、基板を傾けたりしてバインダー溶液の余剰分を除去すればよい。
バインダーの種類としては、先に疎水化剤として示したアルコキシシランや一般の有機バインダー、無機バインダーなどを用いることが可能であり、バインダー溶液が浸透した後には、バインダーの種類に応じて適宜加熱処理を行うようにする。例えば、アルコキシシランをバインダーとして使用した場合には、40〜80℃で3〜60分間加熱処理することが好ましい。
また、固定処理方法として焼結法を用いる場合には、粒子単層膜が形成された基板原板を加熱して、粒子単層膜を構成している各粒子を基板に融着させればよい。加熱温度は、粒子の材料と基板の材料とに応じて決定すればよいが、粒径が1μm以下の粒子はその物質本来の融点よりも低い温度で界面反応を開始するため、比較的低温側で焼結は完了する。
焼結時に加熱温度が高すぎると粒子の融着面積が大きくなり、その結果、粒子単層膜としての形状が変化するなど、精度に悪影響を与える可能性がある。
また、加熱を空気中で行うと、基板や各粒子が酸化する可能性があるため、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。酸素を含む雰囲気下で焼結を行う場合には、後述するドライエッチング工程で酸化層を考慮した条件を設定することが必要となる。
このようにして基板原板上に形成された粒子単層膜においては、下記の(12)式で定義される粒子の配列のずれS(%)が10%以下であることが好ましい。
A:粒子の平均粒径
B:粒子単層膜における粒子間の平均ピッチ
この(12)式において、「A」の「粒子の平均粒径」とは、粒子単層膜を構成する粒子の平均一次粒径のことであり、粒子動的光散乱法により算出した粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから常法により求めることができる。
また、「B」の「粒子単層膜における粒子間の平均ピッチ」とは、粒子単層膜における隣り合う2つの粒子の頂点と頂点との距離の平均値である。なお、粒子が球形であれば、隣り合う粒子の頂点と頂点との距離は、隣り合う粒子の中心と中心の距離と等しいものとなる。
粒子単層膜における粒子間の平均ピッチは、AFMにより凸部12aの中心間距離P2と同様にして求められる。
この粒子の配列のずれSが10%以下である粒子単層膜は、各粒子が二次元に最密充填し、粒子の間隔が制御されていて、その配列の精度は高いものとなる。
(2)ドライエッチング工程
上記したようにして粒子単層膜で被覆された基板表面を、ドライエッチングすることにより、複数の凸部12bが周期的に二次元に配列した構造を有する基板12を取得することができる。
具体的には、ドライエッチングを開始すると、まず、粒子単層膜を構成している各粒子の隙間をエッチングガスが通り抜けて基板原板の表面に到達し、エッチングガスが到達した部分において当該エッチングガスにより基板表面がエッチングされて凹部が形成され、各粒子が位置する部分において凸部が現れる。
その後、さらにドライエッチングを継続すると、各凸部上の粒子もエッチングガスにより徐々にエッチングされて小さくなるとともに、基板原板表面の凹部も深くなる。
最終的に各粒子はマスクとして機能した後に除去され、基板原板の表面に複数の凸部が周期的に二次元に配列した構造が形成される。このようにして基板12の表面12aに複数の凸部12bを形成し、当該複数の凸部12により基板12上に二次元格子構造を形成することとなる。
また、ドライエッチングの条件(バイアス、ガス流量、堆積ガスの種類と量など)を調節することによって、形成される凸部の高さや形状を調節できる。
ドライエッチングに使用するエッチングガスとしては、例えば、Ar、SF6、F2、CF4、C4F8、C5F8、C2F6、C3F6、C4F6、CHF3、CH2F2、CH3F、C3F8、Cl2、CCl4、SiCl4、BCl2、BCl3、BC2、Br2、Br3、HBr、CBrF3、HCl、CH4、NH3、O2、H2、N2、CO、CO2などが挙げられるが、本発明の効果を阻害しない範囲でこれらに限定されることはない。粒子単層膜を構成する粒子や基板の材質などに応じて、これらのうち1種類以上を使用することができる。
使用可能なエッチング装置としては、反応性イオンエッチング装置、イオンビームエッチング装置などの異方性エッチングが可能なものであって、最小で10W程度のバイアス電場を発生できるものであれば、プラズマ発生の方式、電極の構造、チャンバーの構造、高周波電源の周波数などの仕様に特に制限はない。
このドライエッチング工程でのエッチング選択比(つまり、基板のエッチング速度/粒子単層膜のエッチング速度である。)が、上記微細構造の構造設計1.0以下となるように各種条件(粒子単層膜を構成する粒子材料、基板の材質、エッチングガスの種類、バイアスパワー、アンテナパワー、ガスの流量と圧力、エッチング時間など)を設定することが好ましい。
例えば、エッチングマスクたる粒子単層膜を構成する粒子としてコロイダルシリカ粒子を選択するとともに、基板として石英基板を選択して、当該石英基板上にコロイダルシリカ粒子による粒子単層膜を形成した場合、エッチングガスにArやCF4などのガスを用いることで、比較的低いピッチと振幅の比のエッチングをすることができる。
また、電場のバイアスを数十から数千Wに設定すると(ドライエッチング装置の電極面積による)、プラズマ状態にあるエッチングガス中の正電荷粒子が加速されて高速でほぼ垂直に基板に入射する。従って、基板に対して反応性を有する気体を用いた場合は、垂直方向の物理化学エッチングの反応速度を高めることができる。
基板の材質とエッチングガスの種類との組み合わせにもよるが、ドライエッチングでは、プラズマによって生成したラジカルによる等方性エッチングも並行して生じる。ラジカルによるエッチングは化学エッチングであり、エッチング対象物のどの方向にも等方的にエッチングを行う。
また、ラジカルは電荷を持たないため、バイアスパワーの設定でエッチング速度をコントロールすることはできず、エッチングガスのチャンバー内濃度でエッチング速度をコントロールする。荷電粒子による異方性エッチングを行うためには、ある程度のガス圧を維持しなければならないので、反応性ガスを用いる限り等方的エッチングの影響はゼロにできない。しかし、基板を冷却することでラジカルの反応速度を遅くする手法は広く用いられており、その機構を備えた装置も多いので、それを利用することが好ましい。
さらに、ドライエッチング工程において、主としてバイアスパワーと圧力を調整し、かつ、状況に応じて、所謂、堆積ガスを併用することで、基板表面の凸部の中心間距離と当該凸部の高さとの比(中心間距離/高さ)が比較的低い二次元格子構造を形成することができる。
このようにして基板表面に形成された構造について、粒子単層膜における粒子間の平均ピッチBを求める方法と同様にして、その凸部の中心間距離Cを求めると、中心間距離Cは、使用した粒子単層膜の平均ピッチBとほぼ同じ値となる。また、この構造について、下記の(13)式で定義される配列のずれS’(%)を求めると、その値も使用した粒子単層膜における配列のずれSとほぼ同じ値となる。
A:使用した粒子単層膜を構成する粒子の平均粒径
C:基板表面に形成された凸部の中心間距離
なお、上記したようにして形成された、表面に複数の凸部が周期的に二次元に配列した構造を有する基板を鋳型として用い、この鋳型表面の構造を基板原板に転写することにより基板12を作製してもよい。
鋳型表面の構造の転写は、公知の方法、例えば、上記した特許文献7に開示されている、ナノインプリント法、熱プレス法、射出成型法、UVエンボス法などの方法により実施することができる。
転写回数が増えると、微細凹凸の形状は鈍化するので、元の原版からの実用的な派生的な転写回数としては5回以内が好ましい。
上記したようにして複数の凸部12bによる二次元格子構造が形成された基板12の表面12a上に、反射層22および陽極導電層14を順次積層し、陽極導電層14の表面14a上にホール注入層16−1、ホール輸送層16−2、発光層16−3(発光層16−3a、16−3b、16−3c)、電子輸送層16−4および電子注入層16−5を順次積層して有機EL層16を形成し、電子注入層16−5の表面16−5a上に金属層18−1および透明導電層18−2を順次積層して陰極導電層18を形成することで、有機発光ダイオード10を取得することができる。
これら各層の積層方法は、特に限定されず、一般的な有機発光ダイオードの製造に用いられている公知の技術を利用することができる。
例えば、陽極導電層14および透明導電層18−2はそれぞれ、スパッタリング法、真空蒸着法などによって形成することができる。また、反射層22、ホール注入層16−1、ホール輸送層16−2、発光層16−3(発光層16−3a、16−3b、16−3c)、電子輸送層16−4、電子注入層16−5および金属層18−1はそれぞれ、真空蒸着法によって形成することができる。
これら各層の厚さは非常に薄いため、上記のようにして各層を順次積層することで、基板12の表面12aにおける複数の凸部12bによる二次元格子構造が透明導電層18−2まで反映され、反射層22および金属層18−1において、基板12の表面12aに形成された複数の凸部12bによる二次元格子構造に対応した複数の凸部または凹部による二次元格子構造が形成されることとなる。
次に、上記した製造方法に基づいて、有機発光ダイオード10を作製する場合について、具体例を挙げて説明する。
作製する有機発光ダイオード10としては、基板/Al[膜厚100nm]/IZO[膜厚20nm]/HAT−CN[膜厚80nm]/T400[膜厚70nm]、/MDP3FL@ADN(7%)[膜厚40nm]/C545T@Alq3(1%)[膜厚10nm]/Ir(piq)3@CBP(8.5%)[膜厚20nm]/E913[膜厚50nm]/Al[膜厚10nm]/IZO[膜厚110nm]とする。
そして、内部量子効率および有機発光材料の寿命が他の有機発光材料に劣るため、増強したい発光スペクトルのピーク波長値λ1は630nmとする。
即ち、この有機発光ダイオード10は、石英ガラスにより形成された基板12と、Alにより形成された厚さ100nmの反射層22と、IZOにより形成された厚さ20nm陽極導電層14と、HAT−CNにより形成された厚さ80nmのホール注入層16−1と、T400により形成された厚さ70nmのホール輸送層16−2と、MDP3FLを7%ドープしたADNにより形成された厚さ40nmの発光層16−3aと、C545Tを1%ドープしたAlq3により形成された厚さ10nmの発光層16−3bと、CBPを8.5%ドープしたIr(piq)3により形成された厚さ20nmの発光層16−3cと、E913により形成された厚さ50nmの電子輸送層16−4と、Alにより形成された厚さ10nmの金属層18−1と、IZOにより形成された厚さ110nmの透明導電層18−2とにより構成されている。
この有機発光ダイオード10を作製するために、まず、基板12の表面12aに複数の凸部12bにより二次元格子構造を作製する際に必要となる粒子単層膜を形成する粒子の粒径を算出する。
即ち、有機発光ダイオード10において、陰極導電層18のうち金属層18−1の厚さを10nmとしたときのエネルギー散逸の強度を上記した(7)式、(8)式、(9)式によって求める。
また、計算においては反射層の厚さは無限大とした。
ここでは、散逸エネルギーが最も集中する金属層18−1の裏面18−1c(つまり、陰極導電層18の裏面18aである。)に生じる表面プラズモンのエネルギーを伝搬光として取り出すときの粒子単層膜を形成する粒子の粒径を算出することとする。
上記した(7)式、(8)式、(9)式において、波数の大きい方から3つ目のモード(ピーク)が、金属層18−1の裏面18−1cに生じる表面プラズモンのエネルギー散逸であるため、このピークを与える面内波数k||を求める。上記したようにこのモードの面内波数はk||=12.8μm−1である。
なお、上記した(7)式および(8)式に含まれる通常の多層薄膜の反射係数を求める式としては、非特許文献(「プラズモニクス−基礎と応用」岡本隆之・梶川浩太郎著、講談社サイエンティフィク(2010年10月1日出版)、P16−22)を参照する。
図4において、面内波数の大きい方から3つ目のモード(つまり、ピークQ3である。)、のk||は12.8μm−1となっている。即ち、表面プラズモンへのエネルギー散逸ピークを与える面内波数k||は12.8μm−1となっている。
そして、この値を上記した(10)式に代入すると、この波数に対応する微細構造(つまり、二次元格子構造のことである。)を作製するための粒子の粒径Dは、567nmと算出された。
なお、この具体例においては、粒子単層膜を用いたエッチング方法について説明するため上記(10)式を用いて粒子単層膜を形成する粒子の粒径を算出するようにしているが、粒子単層膜を用いたエッチング方法以外の方法により有機発光ダイオード10を作製する場合には、上記した(10)式および(11)式を用いて格子ピッチPを算出し(なお、格子ピッチPは、(1)式に示す範囲の値である。)、算出した格子ピッチPとなるようにして各種条件を調整して作製すればよい。
上記した(10)式で算出した粒子の粒径Dの値に基づいて、平均粒径が562.3nmで、粒径の変動係数が4.0%であるコロイダルシリカの5.0質量%水分散体(分散液)を作製した。なお、平均粒径および粒子の変動係数は、Malvern Instruments Ltd製のZetasizer Nano−ZSによる粒子動的光散乱法で求めた粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから算出した。
次に、作製した分散液中のコロイダルシリカの表面を疎水化処理するために、当該分散液に濃度1.0質量%のフェニルトリエトキシシランの加水分解物を含む水溶液を加え、約40°で3時間反応させた。この際、フェニルトリエトキシシランの質量がコロイダルシリカ粒子の質量の0.015倍となるように分散液と当該水溶液とを混合した。
そして、反応終了後の分散液に、当該分散液の5倍の体積のメチルイソブチルケトンを加えて撹拌して、疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出した。
こうして得られた濃度1.05質量%の疎水化コロイダルシリカ分散液を粒子単層膜の表面圧を計測する表面圧センサーと、粒子単層膜を液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを備えた水槽(LBトラフ装置)中に貯留された液面(下層液として水を使用し、水温は26.5℃とした。)に滴下速度0.01ml/秒で滴下した。なお、水槽に貯留された下層水には、予め有機発光ダイオード10の基板12として用いるための透明の石英基板(30mm×30mm×1.0mm、両面鏡面研磨処理済)を略鉛直方向に浸漬している。
疎水化コロイダルシリカ分散液を下層水の液面に滴下し始めた時点から、下層水中から液面に向けて、出力100W、周波数1500kHzの条件で超音波を10分間照射することにより、疎水化したコロイダルシリカ粒子が二次元的に最密充填するのを促すとともに、当該分散中の有機溶剤であるメチルイソブチルケトンを揮発させて、当該下層水の液面に粒子単層膜を形成した。
その後、形成した粒子単層膜を可動バリアにより拡散圧が22〜30mNm−1になるまで圧縮し、基板12を3mm/分の速度で引き上げて、基板12の一方の面に当該粒子単層膜を移し取った。なお、基板12の一方の面とは、二次元格子構造を形成しようとする面のことである。
次に、基板12の一方の面上に移し取った粒子単層膜の当該一方の面への固定処理として、粒子単層膜を移し取った基板12の一方の面上にバインダーとして0.15質量%のモノメチルトリメトキシシランの加水分解液を浸透させ、その後、当該加水分解液の余剰分をスピンコーター(3000rpm)で1分間処理して除去した。そして、加水分解液の余剰分を除去した基板12を100℃で10分間加熱してバインダーを反応させ、コロイダルシリカ粒子からなる粒子単層膜が形成された基板12を取得した。
こうして粒子単層膜が形成された基板12を取得すると、次に、当該基板12に対してCHF3ガスによりドライエッチング処理を行った。
このドライエッチング処理の条件は、アンテナパワー1500W、バイアスパワー50〜300W(13.56MHz)、ガス流量50〜200sccmとした。
ドライエッチング処理を行った後の基板12の一方の面をAFMで観察したところ、断面形状が円錐台形形状であり(図6(b)を参照する。)、平面配置は凸部が三角格子状に配列した微細構造が形成されていた(図6(a)を参照する。)。
このようにして、基板12の一方の面に形成された微細構造における凸部の中心間距離p’(格子定数)をAFMにより測定したところ、3回の試験の平均値で、573.7nmであった。
また、AFM像から無作為に選択された25カ所の5μm×5μmの領域における当該微細構造の凸部の平均値を算出し、当該25カ所のそれぞれの平均値をさらに平均することにより求めた当該微細構造における凸部の平均高さhは、62.4nmであった。
さらに、上記した(13)式を用いて算出した結果、配列のずれSは2.0%であった。
さらにまた、平均高さhと中心間距離p’の平均値との比(平均高さh/中心間距離p’)は0.109であった。
その後、微細構造が形成された基板12の一方の面に、反射層22としてAlを100nmの厚さで蒸着法により成膜し、反射層22上に陽極導電層14としてIZOを20nmの厚さでスパッタリング方により成膜し、さらに、ホール注入層16−1としてHAT−CNを80nmの厚さで蒸着法によって成膜した。
次に、ホール注入層16−1上にホール輸送層16−2としてT400を70nmの厚さで蒸着法によって成膜し、その後、ホール輸送層16−2上にMDP3FLを7%ドープしたADNにより形成された厚さ40nmの発光層16−3aと、C545Tを1%ドープしたAlq3により形成された厚さ10nmの発光層16−3bと、CBPを8.5%ドープしたIr(piq)3により形成された厚さ20nmの発光層16−3cとを蒸着法によって成膜した。
さらに、発光層16−3c上に、電子輸送層16−4としてE913を50nmの厚さで蒸着法によって成膜し、さらにまた、電子輸送層16−4上に、金属層18−1としてAlを10nmの厚さで蒸着法によって成膜し、また、金属層18−1上に、透明導電層18−2としてIZOを110nmの厚さでスパッタリング法により成膜して、有機発光ダイオード10を作製した。
なお、蒸着およびスパッタリングの際にマスクを使用することにより、発光エリアは2×2mmに作製した。
次に、本発明による有機発光ダイオードの第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態は、図1に示された第1の実施の形態と同様な陰極トップエミッション型と称される有機発光ダイオードである。
なお、有機発光ダイオード70は、上記した第1の実施の形態による有機発光ダイオード10と同様な構成のため、その詳細な説明は省略することとする。
以下に、有機発光ダイオード70を作製する場合について、具体例を挙げて説明する。
作製する有機発光ダイオード70としては、基板/Al[膜厚100nm]/IZO[膜厚20nm]/HAT−CN[膜厚40nm]/T400[膜厚50nm]/MDP3FL@ADN(7%)[膜厚20nm]/C545T@Alq3(1%)[膜厚2nm]/Ir(piq)3@CBP(8.5%)[膜厚10nm]/E913[膜厚30nm]/Al[膜厚10nm]/IZO[膜厚110nm]とする。
そして、内部量子効率および有機発光材料の寿命が他の有機発光材料に劣るため、増強したい発光スペクトルのピーク波長値λ1は470nmとする。
即ち、この有機発光ダイオード70は、石英ガラスにより形成された基板12と、Alにより形成された厚さ100nmの反射層22と、IZOにより形成された厚さ20nmの陽極導電層14と、HAT−CNにより形成された厚さ40nmのホール注入層16−1と、T400により形成された厚さ50nmのホール輸送層16−2と、MDP3FLを7%ドープしたADNにより形成された厚さ20nmの発光層16−3aと、C545Tを1%ドープしたAlq3により形成された厚さ2nmの発光層16−3bと、CBPを8.5%ドープしたIr(piq)3により形成された厚さ10nmの発光層16−3cと、E913により形成された厚さ30nmの電子輸送層16−4と、Alにより形成された厚さ10nmの金属層18−1と、IZOにより形成された厚さ110nmの透明導電層18−2とにより構成されている。
この有機発光ダイオード70を作製するために、まず、基板12の表面12aに複数の凸部12bにより二次元格子構造を作成する際に必要となる粒子単層膜を形成する粒子の粒径の算出を行った。
なお、この計算では、双極子の位置は金属層18−1の裏面18−1cから52nmの距離、即ち、発光層16−3aの中央(該発光層内で上方側界面と下方側界面までの距離が等距離な位置である。)とした。
また、計算においては反射層の厚さは無限大とした。
ここで、図5は、金属層18−1の裏面18−1c(つまり、金属層18−1の下面であり、陰極導電層18の裏面18aである。)より基板側52nmの距離、即ち、発光層16−3aの中央(該発光層内で上方側界面と下方側界面までの距離が等距離な位置である。)に双極子を置いたときのエネルギー散逸を示すものである。
この図5では、基板側に双極子を置いた場合、面内波数k||=35.3μm−1、k||=27.1μm−1およびk||=23.7μm−1の位置に表面プラズモンモードに対応するピークQ1、Q2、Q3が認められる。
面内波数の大きい方から1つ目のモード(ピークQ1)、即ち、k||=35.3μm−1は、金属層18−1の表面18−1a(つまり、金属層18−1の上面であり、透明導電層18−2が位置する側である。)にエネルギーが集中する表面プラズモンモードであり、面内波数の大きい方から2つ目のモード(ピークQ2)、即ち、k||=27.1μm−1は、反射層22の表面(つまり、反射層22の上面であり、透明導電層14が位置する側である。)にエネルギーが集中する表面プラズモンモードであり、面内波数の大きい方から3つ目のモード(ピークQ3)、即ち、k||=23.7μm−1は、金属層18−1の裏面18−1c(つまり、陰極導電層18の裏面18aである。)にエネルギーが集中する表面プラズモンモードである。
図5に示すエネルギー散逸図に表れる複数の導波モードから表面プラズモンモードを同定する方法は、上記した方法を用いた。
ここで、図5において、面内波数の大きい方から4つ目のモード(ピークQ4)および5つ目のモード(ピークQ5)はTE導波路モードであり、6つ目のモード(ピークQ6)はTM導波路モードに関わるピークである。これらTE導波路モードおよびTM導波路モードは表面プラズモンモードに比べて散逸エネルギーが小さい。
ここでは、面内波数の大きい方から3つめのモード(ピークQ3)、即ち、金属層18−1の裏面18−1cに集中する表面プラズモンモード(k||=23.7μm−1)のエネルギーが大きいため、この表面プラズモンの波数(伝搬定数)を利用して上記した(10)式および(1)式より、金属層18−1の裏面18−1cに集中する補湯面プラズモンモードに対応する微細構造(つまり、二次元格子構造である。)を算出したところ、粒子の粒径Dは、306nmと算出された。
こうして算出された粒子の粒径Dに基づいて平均理由系298.7nmで粒子の偏光係数が4.0%であるコロイダルシリカを用いて、第1の実施の形態により有機発光ダイオード10と同様な方法で微細構造を作製した。
微細構造を作製した後の基板12の一方の面をAFMで観察したところ、断面形状が円錐台形形状であり、平面配置は凸部が三角格子状に配列した微細構造が形成されていた。
このようにして、基板12の一方の面に形成された微細構造における凸部の中心間距離p’(格子定数)をAFMにより測定したところ、3回の試験の平均値で、307.6nmであった。
また、AFM像から無作為に選択された25カ所の5μm×5μmの領域における当該微細構造の凸部の平均値を算出し、当該25カ所のそれぞれの平均値をさらに平均することにより求めた当該微細構造における凸部の平均高さhは、51.8nmであった。
さらに、上記した(13)式を用いて算出した結果、配列のずれSは3.0%であった。
さらにまた、平均高さhと中心間距離p’の平均値との比(平均高さh/中心間距離p’)は0.168であった。
その後、微細構造が形成された基板12の一方の面に、反射層22としてAlを100nmの厚さで蒸着法により成膜し、反射層22上に陽極導電層14としてIZOを20nmの厚さでスパッタリング法により成膜し、さらに、ホール注入層16−1としてHAT−CNを40nmの厚さで蒸着法によって成膜した。
次に、ホール注入層16−1上にホール輸送層16−2としてT400を50nmの厚さで蒸着法によって成膜し、その後、ホール輸送層16−2上にMDP3FLを7%ドープしたADNにより形成された厚さ20nmの発光層16−3aと、C545Tを1%ドープしたAlq3により形成された厚さ2nmの発光層16−3bと、CBPを8.5%ドープしたIr(piq)3により形成された厚さ10nmの発光層16−3cとを蒸着法によって成膜した。
さらに、発光層16−3上に、電子輸送層16−4としてE913を30nmの厚さで蒸着法によって成膜し、さらにまた、電子輸送層16−4上に、金属層18−1としてAlを10nmの厚さで蒸着法によって成膜し、また、金属層18−1上に、透明導電層18−2としてIZOを110nmの厚さでスパッタリング法により成膜して、有機発光ダイオード70を作製した。
なお、蒸着およびスパッタリングの際にマスクを使用することにより、発光エリアは2×2mmに作製した。
次に、図7を参照しながら、本発明による有機発光ダイオードの第3の実施の形態について説明する。
図7には、本発明の第3の実施の形態による有機発光ダイオードの概略構成説明図が示されている。
この図7に示す有機発光ダイオード50に関する説明においては、説明の便宜上、有機発光ダイオード50を構成する各層の高さ方向における上方側の表面を上面と適宜に称し、各層の高さ方向における下方側の表面を下面と適宜に称する。
また、以下の説明においては、本発明を用いるものである限り、必ずしも対象とする有機発光ダイオードの構造および方式を限定するものではない。
この図7に示す有機発光ダイオード50は、ボトムエミッション型と称されるタイプの有機発光ダイオードであり、基板52上に陽極導電層54と有機EL層56と陰極導電層58とが順次積層されている。
そして、陽極導電層54と陰極導電層58とには、電源20により電圧を印加することができるようになされている。
この有機発光ダイオード50においては、陽極導電層54と陰極導電層58とに電圧を印加すると、陽極導電層54から有機EL層56中の発光層56−3(後述する。)にホールが注入されるとともに、陰極導電層58から有機EL層56中の発光層56−3(後述する。)に電子が注入され、陽極導電層54側から有機EL層56で発生した光が取り出されるようになる。
なお、本発明の第3の実施の形態による有機発光ダイオード50は、3波長型のボトムエミッション型と称される有機発光ダイオードであり、発光層56−3は3つの有機発光材料が層(発光層56−3a、発光層56−3b、発光層56−3cであり、その詳細は後述する。)を形成して構成される。以降、差し障りのない場合は、この3層をまとめて発光層56−3として記載する。
陽極導電層54は、電源20の陽極と接続され、上記した有機発光ダイオード10における陽極導電層14と同様に、可視光を透過する透明導電材料により構成されている。
こうした透明導電材料は、特に限定されず、透明導電材料として公知のものを用いることができる。
具体的には、陽極導電層54に用いる透明導電材料としては、ITO、ZnOあるいはZTOなどが上げられる。
また、こうした陽極導電層54の厚さは、例えば、50〜200nmが好ましい。
また、有機EL層56は、上記した有機発光ダイオード10における有機EL層16と同様に、電源20からホールが注入されるホール注入層56−1と、ホール注入層56−1において注入されたホールを後述する発光層56−3に輸送するとともに、当該発光層56−3からの電子を遮断するホール輸送層56−2と、互いに異なる波長の光を発光する複数の有機発光材料を含有するとともに、ホール輸送層56−2から輸送されたホールと後述する電子輸送層56−4から輸送された電子とが結合して発光する発光層56−3と、後述する電子注入層56−5において注入された電子を発光層56−3に輸送するとともに、当該発光層56−3からのホールを遮断する電子輸送層56−4と、電源20から電子が注入される電子注入層56−5とにより構成されている。
なお、発光層56−3は、所定の波長の光を発光する有機発光材料よりなる発光層56−3aと、発光層56−3aを形成する有機発光材料と異なる波長の光を発光する有機発光材料よりなる発光層56−3bと、発光層56−3a、56−3bを形成する有機発光材料と異なる波長の光を発光する有機発光材料よりなる発光層56−3cとを有して構成されている。そして、この発光層56−3a、56−3b、56−3cはそれぞれが発光することにより、発光層56−3から白色光が発光するように、有機発光材料が選択されている。
そして、有機EL層56は、陽極導電層54上に、ホール注入層56−1、ホール輸送層56−2、発光層56−3(発光層56−3a、発光層56−3b、発光層56−3c)、電子輸送層56−4、電子注入層56−5の順で7層で積層されている。
なお、これらの層は、一層の役割が1つの場合もあるし、2つ以上の役割を兼ねる場合もあり、例えば、電子輸送層56−4と発光層56−3cとを一つの層で兼ねることもできるものである。
つまり、有機EL層56は、少なくとも、有機発光材料を含有する発光層56−3(発光層56−3a、56−3b、56−3c)を含む層であればよく、発光層56−3(発光層56−3a、56−3b、56−3c)のみから構成してもよいが、一般的には、発光層56−3以外の層が含まれるものである。こうした発光層56−3以外の層は、発光層56−3(発光層56−3a、56−3b、56−3c)の機能を損なわない限り、有機材料から構成されるものであっても無機材料から構成されるものであってもよい。
本実施の形態においては、有機EL層56をホール注入層56−1、ホール輸送層56−2、発光層56−3(発光層56−3a、56−3b、56−3c)、電子輸送層56−4、電子注入層56−5の5層から構成されるものとした。これらの層の中で最も重要な層は発光層56−3(発光層56−3a、56−3b、56−3c)であり、例えば、ホール注入層56−1や電子注入層56−5は省略することも可能である。また、電子輸送層56−4は発光層56−3を兼ねることもできる。
ここで、有機EL層56の各層を構成する材料は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
即ち、発光層56−3(つまり、発光層56−3a、56−3b、56−3cである。)を構成する材料としては、有機発光材料が用いられ、こうした有機発光材料としては、例えば、Ir(piq)3、DPAVB、ZnPBO、C545Tなどが挙げられる。
また、蛍光性色素化合物や燐光発光性材料を他の物質(ホスト材料)にドープしたものを用いてもよい。この場合には、ホスト材料としてはホール輸送層56−2を構成する材料や電子輸送層56−4を構成する材料あるいは専用のホスト材料を用いるようにする。
ホール注入層56−1、ホール輸送層56−2ならびに電子輸送層56−4を構成する材料としては、それぞれ有機材料が一般的に用いられる。
ホール注入層56−1を構成する材料としては、例えば、2−TNATAやHAT−CNなどの化合物が挙げられる。
また、ホール輸送層56−2を構成する材料としては、例えば、NPD、CuPc、TPDなどの芳香族アミン化合物などが挙げられる。
さらに、電子輸送層56−4を構成する材料としては、例えば、BND、PBDなどのオキサジオール系化合物、Alqなどの金属錯体系化合物などが挙げられる。
さらにまた、電子注入層56−5を構成する材料としては、例えば、LiFなどが挙げられる。
こうした電子注入層56−5を電子輸送層56−4と陰極導電層58との間に設けると、仕事関数の差を少なくすることができ、陰極導電層58から電子輸送層56−4に電子が移行しやすくなる。
こうした有機EL層56の全体の厚さとしては、例えば、150〜500nmが好ましい。
また、陰極導電層58は、電源20の陰極と接続され、金属材料により構成されている。
この金属材料としては、Ag、Agの含有率が10%以上の合金、AlまたはAlの含有率が10%以上の合金などが挙げられ、当該合金としては、例えば、Mg/Ag=10/90などのマグネシウム合金が挙げられ、こうしたマグネシウム合金を使用した場合、電子注入層56−5を設けなくても、電子注入効果を得ることが可能となる。
陰極導電層58の厚さとしては、空気側(つまり、陰極導電層58の上面であり、陰極導電層58の表面58a側である。)に光が透過しないように十分厚くすることが好ましく、例えば、100〜200nmが好ましい。
また、基板52は、可視光を透過する透明体が用いられ、基板52を構成する材料としては、無機材料でも有機材料でもよく、それらの組み合わせてあってもよい。
具体的には、基板52を構成する無機材料として、石英ガラス、無アルカリガラス、ソーダライムガラスなどのアルカリガラス、白板ガラスなどの各種ガラス、マイカなどの透明無機鉱物などが挙げられる。また、基板52を構成する有機材料としては、シクロオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂フィルム、当該樹脂フィルム中にセルロースナノファイバーなどの微細繊維を混入した繊維強化プラスチック材料などが挙げられる。
この基板52の陽極導電層54が積層される側の表面52a(つまり、基板52の上面である。)には、複数の凸部52bを周期的に二次元に配列した二次元格子構造が設けられている。
このような二次元格子構造は、内部量子効率が低い、あるいは寿命の短い材料の発光スペクトルのピーク波長に対応した表面プラズモンの波長に合わせて形成される。
そして、この二次元格子構造が形成された基板52上に陽極導電層54、有機EL層56、陰極導電層58が順次積層されることで、各層の表面(つまり、各層の上面であり、基板52が位置する側と反対の面である。)には、基板52の表面52aと同様の複数の凸部による二次元格子構造が形成されることとなる。
また、各層の裏面(つまり、各層の下面であり、基板52が位置する側の面である。)には、基板52の表面52aに形成された構造が反転した構造、即ち、複数の凹部が周期的に配列した構造、つまり、複数の凹部による二次元格子構造が形成されることとなる。
具体的には、陰極導電層58について着目すると、陰極導電層58の裏面58c(つまり、陰極導電層58の下面であり、有機EL層56が位置する側の面である。)には、基板52の表面52aに形成された構造が反転した構造、即ち、複数の凹部58bが周期的に二次元に配列した構造、つまり、複数の凹部58bによる二次元格子構造が形成されることとなる。
こうして二次元格子構造が設けられることで、陰極導電層58において励起される表面プラズモンが伝搬光として取り出される。
即ち、発光層56−3(発光層56−3a、56−3b、56−3c)で発光分子から発光する際には、ごく近傍に近接場光が発生するものであるが、この近接場光は、発光層56−3と陰極導電層58との距離が非常に近いため、陰極導電層58の表面58aおよび裏面58cで伝搬型の表面プラズモンに変換される。
金属表面の伝搬型表面プラズモンは、入射した電磁波(近接場光など)により生じる自由電子の粗密波が表面電磁場を伴うものである。
平坦な金属表面に存在する表面プラズモンの場合、当該表面プラズモンの分散曲線と光(空間伝搬光)の分散曲線とは交差しないため、表面プラズモンのエネルギーを光として取り出すことができない。これに対し、金属表面に格子構造が形成されていると、当該格子構造によって回折された表面プラズモンの分散曲線が空間伝搬光の分散曲線と交差するようになり、表面プラズモンを輻射光として取り出すことができる。
このように、内部量子効率が低い、あるいは寿命の短い材料の発光スペクトルの強度が強められた光を二次元格子構造を形成することで出射させることが可能であるため、内部量子効率が低い、あるいは、寿命の短い有機発光材料であっても過度な印加電圧を加える必要がなく、寿命を狭めることなく光取り出し効率を向上させることができる。
こうした二次元格子構造では、例えば、陰極導電層58に着目すると、裏面58c(つまり、陰極導電層58の下面である。)に形成された凹部58bが二次元に配列されることにより、一次元の場合(つまり、配列方向が一方向であることであり、例えば、複数の溝が一方向に並んで配置されたような構造である。)よりも光取り出し効率が高くなる。
こうした二次元格子構造の好ましい具体例としては、正方格子構造や三角格子構造などが挙げられ、三角格子構造が特に好ましい。これは、配列方向が多い方が、回折光を得られる条件が多くなり、高効率で表面プラズモンを回折できるためである。
こうした二次元格子構造において三角格子構造を形成するには、粒子が二次元的な六方最密充填配置をとる粒子単層膜を形成し、当該粒子単層膜をエッチングマスクとしてドライエッチングを行うことにより、簡単に取得することができる。なお、こうした粒子単層膜による三角格子構造を形成する方法については、後述する。
凹部58bの深さD2としては、15nm≦D2≦180nmとし、30nm≦D2≦100nmが好ましく、D2<15nmあるいはD2>180nmであるときには、光取り出し効率の向上効果が不十分となってしまう。
上記した凹部58bの深さD2の範囲は、以下の理由に基づく。
即ち、凹部58bの深さD2が15nm未満であると(つまり、D2<15nmのときである。)、二次元格子構造として十分な表面プラズモンの回折波を生成できなくなり、表面プラズモンを輻射光として取り出す効果が低下する。
また、凹部58bの深さD2が180nmを超えると(つまり、D2>180nmのときである。)、表面プラズモンが局在型の性質を持ち始め、伝搬型ではなくなってくるため、輻射光の取り出し効率が低下する。さらに、この場合には、有機発光ダイオード50の陽極導電層54、有機EL層56、陰極導電層58を順次積層する際に、凹凸が急峻であるため陽極導電層54と陰極導電層58とが短絡する可能が高くなってくるため好ましくない。
凹部58bの深さD2は、基板52の表面52aに形成された凸部52bの高さH2と同じとなっているため、凸部52bの高さをAFMにより測定することで間接的に定量することができる。
例えば、まず、二次元格子構造内の無作為に選択された5μm×5μmの領域1カ所についてAFM像を取得し、次に、取得したAFM像の対角線方向に線を引き、この線と交わった凸部52bの最大高さをそれぞれ単独に算出する。その後、算出した凸部52bの高さの平均値を算出する。こうした処理を無作為に選択された合計25カ所の5μm×5μmの領域について同様に実行し、各領域における凸部52bの平均値を算出し、得られた25カ所の領域における平均値をさらに平均した値を凸部52bの高さとする。
この凸部52bの形状は、特に限定されず、例えば、円柱形状、円錐形状、円錐台形状、正弦波形状、ドーム形状あるいは、それらを基本とした派生形状などが挙げられる。
次に、有機発光ダイオード50の製造方法について説明する。この有機発光ダイオード50の製造方法は、特に限定されるものではないが、好ましくは、表面52aに複数の凸部52bが二次元格子構造で形成された基板52の当該表面52a上に、陽極導電層54と、有機EL層56(ホール注入層56−1、ホール輸送層56−2、発光層56−3(発光層56−3a、56−3b、56−3c)、電子輸送層56−4、電子注入層56−5)と、陰極導電層58とを順次積層する。
この場合、陰極導電層58の裏面58cに形成された複数の凹部58bによる二次元格子構造は、基板52の表面52aに形成された複数の凸部52bによる二次元格子構造に対応したものとなる(図2(a)(b)を参照する。)。
即ち、陰極導電層58の裏面58cに形成された複数の凹部58bにおける隣り合う凹部58b間の中心間距離P3(以下、「隣り合う凹部58b間の中心間距離P3」を、「凹部58bの中心間距離P3」と称することとする。)は、基板52の表面52aに形成された複数の凸部52bにおける隣り合う凸部52b間の中心間距離P4(以下、「隣り合う凸部52b間の中心間距離P4」を、「凸部52bの中心間距離P4」と称することとする。)と一致し、凹部58bの深さD2は凸部52bの高さH2と一致するものとなる。
このため、基板52の表面52aに形成された凸部52bの中心間距離P4および凸部52bの高さH2をそれぞれ測定することで、陰極導電層58の裏面58cに形成された凹部58bの中心間距離P3および凹部58bの深さD2を測定することができる。
なお、こうした凹部58bの中心間距離P3は、凸部52bの中心間距離P4をレーザー回折法で測定することにより間接的に測定することができ、また、凹部58bの深さD2は、凸部52bの高さH2をAFMにより測定することにより間接的に測定することができる。
以下、有機発光ダイオード50の製造方法について詳細に説明することとする。
まず、基板52の表面52aに形成された複数の凸部52bによる二次元格子構造の作製方法には、例えば、電子ビームリソグラフィー、機械式切削加工、レーザー加工、二光束干渉露光、縮小露光などを用いることができる。また、原版を先に作製しておけば、ナノインプリント法による微細構造の転写・複製も可能である。
こうした手法のうち、二光束干渉露光およびナノインプリント法以外の手法は、大面積の周期格子構造を作製するのに適さないため、工業的な利用面において面積の制約を受ける。
また、二光束干渉露光は、ある程度の小面積は作製可能であるが、一辺が数cm以上の大面積の場合には、光学セットアップ全体に対する振動、風、熱収縮、膨張、空気の揺らぎ、波長変動などの様々な外乱要因が影響して、均一で正確な周期格子構造を作製することは極めて困難である。
そこで、有機発光ダイオード50における基板52の表面52aに形成された複数の凸部52bによる二次元格子構造の作製方法としては、上記した有機発光ダイオード10に複数の凸部12bを二次元格子構造で形成する際に用いた、粒子単層膜を用いたエッチング方法が好ましい。
なお、この粒子単層膜を用いたエッチング方法については、上記において説明しているため、その詳細な処理内容については省略することとする。
そして、粒子単層膜を用いたエッチング方法により、基板52の表面52aに複数の凸部52bにより二次元格子構造を作製した後には、基板52の表面52a上に、陽極導電層54を積層し、陽極導電層54の表面54a上にホール注入層56−1、ホール輸送層56−2、発光層56−3(発光層56−3a、56−3b、56−3c)、電子輸送層56−4、電子注入層56−5を順次積層して有機EL層56を形成し、電子注入層56−5の表面56−5a上に陰極導電層58を積層することで、有機発光ダイオード50を取得することができる。
これらの各層の積層方法は、特に限定されず、一般的な有機発光ダイオードの製造に用いられている公知の技術を利用することができる。
例えば、陽極導電層54はスパッタリング法、真空蒸着法などによって形成することができる。また、ホール注入層56−1、ホール輸送層56−2、発光層56−3(発光層56−3a、56−3b、56−3c)、電子輸送層56−4、電子注入層56−5および陰極導電層58はそれぞれ、真空蒸着法によって形成することができる。
これら各層の厚さは非常に薄いため、上記のようにして各層を順次積層することで、基板52の表面52aにおける複数の凸部52bによる二次元格子構造が陰極導電層58まで反映され、陽極導電層54、有機EL層56および陰極導電層58において、基板52の表面52aに形成された複数の凸部52bによる二次元格子構造に対応した複数の凸部または凹部による二次元格子構造が形成されることとなる。
次に、上記した製造方法に基づいて、有機発光ダイオード50を作製する場合について、具体例を挙げて説明する。
作製する有機発光ダイオード50としては、基板/IZO[膜厚100nm]/HAT−CN[膜厚30nm]/T400[膜厚50nm]/MDP3FL@ADN(7%)[膜厚10nm]/C545T@Alq3(1%)[膜厚2nm]/Ir(piq)3@CBP(8.5%)[膜厚10nm]/E913[膜厚30nm]/LiF[膜厚0.8nm]/Al[膜厚150nm]とする。
即ち、この有機発光ダイオード50は、石英ガラスにより形成された基板52と、IZOにより形成された厚さ100nmの陽極導電層54と、HAT−CNにより形成された厚さ30nmのホール注入層56−1と、T400により形成された厚さ50nmのホール輸送層56−2と、MDP3FLを7%ドープしたADNにより形成された厚さ10nmの発光層56−3aと、C545Tを1%ドープしたAlq3により形成された厚さ2nmの発光層56−3bと、CBPを8.5%ドープしたIr(piq)3により形成された厚さ10nmの発光層56−3cと、E913により形成された厚さ30nmの電子輸送層56−4と、LiFにより形成された厚さ0.8nmの電子注入層56−5と、Alにより形成された厚さ150nmの陰極導電層58とにより構成されている。
そして、内部量子効率および有機発光材料の寿命が他の有機発光材料に劣るため、増強したい発光スペクトルのピーク波長値λ1は630nmとする。
この有機発光ダイオード50を作製するために、まず、基板52の表面52aに複数の凸部52bによる二次元格子構造を作製する際に必要となる粒子単層膜を形成する粒子の粒径を算出する。
即ち、有機発光ダイオード50において、陰極導電層58の厚さを無限大と仮定したときのエネルギー散逸の強度を上記した(7)式、(8)式、(9)式によって求める。
ここでは、陰極導電層58の裏面58cに生じる表面プラズモンのエネルギーを伝搬光として取り出すときの粒子単層膜を形成する粒子の粒径を算出することとする。
上記した(7)式、(8)式、(9)式において、波数の大きい方から1つ目のモード(ピーク)が陰極導電層58の裏面58cに生じる表面プラズモンのエネルギー散逸強度であるため、このピークを与える面内波数k||を求める。
また、双極子の位置は陰極導電層58の裏面58cから35nm(即ち、発光層56−3cで上方側界面と下方側界面までの距離が等距離な位置である。)とする。
ただし、LiF層は非常に薄いので計算においてはその厚さを「0」とした。また、Al層の膜厚は無限大とした。
なお、上記した通常の多層薄膜の反射係数を求める式としては、上記した非特許文献を参照する。
そして、上記した(9)式をk||を変数とする関数として計算すると、図8に示すような結果が得られる。
図8において、面内波数の大きい方から1つ目のモード(つまり、ピークRである。)、つまり、表面プラズモンへのエネルギー散逸ピークを与える面内波数k||は17.8μm−1となっている。この値を上記した(10)式に代入すると、この波数に対応する微細構造(つまり、二次元格子構造のことである。)を作製するための粒子の粒径Dは、407nmと算出された。
なお、この具体例においては、粒子単層膜を用いたエッチング方法について説明するため、上記(10)式を用いて粒子単層膜を形成する粒子の粒径を算出するようにしているが、粒子単層膜を用いたエッチング方法以外の方法により有機発光ダイオード50を作製する場合には、上記した(10)式あるいは(11)式を用いて格子ピッチPを算出し(なお、格子ピッチPは、(1)式に示す範囲の値である。)、算出した格子ピッチPとなるようにして各種条件を調整して作製すればよい。
上記した(10)式で算出した粒子の粒径Dの値に基づいて、平均粒径が398.7nmで、粒径の変動係数が4.0%であるコロイダルシリカの5.0質量%水分散体(分散液)を作製した。なお、平均粒径および粒子の変動係数は、Malvern Instruments Ltd製のZetasizer Nano−ZSによる粒子動的光散乱法で求めた粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから算出した。
次に、作製した分散液中のコロイダルシリカの表面を疎水化処理するために、当該分散液に濃度1.0質量%のフェニルトリエトキシシランの加水分解物を含む水溶液を加え、約40°で3時間反応させた。この際、フェニルトリエトキシシランの質量がコロイダルシリカ粒子の質量の0.015倍となるように分散液と当該水溶液とを混合した。
そして、反応終了後の分散液に、当該分散液の5倍の体積のメチルイソブチルケトンを加えて撹拌して、疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出した。
こうして得られた濃度1.05質量%の疎水化コロイダルシリカ分散液を粒子単層膜の表面圧を計測する表面圧センサーと、粒子単層膜を液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを備えた水槽(LBトラフ装置)中に貯留された液面(下層液として水を使用し、水温は26.5℃とした。)に滴下速度0.01ml/秒で滴下した。なお、水槽に貯留された下層水には、予め有機発光ダイオード50の基板52として用いるための透明の石英基板(30mm×30mm×1.0mm、両面鏡面研磨処理済)を略鉛直方向に浸漬している。
疎水化コロイダルシリカ分散液を下層水の液面に滴下し始めた時点から、下層水中から液面に向けて、出力100W、周波数1500kHzの条件で超音波を10分間照射することにより、疎水化したコロイダルシリカ粒子が二次元的に最密充填するのを促すとともに、当該分散中の有機溶剤であるメチルイソブチルケトンを揮発させて、当該下層水の液面に粒子単層膜を形成した。
その後、形成した粒子単層膜を可動バリアにより拡散圧が22〜30mNm−1になるまで圧縮し、基板52を3mm/分の速度で引き上げて、基板52の一方の面に当該粒子単層膜を移し取った。なお、基板52の一方の面とは、二次元格子構造を形成しようとする面のことである。
次に、基板52の一方の面上に移し取った粒子単層膜の当該一方の面への固定処理として、粒子単層膜を移し取った基板52の一方の面上にバインダーとして0.15質量%のモノメチルトリメトキシシランの加水分解液を浸透させ、その後、当該加水分解液の余剰分をスピンコーター(3000rpm)で1分間処理して除去した。そして、加水分解液の余剰分を除去した基板52を100℃で10分間加熱してバインダーを反応させ、コロイダルシリカ粒子からなる粒子単層膜が形成された基板52を取得した。
こうして粒子単層膜が形成された基板52を取得すると、次に、当該基板52に対してCHF3ガスによりドライエッチング処理を行った。
このドライエッチング処理の条件は、アンテナパワー1500W、バイアスパワー50〜300W(13.56MHz)、ガス流量50〜200sccmとした。
ドライエッチング処理を行った後の基板52の一方の面をAFMで観察したところ、断面形状が円錐台形形状であり(図6(b)を参照する。)、平面配置は凸部が三角格子状に配列した微細構造が形成されていた(図6(a)を参照する。)。
このようにして、基板52の一方の面に形成された微細構造における凸部の中心間距離p’(格子定数)をAFMにより測定したところ、3回の試験の平均値で、413.5nmであった。
また、AFM像から無作為に選択された25カ所の5μm×5μmの領域における当該微細構造の凸部の平均値を算出し、当該25カ所のそれぞれの平均値をさらに平均することにより求めた当該微細構造における凸部の平均高さhは、45.1nmであった。
さらに、上記した(13)式を用いて算出した結果、配列のずれSは3.7%であった。
さらにまた、平均高さhと中心間距離p’の平均値との比(平均高さh/中心間距離p’)は0.109であった。
その後、微細構造が形成された基板52の一方の面に、陽極導電層54としてIZOを100nmの厚さでスパッタリング法により成膜し、ホール注入層56−1としてHAT−CNを30nmの厚さで蒸着法によって成膜した。
次にホール注入層56−1上に、ホール輸送層56−2としてT400を50nmの厚さで蒸着法によって成膜し、その後、ホール輸送層56−2上にMDP3FLを7%ドープしたADNにより形成された厚さ10nmの発光層56−3aと、C545Tを1%ドープしたAlq3により形成された厚さ2nmの発光層56−3bと、CBPを8.5%ドープしたIr(piq)3により形成された厚さ10nmの発光層56−3cとを蒸着法によって成膜した。
さらに、発光層56−3c上に、E913により形成された厚さ30nmの電子輸送層56−4と、LiFにより形成された厚さ0.8nmの電子注入層56−5と、Alにより形成された150nmの陰極導電層58を蒸着法によって順次成膜して、有機発光ダイオード50を作製した。
なお、蒸着およびスパッタリングの際にマスクを使用することにより、発光エリアは2×2mmに作製した。
次に、図9を参照しながら、本発明による有機発光ダイオードの第4の実施の形態について説明する。
図9には、本発明の第4の実施の形態による有機発光ダイオードの概略構成説明図が示されている。
この図9に示す有機発光ダイオード60に関する説明においては、説明の便宜上、有機発光ダイオード60を構成する各層の高さ方向における上方側の表面を上面と適宜に称し、各層の高さ方向における下方側の表面を下面と適宜に称する。
また、以下の説明においては、本発明を用いるものである限り、必ずしも対象とする有機発光ダイオードの構造および方式を限定するものではない。
図9に示す有機発光ダイオード60は、一般に3波長型の陽極トップエミッション型と称されるタイプの有機発光ダイオードであり、基板62上に陰極導電層64と有機EL層66と陽極導電層68とが順次積層されている。
そして、陰極導電層64と陽極導電層68とには、電源20により電圧を印加することができるようになされている。
この有機発光ダイオード60においては、陰極導電層64と陽極導電層68とに電圧を印加すると、陽極導電層68から有機EL層66中の発光層66−3(後述する。)にホールが注入されるとともに、陰極導電層64から有機EL層66中の発光層66−3(後述する。)に電子が注入され、陽極導電層68側から有機EL層66で発生した光が取り出されるようになる。
なお、本発明による第4の実施の形態の有機発光ダイオード60は、3波長型の陽極トップエミッション型と称される有機発光ダイオードであり、発光層66−3は3つの有機発光材料が層(発光層66−3a、発光層66−3b、発光層66−3cであり、その詳細は後述する。)を形成して構成される。以降、まとめて発光層66−3と説明して差し障りのない場合は、上記3層を発光層66−3として記載する。
陰極導電層64は、電源20の陰極と接続され、金属材料により構成されている。
この金属材料としては、Ag、Agの含有量が10%以上の合金、AlまたはAlの含有量が10%以上の合金からなり、当該合金としては、例えば、上記したMg/Ag=10/90などのマグネシウム合金が挙げられる。
陰極導電層64の厚さとしては、有機EL層からの光を反射して基板62から当該光が取り出されないように十分厚くすることが好ましく、例えば、100〜200nmが好ましい。
また、有機EL層66は、上記した有機発光ダイオード10における有機EL層16と同様に、電源20からホールが注入されるホール注入層66−1と、ホール注入層66−1において注入されたホールを後述する発光層66−3に輸送するとともに、当該発光層66−3からの電子を遮断するホール輸送層66−2と、互いに異なる波長の光を発光する複数の有機発光材料を含有するとともに、ホール輸送層66−2から輸送されたホールと後述する電子輸送層66−4から輸送された電子とが結合して発光する発光層66−3と、後述する電子注入層66−5において注入された電子を発光層66−3に輸送するとともに、当該発光層66−3からのホールを遮断する電子輸送層66−4と、電源20から電子が注入される電子注入層66−5とにより構成されている。
なお、発光層66−3は、所定の波長の光を発光する有機発光材料よりなる発光層66−3aと、発光層66−3aを形成する有機発光材料と異なる波長の光を発光する有機発光材料よりなる発光層66−3bと、発光層66−3a、66−3bを形成する有機発光材料と異なる波長の光を発光する有機発光材料よりなる発光層66−3cとを有して構成されている。そして、この発光層66−3a、66−3b、66−3cはそれぞれが発光することにより、発光層66−3から白色光が発光するように、有機発光材料が選択されている。
そして、有機EL層66は、陰極導電層64上に、電子注入層66−5、電子輸送層66−4、発光層66−3(発光層66−3c、発光層66−3b、発光層66−3a)、ホール輸送層66−2、ホール注入層66−1の順で7層で積層されている。
なお、これらの層は、一層の役割が1つの場合もあるし、2つ以上の役割を兼ねる場合もあり、例えば、電子輸送層66−4と発光層66−3cとを一つの層で兼ねることもできるものである。
つまり、有機EL層66は、少なくとも、有機発光材料を含有する発光層66−3(発光層66−3a、66−3b、66−3c)を含む層であればよく、発光層66−3(発光層66−3a、66−3b、66−3c)のみから構成してもよいが、一般的には、発光層66−3以外の層が含まれるものである。こうした発光層66−3以外の層は、発光層66−3(発光層66−3a、66−3b、66−3c)の機能を損なわない限り、有機材料から構成されるものであっても無機材料から構成されるものであってもよい。
本実施の形態においては、有機EL層66をホール注入層66−1、ホール輸送層66−2、発光層66−3(発光層66−3a、66−3b、66−3c)、電子輸送層66−4、電子注入層66−5の5層から構成されるものとした。これらの層の中で最も重要な層は発光層66−3(発光層66−3a、66−3b、66−3c)であり、例えば、ホール注入層66−1や電子注入層66−5は省略することも可能である。また、電子輸送層66−4は発光層66−3を兼ねることもできる。
ここで、有機EL層66の各層を構成する材料は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
即ち、発光層66−3(つまり、発光層66−3a、66−3b、66−3cである。)を構成する材料としては、有機発光材料が用いられ、こうした有機発光材料としては、例えば、Ir(piq)3、DPAVB、ZnPBO、C545Tなどが挙げられる。
また、蛍光性色素化合物や燐光発光性材料を他の物質(ホスト材料)にドープしたものを用いてもよい。この場合には、ホスト材料としてはホール輸送層66−2を構成する材料や電子輸送層66−4を構成する材料あるいは専用のホスト材料を用いるようにする。
ホール注入層66−1、ホール輸送層66−2ならびに電子輸送層66−4を構成する材料としては、それぞれ有機材料が一般的に用いられる。
ホール注入層66−1を構成する材料としては、例えば、2−TNATAやHAT−CNなどの化合物が挙げられる。
また、ホール輸送層66−2を構成する材料としては、例えば、NPD、CuPc、TPDなどの芳香族アミン化合物などが挙げられる。
さらに、電子輸送層66−4を構成する材料としては、例えば、BND、PBDなどのオキサジオール系化合物、Alqなどの金属錯体系化合物などが挙げられる。
さらにまた、電子注入層66−5を構成する材料としては、例えば、LiFなどが挙げられる。
こうした電子注入層66−5を電子輸送層66−4と陰極導電層64との間に設けると、仕事関数の差を少なくすることができ、陰極導電層64から電子輸送層66−4に電子が移行しやすくなる。
なお、陰極導電層64としてMg/Ag=10/90などのマグネシウム合金を使用すると、電子注入層66−5を設けなくても、電子注入効果を得ることが可能となる。
こうした有機EL層全体の厚さとしては、例えば、150〜500nmが好ましい。
また、陽極導電層68は、電源20の陽極と接続され、上記した有機発光ダイオード10における陽極導電層14や上記した有機発光ダイオード50における陽極導電層54と同様に、可視光を透過する透明導電材料により構成されている。
こうした透明導電材料は、特に限定されず、透明導電材料として公知のものを用いることができる。
具体的には、陽極導電層68に用いる透明導電材料としては、ITO、ZnOあるいは、ZTOなどが挙げられる。
また、こうした陽極導電層68の厚さは、例えば、50〜200nmが好ましい。
また、基板62は、可視光を透過する透明体または可視光を透過しない不透明体が用いられ、基板62を構成する材料としては、無機材料でも有機材料でもよく、それらの組み合わせてあってもよい。
具体的には、基板62を構成する材料として、透明体の無機材料としては、石英ガラス、無アルカリガラス、ソーダライムガラスなどのアルカリガラス、白板ガラスなどの各種ガラス、マイカなどの透明無機鉱物などが挙げられ、不透明体の無機材料としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの金属、各種セラミックスなどが挙げられる。
また、有機材料としては、シクロオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの樹脂フィルム、当該樹脂フィルム中にセルロースナノファイバーなどの微細繊維を混入した繊維強化プラスチック材料などが挙げられる。なお、有機材料についても透明体、不透明体の両方が使用可能である。
この基板62の陰極導電層64が積層される側の表面62a(つまり、基板62の上面である。)には、複数の凸部62bを周期的に二次元に配列した二次元格子構造が設けられている。
このような二次元格子構造は、内部量子効率が低い、あるいは、寿命の短い材料の発光スペクトルのピーク波長に対応した表面プラズモンの波長に合わせて形成される。
そして、この二次元格子構造が形成された基板62上に陰極導電層64、有機EL層66、陽極導電層68が順次積層されることで、各層の表面(つまり、各層の上面であり、基板62が位置する側と反対の面である。)には、基板62の表面62aと同様の複数の凸部による二次元格子構造が形成されることとなる。
また、各層の裏面(つまり、各層の下面であり、基板62が位置する側の面である。)には、基板62の表面62aに形成された構造が反転した構造、即ち、複数の凹部が周期的に配列した構造、つまり、複数の凹部による二次元格子構造が形成されることとなる。
具体的には、陰極導電層64について着目すると、陰極導電層64の表面64a(つまり、陰極導電層64の上面であり、有機EL層66が位置する側の面である。)には、基板62の表面62aに形成された構造と同様な構造、即ち、複数の凸部64bが周期的に二次元に配列した構造、つまり、複数の凸部64bによる二次元格子構造が形成されることとなる。
こうして二次元格子構造が設けられることで、陰極導電層64において励起される表面プラズモンが伝搬光として取り出される。
即ち、発光層66−3(発光層66−3a、66−3b、66−3c)で発光分子から発光する際には、ごく近傍に近接場光が発生するものであるが、この近接場光は、発光層66−3と陰極導電層64との距離が非常に近いため、陰極導電層64の表面64aで伝搬型の表面プラズモンに変換される。
金属表面の伝搬型表面プラズモンは、入射した電磁波(近接場光など)により生じる自由電子の粗密波が表面電磁場を伴うものである。
平坦な金属表面に存在する表面プラズモンの場合、当該表面プラズモンの分散曲線と光(空間伝搬光)の分散曲線とは交差しないため、表面プラズモンのエネルギーを光として取り出すことができない。これに対し、金属表面に格子構造が形成されていると、当該格子構造によって回折された表面プラズモンの分散曲線が空間伝搬光の分散曲線と交差するようになり、表面プラズモンを輻射光として取り出すことができる。
このように、内部量子効率が低い、あるいは寿命の短い材料の発光スペクトルの強度が強められた光を二次元格子構造を形成することで出射させることが可能であるため、内部量子効率が低い、あるいは寿命の短い有機発光材料であっても過度な印加電圧を加える必要がなく、寿命を狭めることなく光取り出し効率を向上させることができる。
こうした二次元格子構造では、例えば、陰極導電層64に着目すると、表面64a(つまり、陰極導電層64の上面である。)に形成された凸部64bが二次元に配列されることにより、一次元の場合(つまり、配列方向が一方向であることであり、例えば、複数の溝が一方向に並んで配置されたような構造である。)よりも光取り出し効率が高くなる。
こうした二次元格子構造の好ましい具体例としては、正方格子構造や三角格子構造などが挙げられ、三角格子構造が特に好ましい。これは、配列方向が多い方が、回折光を得られる条件が多くなり、高効率で表面プラズモンを回折できるためである。
こうした二次元格子構造において三角格子構造を形成するには、粒子が二次元的な六方最密充填配置をとる粒子単層膜を形成し、当該粒子単層膜をエッチングマスクとしてドライエッチングを行うことにより、簡単に取得することができる。なお、こうした粒子単層膜による三角格子構造を形成する方法については、後述する。
凸部64bの高さH4としては、15nm≦H4≦180nmとし、30nm≦H4≦100nmが好ましく、H4<15nmあるいはH4>180nmであるときには、光取り出し効率の向上効果が不十分となってしまう。
上記した凸部64bの高さH4の範囲は、以下の理由に基づく。
即ち、凸部64bの高さH4が15nm未満であると(つまり、H4<15nmのときである。)、二次元格子構造として十分な表面プラズモンの回折波を生成できなくなり、表面プラズモンを輻射光として取り出す効果が低下する。
また、凸部64bの高さH4が180nmを超えると(つまり、H4>180nmのときである。)、表面プラズモンが局在型の性質を持ち始め、伝搬型ではなくなってくるため、輻射光の取り出し効率が低下する。さらに、この場合には、有機発光ダイオード60の陰極導電層64、有機EL層66、陽極導電層68を順次積層する際に、凹凸が急峻であるため陰極導電層64と陽極導電層68とが短絡する可能が高くなってくるため好ましくない。
凸部64bの高さH4は、基板62の表面62aに形成された凸部62bの高さH3と同じとなっているため、凸部62bの高さをAFMにより測定することで間接的に定量することができる。
例えば、まず、二次元格子構造内の無作為に選択された5μm×5μmの領域1カ所についてAFM像を取得し、次に、取得したAFM像の対角線方向に線を引き、この線と交わった凸部62bの最大高さをそれぞれ単独に算出する。その後、算出した凸部62bの高さの平均値を算出する。こうした処理を無作為に選択された合計25カ所の5μm×5μmの領域について同様に実行し、各領域における凸部62bの平均値を算出し、得られた25カ所の領域における平均値をさらに平均した値を凸部62bの高さとする。
この凸部62bの形状は、特に限定されず、例えば、円柱形状、円錐形状、円錐台形状、正弦波形状、ドーム形状あるいは、それらを基本とした派生形状などが挙げられる。
次に、有機発光ダイオード60の製造方法について説明する。この有機発光ダイオード60の製造方法は、特に限定されるものではないが、好ましくは、表面62aに複数の凸部62bが二次元格子構造で形成された基板62の当該表面62a上に、陰極導電層64と、有機EL層66(電子注入層66−5、電子輸送層66−4、発光層66−3(発光層66−3c、66−3b、66−3a)、ホール輸送層66−2、ホール注入層66−1)と、陽極導電層68とを順次積層する。
この場合、陰極導電層64の表面64aに形成された複数の凸部64bによる二次元格子構造は、基板62の表面62aに形成された複数の凸部62bによる二次元格子構造に対応したものとなる。
即ち、陰極導電層64の表面64aに形成された複数の凸部64bにおける隣り合う凸部64b間の中心間距離P5(以下、「隣り合う凸部64b間の中心間距離P5」を、「凸部64bの中心間距離P5」と称することとする。)は、基板62の表面62aに形成された複数の凸部62bにおける隣り合う凸部62b間の中心間距離P6(以下、「隣り合う凸部62b間の中心間距離P6」を、「凸部62bの中心間距離P6」と称することとする。)と一致し、凸部64bの高さH4は凸部62bの高さH3と一致するものとなる。
このため、基板62の表面62aに形成された凸部62bの中心間距離P6および凸部62bの高さH3をそれぞれ測定することで、陰極導電層64の表面64aに形成された凸部64bの中心間距離P5および凸部64bの高さH4を測定することができる。
なお、こうした凸部64bの中心間距離P5は、凸部62bの中心間距離P6をレーザー回折法で測定することにより間接的に測定することができ、また、凸部64bの高さH4は、凸部62bの高さH3をAFMにより測定することにより間接的に測定することができる。
以下、有機発光ダイオード60の製造方法について詳細に説明することとする。
まず、基板62の表面62aに形成された複数の凸部62bによる二次元格子構造の作製方法には、例えば、電子ビームリソグラフィー、機械式切削加工、レーザー加工、二光束干渉露光、縮小露光などを用いることができる。また、原版を先に作製しておけば、ナノインプリント法による微細構造の転写・複製も可能である。
こうした手法のうち、二光束干渉露光およびナノインプリント法以外の手法は、大面積の周期格子構造を作製するのに適さないため、工業的な利用面において面積の制約を受ける。
また、二光束干渉露光は、ある程度の小面積は作製可能であるが、一辺が数cm以上の大面積の場合には、光学セットアップ全体に対する振動、風、熱収縮、膨張、空気の揺らぎ、波長変動などの様々な外乱要因が影響して、均一で正確な周期格子構造を作製することは極めて困難である。
そこで、有機発光ダイオード60における基板62の表面62aに形成された複数の凸部62bによる二次元格子構造の作製方法としては、上記した有機発光ダイオード10に複数の凸部12bを二次元格子構造で形成する際に用いた、粒子単層膜を用いたエッチング方法が好ましい。
なお、この粒子単層膜を用いたエッチング方法については、上記において説明しているため、その詳細な処理内容については省略することとする。
そして、粒子単層膜を用いたエッチング方法により、基板62の表面62aに複数の凸部62bにより二次元格子構造を作製した後には、基板62の表面62a上に、陰極導電層64を積層し、陰極導電層64の表面64a上に電子注入層66−5、電子輸送層66−4、発光層66−3(発光層66−3c、66−3b、66−3a)、ホール輸送層66−2、ホール注入層66−1を順次積層して有機EL層66を形成し、ホール注入層66−1の表面66−1a上に陽極導電層68を積層することで、有機発光ダイオード60を取得することができる。
これらの各層の積層方法は、特に限定されず、一般的な有機発光ダイオードの製造に用いられている公知の技術を利用することができる。
例えば、ホール注入層66−1、ホール輸送層66−2、発光層66−3(発光層66−3a、66−3b、66−3c)、電子輸送層66−4、電子注入層66−5および陰極導電層64はそれぞれ、真空蒸着法によって形成することができる。また、陽極導電層68はスパッタリング法、真空蒸着法などによって形成することができる。
これら各層の厚さは非常に薄いため、上記のようにして各層を順次積層することで、基板62の表面62aにおける複数の凸部62bによる二次元格子構造が陽極導電層68まで反映され、陰極導電層64、有機EL層66および陽極導電層68において、基板62の表面62aに形成された複数の凸部62bによる二次元格子構造に対応した複数の凸部または凹部による二次元格子構造が形成されることとなる。
次に、上記した製造方法に基づいて、有機発光ダイオード60を作製する場合について、具体例を挙げて説明する。
作製する有機発光ダイオード60としては、基板/Ag[膜厚100nm]/LiF[膜厚0.8nm]/E913[膜厚40nm]/CBPにIr(piq)3を8.5%濃度でドープしたもの[膜厚15nm]/Alq3にC545Tを1%濃度でドープしたもの[膜厚3nm]/ADNにMDP3FLを7%濃度でドープしたもの[膜厚30nm]/T400[膜厚40nm]/MoOx(x=1〜3)[膜厚60nm]/IZO[膜厚100nm]とする。
即ち、この有機発光ダイオード60は、石英ガラスにより形成された基板62と、Agにより形成された厚さ100nmの陰極導電層64と、LiFにより形成された厚さ0.8nmの電子注入層66−5と、E913により形成された厚さ40nmの電子輸送層66−4と、CBPを8.5%ドープしたIr(piq)3により形成された厚さ15nmの発光層66−3cと、C545Tを1%ドープしたAlq3により形成された厚さ3nmの発光層66−3bと、MDP3FLを7%ドープしたADNにより形成された厚さ30nmの発光層66−3aと、T400により形成された厚さ40nmのホール輸送層66−2と、MoOx(x=1〜3)により形成された厚さ60nmのホール注入層66−1と、IZOにより形成された厚さ100nmの陽極導電層68とにより構成されている。
そして、内部量子効率および有機発光材料の寿命が他の有機発光材料に劣るため、増強したい発光スペクトルのピーク波長値λ1は470nmとする。
この有機発光ダイオード60を作製するために、まず、基板62の表面62aに複数の凸部62bによる二次元格子構造を作成する際に必要となる粒子単層膜を形成する粒子の粒径を算出する。
即ち、有機発光ダイオード60において、陰極導電層64の厚さを無限大と仮定したときのエネルギー散逸の強度を上記した(7)式、(8)式、(9)式によって求める。
ここでは、陰極導電層64の表面64aに生じる表面プラズモンのエネルギーを伝搬光として取り出すときの粒子単層膜を形成する粒子の粒径を算出することとする。
双極子の位置は陰極導電層64の表面64aから73nmとする。
上記した(7)式および(8)式に代入する数値としては、d+=15nm、d−=15nmとなる。ただし、LiF層は非常に薄いので計算においてはその厚さを「0」とした。
なお、上記した通常の多層薄膜の反射係数を求める式としては、上記した非特許文献を参照する。
そして、上記した(9)式をk||を変数とする関数として計算すると、図11に示すような結果が得られる。
図11において、面内波数の大きい方から1つ目のモード(つまり、ピークOである。)が陰極導電層64の表面64aに生じる表面プラズモンのエネルギー散逸強度である。この表面プラズモンモードへのエネルギー散逸ピークを与える面内波数k||は31.6μm−1となっている。この値を上記した(10)式に代入すると、この波数に対応する微細構造(つまり、二次元格子構造のことである。)を作製するための粒子の粒径Dは、229nmと算出された。
なお、この具体例においては、粒子単層膜を用いたエッチング方法について説明するため、上記(10)式を用いて粒子単層膜を形成する粒子の粒径を算出するようにしているが、粒子単層膜を用いたエッチング方法以外の方法により有機発光ダイオード60を作製する場合には、上記した(10)式あるいは(11)式を用いて格子ピッチPを算出し(なお、格子ピッチPは、(1)式に示す範囲の値である。)、算出した格子ピッチPとなるようにして各種条件を調整して作製すればよい。
上記した(10)式で算出した粒子の粒径Dの値に基づいて、平均粒径が232.0nmで、粒径の変動係数が4.0%であるコロイダルシリカの5.0質量%水分散体(分散液)を作製した。なお、平均粒径および粒子の変動係数は、Malvern Instruments Ltd製のZetasizer Nano−ZSによる粒子動的光散乱法で求めた粒度分布をガウス曲線にフィッティングさせて得られるピークから算出した。
次に、作製した分散液中のコロイダルシリカの表面を疎水化処理するために、当該分散液に濃度1.0質量%のフェニルトリエトキシシランの加水分解物を含む水溶液を加え、約40°で3時間反応させた。この際、フェニルトリエトキシシランの質量がコロイダルシリカ粒子の質量の0.015倍となるように分散液と当該水溶液とを混合した。
そして、反応終了後の分散液に、当該分散液の5倍の体積のメチルイソブチルケトンを加えて撹拌して、疎水化されたコロイダルシリカを油相抽出した。
こうして得られた濃度1.05質量%の疎水化コロイダルシリカ分散液を粒子単層膜の表面圧を計測する表面圧センサーと、粒子単層膜を液面に沿う方向に圧縮する可動バリアとを備えた水槽(LBトラフ装置)中に貯留された液面(下層液として水を使用し、水温は26.5℃とした。)に滴下速度0.01ml/秒で滴下した。なお、水槽に貯留された下層水には、予め有機発光ダイオード60の基板62として用いるための透明の石英基板(30mm×30mm×1.0mm、両面鏡面研磨処理済)を略鉛直方向に浸漬している。
疎水化コロイダルシリカ分散液を下層水の液面に滴下し始めた時点から、下層水中から液面に向けて、出力100W、周波数1500kHzの条件で超音波を10分間照射することにより、疎水化したコロイダルシリカ粒子が二次元的に最密充填するのを促すとともに、当該分散中の有機溶剤であるメチルイソブチルケトンを揮発させて、当該下層水の液面に粒子単層膜を形成した。
その後、形成した粒子単層膜を可動バリアにより拡散圧が22〜30mNm−1になるまで圧縮し、基板62を3mm/分の速度で引き上げて、基板62の一方の面に当該粒子単層膜を移し取った。なお、基板62の一方の面とは、二次元格子構造を形成しようとする面のことである。
次に、基板62の一方の面上に移し取った粒子単層膜の当該一方の面への固定処理として、粒子単層膜を移し取った基板62の一方の面上にバインダーとして0.15質量%のモノメチルトリメトキシシランの加水分解液を浸透させ、その後、当該加水分解液の余剰分をスピンコーター(3000rpm)で1分間処理して除去した。そして、加水分解液の余剰分を除去した基板62を100℃で10分間加熱してバインダーを反応させ、コロイダルシリカ粒子からなる粒子単層膜が形成された基板62を取得した。
こうして粒子単層膜が形成された基板62を取得すると、次に、当該基板62に対してCHF3ガスによりドライエッチング処理を行った。
このドライエッチング処理の条件は、アンテナパワー1500W、バイアスパワー50〜300W(13.56MHz)、ガス流量50〜200sccmとした。
ドライエッチング処理を行った後の基板62の一方の面をAFMで観察したところ、断面形状が円錐台形形状であり(図6(b)を参照する。)、平面配置は凸部が三角格子状に配列した微細構造が形成されていた(図6(a)を参照する。)。
このようにして、基板62の一方の面に形成された微細構造における凸部の中心間距離p’(格子定数)をAFMにより測定したところ、3回の試験の平均値で、226.0nmであった。
また、AFM像から無作為に選択された25カ所の5μm×5μmの領域における当該微細構造の凸部の平均値を算出し、当該25カ所のそれぞれの平均値をさらに平均することにより求めた当該微細構造における凸部の平均高さhは、32.1nmであった。
さらに、上記した(13)式を用いて算出した結果、配列のずれSは2.6%であった。
さらにまた、平均高さhと中心間距離p’の平均値との比(平均高さh/中心間距離p’)は0.142であった。
その後、微細構造が形成された基板62の一方の面に、陰極導電層64としてAgを100nmの厚さで蒸着法により成膜し、電子注入層66−5としてLiFを0.8nmの厚さで蒸着法により成膜した。
次に、電子注入層66−5上に、電子輸送層66−4としてE913を40nmの厚さで蒸着法によって成膜し、その後、電子輸送層66−4上にCBPを8.5%ドープしたIr(piq)3により形成された厚さ15nmの発光層66−3cと、C545Tを1%ドープしたAlq3により形成された厚さ3nmの発光層66−3bと、MDP3FLを7%ドープしたADNにより形成された厚さ30nmの発光層66−3aとを蒸着法によって成膜した。
さらに、発光層66−3a上に、T400により形成された厚さ40nmのホール輸送層66−2と、MoOx(x=1〜3)により形成された厚さ60nmのホール注入層66−1とを蒸着法によって順次成膜し、さらにまた、ホール注入層66−1上に、IZOにより形成された厚さ100nmの陽極導電層68をスパッタリング法により成膜して、有機発光ダイオード60を作製した。
なお、蒸着およびスパッタリングの際にマスクを使用することにより、発光エリアは2×2mmに作製した。
以上において説明したように、本発明による有機発光ダイオード10、70は、基板12の表面12aに複数の凸部12bによる二次元格子構造を形成し、この基板12上に、反射層22、陽極導電層14、有機EL層16、可視光を透過可能に薄層に形成された金属層18−1と導電性を向上させるための透明導電層18−2とにより構成された陰極導電層18を順次積層して構成されており、有機EL層16において発生した光を陰極導電層18側から取り出すようにした陰極トップエミッション型とした。
また、本発明による有機発光ダイオード50は、基板52の表面52aに複数の凸部52bによる二次元格子構造を形成し、この基板52上に、陽極導電層54、有機EL層56、陰極導電層58を順次積層して構成されており、有機EL層56において発光した光を基板52側から取り出すようにしたボトムエミッション型とした。
さらに、本発明による有機発光ダイオード60は、基板62の表面62aに複数の凸部62bによる二次元格子構造を形成し、この基板62上に、陰極導電層64、有機EL層66、陽極導電層68を順次積層して構成されており、有機EL層66において発光した光を陽極導電層68側から取り出すようにした陽極トップエミッション型とした。
そして、有機発光ダイオード10、70における基板12、有機発光ダイオード50における基板52および有機発光ダイオード60における基板62においては、粒子単層膜を用いたエッチング方法により、それぞれの表面に複数の凸部による二次元格子構造を作製し、このとき、粒子単層膜を形成する粒子の粒径は、粒子の粒径と格子ピッチとが等しいことから、上記した(10)式により算出するようにした。
これにより、本発明による有機発光ダイオード10、70においては、表面プラズモンモードに応じて、基板12の表面12aに複数の凸部12bによる二次元格子構造を形成することができ、当該複数の凸部12bにより、反射層22や金属層18−1に複数の凸部や凹部よりなる二次元格子構造を形成することができる。
また、本発明による有機発光ダイオード50においては、表面プラズモンモードに応じて、基板52の表面52aに複数の凸部52bによる二次元格子構造を形成することができ、当該複数の凸部52bにより、陰極導電層58に複数の凸部や凹部よりなる二次元格子構造を形成することができる。
さらに、本発明による有機発光ダイオード60においては、表面プラズモンモードに応じて、基板62の表面62aに複数の凸部62bによる二次元格子構造を形成することができ、当該複数の凸部62bにより、陰極導電層64に複数の凸部や凹部よりなる二次元格子構造を形成することができる。
従って、本発明による有機発光ダイオード10、50、60、70においては、従来の技術による有機発光ダイオードと同様に作製することができる。
さらに、本発明による有機発光ダイオード10、50、60、70においては、光取り出し面から内部量子効率が低い、あるいは、寿命の短い有機発光材料の強度が強められた光が出射するため、最終的に内部量子効率が低い有機発光材料であっても、また、寿命が比較的短い有機発光材料であっても、過度な印加電圧を加えずに、寿命を狭めることなく光取り出し効率を向上させることができる。
そして、こうした有機発光ダイオード10、50、60、70を利用して画像表示装置を作製することにより、高輝度、長寿命、省電力の画像表示装置を作製することができる。
さらに、こうした有機発光ダイオード10、50、60、70を利用して照明装置を作製することにより、高輝度、長寿命、省電力の照明装置を作製することができる。
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(7)に示すように変形するようにしてもよい。
(1)上記した実施の形態においては、陰極導電層18を構成する金属層18−1、陰極導電層58および陰極導電層64を、それぞれAg、Agの含有率が10%以上の合金、AlまたはAlの含有率が10%以上の合金により構成するものとしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、金属層18−1、陰極導電層58および陰極導電層64を、一般的に有機発光ダイオードの陰極導電層として用いられる公知の金属を用いるようにしてもよい。
(2)上記した実施の形態においては、有機EL層16、56、66をそれぞれ、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層により構成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
例えば、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層のうち2つ以上の層の機能を1つの層が兼ね備えるようにしてもよい。
また、発光層は必須であるが、その他の層を省略するようにしてもよい。この場合、最も簡単な構成として、有機EL層を発光層のみから構成するようにしてもよい。
なお、電子注入層を省略して、当該電子注入層の機能を陰極導電層が兼ね備える場合には、陰極導電層に用いられる金属を、例えば、Mg/Ag=10/90などのマグネシウム合金とすればよい。
(3)上記した実施の形態においては、有機発光ダイオード10、70において、金属層18−1の裏面18−1cにおける表面プラズモンについて着目して粒子単層膜を形成する粒子の粒径を決定したが、これに限られるものではないことは勿論であり、金属層18−1の表面18−1a、反射層22における表面プラズモンについて着目して粒子単層膜を形成する粒子の粒径を決定するようにしてもよい。
(4)上記した実施の形態においては、有機発光ダイオード10、70の基板12には、その表面12aに周期的に二次元に配列した複数の凸部12bを形成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、基板12の表面12aに周期的に二次元に配列した複数の凹部を形成するようにしてもよい。
こうして基板12の表面12aに複数の凹部により二次元格子構造を作製することにより、基板12上に反射層22、陽極導電層14、有機EL層16および陰極導電層18を積層して作製した有機発光ダイオード10では、陰極導電層18を形成する金属層18−1の透明導電層18−2と接している面(表面18−1a)に複数の凹部が周期的に二次元に配列した二次元格子構造が形成されることとなる。さらに、金属層18−1の有機EL層16と接している面(裏面18−1c)に複数の凸部が周期的に配列した二次元格子構造が形成されることとなる。
また、有機発光ダイオード50の基板52には、その表面52aに周期的に二次元に配列した複数の凸部52bを形成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、基板52の表面52aに周期的に二次元に配列した複数の凹部を形成するようにしてもよい。
こうして基板52の表面52aに複数の凹部により二次元格子構造を作製することにより、基板52上に陽極導電層54、有機EL層56および陰極導電層58を積層して作製した有機発光ダイオード50では、陰極導電層58の有機EL層56と接している面(裏面58c)に複数の凸部が形成されることとなる。
さらに、有機発光ダイオード60の基板62には、その表面62aに周期的に二次元に配列した複数の凸部62bを形成するようにしたが、これに限られたものではないことは勿論であり、基板62の表面62aに周期的に二次元に配列した複数の凹部を形成するようにしてもよい。
こうして基板62の表面62aに複数の凹部により二次元格子構造を作製することにより、基板62上に陰極導電層64、有機EL層66および陽極導電層68を積層して作製した有機発光ダイオード60では、陰極導電層64の有機EL層66と接している面(表面64a)に複数の凹部が形成されることとなる。
具体的には、基板に凹型の微細構造を作製する手法としては、ナノインプリント法を用いて基板上に塗布された樹脂層に反転型を作製する方法などが利用できる。
また、基板上に作製した粒子マスク(上記した計算式により算出された粒径の粒子により作製された粒子単層膜のことである。)上にCr、Niなどの金属を蒸着した後に粒子を除去し、基板上に残る金属蒸着層(粒子があった場所に穴が空いたメッシュ構造をしている。)をマスクとして基板をドライエッチングし、金属がなかった場所に凹構造を作製する方法などが利用できる。
なお、こうして形成された表面に複数の凹部が周期的に二次元に配列した構造を有する基板を鋳型として用い、この鋳型表面の構造を基板原板に転写することにより、各基板の表面に複数の凹部による二次元格子構造を作製するようにしてもよい。
(5)上記した実施の形態においては、基板上に順次積層された各層において、基板12の表面12aに形成された複数の凸部12bによる二次元格子構造と同等の構造が形成されるものとしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、金属材料により形成される層にのみ二次元格子構造を形成するようにしてもよいし、当該金属材料により形成される層の表面あるいは裏面の一方の面にのみ二次元格子構造を形成するようにしてもよい。
即ち、有機発光ダイオード10、70においては、反射層22(つまり、反射層22の上面および下面である。)および金属層18−1(つまり、金属層18−1の上面および下面である。)にのみ二次元格子構造を形成するようにしてもよいし、反射層22あるいは金属層18−1のいずれか一方にのみ二次元格子構造を形成するようにしてもよい。さらに、反射層22の表面(つまり、反射層22の上面であり、有機EL層16が位置する面である。)あるいは裏面(つまり、反射層の下面であり、基板12が位置する面である。)のいずれか一方の面、もしくは、金属層18−1の表面18−1a(つまり、金属層18−1の上面である。)あるいは裏面18−1c(つまり、金属層18−1の下面である。)のいずれか一方の面にのみ二次元格子構造を形成するようにしてもよい。
また、有機発光ダイオード50においては、陰極導電層58(つまり、陰極導電層58の上面および下面である。)にのみ二次元格子構造を形成するようにしてもよいし、陰極導電層58の表面58a(つまり、陰極導電層58の上面である。)あるいは裏面58c(つまり、陰極導電層58の下面である。)のいずれか一方の面にのみ二次元格子構造を形成するようにしてもよい。
さらに、有機発光ダイオード60においては、陰極導電層64(つまり、陰極導電層64の上面および下面である。)にのみ二次元格子構造を形成するようにしてもよいし、陰極導電層64の表面64a(つまり、陰極導電層64の上面である。)あるいは裏面64c(つまり、陰極導電層64の下面である。)のいずれか一方の面にのみ二次元格子構造を形成するようにしてもよい。
(6)上記した実施の形態においては、異なる波長の光を発光する3つの有機発光材料を積層して発光層を形成し、当該発光層から白色光を発光するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、異なる波長の光を発光する2つの有機発光材料を積層して発光層を形成し、当該発光層から白色光を発光するようにしてもよい。
(7)上記した実施の形態ならびに上記した(1)〜(6)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
「実施例1」は、図4のエネルギー散逸図の特性を有する第1の実施の形態の有機発光ダイオードを上述した方法により作製したものであり、「比較例1」は、各層の隣り合う層と接している面が平らであること(即ち、当該面に複数の凸部あるいは複数の凹部により二次元格子構造を形成していないことである。)以外は、「実施例1」と同様の層構成により作製した有機発光ダイオードである。
具体的には、「実施例1」および「比較例1」としては、石英ガラスにより形成された基板12と、Alにより形成された厚さ100nmの反射層22と、IZOにより形成された厚さ20nmの陽極導電層14と、HAT−CNにより形成された厚さ80nmのホール注入層16−1と、T400により形成された厚さ70nmのホール輸送層16−2と、MDP3FLを7%ドープしたADNにより形成された厚さ40nmの発光層16−3aと、C545Tを1%ドープしたAlq3により形成された厚さ10nmの発光層16−3bと、CBTを8.5%ドープしたIr(piq)3により形成された厚さ20nmの発光層16−3cと、E913により形成された厚さ50nmの電子輸送層16−4と、Alにより形成された厚さ10nmの金属層18−1と、IZOにより形成された厚さ110nmの透明導電層18−2とにより構成されるようにした。
そして、「実施例1」においては、取り出し波長λ(つまり、内部量子効率および有機発光材料の寿命が他の有機発光材料に劣るため、増強したい発光スペクトルのピーク波長値λ1)を630nmとし、基板12の表面12aに形成された複数の凸部の中心間距離Pの平均値を573.7nmとした。
また、「実施例2」は、図5のエネルギー散逸図の特性を有する第2の実施の形態の有機発光ダイオードを上述した方法により作製したものであり、「比較例2」は、各層の隣り合う層と接している面が平らであること(即ち、当該面に複数の凸部あるいは複数の凹部により二次元格子構造を形成していないことである。)以外は、「実施例2」と同様の層構成により作製した有機発光ダイオードである。
具体的には、「実施例2」および「比較例2」としては、石英ガラスにより形成された基板12と、Alにより形成された厚さ100nmの反射層22と、IZOにより形成された厚さ20nmの陽極導電層14と、HAT−CNにより形成された厚さ40nmのホール注入層16−1と、T400により形成された厚さ50nmのホール輸送層16−2と、MDP3FLを7%ドープしたADNにより形成された厚さ20nmの発光層16−3aと、C545Tを1%ドープしたAlq3により形成された厚さ2nmの発光層16−3bと、CBTを8.5%ドープしたIr(piq)3により形成された厚さ10nmの発光層16−3cと、E913により形成された厚さ30nmの電子輸送層16−4と、Alにより形成された厚さ10nmの金属層18−1と、IZOにより形成された厚さ110nmの透明導電層18−2とにより構成されるようにした。
そして、「実施例2」においては、取り出し波長λ(つまり、内部量子効率および有機発光材料の寿命が他の有機発光材料に劣るため、増強したい発光スペクトルのピーク波長値λ1)を470nmとし、基板12の表面12aに形成された複数の凸部の中心間距離Pの平均値を307.6nmとした。
さらに、「実施例3」は、図8のエネルギー散逸図の特性を有する第3の実施の形態の有機発光ダイオードを上述した方法により作製したものであり、「比較例3」は、各層の隣り合う層と接している面が平らであること(即ち、当該面に複数の凸部あるいは複数の凹部により二次元格子構造を形成していないことである。)以外は、「実施例3」と同様の層構成により作製した有機発光ダイオードである。
具体的には、「実施例3」および「比較例3」としては、石英ガラスにより形成された基板52と、IZOにより形成された厚さ100nmの陽極導電層54と、HAT−CNにより形成された厚さ30nmのホール注入層56−1と、T400により形成された厚さ50nmのホール輸送層56−2と、MDP3FLを7%ドープしたADNにより形成された厚さ10nmの発光層56−3aと、C545Tを1%ドープしたAlq3により形成された厚さ2nmの発光層56−3bと、CBPを8.5%ドープしたIr(piq)3により形成された厚さ10nmの発光層56−3cと、E913により形成された厚さ30nmの電子輸送層56−4と、LiFにより形成された厚さ0.8nmの電子注入層56−5と、Alにより形成された厚さ150nmの陰極導電層58とにより構成されるようにした。
そして、「実施例3」においては、取り出し波長λ(つまり、内部量子効率および有機発光材料の寿命が他の有機発光材料に劣るため、増強したい発光スペクトルのピーク波長値λ1)を630nmとし、基板52の表面52aに形成された複数の凸部の中心間距離Pの平均値を413.4nmとした。
さらにまた、「実施例4」は、図11のエネルギー散逸図の特徴を有する第4の実施の形態の有機発光ダイオードを上述した方法により作製したものであり、「比較例4」は、各層の隣り合う層と接している面が平らであること(即ち、当該面に複数の凸部あるいは複数の凹部により二次元格子構造を形成していないことである。)以外は、「実施例4」と同様の層構成により作製した有機発光ダイオードである。
具体的には、[実施例4」および「比較例4」としては、石英ガラスにより形成された基板62と、Agにより形成された厚さ100nmの陰極導電層64と、LiFにより形成された厚さ0.8nmの電子注入層66−5と、E913により形成された厚さ40nmの電子輸送層66−4と、CBPを8.5%ドープしたIr(piq)3により形成された厚さ15nmの発光層66−3cと、C545Tを1%ドープしたAlq3により形成された厚さ3nmの発光層66−3bと、MDP3FLを7%ドープしたADNにより形成された厚さ30nmの発光層66−3aと、T400により形成された厚さ40nmのホール輸送層66−2と、MoOx(x=1〜3)により形成された厚さ60nmのホール注入層66−1と、IZOにより形成された厚さ100nmの陽極導電層68とにより構成されるようにした。
そして、「実施例4」においては、取り出し波長λ(つまり、内部量子効率および有機発光材料の寿命が他の有機発光材料に劣るため、増強したい発光スペクトルのピーク波長値λ1)を470nmとし、基板62の表面62aに形成された複数の凸部の中心間距離Pの平均値を226.0nmとした。
そして、「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、「実施例4」、「比較例1」、「比較例2」、「比較例3」および「比較例4」として作製した有機発光ダイオードについて、14.8mA/cm2の単位電流における電流効率(cd/A)および電力効率(lm/W)を測定した。
その結果、図10に示すように、「実施例1」として作製した有機発光ダイオードは、「比較例1」として作製された有機発光ダイオードに対して、電流効率で1.65倍の向上率を示すとともに電力効率で1.72倍の向上率を示し、発光効率が飛躍的に向上すること示された。
また、「実施例2」として作製した有機発光ダイオードは、「比較例2」として作製された有機発光ダイオードに対して、電流効率で1.47倍の向上率を示すとともに、電力効率で1.68倍の向上率を示し、発光効率が飛躍的に向上することが示された。
また、「実施例3」として作製した有機発光ダイオードは、「比較例3」として作製された有機発光ダイオードに対して、電流効率で2.11倍の向上率を示すとともに電力効率で2.37倍の向上率を示し、発光効率が飛躍的に向上することが示された。
さらに、「実施例4」として作製した有機発光ダイオードは、「比較例4」として作製された有機発光ダイオードに対して、電流効率で1.88倍の向上率を示すとともに電力効率で2.12倍の向上率を示し、発光効率が飛躍的に向上することが示された。