しかしながら、上記構成の車両用前照灯200においては、すれ違いビーム用配光パターン等の所定配光パターン(路面配光)のみを考慮して設計されているため、所定配光パターン(路面配光)を形成するに際して、レンズ体220(前面222)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させることができないという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光源とレンズ体とを組み合わせた構造の車両用前照灯において、所定配光パターン(例えば走行ビーム用配光パターン)を形成することができ、かつ、レンズ体(前面)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させること(すなわち、発光見栄えを改善すること)ができる車両用前照灯を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、光源とレンズ体と光学系とを備えた車両用前照灯において、前記レンズ体は、第1面と、第2面と、第3面と、を含み、前記光源からの光を、所定配光パターンの形成に用いられる第1の光と前記レンズ体が均一に発光しているように視認させるために用いられる第2の光に分割するように構成されており、前記第1面は、前記第1の光が前記レンズ体内部に入射する面であり、前記第2面は、前記レンズ体内部に入射した前記第1の光が出射する面であり、前記第3面は、予め定められた方向からの光を前記第2面から前記レンズ体内部に入射させた場合、当該予め定められた方向からの光が出射する面であり、前記光学系は、前記第2の光の少なくとも一部を、前記予め定められた方向からの光と逆の光路を辿る光として、前記第3面から前記レンズ体内部に入射させる光学系であることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、光源とレンズ体とを組み合わせた構造の車両用前照灯において、所定配光パターン(例えば走行ビーム用配光パターン)を形成することができ、かつ、レンズ体(前面)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させること(すなわち、発光見栄えを改善すること)ができる。これは、光学系の作用により、第2の光の少なくとも一部が、第3面からレンズ体内部に入射し、予め定められた方向からの光と逆の光路を辿って第2面から出射し、予め定められた方向に照射されることによるものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記レンズ体は、前記レンズ体内部に入射した前記第1の光を前記第2面に向けて全反射する第4面をさらに含み、前記第4面は、前記レンズ体内部に入射し、当該第4面で全反射された後、前記第2面から出射する前記第1の光が、前記所定配光パターンの少なくとも一部を形成するように、その面形状が構成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、第4面の作用により、所定配光パターン(例えば走行ビーム用配光パターン)を形成することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記第4面は、前記第3面を含むことを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、レンズ体(前面)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させること(すなわち、発光見栄えを改善すること)ができる。これは、光学系の作用により、第2の光の少なくとも一部が、第3面(第4面の一部)からレンズ体内部に入射し、予め定められた方向からの光と逆の光路を辿って第2面から出射し、予め定められた方向に照射されることによるものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明において、前記光学系は、前記第2の光の少なくとも一部を拡散光に変換して、前記第3面から前記レンズ体内部に入射させる光学系であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、レンズ体(前面)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させること(すなわち、発光見栄えを改善すること)ができる。これは、第2の光の少なくとも一部が、拡散板の作用により拡散光に変換されて、第3面からレンズ体内部に入射し、当該レンズ体内部に入射した拡散光の少なくとも一部が、予め定められた方向からの光と逆の光路を辿って第2面から出射し、予め定められた方向に照射されることによるものである。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記光学系は、前記第2の光の少なくとも一部を前記第3面に向けて反射する第1反射面と、前記第1反射面からの反射光を拡散光に変換する拡散板と、を備え、前記拡散板は、前記拡散光が前記第3面から前記レンズ体内部に入射するように、前記第3面近傍に配置されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、第2の光の少なくとも一部を拡散光に変換して、第3面からレンズ体内部に入射させる光学系を、第1反射面と拡散板とで構成することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記光学系は、前記第2の光の少なくとも一部が入射する入射面と、前記入射面から導入される前記第2の光の少なくとも一部を拡散光として出射する出射面と、を含む導光部材を備え、前記出射面は、前記拡散光が前記第3面から前記レンズ体内部に入射するように、前記第3面近傍に配置されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、第2の光の少なくとも一部を拡散光に変換して、第3面からレンズ体内部に入射させる光学系を、導光部材で構成することができる。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の発明において、前記第1面は、前記光源が対向する前記レンズ体の後端部に、前記光源に向かって凹の凹面として形成されており、前記レンズ体の後端部の一部は、前記第2の光が前記第1面に入射しないようにカットされたカット面を含む形状とされていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、次の利点を生ずる。
第1に、第1の光をレンズ体内部に効率よく入射させることができる。これは、第1の面が、光源に向かって凹の凹面として形成されており、光源を取り囲んでいることによるものである。
第2に、光源からの光を、所定配光パターンの形成に用いられる第1の光とレンズ体が均一に発光しているように視認させるために用いられる第2の光に分割することができる。これは、レンズ体の後端部の一部が、第2の光が第1面に入射しないようにカットされたカット面を含む形状とされていることによるものである。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記第2の光の少なくとも一部を前記カット面に向けて反射する第2反射面を備え、前記カット面は、前記第3面を含み、前記カット面の少なくとも一部は、当該カット面から前記レンズ体内部に入射する前記第2反射面からの反射光を拡散光に変換する面として構成されていることを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、レンズ体(前面)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させること(すなわち、発光見栄えを改善すること)ができる。これは、第2の光の少なくとも一部が、カット面の作用により拡散光に変換されて、当該カット面からレンズ体内部に入射し、当該レンズ体内部に入射した拡散光の少なくとも一部が、予め定められた方向からの光と逆の光路を辿って第2面から出射し、予め定められた方向に照射されることによるものである。
請求項9に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の発明において、前記第1面は、前記光源が対向する前記レンズ体の後端部に、前記光源に向かって凹の凹面として形成されており、前記レンズ体の後端部の一部は、前記第2の光が前記第1面に入射せず、かつ、前記レンズ体内部に入射した前記第1の光の少なくとも一部がカット面に入射するようにカットされた前記カット面を含む形状とされており、前記カット面は、前記第3面を含み、前記カット面の少なくとも一部は、当該カット面に入射する前記第1の光を拡散光に変換する面として構成されていることを特徴とする。
請求項9に記載の発明によれば、次の利点を生ずる。
第1に、第1の光をレンズ体内部に効率よく入射させることができる。これは、第1の面が、光源に向かって凹の凹面として形成されており、光源を取り囲んでいることによるものである。
第2に、光源からの光を、所定配光パターンの形成に用いられる第1の光とレンズ体が均一に発光しているように視認させるために用いられる第2の光に分割することができる。これは、レンズ体の後端部の一部が、第2の光が第1面に入射しないようにカットされたカット面を含む形状とされていることによるものである。
第3に、レンズ体(前面)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させること(すなわち、発光見栄えを改善すること)ができる。これは、第1面からレンズ体内部に入射し、カット面の作用により変換される拡散光の少なくとも一部が、予め定められた方向からの光と逆の光路を辿って第2面から出射し、予め定められた方向に照射されることによるものである。
本発明によれば、光源とレンズ体とを組み合わせた構造の車両用前照灯において、所定配光パターン(例えば走行ビーム用配光パターン)を形成することができ、かつ、レンズ体(前面)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させること(すなわち、発光見栄えを改善すること)ができる車両用前照灯を提供することが可能となる。
以下、本発明の第1実施形態である車両用前照灯について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1実施形態である車両用前照灯10の斜視図、図2は車両用前照灯10を車両前後方向に延びる基準軸AXを含む平面で切断した断面図である。
車両用前照灯10は、走行ビーム用配光パターン(本発明の所定配光パターンに相当)を形成するように構成された車両用前照灯で、図1、図2に示すように、光源12と光源12の前方に配置されたレンズ体14と光学系16等を備えている。
図3は、車両用前照灯10の主な機能(原理)を説明するための図である。
車両用前照灯10の主な機能は、図3に示すように、第1に、一つの光源12からの光を、走行ビーム用配光パターンの形成に用いられる第1の光RayAとレンズ体14(第2面20)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させるために用いられる第2の光RayBに分割すること、第2に、第1の光RayAにより、走行ビーム用配光パターンを形成すること、第3に、第2の光RayBにより、レンズ体14(第2面20)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させること(すなわち、発光見栄えを改善すること)である。
図2に示すように、光源12は、例えば、金属製の基板12a、当該基板12aの表面に実装された白色LED光源12b(又は白色LD光源)等を備えている。白色LED光源12bは、発光面12b1(例えば1mm角)を含んでいる。なお、白色LED光源12bの個数は、1以上であればよい。
光源12(発光面12b1)から放出される光の指向特性はランバーシアンで、I(θ)=I0×cosθで表すことができる。これは、光源12(発光面12b1)が放出する光の広がりを表している。但し、I(θ)は光源12(発光面12b1)の光軸AX12から角度θ傾いた方向の光度を表し、I0は光軸AX12上の光度を表している。光源12(発光面12b1)では、光軸AX12上(θ=0)の光度が最大となる。
光源12は、発光面12b1を前方に向け、光軸AX12が車両前後方向に延びる基準軸AXに一致した状態でレンズ体14の光学設計上の基準点F近傍に配置されている。
図4は、レンズ体14を車両前後方向に延びる基準軸AXを含む平面で切断した断面図である。
図4に示すように、レンズ体14は、第1面18(入射面)と、第2面20(出射面)と、第3面22と、第4面24(側面)と、第1面18が対向する位置に配置された光学設計上の基準点Fと、を含む透光部材(TIRレンズとも称される)で、光源12(正確には基準点F)からの光を、走行ビーム用配光パターンの形成に用いられる第1の光RayAとレンズ体14(第2面20)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させるために用いられる第2の光RayBに分割するように構成されている。レンズ体14(第1面18、第2面20、第4面24等)は、車両前後方向に延びる基準軸AXを回転軸とする回転対称形状のレンズ体として構成されている。レンズ体14は、ポリカーボネイト製であってもよいし、それ以外のアクリル等の透明樹脂製であってもよいし、ガラス製であってもよい。図1、図2中、レンズ体14は、その前端部の上下の一部をカットした形状に構成されているが、カットしない形状に構成されていてもよい。
図5は、レンズ体14の後端部を説明するための図である。
図5に示すように、第1の光RayAとは、光源12の光軸AX12に対して狭角方向に放出される相対強度が強い光(例えばθが0〜75度の範囲の光)のことで、第2の光RayBとは、光源12の光軸AX12に対して広角方向に放出される相対強度が弱い光(例えばθが75〜90度の範囲の光)のことである。
第1面18は、第1の光RayAがレンズ体14内部に入射する面で、例えば、光源12(発光面12b1)が対向するレンズ体14の後端部のうち光源12の光軸AX12を中心とする領域に、光源12に向かって凹の凹面として形成されている。これにより、第1の光RayAをレンズ体14内部に効率よく入射させることができる。これは、第1面18が、光源12に向かって凹の凹面として形成されており、光源12(発光面12b1)を取り囲んでいることによるものである。
図5に示すように、レンズ体14の後端部の一部は、第2の光RayBが第1面18に入射しないように、基礎レンズ体14Aの後端部の一部(図5中点線参照)がカットされたカット面26a、26bを含む形状とされている。このカット量を調整することで、第1の光RayAと第2の光RayBの分割比を所望の分割比とすることができる。図5中、カット面26a、26bは、平面として構成されているが、曲面として構成されていてもよい。
図6は、レンズ体14の基礎となる基礎レンズ体14Aを説明するための図である。基礎レンズ体14Aとは、図6に示すように、光源12(発光面12b1)の前方において当該光源12(発光面12b1)をドーム状に完全に取り囲んだ状態のレンズ体14のことである。
カット面26a、26bの少なくとも一部は、図2、図7に示すように、当該カット面26a、26bからレンズ体14内部に入射する反射面28a(本発明の第2反射面に相当)からの反射光を拡散光に変換する面(例えば、シボ加工又は微細なレンズカット等が施された面)として構成されている。反射面28aは、第2の光RayBの少なくとも一部をカット面26a、26bに向けて反射する反射面で、リフレクタ28に車両前後方向に延びる基準軸AXを回転軸とする回転対称形状の反射面として形成されている。
以上の構成により、光源12からの光を、走行ビーム用配光パターンの形成に用いられる第1の光RayAとレンズ体14(第2面20)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させるために用いられる第2の光RayBに分割することができる。
第2面20は、レンズ体14内部に入射した第1の光RayAが出射する面である。図4中、第2面20は、光源12の光軸AX12に直交する平面として構成されているが、曲面として構成されていてもよい。
第4面24は、図6に示すように、レンズ体14内部に入射した第1部分の光RayAを第2面20に向けて内面反射(全反射)する面で、レンズ体14内部に入射し、当該第4面24で内面反射(全反射)された後、第2面20から出射する第1の光RayAが、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、走行ビーム用配光パターンを形成するように、その面形状が構成されている(例えば自由曲面として構成されている)。
以上の構成により、走行ビーム用配光パターンを形成することができる。
なお、走行ビーム用配光パターンは、レンズ体14内部に入射し、第4面24で内面反射(全反射)された後、第2面20から出射する第1の光RayAと、レンズ体14内部に入射し、第4面24で内面反射(全反射)されることなく第2面20から直接出射する第1の光RayAによって形成される(図6参照)。
第3面22は、予め定められた方向からの光を第2面20からレンズ体14内部に入射させた場合(逆光線追跡した場合)、当該予め定められた方向からの光が内面反射(全反射)することなく出射する面である。
例えば、図4に示すように、予め定められた方向からの光として、車両前後方向に延びる基準軸AXに対して15度の方向からの光Ray15及び45度方向からの光Ray45を第2面20からレンズ体14内部に入射させた場合(逆光線追跡した場合)、当該予め定められた方向からの光Ray15、Ray45は、第4面24の一部24a、24b及びカット面26a、26bから出射する。これら第4面24の一部24a、24b及びカット面26a、26bが第3面22に相当する。
図7は、光学系16周辺の拡大図(断面図)である。
図7に示すように、光学系16は、第2の光RayBの少なくとも一部を拡散光に変換して、第3面22(第4面24の一部24a、24b)からレンズ体14内部に入射させる光学系で、例えば、第2の光RayBの少なくとも一部を第3面22(第4面24の一部24a、24b)に向けて反射する反射面28b(本発明の第1反射面に相当)と、反射面28bからの反射光を拡散光に変換する拡散板30と、を備えている。反射面28bは、リフレクタ28に車両前後方向に延びる基準軸AXを回転軸とする回転対称形状の反射面として形成されている。
拡散板30は、車両前後方向に延びる基準軸AXを回転軸とする回転対称形状の拡散板として構成されている。拡散板30は、ポリカーボネイト製であってもよいし、それ以外のアクリル等の透明樹脂製であってもよいし、ガラス製であってもよい。
拡散板30は、拡散光が第3面22(第4面24の一部24a、24b)からレンズ体14内部に入射するように、第3面22(第4面24の一部24a、24b)近傍に配置されている。拡散光は、第3面22(第4面24の一部24a、24b)上の様々な位置に様々な角度で入射する。
なお、仮に、拡散板30と第4面24の一部24a、24bとが接触していると、第1の光RayAがその接触箇所において全反射の条件を満たさなくなる(拡散板30の屈折率がレンズ体14の屈折率より大きい場合)。これを防止するため、拡散板30は、第4面24の一部24a、24bから若干離れた位置に配置されている(図2参照)。例えば、図8に示すように、拡散板30の内側面に凸部30aを設け、レンズ体14に凸部30aが挿入される凹部14aを設け、両者を嵌合させることで、拡散板30を、第4面24の一部24a、24bから若干離れた位置に配置することができる。なお、これとは逆に、拡散板30の内側面に凹部を設け、レンズ体14に凹部に挿入される凸部を設け、両者を嵌合させることで、拡散板30を、第4面24の一部24a、24bから若干離れた位置に配置することもできる。
以上の構成により、レンズ体14(第2面20)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させること(すなわち、発光見栄えを改善すること)ができる。
これは、第2の光RayBの少なくとも一部が、拡散板30の作用により拡散光に変換されて、第3面22(第4面24の一部24a、24b)からレンズ体14内部に入射し(図7参照)、当該レンズ体14内部に入射した拡散光の少なくとも一部が、予め定められた方向からの光と逆の光路を辿って第2面20から出射し、予め定められた方向に照射される(図3参照)ことによるものである。
また、第2の光RayBの少なくとも一部が、カット面26a、26bの作用により拡散光に変換されて、当該カット面26a、26bからレンズ体14内部に入射し(図7参照)、当該レンズ体14内部に入射した拡散光の少なくとも一部が、予め定められた方向からの光と逆の光路を辿って第2面20から出射し、予め定められた方向に照射されることによるものである。
次に、上記構成の車両用前照灯10の効果を確認するために行ったシミュレーション結果について説明する。
図9(a)は、比較例の車両用前照灯(車両用前照灯10から光学系16を省略した車両用前照灯)のシミュレーション結果を表す図で、車両前後方向に延びる基準軸AXを含む水平面に対して上30度、基準軸AXを含む鉛直面に対して右30度の方向から、比較例の車両用前照灯を観測した図である。図9(a)において、レンズ体14の第2面20は上下左右0.2[mm]ピッチで複数のセルに分割されている。シミュレーションでは、複数のセルのうち比較例の車両用前照灯からの光線(光線の直径0.1[mm])が透過する本数が予め定められたしきい値より多いセル(すなわち光度が高い領域)を算出した。図9(a)に描かれた各四角は、その算出したセル(すなわち光度が高い領域)を表している。
図9(b)は、本実施形態の車両用前照灯10のシミュレーション結果を表す図で、車両前後方向に延びる基準軸AXを含む水平面に対して上30度、基準軸AXを含む鉛直面に対して右30度の方向から、本実施形態の車両用前照灯10を観測した図である。図9(b)において、レンズ体14の第2面20は上下左右0.2[mm]ピッチで複数のセルに分割されている。シミュレーションでは、複数のセルのうち本実施形態の車両用前照灯10からの光線(光線の直径0.1[mm])が透過する本数が予め定められたしきい値より多いセル(すなわち光度が高い領域)を算出した。図9(b)に描かれた各四角は、その算出したセル(すなわち光度が高い領域)を表している。
図9(a)、図9(b)を参照すると、本実施形態の車両用前照灯10は、比較例の車両用前照灯と比べ、発光点(光線が透過する本数が予め定められたしきい値より多いセル)の数が約2倍多く、かつ、広域に分散しており、レンズ体14(第2面20)がより均一に発光しているように視認させることができること(すなわち、均一性が向上していること)が分かる。
図10中上段は、比較例の車両用前照灯(車両用前照灯10から光学系16を省略した車両用前照灯)の別のシミュレーション結果を表す図で、各観測方向に設定されたスクリーンS1〜S3を表している。例えば、スクリーンS1は、車両前後方向に延びる基準軸AXを含む水平面に対して上15度、基準軸AXを含む鉛直面に対して右15度の方向に設定されている。各スクリーンS1〜S3は上下左右0.2[mm]ピッチで複数のセルに分割されている。シミュレーションでは、複数のセルのうち比較例の車両用前照灯からの光線(光線の直径0.1[mm])が透過する本数が予め定められたしきい値より多いセル(すなわち光度が高い領域)を算出した。各スクリーンS1〜S3に描かれた各四角は、その算出したセル(すなわち光度が高い領域)を表している。
図10中下段は、本実施形態の車両用前照灯10の別のシミュレーション結果を表す図で、各観測方向に設定されたスクリーンS4〜S6を表している。例えば、スクリーンS4は、車両前後方向に延びる基準軸AXを含む水平面に対して上15度、基準軸AXを含む鉛直面に対して右15度の方向に設定されている。各スクリーンS4〜S6は上下左右0.2[mm]ピッチで複数のセルに分割されている。シミュレーションでは、複数のセルのうち本実施形態の車両用前照灯10からの光線(光線の直径0.1[mm])が透過する本数が予め定められたしきい値より多いセル(すなわち光度が高い領域)を算出した。各スクリーンS4〜S6に描かれた各四角は、その算出したセル(すなわち光度が高い領域)を表している。
図10を参照すると、本実施形態の車両用前照灯10は、比較例の車両用前照灯と比べ、いずれの観測方向においても発光点(光線が透過する本数が予め定められたしきい値より多いセル)の数が多く、かつ、広域に分散しており、レンズ体14(第2面20)がより均一に発光しているように視認させることができること(すなわち、均一性が向上していること)が分かる。
以上説明したように、本実施形態の車両用前照灯10によれば、光源12とレンズ体14とを組み合わせた構造の車両用前照灯において、所定配光パターン(例えば走行ビーム用配光パターン)を形成することができ、かつ、レンズ体14(第2面20、すなわち前面)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させること(すなわち、発光見栄えを改善すること)ができる。
所定配光パターン(例えば走行ビーム用配光パターン)を形成することができるのは、第4面24が、当該第4面24で内面反射(全反射)された後、第2面20から出射する第1の光RayAが走行ビーム用配光パターンを形成するように、その面形状が構成されていることによるものである。
レンズ体14(第2面20、すなわち前面)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させることができるのは、第2の光RayBの少なくとも一部が、拡散板30の作用により拡散光に変換されて、第3面22(第4面24の一部24a、24b)からレンズ体14内部に入射し、当該レンズ体14内部に入射した拡散光の少なくとも一部が、予め定められた方向からの光と逆の光路を辿って第2面20から出射し、予め定められた方向に照射されることによるものである。また、第2の光RayBの少なくとも一部が、カット面26a、26bの作用により拡散光に変換されて、当該カット面26a、26bからレンズ体14内部に入射し、当該レンズ体14内部に入射した拡散光の少なくとも一部が、予め定められた方向からの光と逆の光路を辿って第2面20から出射し、予め定められた方向に照射されることによるものである。
なお、シミュレーションの結果、上記のように、光源12からの光を、第1の光RayAと第2の光RayBに分割しても、走行ビーム用配光パターンに影響がない(又はほとんど影響がない)ことが判明している。
次に、本発明の第2実施形態である車両用前照灯10Aについて説明する。
図11は本発明の第2実施形態の車両用前照灯10を車両前後方向に延びる基準軸AXを含む平面で切断した断面図、図12は導光部材32周辺の拡大図(断面図)である。
本実施形態の車両用前照灯10Aと上記実施形態の車両用前照灯10とを対比すると、次の点が相違する。
第1に、第2の光RayBの少なくとも一部を拡散光に変換して、第3面22(第4面24の一部24a、24b)からレンズ体14内部に入射させる光学系16が、上記実施形態においては、図7に示すように、反射面28bと拡散板30とで構成されていたのに対して、本実施形態においては、図11に示すように、導光部材32で構成されている点。
第2に、上記実施形態においては、図7に示すように、反射面28aを備えていたのに対して、本実施形態においては、反射面28aを備えていない点。
第3に、上記実施形態においては、図5に示すように、レンズ体14の後端部の一部が、第2の光RayBが第1面18に入射しないように、基礎レンズ体14Aの後端部の一部(図5中点線参照)がカットされたカット面26a、26bを含む形状とされていたのに対して、本実施形態においては、図12に示すように、レンズ体14の後端部の一部が、第2の光RayBが第1面18に入射せず、かつ、レンズ体14内部に入射した第1の光RayAの少なくとも一部がカット面26cに入射するように、基礎レンズ体14Aの後端部の一部がカットされたカット面26cを含む形状とされている点。
それ以外、上記実施形態の車両用前照灯10と同様の構成である。以下、上記実施形態の車両用前照灯10との相違点を中心に説明し、上記実施形態の車両用前照灯10と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態においては、図11、図12に示すように、光学系16は、第2の光RayBの少なくとも一部が入射する入射面32aと、入射面32aから導入される第2の光RayBの少なくとも一部を拡散光として出射する出射面32bと、入射面32aから導入される第2の光RayBを出射面32bに向けて内面反射(全反射)する反射面32cと、を含む導光部材32を備えている。出射面32bは、当該出射面32bから出射する第2の光RayBを拡散光に変換する面(例えば、シボ加工又は微細なレンズカット等が施された面)として構成されている。出射面32bは、拡散光が第3面22(第4面24の一部24a、24b)からレンズ体14内部に入射するように、第3面22(第4面24の一部24a、24b)近傍に第4面24に沿って階段状に複数配置されている。拡散光は、第3面22(第4面24の一部24a、24b)上の様々な位置に様々な角度で入射する。
導光部材32は、車両前後方向に延びる基準軸AXを回転軸とする回転対称形状の導光部材として構成されている。導光部材32は、ポリカーボネイト製であってもよいし、それ以外のアクリル等の透明樹脂製であってもよいし、ガラス製であってもよい。
なお、図8を用いて説明したのと同様、導光部材32の内側面に凸部を設け、レンズ体14に凸部が挿入される凹部を設け、両者を嵌合させることで、導光部材32を、第3面22(第4面24の一部24a、24b)から若干離れた位置に配置することができる。なお、これとは逆に、導光部材32の内側面に凹部を設け、レンズ体14に凹部に挿入される凸部を設け、両者を嵌合させることで、導光部材32を、第4面24の一部24a、24bから若干離れた位置に配置することもできる。
図12に示すように、レンズ体14の後端部の一部は、第2の光RayBが第1面18に入射せず、かつ、レンズ体14内部に入射した第1の光RayAの少なくとも一部がカット面26cに入射するように、基礎レンズ体14Aの後端部の一部がカットされたカット面26cを含む形状とされている。カット面26cの少なくとも一部は、当該カット面26cに入射する第1の光RayAを拡散光に変換する面(例えば、シボ加工又は微細なレンズカット等が施された面)として構成されている。
以上の構成により、レンズ体14(第2面20)が均一(又は略均一)に発光しているように視認させること(すなわち、発光見栄えを改善すること)ができる。
これは、第2の光RayBの少なくとも一部が、導光部材32(出射面32b)の作用により拡散光に変換されて、第3面22(第4面24の一部24a、24b)からレンズ体14内部に入射し(図12参照)、当該レンズ体14内部に入射した拡散光の少なくとも一部が、予め定められた方向からの光と逆の光路を辿って第2面20から出射し、予め定められた方向に照射される(図3参照)ことによるものである。
また、第1面18からレンズ体14内部に入射し、カット面26cの作用により変換される拡散光(図12参照)の少なくとも一部が、予め定められた方向からの光と逆の光路を辿って第2面20から出射し、予め定められた方向に照射されることによるものである。
以上説明したように、本実施形態の車両用前照灯10Aによっても、上記実施形態の車両用前照灯10と同様の効果を奏することができる。
以上、本発明を、走行ビーム用配光パターンを形成するように構成された車両用前照灯に適用した例を示したが、これに限らず、すれ違いビーム用配光パターンを形成するように構成された車両用前照灯にも適用することができることは勿論である。
また、本発明を、図2等に示すレンズ体14に適用した例を示したが、これに限らず、他の各種のレンズ体にも適用することができることは無論である。
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。