図1は、監視システムの一例を示す構成図である。監視システムは、複数の監視カメラ(撮影装置)2と、映像処理装置1と、映像保管装置3とを含む。複数の監視カメラ2は、複数の区域にそれぞれ配置され、当該区域において映像を撮影する。
図2は、監視カメラ2の配置例を示す地図である。本例において、各監視カメラ2は、通常、特定の人物しか立ち入りが許可されていない場所(例えばサーバ室)に設置されているが、これに限定されない。なお、図2に示されたマップ情報は、後述するように、映像処理装置1内に予め保持されている。
図2において、実線の枠A〜Dの内側は、監視カメラ2が配置された区域、つまり撮影の対象区域(以下、「撮影区域」と表記)をそれぞれ示す。また、点線の枠αの内側は、監視カメラ2が配置されていない区域、つまり撮影の非対象区域(以下、「非撮影区域」と表記)を示す。なお、非撮影区域αは、監視カメラ2が配置されていても、例えば故障などの理由で撮影が行われていない区域であってもよい。
図2に示された場所の全体の平面サイズは、一例として、6(m)×8(m)とする。撮影区域A,Bは、x方向(x軸参照)に延びる通路L1の端部に存在し、非撮影区域αは、通路L1と、y方向(y軸参照)に延びる通路L3との交差点を含む区域に存在する。また、撮影区域Cは、通路L3と、x方向に延びる通路L2と、との交差点を含む区域に存在し、撮影区域Dは、通路L2における、撮影区域Cに隣接する区域に存在する。
なお、以降の説明において、図2に示された場所内の位置は、撮影区域Aの角を原点とするx軸及びy軸に従って示される。また、角度θは、x軸の方向を0°として示される。
各監視カメラ2は、LAN(Local Area Network)などのネットワークNWを介して、各区域A〜Dにおいて撮影した映像のデータを、映像処理装置1に送信する。なお、本実施例では、映像の被写体として、人間(人物)を挙げるが、これに限定されず、犬や猫などの他の動物を被写体としてもよい。
映像処理装置1は、コンピュータ装置であり、各監視カメラ2から受信した映像を解析し、被写体である人物の移動経路に応じて、映像の画質を調整して、映像保管装置3に映像データを出力する。映像処理装置1は、後述するように、被写体の移動元の区域をマップ情報に基づいて特定し、特定した区域が撮影区域である場合、当該被写体が映った映像を、特定した区域が非撮影区域である場合より低い画質で、映像保管装置3に記録する。これにより、映像の記録量が低減される。なお、以下に述べる実施例では、映像の画質の示準として、解像度を挙げるが、これに限定されず、フレームレートであってもよい。
映像保管装置3は、例えば、映像データを保管するストレージ装置である。映像保管装置3は、映像処理装置1から入力された映像データを、ハードディスクドライブ(HDD: Hard Disk Drive)などに書き込むことにより、映像を保管する。また、映像保管装置3に保管された映像は、例えば事件などが発生した場合、再生されることにより、不審者などの追跡に寄与する。
このように、本例の監視システムは、撮影区域A〜Dにおいて複数の監視カメラ2により撮影した映像を、人物の移動経路に応じた画質で保管する。これにより、不審者の追跡などに必要な画質を維持しつつ、効果的に映像の記録量が低減される。
次に、映像処理装置1の構成を説明する。図3は、実施例に係る映像処理装置1の構成図である。
映像処理装置1は、例えばサーバ装置などのコンピュータ装置である。映像処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、ROM(Read Only Memory)11、RAM(Random Access Memory)12、HDD13、通信処理部14、可搬型記憶媒体用ドライブ15、入力処理部16、及び画像処理部17などを備えている。
CPU10は、演算処理手段であり、映像処理プログラムに従って、後述する映像処理方法を実行する。CPU10は、各部11〜17とバス18を介して接続されている。なお、映像処理装置1は、ソフトウェアにより動作するものに限定されず、CPU10に代えて、特定用途向け集積回路などのハードウェアが用いられてもよい。
RAM12は、CPU10のワーキングメモリとして用いられる。また、ROM11及びHDD13は、CPU10を動作させる映像処理プログラムなどを記憶する記憶手段として用いられる。通信処理部14は、例えばネットワークカードであり、LANなどのネットワークを介して、監視カメラ2や映像保管装置3などの外部装置と通信を行う通信手段である。
可搬型記憶媒体用ドライブ15は、可搬型記憶媒体150に対して、情報の書き込みや情報の読み出しを行う装置である。可搬型記憶媒体150の例としては、USBメモリ(USB: Universal Serial Bus)、CD−R(Compact Disc Recordable)、及びメモリカードなどが挙げられる。なお、映像処理プログラムは、可搬型記憶媒体150に格納されてもよい。
映像処理装置1は、情報の入力操作を行うための入力デバイス160、及び、画像を表示するためのディスプレイ170を、さらに備える。入力デバイス160は、キーボード及びマウスなどの入力手段であり、入力された情報は、入力処理部16を介してCPU10に出力される。ディスプレイ170は、液晶ディスプレイなどの画像表示手段であり、表示される画像データは、CPU10から画像処理部17を介してディスプレイに出力される。なお、入力デバイス160及びディスプレイ170に代えて、これらの機能を備えるタッチパネルなどのデバイスを用いることもできる。
CPU10は、ROM11、またはHDD13などに格納されているプログラム、または可搬型記憶媒体用ドライブ15が可搬型記憶媒体150から読み取ったプログラムを実行する。このプログラムには、OS(Operating System)だけでなく、上記の映像処理プログラムも含まれる。なお、プログラムは、通信処理部14を介してダウンロードされたものであってもよい。
CPU10は、映像処理プログラムを実行すると、複数の機能が形成される。図4は、映像処理装置1の機能の一例を示す構成図である。より具体的には、図4は、CPU10に形成される機能及びHDD13の格納情報の一例を示す。
CPU10は、映像入力処理部(取得部)100と、解析処理部101と、移動先区域特定低処理部102と、新規登録検出部103と、移動元区域特定処理部(特定処理部)104と、記録処理部105と、類似判定処理部106とを有する。記録処理部105は、解像度決定処理部105a及び出力処理部105bを含む。
また、HDD(記憶部)13は、映像データ130と、撮影区域内人物データベース(DB: Data Base)131と、非撮影区域内人物データベース(DB)132と、解像度設定テーブル133と、マップデータベース(DB)(マップ情報)134とを記憶する。
各部の機能の概要を述べると、映像入力処理部100は、監視カメラ2が撮影区域A〜Dにおいて撮影した映像(映像データ130)を取得する。解析処理部101、移動先区域特定低処理部102、新規登録検出部103、及び移動元区域特定処理部104は、マップDB134、撮影区域内人物DB131、及び非撮影区域内人物DB132を用いて、被写体である人物の移動経路を解析する。
解像度決定処理部105aは、移動経路に応じて人物ごとに、当該人物の映像の解像度を決定し、解像度設定テーブル133に設定する。出力処理部105bは、映像データ130を、解像度設定テーブル133に従った解像度に変換して、映像保管装置3に出力することで、映像を記録する。
次に、3人の人物の移動経路を例に挙げて、上記構成による映像処理方法を説明する。図5は、人物の移動経路の例を示す地図である。
図5において、符号P,Q,Rは、人物X,Y,Zの移動経路(実線、破線、及び一点鎖線により区別される)をそれぞれ表す。また、符号P1〜P4,Q1〜Q4,R1〜R4は、人物X,Y,Zがそれぞれ撮影区域A〜Dに進入した位置及び当該区域から退出した位置を示す。符号P1〜P4,Q1〜Q4,R1〜R4には、当該進入時刻及び退出時刻が付記されている。
人物Xは、時刻9:20:00に撮影区域Aに進入し(符号P1参照)、時刻9:20:10に撮影区域Aから退出して(符号P2参照)、非撮影区域αに進入する。そして、人物Xは、時刻9:20:30に撮影区域Bに進入し(符号P3参照)、時刻9:20:40に撮影区域Aから退出する(符号P4参照)。
人物Yは、時刻9:20:15に撮影区域Bに進入し(符号Q1参照)、時刻9:20:20に撮影区域Bから退出して(符号Q2参照)、非撮影区域αに進入する。そして、人物Yは、時刻9:20:35に撮影区域Cに進入し(符号Q3参照)、時刻9:20:40に撮影区域Aから退出する(符号Q4参照)。
このように、人物X,Yは、共通の時間帯(9:20:20〜9:20:30)に、同一の非撮影区域αに存在する。したがって、映像による人物X,Yの追跡を考慮すると、人物X,Yが、互いに類似する場合、非撮影区域αを通り抜けて、再び撮影区域B,Cに出現したときに、各々の区別が困難となる。
そこで、映像処理装置1は、人物X,Yの映像を、人物X,Yの区別が可能な最低の解像度で記録する。より具体的には、映像処理装置1は、一例として、人物X,Yの服装の模様Xa,Yaの類似の度合いを類似判定処理部106により判定し、類似の度合いが一定値より大きくなるまで、当該映像の解像度を上げ、映像を記録する。類似の度合い(後述する類似度)は、類似性の指標であり、対象物同士が類似するほど、高い値を示す。なお、上述した人物X,Yの移動経路の例を、以降の説明において、単に「例1」と表記する。
一方、人物Zは、時刻9:10:00に撮影区域Dに進入し(符号R1参照)、時刻9:10:10に撮影区域Dから退出する(符号R2参照)。そして、人物Zは、時刻9:10:11に撮影区域Cに進入し(符号R3参照)、時刻9:10:17に撮影区域Cから退出する(符号R4参照)。なお、映像処理装置1は、後述する登録処理において、人物X,Y,Zに、人物ID001,002,000をそれぞれ付与することにより、人物を区別する。
このように、人物Zは、非撮影区域αを通過することなく、単独で撮影区域Dから撮影区域Cに移動する。したがって、映像による人物Zの追跡は、人物X,Yの追跡より容易である。
そこで、映像処理装置1は、人物Zの映像を、人物X,Yの映像より低い解像度で記録する。なお、この人物Zの移動経路の例を、以降の説明において、単に「例2」と表記する。
映像処理装置1は、上記の例1と例2の場合を区別するため、映像に映った人物X,Y,Zの移動経路を当該映像から特定し、人物X,Y,Zのデータを撮影区域内人物DB131または非撮影区域内人物DB132に登録する。以下に、図4の構成に基づいて、処理の詳細を述べる。
図6は、人物データの登録処理の一例を示すフローチャートである。まず、映像入力処理部100は、各監視カメラ2から通信処理部14を介して入力された映像データを、フレーム単位の画像データに変換する(ステップSt1)。つまり、映像入力処理部100は、撮影区域A〜Dにおいて撮影された映像を取得する。次に、映像入力処理部100は、変換後の映像データ130をHDD13に書き込む(ステップSt2)
図7には、映像データ130の一例が示されている。映像データ130は、撮影時刻(「時刻」参照)と、当該撮影時刻における映像の一コマの画像(1フレーム)とを含む。
図7の映像データ130は、例2について、撮影区域Aにおいて撮影された人物Zの各画像を示す。この映像データ130によると、人物Zが、時刻9:10:00に出現し、時刻9:10:10に撮影区域Aから退出する様子がわかる。
次に、解析処理部101は、映像データ130を解析することにより、映像内の人物の検出の有無を判定する(ステップSt3)。つまり、解析処理部101は、映像に、人物が映っているか否かを判定する。なお、人物の検出手段としては、特開2005−15759号公報、または「追跡対象と周辺領域の関係性を利用した協調的な物体追跡」(山下隆義など、画像の認識・理解のシンポジウム(MIRU2011)、pp.56-63、2011)などに記載されたものが挙げられる。
解析処理部101は、人物が検出されない場合(ステップSt3のNo)、後述するステップSt6の処理を行う。
また、人物が検出された場合(ステップSt3のYes)、解析処理部101は、映像データ130を解析することにより、当該人物の追跡処理を行う(ステップSt4)。このとき、解析処理部101は、映像データ130の画像から人物の特徴を認識し、当該特徴に基づいて、人物X,Y,Zの時刻ごとの位置及び移動方向を検出する。解析処理部101は、追跡処理の結果に基づいて、撮影区域内人物DB131を更新する(ステップSt5)。
図8は、撮影区域内人物データベースの登録内容の一例が示されている。図8は、例2における人物Zが登録された撮影区域内人物データベースDB131を示す。なお、図8は、撮影区域内人物データベースDB131を、上下二段に分けて示す。
「項目No.」は、登録順に従って付与される番号である。「人物ID」は、人物ごとの識別番号である。人物Zの場合、人物IDは、「000」となる。
「区域ID」は、人物が存在する撮影区域の識別番号であり、本例では、図2に示された各区域の符号(A〜D)を区域IDとする。例2において、人物Zは、まず、撮影区域Dに出現するため、項目No.1の区域IDは「D」を示す。人物Zは、その後、撮影区域Cに出現するため、項目No.2の区域IDは「C」を示す。
「出現時刻」は、人物が当該区域に出現した時刻を示す。項目No.1の出現時刻は、人物Zが撮影区域Dに出現した時刻(9:10:00)を示し、項目No.2の出現時刻は、人物Zが撮影区域Cに出現した時刻(9:10:11)を示す。
「退出時刻」は、人物が当該区域から退出した時刻を示す。項目No.1の退出時刻は、人物Zが撮影区域Dから退出した時刻(9:10:10)を示し、項目No.2の退出時刻は、人物Zが撮影区域Cから退出した時刻(9:10:17)を示す。退出時刻は、後述するステップSt7において更新される。
「特徴量」は、人物の追跡に使用されるパラメータ(指標)を示す。本例では、特徴量として、人物の「色」、「身長」、及び「移動速度」を挙げる。「色」は、画像内の人物(例えば服装)から得られた色相、明度、及び彩度の各数値で表される。「身長」は、画像内の人物のサイズから算出される。「移動速度」は、例えば、当該画像を、直前の時刻の画像と比較することにより、人物の移動距離を得ることにより算出される。
「移動経路情報」は、映像データ130の各時刻の画像から得られる人物の位置及び移動方向などを示す。ステップSt4の処理において、解析処理部101は、時刻ごとの画像(図7参照)から「移動経路情報」を取得するたびに、取得した情報を各欄「1」,「2」,・・・,「10」に順次に記録する。
「移動経路情報」は、「時刻」、「位置」、「移動方向」、及び「画像上の位置」を含む。「時刻」は、当該画像の時刻であり、図7に示される「時刻」(撮影時刻)に対応する。「位置」は、図2中のx軸及びy軸に基づいて規定され、人物の「画像上の位置」から特定される。ここで、「画像上の位置」は、人物が映る画像の座標の範囲である。「移動方向」は、図2中の角度θにより規定され、人物の顔の向き、または直前の時刻の画像に映った人物の位置との関係から特定される。
また、解析処理部101は、「時刻」、「位置」、「移動方向」、及び「画像上の位置」を特定するため、上述した「特徴量」を用いる。このようにして、人物の追跡処理が行われる。なお、より具体的な人物の追跡手段としては、上記の特開2005−15759号公報、または「追跡対象と周辺領域の関係性を利用した協調的な物体追跡」などに記載されたものが挙げられる。
「解像度指定値」(K)は、後述するように、解像度決定処理部105aにより決定された解像度を示す。本実施例において、解像度は、「低解像度」(K=1)、「中解像度」(K=2)、及び「高解像度」(K=3)として取り扱われる。なお、「解像度指定値」は、初期値として、「低解像度」(K=1)に設定されている。また、解像度の決定手法については後述する。
また、図9には、撮影区域内人物データベースDB131の登録内容の他例が示されている。図9は、例1における人物X,Yが登録された撮影区域内人物データベースDB131を示す。なお、図9は、撮影区域内人物データベースDB131を、上下二段に分けて示す。
項目No.1は、撮影区域A内の人物Xの登録情報であり、項目No.2は、撮影区域B内の人物Yの登録情報である。また、項目No.3は、撮影区域B内の人物Xの登録情報であり、項目No.4は、撮影区域C内の人物Yの登録情報である。
再び図6を参照すると、解析処理部101は、撮影区域から退出した人物の有無を判定する(ステップSt6)。このとき、解析処理部101は、直前の時刻の画像において存在し、当該画像(最新の画像)には存在しない人物を検出したとき、退出した人物がいると判断する。
退出した人物がいない場合(ステップSt6のNo)、後述するステップSt11の処理が行われる。また、退出した人物がいる場合ステップSt6のYes)、解析処理部101は、撮影区域内人物DB131の退出時刻を書き込む(ステップSt7)。
次に、移動先区域特定処理部102は、マップDB134に基づいて、退出した人物の移動先の区域を特定する(ステップSt8)。マップDB134は、図2に示された地図を数値情報としたものである。なお、移動先の区域とは、時系列上の直後の区域を指す。
図10には、マップDB134の一例が示されている。マップDB134は、「区域ID」と、「監視有無」情報と、「位置」情報と、「接続区域」情報とを含み、図2の撮影区域A〜D及び非撮影区域αを示す。「区域ID」は、各区域の識別情報であり、図2に示された各区域の符号(A〜D、α)に対応する。
「監視有無」情報は、監視カメラ2により当該区域の撮影が行われている(「有」参照)か否か(「無」参照)を示す。つまり、「監視有無」情報は、当該区域が撮影区域(「有」)及び非撮影区域(「無」)の何れであるかを示す。このため、区域A〜Dの「監視有無」情報は「有」を示し、区域αの「監視有無」情報は「無」を示す。なお、「監視有無」情報が「無」の区域(本例では区域α)には、単に監視カメラ2が無い区域だけでなく、監視カメラ2があっても故障などの理由により撮影が行われない区域も含まれる。
「位置」情報は、当該区域が占有する範囲を、当該区域の長方形の対角線上で対向する2点の位置で示す。2点の位置は、図2中のx軸及びy軸により規定される。
「接続区域」情報は、通路L1〜L2などにより当該区域と接続された隣接区域の区域IDを示す。隣接区域の区域IDは、「接続区域」情報の各欄「1」,「2」,「3」,・・・に登録される。
撮影区域A,Bは、通路L1により非撮影区域αに隣接するので、当該「接続区域」情報は「α」を示す。撮影区域Cは、通路L3により非撮影区域αに隣接し、通路L2により非撮影区域Dに隣接するので、当該「接続区域」情報は「α」及び「D」を示す。
撮影区域Dは、通路L2により撮影区域Cに隣接するので、当該「接続区域」情報は「C」を示す。非撮影区域αは、通路L1により撮影区域A,Bに隣接し、通路L3により撮影区域Cに隣接するので、当該「接続区域」情報は「A」、「B」、及び「C」を示す。
このように、マップDB134は、各区域A〜D,αの接続関係を示すので、移動先区域特定処理部102は、マップDB134を参照することにより、図2に示された地図を認識できる。
このとき、移動先区域特定処理部102は、撮影区域内人物DB131から、退出した人物の最終の移動経路情報を取得する。移動先区域特定処理部102は、取得した最終の移動経路情報から、マップDB134に基づいて移動先の区域を特定する。
例2の場合、移動先区域特定処理部102は、図8に示された撮影区域内人物DB131から、撮影区域Dから退出した人物Zの最終の移動経路情報(項目No.1の移動経路情報「10」)を取得する。人物Zの最終の移動経路情報は、「位置」が(300,400)であり、「移動方向」が0°であることを示す。したがって、移動先区域特定処理部102は、マップDB134を参照することにより、人物Zの移動先を撮影区域Cと特定する。
例1の場合、移動先区域特定処理部102は、図9に示された撮影区域内人物DB131から、撮影区域Aから退出した人物Xの最終の移動経路情報(項目No.1の移動経路情報「10」)を取得する。人物Xの最終の移動経路情報は、「位置」が(200,100)であり、「移動方向」が0°であることを示す。
したがって、移動先区域特定処理部102は、マップDB134を参照することにより、人物Xの移動先を非撮影区域αと特定する。同様に、移動先区域特定処理部102は、撮影区域Bから退出した人物Yの最終の移動経路情報(項目No.2の移動経路情報「10」)を取得し、マップDB134を参照することにより、人物Yの移動先を非撮影区域αと特定する。
再び図6を参照すると、移動先区域特定処理部102は、移動先の特定後、特定した移動先が非撮影区域αであるか否かを判定する(ステップSt9)。移動先区域特定処理部102は、移動先が撮影区域A〜Dである場合(ステップSt9のNo)、後述するステップSt11の処理を行う。
また、移動先が非撮影区域αである場合(ステップSt9のYes)、移動先区域特定処理部102は、退出した人物の人物IDを非撮影区域内人物DB132に登録する(ステップSt10)。非撮影区域内人物DB132は、非撮影区域αに存在する人物の人物IDを示す。
図11には、非撮影区域内人物DB132の一例が示されている。非撮影区域内人物DB132は、「区域ID」と、「人物ID」と、「退出人数」とを含む。「区域ID」は、非撮影区域の区域ID(本例ではα)を示す。
「人物ID」は、上記の人物IDに対応し、当該区域に存在する人物の識別番号を示す。例2の場合、人物X,Yが、撮影区域A,Bから非撮影区域αにそれぞれ移動するので、「人物ID」は、人物X,Yの人物ID「001」及び「002」が登録される。
「退出人数」は、後述する映像の記録処理において、当該区域から人物が退出するたびに加算される。後述するように、類似判定処理部106は、「退出人数」が、「人物ID」の数に達した場合、当該非撮影区域に存在する人物がいないと判定し、人物間の類似の度合いを判定する。つまり、例2の場合、「退出人数」が2になると、類似判定処理部106は、人物X,Y間の類似の度合いを判定する。
非撮影区域内人物DB132に人物IDを登録した後、処理を終了しない場合(ステップSt11のNo)、再びステップSt1の処理が実行され、そうでない場合(ステップSt11のYes)、処理が終了する。このようにして、人物データの登録処理は行われる。
次に、映像の記録処理について説明する。本処理において、撮影区域内人物DB131は、人物ごとに解像度を決定した後、当該人物が映った映像の特定に用いられる。また、非撮影区域内人物DB132は、非撮影区域αから全ての人物が退出したか否かの判定に用いられる。
図12A及び図12Bは、映像の記録処理の一例を示すフローチャートである。図12A及び図12Bは、図12A及び図12Bに記載された、丸で囲まれた位置「A」〜「C」で連結されることにより、本処理のフローチャートを示す。
まず、新規登録判定部103は、撮影区域内人物DB131を読み出す(ステップSt21)。次に、新規登録判定部103は、撮影区域内人物DB131に新たに登録された人物の有無を判定する(ステップSt22)。すなわち、新規登録判定部103は、新たに撮影区域に出現した人物の情報が、撮影区域内人物DB131に登録されたか否かを判定する。
解像度決定処理部105aは、新規登録された人物がいない場合(ステップSt22のNo)、つまり、撮影区域A〜Dに新たに出現した人物がいない場合、撮影区域内人物DB131の解像度指定値に基づいて、解像度設定テーブル133を更新する(ステップSt38)。解像度決定処理部105aは、後述するステップSt29の処理において、人物ごとに決定した解像度を解像度指定値に反映する。解像度設定テーブル133は、後述するように、撮影時刻ごとの解像度を示す(図16及び図17を参照)。その後、後述するステップSt33の処理が行われる。
また、移動元区域特定処理部104は、新規登録された人物がいる場合(ステップSt22のYes)、マップDB134に基づいて当該人物の移動元の区域を特定する(ステップSt23)。つまり、移動元区域特定処理部104は、映像入力処理部100により取得した映像に映った人物の移動元の区域を、マップDB134に基づいて特定する。なお、移動元の区域とは、時系列上の直前の区域を指す。
このとき、移動元区域特定処理部104は、撮影区域内人物DB131から、退出した人物の最初の移動経路情報を取得する。移動元区域特定処理部104は、取得した最初の移動経路情報から、マップDB134に基づいて移動元の区域を特定する。
例2の場合、移動元区域特定処理部104は、図8に示された撮影区域内人物DB131から、撮影区域Cに出現した人物Zの最初の移動経路情報(項目No.2の移動経路情報「1」)を取得する。人物Zの最終の移動経路情報は、「位置」が(300,400)であり、「移動方向」が0°であることを示す。したがって、移動先区域特定処理部102は、マップDB134を参照することにより、人物Zの移動元を撮影区域Dと特定する。
例1の場合、移動元区域特定処理部104は、図9に示された撮影区域内人物DB131から、撮影区域Bに出現した人物Xの最初の移動経路情報(項目No.3の移動経路情報「1」)を取得する。人物Xの最初の移動経路情報は、「位置」が(600,100)であり、「移動方向」が0°であることを示す。
したがって、移動先区域特定処理部102は、マップDB134を参照することにより、人物Xの移動元を非撮影区域αと特定する。同様に、移動元区域特定処理部104は、撮影区域Cに出現した人物Yの最初の移動経路情報(項目No.4の移動経路情報「1」)を取得し、マップDB134を参照することにより、人物Yの移動元を非撮影区域αと特定する。
移動元区域特定処理部104は、特定した区域が非撮影区域αである場合(ステップSt24のYes)、非撮影区域内人物DB132の当該退出人数を更新する(ステップSt25)。つまり、移動元区域特定処理部104は、移動元の非撮影区域αの退出人数に1を加算する。
次に、解像度決定処理部105aは、非撮影区域内人物DB132の退出人数を参照することで、移動元区域特定処理部104により特定された非撮影区域αが、無人であるか否かを判定する(ステップSt26)。つまり、解像度決定処理部105aは、非撮影区域内人物DB132内の人物IDの数が、当該退出人数に一致するか否かを判定する。
解像度決定処理部105aは、非撮影区域αが無人ではない場合(ステップSt26のNo)、上述したステップSt38の処理を行う。
また、解像度決定処理部105aは、非撮影区域αが無人である場合(ステップSt26のYes)、非撮影区域内人物DB132の人物IDの数を計数することで、非撮影区域αにいた人数が複数であるか否かを判定する(ステップSt27)。解像度決定処理部105aは、非撮影区域αにいた人数が単数である場合(ステップSt27のNo)、当該非撮影区域αにいた人物の解像度Kを「2」(中解像度)に決定する(ステップSt39)。その後、後述するステップSt29の処理が行われる。
このような場合としては、例1において、人物Yが存在せず、人物Xのみが非撮影区域αを通って撮影区域Bに出現する場合が挙げられる。この場合、人物Xは、単独で非撮影区域αを通るので、映像内の人物Xを追跡するとき、人物Xと類似する他の人物と間違うことはない。しかし、人物Xは、撮影区域Aを通り抜けた後、非撮影区域αに進入するので、一時的に映像から消える。このため、解像度決定処理部105aは、解像度を、初期値の最低解像度(K=1)から一段階あげて、中解像度(K=2)とすることで、人物Xの追跡を容易とする。
また、解像度決定処理部105aは、非撮影区域αにいた人数が複数である場合(ステップSt27のYes)、当該非撮影区域αにいた人物間の類似の度合い、つまり類似度に応じて各人物の解像度Kを決定する(ステップSt28)。このような場合としては、例1のように、複数の人物X,Yが、共通の時間帯(9:20:20〜9:20:30)に、同一の非撮影区域αに存在する場合が挙げられる。以下に、この場合の解像度の決定処理の詳細を述べる。
図13は、人物間の類似度に応じた解像度の決定処理の一例を示すフローチャートである。まず、解像度決定処理部105aは、仮に、非撮影区域αにいた人物の映像の解像度Kを、「2」(中解像度)に決定する(ステップSt41)。次に、類似判定処理部106は、解像度決定処理部105aの指示に基づいて、映像データ130から、各人物が映った映像のうち、人物同士を比較可能な画像を抽出する(ステップSt42)。
より具体的には、類似判定処理部106は、解像度決定処理部105aから当該人物IDを取得し、取得した人物IDに基づいて、撮影区域内人物DB131から、人物IDに対応する区域IDと出現時刻(または退出時刻)を検索する。そして、類似判定処理部106は、検索結果に基づいて、映像データ130から、人物同士を比較可能な画像を抽出する。このような画像としては、例えば、各人物のサイズ及び向き(図9の移動方向)が同一である画像の組み合わせが挙げられる。
次に、類似判定処理部106は、抽出した画像を、決定した解像度Kの画像に変換する(ステップSt43)。類似判定処理部106は、解像度を低下させる場合(K=2)、画像を所定の大きさごとに分割し、分割で得られた単位画像内のピクセル値を平均化する。例えば、解像度を1/9にする場合、画像全体を3×3ピクセルに分割し、単位画像内のピクセル値を平均化する。
次に、類似判定処理部106は、抽出した画像から、人物間の類似度corを算出する(ステップSt44)。このとき、類似判定処理部106は、画像から各人物の特徴を抽出し、特徴量を比較することにより類似度を算出する。特徴量としては、例えば、人物の色を示す色情報、色の配置を示す配置情報、及び服装の模様を示す模様情報などが用いられる。類似判定処理部106は、特徴量の比較により、類似度corを算出する。なお、算出手法については、後述する。
次に、類似判定処理部106は、類似度corが閾値(一定値)TH以下である場合(ステップSt45のYes)、決定した解像度Kを確定させる(ステップSt46)。確定した解像度Kは、撮影区域内人物DB131の解像度指定値、または解像度設定テーブル133に反映される。
また、類似判定処理部106は、類似度corが閾値(一定値)THより大きい場合(ステップSt45のNo)、決定した解像度Kを一段階だけ上げる(つまり、K=K+1)(ステップSt46)。本実施例では、解像度Kは「1」〜「3」の3段階しかなく、初期値が「2」(ステップSt41参照)であるため、本処理によって、解像度Kは「3」(高解像度)となる。もっとも、解像度Kは、これに限定されず、例えば5段階(「1」〜「5」)であってもよいので、この場合、本処理によって、解像度Kは、最高で「5」まで引き上げられる。
その後、類似判定処理部106は、再びステップSt43の処理を行い、さらに、類似度corの算出処理及び判定処理(ステップSt44、St45)を行う。つまり、類似判定処理部106は、類似度corが閾値TH以下になるまで、人物が映った映像の解像度を高める。
図14は、解像度に応じた服装の模様の比較処理の一例を示す。図14には、例1において、人物Xの服装Xa及び人物Yの服装Yaの模様を、解像度Kが「2」(中解像度)の場合と、「3」(高解像度)の場合とについて比較を行う様子を示す。
図14から理解されるように、解像度Kが「2」(中解像度)の場合、人物Xの服装Xa及び人物Yの服装Yaの模様は、類似度corが高く、互いに区別することが困難である。このため、類似判定処理部106は、ステップSt45の判定処理において、類似度corが閾値THより大きいと判定する。そして、類似判定処理部106は、解像度Kを「3」に変更し(ステップSt48)、再度、類似度corの判定処理(ステップSt45)を行う。
解像度Kが「3」(高解像度)の場合、人物Xの服装Xa及び人物Yの服装Yaの模様は、類似度corが低く、互いに区別することが可能である。つまり、人物Yの服装Yaは網目模様であるのに対して、人物Xの服装Xaは無地であるため、各模様は、区別可能な程度に相違する。
このため、類似判定処理部106は、ステップSt45の判定処理において、類似度corが閾値TH以下であると判定する。そして、類似判定処理部106は、決定された解像度K(=「3」)を確定させ(ステップSt46)、処理を終了する。
また、図15は、中解像度及び高解像度における輝度に対する頻度の変化を示すグラフである。図15(a)は、解像度Kが「2」(中解像度)の場合における、人物Xの服装Xa及び人物Yの服装Yaの各模様の輝度に対する頻度の変化特性を示す。図15(b)は、解像度Kが「3」(高解像度)の場合における、人物Xの服装Xa及び人物Yの服装Yaの各模様の輝度に対する頻度の変化特性を示す。
各変化特性は、中解像度では類似するのに対し、高解像度では明確に相違する。類似判定処理部106は、図15に示された変化特性、つまり輝度のヒストグラムのデータから、以下の式(1)に基づいて類似度corを算出できる。
ここで、関数a(x),b(x)は、人物X,Yに関するヒストグラムのデータをそれぞれ表す。また、変数nは、輝度がとり得る数値範囲内の最大値である。
式(1)に基づいて算出された類似度corは、0〜1の値を取り得る。ここで、類似度cor=1は、人物X,Yの服装Xa,Yaの模様が最も類似することを意味する。
閾値TH=0.5の場合、中解像度において算出された類似度corを0.8とし、高解像度において算出された類似度corを0.2とすると、0.2≦0.5であるため、解像度Kは「3」(高解像度)に確定される。このようにして、解像度の決定処理は行われる。
このように、類似判定処理部106は、非対象区域αから、人物の映像が撮影された撮影区域または他の撮影区域に移動した他の人物が存在するとき、人物間の類似度corを、映像データ130に基づいて判定する。また、記録処理部105は、類似度corが閾値TH以下である場合、人物が映った映像を、類似度corが閾値THより大きい場合より、低い解像度(つまり、中解像度(K=2))で記録する。
つまり、類似判定処理部106は、中解像度(K=2)において算出された類似度corが、閾値TH以下である場合(ステップSt45のYes)、解像度Kを「3」に上げる(ステップSt48)ことなく、解像度Kを確定させる(ステップSt46)。このため、当該人物の画像は、中解像度で映像保管装置3に記録され、記録量が、高解像度で記録される場合より低減される。これは、人物を映像により追跡するとき、当該人物に類似する他の人物がいなければ、中解像度の映像でも、追跡は困難ではないからである。
また、記録処理部105は、類似度corが低いほど、人物が映った映像を低い解像度で記録する。つまり、類似判定処理部106は、類似度corが低いほど、解像度を上げる処理(K=K+1、ステップSt48)の実行回数が少ない。このため、映像の記録量が、効果的に低減される。
言い換えれば、記録処理部105は、類似度corが閾値THより大きい場合、類似度corが閾値TH以下になるように、人物が映った映像の解像度を高めて、映像を記録する。つまり、類似判定処理部106は、最初に算出した類似度corが高いほど、ステップSt48の処理(K=K+1)を繰り返して、解像度を高める。これにより、映像は、人物の追跡に最適な解像度に調整されて記録される。
再び図12A及び図12Bを参照すると、解像度決定処理部105aは、撮影区域内人物DB131内の当該人物の解像度指定値を更新する(ステップSt29)。例1の場合、解像度決定処理部105aは、上述した処理の結果に基づき、人物X,Yの解像度指定値を「3」(高解像度)に設定する(図9参照)。
次に、解像度決定処理部105aは、解像度設定テーブル133を更新する(ステップSt30)。つまり、解像度決定処理部105aは、解像度指定値を解像度設定テーブル133に反映する。
図16には、解像度設定テーブル133の一例が示されている。図16は、例1の場合の人物X,Yの映像に関する解像度設定テーブル133を示す。解像度設定テーブル133は、撮影時刻に対応する「時刻」情報と、人物が映った映像の撮影区域を示す「区域ID」とを含む。解像度設定テーブル133は、時刻及び区域ごとの解像度の設定値を示す。なお、図16において、解像度の設定値は、高解像度(K=3)の場合、「高」と表記され、低解像度(K=1)の場合、「低」と表記される。
解像度決定処理部105aは、撮影区域内人物DB131から、人物X,Yの区域ID、出現時刻、及び退出時刻を検索し、当該検索結果に基づいて、人物X,Yの映像を特定する。そして、解像度決定処理部105aは、特定した映像の撮影時刻及び撮影区域に応じた解像度設定値を更新する。
解像度決定処理部105aは、例2の場合、人物X,Yの映像の解像度を、高解像度に設定する。つまり、撮影区域A(移動元)の時刻9:20:00〜9:20:10の人物Xの映像と、撮影区域B(移動先)の時刻9:20:30〜9:20:40の人物Xの映像は、高解像度に設定される。さらに、撮影区域B(移動元)の時刻9:20:15〜9:20:20の人物Yの映像と、撮影区域C(移動先)の時刻9:20:35〜9:20:40の人物Yの映像も、高解像度に設定される。なお、他の映像については、人物が映っていないため、初期値である「低」に設定される。
一方、解像度決定処理部105aは、例2の場合、上記のステップSt24において、例1の場合とは異なる処理を経て解像度Kを「1」(低解像度)に決定し、解像度設定テーブル133に設定する。
解像度決定処理部105aは、移動元区域特定処理部104により特定した区域が撮影区域A〜Dである場合(ステップSt24のNo)、当該人物の解像度Kを「1」に決定する(ステップSt40)。例2において、撮影区域Cに出現した人物Zの移動元は、上述したように、撮影区域Cと特定される。したがって、人物Zの映像の解像度Kは「1」(低解像度)に決定される。
次に、解像度決定処理部105aは、撮影区域内人物DB131内の当該人物の解像度指定値を更新する(ステップSt29)。例2の場合、解像度決定処理部105aは、上述した処理の結果に基づき、人物Zの解像度指定値を「1」(低解像度)に設定する(図8参照)。次に、解像度決定処理部105aは、解像度設定テーブル133を更新する(ステップSt30)。
図17には、解像度設定テーブル133の一例が示されている。図17は、例2の場合の人物Zの映像に関する解像度設定テーブル133を示す。
解像度決定処理部105aは、例1の場合、人物Zの映像の解像度を、低解像度に設定する。つまり、撮影区域D(移動元)の時刻9:10:00〜9:10:10の人物Zの映像と、撮影区域C(移動先)の時刻9:10:11〜9:10:17の人物Zの映像は、低解像度に設定される。なお、他の映像については、人物が映っていないため、初期値である「低」に設定される。
したがって、記録処理部105は、移動元区域特定処理部104により特定された区域が撮影区域A〜Dである場合、人物が映った映像を、該特定された区域が非撮影区域αである場合より低い解像度で記録する。つまり、上述したように、該特定された区域が非撮影区域αである場合(ステップSt24のYes)、解像度Kは、「2」(中解像度)または「3」(高解像度)に決定される。これに対し、該特定された区域が撮影区域A〜Dである場合(ステップSt24のNo)、解像度Kは、「1」(低解像度)に決定される。
これは、人物Zが、非撮影区域αを通過することなく、単独で撮影区域Dから撮影区域Cに移動する場合、映像による人物Zの追跡(例2)は、非撮影区域αを通過する類似の人物X,Y(例1)の追跡より容易であるからである。つまり、例2の場合のように、人物Zが、撮影区域Dから隣接する他の撮影区域Cに移動する場合、複数台の監視カメラ2の映像に連続して映るのだから、人物Zの映像の解像度(画質)を落としても、追跡は十分に可能である。よって、実施例に係る映像処理装置1によると、映像の記録量は、上記の特許文献1などの記載内容とは異なり、人物の移動経路に応じて効果的に低減される。
また、記録処理部105は、移動元区域特定処理部104により特定された区域が撮影区域A〜Dである場合(例2の場合)、移動元の撮影区域において人物が映った映像を、移動先の撮影区域において人物が映った映像と同じ解像度で記録する。これにより、映像の記録量が、移動元または移動先の一方の撮影区域の映像の解像度だけを低下させる場合より低減される。
このように、解像度設定テーブル133は、人物の移動経路に応じて設定されるので、設定済みの解像度が、後発的に変更される場合がある。このような場合としては、例1において、人物Zが、撮影区域Cから非撮影区域αに移動した後、人物Zに類似する他の人物が非撮影区域αに進入する場合が挙げられる。
この場合、上述したように、人物間の類似度corに応じて、人物Zの解像度は高くなる(図13参照)。このため、既に設定済みの人物Zの解像度(「低」(K=1))が、高解像度(K=1)または中解像度(K=2)に変更されることがある。したがって、解像度設定テーブル133の更新は、解像度指定値が、既存の設定値より大きい場合のみ行われる。
図18は、解像度設定テーブル133の更新処理の一例を示すフローチャートである。まず、解像度決定処理部105aは、解像度設定テーブル133から、既存の設定値を読み出す(ステップSt51)。次に、解像度決定処理部105aは、解像度指定値と既存の設定値を比較する(ステップSt52)。
解像度決定処理部105aは、解像度指定値が既存の設定値より大きい場合(ステップSt52のYes)、解像度指定値を解像度設定テーブル133に書き込み(ステップSt53)、処理を終了する。また、解像度決定処理部105aは、解像度指定値が既存の設定値以下である場合(ステップSt52のNo)、解像度指定値を書き込まずに処理を終了する。このようにして、解像度設定テーブル133の更新処理は行われる。
解像度設定テーブル133の更新後、解像度決定処理部105aは、撮影区域内人物DB131から、当該人物の移動元の区域に関する登録を削除する(ステップSt31)。例1の場合、解像度決定処理部105aは、図9の撮影区域内人物DB131から、人物Xの移動元の撮影区域Aの登録情報である項目No.1の情報と、人物Yの移動元の撮影区域Bの登録情報である項目No.2の情報を削除する。
また、例2の場合、解像度決定処理部105aは、図8の撮影区域内人物DB131から、人物Zの移動元の撮影区域Dの登録情報である項目No.1の情報を削除する。これにより、撮影区域内人物DB131は、人物の移動に伴い、随時に更新される。
次に、解像度決定処理部105aは、非撮影区域内人物DB132から、当該人物IDを削除する(ステップSt32)。例1の場合、人物X,Yの人物ID001.002が、非撮影区域内人物DB132から削除される。これにより、非撮影区域内人物DB132は、人物の移動に伴い、随時に更新される。
次に、出力処理部105bは、非撮影区域内人物DB132から、最先の出現時刻を取得する(ステップSt33)。例1の場合、出力処理部105bは、図9の撮影区域内人物DB131から、項目No.3の出現時刻09:20:30を取得する。また、例2の場合、出力処理部105bは、図8の撮影区域内人物DB131から、項目No.2の出現時刻09:10:11を取得する。
次に、出力処理部105bは、映像データ130のうち、取得した出現時刻より前の未記録の映像データの有無を判定する(ステップSt34)。出力処理部105bは、未記録の映像データがない場合(ステップSt34のNo)、後述するステップSt36の処理を行う。
また、出力処理部105bは、未記録の映像データが有る場合(ステップSt34のYes)、解像度設定テーブル133に従った解像度で当該映像データを記録する(ステップSt35)。つまり、出力処理部105bは、当該映像データを、解像度設定テーブル133の設定値に従った解像度に変換して、映像保管装置3に出力する。
これにより、人物が、現在の区域に移動する直前にいた撮影区域A〜Dの映像が、決定された解像度で映像保管装置3に記録される。つまり、例1の場合、人物X,Yが、撮影区域B,Cにそれぞれ移動したとき、撮影区域A,Bにおいて撮影された人物X,Yの映像が記録される。また、例2の場合、人物Zが、撮影区域Cに移動したとき、撮影区域Dにおいて撮影された人物Zの映像が記録される。
したがって、映像データ130は、人物の移動に伴い、随時に記録される。なお、映像の記録処理は、これに限定されず、例えば、タイマを用いて一定時間が経過するごとに行われてもよい。
次に、出力処理部105bは、現在時刻までの映像データ130のうち、人物が映っていない映像データを低解像度(K=1)で記録する(ステップSt36)。このとき、出力処理部105bは、撮影区域内人物DB131に基づいて、人物が映っていない時刻及び区域を検索し、当該検索結果に従って、映像データ130を取得し、低解像度に変換して、映像保管装置3に出力する。
その後、処理を継続する場合(ステップSt37のNo)、再びステップSt21の処理が行われ、そうでない場合(ステップSt37のYes)、処理を終了する。このようにして、映像の記録処理は行われる。
これまで述べたように、実施例に係る映像処理装置1は、記憶部(HDD)13と、取得部(映像入力処理部)100と、特定処理部(移動元区域特定処理部)104と、記録処理部105とを有する。記憶部13は、撮影の対象区域(撮影区域)及び非対象区域(非撮影区域)を示すマップ情報(マップDB)134を記憶する。
取得部100は、対象区域において撮影された映像を取得する。特定処理部104は、取得部100により取得した映像に映った被写体(人物)の移動元の区域を、マップ情報134に基づいて特定する。記録処理部105は、特定処理部104により特定された区域が対象区域である場合、被写体が映った映像を、特定処理部104により特定された区域が非対象区域である場合より低い画質(解像度)で記録する。
したがって、記録処理部105は、被写体が、撮影の対象区域から他の対象区域に移動した場合、被写体が映った映像を、撮影の非対象区域に移動した場合より低い画質で記録する。よって、実施例に係る映像処理装置1は、効果的に映像の記録量を低減できる。
また、実施例に係る映像処理方法は、以下の工程をコンピュータ(CPU)10が実行するものである。
工程(1):撮影の対象区域(撮影区域)において撮影された映像を取得する。
工程(2):取得した映像に映った被写体(人物)の移動元の区域を、撮影の対象区域及び非対象区域(非撮影区域)を示すマップ情報(マップDB)134に基づいて特定する。
工程(3):特定された区域が対象区域である場合、被写体が映った映像を、特定された区域が非対象区域である場合より低い画質で記録する。
実施例に係る映像処理方法は、上記の映像処理装置1と同様の構成を有するので、上述した内容と同様の作用効果を奏する。
また、実施例に係る映像処理プログラムは、以下の処理をコンピュータ(CPU)10に実行させるものである。
処理(1):撮影の対象区域(撮影区域)において撮影された映像を取得する。
処理(2):取得した映像に映った被写体(人物)の移動元の区域を、撮影の対象区域及び非対象区域(非撮影区域)を示すマップ情報(マップDB)134に基づいて特定する。
処理(3):特定された区域が対象区域である場合、被写体が映った映像を、特定された区域が非対象区域である場合より低い画質で記録する。
実施例に係る映像処理プログラムは、上記の映像処理装置1と同様の構成を有するので、上述した内容と同様の作用効果を奏する。
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体(ただし、搬送波は除く)に記録しておくことができる。
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記録媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) 撮影の対象区域及び非対象区域を示すマップ情報を記憶する記憶部と、
前記対象区域において撮影された映像を取得する取得部と、
前記取得部により取得した映像に映った被写体の移動元の区域を、前記マップ情報に基づいて特定する特定処理部と、
前記特定処理部により特定された区域が前記対象区域である場合、前記被写体が映った映像を、前記特定処理部により特定された区域が前記非対象区域である場合より低い画質で記録する記録処理部とを有することを特徴とする映像処理装置。
(付記2) 前記特定処理部により特定された区域が前記非対象区域である場合、前記非対象区域から、前記被写体の映像が撮影された前記対象区域または他の前記対象区域に移動した他の被写体が存在するとき、前記被写体と前記他の被写体の類似の度合いを、前記取得部により取得した映像に基づいて判定する判定処理部を、さらに有し、
前記記録処理部は、前記類似の度合いが一定値以下である場合、前記被写体が映った映像を、前記類似の度合いが前記一定値より大きい場合より、低い画質で記録することを特徴とする付記1に記載の映像処理装置。
(付記3) 前記記録処理部は、前記類似の度合いが低いほど、前記被写体が映った映像を低い画質で記録することを特徴とする付記2に記載の映像処理装置。
(付記4) 前記記録処理部は、前記類似の度合いが前記一定値より大きい場合、前記類似の度合いが前記一定値以下になるように、前記被写体が映った映像の画質を高めて、前記被写体が映った映像を記録することを特徴とする付記2に記載の映像処理装置。
(付記5) 前記記録処理部は、前記特定処理部により特定された区域が前記対象区域である場合、前記移動元の区域において前記被写体が映った映像を、移動先の区域において前記被写体が映った映像と同じ画質で記録することを特徴とする付記1乃至4の何れかに記載の映像処理装置。
(付記6) 撮影の対象区域において撮影された映像を取得する工程と、
取得した映像に映った被写体の移動元の区域を、撮影の前記対象区域及び非対象区域を示すマップ情報に基づいて特定する工程と、
特定された区域が前記対象区域である場合、前記被写体が映った映像を、特定された区域が前記非対象区域である場合より低い画質で記録する工程とを、コンピュータが実行することを特徴とする映像処理方法。
(付記7) 特定された区域が前記非対象区域である場合、前記非対象区域から、前記被写体の映像が撮影された前記対象区域または他の前記対象区域に移動した他の被写体が存在するとき、前記被写体と前記他の被写体の類似の度合いを、取得した映像に基づいて判定する工程を、さらに、前記コンピュータが実行し、
前記被写体が映った映像を記録する工程において、前記類似の度合いが一定値以下である場合、前記被写体が映った映像を、前記類似の度合いが前記一定値より大きい場合より、低い画質で記録することを特徴とする付記6に記載の映像処理方法。
(付記8) 前記被写体が映った映像を記録する工程において、前記類似の度合いが低いほど、前記被写体が映った映像を低い画質で記録することを特徴とする付記7に記載の映像処理方法。
(付記9) 前記被写体が映った映像を記録する工程において、前記類似の度合いが前記一定値より大きい場合、前記類似の度合いが前記一定値以下になるように、前記被写体が映った映像の画質を高めて、前記被写体が映った映像を記録することを特徴とする付記7に記載の映像処理方法。
(付記10) 前記被写体が映った映像を記録する工程において、特定された区域が前記対象区域である場合、前記移動元の区域において前記被写体が映った映像を、移動先の区域において前記被写体が映った映像と同じ画質で記録することを特徴とする付記6乃至9の何れかに記載の映像処理方法。
(付記11) 撮影の対象区域において撮影された映像を取得し、
取得した映像に映った被写体の移動元の区域を、撮影の前記対象区域及び非対象区域を示すマップ情報に基づいて特定し、
特定された区域が前記対象区域である場合、前記被写体が映った映像を、特定された区域が前記非対象区域である場合より低い画質で記録する処理を、コンピュータに実行させることを特徴とする映像処理プログラム。
(付記12) 特定された区域が前記非対象区域である場合、前記非対象区域から、前記被写体の映像が撮影された前記対象区域または他の前記対象区域に移動した他の被写体が存在するとき、前記被写体と前記他の被写体の類似の度合いを、取得した映像に基づいて判定する処理を、さらに、前記コンピュータに実行させ、
前記被写体が映った映像を記録する処理において、前記類似の度合いが一定値以下である場合、前記被写体が映った映像を、前記類似の度合いが前記一定値より大きい場合より、低い画質で記録することを特徴とする付記11に記載の映像処理プログラム。
(付記13) 前記被写体が映った映像を記録する処理において、前記類似の度合いが低いほど、前記被写体が映った映像を低い画質で記録することを特徴とする付記12に記載の映像処理プログラム。
(付記14) 前記被写体が映った映像を記録する処理において、前記類似の度合いが前記一定値より大きい場合、前記類似の度合いが前記一定値以下になるように、前記被写体が映った映像の画質を高めて、前記被写体が映った映像を記録することを特徴とする付記12に記載の映像処理プログラム。
(付記15) 前記被写体が映った映像を記録する処理において、特定された区域が前記対象区域である場合、前記移動元の区域において前記被写体が映った映像を、移動先の区域において前記被写体が映った映像と同じ画質で記録することを特徴とする付記11乃至14の何れかに記載の映像処理プログラム。