JP6182094B2 - 無段変速機構 - Google Patents
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Description
かかる無段変速機では、大きな動力を伝達する際に、推力を増大させて摩擦力を確保することが必要である。この際、推力発生用のオイルポンプを駆動する駆動源(エンジン又は電動モータ)の負担が増大し、これにかかる燃料消費量又は電力消費量の増加を招いてしまうおそれがあり、また、各プーリや駆動ベルトには過大な推力が加わるので、構造的に滑りが発生する部分では大きな摩擦損失が発生する。
このような無段変速機構としては、回転軸の軸心に対して等距離を維持しながら径方向に可動に且つ一体回転するように支持されて回転軸の軸心に対して公転する複数のピニオンスプロケット及びガイドロッドがそれぞれ多角形の頂点をなすようにして形成された見かけ上の大スプロケット(ここでは、「複合スプロケット」と呼ぶことにする)が、入力側及び出力側のそれぞれに設けられ、これらの複合スプロケットに巻き掛けられたチェーンによって動力伝達するものが挙げられる。
このような無段変速機構が例えば特許文献1に示されている。
また、固定放射状溝と可動放射状溝との交差角度が大きいほど、固定ディスクに対する可動ディスクの回転トルクを低減させることができ、両放射状溝におけるピニオンスプロケット及びガイドロッドの各軸のひっかかり(スティック)を抑制することができる。かかる観点からは、固定放射状溝と可動放射状溝との交差角度を確保することが有効である。
これに加えて、後者の観点から、固定放射状溝に対して可動放射状溝の交差角度を大きくするとなると、可動放射状溝が径方向に対して更に傾斜した曲線状をなし、特に可動放射状溝の内周部(内周側の部分)における間隔を確保することができないおそれがある。延いては、可動放射状溝どうしが干渉してしまうおそれがある。これにより、可動ディスクの耐久性の低下を招き、延いては、可動ディスクの破損を招いてしまうおそれがある。
このように、ピニオンスプロケット及びガイドロッドの数の確保と固定放射状溝に対する可動放射状溝の交差角度の確保とを両立するのが困難という課題がある。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的として位置づけることができる。
前記可動放射状溝の前記内周部が傾斜する第二角度の方が大きく設定されることが好まし
い。
(3)前記固定放射状溝は直線状に形成されることが好ましい。
(4)前記移動機構は、前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して相
対回転駆動して、前記交差箇所を前記径方向に移動させる相対回転駆動機構を備えること
が好ましい。
また、従来構造のように、固定放射状溝が径方向に沿う直線状のものに比較して、固定放射状溝と可動放射状溝との交差角度を確保しながら径方向に対する可動放射状溝の傾きを小さくすることができ、従来の可動放射状溝では確保が困難であった可動放射状溝の内周部どうしの間隔を確保することができる。このため、可動放射状溝の溝数を確保し、ピニオンスプロケット及びガイドロッドの数を確保することができる。これにより、チェーンの巻き掛け半径の変動を抑制することができ、静音性の向上や動力伝達性の向上に寄与する。
これらより、ピニオンスプロケット及びガイドロッドの数を確保するとともに固定放射状溝に対する可動放射状溝の交差角度を確保することができる。
以下、一実施形態にかかる無段変速機構について説明する。
〔1.構成〕
無段変速機構は、図1に示すように、二組の複合スプロケット5,5と、これらの複合スプロケット5,5に巻き掛けられたチェーン6とを備えている。なお、複合スプロケット5とは、詳細を後述する複数のピニオンスプロケット20及び複数のガイドロッド29が多角形(ここでは十八角形)の頂点をなすようにして形成された見かけ上の大スプロケットを意味する。
なお、図1には、入力側の接円半径が最小径であり、出力側の接円半径が最大径のものを示している。
以下、無段変速機構の構成を、複合スプロケット5及びこれに巻き掛けられるチェーン6の順に説明する。
以下の複合スプロケット5にかかる構成の説明では、ピニオンスプロケット20,ガイドロッド29,スプロケット移動機構40A,ロッド移動機構40B,機械式自転駆動機構50の順に説明する。
三個のピニオンスプロケット20は、それぞれチェーン6と噛合って動力伝達する歯車として構成され、回転軸1の軸心C1周りに公転する。ここでいう「公転」とは、各ピニオンスプロケット20が、回転軸1の軸心C1を中心に回転することを意味する。回転軸1が回転すると、この回転に連動して各ピニオンスプロケット20が公転する。つまり、回転軸1の回転数とピニオンスプロケット20が公転する回転数とは等しい。なお、図1には、白抜きの矢印で反時計回りの公転方向を示している。
当然ながら、各ピニオンスプロケット21,22,23に形成される歯の形状寸法及びピッチは同一規格のものとなっている。
なお、第一自転ピニオンスプロケット22と第二ピニオンスプロケット23とは、配設箇所及び自転方向が異なるのを除いて同様に構成されるため、ここでは、第一自転ピニオンスプロケット22に着目して説明する。
図1に示すように、複数のガイドロッド29は、チェーン6と回転軸1の軸心C1との距離の変動を小さくするように、つまり、回転軸1周りのチェーン6の軌道を可能な限り円軌道に近づけるように、チェーン6をガイドするものである。これらのガイドロッド29は、その径方向外側の周面に当接するチェーン6の軌道をガイドする。ピニオンスプロケット21,22,23及び各ガイドロッド29は多角形(略正多角形)の形状をなすので、チェーン6は、その径方向内側のピニオンスプロケット21,22,23及び各ガイドロッド29に当接しガイドされながら多角形の形状に沿って転動する。
次に、スプロケット移動機構40A,ロッド移動機構40B,機械式自転駆動機構50をそれぞれ説明する。
スプロケット移動機構40Aは、複数のピニオンスプロケット20を移動対象とし、また、ロッド移動機構40Bは、複数のガイドロッド29を移動対象としている。
機械式自転駆動機構50は、スプロケット移動機構40Aによる複数のピニオンスプロケット20の径方向移動に伴って、チェーン6に対する複数のピニオンスプロケット20の位相ズレを解消するように自転ピニオンスプロケット22,23をスプロケット移動機構40Aと連動して自転駆動するものである。
まず、図2を参照して、上記の機構40A,40B,50の前提構成を説明する。ここでは、かかる前提構成として、回転軸1と一体に回転する固定ディスク10(径方向移動用固定ディスク,自転用固定ディスク)と、この固定ディスク10に対して同心に配置され且つ相対回転可能な可動ディスク19と、固定ディスク10と一体に回転する第一回転部15と、可動ディスク19と一体に回転する第二回転部16と、可動ディスク19を固定ディスク10に対して相対回転駆動する相対回転駆動機構30との順にそれぞれを説明する。
なお、固定ディスク10及び可動ディスク19は、複数のピニオンスプロケット20の両側(回転軸1の軸心C1に沿う方向の一側及び他側)にそれぞれ設けられているが、ここでは一側(図2の上方側)に設けられた固定ディスク10,可動ディスク19に着目し、その構成を説明する。
固定ディスク10は、回転軸1と一体に形成されるか、或いは、何れも回転軸1と一体回転するように結合されている。なお、図2では、複数のピニオンスプロケット20側から軸方向外側に向けて可動ディスク19,固定ディスク10の順に配置されたもの例示する。
以下、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11c,ロッド用固定放射状溝12の順に説明する。
スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cには、ピニオンスプロケット21,22,23の支持軸21a,22a,23aが内挿されている。固定ピニオンスプロケット21に対応するスプロケット用固定放射状溝11aは、固定ピニオンスプロケット21の径方向移動を案内する溝(固定ピニオンスプロケット案内溝)といえ、同様に、第一自転ピニオンスプロケット22に対応するスプロケット用固定放射状溝11bは、第一自転ピニオンスプロケット22の径方向移動を案内する溝といえ、第二自転ピニオンスプロケット23に対応するスプロケット用固定放射状溝11cは、第二自転ピニオンスプロケット23の径方向移動を案内する溝といえる。このため、これらのスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cは、対応するピニオンスプロケット21,22,23の径方向移動経路に沿っている。
ピニオンスプロケット21,22,23における支持軸21a,22a,23aの軸心C2,C3,C4と回転軸1の軸心C1との距離は、接円半径が最小径であるときに最小距離(以下、「最小径」という)r1となり、接円半径が最大径であるときに最大距離(以下、「最大径」という)r3となり、各複合スプロケット5(図1及び図2参照)の接円半径が互いに等しくなるときに最小径r1と最大径r3との中間距離(以下、「中間径」という)r2となる。
これらのスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cは、配設箇所を除いて同様に構成されているため、以下の説明では、スプロケット用固定放射状溝11aに着目して説明する。また、スプロケット用固定放射状溝11aにかかる説明では、固定ピニオンスプロケット21を単にピニオンスプロケット21と呼ぶ。
スプロケット用固定放射状溝11aにおいて、内周側端部111には、接円半径が最小径であるときピニオンスプロケット21の支持軸21aが位置し、外周側端部113には、接円半径が最大径であるときにピニオンスプロケット21の支持軸21a(二点鎖線で示す)が位置し、径方向中間部112には、各複合スプロケット5の接円半径が互いに等しくなるときにピニオンスプロケット21の支持軸21a(二点鎖線で示す)が位置する。
スプロケット用固定放射状溝11aは、径方向に対して傾斜して設けられている。ここでは、スプロケット用固定放射状溝11aのうち内周側端部111に着目して説明する。
具体的には、スプロケット用固定放射状溝11aが径方向θsに対して直交する第一の周方向(ここでは公転方向)に向けて第一角度αだけ傾斜して配設されている。このため、スプロケット用固定放射状溝11aは、外周に向かうに連れて径方向θsに対して第一の周方向に向けて離隔することとなる。ここでいう径方向θsは、内周側端部111の位相における軸中心を通過する径方向線の方向である。
ここでは、スプロケット用固定放射状溝11aが直線状に形成されている。このため、スプロケット用固定放射状溝11aは、径方向位置が外周に向かうに連れて径方向に対する傾斜角度が小さくなる。
ロッド用固定放射状溝12(一箇所のみに符号を付す)には、対応するガイドロッド29のロッド支持軸29a(一箇所のみに符号を付す)が内挿されている。なお、ロッド用固定放射状溝12は、それぞれ配設箇所が異なる点を除いては同様に構成されている。
ロッド用固定放射状溝12は、上記のスプロケット用固定放射状溝11aと同様に、径方向に対して第一の周方向(公転方向)に向けて傾斜して設けられている。また、ロッド用固定放射状溝12は、直線状に形成されている。
具体的には、五本のロッド用固定放射状溝121,122,123,124,125のうち、径方向に対して第一の周方向へ向けた傾斜角度が、第一ロッド用固定放射状溝121,第一ロッド用固定放射状溝122,第一ロッド用固定放射状溝123の順に小さくなる。なお、第四ロッド用固定放射状溝124は、径方向に沿って配設され、第五ロッド用固定放射状溝125は、径方向に対して第一の周方向とは反対方向に向けて傾斜して配設されている。
なお、複数のロッド用固定放射状溝12が、何れも径方向に対して第一の周方向に傾斜して設けられていてもよい。この場合、各ロッド用固定放射状溝12の傾斜角度を等しく設定することもできる。
図2に示すように、可動ディスク19は、ピニオンスプロケット20を挟んで一側及び他側のそれぞれに設けられる。これらの可動ディスク19は、連結シャフト19Aで互いに連結されている。ここでは、図1に示すように、各ピニオンスプロケット21,22,23の相互間にそれぞれ連結シャフト19A(一箇所にのみ符号を付す)が設けられている。これにより、一側の可動ディスク19と他側の可動ディスク19とが一体に回転する。
スプロケット用可動放射状溝19aのそれぞれは、上記のスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cのそれぞれに交差して設けられる。スプロケット用可動放射状溝19aとスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cとが交差する第一交差箇所CP1(図5のそれぞれに一箇所のみ符号を付す)には、ピニオンスプロケット21,22,23の各支持軸21a,22a,23aが位置する。
各スプロケット用可動放射状溝19aは、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cのそれぞれに対応する形状に設けられている。
図4に示すように、スプロケット用可動放射状溝19aは、上記のスプロケット用固定放射状溝11aと同様に、最小径r1,中間径r2及び最大径r3に跨って配設されている。
スプロケット用可動放射状溝19aにおいて、内周側端部191には、接円半径が最小径であるときにピニオンスプロケット21の支持軸21aが位置し、外周側端部193には、接円半径が最大径であるときにピニオンスプロケット21の支持軸21a(二点鎖線で示す)が位置し、径方向中間部192には、各複合スプロケット5の接円半径が互いに等しくなるときにピニオンスプロケット21の支持軸21a(二点鎖線で示す)が位置する。
スプロケット用可動放射状溝19aは、径方向に対して第一の周方向とは反対方向の第二の周方向(ここでは公転方向に対して反対方向)に向けて傾斜して設けられている。ここでは、スプロケット用可動放射状溝19aのうち内周側端部191に着目して説明する。
このように、スプロケット用固定放射状溝11aとスプロケット用可動放射状溝19aとは、径方向に対して互いに反対方向に傾斜して設けられている。
このスプロケット用可動放射状溝19aは曲線状に形成されている。この曲線は、内周から外周に向かうに連れて、径方向に対する傾斜角度が大きくなるように設定される。このため、スプロケット用可動放射状溝19aが径方向に対して傾斜する角度のうち最小の角度(即ち、内周側端部191の第二角度β)が、スプロケット用固定放射状溝11aが径方向に対して傾斜する角度のうち最大の角度(内周側端部111の第一角度α)よりも大きく設定されている。
図5に示すように、ロッド用可動放射状溝19bは、上記のロッド用固定放射状溝12と交差して設けられ、これらの交差箇所に各ロッド支持軸29aが配設される。なお、ロッド用可動放射状溝19bは、それぞれ配設箇所が異なる点を除いては同様に構成されている。
このロッド用可動放射状溝19bとロッド用固定放射状溝12とは、径方向に対して反対方向に傾斜して設けられている。すなわち、ロッド用可動放射状溝19bは、上記のスプロケット用可動放射状溝19aと同様に、径方向に対して第二の周方向(公転方向に対して反対方向)に向けて傾斜して設けられている。
図4では、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cの相互間に五本のロッド用可動放射状溝19b(ここでは、公転方向とは反対方向へ向かう順に、スプロケット用可動放射状溝19aに近い方から順に、第一ロッド用可動放射状溝19b1,第二ロッド用可動放射状溝19b2,第三ロッド用可動放射状溝19b3,第四ロッド用可動放射状溝19b4,第五ロッド用可動放射状溝19b5と呼んで区別する)が設けられたものを例示する。
第一ロッド用可動放射状溝19b1は第一ロッド用固定放射状溝121に対応し、同様に、ロッド用可動放射状溝19b2,19b3,19b4,19b5はロッド用固定放射状溝122,123,124,125にそれぞれ対応している。各ロッド用可動放射状溝19b1,19b2,19b3,19b4,19b5と対応するロッド用固定放射状溝121,122,123,124,125との交差角度は等しく設定されており、各ロッド用可動放射状溝19b1,19b2,19b3,19b4,19b5と対応するロッド用固定放射状溝121,122,123,124,125とが対応する形状(径方向に対する傾斜角度)に設定されている。
なお、複数のロッド用固定放射状溝12が、何れも径方向に対して第一の周方向に向けて等しく傾斜して設けられていれば、各ロッド用可動放射状溝19bにかかる第二の周方向へ向かう傾斜角度も等しく設定することができる。
なお、ロッド用可動放射状溝19bは、ピニオンスプロケット20(図1参照)が何れの径方向位置にあるときでもピニオンスプロケット20間にガイドロッド29が等間隔に位置するように、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cに合わせて配設されている。
図2に示すように、第一回転部15は、固定ディスク10と一体回転する部分、即ち、回転軸1と一体回転する部分である。ここでは、第一回転部15が回転軸1の一部に設けられている。この第一回転部15は、固定ディスク10及び可動ディスク19よりも軸方向外側に配設されている。
図2,図6及び図7に示すように、第二回転部16は、可動ディスク19と接続部17を介して接続されている。なお、図6及び図7には、白抜きの矢印で反時計回りの公転方向を示している。
接続部17は、可動ディスク19及び第二回転部16と一体に回転し、固定ディスク10を覆うように配設されている。この接続部17は、固定ディスク10の外周(径方向外側)を覆う軸方向接続部17aと、固定ディスク10の軸方向外側を覆う径方向接続部17bとを有する。
軸方向接続部17aは、回転軸1の軸心C1と同心に設けられるとともに軸方向に延びる円筒形状をなしている。この軸方向接続部17aは、図2に示すように、軸方向内側が可動ディスク19の外周端部(外周部)19tに結合され、軸方向外側が次に説明する径方向接続部17bに接続されている。
図2,図6及び図7に示すように、第二回転部16は、第一回転部15の外周(径方向外側)を覆うように設けられ、回転軸1の軸心C1と同心の円筒形状に形成されている。ここでは、図2に示すように、第二回転部16が、可動ディスク19の外周端部19tから内周側にシフトされて軸方向に沿って設けられている。
図7には、第二カム溝16a(一箇所にのみ符号を付す)が周方向に間隔をおいて三箇所に設けられたものを例示するが、第二カム溝15aの形成箇所や形成個数は、第一カム溝15aの形成箇所や形成個数に応じて設定される。
相対回転駆動機構30は、上述した第一回転部15に設けられた第一カム溝15aと第二回転部16に設けられた第二カム溝16aとに加えて、第一カム溝15aと第二カム溝16aとが交差する第二交差箇所CP2に配設されたカムローラ90と、このカムローラ90に対して軸方向の力を伝達するメガネフォーク(軸方向力伝達部材)35と、このメガネフォーク35を軸方向に移動させる軸方向移動機構31とを備えている。
図2及び図7に示すように、カムローラ90は、円柱状に形成されている。このカムローラ90は、回転軸1の軸心C1に直交する方向に沿った軸心を有し、第一カム溝15aと第二カム溝16aとが交差する第二交差箇所CP2(何れも一箇所にのみ符号を付す)に挿通されている。このため、カムローラ90は、回転軸1の回転に連動して回転軸1の軸心C1を中心に回転する。なお、カムローラ90の外周には、第一カム溝15a及び第二カム溝16aのそれぞれに対応する箇所にベアリングが外嵌されている。
なお、図示省略するが、カムローラ90は、カム溝15a,16aから脱落しないように、適宜の抜け止め加工が施されている。かかる抜け止め加工としては、例えばカムローラ90の他端部に頭部を設けることや抜け止めピンを追加し、カムローラ90が軸方向に移動可能であって径方向に移動しないようにすることが挙げられる。
溝部35cは、カムローラ90の突出長さに対応する深さを有し、カムローラ90の一端部90aを収容している。すなわち、溝部35cは、径方向長さがカムローラ90の突出長さの円環状空間を有するものといえる。
フォーク支持部34は、モータ32の出力軸32aと同心の筒軸を有する円筒状に形成されている。このフォーク支持部34には、モータ32の出力軸32aが内挿されている。
また、フォーク支持部34は、内周にモータ32の出力軸32aに形成された雄ネジ部32bに螺合する雌ネジ部34aが螺設され、外周にメガネフォーク35のブリッジ部35bと係合するフォーク溝34bが凹設されている。
上記のメガネフォーク35,軸方向移動機構31を含む相対回転駆動機構30は、ピニオンスプロケット21,22,23から軸方向にシフトして設けられている。
軸方向移動機構31によってフォーク支持部34が軸方向に直線運動されると、フォーク支持部34に係合するメガネフォーク35を介して軸方向の力がカムローラ90に伝達され、カムローラ90も軸方向に移動される。
固定ディスク10に対して可動ディスク19が相対回転駆動されると、移動機構40A及び40Bにかかる説明で後述するように、固定ディスク10に設けられたスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cと可動ディスク19に設けられたスプロケット用可動放射状溝19aとが交差する第一交差箇所CP1が径方向に移動される。
次に、図2及び図5を参照して、スプロケット移動機構40A及びロッド移動機構40Bを説明する。
スプロケット移動機構40Aは、ピニオンスプロケット21,22,23のそれぞれに設けられた支持軸21a,22a,23aが内挿されるスプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cが形成された固定ディスク10と、スプロケット用可動放射状溝19aが形成された可動ディスク19と、相対回転駆動機構30(図2及び図7参照)とから構成されている。
このように、それぞれの移動機構40A,40Bの構成は、各移動対象の支持軸が異なるだけで、その他の構成は同様である。
図5(a)は、放射状溝11a,11b,11c,19aにおけるピニオンスプロケット21,22,23(図1及び図2等参照)の支持軸21a,22a,23aと放射状溝12,19bにおけるロッド支持軸29aとが回転軸1の軸心C1から最も近い位置に位置するものを示す。この場合、相対回転駆動機構30(図2参照)により可動ディスク19の回転位相を固定ディスク10に対して変更すると、図5(b),図5(c)の順に、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cとスプロケット用可動放射状溝19aとが交差する第一交差箇所CP1と、ロッド用固定放射状溝12とロッド用可動放射状溝19bとの交差箇所とが、回転軸1の軸心C1から遠ざかる。すなわち、これらの交差箇所に支持軸21a,22a,23a,29aを支持されたピニオンスプロケット20及びガイドロッド29は、回転軸1の軸心C1から等距離を維持しながら径方向に同期して移動される。
なお、入力側の移動機構40A,40Bが接円半径を拡径させるときには、チェーン6の弛緩や緊張が生じないように出力側の移動機構40A,40Bが接円半径を縮径させる。
次に、図2及び図6を参照して、機械式自転駆動機構50を説明する。ここでは、機械式自転駆動機構50がピニオンスプロケット20を挟んで対称に構成されるため、一側(図2の上方側)の構成に着目して説明する。
機械式自転駆動機構50は、上記したように、自転ピニオンスプロケット22,23を回転させ、チェーン6に対するピニオンスプロケット20間の位相ズレを解消するように自転ピニオンスプロケット22,23をスプロケット移動機構40Aと連動して機械的に自転駆動するものである。
ただし、機械式自転駆動機構50は、径方向移動時の固定ピニオンスプロケット21を自転させない構成も有している。
図6に示すように、固定ピニオンスプロケット21の支持軸21aは、固定ディスク10のスプロケット用固定放射状溝11aに挿通されている。この支持軸21aには、案内部材59が一体的に結合されている。
また、スプロケット用固定放射状溝11aの内壁に接する案内部材59の側壁、特に案内部材59の四隅に、ベアリングを装着すれば、案内部材59のよりスムーズな摺動を確保することができる。
機械式自転駆動機構50は、自転ピニオンスプロケット22,23の支持軸22a,23aのそれぞれと一体回転するように固設されたピニオン51,52と、ピニオン51,52のそれぞれに対応して噛合するように設けられたラック53,54と、を有する。
なお、ピニオン51,52に対するラック53,54の位置関係が異なる点を除いては、第一ピニオン51と第二ピニオン52とは同様に構成され、また、第一ラック53と第二ラック54とは同様に構成されている。
次に、チェーン6について説明する。
図9に示すように、ガイドロッド29にガイドされるチェーン6は、各ピニオンスプロケット21,22,23の歯車の列数(ここでは三列)に対応する本数が設けられている。ここでは、第一チェーン6A,第二チェーン6B及び第三チェーン6Cの三本が設けられている。
なお、チェーン6A,6B,6Cは、配設ピッチ以外は同様に構成される。
本発明の一実施形態にかかる無段変速機構は、上述のように構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
固定放射状溝11a,11b,11c,12と可動放射状溝19a,19bとが径方向に対して互いに反対方向に傾斜して設けられているため、固定放射状溝11a,11b,11c,12と可動放射状溝19a,19bとの交差角度を確保することができる。これにより、相対回転駆動機構30による固定ディスク10に対する可動ディスク19の回転トルクを低減させることができる。また、固定放射状溝11a,11b,11c,12及び可動放射状溝19a,19bにおけるピニオンスプロケット21,22,23の支持軸21a,21b,21c及びガイドロッド29の支持軸29bのひっかかり(スティック)を抑制することができる。
従来の無段変速機構では、径方向に沿う直線状の固定放射状溝と、かかる固定放射状溝に合わせて形成された曲線状の可動放射状溝とを有する。
従来の固定放射状溝が径方向に沿う直線状に形成されているのは、複合スプロケットによってトルク伝達されるときに、回転軸と回転動力を入出力する固定ディスクにおいて各ピニオンスプロケットの支持軸を通して作用する反力(ここでは「トルク反力」という)を、周方向に沿って固定放射状溝の壁部に作用させるためである。これにより、トルク反力によるピニオンスプロケットの径方向への移動が抑制される。
このため、可動放射状溝19a,19bの溝数を確保し、ピニオンスプロケット21,22,23及びガイドロッド29の数を確保することができる。これにより、チェーン6の巻き掛け半径の変動を抑制することができ、静音性の向上や動力伝達性の向上に寄与する。
例えば、従来の構成では間隔の確保が困難なガイドロッド用可動放射状溝19bどうしの間隔が確保されることで、ガイドロッド用可動放射状溝19bを区画する壁部に軸受けを配設することができ、ガイドロッド29と可動ディスク19との接触抵抗を低減させることもできる。
径方向に対して、スプロケット用固定放射状溝11a,11b,11cが傾斜する第一角度αよりもスプロケット用可動放射状溝19aが傾斜する第二角度βの方が大きく設定されるため、固定ディスク10に作用するトルク反力の径方向成分を抑制することができる。これにより、トルク反力によるピニオンスプロケット21,22,23の径方向への移動を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した一実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせてもよい。
上述の一実施形態では、固定放射状溝11a,11b,11c,12は、少なくとも内周部が外周に向かうに連れて径方向に対して第一の周方向に向けて傾斜するように設けられていればよく、外周部が径方向に対して第二の周方向に向けて傾斜するように設けられていてもよい。また、互いに反対方向に傾斜する内周部は、径方向中間部112,192よりも内周側端部111側の全領域に限定されず、内周側端部111やその周辺といった一領域であってもよく、更には、径方向中間部112,192を含む領域として扱うこともできる。かかる領域の内周部で、固定放射状溝11a,11b,11c,12と可動放射状溝19a,19bとが径方向に対して互いに反対方向に傾斜して設けられていればよい。
5 複合スプロケット
6 チェーン
10 固定ディスク(径方向移動用固定ディスク,自転用固定ディスク)
10p プレート
11a,11b,11c, スプロケット用固定放射状溝(固定ピニオンスプロケット案内溝)
111, 内周側端部
112, 径方向中間部
113, 外周側端部
11i, 内周部
11o, 外周部
12 ロッド用固定放射状溝
15 第一回転部
15a 第一カム溝
16 第二回転部
16a 第二カム溝
17 接続部
17a 軸方向接続部
17b 径方向接続部
17c 肉抜き部
19 可動ディスク(径方向移動用可動ディスク)
19a スプロケット用可動放射状溝
19i 内周部
19o 外周部
191 内周側端部
192 径方向中間部
193 外周側端部
19b ロッド用可動放射状溝
19A 連結シャフト
20 ピニオンスプロケット
21 固定ピニオンスプロケット
22 第一自転ピニオンスプロケット(進角側自転ピニオンスプロケット)
23 第二自転ピニオンスプロケット(遅角側自転ピニオンスプロケット)
20a,21a,22a,23a 支持軸
29 ガイドロッド
29a ロッド支持軸
29b ガイド部材
30 相対回転駆動機構
31 軸方向移動機構
32 モータ
33 運動変換機構
34 フォーク支持部
35 メガネフォーク(軸方向力伝達部材)
40A スプロケット移動機構
40B ロッド移動機構
50 機械式自転駆動機構
51 第一ピニオン(進角側ピニオン)
52 第二ピニオン(遅角側ピニオン)
53 第一ラック(進角側ラック)
54 第二ラック(遅角側ラック)
59 案内部材
90 カムローラ
90a 一端部
C1,C2,C3,C4 軸心
CP1 第一交差箇所
CP2 第二交差箇所
r1 最小径
r2 中間径
r3 最大径
θS,θC 径方向
α 第一角度
β 第二角度
Claims (4)
- 動力が入力又は出力される回転軸と、前記回転軸に対して径方向に可動に支持された複数のピニオンスプロケット及び複数のガイドロッドと、前記複数のピニオンスプロケット及び前記複数のガイドロッドを前記回転軸の軸心から等距離を維持させながら前記径方向に同期させて移動させる移動機構とを有する複合スプロケットを二組と、前記二組の複合スプロケットに巻き掛けられたチェーンとを備え、前記複数のピニオンスプロケット及び前記複数のガイドロッドの何れもを囲み且つ前記複数のピニオンスプロケット及び前記複数のガイドロッドの何れにも接する円の半径である接円半径の変更によって変速比を変更する無段変速機構であって、
前記移動機構は、
前記複数のピニオンスプロケット及び前記複数のガイドロッドの各支持軸が内挿される固定放射状溝が複数形成され、前記回転軸と一体回転する固定ディスクと、
前記固定放射状溝のそれぞれと交差する交差箇所に前記支持軸が位置する可動放射状溝が複数形成され、前記固定ディスクに対して同心に配置され且つ相対回転可能な可動ディスクと、を備え、
前記固定放射状溝の内周部と前記可動放射状溝の内周部とは、前記径方向に対して互いに反対方向に傾斜して設けられた
ことを特徴とする、無段変速機構。 - 前記径方向に対して、前記固定放射状溝の前記内周部が傾斜する第一角度よりも前記可動放射状溝の前記内周部が傾斜する第二角度の方が大きく設定された
ことを特徴とする、請求項1に記載に無段変速機構。 - 前記固定放射状溝は直線状に形成された
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の無段変速機構。 - 前記移動機構は、
前記可動ディスクを前記固定ディスクに対して相対回転駆動して、前記交差箇所を前記径方向に移動させる相対回転駆動機構を備えた
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の無段変速機構。
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