JP6179059B2 - 空気圧式動力工具の駆動装置 - Google Patents

Description

本発明は空気圧式動力工具の駆動装置に関するものである。特に本発明は、自動化された方法で多数の連続した穿孔作業を行なうのに適した高度な穿孔機器（ＡＤＥ）に関するものである。

従来の空気圧式動力工具は、ドリルビットを中に挿差できるソケットを備えたスピンドルを有している。スピンドルは、従来、２つの別個の歯車によって駆動され、これらの歯車は通常スリーブとしてスピンドルの周囲に同軸に設けられる。第一の歯車すなわち駆動歯車は、スピンドルを回転駆動するために軸方向スプラインに配置される。第二の歯車すなわち送り歯車は、送り歯車とスピンドルとの間の相互回転により、軸方向にスピンドルを送る軸方向の動きを生じるようにスピンドルに螺入される。送り歯車はスピンドルを前進又は後退のどちらもするように調整される。

従来、螺入された送り歯車は、スピンドルの回転速度よりも僅かに高い回転数で回転してスピンドルを前進させる。穿孔作業を終えると、送り歯車は角度的にブロックされた位置に位置決めされる。送り歯車は回転をブロックされるので、送り歯車に対してスピンドルの連続回転によってスピンドルを迅速にその初期位置まで後退させて戻すことになる。

そのような従来の空気圧式動力工具に内在する問題点は、スピンドル及び／又はスピンドルを送る歯車が、スピンドル及び歯車の相対的に高い回転速度によって噛みこんで動かなくなる（ジャム）ことにある。これは、噛みこんで動かない部品を緩める必要があることだけでなく、工具部品が重圧及び摩耗に晒されることになるので面倒である。

特許文献１：米国特許第２，７９１，９２２号には、確実に制御された電力供給を備え
る動力作動型工具が開示されている。このような動力工具では、スピンドルはその回転を駆動するスピンドルの内部に同軸に配置されている駆動軸にスプライン結合を介して接続される内溝を備えている。さらに、スピンドルは外ネジを備え、スピンドルを前後に送るための対応するネジスリーブが外ネジに設けられている。

特許文献１に開示された装置の欠点は、内部駆動軸及び外ネジスリーブの全長が少なくともスピンドルの可能な前進と同じ位長くなければならない点にある。しかも、かかる装置は、スピンドル、内部駆動軸及び外ネジスリーブの交換なくしてその他の前進長へ適応し得ない。

別の動力工具は、特許文献２：フランス国特許第２，９１８，５９２号に記載されている。この動力工具では、スピンドルはスプライン結合された駆動歯車によって角度付きで駆動され、そしてネジ送り歯車によって軸方向に送られる。両歯車はスピンドルの外側に同軸に配置されている。ネジ送り歯車は２つの異なる歯車比でモーターに接続可能であり、２つの異なる歯車比の一方では、スピンドルを前進させるようにネジ送り歯車がスピンドルより早く回転し、他方の歯車比ではスピンドルを後退させるようにネジ送り歯車がスピンドルより遅く回転する。

上記２つの歯車比を達成するために、ネジ送り歯車は間隔を置いた２つのはめば歯車伝動機構を備えている。従って、ネジ送り歯車はスピンドルの相対的に広い部分にのびている。特許文献１に開示された装置に対して特許文献２に記載された動力工具は、スピンドルの前進に対しさらに順応性があるという利点がある。

しかし両装置は、スピンドルを駆動し且つ送るための手段のジョイント長が、スピンドルの大きな伸長にわたって伸びているという欠点を含んでいる。このことは、スピンドルの有効長さを制限してしまい、しかも工具のヘッドはスピンドルを格納するために相対的に長い必要があることを意味している。これらの工具はしばしば非常に限定された空間で利用されるので、可能な限りヘッド長を短く保つことが重要である。

米国特許第２，７９１，９２２号 フランス国特許第２，９１８，５９２号

本発明の目的は、比較的小型で機能的なデザインの空気圧式動力工具を提供することにある。

本発明の別の目的は、噛みこんで動かなくなることがない構造で、工具の機能を危険に晒すことなくスピンドルの回転速度を相対的に高いレベルに維持できる動力工具を提供することにある。

本発明は、空気圧式モーターを有する空気圧式動力工具の駆動装置に関し、かかる駆動装置は切削要素を装着するためのスピンドルを備え、スピンドルは上記モーターに駆動接続され、またスピンドルはネジ及び軸方向溝を外側に備えており、スピンドルの駆動回転は駆動歯車によって駆動され、駆動歯車は、モーター出力軸に対し一定速度で回転するようスピンドル上の軸方向溝に係合され且つモーターに駆動接続され、また前記スピンドルには送り歯車が螺入され、送り歯車は前記スピンドルを前進又は後退させるためにスピンドルに対して回転することができる。送り歯車は中間送り歯車によって駆動され、中間送り歯車はそれぞれ第一及び第二の歯車結合を介してモーターに交換自在に駆動接続可能であり、中間送り歯車は、第一の歯車結合で送り歯車に対してスピンドルを前進させ、第二の歯車結合で送り歯車に対してスピンドルを後退させるために設けられている。

本発明による装置によれば、スピンドルの有効長を先行技術のものより実質的に増加させることができる。これは、駆動歯車と送り歯車とのジョイント長が本発明の装置によって大きく低減されるという事実によるものであり、送り歯車は中間送り歯車に相互接続され、中間送り歯車はモーター出力軸に交換自在に駆動接続可能である。

本発明の一実施形態では、中間駆動歯車は、モーターに駆動接続され、そして第一歯車軸に対して自由に回転するように第一歯車軸の周囲に軸支接続されている。中間駆動歯車は駆動歯車と歯合状態であり、また中間送り歯車は送り歯車と歯合状態であり、そして第一歯車軸に係合する第一歯車位置と中間駆動歯車に係合する第二歯車位置との間を上記歯車軸に沿って同軸に摺動するよう構成され、中間送り歯車の第一及び第二の歯車位置は
それぞれ第一及び第二の歯車結合に対応する。

本発明の別の実施形態では、第二歯車軸は、直接係合を介して中間駆動歯車を駆動し、また別個の結合部品を介して第一歯車軸を駆動するために設けられており、第一歯車軸は中間駆動歯車よりも速い回転速度で回転するように設けられている。

本発明のさらなる実施形態では、別個の結合部品はクラッチスリーブを備え、クラッチスリーブには、第二歯車軸に回転係合され、そして第二歯車軸に沿って同軸で摺動するように構成され、またクラッチスリーブには、第一歯車軸の第一結合と駆動係合する第二結合との滑らかな歯合に向かうバネ作用を備えたトルク制限バネによるバネ負荷が掛けられ、クラッチスリーブと第二結合との間に作用するトルクがクラッチスリーブに掛るバネ作用で画定された閾値トルク値を超えると、前記滑らかな歯合は途絶えることになる。

さらに本発明による別の実施形態では、第一結合と第二結合との間の駆動係合は、一次送りカセット歯車と相互接続された二次送りカセット歯車とを備える交換可能な送りカセットによって達成され、第一の歯車比は、一次送りカセット歯車を第一結合に、二次送りカセット歯車を第二結合に係合することによって達成され得る。また第二の異なる歯車比は、一次送りカセット歯車を第二結合に、二次送りカセット歯車を第一結合に係合することによって達成され得る。

本発明による別の実施形態では、後退バネは、中間駆動歯車と係合する第二歯車位置に中間送り歯車を押圧するために設けられ、中間駆動歯車ではなく第一歯車軸と係合する第二歯車位置に中間送り歯車を押し込むために、中間送り歯車を反対方向に作用させる空気圧が密封チャンバ内に設けられてもよい。この空気圧は印加されると後退バネの作用を無効にするようにされている。

さらに、クラッチスリーブは、トルク制限バネの作用に抗して摺動して第二結合部品とのその滑らかな歯合が途絶えると、クラッチスリーブの動作によってチャンバ内の圧力を放出することになり、それによって中間送り歯車が第一歯車軸と係合する第一歯車位置から外れて摺動して中間駆動歯車と係合する第二歯車位置に入るようになるような仕方で、チャンバに空気圧式に接続されてもよい。

本発明の別の実施形態では、中間送り歯車は軸受を介してシリンダに軸方向に接続され、かかるシリンダは、第一歯車軸に沿って同軸で摺動するように構成され、そして後退バネによってまた圧力チャンバ内の圧力によって反対方向に作用され、シリンダの位置によって直接的に、又後退バネの作用及びシリンダに作用するチャンバの圧力によって間接的に、中間送り歯車の軸方向位置が制御される。

さらに、中間送り歯車と中間駆動歯車との係合は、後退バネの作用によって一体に保持される滑らかな歯合によって達成される。

本発明の別の実施形態では、スピンドルの後退の初期段階で、中間駆動歯車への係合から中間送り歯車が外れるのを制限する保持機が設けられる。

本発明によるさらに別の実施形態では、シリンダの位置は、工具の制御ユニットに空気圧式に接続されており、シリンダは中間送り歯車と中間駆動歯車との間の滑らかな歯合が途絶え、シリンダが後退バネの作用に抗って摺動すると、動作を中断するために制御ユニットに空気圧式信号を発生させることになる。

さらに、制御ユニットは、動作を中断するための命令に応答して、工具の主弁を閉鎖する信号を発信するように設けられ得る。

本発明はまた、空気圧モーターと上記駆動装置とを備える空気圧式動力工具に関わる。

本発明のさらなる目的及び利点は以下の明細書の記載及び特許請求の範囲から明らかになる。

以下の詳細な説明においては添付図面が参照される。

本発明の第一の実施形態による動力工具を示す断面図。 第一の動作位置における図１の動力工具の部分詳細断面図。 第二の動作位置における図１の動力工具の部分詳細断面図。 第三の動作位置における図１の動力工具の部分詳細断面図。 図４ａの部分拡大断面図。 第四の動作位置における図１の動力工具の部分詳細断面図。 第五の動作位置における図１の動力工具の部分詳細断面図。

図１は、本発明による空気圧式動力工具１０の実施形態を示している。

動力工具１０はスピンドル１１を備え、スピンドル１１は、例えばドリルビット（図示していない）などの切削要素を保持して、前記ドリルビットを回転させ且つ前進させるように構成されている。ドリルビットはスピンドル１１の右側前端においてソケット１２内に設けるようにされている。スピンドル１１を回転させ且つ前進させるトルクを発生するために動力工具の下位部には空気圧モーター１３が設けられている。

空気圧モーター１３は、タービンモーター或いはベーンモーターの何れであってもよい。図示実施形態では、モーターはタービンモーターである。モーターは圧力約６．３バールの圧縮空気で駆動される。圧縮空気は主弁１４を介してモーターに導入される。

さらにモーター１３はモーター出力軸１６を備え、モーター出力軸１６は第二歯車軸１７まで歯車ボックス１５によってシフトダウンされ、第二歯車軸１７は結合部１８及び２０を介して第一歯車軸１９に結合される。

第二の歯車軸１７の回転は、駆動歯車２３を介してスピンドル１１に伝達される。送り歯車２５は、スピンドルを前後に送るよう構成される。かかる構成は、図２〜図６に示す詳細図面を参照して以下に詳しく説明する。

図２〜図６は、本発明による空気圧式動力工具の実施形態を異なる５つの動作モード、すなわち通常の穿孔作業（図２）、通常の穿孔作業の最終段階（図３）、スピンドルの後退の開始（図４ａ及び図４ｂ）、後退作業（図５）、及び後退作業の終了（図６）で示している。
１．通常の穿孔作業（図２）

図２に示された通常の穿孔作業中、穿孔が行なわれ、スピンドル１１はその前端にドリルビット（図示されていない）を保持するソケット１２を備えている。通常の穿孔段階中、スピンドル１１は、穿孔動作を行うために回転すると同時にスピンドル１１は前進するすなわち図面の右方へ軸方向に直進する。

スピンドル１１は、スピンドル１１のほぼ全長にわたって延びる外ネジ２１を備えている。さらにスピンドル１１は、スピンドル１１のほぼ全長にわたって延びる少なくとも一つの軸方向外溝２２を備え、外ネジ２１が前記溝２２によって軸方向に遮断されるようになっている。

駆動歯車２３はスピンドルの回転を駆動するために設けられている。駆動歯車２３は、スピンドル１１と駆動歯車２３との間の相互の軸方向移動は可能であるが、相互の回転運動はできないようスピンドル１１の軸方向溝２２の内に嵌合する軸方向内部突起２４を備えている。

さらに、内ネジ２６を備えた送り歯車２５は、スピンドル１１の外ネジ２１と螺合される。スピンドル１１の左方後端には止めリング２７が固定配置されている。

駆動歯車２３は、工具の動作を通して実質的に一定の速度で回転するようモーター１３に駆動接続されている。特に、第二歯車軸１７は、斜交結合部４８及び歯車ボックス１５の出力軸４７を介してモーター出力軸１６によって駆動される。さらに、第二歯車軸１７は、固定結合部６４を介して中間駆動歯車２８を駆動するために設けられている。中間駆動歯車２８は、上記第一歯車軸１９に対して自由に回転できるように第一歯車軸１９のまわりの軸受５１に装着されている。中間駆動歯車２８はさらに、スピンドルを駆動するために歯車伝動装置を介して駆動歯車２３に例えば歯合で結合されている。

上述のように、モーター出力軸１６から駆動歯車２３への完全な結合は全動作の下で変わることなく、駆動歯車２３及び従ってスピンドル１１は、作業が完了するまでの間一定速度で回転する。回転速度はモーター１３及び歯車ボックス１５の歯車比で画定され、そして通常毎分５００乃至４０００回転に設定されている。本発明の構成によれば、スピンドル１１の回転速度は毎分１２０００回転であり得る。高い回転速度は、本発明の送り歯車装置によって可能であり、これについては以下に詳細に説明する。

送り歯車２５は、第一及び第二の歯車結合を介してモーター１３に交換自在に駆動接続できる。これら両方の歯車結合は、二つの異なる歯車位置の間で第一歯車軸１９に沿って挿入可能な単一の中間送り歯車２９によって達成される。これら歯車位置の両方において中間送り歯車２９は同じ外歯車伝動装置３０を介して送り歯車２５に結合される。

図２では、中間送り歯車２９はこれら位置のうちの第一の位置に位置決めされ、第一の位置は第一歯車位置に対応している。この第一歯車位置において中間送り歯車２９は、内歯車伝動装置３１を介して第一歯車軸１９に結合される。歯車比は、この第一歯車位置で、中間送り歯車２９が第一歯車位置に位置決めされる際にスピンドル１１を前進させるように、送り歯車２５が駆動歯車２３よりも僅かに速く回転するようにされている。

中間送り歯車２９の内側表面には、第一歯車軸１９に対する内歯車伝動装置３１を完成する歯付き部６２が設けられている。中間送り歯車２９は、歯付き部６２内にすなわち図面左側に内空洞部５４を備え、第一歯車軸１９と係合しないようにされている。従って、中間送り歯車２９が、図面の右側すなわち第二歯車位置に対応する異なる２つの位置のうちの第二の位置に向けて直進すると、第一歯車軸１９に対する係合は解放されることになる。これについては、図４を参照して以下に詳細に説明する。

第二歯車軸１７から第一歯車軸１９及び中間駆動歯車２８へのそれぞれの歯車比は、第一歯車軸１９が中間駆動歯車２８よりも高速で回転するように構成されている。これらの回転速度の関係は、交換可能な送りカセット４４によって間接的に影響される。送りカセット４４は、一次送りカセット歯車４５及び二次送りカセット歯車４６を備えている。

第一歯車軸１９は第一結合部２０を備え、第一結合部２０は例えば六角形接続部を介して一次送りカセット歯車４５に接続される。一次送りカセット歯車４５は二次送りカセット歯車４６からの回転を伝達し、二次送りカセット歯車４６は第二結合部１８及びクラッチスリーブ４２を介して第二歯車軸１７に結合される。

従って、送りカセット４４は、第一歯車軸１９と第二歯車軸１７との間の相対速度を制御し、この相対速度は、間接的には第一歯車軸１９と中間駆動歯車２８との間の相対速度に影響する。さらに、歯車軸１７と１９との間の相対回転速度は、送りカセットを反対方向にすなわち第一結合２０に二次送りカセット歯車４６を接続させ又第二結合１８に一次送りカセット歯車４５を接続させることによって、反転することができる。

しかし、駆動歯車２３と送り歯車２５との間の相対速度は、第一及び第二の歯車軸１７及び１９の相対回転速度に依存しているだけではないことに留意しなければならない。上記のとおり、第二歯車軸１７と中間駆動歯車２８との間の直接的な伝動は、送りカセット４４で達成される歯車比に関係なく、中間駆動歯車２８が第一歯車軸１９よりも遅い回転速度で回転するようにされている。

このことから見ると、穿孔作業中、送りカセット４４によってスピンドル１１を前進させることになる速度が制御可能であるということになる。送りカセット４４は、別の歯車比を備えた別の送りカセットで反転させることもできるし交換することもできる。後退速度を含む他のパラメータは、送りカセット４４の歯車比の影響を受けないままであり、以下に明らかにする。

相互に関係する歯車の大きさを構成或いは適合させることで望ましい歯車比を達成することは、当業者には通常の慣行である。したがって本明細書での詳しい説明は省略する。

２．穿孔の最終段階（図３）

中間送り歯車２９は、軸方向に移動可能なシリンダ３２と相互作用することによって第一の歯車位置に保持される。シリンダ３２は、シリンダ３２と反対側のハウジング壁３４との間に介在する後退バネ３３によって第二の位置すなわち図面の右側に向って作動される。しかし、バネ力はシリンダ３２の反対側にあるチャンバ３５に作用する空気圧によって克服される。順方向送り穿孔動作の全体すなわちスピンドルが前進する限り、この空気圧は維持される。チャンバ３５は、２つの密封部材４９ａ及び４９ｂ例えばＯリングの形態で密封されている。

閉じられたチャンバ３５は、シリンダ３２、周囲のハウジング壁４３及び環状ハウジング要素６１によって画定さる。第一の密封部材４９ａは、シリンダ３２と周囲ハウジング壁４３との間を密封するために設けられ、また第二の密封部材４９ｂは、シリンダ３２と環状ハウジング要素６１との間を密封するために設けられている。チャンバ３５は、上記チャンバ３５内に空気圧を印加することによって環状ハウジング要素６１から離れた第一の歯車位置に向かってシリンダ３２を押圧するために上記バネ３３の作用に抗して拡張できる。

シリンダ３２は、軸方向軸受５０を介して中間送り歯車２９に軸方向に接続されている。軸方向軸受５０は、シリンダ３２及び中間送り歯車２９を軸方向に整列させ、しかも中間送り歯車２９をシリンダ３２に対して回転させることができる。シリンダ３２は、ハウジング壁４３に対して回転しないように設けられている。

図３において、スピンドル１１は穿孔の端部位置に到達しようとしている。スピンドル１１がその止め位置に到達する前の数秒間、止めリング２７はポジティブ止め部材３６に当接し、止めリング２７の作動部３７は保持機構３９のレバー３８に到達する。保持機構は、さらに一枚歯のラチェット４０を備えており、ラチェット４０は、ラチェット４０の歯５７が相互作用領域すなわち周囲ハウジング壁４３の内側下方に向けられるように、レバー３８の作用によって回転し、歯５７はシリンダ３２の動作と相互作用することになる。

ラチェットは、図２に示すように、開放位置に向けてバネ荷重が掛けられており、歯５７は相互作用領域に到達しないように位置決めされ、シリンダ３２と干渉しないようにされている。さらに、ラチェット４０はレバー３８に向かうバネ５８の作用に抗して回転可能である。これによって、シリンダ３２は、肩部５５がラチェット４０の歯を通過し得るように、順方向すなわち図面の右方へラチェットの歯を通過させることができる。保持機構３９の機能は、図４及び図５を参照して以下に詳細に説明する。

止めリング２７がポジティブ止め部材３６に当接するとほぼ同時に、送り歯車２５における動作トルクＴは瞬時に上昇する。この上昇したトルクは、中間送り歯車２９、第一歯車軸１９、並びに第一及び第二の結合部２０、１８のそれぞれを介して第二歯車軸１７へ伝達されることになる。第二歯車軸１７と第二結合部１８との間の結合は、トルク制限バネ４１の作用によって一体で保持される第二結合部１８とクラッチスリーブ４２との間の滑らかな歯の相互作用によって達成される。バネ４１はクラッチスリーブ４２に作用し、クラッチスリーブ４２は、スプラインを介して第二歯車軸１７に、また前記滑らかな歯の相互作用を介して第二結合部１８に結合される。第二結合部１８は、第二歯車軸１７と回転係合しないが第二歯車軸１７に対して自由に回転してもよい。第二結合部１８の回転に代わって、クラッチスリーブ４２とのその係合によって制御されてもよい。

バネ４１のバネ力は、動作トルクＴが予定の前進閾値Ｔ_Ａを超える場合に、クラッチスリーブ４２と第二結合部１８との間の相互作用が途絶えるように選択されている。一旦この予定の閾値を超えると、送り歯車２５の駆動が中断されるように接続をスキップする。さらに、接続がスキップすると直に、クラッチスリーブ４２はバネ４１の作用に抗して直進し、第二結合部１８から離れすなわち図面の左方へ動く。それにより、チャンバ３５内の圧力を放出するために通路（図示していない）が開放される。チャンバ３５内の圧力が放出されると、シリンダ３２及び中間送り歯車２９は後退バネ３３の作用で第二歯車位置すなわち図面の右方に向かって押されることになり、中間送り歯車２９は中間駆動歯車２８と係合する。これが後退段階の開始につながる。

３．スピンドルの後退の開始（図４ａ及び４ｂ）

中間送り歯車２９が第二歯車位置まで押されると、同じ外歯車伝動装置３０を介して送り歯車２５に結合されたままとなる。しかし、内歯車伝動装置から第一歯車軸１９への接続が解かれることになる。なぜならば、歯付き部６２に代わって中間送り歯車２９の内部ブランク部５４が第一歯車軸１９の接続突起６３に対向して位置決めされることになるので、この内歯車伝動装置は失われ、結果として相互作用は達成されない。

代わりに、中間送り歯車２９は中間駆動歯車２８に結合されることになる。中間送り歯車２９と中間駆動歯車２８との間の相互作用は、後退バネ３３の作用によって保証され且つ中間送り歯車２９と中間駆動歯車２８との間の滑らかな歯当たりの相互作用によって行われる。後退バネ３３のバネ作用は、トルク制限バネ４１の作用よりも穏やかで小さい。

中間送り歯車２９は、穿孔中順方向送りの最終段階で噛みこんで動かなくなることがあり得る、しかも中間送り歯車２９を緩めるために必要な動作トルクＴは、後退バネ３３単独の作用によって維持が可能な力より高くなり得る。

そのために上述の保持機構３９が設けられる。

スピンドル１１がその最前進位置すなわち図４ａ及び図４ｂに示すようになると、一枚歯のラチェット４０はレバー３８における止めリング２７の作用によって押されて、その最も下方の位置まで軸Ｘを中心に回転するようにされる。この最も下方の位置において、ラチェット４０の歯５７は、後退バネ３３の作用によりラチェットの下を通過する際にシリンダ３２の肩部５５に係合することになる。ラチェット４０は、中間駆動歯車２８との係合に向かってシリンダ３２を通過させるように配置されている。

図４ｂで見られるように、支持体５９は、ラチェット４０がブロック位置に到達するとラチェット４０の回転を止めるためにラチェット４０のカムプロフィール６０と相互作用するように設けられている 。従って、図４ｂに示す位置で、レバー３８は止めリング２７との接触により反時計回りの動きが制限され、そしてラチェット４０は、ラチェット４０のカムプロフィール６０と支持体５９との間の接触により、時計回りの動きが制限される。

しかし、レバー３８とラチェット４０との間にあるバネ５８によって、シリンダ３２の肩部５５が第二の位置に向かってラチェット４０の歯５７を通過できるように、すなわち図３に示す位置から図４ａ及び図４ｂに示す位置までラチェット４０を僅かに反時計回りに回転させることができる。

図４ａ及び図４ｂに示す位置では、中間送り歯車２９及び中間駆動歯車２８との間で係合が行われ、シリンダ３２はラチェット４０の歯５７と肩部５５との係合によってブロックされる。このような係合により、中間送り歯車２９が中間駆動歯車２８との係合から外れて動くのが制限される。従って、送り歯車２５がスピンドル１１に噛みこんで動かなくなり、中間送り歯車２９及び中間駆動歯車２８との間の滑らかな歯合で生成される軸方向力がバネ３３によって加えられる力を超えるようになる場合であっても、中間送り歯車２９と中間駆動歯車２８との間の係合はそのまま保持されることになり、送り歯車２５とスピンドル１１は緩められることになり、スピンドル１１の後退が開始されることになる。

中間送り歯車２９は、中間駆動歯車２８及び中間送り歯車２９が同じ回転速度で回転するように中間駆動歯車２８に結合されているが、送り歯車２５は、駆動歯車２３よりも遅い回転速度で回転することになる。これは、中間送り歯車２９から送り歯車２５への歯車比が中間駆動歯車２８から駆動歯車２３への歯車比とは異なっているという事実によるものである。なお、図４ａにおいて、送り歯車２５が駆動歯車２３よりも僅かに大きい直径を有する点に留意されたい。このことから当然送り歯車２５の回転速度は駆動歯車２３の回転速度よりも遅くなる。

また、当然のことながら、送り歯車２５と駆動歯車２３との回転速度差は、スピンドル１１を強制的に後退すなわち図面の左方へ移動させることになる。

４．後退段階（図５）

図５は、後退段階中の動力工具の一部分を示している。図５には、他の図面よりも詳細に保持機構３９を示している。

後退段階の最初の部分で、止めリング２７の前端５３は保持機構３９のレバー３８と相互作用することになり、ラチェット４０は持ち上げられ、ラチェット４０の歯５７がもはや相互作用領域の下方に向かないようになり、中間送り歯車２９を第二の歯車位置でブロックするためにシリンダ３２の肩部５５に係合する。しかもこの地点では、スピンドルを噛みこんで動かなくなった位置から緩めてきているので、後退バネ３３のバネ作用は中間送り歯車２９と中間駆動歯車２８との間の相互作用を保留するのに十分であり、スピンドル１１の後退は比較的低いトルクで終えることができる。

５．後退の終了（図６）

スピンドル１１におけるソケット１２の背面部分が駆動歯車２３に当接すると、スピンドル１１の後退は終了する。この時点でこの相互作用によって、送り歯車２５において動作トルクＴを増加することになる。トルクの増加は、中間送り歯車２９と中間駆動歯車２８との間の結合で感知されて、この結合の相互作用が失われることになり、中間送り歯車２９及びシリンダ３２は間欠的に後退バネ３３の作用に抗してすなわち図面の左方へ押されることになる。この時点で、ラチェット４０は相互作用領域に到達しないように位置され、さもなければその歯５７はシリンダ３２の肩部５５と干渉し得る。

上記したように、後退バネ３３のバネ作用は、トルク制限バネ４１の作用よりも穏やかで小さい。これにより、後退閾値トルク値Ｔ_Ｒが前進閾値トルク値Ｔ_Ａよりも低いことになる。これによって、クラッチスリーブ４２と結合部１８との間の係合は、中間駆動歯車２８と中間送り歯車２９との間の係合を無効にすることになり、すなわち中間駆動歯車２８と中間送り歯車２９との間の係合以上に強いことになる。

このことは、クラッチスリーブ４２と結合部１８との間の係合が、後退の終了後、穿孔再開時に駆動歯車２３及び送り歯車２５の両方を間接的に駆動することになる理由から重要である。従って、トルク制限バネ４１のバネ作用は、初期の後退位置からスピンドル１１を緩めるのに十分であるように設定される。スピンドル１１がその初期位置で噛みこんで動かない状態は、後退バネ３３のバネ作用によって調節され、このバネ作用は、動作トルクＴが後退段階で後退閾値トルク値Ｔ_Ｒを超えると克服され、後退を終える。

後退バネ３３のバネ作用が克服されると、シリンダ３２の動作によって、第一歯車軸１９の周りのハウジング壁４３内に配置された弁を開放する。このことは電動工具の制御ユニットにより感知され、穿孔作業を終了し、主弁１４（図１にのみ示されている）を閉じる。

上記の通り、本発明は特定の実施形態に関して説明してきた。しかし、本発明は、これらの実施形態のいずれかに限定されるものではない。むしろ本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義されるものである。

１０ 動力工具
１１ スピンドル
１２ ソケット
１３ 空気圧モーター
１４ 主弁
１５ 歯車ボックス
１６ モーター出力軸
１７ 第二歯車軸
１８；２０ 結合部
１９ 第一歯車軸
２１ 外ネジ
２２ 軸方向溝
２３ 駆動歯車
２４ 内部軸方向突起
２５ 送り歯車
２７ 停止リング
２８ 中間駆動歯車
２９ 中間送り歯車
３０ 外部歯車伝動装置
３１ 内部歯車伝動装置
３２ シリンダ
３３ 後退バネ
３４ ハウジング壁
３５ チャンバ
３６ ポジティブ止め部材
３７ 作動部
３８ レバー
３９ 保持機構
４０ 歯付きラチェット
４１ トルク制限バネ
４２ クラッチスリーブ
４３ ハウジング壁
４４ 送りカセット
４５ 一次送りカセットギア
４６ 二次送りカセットギア
４７ 出力軸
４８ 斜交結合
４９ａ；４９ｂ 密封部材
５０ 軸方向軸受
５１ 軸受
５４ 内部空洞部
５５ 肩部
５７ 歯
５８ バネ
５９ 支持体
６０ カムプロフィール
６１ 環状ハウジング要素
６２ 歯付き部
６３ 接続突起
６４ 固定結合
Ｔ トルク
Ｔ_Ａ 前進閾値トルク値
Ｔ_Ｒ 後退閾値トルク値
Ｘ 軸

Claims (12)

1. 空気圧モーター（１３）を有する空気圧式動力工具の駆動装置であって、
   該駆動装置が、切削要素を装着するためのスピンドル（１１）を有し、
   前記スピンドル（１１）が前記モーター（１３）に駆動接続され、
   前記スピンドル（１１）が、その外面に、ネジ（２１）及び軸方向溝（２２）の両方を備え、
   前記スピンドル（１１）が、モーターの出力軸（１６）に対して一定の回転速度で回転するように、スピンドル（１１）の軸方向溝（２２）と係合し且つモーター（１３）に駆動接続される駆動歯車（２３）によって回転駆動され、
   また、前記スピンドル（１１）に、送り歯車（２５）が螺入され、
   前記送り歯車（２５）がスピンドル（１１）を前進及び後退させるためにスピンドル（１１）に対して回転され得る
   駆動装置において、
   前記送り歯車（２５）が中間送り歯車（２９）で駆動され、
   前記中間送り歯車（２９）が、第一及び第二の歯車接続状態をそれぞれ介してモーター（１３）に交換自在に駆動接続可能であり、
   第一歯車接続状態において送り歯車（２５）に対してスピンドル（１１）を前進させるように、駆動歯車（２３）の一定の回転速度より僅かに高い回転速度で送り歯車（２５）を駆動し、かつ、
   第二歯車接続状態において送り歯車（２５）に対してスピンドル（１１）を後退させるように、駆動歯車（２３）の一定の回転速度より低い回転速度で送り歯車（２５）を駆動する
   ように中間送り歯車（２９）が構成され、かつ、
   該駆動装置が、さらに、
   第一歯車軸（１９）と、モータ（１３）に駆動接続され、かつ、第一歯車軸（１９）に回転自在に軸支された中間駆動歯車（２８）とを備え、
   前記中間駆動歯車（２８）が前記駆動歯車（２３）と歯合状態であり、
   前記中間送り歯車（２９）が、前記送り歯車（２５）と歯合状態であり、かつ、
   前記中間送り歯車（２９）が、
   前記第一歯車軸（１９）と係合する第一の歯車位置と、
   前記中間駆動歯車（２８）と係合する第二の歯車位置と
   の間を前記歯車軸（１９）に沿って同軸で摺動するよう構成され、
   前記中間送り歯車（２９）の前記第一及び第二の歯車位置が、それぞれ前記第一及び第二の歯車接続状態に対応する
   ことを特徴とする駆動装置。
2. 直接係合を介して中間駆動歯車（２８）を駆動し且つ別個の結合部品（１８、４５；２０、４６、４２）を介して第一歯車軸（１９）を駆動する第二歯車軸（１７）が設けられ、
   前記第一歯車軸（１９）が中間駆動歯車（２８）よりも速い回転速度で回転するように設けられる
   ことを特徴とする請求項１に記載の駆動装置。
3. 前記別個の結合部品（１８、４５；２０、４６、４２）が
   クラッチスリーブ（４２）を備え、
   クラッチスリーブ（４２）が第二歯車軸（１７）に回転係合され且つ第二歯車軸（１７）に沿って同軸で摺動するよう構成され、
   前記別個の結合部品（１８、４５；２０、４６、４２）が、さらに、
   第二歯車軸（１７）と駆動結合可能な第二結合部（１８）及び
   第一歯車軸（１９）と駆動結合可能な第一の結合部（２０）を備え、
   クラッチスリーブ（４２）が、前記第二結合部（１８）との滑らかな歯合に向けてバネ作用（Ｆ_Ａ）を備えたトルク制限バネ（４１）によって付勢され、
   前記第二結合部（１８）が、第一歯車軸（１９）の第一結合部（２０）と駆動係合され、
   クラッチスリーブ（４２）と前記第二結合部（１８）との間に作用するトルク（Ｔ）がクラッチスリーブ（４２）のバネ作用（Ｆ_Ａ）で画定された閾値トルク値（Ｔ_Ａ）を超えると、前記滑らかな歯合が途絶える
   ことを特徴とする請求項２に記載の駆動装置。
4. 前記第一結合部（２０）と前記第二結合部（１８）との間の駆動係合が、
   前記別個の結合部品（１８、４５；２０、４６、４２）の一部を構成する一次送りカセット歯車（４５）及び相互接続された二次送りカセット歯車（４６）を備える交換可能な送りカセット（４４）によって達成され、
   第一の歯車比が第一結合部（２０）に一次送りカセット歯車（４５）を又第二結合部（１８）に二次送りカセット歯車（４６）を係合することによって達成でき、
   異なる第二の歯車比が第一結合部（２０）に第二送りカセット歯車（４６）を又第二結合部（１８）に一次送りカセット歯車（４５）を係合することによって達成できる
   ことを特徴とする請求項３に記載の駆動装置。
5. 後退バネ（３３）が中間駆動歯車（２８）と係合する第二の歯車位置内に中間送り歯車（２９）を押すように設けられ、
   中間駆動歯車（２８）とではなく第一の歯車軸（１９）と係合する第二の歯車位置内に中間送り歯車（２９）を押すために、中間送り歯車（２９）に反対方向に作用させるための空気圧が密封チャンバ（３５）内に設けられ、
   空気圧が加えられると後退バネ（３３）の作用を無効にするようにされている
   ことを特徴とする請求項１〜４の何れか一項に記載の駆動装置。
6. クラッチスリーブ（４２）がトルク制限バネ（４１）の作用に抗して摺動し、
   第二結合部（１８）とのその滑らかな歯合が途絶えると、クラッチスリーブ（４２）の動作がチャンバ（３５）内の圧力を放出するようにして前記クラッチスリーブ（４２）がチャンバ（３５）に空気圧式に接続（３５）され、
   それによって中間送り歯車（２９）が第一の歯車軸（１９）と係合する第一の歯車位置から外れて中間駆動歯車（２８）と係合する第二の歯車位置内に摺動する
   ことを特徴とする請求項３に従属する請求項５に記載の駆動装置。
7. 中間送り歯車（２９）が軸受（５０）を介してシリンダ（３２）と軸方向に接続され、
   シリンダ（３２）が第一歯車軸（１９）に沿って同軸で摺動するよう構成され、
   後退バネ（３３）によってまた反対方向には圧力チャンバ（３５）内の圧力によって作用され、
   直接的にはシリンダ（３２）の位置によって、間接的には後退バネ（３３）の作用及びシリンダ（３２）に作用するチャンバ（３５）内の圧力によって、
   中間送り歯車（２９）の軸方向位置が制御される
   ことを特徴とする請求項６に記載の駆動装置。
8. 中間送り歯車（２９）と中間駆動歯車（２８）との係合が後退バネ（３３）の作用により一体で保持される滑らかな歯合によって達成される
   ことを特徴とする請求項７に記載の駆動装置。
9. スピンドル（１１）の後退の初期段階において、中間駆動歯車（２８）との係合から中間送り歯車（２９）が外れるのを制限する保持機構（３９）が設けられる
   ことを特徴とする請求項８に記載の駆動装置。
10. シリンダ（３２）の位置に応じて工具の制御ユニット（５２）へ空気圧信号が送られるように構成され、
    中間送り歯車（２９）と中間駆動歯車（２８）との間の滑らかな歯合が途絶え、シリンダ（３２）が後退バネ（３３）の作用に抗して摺動した時に、
    シリンダ（３２）が操作を中断させるために制御ユニット（５２）への空気圧信号を発生させる
    ことを特徴とする請求項８又は９に記載の駆動装置。
11. 制御ユニット（５２）が動作を中断する命令に応じて工具の主弁（１４）を閉じるように信号を送る
    ことを特徴とする請求項１０に記載の駆動装置。
12. 請求項１〜１１のいずれか一項に記載の空気圧モーター（１３）及び駆動装置を備えることを特徴とする空気圧式動力工具。

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