以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態のアクチュエータ21は、図1〜3に示すように、自動車用安全装置としてのフード跳ね上げ装置(以下、適宜、「跳ね上げ装置」と略す)U1に使用されるものであり、車両Vにおけるフードパネル10の後端10c側のヒンジ機構11に、配設される。
なお、本明細書では、特に断らない限り、前後と上下の方向は、それぞれ、車両V(図1参照)の前後と上下の方向に一致し、左右の方向は、車両Vの前方側を見た際の左右の方向に一致させている。
また、第1実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ5には、図1に示すように、歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサ6が、配設されており、センサ6からの信号を入力させている図示しない制御回路が、センサ6からの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、アクチュエータ21のガス発生器70の図示しない火薬を点火させ、作動用ガスGを発生させることにより、アクチュエータ21を作動させて、跳ね上げ装置U1を作動させるように(図3,5参照)、構成されている。
フードパネル10は、図1,2に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁10d,10e側における後端10c近傍に配置されるヒンジ機構11により、車両Vの車体(ボディ)1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル10は、アルミニウム合金等からなる板金製として、上面側のアウタパネル10aと、下面側に位置してアウタパネル10aより強度を向上させたインナパネル10bと、から構成されている。フードパネル10は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形可能に構成されている。そして、実施形態では、車両Vと歩行者との衝突時に、アクチュエータ21が作動されて、図3に示すように、上昇したフードパネル10の後端10cと、エンジンルームERと、の間に、変形スペースSを形成できることから、曲げ塑性変形時の塑性変形量を増大させることができ、フードパネル10は、歩行者の運動エネルギーを多く吸収することができる。
ヒンジ機構11は、フードパネル10の左縁10dと右縁10eとの後端10c側に、それぞれ、配設される。そして、ヒンジ機構11は、フードパネル10の後端10cの下方におけるボディ1側に固定されるヒンジベース12と、フードパネル10の後端10cの下面側に配置される取付プレート15と、ヒンジベース12と取付プレート15とに軸支されるヒンジアーム14と、を備えて構成される。ヒンジベース12は、詳しくは、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2aに、固定されている。そして、ヒンジ機構11は、フードパネル10の通常使用の開き時に、ヒンジアーム14のヒンジベース12側となる元部端14a側の軸支部位を回転中心として開く構成としている(図2の二点鎖線参照)。
なお、このヒンジアーム14は、元部端14aから先端14bを前方に延ばすように配設されて、元部端14aが、支持軸13を利用してヒンジベース12の後端側に連結され、この支持軸13を回転中心として、回動可能とし、また、先端14b側も、支持軸16を利用して、取付プレート15の前端側に連結され、この支持軸16を回転中心として、回動可能である。左右の支持軸13,16は、それぞれ、軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように、配設されている。但し、通常使用時には、ヒンジアーム14と取付プレート15との各連結部14c,15aに連結されるアクチュエータ21が、実施形態の場合、伸長防止用の係止機構(伸長防止用ロック機構)FR(FR1)によって伸長しないので、ヒンジアーム14は、取付プレート15に対して回動しない。そのため、フードパネル10は、通常使用の開閉時、支持軸13の部位を回転中心として、開閉することとなる。すなわち、フードパネル10を開く際には、図2の実線から二点鎖線に示すように、左右の支持軸13を回転中心として、各ヒンジアーム14の先端14b側とともに、フードパネル10の前端10f側が上昇することとなって、フードパネル10を前開きで開くことができ、そして、前端10f側を下せば、支持軸13を回転中心として回転して、フードパネル10が閉じることとなる。
また、左右のヒンジ機構11は、左右対称形として配設され、ヒンジアーム14と取付プレート15とのエンジンルームER側の面の連結部14c,15aに、それぞれ、アクチュエータ21の両端(連結部25,65)が連結されている。ヒンジアーム14のアクチュエータ21との連結部14cは、元部端14aと先端14bとの間の中間部位より、先端14b側に接近して配置され、取付プレート15のアクチュエータ21との連結部15aは、支持軸16より後方に配置されている。
なお、フードパネル10の前端10f側には、公知のフードロック機構8が配設されている。フードロック機構8は、フードパネル10の前端10f下面に固定されるロックストライカ8aと、ボディ1側に配設されてロックストライカ8aを係止するラッチ8bと、を備えて構成される。ラッチ8bは、図示しないレバーを操作しなければ、係止したロックストライカ8aを係止解除できないように構成されており、フードパネル10の後端10cの上昇時でも、フードパネル10の前端10fは、ロックストライカ8aを係止するラッチ8bにより、ボディ1側から離れるように上昇しない。
さらに、フードパネル10の後方には、図2,3に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方における合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド3の下部3a側に連ならせるように配設されている。また、フロントウィンドシールド3の左右には、図1に示すように、フロントピラー4,4が、配設されている。
第1実施形態のアクチュエータ21は、図4,5に示すように、作動時に作動用ガスGを発生させるガス発生器70と、ガス発生器70を収納して保持するガス側部22と、ガス発生器70から発生する作動用ガスGに押圧されて、ガス側部22から離れるように相対的に前進移動して、アクチュエータ21を伸長させる非ガス側部52と、を備えて構成される。このアクチュエータ21は、略円柱状に形成されており、作動時、ガス発生器70が作動用ガスGを発生させると、移動側部としての非ガス側部52が、アクチュエータ21の略円柱状の中心軸を軸心(移動中心軸でもある)Cとして、その軸心Cに沿って、ガス側部22から離れるように、所定作動ストロークSL分(図5参照)、前進移動することとなる。
なお、車両搭載状態では、アクチュエータ21は、作動時、所定作動ストロークSL分、ガス側部22に対して非ガス側部52が斜め上後方に前進移動して伸長し(図2,3参照)、ヒンジアーム14と取付プレート15との連結部14c,15a相互を離隔させる。この時、ヒンジアーム14と取付プレート15との相互の交差角度θ0が大きくなり、フードパネル10は、ラッチ8bに係止された前端10fを上昇させずに、後端10cを上昇させることとなる。
そして、このアクチュエータ21では、作動前の移動側部としての非ガス側部52が前進移動しないように、既述した伸長防止用の係止機構(伸長防止用ロック機構)FR(FR1)を備え、さらに、作動後における支持したフードパネル10の後端10cを下降させないように、前進移動後の非ガス側部52の後退移動を防止する後退防止用のロック機構BR(BR1)を備えている。
第1実施形態の場合、係止機構FR1は、図6に示すように、非ガス側部52の収納溝57に収納保持された係合凸部としてのロック用凸部を構成するロックリング63と、ロックリング63と係合するガス側部22に設けられた係合凹部として仮保持凹部35と、を備えて構成される。また、ロック機構BR1は、図7に示すように、ロック用凸部としてのロックリング63、復元規制面32を有した収容溝30、ロックリング63を収納する後述する収納溝57、及び、収容溝30の周縁と収納溝57の周縁とに設けられた一対の挟持面31,58、を備えて構成されている。
そして、ガス発生器70は、作動時に、図示しない所定の火薬を点火させ、火薬自体の燃焼により、あるいは、さらに火薬に着火されるガス発生剤の燃焼により、作動用ガスGを発生させるスクイブやマイクロガスジェネレータ等が使用されており、作動用ガスGを吐出する先端70aから離れた元部側に、図示しない制御回路からの点火電気信号を入力させるリード線70cが、接続されている。そして、ガス発生器70は、図示しない制御回路からの点火電気信号を入力すると、内蔵されている火薬に点火して燃焼させ、さらに適宜、ガス発生剤も燃焼させて、燃焼ガスを発生させ、その燃焼ガスを作動用ガスGとして、先端70aから吐出させて非ガス側部52の天井壁部53へ供給する。また、第1実施形態の場合、ガス発生器70は、リード線70cを突出させた状態で、ガス側部22のインナケース27内に収納されるように、ポリアミド等からなる合成樹脂製の樹脂部72と一体成形される組付体75として構成され、そして、組付体75として、インナケース27に収納される構成としている。
この組付体75は、インナケース27(ガス側部22)の元部端24a側の開口27cから挿入させて、ガス発生器70の鍔部70bを、インナケース27の後述する段差38に当て、そして、樹脂部72に設けられた貫通孔72aに、楕円管状の止め具44を嵌め込んで抜け止めして、ガス側部22(インナケース27)に収納保持されている。なお、止め具44は、インナケース27に開口している組付孔40に嵌め込まれて固定される。
そして、ガス側部22は、略円筒状の鋼等からなる金属製のインナケース(筒状部材)27から形成されて、先端側(図4,5に示す上端側)に作動用ガスGを流出させるために円形に開口した開口端23を備え、開口端23から離れた元部24側にガス発生器70を配設させるとともに、元部端24a側を、ヒンジアーム14側に、連結させている。ヒンジアーム14側に連結される連結部25は、連結孔部25aを備えて構成され、そして、連結孔部25aに挿入される軸支具(軸支ピン)18を利用して、ヒンジアーム14の連結部14cに対して、回動自在に連結されている。軸支具18は、連結孔部25aを貫通して、ヒンジアーム14の連結部14cに回動自在に連結される。なお、連結孔部25aは、第1実施形態の場合、組付体75を収納保持(抜け止め)するためのインナケース27の組付孔40に固定された止め具44の内周側の貫通孔を、利用している。
ガス側部22を構成するインナケース27は、外周面27aの先端(開口端23)側に、フランジ部28を突出させ、内周面27bの元部24側に、開口端23側に向かって内径を狭める段差38を設けて構成されている。段差38には、既述したように、樹脂部72で被覆されたガス発生器70の鍔部70bが当接されている。なお、インナケース27の内周面27bと組付体75との間には、ガス発生器70側の気密性を確保するためのゴム製の円環状のパッキン47が配設されている。
外周面27a側のフランジ部28には、図4,7に示すように、環状溝29が形成されて、環状溝29には、非ガス側部52の前進移動時のガスシール性を確保するためのゴム製の円環状のシール材(パッキン・Oリング)46が嵌め込まれている。
そして、外周面27a側のフランジ部28の近傍には、図4,7に示すように、アクチュエータ21の作動完了時に、非ガス側部52の後退を防止するための後退防止用ロック機構BR(BR1)を構成する挟持面31と復元規制面32とを備えた収容溝30が形成されている。収容溝30は、底面を復元規制面32とし、フランジ部28から離れた側で復元規制面32から立ち上がる段差面を、ロックリング63を挟持する一方の挟持面(係止規制面)31としている。
なお、収容溝30の復元規制面32までの深さ寸法、換言すれば、係止規制面31の軸心Cの直交方向に沿う幅寸法B1は、ロックリング63の断面の直径寸法D1より、小さく設定されている。
また、フランジ部28の収容溝30側の段差面は、アクチュエータ21の作動時に、非ガス側部52の先端部54a側を止める非ガス側部52の抜け止め用の規制面28aとなり、アクチュエータ21の最大伸長(最大作動ストローク)を制限することとなる。そのため、フランジ部28は、非ガス側部52の前進移動時のストッパとしての機能を果たす。
そして、インナケース27の外周面27aにおけるガス発生器70より元部端24a側の位置には、係合凹部としての仮保持凹部35が、形成されている(図5,6参照)。仮保持凹部35には、弾性変形する係合凸部としてのロック用突部兼用のロックリング63が、部分的に嵌合するように、配設されている。
仮保持凹部35は、実施形態の場合、インナケース27の外周面27aにおいて、軸心Cの周方向の全周に設けられずに、周方向の略1/3〜1/2程度として、略90度で交差する傾斜面35a,35bを設けたV字溝として構成されている。
ロックリング63は、円形断面の弾性変形可能なばね鋼等からなるCリングから構成され(図8参照)、縮径可能に、軸心Cの周方向において、内周側部位63aの一部を仮保持凹部35に収納させつつ、ガス側部22の外周面27aと傾斜面35a,35bとに接触した拡径状態で、配設されている。係合凸部としてのロックリング63の直径寸法D1と仮保持凹部35のV字溝との関係は、実施形態の場合、ロックリング63が仮保持凹部35のV字溝に収納された際、直径寸法D1の半分程度が外周面27aに突出する状態、換言すれば、最も、仮保持凹部35に深く収納された箇所では、ロックリング63の断面中心RCがガス側部22の外周面27aと略一致する位置に配設されるように、構成されている。
そして、係止機構FR1としてのロックリング63は、フードパネル10の通常使用の開閉時には、仮保持凹部35内への係合状態として、傾斜面35a側に当接させた状態で、ロックリング63を収納した非ガス側部52側の収納溝57の周縁の段差面60と当接し、非ガス側部52の前進移動を規制する。そして、ガス発生器70が作動用ガスGを発生させた際には、非ガス側部52の前進移動に伴い、段差面60が、ロックリング63を強く押すことから、仮保持凹部35の前進移動側の傾斜面35aを利用して、ロックリング63が軸心Cと直交方向に拡径して、収納溝57側に収納されるように、仮保持凹部35から離脱し、非ガス側部52の前進移動を規制していた係止状態を、解除させることとなる。そのため、非ガス側部52は、作動用ガスGの圧力を受けて、収納溝57に収納させたロックリング63をガス側部22の外周面27aに摺動させつつ、前進移動することとなる。
なお、この伸長防止用の係止機構FR1では、係合凸部(ロック用凸部)としてのロックリング63が、段差面60に押圧されて仮保持凹部35から離脱するように拡径する変形応力は、フードパネル10の通常使用の開閉時に加わるヒンジアーム14と取付プレート15との連結部14c,15a相互が離れるモーメントに、十分対抗でき、そして、ガス発生器70の作動時には、段差面60に押圧されて拡径できるように、設定されている。
また、インナケース27には、既述したように、止め具44を嵌め込んで固定できるように、元部端24a側に、アクチュエータ21の軸心Cと直交する組付孔40が、形成されている。
さらに、インナケース27の外周面27aには、非ガス側部52の先端部54aの端縁54aeの内周に圧接されて、非ガス側部52の内部側の防水性やゴミの侵入防止を図る円環状のゴム等からなるパッキン48が、配設されている。
そして、アクチュエータ21の非ガス側部(移動側部)52は、鋼等の金属製として、ガス側部22の開口端23側を覆う天井壁部53と、天井壁部53の外周縁から、少なくとも、ガス発生器70の配置位置の元部24側までのガス側部22の外周を覆うように、非ガス側部52の後退側、すなわち、図4,5の下方側、に延びる略円筒状の周壁部54と、を備えて構成されている。
天井壁部53には、丸穴状の連結孔部65aを有して取付プレート15に連結される連結部65が、開口端23と離れた上面側に配設されている。この連結部65は、連結孔部65aに挿入される軸支具(軸支ピン)19を利用して、取付プレート15の連結部15aに対して、回動自在に連結されている。軸支具19は、連結孔部65aを貫通して、取付プレート15の連結部15aに回動自在に連結される。
周壁部54は、天井壁部53から離れる先端部54aの内周面側に設けたリングホルダ55までの内周面54bを、ガス側部22の外周面側のシール材46と摺動可能として、ガスシール性を確保して前進移動できるように、アクチュエータ21の軸心C(すなわち、非ガス側部52の移動中心軸C)と同心的に、平滑な円形の弧面状に構成されている。
換言すれば、ガス側部22と非ガス側部52とは、相互に摺動する部位に関し、ガス側部22側の摺動部位22aが、シール材46の部位となり、非ガス側部52側の摺動部位52aが、シール材46と摺動する内周面54bの部位となって、第1実施形態のアクチュエータ21では、ガス側部22が、摺動部位22aを、移動中心軸Cに接近させた内側部位の内側摺動部位22aとして、内側部材21aを構成し、非ガス側部52が、その摺動部位52aを内側摺動部位22aの周囲を囲む外側部位としての外側摺動部位52aとして、内側部材21aの周囲を囲む外側部材21bを構成している。
リングホルダ55は、鋼等の金属製の略円筒状部材として、周壁部54の先端部54aの内周側にかしめて固定されており、非ガス側部52の前進移動側(上部側)から順に、先端側鍔部56と、内周側にロックリング63を収納した収納溝57と、軸心Cと同心とした平滑な円形弧面状のガイド面61と、を備えて構成されている。
先端側鍔部56は、内径寸法を、インナケース27の外周面27aの外径寸法より若干大きく構成されて、アクチュエータ21の作動時の前進移動完了時には、ガス側部22のストッパとしてのフランジ部28の規制面28aに、当接するように、設定されている(図7のB参照)。
ガイド面61は、ガス側部22の外周面27aに摺動可能として、軸心Cに沿う非ガス側部52の前進移動を案内する。
収納溝57は、図6,7に示すように、アクチュエータ21の作動完了後の非ガス側部52の後退移動を規制するための後退防止用ロック機構BR1を構成するロックリング63を収納するものである。収納溝57は、先端側鍔部56側から拡径するテーパ規制面58と、テーパ規制面58の後退側(図6,7の下側)の縁から、アクチュエータ21の軸心Cと略平行として(若しくは、略弧面状として)、後退側に延びるた底面59と、底面59の後退側の縁から軸心C側に延びる段差面60と、を備えて構成されている。
テーパ規制面58は、ガス側部22の収容溝30に設けられた一方の挟持面(係止規制面)31に対応する他方の挟持面を構成するものであり、底面59から前進側(図4,6,7の上側)にかけて、縮径する傾斜面としている。
この収納溝57には、アクチュエータ21の作動前の状態では、ロックリング63が、仮保持凹部35内に一部を嵌めた状態としつつ、縮径可能に、ガス側部22の外周面27aに接触した拡径状態で、収納されている。そして、非ガス側部52の前進移動完了時、ロックリング63が、収容溝30の配置されている後退防止位置(ロック位置)RPに到達すると、縮径するように復元してガス側部22の収容溝30に収納される。そして、ロックリング63は、断面の直径寸法D1を、ガス側部22の収容溝30の係止規制面31の幅寸法(復元規制面32と外周面27aとの間の幅寸法であり、収容溝30の深さ寸法)B1より大きく、かつ、直径寸法D1の半分(半径寸法)R1を係止規制面31の幅寸法B1と略同等、あるいは、若干大きく、設定されている(図7参照)。
そのため、ロックリング63が収容溝30に収納された際、ロックリング63が、収容溝30の復元規制面32に当接して、ガス側部22の外周面27aから外周側部位63bを突出させる。そして、ロックリング63が収容溝30に収納されて、前進移動完了後に非ガス側部52が後退移動しようとする際、非ガス側部52の収納溝57のテーパ規制面58が収容溝30に収納されたロックリング63に当接し、かつ、ロックリング63が係止規制面31に当接することから、ロックリング63が、縮径方向に復元する状態を復元規制面32に規制された状態で、一対の挟持面となるテーパ規制面58と係止規制面31とに挟持されて、ロックされる。
そのため、前進移動完了後の非ガス側部52が後退移動しようとしても、収容溝30のロック位置RPでは、非ガス側部52の収納溝57のテーパ規制面58が収容溝30に収納されたロックリング63の外周側部位63bに当接し、そして、ロックリング63の内周側部位63aが係止規制面31から外れないように係止されることから、非ガス側部52の後退移動が防止される(ロックされる)。
第1実施形態では、アクチュエータ21のリード線70c,70cを図示しない制御回路に結線するとともに、連結部25,65を、軸支具18,19を利用して、フードパネル10の左右のヒンジ機構11におけるヒンジアーム14と取付プレート15との連結部(連結部位)14c,15aに連結させれば、アクチュエータ21をヒンジ機構11に配設できて、跳ね上げ装置U1を車両Vに搭載することができる。
車両Vへの搭載後、第1実施形態の跳ね上げ装置U1では、アクチュエータ21が作動すれば、ガス発生器70が作動用ガスGを発生させ、その作動用ガスGの押圧力によって、図3の二点鎖線から実線に示すように、あるいは、図4から図5に示すように、アクチュエータ21の非ガス側部52がガス側部22から離れて、アクチュエータ21が伸長する。そして、伸長するアクチュエータ21が、取付プレート15とヒンジアーム14との交差角度θ0を広げることから、フードパネル10の後端10c側が上昇し、フードパネル10が、変形スペースSを広く確保できて、変形量を多くした塑性変形により、衝撃を緩和させて歩行者を受け止めることができる。
なお、第1実施形態の場合、アクチュエータ21は、作動ストロークSLを約40mmとして、フードパネル10の後端10cを約80mm上昇させることができた。
以上のように、第1実施形態のアクチュエータ21では、係止機構FR1の係合凸部としてのロックリング63と係合凸部としての仮保持凹部35とが相互に係合して、作動前の非ガス側部52のガス側部22から離れる相対的な前進移動が防止される。そして、作動時には、非ガス側部52の前進移動に伴い、係止機構FR1のロックリング63が、ロックリング63の周縁の収納溝57の段差面60、に押圧されて仮保持凹部35との係合を解除させることから、その後、非ガス側部52が、さらに相対的にガス側部から離れるように前進移動する。作動完了時には、係合凸部としてのロック用凸部のロックリング63が、テーパ規制面58や復元規制面32とに当接した状態として、ガス側部22に設けられたロック用凹部としての収容溝30の係止規制面31に係止され、非ガス側部52の相対的な後退移動が防止される。
すなわち、第1実施形態のアクチュエータ21では、係止機構FR1の係合凸部としてのロックリング63を、作動完了時のロック用凸部として、兼用できる構成としており、後退防止用に兼用できないEリングを使用しない分、部品点数を低減することができる。
そして勿論、この種のアクチュエータ21では、作動前に必要な機能の係止機構FR1と作動完了時に必要な機能のロック機構BR1とに、係合凸部としてのロックリング63を兼用できることから、アクチュエータ21全体の部品点数を低減できて、アクチュエータ21全体を簡便に構成できることに寄与できる。
したがって、第1実施形態のアクチュエータ21では、作動前の移動を規制する係止機構FR1を設けても簡便に構成することができる。
さらに、第1実施形態のアクチュエータ21では、ロック機構BR1が、係止機構FR1のロック用凸部兼用の係合凸部を構成するロックリング63、収納溝57、収容溝30、及び、リング摺動面27aを備えて構成されている。ロックリング63は、作動時の前進移動方向と直交方向に沿って拡径若しくは縮径するように、弾性変形可能としたCリング形状としている。収納溝57は、非ガス側部52に配置されて、作動前に、拡径方向に弾性変形させてロックリング63を収納する。収容溝30は、ガス側部22におけるロック位置RPに配置されて、収納溝57に収納されたロックリング63の拡径状態の変形を復元させて、ロックリング63の内周側部位63aを収容する。収容溝30には、復元時におけるロックリング63の収納溝57から離脱する復元を規制するように、底面に、復元規制面32を配置させている。そして、収納溝57と収容溝30との内周縁には、それぞれ、復元規制面32に規制されたロックリング63を前進移動方向に沿って挟持可能な一対の挟持面58,31が、配設されている。リング摺動面27aは、作動前の収納溝57に拡径状態に弾性変形させて収納させたロックリング63の復元を規制し、かつ、作動時に、ロックリング63と摺動可能にガス側部22に配置されている。
そして、第1実施形態では、リング摺動面27aが、作動前の収納溝57に収納されたロックリング63を係合解除可能に収納する係合凹部としての仮保持凹部35を備えて構成されている。
そのため、第1実施形態では、作動前では、拡径状態に弾性変形されて収納溝57に収納されたロックリング63が仮保持凹部35に係合されて、非ガス側部52が前進移動しようとして、ロックリング63を収納溝57の段差面60が前進方向へ押圧しても、ロックリング63が仮保持凹部35の傾斜面35aに当接して仮保持凹部35からの離脱が防止され、非ガス側部52の前進移動が規制される。そして、作動時には、作動用ガスGの圧力を受けて、非ガス側部52が前進移動しようとして、収納溝57の周縁の段差面60をロックリング63に強く押し付けることから、ロックリング63は、仮保持凹部35の傾斜面35aから離脱して、リング摺動面27aを摺動しつつ、非ガス側部52は、ガス側部22に対して前進移動して、作動を完了させる。その後、非ガス側部52が、ガス側部22に対して後退移動しようとする際、後退防止位置、すなわち、ロック位置RPでは、ロックリング63が、拡径状態の弾性変形を復元させて縮径させ、復元規制面32に当接させるように、図7のA,Bに示すように、収納溝57から収容溝39に収容される。そして、ロックリング63が、後退側に移動しようとすれば、図7のCに示すように、収納溝57の周縁と収容溝30の周縁とに設けられた一対の挟持面58,31に挟持される。この時、一対の挟持面58,31は、復元規制面32に規制されたロックリング63を、前進移動方向の軸心Cに沿って挟持することから、非ガス側部52のガス側部22に対する後退移動が規制され、すなわち、非ガス側部52の後退移動がロックされ、アクチュエータ21は、フードパネル10を押し上げた状態で、そのフードパネル10を支持できることとなる。
そして、このような構成では、作動前の収納溝57に収納されたロックリング63が摺動するリング摺動面27aの配置位置に、単に、仮保持凹部35を設けるだけでよく、アクチュエータ21を簡便に構成できる。
なお、この場合の係止機構FR1のロックリング63と仮保持凹部35との係合状態は、作動時に係止解除可能な範囲で、不要な前進移動を招く荷重に対抗して(実施形態では、フードパネル10の通常使用時(通常開閉時)の荷重に対抗して)係合状態を維持できるように、ロックリング63に対する仮保持凹部35の深さや形状(例えば、前進移動方向側の傾斜角度等を含めた形状)を、適宜、設定すればよい。
また、第1実施形態のアクチュエータ21では、ガス発生器70が、非ガス側部52の摺動部位52aより移動中心軸C側に接近して、作動前の配置状態の非ガス側部52の部位52b(実施形態では、周壁部54の先端部54aと天井壁部53との間の中間付近)と重なるように、ガス側部22に収納保持されており、ガス発生器70と非ガス側部52とが、非ガス側部52の移動中心軸Cに沿って直列的に配設されているものの、その移動中心軸Cの直交方向で重なって配設されている。そのため、ガス発生器70と非ガス側部52とが重なった分(第1実施形態では、ガス発生器70の図示しない火薬や点火装置等を内蔵した本体71とリード線70cの一部とが非ガス側部52の部位52bと長く重なっている分)、従来タイプのガス発生器と非ガス側部とを重ならせずに配設させたものに比べて、アクチュエータ21の長さ寸法L1を短くできる。
すなわち、第1実施形態のアクチュエータ21では、作動時に作動用ガスGを発生させるガス発生器70を使用する構成としても、長さを短くコンパクトに構成でき、そして、アクチュエータ21をコンパクトに構成できることから、自動車用安全装置としてのフード跳ね上げ装置U1等に使用して車両Vに搭載する際、搭載自由度を向上させることができる。
また、第1実施形態のアクチュエータ21では、ガス側部22が、先端側に作動用ガスGを流出させる開口端23を設けてガス発生器70を収納保持し、外周側に、内側部位としての摺動部位(内側摺動部位)22aを配置させて、内側部材21aとして構成されている。また、非ガス側部52が、ガス側部22の開口端23側を覆う天井壁部53と、天井壁部53の外周縁から少なくともガス発生器70の配置位置付近までのガス側部22の外周を覆い、内周面54b側をガス側部22の内側摺動部位22aと摺動する外側部位としての摺動部位(外側摺動部位)52aとした周壁部54と、を備えて、内側部材21aとしてのガス側部22の周囲を囲む外側部材21bとして、構成されている。
そのため、第1実施形態では、作動時、内側部材21aとしてのガス側部22に配置されたガス発生器70が作動用ガスGを発生し、作動用ガスGがガス側部22の開口端23から非ガス側部52の天井壁部53を押圧するように流れることから、外側部材21bとしての非ガス側部52が、周壁部54をガス側部22の外周面27aに摺動させつつ、周壁部54の先端部54aを、ガス側部22のガス発生器70を配置させた元部24側から開口端23付近まで、移動させることができ、そして、ガス側部22に連結される車両Vの収納側連結部位としてのヒンジアーム14の連結部14cと、非ガス側部52に連結される車両Vの押圧側連結部位としての取付プレート15の連結部15aと、を相互に離隔させるように、アクチュエータ21を伸長させて、作動が完了する。
すなわち、第1実施形態のアクチュエータ21では、作動時の作動用ガスGの押圧力を直接受ける部位が、ガス発生器70を配置させた内側部材21aとしてのガス側部22の開口端23を覆うように、その開口端23より外径寸法の大きな外側部材21bとしての非ガス側部52の天井壁部53であり、ガス発生器70の外径寸法が等しければ、その受圧面積は、従来のシリンダタイプのアクチュエータにおけるシリンダの内径寸法のピストン部の受圧面積より、大きくなる。そして、火薬を燃焼させて瞬間的に高い圧力の作動用ガスGを発生させるガス発生器70を使用する場合、受圧面積が大きな分、アクチュエータ21を小径としても大きな出力を確保し易い。
そのため、上記の構成では、アクチュエータを短くしても、長い作動ストロークSLを確保でき、かつ、アクチュエータ21を太くしなくとも、大きな出力を確保できることから、逆に、アクチュエータ21をコンパクトに構成できて、搭載スペースの小さな、例えば、車両Vのフードパネル10のヒンジ機構11付近に搭載するフード跳ね上げ装置U1等に好適に使用可能となる。
また、第1実施形態のアクチュエータ21では、非ガス側部52とガス側部22との相互の摺動部位22a,52aに、ガスシール性を確保するシール材46が配設されている。
そのため、上記の構成では、非ガス側部52の前進移動時において、吐出された作動用ガスGの貯留部位は、非ガス側部52の天井壁部53、周壁部54、及び、開口端23側のガス側部22で囲まれる部位で構成されて、ガス側部22の開口端23の外周面27a側に配置されて周壁部54の内周面54b(摺動部位52a)に摺動するシール材46により、ガスシール性が確保される状態となる。そして、そのシール材46は、ガス発生器70を収納したガス側部22の内周側でなく、開口端23の外周側に配置されることとなって、高温の作動用ガスGに曝され難く、性能の低下を抑制できて、良好なガスシール性を維持し、非ガス側部52は、安定した押圧力で前進移動でき、アクチュエータ21は、安定した出力を確保できる。
さらに、第1実施形態のアクチュエータ21では、非ガス側部52における天井壁部53から離れた周壁部54の先端部54aの端縁54aeの内周面54b側とガス側部22の開口端23から離れた元部24側の外周面27aとの間に、パッキン48が介在されている。
そのため、第1実施形態では、外側部材21bとしての非ガス側部52の周壁部54の内周面54b側が、パッキン48により水密性や気密性を確保できて、摺動部位52a(内周面54b)へのゴミの進入を防ぐことができ、また、摺動部位52aの錆の発生等も防止できて、長期間作動されなくとも、作動時には、非ガス側部52の円滑な前進移動を確保できる。
また、第1実施形態のアクチュエータ21では、ガス発生器70の先端70aと開口端23との間に、すなわち、ガス発生器70の先端70aと非ガス側部52の天井壁部53との間に、非ガス側部52の前進移動前に、作動用ガスGを貯留できる貯留室80を設けており、この貯留室80の容積を調整するように、ガス発生器70の先端70aを非ガス側部52の天井壁部53側(開口端23側)に接近させたり、離隔させたりして、アクチュエータ21の作動当初の押圧力を調整することができる。例えば、貯留室80を小容積とすれば、作動時のガス発生器70から発生される作動用ガスGが小容積の貯留室80に充満して圧力が高まり、非ガス側部52は強い力で前進移動する。逆に、貯留室80を大容積とすれば、作動時のガス発生器70から発生される作動用ガスGが大容積の貯留室80に充満して、小容積の貯留室80の場合に比べて、圧力が低下し、非ガス側部52は弱い力で前進移動する。
なお、第1実施形態では、アクチュエータ21のガス側部22の連結部25をヒンジアーム14側に連結し、非ガス側部52の連結部65を取付プレート15側に連結したが、逆の構成として、ガス側部22の連結部25を取付プレート15の連結部15aに連結し、非ガス側部52の連結部65をヒンジアーム14の連結部14cに連結してもよい。
つぎに、図9〜13に示す第2実施形態について説明すると、第2実施形態のアクチュエータ21Aもフード跳ね上げ装置U2に使用されるものであり、外側部材21bとしての非ガス側部(移動側部)52Aの周壁部54の外周面54cに、ボルトからなる連結部65Aが、固着されている。連結部65Aは、ヒンジ機構11の取付プレート15の連結部15aとしての連結孔15bに挿入され、ナット15c止めされて、取付プレート15に対し、回動自在に連結されている。
内側部材21aとしてのガス側部22Aの連結部25Aは、六角孔状の連結孔部25aを備え、その連結孔部25aに軸支具18Aを挿入させて、軸支具18Aの雄ねじ部18aにナット18eを締結して、軸支具18Aと連結される。
なお、軸支具18Aは、両端に雄ねじ部18a,18bを備え、雄ねじ部18a,18b間の部位に、連結孔部25aに挿入される異形部18cと、円柱状の大径部18dと、を備えて構成されている。異形部18cは、六角孔状の連結孔部25aに嵌挿されるように六角柱状としている。雄ねじ部18bは、ヒンジアーム14の連結部14cにおける連結孔14dに挿入され、ナット14eを締結されて、ヒンジアーム14に対して、回動自在に連結される。
そのため、第2実施形態のアクチュエータ21Aでは、軸支具18Aとナット18e,14eとを利用して、ヒンジアーム14の連結部14cに対し、回動自在に連結され、ナット15cを利用して、取付プレート15の連結部15aに対して、回動自在に連結されることとなる。
なお、このアクチュエータ21Aでは、第1実施形態のアクチュエータ21と同様の部位、部材には、特に断らない限り、同じ符号を付して、説明を省略する。
第2実施形態のアクチュエータ21Aは、第1実施形態のアクチュエータ21と同様に、ガス側部22Aが、先端側に作動用ガスGを流出させる開口端23を設けてガス発生器70を収納保持し、外周側に、内側部位としての摺動部位(内側摺動部位)22aを配置させて、内側部材21aとして構成されている。また、非ガス側部52Aが、ガス側部22Aの開口端23側を覆う天井壁部53と、天井壁部53の外周縁から少なくともガス発生器70の配置位置付近までのガス側部22Aの外周を覆い、内周面54b側をガス側部22Aの内側摺動部位22aと摺動する外側部位としての摺動部位(外側摺動部位)52aとした周壁部54と、を備えて、内側部材21aとしてのガス側部22Aの周囲を囲む外側部材21bとして、構成されている。
そして、このアクチュエータ21Aでも、勿論、第1実施形態と同様なガス発生器70が、非ガス側部52Aの摺動部位52a(摺動面・内周面54b)より移動中心軸C側に接近して、作動前の配置状態の非ガス側部52Aの一部52bと移動中心軸Cの直交方向で重なるように、ガス側部22Aに収納保持されている。
また、このアクチュエータ21Aでは、第1実施形態と同様に、伸長防止用の係止機構FR2を備えている。但し、係止機構FR2は、作動前のリングホルダ55Aの配置位置において、ガス側部22Aの外周面27a側に、断面山形状の係合凸部37が配設され、リングホルダ55Aの内周面(摺動面)61側に、係合凸部37と係合する凹溝状の係合凹部62が配設されて、構成されている。これらの係合凸部37と係合凹部62とは、作動時の非ガス側部52Aが前進移動する際に、係合凹部62が係合凸部37から外れて、係合解除するような凹凸形状としている。勿論、作動前のフードパネル10の通常の開閉時には、係合解除できない凹凸形状としている。
係合凸部37は、ガス側部22Aの構成部材であるインナケース27がその金属材料を一体的に突設させて、配設されている。さらに、係合凸部37の配置位置は、アクチュエータ21Aの作動直後に、リングホルダ55Aの係合凹部62と離脱し、かつ、係合凹部62を設けた非ガス側部52Aの摺動部位61からも離脱する位置に、配置されている。
なお、係合凹部62と係合凸部37とは、それぞれ、作動時の前進移動方向に沿ったアクチュエータ21Aの軸心Cの周方向の全周に、配置されている(図12参照)。
また、第2実施形態では、係合凹部62を設けたリングホルダ55Aは、軸心Cの周方向で分割された分割された分割体55a,55aに、形成されている。実施形態では、リングホルダ55Aは、二つの分割体55aから形成されている。
さらに、このアクチュエータ21Aは、第1実施形態と同様に、作動完了後の非ガス側部52Aの後退移動を規制する後退防止用ロック機構BR2を備えている。但し、円形断面の弾性変形可能なばね鋼等のCリングからなるロックリング63Aが、第1実施形態と相違して、拡径可能に、ガス側部22Aのフランジ部28Aに設けられた収納溝49に縮径状態で収納され、拡径時のロックリング63Aを収容する収容溝67が、非ガス側部52A側に設けられている。
収納溝49は、ガス側部22Aにおける非ガス側部52Aの周壁部54の先端部54aに配設されたリングホルダ55Aに対して、ストッパとして機能するフランジ部28Aに、配設されている。そして、収納溝49は、ストッパとして機能する抜け止め用の規制面28aとシール材46を収納した環状溝29との間に配設されている。この収納溝49は、軸心C側の底面49bにおける環状溝29側の縁から軸心Cと直交方向に延びる段差面49cと、底面49bにおける規制面28a側の縁から後退移動側に略45°の傾斜角度で拡開するようなテーパ規制面49aと、を備えて構成されている(図13参照)。
また、収容溝67は、非ガス側部52Aの内周面54b側におけるリングホルダ55Aに隣接して形成され、収容溝67の底面となる軸心Cと平行な円弧面とした復元規制面69と、復元規制面69の前進移動側の縁から前進移動側にかけて縮径し、そして、内周面54bに連なるテーパ面状の係止規制面68と、を備えて構成されている。
収納溝49と収容溝67とのそれぞれの周縁のテーパ規制面49aと係止規制面68とは、前進移動後の非ガス側部52Aの後退移動を防止する際、復元規制面69に外周側部位63bを規制されたロックリング63Aを挟持する一対の挟持面を構成する。なお、収容溝67の復元規制面69までの深さ寸法、換言すれば、軸心Cと直交方向の係止規制面68の幅寸法B2は、ロックリング63Aの直径寸法D2より、小さく、ロックリング63Aの半径寸法R2より、大きく設定されている(図13参照)。
この後退防止用ロック機構BR2では、ロックリング63Aが、拡径可能に、非ガス側部52Aの内周面54bに接触した縮径状態で収納溝49に収納されており、非ガス側部52Aの前進移動完了時、図13のA,Bに示すように、拡径して、非ガス側部52Aの収容溝67に収納される。そして、ロックリング63Aは、その断面の直径寸法D2を、収容溝67の係止規制面68の幅寸法(復元規制面69と内周面54bとの間の幅寸法)B2より大きく、かつ、その直径寸法D2の半分(半径寸法)を係止規制面68の幅寸法B4と略同等、あるいは、若干小さく、設定されている。
そのため、ロックリング63Aが収容溝67に収納された際、収容溝67の復元規制面69に当たって、ロックリング63A(内周側部位63a)が非ガス側部52Aの内周面54bから突出する。また、ロックリング63Aが収容溝67に収納されて、前進移動完了後に非ガス側部52Aが後退移動しようとする際、非ガス側部52Aの係止規制面68がロックリング63Aと当接しても、ロックリング63Aがテーパ規制面49aに当接して移動せず、ロックリング63Aが係止規制面68とテーパ規制面49aとの間で係止されることとなる(図13のC参照)。
その結果、前進移動完了後の非ガス側部52Aが後退移動しようとしても、非ガス側部52Aのロック位置RPでは、ガス側部22Aのテーパ規制面49aが収容溝67に収納されたロックリング63Aの内周側部位63aに当たり、そして、ロックリング63Aの外周側部位63bが復元規制面69によって拡開しない状態となって、ロックリング63Aが係止規制面68とテーパ規制面49aとに挟持される状態となって、非ガス側部52Aの後退移動が防止される。
勿論、このフード跳ね上げ装置U2では、アクチュエータ21Aが作動すれば、ガス発生器70が作動用ガスGを発生させ、その作動用ガスGの押圧力によって、図10から図11に示すように、係合凹部62が係合凸部37を乗り越えて係合凸部37との係合を解除して、アクチュエータ21Aの非ガス側部52Aがガス側部22Aから離れ、アクチュエータ21Aが伸長する。そして、伸長するアクチュエータ21Aが、図9の二点鎖線から実線に示すように、取付プレート15とヒンジアーム14との交差角度θ0を広げることから、フードパネル10の後端10c側が上昇し、フードパネル10が、変形スペースSを広く確保できて、変形量を多くした塑性変形により、衝撃を緩和させて歩行者を受け止めることができる。
勿論、アクチュエータ21Aの作動前には、係合凸部37と係合凹部62とが相互に係合して、非ガス側部52Aのガス側部22Aからの前進移動を防止することから、取付プレート15とヒンジアーム14との交差角度θ0が広がることが防止され、フードパネル10の開閉操作時には、支障なく、フードパネル10を開閉操作できる。
そして、この第2実施形態のアクチュエータ21Aでは、係合凸部37が、ガス側部22Aの構成部材としてのインナケース27から、一体的に突設されて、配設されており、別途組み付けるようなEリングを利用せずに、係止機構FR2を構成できる。
すなわち、第2実施形態のアクチュエータ21Aでは、作動前の移動を規制する係止機構FR1を設けても、Eリングを使用しない分、簡便に構成することができる。
さらに、このアクチュエータ21Aでは、係合凸部37は、アクチュエータ21Aの作動直後に、図11に示すように、係合凹部62と離脱し、かつ、係合凸部37を設けた非ガス側部52Aの摺動部位61からも離脱する位置に、配置されていることから、従来の作動中のロッド部と摺動し続けるEリングと相違して、作動時の摺動抵抗を低減でき、迅速に、非ガス側部52Aを前進完了位置まで到達させることができる。
さらに、第2実施形態では、係合凹部62と係合凸部37とが、それぞれ、作動時の前進移動方向に沿ったアクチュエータ21Aの軸心Cの周方向の全周に、配置され、係合凹部62が、軸心Cの周方向で分割された分割体55a,55aに、形成されている。
そのため、このアクチュエータ21Aでは、係合凸部37がアクチュエータ21Aの軸心Cの周方向の全周に配設されていることから、ガタツキ無く、作動前に、前進移動する非ガス側部若しくはガス側部を支持できる。
また、このような構成では、インナケース27に一体的に形成されている係合凸部37が、アクチュエータ21Aの軸心Cの周方向の全周に配設されていても、係合凹部62が、軸心Cの周方向で分割された分割体55aに、形成されていることから、組付時、軸心Cに沿って非ガス側部52Aやガス側部22Aを移動させつつ係合凸部37と係合凹部62とを無理やり係合させることなく、係合凸部37の回りで、分割体55aを軸心Cの周方向に並べつつ連結させれば、容易に、係合凸部37と係合凹部62とを係合でき、係止機構FR2を容易に組み付けることができる。
なお、実施形態では、係合凸部37の周囲に分割体55a,55aを配置させてリングホルダ55Aを形成可能にしておき、その後、かしめ前の状態で、非ガス側部52Aの周壁部54をリングホルダ55Aの周囲に被せ、そして、先端部54a側をかしめて、分割体55a,55aを連結させてリングホルダ55Aを形成しつつ、リングホルダ55Aを非ガス側部52Aに組み付けている。
ちなみに、上記の点を考慮しなければ、係合凸部37は、軸心Cの周方向に断続的に、若しくは、部分的に一つ、形成してもよい。
そしてさらに、第2実施形態では、連結部65Aが移動中心軸Cから直交方向に突設されており、長さ寸法L2をコンパクトに構成でき、搭載スペースの小さな車両Vのフードパネル10のヒンジ機構11付近に搭載するフード跳ね上げ装置U2に好適に使用可能となる。
なお、図14に示すように、係合凸部37と係合凹部62とを設けずに、ロックリング63Aを収納した収納溝49と対向する非ガス側部52Aの摺動面54bの位置に、ロックリング63Aと係合解除可能に係合する係合凹部としての仮保持凹部35Aを、形成して、前進防止用の係止機構FR2´を形成してもよい。
また、第2実施形態では、係合凸部37をガス側部22Aのインナケース27に形成し、係合凹部62を非ガス側部52のリングホルダ55に形成した場合を示したが、係合解除可能に作動前の係合状態を維持できれば、図14の二点鎖線に示すように、係合凹部62Cをガス側部22Aのフランジ部28Aの外周側に設け、係合凸部37Cを非ガス側部52Aの天井壁部53近傍の周壁部54の内周側に設けても良い。
さらに、図14の構成に近似して、図15,16に示す第3実施形態のアクチュエータ21Bのように、ロックリングとして、断面円形のCリング形状とせずに、断面台形状のCリング形状のロック用凸部兼用の係合凸部(ロックリング)63Bを使用しても良い。このロックリング63Bは、アクチュエータ21Bの軸心Cと直交方向に拡径可能として、縮径状態で収納溝49Bに収納されている。
ロックリング63Bを収納した収納溝49Bと対向する非ガス側部52Aの摺動面54bの位置には、ロックリング63Aと係合解除可能に係合する係合凹部としての仮保持凹部35Bが形成されている。仮保持凹部35Bの非ガス側部52Cの後退方向の周縁の係合面35cと、係合面35cと当接するロックリング63Bの係合面63cとは、作動時のような非ガス側部52Bの係合面35cが強い力で前進移動すれば、相互の係合を解除可能とし、かつ、作動前の状態では、相互の係合状態を維持可能に、凸形状の弧面や傾斜面から形成されている。収納溝49Bは、ロックリング63Bの軸心Cの直交方向の拡径状態や縮径状態の弾性変形は許容するが、ロックリング63Bの軸心Cに沿った移動を規制するように、配設され、さらに、収納溝49Bの深さ寸法は、フランジ部28Aから突出させないように、ロックリング63Bを収納できる寸法としている。
また、ロックリング63Bの前進移動側の係止面63dは、軸心Cと直交方向に沿って形成されている。
そして、非ガス側部52Bが前進移動を完了させたロック位置RPで、収納溝49Bと対向する位置には、軸心Cと直交方向に突出するように拡径するロックリング63Bの一部を収容する収容溝67Bが形成され、収容溝67Bの前進移動側の係止面63dと係合する周縁は、軸心Cと直交方向の係止面67aとして、係止面67a,63d相互が係止すれば、非ガス側部52Bの後退移動が防止されるように構成されている。
このアクチュエータ21Bのように、ロック用凸部と兼用の係合凸部としてのロックリング63Bと、係合凹部としての仮保持凹部35Bと、から係止機構FR3を構成しても良い。この場合のロック機構BR3は、係止面63dを有したロックリング63Bと、係止面67aを備えた収容溝67Bとから構成されることとなる。
そして、ロックリング63Bが、単に、係止機構FR3としての係合面63cとロック機構BR3としての係止面63dとを備えて、軸心Cと直交方向に収納溝49Bから進退するだけで、対応する係止機構FR3の係合面35cやロック機構BR3の係止面67aに対して、係合、係合解除、係止を行なう構成であり、第3実施形態でも、アクチュエータ21Bを簡便に構成することができる。
ちなみに、このような係合凸部としては、ロックリング63Bで無くとも、単に、係止機構とロック機構とを構成可能に、上記の係合面63cや係止面63dと同様な係合面や係止面を設けて、アクチュエータの軸心と直交方向に進退できるようななばね鋼等からなる棒状体や板状体から、形成してもよい。さらに、この場合、係合解除と係合状態とに移行できるように、別途、ばね等の付勢手段を併用しても良い。
なお、第1〜3実施形態では、ガス側部22,22A,22Bと非ガス側部52,52A,52Bとを、所定の連結部25,25Aを設けて、収納側連結部位14cや押圧側連結部位15aに対して、作動前から、連結させた場合を示したが、少なくとも、ガス側部22,22A,22Bと非ガス側部52,52A,52Bとの一方を、固定側の連結部位(固定側連結部位)に連結固定し、ガス側部22,22A,22Bと非ガス側部52,52A,52Bとの他方を、作動前に、固定側連結部位から離れた可動側連結部位(接続部位)に対して離して配設し、作動時、可動側連結部位に接触(連結・接続)させて、可動側連結部位を支持したり移動させるように、構成してもよい。なお、このような構成では、ガス発生器70に点火電気信号を入力させるリード線70cを配設する必要があることから、その取り回しや作動時に動くスペースを考慮すれば、ガス側部22,22A,22B側の収納側連結部位を固定側連結部位とし、非ガス側部52,52A,52B側を、可動側連結部位から離して配設し、作動時、可動側連結部位に接触(連結・接続)させる構成が望ましい。
さらに、各実施形態のアクチュエータ21,21A,21Bでは、フードパネル10を跳ね上げる跳ね上げ装置U1,U2に使用する場合を例示したが、着座した運転者の前方の膝受パネルとボディ側のインパネリンホースとに、ガス側部と非ガス側部とを連結させ、車両の正面衝突時、膝受パネルを後方移動させるアクチュエータとして、本発明を利用してもよい。さらに、本発明のアクチュエータでは、ガス発生器を作動させて所定時に非ガス側部を前進移動させる構成であれば、実施形態に限定されず、種々の自動車用安全装置に使用することができる。