JP6171438B2 - セメント系組成体製構造物の止水工法 - Google Patents

セメント系組成体製構造物の止水工法 Download PDF

Info

Publication number
JP6171438B2
JP6171438B2 JP2013056564A JP2013056564A JP6171438B2 JP 6171438 B2 JP6171438 B2 JP 6171438B2 JP 2013056564 A JP2013056564 A JP 2013056564A JP 2013056564 A JP2013056564 A JP 2013056564A JP 6171438 B2 JP6171438 B2 JP 6171438B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
water
cement
urethane resin
hydrophilic urethane
construction method
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013056564A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014181486A (ja
Inventor
小川 晴果
晴果 小川
利充 小林
利充 小林
隆 桝田
隆 桝田
幸一 遠藤
幸一 遠藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Masuda
Original Assignee
Masuda
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Masuda filed Critical Masuda
Priority to JP2013056564A priority Critical patent/JP6171438B2/ja
Publication of JP2014181486A publication Critical patent/JP2014181486A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6171438B2 publication Critical patent/JP6171438B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Lining And Supports For Tunnels (AREA)
  • Working Measures On Existing Buildindgs (AREA)

Description

本発明は、コンクリート製構造物などのセメント系組成体製構造物の漏水空隙部分に止水材を注入して止水する工法に関する。
従来、コンクリート製構造物は、乾燥収縮や経年劣化などでひび割れし、そして、このひび割れにより雨水や地下水が漏れる等の漏水を生じる。また、コンクリート製構造物は一般にコンクリートの打ち継ぎ部を有し、かかる打ち継ぎ部ではジャンカなどにより漏水し得る。そのため、かかるひび割れや打ち継ぎ部等の漏水空隙部分に止水材を注入・充填して、漏水を止める止水工事が適宜なされている。
この止水材には、例えば1液型の親水性ウレタン樹脂や、同じく1液型の水性ポリマーエマルションが使用される。そして、前者の1液型の親水性ウレタン樹脂の場合には、液体の状態で漏水空隙部分に注入されるが、ここで、当該漏水空隙部分に水が存在していると、かかる水と速やかに反応して親水性ウレタン樹脂は発泡硬化して固体となる。よって、比較的短時間で漏水空隙部分を塞いで止水することができる。しかし、漏水空隙部分の水が少ない場合には、上記の加水発泡反応が起こり難く、有効に止水できない恐れがある。
そのため、特許文献1に開示の止水工法では、漏水空隙部分に親水性ウレタンを注入する前に、予め当該漏水空隙部分に水を注入している。
特開平2−200973号公報
しかしながら、この工法では、注入作業が、水、親水性ウレタン樹脂の二段階となってしまい、工期の長期化を招くとともに、施工手順も複雑になってしまう。
一方、後者の1液型の水性ポリマーエマルションの場合も、液体の状態で漏水空隙部分に注入される。但し、この場合には、同エマルション中の水分が蒸発等で抜けることにより硬化して固体となって、これにより漏水空隙部分を塞いで止水する。そのため、漏水空隙部分に水が存在しなくても、止水可能である。
しかし、上記のように、水性ポリマーエマルションは、その水分が抜けることで硬化するため、一般に当該硬化に長時間を要する。すなわち、止水作用の発現までに長時間を要する。そのため、工期の長期化を招く恐れがある。また、漏水空隙部分での漏水量が多い場合には、水性ポリマーエマルションを注入しても、すぐには硬化しないことから、当該エマルションが漏水空隙部分に留まれずに流されてしまい、結果、有効に止水できない恐れもある。
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、事前の漏水空隙部分への水の注入作業を不要としながらも、親水性ウレタン樹脂の発泡硬化を確実に引き起こすことが可能であるとともに、漏水空隙部分での水性ポリマーエマルションの硬化も短時間でなすことが可能な止水工法を提供することにある。
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
セメント系組成体製構造物の漏水空隙部分に止水材を注入器具で注入して止水する止水工法であって、
前記注入器具は、
二股形状の基部と、
前記基部に一体に設けられる基部側筒部と、
前記基部側筒部に管継手を介して着脱自在に設けられ、前記漏水空隙部分に連通される吐出口と前記吐出口に連通する流路とを有する先端側筒部と、を備え、
前記注入器具に対してそれぞれ別個に供給される液状の親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとを、前記流路内で混合しながら前記吐出口から吐出して前記漏水空隙部分に注入し、
前記先端側筒部を前記基部側筒部から管継手のところで取り外して未使用の先端側筒部に付け替えてから次の注入作業を行うことを特徴とする。
上記請求項1に示す発明によれば、注入器具内の流路において親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとが混合される。そして、このとき、親水性ウレタン樹脂を発泡硬化する加水発泡反応に必要な水は、水性ポリマーエマルションから供給され、他方、この供給により、水性ポリマーエマルションからは水が抜かれて、水性ポリマーエマルションは硬化する。よって、事前の漏水空隙部分への水の注入作業を行わずに、ウレタン樹脂の発泡硬化を確実に引き起こすことができるとともに、漏水空隙部分での水性ポリマーエマルションの硬化も短時間でなすことができる。
また、吐出口に連通する上記の流路内で親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとを混合しながら、漏水空隙部分に注入する。よって、親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとの混合物の流動性が高いうちに、当該混合物を漏水空隙部分に注入することができて、これにより、漏水空隙部分の深部まで円滑且つ確実に注入することができる。
請求項2に示す発明は、請求項1に記載のセメント系組成体製構造物の止水工法であって、
前記水性ポリマーエマルションは、日本工業規格JISA6203:2000「セメント混和用ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂」の規格を満足するセメント混和用ポリマーディスパージョンであることを特徴とする。
上記請求項2に示す発明によれば、発泡硬化した親水性ウレタン樹脂は、上記のセメント混和用ポリマーディスパージョンの固形分たるポリマーによって複合化される。そして、かかる複合化により、当該ポリマーが具備する長期の化学的安定性、すなわち高い耐久性が、親水性ウレタン樹脂に付与される。よって、発泡硬化後に起こり得る親水性ウレタン樹脂の加水分解や肉やせ(長期に亘って水分補給が無い場合に親水性ウレタン樹脂自体の水分が蒸発して生じる同樹脂の収縮現象)、バクテリア孔食(セメント系組成体製構造物に生息するバクテリアによる局所的腐食現象)、セメント系組成体中のアルカリ分による劣化などを有効に防ぐことができて、結果、長期に亘り安定した止水効果を発揮可能となる。
また、同ポリマーは、良好な伸び能力、高い引張強さ、及び高い接着能を有するので、当該ポリマーによって複合化された親水性ウレタン樹脂には、これらの特性も付与される。よって、止水施工後に起こり得るセメント系組成体製構造物の乾燥収縮等の変形に対しても、剥がれや破断など無く速やかに追従して変形可能であり、このことも上記の止水効果の安定化に有効に寄与する。
請求項3に示す発明は、請求項2に記載のセメント系組成体製構造物の止水工法であって、
前記親水性ウレタン樹脂と前記セメント混和用ポリマーディスパージョンとの配合は、前記セメント混和用ポリマーディスパージョンの不揮発分(固形分)を除く、水分に対する前記親水性ウレタン樹脂の濃度が20〜80重量%の範囲内となるように行われることを特徴とする。
上記請求項3に示す発明によれば、親水性ウレタン樹脂の発泡硬化を比較的短時間で確実に行うことができる。すなわち、濃度が10重量%以下の場合に起こりうる親水性ウレタン樹脂の硬化時間の大幅な遅延を有効に防ぐとともに、90重量%以上の場合に起こりうる水不足起因の親水性ウレタン樹脂の硬化不良を防ぐことができる。
請求項4に示す発明は、請求項1乃至3の何れかに記載のセメント系組成体製構造物の止水工法であって、
前記親水性ウレタン樹脂は、上水道水に対して10重量%の濃度で前記樹脂を添加した際の硬化時間が、常温(20℃)で30分以上となる遅延硬化型樹脂であることを特徴とする。
上記請求項4に示す発明によれば、親水性ウレタン樹脂として、上記のような遅延硬化型樹脂を用いている。よって、水性ポリマーエマルションと合流後の親水性ウレタン樹脂の発泡硬化の進行を適度に遅らせることができる。つまり、水性ポリマーエマルションと合流後の親水性ウレタン樹脂に係り、その流動性が高い状態を所定時間に亘って確保することができる。そして、これにより、注入器具内の流路での親水性ウレタン樹脂の硬化詰まりを有効に防ぎながら、親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとの混合物を吐出口から速やかに吐出して漏水空隙部分に円滑に注入可能となる。
本発明によれば、事前の漏水空隙部分への水の注入作業を不要としながらも、親水性ウレタン樹脂の発泡硬化を確実に引き起こすことが可能であるとともに、漏水空隙部分での水性ポリマーエマルションの硬化も短時間でなすことが可能となる。
図1A乃至図1Dは、本実施形態の止水工法の説明図である。 同止水工法に供される注入装置20の注入ヘッド25の一部破断側面図である。 親水性ウレタン樹脂の一例のHycel−OH−822Nの濃度(%)と硬化時間との関係を示すグラフである。 本実施形態の止水材の引張試験結果である。
===本実施形態===
図1A乃至図1Dは、本実施形態の止水工法の説明図である。また、図2は、同止水工法に供される注入装置20の注入ヘッド25の一部破断側面図である。
この止水工法は、コンクリート製構造物1のひび割れや打ち継ぎ部等の漏水空隙部分1pwに対して止水材を注入して漏水空隙部分1pwを埋めるものである。なお、この図1Aでは、漏水空隙部分1pwとしてひび割れ1pwを例示しているが、空隙であれば、何等これに限らない。
図1Aに示すように、この止水工法では、先ず、止水対象のコンクリート製構造物1の近傍に注入装置20を搬入・配置する。注入装置20は、2液混合型の装置である。すなわち、互いに種類の異なる止水材を貯留する二つのタンク22,22と、タンク22,22毎に設けられたポンプ23,23と、各高圧ホース24,24を介して各ポンプ23,23から各止水材が圧送される注入器具25としての注入ヘッド25と、を有する。一方のタンク22には、第1止水材として液状の親水性ウレタン樹脂が貯留されており、もう一方のタンク22には、第2止水材として水性ポリマーエマルジョンが貯留されている。そして、これら親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとは、対応する各ポンプ23,23によってそれぞれ別個に注入ヘッド25へ圧送供給されるとともに、同ヘッド25内の流路SP25c(図2)で混合されて同ヘッド25の吐出口25hから混合状態で吐出される。
詳しくは、図2に示すように、注入ヘッド25は、二股形状の基部25aと、基部25aに一体に設けられる基部側筒部25bと、基部側筒部25bに適宜な管継手25jを介して略同軸且つ着脱自在に設けられる先端側筒部25cと、を有する。基部25aには、二つの流路R25a,R25aが設けられており、各流路R25a,R25aには、それぞれ上記二つの高圧ホース24,24のうちの対応する各高圧ホース24,24が接続されている。また、これら二つの流路R25a,R25aは基部25a内の所定位置で合流して一つの流路R25a1となっており、そして当該一つの流路R25a1は基部側筒部25bの筒内流路SP25bに繋がっており、更に当該筒内流路SP25bは、ミキサー26内蔵の上記先端側筒部25cの筒内流路SP25cに繋がっている。よって、各タンク22,22から圧送された親水性ウレタン樹脂及び水性ポリマーエマルションは、注入ヘッド25内の基部25a内で合流し、そして、基部側筒部25bを経て先端側筒部25cを通る際には、これら親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとは上記ミキサー26で撹拌・混合される。そして、当該混合状態で先端側筒部25cの吐出口25hから吐出される。
なお、上記のミキサー26は、先端側筒部25cと略同軸に筒内流路SP25cに収容された軸部と、当該軸部の外周面から螺旋状に突出するリブ部と、を有したものを本体としている。そして、かかる筒内流路SP25cを通過する際に、親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとの両者は、上記の螺旋状のリブ部によって撹拌される。
また、各ポンプ23,23の吐出圧力の大きさは、注入対象のひび割れ1pwの幅や深さに応じて、0(MPa)よりも大きく50(MPa)以下の範囲から適宜選択されるが、ひび割れ1pwの深部まで確実に注入させる観点からは、望ましくは10(MPa)以上50(MPa)以下の範囲から選択されると良い。
一方、かかる注入装置20の搬入・配置作業と同時並行或いは相前後して、図1Aに示すように、止水対象のコンクリート製構造物1に対し、漏水空隙部分1pwたるひび割れ1pwに繋がるように注入孔1hを穿孔する。なお、かかる注入孔1hは複数形成され、例えば、水平方向及び鉛直方向の各方向に対して200mm等の形成ピッチで並んで形成される。
そうしたら、図1Bのように、注入孔1hに注入ヘッド25の先端側筒部25cを差し込み、各ポンプ23,23を起動などして、先端側筒部25cの吐出口25hから、親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとの混合物を吐出し、これにより当該混合物をひび割れ1pwに注入する。なお、この注入された混合物は、短時間で硬化する。すなわち、親水性ウレタン樹脂の発泡硬化に必要な水は、水性ポリマーエマルションから供給され、他方、この供給により、水性ポリマーエマルションからは水が抜かれて、水性ポリマーエマルションは硬化する。よって、親水性ウレタン樹脂の発泡硬化が短時間でなされるだけでなく、水性ポリマーエマルションの硬化も短時間でなされる。
なお、注入し終えたら、各ポンプ23,23を停止するか、或いは注入ヘッド25内の流路R25a,R25aを不図示のバルブで閉じる等して、吐出口25hからの吐出を停止し、そして図1Cのように注入ヘッド25の先端側筒部25cを注入孔1hから抜く。そうしたら、この注入孔1hの水平方向又は鉛直方向の隣に位置する未注入の注入孔1h(図1A乃至図1Dでは不図示)へ移行して、当該注入孔1hに対して上述の注入作業を繰り返す。また、注入済みの注入孔1hには、図1Dのように、モルタル等の適宜な充填材を充填等して孔の無い状態に仕上げる。
ちなみに、一つの注入孔1hへの注入作業が終わった時点の先端側筒部25cの筒内流路SP25cには(図2を参照)、内蔵のミキサー26の混合・撹拌作用により親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとが高度に混合された状態で存在している。そのため、時間の経過と伴に硬化して詰まる恐れがあって、当該先端側筒部25cをそのまま使用すると、次の注入作業に支障を来す可能性がある。よって、かかる詰まりが懸念される場合には、先端側筒部25cを基部側筒部25bから管継手25jのところで取り外して未使用の先端側筒部25cに付け替えてから次の注入作業を行うのが望ましい。
ところで、水性ポリマーエマルションとしては、例えば日本工業規格JISA6203:2000「セメント混和用ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂」の規格を満足するセメント混和用ポリマーディスパージョンを例示できる。ここで、当該セメント混和用ポリマーディスパージョンとは、同規格に定義されているように、水の中にポリマーの微粒子が分散している系のことである。そして、同規格には、その種類として、セメント混和用樹脂エマルションと、セメント混和用ゴムラテックスとの2種類が記載されている。前者のセメント混和用樹脂エマルションは、エチレン酢酸ビニル系、アクリル酸エステル系、樹脂アスファルト系などの樹脂エマルションに安定化剤、消泡剤などを加えて、よく分散させ均質にしたものであり、後者のセメント混和用ゴムラテックスは、合成ゴム系、天然ゴム系、ゴムアスファルト系などのゴムラテックスに安定化剤、消泡剤などを加えて、よく分散させ均質にしたものである。そして、ここでは、そのうちのセメント混和用樹脂エマルションとしてポリエチレン系水性エマルションを使用している。より具体的には、ポリエチレン系水性エマルションとして、ナルライト(製品名:成瀬化学株式会社製)を使用している。但し、何等ナルライトなどのポリエチレン系水性エマルションに限るものではなく、上記に例示のセメント混和用樹脂エマルションやセメント混和用ゴムラテックスについても、好適に使用可能である。
そして、かかるセメント混和用ポリマーディスパージョンによれば、そのポリマー由来の長期の化学的安定性、すなわち高い耐久性が、発泡硬化後の親水性ウレタン樹脂に付与される。よって、発泡硬化後に起こり得る親水性ウレタン樹脂の加水分解や肉やせ、バクテリア孔食、コンクリート中のアルカリ分による劣化などを有効に防ぐことができて、その結果、長期に亘り安定した止水効果を発揮することができる。
また、同ポリマーは、良好な伸び能力、高い引張強さ、及び高い接着能を有するので、当該ポリマーによって複合化された親水性ウレタン樹脂には、これらの特性も付与される。よって、止水施工後に起こり得るコンクリート製構造物1の乾燥収縮等の変形に対しても、ひび割れ1pwからの剥がれや破断など無く速やかに追従して変形可能であり、このことも上記の止水効果の安定化に有効に寄与する。ちなみに、上記セメント混和用ポリマーディスパージョンの一例としてポリエチレン系水性エマルションを用いて親水性ウレタン樹脂を複合化した場合に、当該複合化された親水性ウレタン樹脂が、良好な伸び能力及び高い引張強さを具備していることについては、引張試験で確認済みであり、当該引張試験結果については後述する。
一方、親水性ウレタン樹脂としては、例えばHycel−OH−822N、Hycel−OH−1X、Hycel−OH−1AX、Hycel−OH−3X(何れも製品名:東邦化学工業株式会社製)などを例示できるが、ここでは、硬化時間が遅め(長め)の遅延硬化型としてHycel−OH−822Nを使用している。
そして、かかる遅延硬化型を用いれば、その発泡硬化の進行が遅いことに基づいて、図2の注入ヘッド25の基部25aの流路R25a1及び基部側筒部25bの筒内流路SP25bでの親水性ウレタン樹脂の硬化詰まりを有効に防ぐことができて、これにより、次の注入孔1hへの注入作業の移行を円滑に行うことができる。詳しくは次の通りである。
先ず、吐出口25hからの吐出を停止する注入終了時点では、既述のように、基部25aの流路R25a1及び基部側筒部25bの筒内流路SP25bには、親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとが高度な混合状態ではないが、合流状態で存在している。そのため、軽度に発泡硬化し得る状態にある。但し、当該合流状態が長時間続くと、発泡硬化が進行して基部25aの流路R25a1及び基部側筒部25bの筒内流路SP25bが詰まる恐れがある。また、既述のように先端側筒部25cについては、管継手25jで分離して交換可能に構成されているが、基部25a及び基部側筒部25bについては交換することができない。そのため、仮に基部25aの流路R25a1や基部側筒部25bの筒内流路SP25bにおいて硬化して詰まると、次の注入孔1hの注入作業を行えなくなってしまい、工期の遅延を招く。よって、所定の注入口1hでの吐出を停止してから、次の注入孔1hでの吐出を開始するまでの間に、基部25aの流路R25a1や基部側筒部25bの筒内流路SP25bにおいて硬化詰まりが生じないように硬化の進行を多少遅らせる目的で、親水性ウレタン樹脂に遅延硬化型を用いている。そして、これにより、次の注入孔1hへの注入作業を円滑に行えるようにしている。
但し、かかる遅延硬化型の親水性ウレタン樹脂は、何等上記のHycel−OH−822Nに限るものではない。すなわち、当該Hycel−OH−822Nとほぼ同程度に硬化時間が長い親水性ウレタン樹脂であれば、上述のHycel−OH−822Nと同様に注入作業の移行容易性を奏することができるので、好適に用いることができる。
なお、上記の遅延硬化型に該当するか否かの判定方法の一例としては、例えば、次の方法が挙げられる。先ず、判定対象の親水性ウレタン樹脂を上水道水に対して10重量%の濃度で添加し、また添加後の温度を20℃に維持する。そして、その添加後の硬化時間が、30分間以上であった場合には、この判定対象の親水性ウレタン樹脂も、上記の遅延硬化型に該当するものと判定される。ちなみに、上記の硬化時間は、10重量%の濃度で親水性ウレタン樹脂を上水道水に添加後に、指触乾燥(JIS K 5500塗料用語による)するまでに要した時間のことである。
ここで、望ましくは、かかる親水性ウレタン樹脂とセメント混和用ポリマーディスパージョンとの配合を、セメント混和用ポリマーディスパージョンの不揮発分(固形分)を除く、水分に対する親水性ウレタン樹脂の濃度が20〜80重量%の範囲内となるように行うと良い。
そして、このように配合されれば、親水性ウレタン樹脂の発泡硬化を比較的短時間で確実に行うことができる。すなわち、図3Aのグラフに示すように、濃度が10重量%以下の場合に起こりうる親水性ウレタン樹脂の硬化時間の大幅な遅延を有効に防ぐとともに、90重量%以上の場合に起こりうる水不足起因の親水性ウレタン樹脂の硬化不良を有効に防ぐことができる。ちなみに、図3A中の各硬化時間は、Hycel−OH−822Nを各濃度で上水道水に添加後に、常温(20℃)において、当該濃度の親水性ウレタン樹脂が、指触乾燥(JIS K 5500塗料用語による)するまでに要した時間のことである。
図3Bは、本実施形態の2液型の止水材、すなわち親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとを混合してなる止水材の引張試験結果の表である。なお、同表には、比較例として1液型の親水性ウレタン樹脂の止水材の引張試験結果も併記している。
この引張試験では、本実施形態の止水材及び比較例の止水材の各々につき、帯板状に硬化した試験片を3つずつ用意した。そして、各試験片の長手方向の両端部を力点として50(mm/分)の引張速度で長手方向に引っ張るとともに、試験片が破断した際の長手方向の長さLm及び引張荷重Pmを測定し、当該長さLm及び引張荷重Pm等を下式1、式2に代入して、引張強さや伸び率を算出した。
引張強さ(N/mm)=Pm/(w×t) … (1)
伸び率(%)=(Lm−L0)/L0×100 … (2)
なお、上式1中のw及びtは、それぞれ無負荷時の試験片の幅w及び厚さtであり、同表には、これらの幅w及び厚さtの数値も併記している。また、上式2中のL0は、無負荷時の長手方向の長さであり、つまり、L0の長さの部分が、破断時にはLmになったということである。なお、ここではL0を50mmとした。
また、本実施形態の2液型の止水材の試験片については、親水性ウレタン樹脂として100(cm)のHycel−OH−822Nを使用し、また水性ポリマーエマルションとして、固形分が55重量%のナルライトを使用した。なお、親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとの配合比は、1:2とした。そして、これらを混合して硬化させることにより、本実施形態に係る帯板状の試験片を形成した。
他方、比較例の1液型の止水材の試験片についても、100(cm)のHycel−OH−822Nを使用しているが、発泡硬化させるべく20重量%の濃度で純水を添加し、これにより、比較例の帯板状の試験片を形成した。
図3Bの引張試験結果の表を見ると、比較例の止水材と比べて、本実施形態の止水材は、伸び率及び引張強さのどちらの値も非常に大きくなっており、このことから、伸び能力及び引張強さの点で格段に優れていることがわかる。よって、本実施形態の止水材は、1液型の親水性ウレタン樹脂と比べて、長期に亘り安定した止水効果を奏し得ることが、試験によっても裏付けられた。
ちなみに、このように本実施形態の止水材の引張強さや伸び率が大きい理由は、親水性ウレタン樹脂の発泡部分の多数の空孔の表面が、ポリエチレン系ポリマーでコーティングされることにより、同ポリマーの良好な伸び能力、及び高い引張強さが同親水性ウレタン樹脂に付与されたためと推察される。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
上述の実施形態では、セメント系組成体製構造物の一例として、コンクリート製構造物1を例示したが、何等これに限らずモルタル製でも良い。
1 コンクリート製構造物(セメント系組成体製構造物)、
1h 注入孔、1pw ひび割れ(漏水空隙部分)、
20 注入装置、22 タンク、
23 ポンプ、24 高圧ホース、
25 注入ヘッド(注入器具)、
25a 基部、25b 基部側筒部、25c 先端側筒部、
25h 吐出口、25j 管継手、
26 ミキサー、
R25a 流路、R25a1 流路、
SP25b 筒内流路、SP25c 筒内流路、

Claims (4)

  1. セメント系組成体製構造物の漏水空隙部分に止水材を注入器具で注入して止水する止水工法であって、
    前記注入器具は、
    二股形状の基部と、
    前記基部に一体に設けられる基部側筒部と、
    前記基部側筒部に管継手を介して着脱自在に設けられ、前記漏水空隙部分に連通される吐出口と前記吐出口に連通する流路とを有する先端側筒部と、を備え、
    前記注入器具に対してそれぞれ別個に供給される液状の親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとを、前記流路内で混合しながら前記吐出口から吐出して前記漏水空隙部分に注入し、
    前記先端側筒部を前記基部側筒部から管継手のところで取り外して未使用の先端側筒部に付け替えてから次の注入作業を行うことを特徴とするセメント系組成体製構造物の止水工法。
  2. 請求項1に記載のセメント系組成体製構造物の止水工法であって、
    前記水性ポリマーエマルションは、日本工業規格JISA6203:2000「セメント混和用ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂」の規格を満足するセメント混和用ポリマーディスパージョンであることを特徴とするセメント系組成体製構造物の止水工法。
  3. 請求項2に記載のセメント系組成体製構造物の止水工法であって、
    前記親水性ウレタン樹脂と前記セメント混和用ポリマーディスパージョンとの配合は、前記セメント混和用ポリマーディスパージョンの不揮発分(固形分)を除く、水分に対する前記親水性ウレタン樹脂の濃度が20〜80重量%の範囲内となるように行われることを特徴とするセメント系組成体製構造物の止水工法。
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載のセメント系組成体製構造物の止水工法であって、
    前記親水性ウレタン樹脂は、上水道水に対して10重量%の濃度で前記樹脂を添加した際の硬化時間が、常温(20℃)で30分以上となる遅延硬化型樹脂であることを特徴とするセメント系組成体製構造物の止水工法。
JP2013056564A 2013-03-19 2013-03-19 セメント系組成体製構造物の止水工法 Active JP6171438B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013056564A JP6171438B2 (ja) 2013-03-19 2013-03-19 セメント系組成体製構造物の止水工法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013056564A JP6171438B2 (ja) 2013-03-19 2013-03-19 セメント系組成体製構造物の止水工法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014181486A JP2014181486A (ja) 2014-09-29
JP6171438B2 true JP6171438B2 (ja) 2017-08-02

Family

ID=51700476

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013056564A Active JP6171438B2 (ja) 2013-03-19 2013-03-19 セメント系組成体製構造物の止水工法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6171438B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017193869A (ja) * 2016-04-20 2017-10-26 寿建設株式会社 コンクリート面の漏水対策工法
JP6842054B2 (ja) * 2016-07-06 2021-03-17 株式会社大林組 水性エマルション、及び止水工法
JP6818271B2 (ja) * 2016-09-06 2021-01-20 株式会社大林組 止水液混合注入システム、止水液混合注入プラグ及びセメント系組成体構造物の止水工法
JP7405356B2 (ja) * 2019-03-22 2023-12-26 株式会社大林組 止水材、及び、止水工法
US20230340795A1 (en) * 2020-03-05 2023-10-26 GDWS Pty Ltd Methods and formulations for sealing structural leaks

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6092562A (ja) * 1983-10-26 1985-05-24 小林 直彦 コンクリ−ト建造物の微細クラツクへの薬液注入工法
JPH111537A (ja) * 1997-06-13 1999-01-06 Dai Ichi Kogyo Seiyaku Co Ltd 親水性ウレタン樹脂組成物、及び該樹脂組成物を含有する地盤止水安定化剤
JP3996009B2 (ja) * 2002-07-31 2007-10-24 東亜道路工業株式会社 2液系止水材組成物
JP4476859B2 (ja) * 2005-03-31 2010-06-09 住友大阪セメント株式会社 乾式モルタル吹付け工法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014181486A (ja) 2014-09-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6171438B2 (ja) セメント系組成体製構造物の止水工法
CN108137409A (zh) 紧固体系及其用途
KR101785061B1 (ko) 강관을 이용한 그라우팅 공법 및 이를 위한 그라우트 주입 장치
JP2018534228A5 (ja)
JP5300162B1 (ja) 止水剤、止水工法、及び注入装置
KR101726174B1 (ko) 콘크리트 건,습식 균열,누수 보수용 무발포 탄성봉함재 조성물과 무발포 자동혼합 주입장치 및 이를 이용한 보수공법
JP2000054794A (ja) 空洞部の充填工法およびこれに用いる注入材料
JP2014129675A (ja) 地山補強方法及び注入システム
JP6220195B2 (ja) 高性能無機系ひび割れ注入材を用いた漏水ひび割れ止水材料及びその止水工法
JP2001288469A (ja) 可塑状グラウト注入工法
JP6842054B2 (ja) 水性エマルション、及び止水工法
JP2018150477A (ja) グラウト材及びグラウト注入工法
JP2006283335A (ja) 乾式モルタル吹付け工法
JP2002266342A (ja) 充填グラウト注入工法と可塑状グラウト
JP4674171B2 (ja) 既設管の更生工法
JP3515014B2 (ja) 空洞部の充填工法
JP5234539B2 (ja) 水中柱の構築方法
JP6561014B2 (ja) 空隙充填材およびその製造方法
KR101420207B1 (ko) 약액 그라우트 투입배관 및 이를 이용한 그라우팅 시공방법
JP6395030B2 (ja) 可塑性注入材作製用の第一混合物、可塑性注入材の製造方法及び可塑性注入材の施工方法
JP7405356B2 (ja) 止水材、及び、止水工法
JP5641396B2 (ja) 軽量注入材および軽量注入材の注入工法
KR101619952B1 (ko) 링형부재 및 구형부재를 구비한 그라우팅 선단장치
JPH0217503B2 (ja)
JP4615928B2 (ja) 既設管の更生方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160219

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20161018

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161115

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170105

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170530

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170619

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6171438

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250