JP6171438B2 - セメント系組成体製構造物の止水工法 - Google Patents
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Description
そのため、特許文献1に開示の止水工法では、漏水空隙部分に親水性ウレタンを注入する前に、予め当該漏水空隙部分に水を注入している。
一方、後者の1液型の水性ポリマーエマルションの場合も、液体の状態で漏水空隙部分に注入される。但し、この場合には、同エマルション中の水分が蒸発等で抜けることにより硬化して固体となって、これにより漏水空隙部分を塞いで止水する。そのため、漏水空隙部分に水が存在しなくても、止水可能である。
しかし、上記のように、水性ポリマーエマルションは、その水分が抜けることで硬化するため、一般に当該硬化に長時間を要する。すなわち、止水作用の発現までに長時間を要する。そのため、工期の長期化を招く恐れがある。また、漏水空隙部分での漏水量が多い場合には、水性ポリマーエマルションを注入しても、すぐには硬化しないことから、当該エマルションが漏水空隙部分に留まれずに流されてしまい、結果、有効に止水できない恐れもある。
セメント系組成体製構造物の漏水空隙部分に止水材を注入器具で注入して止水する止水工法であって、
前記注入器具は、
二股形状の基部と、
前記基部に一体に設けられる基部側筒部と、
前記基部側筒部に管継手を介して着脱自在に設けられ、前記漏水空隙部分に連通される吐出口と前記吐出口に連通する流路とを有する先端側筒部と、を備え、
前記注入器具に対してそれぞれ別個に供給される液状の親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとを、前記流路内で混合しながら前記吐出口から吐出して前記漏水空隙部分に注入し、
前記先端側筒部を前記基部側筒部から管継手のところで取り外して未使用の先端側筒部に付け替えてから次の注入作業を行うことを特徴とする。
また、吐出口に連通する上記の流路内で親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとを混合しながら、漏水空隙部分に注入する。よって、親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとの混合物の流動性が高いうちに、当該混合物を漏水空隙部分に注入することができて、これにより、漏水空隙部分の深部まで円滑且つ確実に注入することができる。
前記水性ポリマーエマルションは、日本工業規格JISA6203:2000「セメント混和用ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂」の規格を満足するセメント混和用ポリマーディスパージョンであることを特徴とする。
また、同ポリマーは、良好な伸び能力、高い引張強さ、及び高い接着能を有するので、当該ポリマーによって複合化された親水性ウレタン樹脂には、これらの特性も付与される。よって、止水施工後に起こり得るセメント系組成体製構造物の乾燥収縮等の変形に対しても、剥がれや破断など無く速やかに追従して変形可能であり、このことも上記の止水効果の安定化に有効に寄与する。
前記親水性ウレタン樹脂と前記セメント混和用ポリマーディスパージョンとの配合は、前記セメント混和用ポリマーディスパージョンの不揮発分(固形分)を除く、水分に対する前記親水性ウレタン樹脂の濃度が20〜80重量%の範囲内となるように行われることを特徴とする。
前記親水性ウレタン樹脂は、上水道水に対して10重量%の濃度で前記樹脂を添加した際の硬化時間が、常温(20℃)で30分以上となる遅延硬化型樹脂であることを特徴とする。
図1A乃至図1Dは、本実施形態の止水工法の説明図である。また、図2は、同止水工法に供される注入装置20の注入ヘッド25の一部破断側面図である。
この止水工法は、コンクリート製構造物1のひび割れや打ち継ぎ部等の漏水空隙部分1pwに対して止水材を注入して漏水空隙部分1pwを埋めるものである。なお、この図1Aでは、漏水空隙部分1pwとしてひび割れ1pwを例示しているが、空隙であれば、何等これに限らない。
詳しくは、図2に示すように、注入ヘッド25は、二股形状の基部25aと、基部25aに一体に設けられる基部側筒部25bと、基部側筒部25bに適宜な管継手25jを介して略同軸且つ着脱自在に設けられる先端側筒部25cと、を有する。基部25aには、二つの流路R25a,R25aが設けられており、各流路R25a,R25aには、それぞれ上記二つの高圧ホース24,24のうちの対応する各高圧ホース24,24が接続されている。また、これら二つの流路R25a,R25aは基部25a内の所定位置で合流して一つの流路R25a1となっており、そして当該一つの流路R25a1は基部側筒部25bの筒内流路SP25bに繋がっており、更に当該筒内流路SP25bは、ミキサー26内蔵の上記先端側筒部25cの筒内流路SP25cに繋がっている。よって、各タンク22,22から圧送された親水性ウレタン樹脂及び水性ポリマーエマルションは、注入ヘッド25内の基部25a内で合流し、そして、基部側筒部25bを経て先端側筒部25cを通る際には、これら親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとは上記ミキサー26で撹拌・混合される。そして、当該混合状態で先端側筒部25cの吐出口25hから吐出される。
また、同ポリマーは、良好な伸び能力、高い引張強さ、及び高い接着能を有するので、当該ポリマーによって複合化された親水性ウレタン樹脂には、これらの特性も付与される。よって、止水施工後に起こり得るコンクリート製構造物1の乾燥収縮等の変形に対しても、ひび割れ1pwからの剥がれや破断など無く速やかに追従して変形可能であり、このことも上記の止水効果の安定化に有効に寄与する。ちなみに、上記セメント混和用ポリマーディスパージョンの一例としてポリエチレン系水性エマルションを用いて親水性ウレタン樹脂を複合化した場合に、当該複合化された親水性ウレタン樹脂が、良好な伸び能力及び高い引張強さを具備していることについては、引張試験で確認済みであり、当該引張試験結果については後述する。
先ず、吐出口25hからの吐出を停止する注入終了時点では、既述のように、基部25aの流路R25a1及び基部側筒部25bの筒内流路SP25bには、親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとが高度な混合状態ではないが、合流状態で存在している。そのため、軽度に発泡硬化し得る状態にある。但し、当該合流状態が長時間続くと、発泡硬化が進行して基部25aの流路R25a1及び基部側筒部25bの筒内流路SP25bが詰まる恐れがある。また、既述のように先端側筒部25cについては、管継手25jで分離して交換可能に構成されているが、基部25a及び基部側筒部25bについては交換することができない。そのため、仮に基部25aの流路R25a1や基部側筒部25bの筒内流路SP25bにおいて硬化して詰まると、次の注入孔1hの注入作業を行えなくなってしまい、工期の遅延を招く。よって、所定の注入口1hでの吐出を停止してから、次の注入孔1hでの吐出を開始するまでの間に、基部25aの流路R25a1や基部側筒部25bの筒内流路SP25bにおいて硬化詰まりが生じないように硬化の進行を多少遅らせる目的で、親水性ウレタン樹脂に遅延硬化型を用いている。そして、これにより、次の注入孔1hへの注入作業を円滑に行えるようにしている。
引張強さ(N/mm2)=Pm/(w×t) … (1)
伸び率(%)=(Lm−L0)/L0×100 … (2)
なお、上式1中のw及びtは、それぞれ無負荷時の試験片の幅w及び厚さtであり、同表には、これらの幅w及び厚さtの数値も併記している。また、上式2中のL0は、無負荷時の長手方向の長さであり、つまり、L0の長さの部分が、破断時にはLmになったということである。なお、ここではL0を50mmとした。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
1h 注入孔、1pw ひび割れ(漏水空隙部分)、
20 注入装置、22 タンク、
23 ポンプ、24 高圧ホース、
25 注入ヘッド(注入器具)、
25a 基部、25b 基部側筒部、25c 先端側筒部、
25h 吐出口、25j 管継手、
26 ミキサー、
R25a 流路、R25a1 流路、
SP25b 筒内流路、SP25c 筒内流路、
Claims (4)
- セメント系組成体製構造物の漏水空隙部分に止水材を注入器具で注入して止水する止水工法であって、
前記注入器具は、
二股形状の基部と、
前記基部に一体に設けられる基部側筒部と、
前記基部側筒部に管継手を介して着脱自在に設けられ、前記漏水空隙部分に連通される吐出口と前記吐出口に連通する流路とを有する先端側筒部と、を備え、
前記注入器具に対してそれぞれ別個に供給される液状の親水性ウレタン樹脂と水性ポリマーエマルションとを、前記流路内で混合しながら前記吐出口から吐出して前記漏水空隙部分に注入し、
前記先端側筒部を前記基部側筒部から管継手のところで取り外して未使用の先端側筒部に付け替えてから次の注入作業を行うことを特徴とするセメント系組成体製構造物の止水工法。 - 請求項1に記載のセメント系組成体製構造物の止水工法であって、
前記水性ポリマーエマルションは、日本工業規格JISA6203:2000「セメント混和用ポリマーディスパージョン又は再乳化形粉末樹脂」の規格を満足するセメント混和用ポリマーディスパージョンであることを特徴とするセメント系組成体製構造物の止水工法。 - 請求項2に記載のセメント系組成体製構造物の止水工法であって、
前記親水性ウレタン樹脂と前記セメント混和用ポリマーディスパージョンとの配合は、前記セメント混和用ポリマーディスパージョンの不揮発分(固形分)を除く、水分に対する前記親水性ウレタン樹脂の濃度が20〜80重量%の範囲内となるように行われることを特徴とするセメント系組成体製構造物の止水工法。 - 請求項1乃至3の何れかに記載のセメント系組成体製構造物の止水工法であって、
前記親水性ウレタン樹脂は、上水道水に対して10重量%の濃度で前記樹脂を添加した際の硬化時間が、常温(20℃)で30分以上となる遅延硬化型樹脂であることを特徴とするセメント系組成体製構造物の止水工法。
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