JP6167817B2 - レーザ溶接方法 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザ溶接方法に関する。
溶接の熱源にレーザを用いるレーザ溶接は、レーザの照射部位における単位面積当たりの入熱量が高いため、高速溶接に良く利用される。その反面、レーザの照射面積が小さいので被溶接部材の溶融量が少ない。したがって、大きな隙間を隔てて対面配置された2つの金属部材をレーザ溶接する場合に、これらを繋ぐ溶接継手を形成するだけの溶融金属を作り出せないことがある。この場合、2つの金属部材は溶接できない。
特許文献1、2は、このようなレーザ溶接の欠点を補うための工夫が施されたレーザ溶接方法を開示する。特許文献1によれば、隙間を隔てた2枚の金属板の一方の金属板に更に別の金属板が補助金属板として載置される。溶接時には補助金属板にレーザが照射される。レーザ照射により補助金属板および補助金属板を載置した一方の金属板が溶融される。すなわち補助金属板が溶融することにより溶融金属が補われる。このため大きな溶接継手を形成することができ、隙間が大きい場合であっても2枚の金属板を溶接継手で溶接することができる。また、特許文献2によれば、隙間を隔てた2枚の金属板の一方の金属板の一端を折り返すことによって一方の金属板の板厚が増加される。溶接時には折り返して板厚が増加された部分にレーザが照射される。折り返しによって板厚が増加した部分がレーザ照射されて溶融されることにより、溶融金属量が増加する。このため大きな溶接継手を形成することができ、隙間が大きい場合であっても2枚の金属板を溶接継手で溶接することができる。
特開平6−297171号公報 特開2005−169450号公報
(発明が解決しようとする課題)
特許文献1、2によれば、溶接継手を形成するための溶融金属の不足を補うための追加の部材や追加の部分が必要である。このため、被溶接部材の重量およびコストが増加する。また、特許文献1では、レーザ溶接設備に加えて補助金属板を一方の金属板上に載置するための設備が必要であり、特許文献2ではレーザ溶接設備に加えて金属板に折り返し部を形成するための設備が必要である。このため設備費用が増加し、その結果、製造コストが増加する。
本発明は、隙間を隔てて配置された2つの金属部材をレーザ溶接するにあたり、隙間が大きい場合であってもコストの増加を招くことなくこれらをレーザ溶接することができるレーザ溶接方法を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、第1の厚さを持つ金属板と、隙間を隔てて金属板の一方面に対面する一方面を有する金属部材とを、レーザにより溶接するレーザ溶接方法であって、金属板の一方面とは反対側の面である他方面にレーザを照射することにより、レーザの照射領域に位置する金属を溶融させるとともに、溶融金属を流動させることにより、金属板に第1の厚さよりも大きい厚さを持つ盛り上がり部を形成する第1工程と、盛り上がり部にレーザを照射することにより金属板と金属部材とを溶接する第2工程と、を含む、レーザ溶接方法を提供する。この場合、前記第1工程は、金属板の他方面にレーザを照射することにより、レーザの照射領域に位置する金属を溶融させるとともに、溶融金属を他方面上における照射領域とは異なる領域に移動させることにより、金属板に第1の厚さよりも大きい厚さを持つ盛り上がり部を形成する工程であるのがよい。特に、前記第1工程は、金属板の他方面にレーザを照射することにより、レーザの照射領域に位置する金属を溶融させるとともに、溶融金属を他方面上における照射領域の隣接領域に移動させることにより、隣接領域に第1の厚さよりも大きい厚さを持つ盛り上がり部を形成する工程であるのがよい。
本発明によれば、第1工程にて金属板の他方面にレーザを照射することにより、レーザの照射領域に位置する金属が溶融される。溶融された金属は流動されて、金属板の他方面上におけるレーザ照射領域とは異なる領域、例えばレーザ照射領域の隣接領域に移動される。このため金属板に盛り上がり部が形成される。盛り上がり部の厚さは、溶融金属により嵩上げされている分だけ金属板の他の部分の厚さ(第1の厚さ)よりも大きい。そして、第2工程では、厚さの大きい盛り上がり部にレーザが照射される。このため第2工程にて溶融する金属の量は多く、溶融した金属によって大きな溶接継手が形成される。よって、金属板と金属部材との間の隙間が大きい場合であっても、大きな溶接継手で金属板と金属部材とを溶接することができる。
このように、本発明に係るレーザ溶接方法によれば、第1工程にて金属板に盛り上がり部を形成し、第2工程にて盛り上がり部にレーザ照射することにより、他の部品を用いることなく溶融金属量を増加させることができる。したがって、金属板と金属部材の隙間が大きい場合であっても、溶接材料の重量およびコストの増加を招くことなくこれらをレーザ溶接することができる。また、盛り上がり部の形成(第1工程)と溶接(第2工程)に同じレーザ照射が用いられるので、金属板の板厚を増加させるため(すなわち盛り上がり部を形成するため)のみに必要な設備を必要としない。よって、製造コストを削減できる。
本発明において、「照射領域とは異なる領域」とは、レーザが照射された領域と全く同一の領域以外の領域を言う。例えば、照射領域内の一部に盛り上がり部が形成された場合でも盛り上がり部が形成された領域は「照射領域とは異なる領域」であり、照射領域に重複した部分に盛り上がり部が形成された場合でも盛り上がり部が形成された領域は「照射領域とは異なる領域」である。また、本発明において、「隣接領域」とは、レーザの照射領域とは異なる領域部分であって、照射領域に接する領域、あるいは、照射領域に重複した部分を持つ領域を言う。
第1工程は、金属板の他方面にレーザを照射することによりレーザの照射領域に位置する金属を溶融及び蒸発させるとともに、溶融金属が蒸発金属の圧力を受けて照射領域の隣接領域に移動することにより、金属板の他方面に盛り上がり部を形成する工程であるのがよい。これによれば、第1工程にてレーザを金属板に照射することによって蒸発した金属の圧力を利用して溶融金属を移動させる。つまり、第1工程にて金属を溶融させるためのレーザ照射により生じた金属蒸気を利用して溶融金属を移動させる。よって、溶融金属を移動させるために外力を用いる必要がないとともに、溶融金属を移動させるための設備も不必要である。したがって、設備コストを削減することができる。
また、第1工程は、金属板の他方面にレーザを照射することによりレーザの照射領域に位置する金属を溶融させるとともに、溶融金属にガスを吹き付けて溶融金属を照射領域の隣接領域に移動させることにより、金属板の他方面に盛り上がり部を形成する工程であってもよい。これによれば、溶融金属にガスを吹き付けることによって溶融金属に外力が加えられる。この外力により溶融金属は照射領域の隣接領域に移動する。このように構成すれば、溶接金属に吹き付けるガスの流速や流量を制御することにより溶融金属の移動量を制御することができ、ひいては盛り上がり部の大きさを制御することができる。
また、第1工程は、金属板の他方面の垂線に対して傾斜した方向から他方面にレーザを照射する工程であるのがよい。つまり、第1工程にて、金属板の他方面に斜め方向からレーザを照射するとよい。レーザを金属板の他方面に斜め方向から照射した場合は、垂直方向から照射した場合に比較して盛り上がり部を高くすることができる。このため第2工程におけるレーザ照射によってより多くの金属を溶融させることができる。
被溶接部材である2枚の金属板の配置状態を示す断面図である。 第1工程にて第1金属板の他方面にレーザを照射した状態を示す図である。 第1工程にて第1金属板の他方面に盛り上がり部が形成される様子を示す図である。 第2工程にて盛り上がり部にレーザが照射された状態を示す図である。 レーザ溶接装置を使用して2枚の金属板をレーザ溶接する様子を示す図である。 実施例1に係るレーザ溶接方法を示す図である。 実施例2に係るレーザ溶接方法を示す図である。 実施例3に係るレーザ溶接方法を示す図である。 実施例4に係るレーザ溶接方法を示す図である。 実施例5に係るレーザ溶接方法を示す図である。 実施例6に係るレーザ溶接方法を示す図である。 実施例7に係るレーザ溶接方法を示す図である。 実施例8に係るレーザ溶接方法を示す図である。 第1金属板の板厚と溶接可能隙間との関係を示したグラフである。 レーザ照射角と盛り上がり量との関係を表すグラフである。 レーザ出力と盛り上がり量との関係を示したグラフである。 溶融部位に吹き付けるガスの流量と盛り上がり量との関係を示したグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係るレーザ溶接方法は、隙間を隔てて対面配置する2枚の金属板をレーザにより溶接する方法である。図1に、被溶接部材である2枚の金属板(第1金属板1、第2金属板2)の配置状態を示す。第1金属板1の板厚はt1(第1の厚さ)である。第2金属板2は、その一方面2aが第1金属板1の一方面1aに対面するように、第1金属板1に重ね合わせて配置される。第1金属板1と第2金属板2は、その全面で対面配置していてもよいが、部分的に対面配置していてもよい。第1金属板1及び第2金属板2は、本実施形態では例えば亜鉛メッキ鋼板である。2枚の亜鉛メッキ鋼板をレーザ溶接する場合、亜鉛蒸気によるブローホールの形成を防止するために、通常は2枚の亜鉛メッキ鋼板がガス抜き用の隙間を隔てて配設される。したがって、図1に示すように、第1金属板1と第2金属板2との間に微小の隙間Gが設けられる。なお、本実施形態では2つの金属部材(第1金属板1、第2金属板2)が共に板材である場合について説明するが、第2金属板2に相当する金属部材は板材でなくても良い。
本実施形態に係るレーザ溶接方法は、第1工程及び第2工程を含む。第1工程では、第1金属板1の他方面1b(第2金属板2に対面している一方面1aとは反対側の面)にレーザを照射することにより、第1金属板1の他方面1bに盛り上がり部を形成する。図2は、第1工程にて第1金属板1の他方面1bにレーザを照射した状態を示す図である。図2に示すように、この例では、レーザが第1金属板1の他方面1bに斜め方向(他方面1bの垂線に対して傾斜した方向)から照射される。また、レーザの焦点が第1金属板1の他方面1bに合わせられる。このレーザ照射によって、照射領域Aに位置する金属が加熱される。
図3は、第1工程にて第1金属板1の他方面1bに盛り上がり部が形成される様子を示す図である。第1工程にて第1金属板1の他方面1bにレーザが照射されることにより、照射領域Aに位置する金属が加熱されて、照射領域Aに位置する金属が溶融する。また、照射領域Aに位置する金属の一部は蒸発する。蒸発金属の圧力(蒸気圧)は溶融金属に作用する。このため、溶融金属が金属蒸気の圧力を受けて流動し、図3の矢印で示すように照射領域Aの一方側に寄せられる。このようにして、溶融金属が照射領域Aの隣接領域Nに移動される。よって、第1金属板1の他方面1b上の照射領域Aの隣接領域Nに盛り上がり部Bが形成される。この盛り上がり部Bの厚さt2は、溶融金属によって嵩上げされているので、それ以外の部分の板厚t1よりも大きい。つまり、第1工程では、第1金属板1の他方面1bにレーザを照射することにより、レーザの照射領域Aに位置する金属を溶融させるとともに、溶融金属を照射領域Aの隣接領域Nに移動させることにより、隣接領域Nに板厚t1よりも大きい厚さt2を持つ盛り上がり部Bを形成する。
第2工程では、盛り上がり部Bにレーザを照射することにより第1金属板1と第2金属板2とを溶接する。図4は、盛り上がり部Bにレーザが照射された状態を示す図である。図4に示すように、盛り上がり部Bに焦点を合わせてレーザを照射すると、盛り上がり部Bを形成する金属が溶融する。溶融した金属は第1金属板1と第2金属板2との隙間Gを埋めるように下方に伸び、その先端部分が第2金属板2に進入する。このようにして隙間Gを横断して第2金属板2まで伸びた溶融金属が固化することにより溶接継手Cが形成される。この溶接継手Cを介して第1金属板1と第2金属板2が溶接接合される。ここで、第1工程にて形成された盛り上がり部Bの厚さ(t2)は他の部分の厚さ(t1)よりも大きい。したがって、第2工程にて盛り上がり部Bにレーザを照射することにより、より多くの金属を溶融させることができる。よって、隙間Gが大きい場合であっても、隙間Gを埋めて第1金属板1と第2金属板2とを接合し得るに十分な大きさの溶接継手Cを形成することができる。そのため、隙間Gが大きい場合であっても、第1金属板1と第2金属板2とを溶接することができる。
また、第2工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量(入射エネルギー)が、第1工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量よりも大きくなるように、つまり、第1工程での入熱量が小さく、第2工程での入熱量が大きくなるように、それぞれの工程でのレーザの出力、照射スポット径或いは溶接速度が調整されるとよい。
図5は、レーザ溶接装置を使用して2枚の金属板をレーザ溶接する様子を示す図であり、図5(a)が第1工程を示し、図5(b)が第2工程を示す。図5に示すように、レーザ溶接装置は、レーザ発振器5とレーザヘッド3とを備える。レーザ発振器5によりレーザが生成(発振)される。生成されたレーザはレーザヘッド3から出射される。また、レーザヘッド3は図示しない移動装置に保持される。移動装置は例えば多関節ロボットである。移動装置はレーザヘッド3の向きおよび位置を変更することができるように構成される。
第1工程では、レーザヘッド3から出射したレーザL1が第1金属板1の他方面1bに照射される。このとき照射領域S1にレーザ光の焦点が合うように、焦点距離が調節される。また、この例では、レーザヘッド3からのレーザL1の照射方向(出射方向)が第1金属板1の他方面1bの垂線に対して傾斜するように、斜め方向からレーザL1が第1金属板1に照射される。そして、照射領域S1が図5(a)の矢印A1で示す方向に一定の速度で連続的に移動するように、レーザヘッド3が移動装置により移動される。
第1工程を実施することにより、レーザL1の照射領域に位置する金属が溶融及び蒸発するとともに、溶融金属が蒸発金属の圧力を受けて流動し、照射領域の隣接領域に移動して盛り上がり部を形成する。この盛り上がり部は、第1工程におけるレーザの照射領域の移動方向(A1方向)に沿って延設するように形成される。
第1工程の実施後に第2工程が実施される。第2工程では、図5(b)に示すように、レーザヘッド3から出射したレーザL2が盛り上がり部Bに照射される。このとき照射領域S2にレーザ光の焦点が合うように焦点距離が調節される。また、この例では、レーザヘッド3から出射されるレーザL2の盛り上がり部Bへの照射方向が第1金属板1の他方面1bの垂線に平行になるように、第1金属板1に垂直にレーザL2が照射される。そして、照射領域S2が図5(b)の矢印A2方向で示す盛り上がり部Bの延設方向に沿って一定の速度で連続的に移動するように、レーザヘッド3が移動装置により移動される。第2工程を実施することにより、盛り上がり部Bを構成する金属が溶融して第1金属板1と第2金属板2とを繋ぐ溶接継手が形成される。この場合において、盛り上がり部Bの厚さは溶融金属で嵩上げされている分だけ他の部分よりも大きいため、溶融金属量が多い。そのため隙間Gが大きい場合であってもその隙間を埋めるに十分な大きさの溶接継手を形成することができる。よって、隙間Gが大きい場合であっても第1金属板1と第2金属板2を溶接することができる。
上記の例では、第1工程にて、図5(a)に示すように第1金属板1に斜め方向からレーザL1を照射しているが、第1金属板1に垂直方向からレーザL1を照射しても、蒸発金属の圧力の作用によって盛り上がり部を形成することができる。また、上記の例では、第1工程にて、レーザ照射により蒸発した金属の圧力により溶融金属を移動させて、照射領域の隣接領域に盛り上がり部Bを形成するように構成されているが、レーザ照射と同時にガスを照射領域に吹き付けて、ガスの吹き付けに起因した外力により溶融金属を移動させるように構成してもよい。また、第2工程では、図5(b)に示すように第1金属板1に垂直な方向からレーザL2を盛り上がり部Bに照射しているが、様々な角度からレーザL2を盛り上がり部Bに照射してもよい。
以下、本発明のレーザ溶接方法に係る複数の実施例について説明する。
(実施例1)
図6は、実施例1に係るレーザ溶接方法を示す図である。この例では、第1工程にてレーザヘッド3から出射されるレーザL1が図6(a)に示すように第1金属板1の他方面1bに斜め方向(第1金属板1の他方面1bの垂線に対して傾斜した方向)から照射される。すると、レーザL1の照射領域に位置する金属が溶融及び蒸発するとともに、溶融金属が蒸発金属の圧力を受けて流動し、照射領域の隣接領域Nに移動する。このため隣接領域Nに盛り上がり部Bが形成される。
次いで、図6(b)に示すように、第2工程にて盛り上がり部Bにレーザを照射する。この場合において、第2工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量(入射エネルギー)が、第1工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量よりも大きくなるように、レーザの出力、照射スポット径或いは溶接速度が調整される。また、この例では、第2工程にてレーザヘッド3から出射したレーザL2が、第1金属板1の他方面1bの垂線に平行な方向、つまり第1金属板1に垂直な方向から、盛り上がり部Bに照射される。第1工程におけるレーザ照射角(第1金属板1の他方面1bの垂線とレーザの出射方向の中心線とのなす角度(図6(a)の角度θ))と第2工程におけるレーザ照射角が異なるので、第1工程から第2工程に移行する間にレーザヘッド3は回転する。第2工程にて盛り上がり部BにレーザL2が照射されることにより盛り上がり部Bを構成する金属が溶融する。溶融金属により第1金属板1と第2金属板2との間の隙間Gを埋めるように溶接継手が形成されて、第1金属板1と第2金属板2が溶接される。図6(c)に溶接継手Cにより第1金属板1と第2金属板2とが溶接された状態を示す。
この例によれば、第1工程にて斜め方向からレーザを第1金属板1に照射することにより、溶融金属が一方に寄せられるため、大きな盛り上がり部Bを形成することができる。さらに、第2工程にて第1金属板1に垂直な方向からレーザを盛り上がり部Bに照射することにより、第1金属板1と第2金属板2とを最短距離で結ぶ溶接継手が形成される。つまり、第1金属板1と第2金属板2とを結ぶ溶接継手の容積が最小化される。これらのことから、隙間Gがかなり大きい場合であっても第1金属板1と第2金属板2とを溶接することができる。換言すれば、この例によれば、溶接可能隙間(隙間を隔てて配置された第1金属板と第2金属板とをレーザ溶接によって溶接接合することが可能である隙間の最大値)を大きくすることができる。
(実施例2)
図7は、実施例2に係るレーザ溶接方法を示す図である。この例では、第1工程にて、実施例1と同様に、レーザヘッド3から出射されるレーザL1が図7(a)に示すように第1金属板1の他方面1bに斜め方向から照射される。すると、レーザL1の照射領域に位置する金属が溶融及び蒸発するとともに、溶融金属が蒸発金属の圧力を受けて流動し、照射領域の隣接領域Nに移動する。このため隣接領域Nに盛り上がり部Bが形成される。
次いで、図7(b)に示すように、第2工程にて盛り上がり部Bにレーザを照射する。この場合において、第2工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量(入射エネルギー)が、第1工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量よりも大きくなるように、レーザの出力、照射スポット径或いは溶接速度が調整される。また、この例では、第2工程にてレーザヘッド3から出射したレーザL2が第1工程と同じ方向(斜め方向)から盛り上がり部Bに照射される。第1工程におけるレーザ照射角と第2工程におけるレーザ照射角が同じであるため、第1工程から第2工程に移行する間にレーザヘッド3は平行移動する。レーザヘッド3を平行移動するだけで第1工程から第2工程への移行が完了するので、第1工程から第2工程に移行するまでの時間を短縮することができる。また、第2工程にて盛り上がり部BにレーザL2が照射されることにより盛り上がり部Bを構成する金属が溶融し、溶融金属によって第1金属板1と第2金属板2との隙間Gを埋めるように溶接継手が形成されて、第1金属板1と第2金属板2が溶接される。図7(c)に溶接継手Cにより第1金属板1と第2金属板2とが溶接された状態を示す。
(実施例3)
図8は、実施例3に係るレーザ溶接方法を示す図である。この例では、第1工程にてレーザヘッド3から出射されるレーザL1が図8(a)に示すように第1金属板1の他方面1bの垂線に平行な方向から(つまり第1金属板1に垂直な方向から)第1金属板1の他方面1bに照射される。すると、レーザL1の照射領域に位置する金属が溶融及び蒸発するとともに、溶融金属が蒸発金属の圧力を受けて流動し、照射領域の隣接領域Nに移動する。このため隣接領域Nに盛り上がり部Bが形成される。なお、第1工程にてレーザを垂直方向から第1金属板1に照射した場合、照射領域における入熱量の局所的な差等に起因して、盛り上がり部が形成される場所や形成される盛り上がり部の形状が異なる。この例では、盛り上がり部Bは、照射領域の周りにリング状に形成される。
次いで、図8(b)に示すように、第2工程にて盛り上がり部Bにレーザを照射する。この場合において、第2工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量(入射エネルギー)が、第1工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量よりも大きくなるように、レーザの出力、照射スポット径或いは溶接速度が調整される。また、この例では、第2工程にてレーザヘッド3から出射したレーザL2が第1工程と同じ方向(第1金属板1の他方面1bの垂線に平行な方向)から盛り上がり部Bに照射される。第1工程におけるレーザ照射角と第2工程におけるレーザ照射角が同じであるため、第1工程から第2工程に移行する間にレーザヘッド3は平行移動する。レーザヘッド3を平行移動するだけで第1工程から第2工程への移行が完了するので、第1工程から第2工程に移行するまでの時間を短縮することができる。第2工程にて盛り上がり部BにレーザL2が照射されることにより盛り上がり部Bを構成する金属が溶融し、溶融金属によって第1金属板1と第2金属板2との隙間Gを埋めるように溶接継手が形成されて、第1金属板1と第2金属板2が溶接される。図8(c)に溶接継手により第1金属板1と第2金属板2とが溶接された状態を示す。
実施例2および3によれば、実施例1に係る方法に比べ、第1工程から第2工程に移行する際におけるレーザヘッド3の移動が少ないので、溶接時間を短縮することができる。
(実施例4)
図9は、実施例4に係るレーザ溶接方法を示す図である。この例では、第1工程にてレーザヘッド3から出射されるレーザL1が図9(a)に示すように第1金属板1の他方面1bに垂直方向から照射される。すると、レーザL1の照射領域に位置する金属が溶融及び蒸発するとともに、溶融金属が蒸発金属の圧力を受けて流動する。斯かる流動によって盛り上がり部Bが形成される。なお、レーザを垂直方向から第1金属板1に照射した場合、上述したように照射領域における入熱量の局所的な差等に起因して、盛り上がり部が形成される場所や形成される盛り上がり部の形状が異なる。この例では、盛り上がり部Bは、照射領域の中央部分に形成される。
次いで、図9(b)に示すように、第2工程にて盛り上がり部Bにレーザを照射する。この場合において、第2工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量(入射エネルギー)が、第1工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量よりも大きくなるように、レーザの出力、照射スポット径或いは溶接速度が調整される。また、この例ではレーザは第1工程と同じように垂直方向から盛り上がり部Bに照射される。さらに、この例では、第1工程にて照射領域内に盛り上がり部が形成されため、第1工程から第2工程に移行する間に、レーザヘッド3の向きや位置を変えなくてもよい。したがって、第1工程から第2工程に即座に移行することができる。第2工程にて盛り上がり部BにレーザL2が照射されることにより盛り上がり部Bを構成する金属が溶融し、溶融金属によって第1金属板1と第2金属板2との隙間Gを埋めるように溶接継手が形成されて、第1金属板1と第2金属板2が溶接される。図9(c)に溶接継手Cにより第1金属板1と第2金属板2とが溶接された状態を示す。
(実施例5)
図10は、実施例5に係るレーザ溶接方法を示す図である。この例では、第1工程にてレーザヘッド3から出射されたレーザL1が図10(a)に示すように第1金属板1の他方面1bの垂線に平行な方向から(つまり第1金属板1に垂直な方向から)第1金属板1の他方面1bに照射される。また、レーザの照射と同時に、ノズル4からエアー(ガス)が照射部位に吹き付けられる。エアーの吹き付け方向は、第1金属板1の他方面1bの垂線に対して傾斜した方向である。すると、レーザL1の照射領域に位置する金属が溶融するとともに、溶融金属がエアーの吹き付けによる外力を受けて流動し、照射領域の隣接領域Nに移動する。このため隣接領域Nに盛り上がり部Bが形成される。
次いで、図10(b)に示すように、第2工程にて盛り上がり部Bにレーザを照射する。この場合において、第2工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量(入射エネルギー)が、第1工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量よりも大きくなるように、レーザの出力、照射スポット径或いは溶接速度が調整される。また、この例では、第2工程にてレーザヘッド3から出射したレーザL2が第1金属板1の他方面1bに垂直な方向から盛り上がり部Bに照射される。第1工程におけるレーザ照射角と第2工程におけるレーザ照射角が同じであるため、第1工程から第2工程に移行する間にレーザヘッド3が平行移動する。レーザヘッド3を平行移動するだけで第1工程から第2工程への移行が完了するので第1工程から第2工程に移行するまでの時間を短縮することができる。第2工程にて盛り上がり部BにレーザL2が照射されることにより盛り上がり部Bを構成する金属が溶融し、溶融金属によって第1金属板1と第2金属板2との隙間Gを埋めるように溶接継手が形成されて、第1金属板1と第2金属板2が溶接される。図10(c)に溶接継手Cにより第1金属板1と第2金属板2とが溶接された状態を示す。
(実施例6)
図11は、実施例6に係るレーザ溶接方法を示す図である。この例では、第1工程にてレーザヘッド3から出射されたレーザL1が図11(a)に示すように斜め方向から第1金属板1の他方面1bに照射される。また、レーザの照射と同時に、ノズル4からエアーが照射部位に吹き付けられる。エアーの吹き付け方向は、第1金属板1の他方面1bの垂線に対して傾斜した方向である。すると、レーザL1の照射領域に位置する金属が溶融するとともに、溶融金属がエアーの吹き付けによる外力を受けて流動し、照射領域の隣接領域Nに移動する。このため隣接領域Nに盛り上がり部Bが形成される。
次いで、図11(b)に示すように、第2工程にて盛り上がり部Bにレーザを照射する。この場合において、第2工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量(入射エネルギー)が、第1工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量よりも大きくなるように、レーザの出力、照射スポット径或いは溶接速度が調整される。また、この例では、第2工程にてレーザヘッド3から出射したレーザL2が第1金属板1の他方面1bに垂直な方向から盛り上がり部Bに照射される。第1工程におけるレーザ照射角と第2工程におけるレーザ照射角が異なるので、第1工程から第2工程に移行する間にレーザヘッド3が回転する。第2工程にて盛り上がり部BにレーザL2が照射されることにより盛り上がり部Bを構成する金属が溶融し、溶融金属によって第1金属板1と第2金属板2との隙間Gを埋めるように溶接継手が形成されて、第1金属板1と第2金属板2が溶接される。図11(c)に溶接継手Cにより第1金属板1と第2金属板2とが溶接された状態を示す。
(実施例7)
図12は、実施例7に係るレーザ溶接方法を示す図である。この例では、第1工程にてレーザヘッド3から出射されるレーザL1が図12(a)に示すように斜め方向から第1金属板1の他方面1bに照射される。また、レーザの照射と同時に、ノズル4からエアーが照射部位に吹き付けられる。エアーの吹き付け方向は、第1金属板1の他方面1bの垂線に対して傾斜した方向である。すると、レーザL1の照射領域に位置する金属が溶融するとともに、溶融金属がエアーの吹き付けによる外力を受けて流動し、照射領域の隣接領域Nに移動する。このため隣接領域Nに盛り上がり部Bが形成される。
次いで、図12(b)に示すように、第2工程にて盛り上がり部Bにレーザを照射する。この場合において、第2工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量(入射エネルギー)が、第1工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量よりも大きくなるように、レーザの出力、照射スポット径或いは溶接速度が調整される。また、この例では、第2工程にてレーザヘッド3から出射したレーザL2が第1工程と同じ方向(斜め方向)から盛り上がり部Bに照射される。第1工程におけるレーザ照射角と第2工程におけるレーザ照射角が同じであるため、第1工程から第2工程に移行する間にレーザヘッド3が平行移動する。レーザヘッド3を平行移動するだけで第1工程から第2工程への移行が完了するので、第1工程から第2工程に移行するまでの時間を短縮することができる。第2工程にて盛り上がり部BにレーザL2が照射されることにより盛り上がり部Bを構成する金属が溶融し、溶融金属によって第1金属板1と第2金属板2との隙間Gを埋めるように溶接継手が形成されて、第1金属板1と第2金属板2が溶接される。図12(c)に溶接継手Cにより第1金属板1と第2金属板2とが溶接された状態を示す。
実施例5,6,7によれば、第1工程にて溶融金属がガス(エアー)の吹き付けによる外力を受けて移動することにより隣接領域Nに盛り上がり部が形成される。したがって、外力の強さ(吹き付けるガスの流量)を制御することによって、盛り上がり部の大きさを制御することができる。
(実施例8)
図13は、実施例8に係るレーザ溶接方法を示す図である。この例では、第1金属板1と第2金属板2がそれぞれ鉛直方向に沿って対面配置される。したがって、第1金属板1と第2金属板2は、水平方向(重力方向に垂直な方向)に隙間Gを隔てて離間している。図13(a)に示すように、第1工程では、レーザヘッド3が第1金属板1へのレーザの照射領域よりも高い位置に配置される。そして、レーザヘッド3から出射したレーザL1が斜め上方から第1金属板1の他方面1bに照射される。すると、レーザL1の照射領域に位置する金属が溶融及び蒸発するとともに、溶融金属が蒸発金属の圧力を受けて流動し、照射領域の下方の隣接領域Nに移動する。このため隣接領域Nに盛り上がり部Bが形成される。
次いで、図13(b)に示すように、第2工程にて盛り上がり部Bにレーザを照射する。この場合において、第2工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量(入射エネルギー)が、第1工程のレーザ照射による第1金属板1への単位面積当たりの入熱量よりも大きくなるように、レーザの出力、照射スポット径或いは溶接速度が調整される。また、この例では、第2工程にてレーザヘッド3から出射したレーザL2が第1工程と同じ斜め上方から盛り上がり部Bに照射される。第2工程により盛り上がり部BにレーザL2が照射されることにより盛り上がり部Bを構成する金属が溶融及び蒸発する。ここで、第2工程にて斜め上方からレーザL2を盛り上がり部Bに照射した場合、蒸発金属の圧力が溶融金属に対し、図13(c)の矢印D1で示すようなレーザの照射方向に垂直な方向に大きく作用する。この方向への圧力は図13(c)の矢印D2で示す水平方向成分を持つ。よって、この圧力の水平方向成分によって、溶融金属が第2金属板2側に吹き飛ばされる。そのため図13(c)に示すように、第1金属板1と第2金属板2との隙間を埋めるように溶接継手Cが形成されて、第1金属板1と第2金属板2とが溶接される。このように、第1金属板1と第2金属板2が重力方向に垂直な方向に離間して配置されている場合であっても、本実施例によれば第1金属板1と第2金属板2をレーザ溶接することができる。つまり、被溶接部材の配置姿勢が制限されない。
(予備実験1)
第1金属板と第2金属板との間の隙間Gの大きさと、レーザが照射される第1金属板の板厚との関係を調査した。この場合において、亜鉛メッキ鋼板(SCGA270D)からなる第1金属板と第2金属板とを上下方向(重力方向)に沿って対面配置させた。そして、ファイバーレーザ発振器(5kW級)で発振したレーザをガルバノレーザヘッドから出射させて第1金属板に照射して、第1金属板と第2金属板との溶接を試みた。また、板厚の異なる複数の第1金属板を用いてレーザ溶接を試みることにより、第1金属板の板厚と溶接可能隙間(隙間を隔てて配置された第1金属板と第2金属板とをレーザ溶接によって溶接接合することが可能である隙間の最大値)との関係を調べた。
図14は、上記の実験結果をグラフに示したものであり、横軸が第1金属板の板厚であり、縦軸が溶接可能隙間である。図14に示すように、板厚が大きいほど溶接可能隙間が大きい。これは、板厚が大きいほどレーザの照射により溶融する金属が増加して、埋めることができる隙間の大きさが増加するためである。このことから、盛り上がり部の大きさ(高さ)を大きくして板厚を増加することにより、溶接可能隙間が大きくなることがわかる。
(予備実験2)
次に、レーザ照射角と盛り上がり部の大きさとの関係を調査した。この場合において、亜鉛メッキ鋼板(SCGA270D)からなる金属板にレーザを照射して、金属板に盛り上がり部を形成した。また、レーザ照射角を変化させて金属板にレーザを照射することにより、レーザ照射角と盛り上がり部の高さ(盛り上がり量)との関係を調べた。
図15は、レーザ照射角と盛り上がり量(照射面からの盛り上がり部の高さ)との関係を表すグラフであり、横軸がレーザ照射角、縦軸が盛り上がり量である。図15に示すように、レーザ照射によって盛り上がり部を形成することにより、板厚が増加することがわかる。また、照射角度が0°であっても盛り上がり部が形成されることがわかる。また、レーザを斜めから照射することにより、溶融金属を特定の方向に寄せることができるために盛り上がり量を大きくすることができ、照射角度を大きくすればするほど盛り上がり量が増加する、すなわち板厚が増加することがわかる。よって、第1工程にて、レーザ照射角を大きくすることにより、大きな盛り上がり部を形成することができる。
(予備実験3)
また、レーザの強度(出力)と盛り上がり部の大きさとの関係を調査した。この場合において、亜鉛メッキ鋼板(SCGA270D)からなる金属板にレーザを照射した。また、レーザ出力を変化させて金属板にレーザを照射することにより、レーザの強度と盛り上がり部の高さ(盛り上がり量)との関係を調べた。
図16は、レーザ出力と盛り上がり量との関係を示したグラフであり、横軸がレーザ出力、縦軸が盛り上がり量である。図16に示すように、レーザ出力が増加すればするほど盛り上がり量は大きくなる。これは、レーザ出力が増加すると金属板への入熱量が増加してより多くの金属が溶融するためである。しかし、レーザ出力が大きすぎる場合には、盛り上がり量は極端に低下する。これは、レーザ出力が大きすぎる場合は、金属板への入熱量が多すぎて金属板に貫通孔が形成され、溶融金属が貫通孔から落下してしまったためである。したがって、金属板を貫通させない範囲でレーザ出力を大きくするほど盛り上がり量を大きくできることがわかる。したがって、第1工程にて、第1金属板1が貫通しない程度に大きな出力でレーザを第1金属板1に照射することにより、大きな盛り上がり部を第1金属板に形成することができる。
以上の予備実験から得られる知見に基づくと、第1工程にてレーザ照射角およびレーザ出力を大きくすることで、大きな盛り上がり部が形成される。そして、第2工程にてこの大きな盛り上がり部にレーザを照射することによって大きな溶接継手が形成される。大きな溶接継手が形成されることにより、第1金属板と第2金属板との間の隙間が大きい場合であっても、両者を溶接することが可能となる。
図17は、レーザ照射によって溶融した部位にガスを吹き付けることによって盛り上がり部を形成する場合(実施例5,6,7)において、溶融部位に吹き付けるガスの流量と盛り上がり量との関係を示したグラフであり、横軸がガス流量、縦軸が盛り上がり量である。図17からわかるように、ガス流量が少なすぎると、溶融金属を移動させる外力が弱いために、盛り上がり量は小さい。一方、ガス流量が多すぎると、溶融金属に作用する外力が強すぎて溶融金属が飛散してしまい、金属板上に残る溶融金属が減少する。したがって、盛り上がり量を最も大きくするためのガス流量の最適値が存在する。よって、最適ガス流量を実験等により求め、求めた最適ガス流量でガスを溶融金属に吹き付けることにより、盛り上がり量を最も大きくすることができる。
以上のように、本実施形態に係るレーザ溶接方法は、第1の厚さt1を持つ第1金属板1と、隙間Gを隔てて第1金属板1の一方面1aに対面する一方面2aを有する第2金属板2とを、レーザにより溶接するレーザ溶接方法であって、第1金属板1の一方面1aとは反対側の面である他方面1bにレーザを照射することにより、レーザの照射領域に位置する金属を溶融させるとともに、溶融金属を流動させることにより、第1金属板1に第1の厚さt1よりも大きい厚さt2を持つ盛り上がり部Bを形成する第1工程と、盛り上がり部Bにレーザを照射することにより第1金属板1と第2金属板2とを溶接する第2工程と、を含む。
また、本実施形態に係るレーザ溶接方法は、第1の厚さt1を持つ第1金属板1と、隙間Gを隔てて第1金属板1の一方面1aに対面する一方面2aを有する第2金属板2とを、レーザにより溶接するレーザ溶接方法であって、第1金属板1の一方面1aとは反対側の面である他方面1bにレーザを照射することにより、レーザの照射領域に位置する金属を溶融させるとともに、溶融金属を第1金属板1の他方面1b上における照射領域とは異なる領域である照射領域の隣接領域Nに移動させることにより、隣接領域Nに第1の厚さt1よりも大きい厚さt2を持つ盛り上がり部Bを形成する第1工程と、盛り上がり部Bにレーザを照射することにより第1金属板1と第2金属板2とを溶接する第2工程と、を含む。
本実施形態に係るレーザ溶接方法によれば、第1工程にて第1金属板1の他方面1bにレーザを照射することにより、レーザの照射領域に位置する金属が溶融される。溶融された金属は流動し、例えば第1金属板1の他方面1bのレーザ照射領域の隣接領域Nに移動される。このため隣接領域Nに盛り上がり部Bが形成される。盛り上がり部Bの厚さt2は、溶融金属により嵩上げされている分だけ第1金属板1の他の部分の厚さ(第1の厚さ)t1よりも大きい。そして、第2工程では、厚さの大きい盛り上がり部Bにレーザが照射される。厚さの大きい盛り上がり部Bにレーザ照射するため溶融金属量は多い。そのため溶融金属によって大きな溶接継手を形成することができる。よって、2枚の金属板間の隙間が大きい場合であっても大きな溶接継手でこれらを溶接することができる。
このように、本実施形態に係るレーザ溶接方法によれば、他の部品を用いることなく第1金属板1に板厚の大きい部分(盛り上がり部B)を形成することができ、この板厚の大きい部分にレーザを照射させることで、溶融金属量を増加させることができる。よって、溶接材料の重量およびコストの増加を招くことなく2枚の金属板をレーザ溶接することができる。また、レーザ照射により盛り上がり部を形成するため、第1金属板1の板厚を増加させるために別途設備を必要としない。よって、製造コストを削減できる。
また、実施例1〜4,8に示す第1工程では、第1金属板1の他方面1bにレーザを照射することによりレーザの照射領域に位置する金属を溶融及び蒸発させるとともに、溶融金属が蒸発金属の圧力を受けて隣接領域に移動することにより、第1金属板1の他方面1bに盛り上がり部Bを形成する。これによれば、第1工程にて実施されるレーザ照射により生じた金属蒸気を利用して溶融金属を移動させるので、溶融金属を移動させるために外力を用いる必要がないとともに、溶融金属を移動させるための設備を必要としない。よって、設備コストを削減することができる。
また、実施例5〜7に示す第1工程では、第1金属板1の他方面1bにレーザを照射することによりレーザの照射領域に位置する金属を溶融させるとともに、溶融金属にガスを吹き付けて溶融金属を照射領域の隣接領域に移動させることにより、第1金属板1の他方面1bに盛り上がり部Bを形成する。溶融金属にガスを吹き付けることにより外力を加えて溶融金属を照射領域の隣接領域に移動させるので、吹き付けるガスの流速や流量を制御することにより、溶融金属の移動量を制御することができ、ひいては盛り上がり部の厚さを制御することができる。
また、実施例1,2,6,7に示す第1工程では、第1金属板1の他方面1bの垂線に対して傾斜した方向から他方面1bにレーザを照射している。このように斜め方向からレーザを照射することにより、大きな盛り上がり部を形成することができる。
以上、本発明の各種実施例について説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。例えば、上記各実施例では、2つの金属板をレーザ溶接する例を示したが、レーザ照射されない側の金属部材(上記実施例の第2金属板2に相当する金属部材)は板状でなくてもよく、金属部材であればよい。また、上記各実施例では、第1工程にてレーザの照射領域の隣接領域、或いは照射領域内の領域に盛り上がり部を形成する例を示したが、盛り上がり部がレーザの照射領域から離れた領域(照射領域に接していない領域)に形成されてもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
1…第1金属板、1a…一方面、1b…他方面、2…第2金属板、2a…一方面、3…レーザヘッド、4…ノズル、5…レーザ発振器、A…照射領域、B…盛り上がり部、C…溶接継手、G…隙間,N…隣接領域

Claims (6)

  1. 第1の厚さを持つ金属板と、隙間を隔てて前記金属板の一方面に対面する一方面を有する金属部材とを、レーザにより溶接するレーザ溶接方法であって、
    前記金属板の前記一方面とは反対側の面である他方面にレーザを照射することにより、レーザの照射領域に位置する金属を溶融させるとともに、溶融金属を流動させることにより、前記金属板に前記第1の厚さよりも大きい厚さを持つ盛り上がり部を形成する第1工程と、
    前記盛り上がり部にレーザを照射することにより前記金属板と前記金属部材とを溶接する第2工程と、
    を含む、レーザ溶接方法。
  2. 請求項1に記載のレーザ溶接方法において、
    前記第1工程は、前記金属板の前記他方面にレーザを照射することにより、レーザの照射領域に位置する金属を溶融させるとともに、溶融金属を前記他方面上における前記照射領域とは異なる領域に移動させることにより、前記金属板に前記第1の厚さよりも大きい厚さを持つ盛り上がり部を形成する工程である、レーザ溶接方法。
  3. 請求項1または2に記載のレーザ溶接方法において、
    前記第1工程は、前記金属板の前記他方面にレーザを照射することにより、レーザの照射領域に位置する金属を溶融させるとともに、溶融金属を前記他方面上における前記照射領域の隣接領域に移動させることにより、前記隣接領域に前記第1の厚さよりも大きい厚さを持つ盛り上がり部を形成する工程である、レーザ溶接方法。
  4. 請求項3に記載のレーザ溶接方法において、
    前記第1工程は、前記他方面にレーザを照射することによりレーザの照射領域に位置する金属を溶融及び蒸発させるとともに、溶融金属が蒸発金属の圧力を受けて前記隣接領域に移動することにより、前記他方面に前記盛り上がり部を形成する工程である、レーザ溶接方法。
  5. 請求項3に記載のレーザ溶接方法において、
    前記第1工程は、前記金属板の他方面にレーザを照射することによりレーザの照射領域に位置する金属を溶融させるとともに、溶融金属にガスを吹き付けて前記溶融金属を前記隣接領域に移動させることにより、前記他方面に前記盛り上がり部を形成する工程である、レーザ溶接方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項2に記載のレーザ溶接方法において、
    前記第1工程は、前記金属板の前記他方面の垂線に対して傾斜した方向から前記他方面にレーザを照射する工程である、レーザ溶接方法。
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