JP6148973B2 - 光アイソレータの製造方法 - Google Patents
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一般的な波長1300nm帯、1500nm帯においては、光の透過性は良好となるが、波長1100nm以下では、主成分であり強磁性に寄与する3価の鉄イオンの存在により、光の透過性は低下する。
1000nm帯では、十分な光透過性を実現できる光アイソレータ用のフェリ磁性体または強磁性体はない。例えば強磁性体である希土類鉄ガーネット膜は光の吸収が大きく使用に耐えられない。
このため、テルビウム・ガリウム・ガーネット(TGG)やテルビウムガラス等の常磁性体がアイソレータコアに使われている(例えば、特許文献1を参照)。
しかし、常磁性体を用いた場合には、磁界の強さ等により磁化量が変化するため、ファラデー回転子のファラデー回転角は、ファラデー回転子の長さ寸法や、ファラデー回転子に印加する磁界によって変動しやすい。このため、設計通りの光アイソレータを得るのは容易ではない。
そこで、ファラデー回転角が45度となるように、ファラデー回転子の内部構造の調整が行われることがある(例えば、特許文献2、3を参照)。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、容易な操作で、確実に戻り光を遮断でき、かつコスト面でも有利となる光アイソレータの製造方法を提供することを目的とする。
前記磁性構造体は、押圧機構に押圧されることにより前記光の透過方向の位置を調整可能であり、前記押圧機構は、回転操作によりスピンドルがネジ送り動作されることにより直接的または間接的に前記磁性構造体を押圧するネジ式押圧具を備えており、前記透過した試験光のパワーが極小となるように前記磁性構造体の前記透過方向の位置を調整するにあたっては、前記透過した試験光のパワーを測定しつつ、前記押圧機構によって前記磁性構造体を移動させることが好ましい。
前記光アイソレータは、前記磁性構造体を載置する基台部をさらに備え、前記磁性構造体を、前記透過した試験光のパワーが極小となる位置で固定具により前記基台部に固定することが好ましい。
前記磁性構造体は、スリーブ状に形成され、前記アイソレータコアは、前記磁性構造体の内側空間に挿通していることが好ましい。
前記磁性構造体は、一対の環状の端部磁性体と、これらの間に設けられた環状の中間磁性体とを備え、前記一対の端部磁性体は、前記透過方向に対して垂直、かつ互いに反対の方向に磁化されており、前記中間磁性体は、前記透過方向に沿う方向に磁化されていることが好ましい。
このため、磁性構造体に対するアイソレータコアの位置を、高い遮断特性を有するように定めることができる。
従って、発生磁界にばらつき等が生じた場合でも、容易な操作で、確実に戻り光を遮断できるような調整が可能である。
また、新たな部材の追加や特殊部品の使用などにより光アイソレータの構造が複雑化することがないため、コストを抑制できるという利点もある。
図1〜図7は、本発明の製造方法の一実施形態によって製造された光アイソレータ10を有する光アイソレータユニット11を示す図である。
図1および図2に示すように、光アイソレータユニット11は、光アイソレータ10に押圧機構12を付加したものである。
光アイソレータ10は、ファイバレーザ等の光源13からの順方向の光L1が導入されるアイソレータコア1と、アイソレータコア1に磁界を印加する磁性構造体2(磁界印加手段)と、これらを収容する外装体3とを備えている。
光源13からの光が入射する側のアイソレータコア1の端部を入射端1aといい、前記光が出射する側のアイソレータコア1の端部を出射端1bという。
光源13からアイソレータコア1に向かう光の方向を順方向といい、その逆の方向を逆方向という。
偏波無依存型の構造を採用する場合には、検光子4および偏光子7として、例えば複屈折結晶型の偏光子などの透過型偏光子を使用できる。偏波依存型の構造を採用する場合には、検光子4および偏光子7として、いわゆる吸収型偏光子を使用できる。
検光子4および偏光子7としては、ファイバレーザ等のハイパワー用途を考慮し、耐パワー性に優れた透過型偏光子が好適である。
ファラデー回転子5は、ファラデー効果により入射光L1の偏光面を回転させる。ファラデー回転子5の長さは、入射光に対して出射光の偏光面が約45度異なるように設定することができる。
旋光子6としては、例えば水晶からなる1/2波長板、水晶旋光子等が使用できる。
ホルダ8には、検光子4、ファラデー回転子5、旋光子6、および偏光子7が収容される。検光子4、ファラデー回転子5、旋光子6、および偏光子7は、ホルダ部材8a、8bの一方のみに接着固定してもよい。
第1の端部磁性体17は、ブロック状の4つの磁性体17a〜17dを組み合わせて構成されている。磁性体17a〜17dは、それぞれ直方体状であり、全体として、中央に矩形の挿通口17eを有する矩形の環状となるように組み合わされている。
第2の端部磁性体18は、ブロック状の4つの磁性体18a〜18dを組み合わせて構成されている。磁性体18a〜18dは、それぞれ直方体状であり、全体として、中央に矩形の挿通口18eを有する矩形の環状となるように組み合わされている。
4つの磁性体17a〜17dと、4つの磁性体18a〜18dの並び方は、互いに同じである。すなわち、図7(b)において、磁性体17aの位置は、その背後にある磁性体18aの位置に一致している。同様に、磁性体17b〜17dの位置は、その背後にある磁性体18b〜18dの位置にそれぞれ一致している。
端部磁性体17、18の挿通口17e、18eと、中間磁性体19の挿通口19eとは、アイソレータコア1が挿通する内側空間20を形成している。内側空間20は、磁性構造体2の軸方向に沿って磁性構造体2を貫通する断面矩形の孔部である。
磁性体17aと磁性体18aとは互いに逆の方向に磁化されている。同様に、磁性体17bと磁性体18b、磁性体17cと磁性体18c、磁性体17dと磁性体18dについても、互いに逆の方向に磁化されている。
図7(a)、図7(c)に示すように、中間磁性体19は、構造体本体15の軸方向(X方向)に磁化されている。
一方延出板21bには、幅方向(Y方向)に間隔をおいて、一対の開口部21dが形成されている。開口部21dは、底板部21の長さ方向(X方向)に延在する長円形である。
他方延出板21cの先端縁21eには、幅方向(Y方向)に間隔をおいて、一対の凹部21fが形成されている。凹部21fは、底板部21の長さ方向(X方向)に延在する形状である。
固定具40は、ヘッド部40aとこれから延出する軸部40bとを備えている。開口部21dに挿通する軸部40bが基台部28にネジ止め等により固定されることによって、ヘッド部40aが一方延出板21bを基台部28に押さえつけて位置決めできる。
固定具40は、凹部21fに挿通する軸部40bが基台部28にネジ止め等により固定されることによって、ヘッド部40aが一方延出板21bを基台部28に押さえつけて位置決めできる。
本体部26は、X方向に延在する長方形の基台部28と、基台部28の両側縁に立設された一対の側板部29と、基台部28の両端縁に立設された一対の端板部30とを有する。
外装体3は、本体部26の側板部29、29間に確保された内部空間26bに磁性構造体2を収容できる。
側板部29、29間の離間距離は、磁性構造体2の幅寸法(Y方向の寸法)に近い値に設定すると、磁性構造体2の幅方向移動を規制できるため、後述の工程で磁性構造体2が移動する際に、磁性構造体2が傾斜姿勢となるのを防ぐことができる。
ネジ式押圧具32は、回転ヘッド34と、本体筒部35と、回転ヘッド34の回転操作によりネジ送りされるスピンドル36とを備えている。本体筒部35は、基体31に固定されている。
ネジ式押圧具32は、回転ヘッド34を軸回り方向に回転操作することによって、本体筒部35からのスピンドル36の突出寸法を調節できる。
回動押圧体33は、回動軸37を中心として、下端である第2角部33bが磁性構造体2に接近および離間するように回動することができる。
押圧機構12は、光アイソレータ10に対して着脱可能である。
また、光アイソレータユニット11は、押圧機構12と同じ構成の第2の押圧機構を設けてもよい。第2の押圧機構は、磁性構造体2をアイソレータコア1の出射端1b方向(図5の右方)に移動させることができる構成としてよい。
なお、この例の押圧機構12は、スピンドル36が回動押圧体33を介して間接的に磁性構造体2を押圧するが、押圧機構は、スピンドルが直接に磁性構造体2を押圧し移動させる構成であってもよい。
ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)である場合には、前記光は、常光と異常光の関係が逆転して検光子4を透過することにより光路が大きくずれて透過光L4として出射し、大部分が端板部30(30A)に遮られる。
一方、ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)を外れる場合には、前記光は、検光子4を透過する際に、常光と異常光からそれぞれ逆の成分の光が分離される。このため、透過光L4の一部は通過口30aを通過する。
逆方向の戻り光L3は、偏光子7と同じ偏光面を有する光のみが偏光子7を通過し、旋光子6およびファラデー回転子5でそれぞれ偏光面が光軸回りに回転し、検光子4に達する。
ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)である場合には、前記光は、検光子4の偏光面に対し略直交する偏光面を有することにより、大部分が検光子4で遮断される。
一方、ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)を外れる場合には、前記光の偏光面が検光子4の偏光面に対し略直交からずれることにより、検光子4を透過して通過口30aを通過する透過光L4は多くなる。
アイソレータコア1で得られるファラデー回転角は、例えば、ファラデー回転子5の長さをL、ベルデ定数をV、アイソレータコア1に印加される磁界をHとすると、「V×L×H」となる。
アイソレータコア1に印加される磁界「H」は、磁性構造体2とアイソレータコア1の相対位置に応じて変動することから、この相対位置が変化すると、ファラデー回転子5でのファラデー回転角も変動する。
この図より、磁性構造体2の内側空間20の中央付近では磁束蜜度が高く、中央付近から外れた位置では当該中央付近からの距離に応じて磁束密度が低くなることがわかる。
この図より、磁性構造体2の内側空間20においてアイソレータコア1の位置が変動すると、ファラデー回転子5に印加される磁界が変動することがわかる。
光源41からの試験光L5を、出射端1b側からアイソレータコア1に導入する。
試験光L5の波長は、例えば、900nm〜1100nm(好ましくは1000nm〜1100nm)としてよい。試験光L5は、光源13(図1参照)が発する光と同じ波長の光であってよい。
ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)である場合には、前記光は、常光と異常光の関係が逆転して検光子4を透過することにより光路が大きくずれて出射し、大部分が端板部30(30A)に遮られる。このため、光パワーメータ42で検出される透過光L6の光パワーは小さくなる。
一方、ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)を外れる場合には、前記光は、検光子4を透過する際に、常光と異常光からそれぞれ逆の成分の光が分離される。このため、透過光の一部は通過口30aを通過し、光パワーメータ42で検出される透過光L6の光パワーは大きくなる。
ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)である場合には、前記光は、検光子4の偏光面に対し略直交する偏光面を有することにより、大部分が検光子4で遮断される。このため、光パワーメータ42で検出される透過光L6の光パワーは小さくなる。
一方、ファラデー回転子5での偏光面の回転角度が所定の角度(例えば約45度)を外れる場合には、前記光の偏光面が検光子4の偏光面に対し略直交からずれることにより、検光子4を透過する光は多くなり、通過口30aを通過する透過光L6の光パワーは大きくなる。
この光は、検光子4では常光と異常光の関係が逆転し検光子4を透過することにより光路が大きくずれて端板部30で外部に光が漏れないように遮断され、光パワーメータ42で検出される透過光L6の光パワーは小さくなる。
一方、ファラデー回転子5で偏光面が例えば約45°回転しない場合、検光子4に達した光は、常光と異常光の関係が逆転し検光子4を透過するが、常光と異常光からそれぞれ逆の成分の光が分離され、その分離された光が端板部30から漏れ、光パワーメータ42で検出される透過光L6の光パワーは大きくなる。
例えば、回転ヘッド34の回転操作により、回動押圧体33の第3角部33cに近い位置がスピンドル36により押圧されることによって(図5の右回りに)回動押圧体33が回動すると、第2角部33bを含む下部33dが磁性構造体2に向かって移動する。
これによって、磁性構造体2の突起部39を、磁性構造体2の軸方向(X方向)に押圧し、磁性構造体2をこの方向(図5の左方。アイソレータコア1の入射端1a方向)に移動させることができる。
この図では、磁性構造体2の移動距離1mmの点が透過光L6の光パワーの極小値であるから、この位置において優れた遮断特性が得られたことがわかる。この位置は、45度に近いファラデー回転角が得られる位置であると認められる。
図5に示すように、この位置において、磁性構造体2を固定具40により基台部28に固定し位置決めできる。
また、作業終了後は、押圧機構12を光アイソレータ10から取り外すことができる。
このため、磁性構造体2に対するアイソレータコア1の位置を、高い遮断特性を有するように定めることができる。
従って、発生磁界にばらつき等が生じた場合でも、容易な操作で、確実に戻り光を遮断できるように調整できる。戻り光を遮断できるため、光源13(ファイバレーザ等)への影響を防ぎ、そのレーザ発振を安定させ、発光特性を良好にすることができる。また、ファイバーレーザ等の戻り光による破損を防止できる。
また、新たな部材の追加や特殊部品の使用などにより光アイソレータ10の構造が複雑化することがないため、コストを抑制できるという利点もある。
よって、磁性構造体2の構造を簡略化するとともに小型化を図ることができ、コスト面で有利になる。また、磁性構造体2の内面とアイソレータコア1との隙間を小さくできるため、アイソレータコア1に対する磁気的作用の点で好ましい。
(実施例1)
図5等に示す光アイソレータユニット11を作製した。
アイソレータコア1のファラデー回転子5には、テルビウム・スカンジウム・ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(TSLAG)を使用した。ファラデー回転子5の長さは20mmとした。
アイソレータコア1に試験光L5(波長1080nm)を導入し、光パワーメータ42で透過光L6の光パワーを測定しつつ、押圧機構12を用いて磁性構造体2をX方向に移動させた。
透過光L6の光パワーの測定結果を表1に示す。表1中、「位置」は基準位置からの磁性構造体2の位置(X方向の位置)である。
また、前記製造方法では、押圧機構12を用いて磁性構造体2を押圧し移動させたが、操作者が磁性構造体2を同方向に移動させてもよい。この場合には、押圧機構12を用いずに光アイソレータ10の製造が可能である。
Claims (5)
- 光源からの順方向の光が導入されるアイソレータコアと、前記アイソレータコアに磁界を印加する磁性構造体と、を備えた光アイソレータを製造する方法であって、
前記アイソレータコアは、前記順方向に、検光子と、常磁性材料からなりファラデー効果を有するファラデー回転子と、偏光子とを少なくとも備え、
前記磁性構造体は、前記アイソレータコアに対する、前記光の透過方向の位置を調整可能であり、
前記アイソレータコアに、前記順方向とは逆の方向から試験光を導入し、このアイソレータコアを透過した試験光のパワーを測定しつつ、この透過した試験光のパワーが極小となるように前記磁性構造体の前記透過方向の位置を調整することを特徴とする光アイソレータの製造方法。 - 前記磁性構造体は、押圧機構に押圧されることにより前記光の透過方向の位置を調整可能であり、
前記押圧機構は、回転操作によりスピンドルがネジ送り動作されることにより直接的または間接的に前記磁性構造体を押圧するネジ式押圧具を備えており、
前記透過した試験光のパワーが極小となるように前記磁性構造体の前記透過方向の位置を調整するにあたっては、前記透過した試験光のパワーを測定しつつ、前記押圧機構によって前記磁性構造体を移動させることを特徴とする請求項1に記載の光アイソレータの製造方法。 - 前記磁性構造体を載置する基台部をさらに備え、
前記磁性構造体を、前記透過した試験光のパワーが極小となる位置で固定具により前記基台部に固定することを特徴とする請求項1または2に記載の光アイソレータの製造方法。 - 前記磁性構造体は、スリーブ状に形成され、
前記アイソレータコアは、前記磁性構造体の内側空間に挿通していることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の光アイソレータの製造方法。 - 前記磁性構造体は、一対の環状の端部磁性体と、これらの間に設けられた環状の中間磁性体とを備え、
前記一対の端部磁性体は、前記透過方向に対して垂直、かつ互いに反対の方向に磁化されており、
前記中間磁性体は、前記透過方向に沿う方向に磁化されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の光アイソレータの製造方法。
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