JP6146831B2 - 低分子量成分の除去方法 - Google Patents

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Description

本発明は、試料溶液中に含まれる低分子量成分を透析除去する方法に関する。
電気透析装置を用いて醤油の脱塩を行う方法として、「無塩醤油の製造方法」(特許文献1)、「減塩醤油の製造方法」(特許文献2)などがある。これらの方法は、陽電極と陰電極との間に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を配置して、その両イオン交換膜の間のスペースに醤油を供給しつつ、両イオン交換膜と電極の間のスペースに適度な濃度の食塩水が供給されており、電極間の直流電流の作用により醤油中のナトリウムイオンを、陽イオン交換膜を介して陰極側に拡散させ、塩化物イオンを陰イオン交換膜を介して陽極側に拡散させることにより、醤油の脱塩を行うものである。
このような方式のイオン交換膜を用いた電気透析法では、交換膜の性能によって所定の通電電圧に達すると、イオン交換膜内で水の電気分解、いわゆる、中性攪乱が生じ電流効率が低下することが知られている。この中性攪乱は、醤油のpH上昇ならびに重要な呈未成分としてのアミノ酸の損失を引き起こすという問題があった。中性攪乱は減塩醤油の品質に影響を及ぼすことから所定の通電電圧の範囲内で脱塩処理を行う必要がある。したがって、この方法による醤油の脱塩には比較的長時間を要することも産業上の課題であった。
イオン交換膜を用いたこのような電気透析装置で醤油の脱塩を行うときの問題点を認識して、新たな技術開発が行われた(「減塩醤油の製造方法および製造装置」(特許文献3))。すなわち、この技術は、醤油のpH変化を小さくするとともに、醤油中のアミノ酸組成の変化を最小限にとどめながら脱塩が可能な減塩醤油の製造方法ならびにその製造装置に関するものである。
詳細には、陰陽両電極間に陽極側から陽イオン交換膜、バイポーラ膜、陰イオン交換膜の順に配置した1組以上の繰り返し単位と、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜の順に配置した1組以上の繰り返し単位とにより構成される電気透析装置を有することを特徴とする減塩醤油の製造装置、ならびにこれを用いて、その脱塩室に醤油を送液し、その醤油中の塩分を減少させることを特徴とする減塩醤油の製造方法である。このような三室式電気透析槽を用いた方法は、醤油のpH上昇とアミノ酸の損失を低減しうると考えられるが、装置の構成とその運用が煩雑になることが懸念される。さらに、電気透析法では脱塩所要時間は脱塩すべき全イオン量(塩濃度)に依存することから、食塩濃度の高い醤油においては脱塩に要する時間が長くなることを免れない。
電気透析脱塩法に替わる技術として、ナノ濾過膜を用いた方法が研究されている(非特許文献1及び2)。すなわち、ナトリウムイオンと塩化物イオンを自由に透過させる一方、アミノ態窒素化合物に対しては59.47%の阻止率を示す膜を装着した透析ろ過モジュールを用いて醤油の脱塩が行われた。膜間差圧(処理圧力)24 bar一定の条件で、2倍に希釈された醤油を連続的に供給し、供給された醤油の体積が1/2、すなわち元の濃度になるまでクロスフロー濾過を行った。本法の食塩除去率は51%、アミノ態窒素化合物の除去率(損失率)は25.27%であった。ナノ濾過膜を用いる脱塩は、染料からの脱塩など、多くの分野で利用されている。すなわち、染料分子と除去対象分子(イオン)サイズが大きく異なるために、塩分を選択的に透析ろ過することができるが、醤油の脱塩においてはナトリウムイオンとアミノ酸の分子サイズがそれほど違わないために、51%の脱塩率に対して25%のアミノ酸の損失が生じたと考えられる。さらには、ナノ濾過法で醤油のような複雑な組成の濃厚溶液を濾過すると膜の汚れ(Fouling)が問題となる。
特公昭47−46360号公報 特公昭61−20263号公報 特公平7−313098号公報
Separation and Purification Technology Vol.66, Page 429-437(2009) Separation and Purification Technology Vol.89, Page 217-224(2012)
希薄水溶液中の低分子成分を排除するために、透析法が専ら使用されてきた。しかしながら、試料溶液の浸透圧が透析液に比べて相当に高いとき、透析液の試料溶液への流れ込み(浸透流)の速度が大きいために、試料溶液中のいかなる溶質分子(イオン)も浸透流に抗して透析側へ拡散移動することができない。本発明は、透析膜の細孔内における溶媒の移動流量又は移動速度を制御することにより、試料溶液中の低分子量成分を選択的に透析除去する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、透析液の透析膜内における移動方向を、前記試料溶液中の溶質の透析膜内における移動方向とは逆向きに、かつ前記透析液の移流速度を前記低分子量成分の移動速度より小さくすることで上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)試料溶液中に含まれる低分子量成分を透析除去する方法であって、透析液の透析膜内における移動方向を、前記試料溶液中の溶質の透析膜内における移動方向とは逆向きに、かつ前記透析液の移動速度を前記低分子量成分の移動速度より小さくすることを特徴とする前記方法。
(2)以下の(a)〜(c)からなる群から選ばれる少なくとも1つの工程を含む、(1)に記載の方法。
(a)試料溶液の供給流量と排出流量を独立に制御する工程
(b)透析液の供給流量と排出流量を独立に制御する工程
(c)試料溶液に付加する圧力を透析液に付加する圧力よりも高くする工程
(3)前記試料溶液の供給流量(A)と排出流量(B)との比(A/B)が0.7以上1.0未満の範囲にある、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記試料溶液が調味料又はアルコール飲料である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5)前記透析液が水である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法。
(6)試料溶液の流路1、透析液の流路2及び前記流路1と流路2とを隔てる透析膜を有する透析装置において行われることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法。
(7)試料溶液の流路1、透析液の流路2、前記流路1と流路2とを隔てる透析膜、並びに試料溶液の供給流量と排出流量を独立に制御する試料流量制御機構及び透析液の供給流量と排出流量を独立に制御する透析液流量制御機構から選ばれる少なくとも1つの流量制御機構を備えた透析装置。
(8)試料溶液の流路1、透析液の流路2、前記流路1と流路2とを隔てる透析膜、並びに試料溶液に付加する圧力及び透析液に付加する圧力を制御する圧力制御機構を備えた透析装置。
(9)前記流量制御機構は、前記試料溶液の供給流量と排出流量との比が0.7以上1.0未満の範囲となるように前記試料溶液の供給流量及び排出流量を独立して制御する、又は前記透析液の供給流量及び排出流量を独立して制御するものである(7)に記載の装置。
(10)前記圧力制御機構は、前記試料溶液の供給流量(A)と排出流量(B)との比(A/B)が0.7以上1.0未満の範囲となるように圧力を制御するものである(8)に記載の装置。
(11)前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の方法を使用して、又は前記(7)〜(10)のいずれか1項に記載の装置を用いて、試料溶液中に含まれる低分子量成分を透析除去し、得られる透析処理後の試料溶液を回収することを特徴とする、低分子量成分除去溶液の製造方法。
(12)試料溶液が調味料又はアルコール飲料である(11)に記載の方法。
(13)調味料が醤油である(12)に記載の方法。
本発明により、試料溶液中に含まれる低分子量成分のみを選択的に透析することが可能である。
本発明の概念を説明する模式図である。 本発明の透析装置における透析モジュールを示す図である。 透析モジュールを連結した態様を示す図である。 試料溶液の供給流量と排出流量制御に基づく本発明の流量制御による透析装置を示す図である。 透析液の供給流量と排出流量制御に基づく本発明の流量制御による透析装置を示す図である。 本発明の圧力制御による透析装置を示す図である。 Na+イオンとアミノ態窒素化合物の減少率に及ぼす膜透過速度の影響をまとめたグラフである(実施例1−1〜1−3、比較例1)。ただし、膜透過速度=(透析膜細孔内の溶媒移動速度)×(透析膜の空隙率)である。 醤油の脱塩処理の結果(実施例2−1〜2−3、比較例2)を示す図である。 醤油の脱塩処理の結果(実施例3−1〜3−3、比較例3)を示す図である。 透析の選択性に及ぼす膜透過速度の影響を示す図である。 Na+イオンとアミノ態窒素の除去率に及ぼす透析液供給流量の影響を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において引用した文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。また本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2014-6023号(2014年1月16日出願)の明細書の内容を包含する。
1.透析方法
本発明は、試料溶液中に含まれる低分子量成分を透析除去するために、透析膜を用いて試料溶液中の低分子量成分を選択的に透析除去する方法に関する。
具体的には、本発明は、試料溶液中に含まれる低分子量成分を透析除去する方法であって、透析膜の細孔内における透析液の移動速度及びその方向、並びに試料中の低分子成分の移動速度及びその方向を調整することを特徴とする方法(以下、「本発明の透析方法」という)を提供する。
本発明の一態様においては、本発明の透析方法は、透析液の透析膜内における移動方向を、前記試料溶液中の溶質の透析膜内における移動方向とは逆向きに、かつ前記透析液の移動速度を前記低分子量成分の移動速度より小さくすることを特徴とする。また、本発明の一態様においては、本発明の透析方法は、(1)試料溶液の供給流量と排出流量を独立に制御する、(2)透析液の供給流量と排出流量を独立に制御する、あるいは(3)前記試料溶液に付加する圧力を透析液に付加する圧力よりも高くすることを特徴とする。
透析法には、非イオン性の半透膜を使用する拡散透析法、及びイオン交換膜又は荷電膜を使用する電気透析法若しくは電解透析法がある。一般に、「透析」とは、非イオン性の膜を使用する方法を意味する。
非イオン性透析膜の細孔内における溶液の流動状態により、透析は以下の態様に分類される。
(a) 透析膜の細孔内において溶媒は実質的に移動(対流)しない。この場合、溶質分子は拡散によってのみ高濃度側から低濃度側へ移動する。
(b) 試料溶液の一部を透析液側へ濾過しつつ、低分子量成分は分子拡散によって透析液側へ排出する。これを濾過透析と呼ぶ。濾過透析法は拡散のみでなく、濾過にともなう溶液移動により拡散速度の小さい比較的大きな分子(イオン)も透析側に排出できることが特徴である。
上記(a)及び(b)の透析法は公知である。これらの透析法では、透析される分子サイズは透析膜の分画分子量に依存する。
これに対し、本発明の方法は、透析膜を介して透析液を制御された流速で試料溶液側へ透過させつつ、低分子量成分のみを透析するものである。本発明の方法では、排除分子サイズは透析膜の分画分子量に依存するのではなく、透析液の試料溶液側への移動速度(透過速度)と溶質成分の移動速度(拡散速度)との比(ペクレ数)によって制御する。
すなわち、本発明の方法は試料溶液の供給流量と排出流量を独立して制御しながら透析を行うものである。ここで、本明細書では、透析液の試料溶液側への移動のことを「透過」又は「移流」と呼び、その移動速度を「透過速度」又は「移流速度」ともいう。また、試料溶液中の溶質成分の移動のことを「拡散」と呼び、その移動速度を「拡散速度」ともいう。なお、本明細書では、物質や溶液の動きを「移動」という用語で表現するが、上記定義により、透析液の「移動」は「透過」又は「移流」を意味し、試料溶液中の溶質成分の移動は「拡散」を意味することは、当業者であれば容易に理解することができる。
本発明の方法を、図1を用いて説明する。
図1は、透析膜細孔中における溶媒及び溶質の移動(それぞれ、移流、拡散)を表す模式図である。試料と透析液との間には透析膜が存在し、試料中のA成分(●)及びB成分(▲)、並びに透析液が移動する細孔を有している。この細孔の中を、試料中の成分及び透析液が移動する。図1では、透析膜の細孔中にA成分及びB成分並びに透析液が存在する態様を示している。矢印の方向及び長さは、A成分及びB成分の移動方向及び移動速度、並びに透析液(溶媒)の移動方向及び移動速度を示している。なお、図1において、移動方向は、左右方向(3次元右手系座標におけるx軸方向)へのベクトルで考え、上下方向(3次元右手系座標におけるy軸方向)及び前後方向(3次元右手系座標におけるz軸方向へのベクトルの存在は無視することができる。
図1aに示すように、試料溶液の供給流量と排出流量との比(供給流量/排出流量)が小さい場合(例えば、0.7未満の場合)は、透析液(水)の移動(移流)速度(図1aの左向き矢印)がA及びBの両成分の移動(拡散)速度(図1aの右向き矢印)よりも大きくなる。このため、透析液が試料方向に向かって進み、試料中の成分は透析液方向には進まない。
図1bは、試料溶液の供給流量と排出流量との比(供給流量/排出流量)が所定の値の範囲内の様態を示す。「所定の値」は、透析液の移動速度(膜透過速度)が、A成分の移動速度(拡散速度)よりも小さい値であり、B成分の移動(拡散)速度よりも大きくなる範囲内の値である。この態様では、透析液の膜透過方向が、A成分及びB成分とは逆向きであるが、透析液の膜透過速度(矢印の長さ)が、A成分より小さくB成分より大きくなっている。この場合は、A成分の拡散速度が透析液の移流速度に勝るため、A成分は透析液側に移動する。これに対し、B成分の拡散速度は透析液の移流速度よりも小さいため、B成分は透析液側に移動しない。
図1cは、試料溶液の供給流量と排出流量との比(供給流量/排出流量)が1より大きい場合の様態を示す。この態様では、細孔中の透析液(溶媒)の移流の向きはA及びBの両成分の拡散方向と同じであることから、A及びBの両成分ともに透析液側に排出される(濾過透析)。
本発明においては、図1bの態様を利用するものである。A成分をナトリウムイオンやエタノール分子とし、B成分をアミノ酸や香気成分とすると、図1bにおける試料溶液の供給流量と排出流量との比を所定の値に設定することにより、又は所定の圧力を付加することで、A成分(Naイオン、エタノール分子等)は試料から除去させつつ、B成分(アミノ酸、香気成分等)は試料中に残留させることができる。
本発明の方法によれば、透析膜の細孔中の透析液の流れに抗して拡散可能な低分子量成分のみが透析液側に排出される。例えば、アミノ酸や香気成分等の分子量100程度の化合物を試料中に保持しながら、Naイオン、Kイオン、Clイオン、さらにはエタノール分子を透析液側に排出することができる。
従って、本発明の方法は、透析膜を透過する液の流れ方向が従来の濾過透析とは真逆であることを利用する方法である。
また、本発明は、浸透圧によって発生する透析液の試料溶液への流れ込み(浸透)速度を制御することにより、低分子量成分を選択的に透析することを可能とする。これによって、醤油やワインなどの高浸透圧試料から低分子量物質のみを透析除去することができる。
本発明は、試料溶液の供給流量と排出流量の比(供給流量/排出流量)を0.7以上1.0未満(すなわち1.0を含まない)の範囲で調整することにより、有用成分を保持しながら、脱塩あるいは脱エタノールなどを行うものである。本法では非イオン性の半透膜を使用するのでイオン性物質のみならず非イオン性物質の除去が可能である。
本発明において、透析膜の細孔内の溶液の移動速度は、(1)試料溶液の供給流量と排出流量を制御することにより、(2)透析液の供給流量と排出流量を制御することにより、(3)試料溶液と透析液に付加される圧力の差により、あるいは上記(1)〜(3)を適宜組み合わせて所望の値に設定することができる。本発明者らは、このとき、拡散速度の大きな成分(低分子量成分)は溶媒の移動に抗して膜を透過することができるが、拡散速度の小さな成分は膜を透過しないように、透析膜の細孔内における溶媒の移動速度を制御することによって、低分子量成分のみを選択的に透析することができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の透析方法において、前記低分子量成分は、分子量が20〜150、好ましくは20〜100、より好ましくは20〜80、さらに好ましくは20〜70、よりさらに好ましくは20〜60のものである。
本発明の透析方法において、前記低分子量溶質は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルコール、カルボン酸及び無機の酸・塩基からなる群から選択される少なくとも1種以上の分子あるいはイオンである。
アルカリ金属分子の例としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられ、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウムである。
アルカリ土類金属分子の例としてはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられ、好ましくは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムである。
アルコール分子の例としては低級アルコールが挙げられ、より具体的にはメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられ、好ましくはメタノール、エタノール、プロピルアルコールである。
カルボン酸の例としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸などが挙げられ、好ましくは酢酸、乳酸である。
無機の酸の例としては塩酸、硝酸、リン酸、硫酸など、無機の塩基としては水酸化ナトリウム、アンモニアが挙げられる。
本発明の透析方法は、図2及び3に示す透析膜モジュール用いて行うことができる。この透析膜モジュールによれば、移流拡散透析を行うことができ、そのような装置の例としては、試料溶液の流路(流路1という)、透析液の流路(流路2という)及び前記試料溶液流路(流路1)と透析液流路(流路2)とを隔てる透析膜を有する透析装置が挙げられる。
このような装置を用いて本発明の透析方法を行う場合、(1)試料溶液の供給流量と排出流量とを独立に制御することにより、(2)透析液の供給流量と排出流量とを独立に制御することにより、(3)前記試料溶液を、前記透析液の供給圧力よりも高い供給圧力で前記流路1に供給することにより、あるいは上記(1)〜(3)を適宜組み合わせて前記試料溶液に含まれる低分子量成分を選択的に透析除去することができる。流量の制御の詳細は後述する。
本発明の透析方法において、前記試料溶液及び前記透析液は、同じ流量でそれぞれの流路1及び流路2に供給されてもよく、異なる流量で供給されてもよい。
前記試料溶液及び前記透析液の流量は、除去対象成分の除去率、除去すべきでない成分の残存率を考慮して設定される。さらには、試料溶液及び透析液の膜モジュール内での流動により圧力損失が発生するが、本発明の透析方法においてはこれらの圧力損失を小さくすることが好ましい。すなわち、圧力損失が膜間差圧の1.0倍以下、好ましくは0.5倍以下、より好ましくは0.1倍以下となるように試料溶液並びに透析液の流速を制御する必要がある。さらに、発生する圧力損失は中空糸膜の内径にも依存するので圧力損失を小さくするためには内径の大きな中空糸膜が好ましい。しかしながら、中空糸膜中の試料溶液の流れに垂直な方向の物質移動が、本発明の透析において律速とならないように過度に大きな内径であってはならない。本発明の透析方法において中空糸膜の内径は0.1mm以上、2.0mm以下、好ましくは0.2mm以上、1.0mm以下、より好ましくは0.3mm以上、0.6mm以下である。
前記試料溶液は、低分子量成分を含むものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは調味料又はアルコール飲料である。調味料の例としては、だし汁、醤油、魚醤、アミノ酸混液、みりん、ブイヨン、果実酢、醸造酢などが挙げられる。また、アルコール飲料の例としては、ビール、ワイン、日本酒などの醸造酒に加え、ウィスキー、ブランデー、リキュール、テキーラ、ウォッカ、ラムなどの蒸留酒が挙げられる。
さらには、乳清中のナトリウムイオン及びカリウムイオンを選択的に低減することができる。タンパク質の塩酸分解物からの水素イオン及び塩化物イオンの透析あるいは中和後のナトリウムイオン及び塩化物イオンの透析にも有効である。さらに、塩酸分解中に生成するクロロプロパノール類は発癌性が懸念される物質であるが、本発明の透析法によってこれを低減することができる。
エタノール発酵液、アセトン−ブタノール発酵液からのエタノール、あるいはアセトン及びブタノールの回収にも適用可能である。
本発明に使用される透析液は特に限定されるものではなく、好ましくは水を使用することができる。例えば、除去対象低分子量成分を含有しない水、あるいは試料溶液中の件の成分を含有していてもその濃度が試料中の濃度の10%未満、好ましくは5%未満、さらに好ましくは2%未満である水溶液(件の成分を実質的に含有しない水)を透析液として使用することができる。このような水としては、一般に飲料水として市販されている水、水道水、脱イオン水、精密濾過水、蒸留水などが挙げられる。移流拡散透析を多段で行う場合、2段目で流した透析液を1段目で再利用することも可能である。
試料溶液から溶存酸素を除去する、あるいは溶存酸素濃度が上昇するのを避けるためには、脱気した水を透析液として使用することができる。
本発明の透析方法を実施することにより、又は本発明の透析装置を用いて、試料溶液中に含まれる低分子量成分を透析除去し、得られる透析処理後の試料溶液を回収することで、低分子量成分の濃度が低下した溶液を製造することができる。従って、本発明は、別の態様として、本発明の透析方法を実施することにより低分子量成分の濃度が低下した溶液を製造する方法、及び当該製造方法により製造された低分子量成分の濃度が低下した溶液を提供する。透析液中に取り込まれる低分子量成分を新たに有効利用することもできる。例えば、エタノールを含有する透析液を新たな低アルコール飲料の素材として利用することができる。発酵液から目的物質を回収する目的で使用することもできる。
透析処理後の試料溶液としては、例えば脱塩調味料又は低濃度アルコール飲料が挙げられる。試料溶液として醤油やアルコール飲料を用いると、本発明の方法により脱塩醤油、低濃度アルコール飲料が製造される。
本発明の適用は醤油の脱塩や低アルコール飲料の調製に限定されるものではないが、適用例の一つとして醤油の脱塩に関して本発明を説明する。
透析膜を挟んで高濃度試料溶液と透析液(水)が存在するとき、水分子は膜の細孔を通って透析側から試料側へ流れ込む。これを浸透流と呼ぶ。一方、試料中の低分子量の溶質分子(イオン)は試料溶液側から透析液側へ拡散移動する。透析液の試料への流れ込み、すなわち浸透流の流速は、透析膜の諸特性(例えば、細孔径や膜厚)を考慮しなければ試料溶液と透析液の間の圧力差(浸透圧)に依存する。本発明における浸透圧とは、一般に周知されているものと少なからず異なるので以下にその説明を記す。すなわち、浸透圧は半透膜を介して二つの溶液が接するとき全溶質の濃度差に依存して発生する膜間差圧と考えられる。醤油の浸透圧は10 MPaを超えることが知られている。一方、分画分子量が10kDの透析膜において生ずる膜間差圧は、本発明の方法では約18.5kPa(実施例1、溶媒の移動速度がゼロとなる付加圧力20kPaから圧力損失分1.5 kPaを引く)と著しく低いことが明らかとなった。この浸透圧は膜の孔径(分画分子量)が大きくなるほど小さくなると考えられる。
本発明の透析において使用される透析膜の分画分子量は、透析可能な分子量を意味するものではないことは明らかである。この膜により発生する浸透圧が外部から付加される圧力により容易に制御し得るものであればよい。あるいは、試料溶液の供給量と排出量を容易に制御し得るものであればよい。ただし、透析膜の各々の細孔内を流れる溶媒の移動速度が揃っていることが重要であるので、細孔径分布はできるだけ小さいものが良い。
更なる態様として、透析膜の細孔内の溶媒の移動を制御するためには、下記の方法が可能である。
1.流量制御
・試料溶液の膜モジュールへの流入流量と膜モジュールからの排出流量を個別に制御することにより、透析膜の細孔内における溶媒の移動速度を制御することができる。
・透析液の膜モジュールへの流入流量と膜モジュールからの排出流量を個別に制御することにより、透析膜の細孔内における溶媒の移動速度を制御することができる。
上記制御は、単独で、又は適宜組み合わせることができる。
2.圧力制御
・透析膜で隔てられた試料溶液と透析液の間に差圧を生じさせることにより、膜細孔内の溶媒の移動速度を制御することができる。
・ポンプにより試料溶液を膜モジュールに供給する方法において、試料溶液の膜モジュール排出口に差圧弁を設置する。
・透析液が膜モジュールに流入する流入口に差圧弁を設置して、膜モジュール出口にポンプを設置して、透析液をポンプで吸引排出させる。
・試料溶液排出口を大気連通させる位置と透析液出口を大気と連通させる位置の水頭圧差により、試料溶液と透析液の間に差圧を付加することができる。
上記制御は、単独で、又は適宜組み合わせることができる。
試料溶液あるいは透析液が膜モジュールを流通するとき発生する圧力損失は、その系で生ずる浸透圧の1.0倍以下であり、好ましくは、浸透圧の0.5倍以下であり、さらに好ましくは、浸透圧の0.1倍以下である。
本発明において使用される透析膜は、均質膜及び不均質膜のいずれでもよく、中空糸の内面に緻密な薄層を有する不均質膜であることが好ましい。実施例で使用されているポリスルホン膜(Spectrum Laboratories社製)は、内面に緻密層を有する不均質膜である。
試料中に溶解している低分子量成分の透析膜細孔内における移動は、対象とする分子やイオンの拡散によるのみならず、溶液の移動によって引き起こされる。すなわち、低分子量成分の移動は拡散による移動と溶液の移流による移動の合計として考えなければならない。この現象は移流拡散と呼ばれる。この移流拡散現象を食塩やアルコールなど低分子量成分の透析除去プロセスに応用するためには、透析膜の細孔内における溶媒の移動速度を低分子量成分の移動速度との関連のもとに精密に制御することが重要となる。
再度、透析膜を挟んで高濃度試料溶液と透析液(例えば水)が存在する場合を考える。前述のように水分子は透析膜の細孔を通って試料側へ流入する。これと同時に、低分子量成分は固有の拡散速度にしたがって、試料側から透析側へ拡散移動する。試料液と透析液の間の浸透圧差が大きい場合には、細孔内の水の移動速度も大きいので、試料中の低分子量成分は透析液流入の勢いに逆らって透析側に拡散移動することができない。そこで、溶媒の流れによる溶質の移動と拡散による溶質の移動の比率を表わす無次元数としてペクレ数(Pe = uL/d)を考える。uは水の流入速度、Lは細孔長さ(膜厚)、dは溶質の拡散係数である。
ペクレ数が1より大きいときは溶質の移動は拡散よりも溶媒の流れの寄与が大きいこと、逆にペクレ数が1より小さいときは溶液の流れよりも拡散の寄与が大きいこと示す。膜厚はペクレ数に直接関係する重要なパラメーターである。膜の細孔毎に決まるペクレ数の分布を小さくするためには、中空糸膜の部位による細孔径変動と膜厚変動は最小限であるべきである。膜厚が薄い場合は溶媒の移動速度を大きくする必要がある。これは試料溶液の透析液による希釈が増大するので、過度に薄い膜は使用に適さない。しかしながら、膜厚が厚い場合は膜を介しての物質移動速度が大きく低減するので、これも好ましくない。以上から、本発明の透析法において、好ましい膜厚は20 μm以上、80μm以下、より好ましくは30μm以上、60μm以下である。
本発明において、排出しようとする低分子量成分に関して、ペクレ数は好ましくは 0以上、1.0以下であり、より好ましくは0.1以上、0.6以下である。試料中に残留させたい成分に関して、ペクレ数は好ましくは0.6以上2.0以下であり、より好ましくは0.8以上1.5以下である。
本発明は、ごく短い流路をプラグフロー方式で溶液を移動させるために透析膜を利用する点に特徴がある。溶媒の移動と溶質分子の移動(拡散)には、細孔内の溶媒の移動方向と溶質分子(イオン)の拡散方向が逆向きの場合(すなわち透析液が流入する場合)と、溶媒の移動方向と溶質の移動方向が同じ場合(すなわち細孔内を醤油の一部が押し出される場合)がある。溶媒の移動方向と溶質の移動方向とが逆で、溶媒移動速度が件の成分の拡散速度よりも大きいとき、件の成分は透析液側に排出されない。溶媒の移動方向と拡散方向が逆であり、溶媒移動速度が低分子量成分以外の成分の拡散速度より大きく、透析除去したい低分子量成分の拡散速度より小さい場合には、低分子量成分を選択的に透析することができる。
溶媒の移動速度がゼロ付近では、溶質分子の移動は拡散にのみ支配される。溶媒の移動方向と溶質の拡散方向が同じ場合、すなわち試料溶液の一部が透析側に排出される場合、溶質の移動は溶媒の移動と溶質の拡散の寄与の合計となる。透析膜の分画分子量は数kDから数10kDであることから、溶媒の移動方向と溶質の拡散方向が同じ場合、低分子量成分のみならず分画分子量以下の比較的大きな分子(イオン)も膜を透過することから低分子量成分の透析の選択性は低下する。
本発明において、低分子を透析しつつ目的の分子を試料中に残存させるための選択性(選択係数)は、例えばNa+イオンの除去率/アミノ態窒素の減少率によって表される。この値は10以上であれば選択性がよく、効率的に低分子を除去できると判断される。選択係数が4〜20であるときの低分子量成分の除去効率は、90%〜30%である。すなわち透析前に含まれていた低分子量物質全体の90%〜30%が除去される。
以上要するに、透析膜の細孔内における溶媒の移動速度を制御することにより、試料中に保持すべき溶質の損失を抑制しつつ、排除すべき低分子量成分の透析を効率的に行うために、本発明の透析、すなわち移流拡散透析法を考案するに至った。
本発明においては、試料中に保持すべき溶質(アミノ酸等のアミノ態窒素等)の損失は、25%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下に抑えることができる。
本発明の適用例の一つとして、醤油の脱塩を行った。すなわち、ナトリウムイオン、カリウムイオン及び塩化物イオンの透析液側への移動は拡散支配となる一方、アミノ態窒素化合物(アミノ酸)や香気成分の移動は溶媒の移動支配となるように、膜の細孔内における溶媒の移動速度を制御することによって、風味の劣化を伴わない減塩醤油の製造を行った。
さらに、本法によると醤油は膜を透過せずに、膜を透過するのは透析液(水)のみであることから、膜の汚れが起こり難いのも本法の特徴である。
3.透析装置
本発明の装置は、試料溶液の流路1、透析液の流路2、前記流路1と流路2とを隔てる透析膜、並びに透析液の供給流量と排出流量を独立に制御する透析膜を透過する流量制御機構を備えた透析装置である。
図4は、上記流路1、流路2、透析膜及び透析膜を透過する溶液の流量制御機構を含む移流拡散透析装置40の一例であり、試料溶液貯留槽401、処理溶液貯留槽402、透析液貯留槽403、排出透析液貯留槽404、試料供給ポンプ405、試料処理液排出ポンプ406、透析液供給ポンプ407、圧力計408及び透析モジュール409などを備える。透析モジュール409には、試料溶液の流路、透析液の流路、前記試料溶液流路と透析液流路とを隔てる透析膜が含まれる。流量制御機構は、試料供給ポンプ405、試料処理液排出ポンプ406から構成される。なお、本明細書において、同一符号は本発明の装置における同一の要素を指すものとする。
図4に示す移流拡散透析装置40において、透析モジュール409は、図2に示す形態とすることができ、例えば外径280μm、内径200μm、長さ208mm、分画分子量10000 Daのポリスルホン製の中空糸膜約5000本を、ポリプロピン製の円筒容器(直径33 mm、長さ250 mm)に収納したものとすることができる。この場合、透析モジュール409に収納されている透析膜の表面積は約6500 cm2である。
透析モジュール409の上面と下面にはそれぞれ醤油などの試料溶液の入口201と排出口202があり、試料溶液の流路1と透析液の流路2(図示せず)を備える。
透析モジュール409の円筒側面(例えばポリプロピレン製)には透析液(例えば水)を供給するための導入口203と排出するための排出口204が設けてある。
試料液貯留槽401内の試料溶液は、流量可変の試料供給ポンプ405で吸引し、透析モジュール409に供給される。このときの試料供給圧力は圧力計408により計測する。透析モジュール409のチューブ210(図2)は、透析モジュール409の頂部に連結されており、試料溶液は、試料供給口201からチューブ210を介して透析モジュール409の頂部に供給される。透析モジュール409の頂部に供給された試料溶液は、透析モジュール409内の試料溶液流路、すなわち中空糸膜内を下降し、底部の試料排出口202から流量可変の試料排出ポンプ406を経て処理溶液貯留槽402に至る。
一方、透析液貯留槽403の透析液(例えば水)は、流量可変の透析液送液ポンプ407により透析モジュール409の底部近くの円筒側部の導入口203から導入され、多数の中空糸膜の隙間を通って上昇し、透析モジュール409の頂部近くの円筒側部の排出口204から排出され、排出透析液貯留槽404に至る。
試料溶液の流路1と透析液の流路2は透析膜の細孔により連通していることから、試料溶液の供給量と排出量が設定され、かつ透析液の供給量が設定されるとき透析液の排出量は自動的に決まる。
図5は、上記流路1、流路2、透析膜及び透析膜を透過する流量制御機構を含む移流拡散透析装置50の一例であり、試料溶液貯留槽401、処理溶液貯留槽402、透析液貯留槽403、排出透析液貯留槽404、試料供給ポンプ405、透析液供給ポンプ407、透析液排出ポンプ507、圧力計408及び透析モジュール409などを備える。透析モジュール409には、試料溶液の流路1、透析液の流路2、前記流路1と流路2とを隔てる透析膜が含まれる。透析膜を透過する透析液の流量制御機構は、透析液供給ポンプ407、透析液排出ポンプ507から構成される。
透析モジュール409の構成例、並びに試料溶液及び透析液の流れなどは、図4に示す移流拡散透析装置40についての説明に準じることができる。
さらに、本発明の透析装置は、試料溶液の流路1、透析液の流路2、前記流路1と流路2とを隔てる透析膜、並びに試料溶液に付加する圧力及び透析液に付加する圧力を制御する圧力制御機構を備えた透析装置であり、試料液と透析液間の差圧制御機構を備える。
図6は、試料溶液の流路1、透析液の流路2、前記流路1と流路2とを隔てる透析膜、並びに膜間差圧の制御機構を備えた透析装置60の一例であり、試料溶液貯留槽401、処理溶液貯留槽402、透析液貯留槽403、排出透析液貯留槽404、試料供給ポンプ405、背圧調整弁606、透析液送液ポンプ407、圧力計408、及び透析モジュール409などを備える。
図6に示す移流拡散透析装置60において、透析モジュール409は、図2に示す形態とすることができ、例えば外径280μm、内径200μm、長さ208mm、分画分子量10000 Daのポリスルホン製の中空糸膜約5000本を、ポリプロピン製の円筒容器(直径33 mm、長さ250 mm)に収納したものとすることができる。このときの透析モジュール409に収納されている透析膜の表面積は約6500 cm2である。透析モジュール409の上面と下面にはそれぞれ試料溶液の入口201と排出口202がある。ポリプロピレン製の円筒側面には透析液を供給するための導入口203と排出するための排出口204が設けてある。試料溶液貯留槽内401の試料溶液を流量可変の試料供給ポンプ405で吸引し、透析モジュール409に供給する。このときの試料供給圧力は圧力計408により計測する。透析モジュール409の頂部に供給された試料溶液は透析モジュール409内の中空糸膜内を下降し、底部の試料排出口から排出されて処理溶液貯留槽402に至る。背圧調整弁606は、透析モジュール409の試料溶液の出口側に設けられており、試料溶液に所定の圧力を付加することにより、透析液の試料溶液内への流入を抑える。
透析液貯留槽403の透析液(例えば水)は流量可変の透析液供給ポンプ407により透析モジュール409の底部近くの円筒側部の導入口203から導入され、多数の中空糸膜の隙間を通って上昇し、透析モジュール409の頂部近くの円筒側部の排出口204から排出される。このシステムでは、試料供給ポンプ405と処理液排出ポンプ406の流量を個別に設定することにより、透析液の膜透過速度が決まる。すなわち、試料供給ポンプ405の流量をV5[ml/min]、試料処理液排出ポンプ406の流量をV6[ml/min]、透析膜の総表面積をS[cm2]とすると、
膜透過速度=(V6 − V5)/S [cm/min] である。
試料供給ポンプ405、試料処理液排出ポンプ406、及び透析液送液ポンプ407には、歯車ポンプ、モノーポンプなどが好ましく使用されるが、チービングポンプも使用することができる。
一方、試料溶液貯留槽401の試料溶液は流量可変の試料供給ポンプ405により、透析モジュール409の頂部に供給された試料溶液は透析モジュール409内の中空糸膜内を下降し、底部の試料排出口202から排出され処理溶液貯留槽402に至る。このシステムでは、透析液供給ポンプ407と透析液排出ポンプ507の流量を独立して制御することにより、透析液の膜透過速度を制御することができる。すなわち、透析液供給ポンプ407の流量をV6[ml/min]、透析液排出ポンプ507の流量をV7[ml/min]、透析膜の総表面積をS[cm2]とすると、膜透過速度は次式により求めることができる。
膜透過速度=(V6 − V7)/S [cm/min] である。
ここで、試料溶液の処理速度を高めるためには、本発明の装置は、図2のような透析モジュールを試料溶液および透析液の流れに対して並列に複数本(2本から数百本)を配置することができる。図3は、透析モジュール409を10本配列させた複数透析モジュールシステム30の態様の一例である。
複数透析モジュールシステム30は、透析モジュール409、試料溶液供給管301、試料処理液排出管302、透析液供給管303、透析液排出管304、第1の流量可変ポンプ305、第2の流量可変ポンプ306、第3の流量可変ポンプ307を備える。第1の流量可変ポンプ305、第2の流量可変ポンプ306、第3の流量可変ポンプ307は、それぞれ、試料供給ポンプ405、試料処理液排出ポンプ406、透析液供給ポンプ407(図4〜6)に対応する。
図3において、透析モジュール409の頂部は、チューブ311を介して試料液供給管301と連結し、チューブ312を介して透析液排出管304と連結する。透析モジュール409の底部は、チューブ313を介して透析液供給管303と連結し、チューブ314を介して試料処理液排出官302と連結する。
本発明を実施するための透析モジュール409の膜は、中空糸膜、スパイラル膜あるいは平板膜いずれでも使用可能であるが、透析モジュール409の容積当たりの膜面積を大きくとるためには中空糸膜が好ましい。本発明の透析法において浸透圧はせいぜい20kPa程度であるので、中空糸膜の全域において細孔径内の溶媒の移動速度の部位による変動を小さくするためには、試料溶液及び透析液が膜モジュールを流通するときの圧力損失が小さいほど良い。すなわち、圧力損失が浸透圧の1.0倍以下、好ましくは0.5倍以下、より好ましくは0.1倍以下となるように試料溶液及び透析液の流速を制御する必要がある。中空糸膜内を試料溶液が流れる場合、発生する圧力損失は試料溶液の流速のみならず中空糸膜の内径にも依存するので、処理速度を高く維持して圧力損失を小さくするためには内径の大きな中空糸膜が好ましい。一方、中空糸膜内の試料溶液の流れに垂直な方向の物質移動が本発明の透析において律速とならないように過度に大きな内径であってはならない。本発明の透析方法における中空糸膜の内径は0.1mm以上、2.0 mm以下、好ましくは0.2mm以上、1.0mm以下、より好ましくは0.3mm以上、0.6mm以下である。
分画分子量が10kDの透析膜を用いた本実施例において生ずる膜間差圧(本発明の浸透圧)は約18kPaと低いことが明らかとなった。この浸透圧は膜細孔径が大きくなるほど小さくなると考えられる。本発明の透析において使用される浸透膜の分画分子量は透析可能な分子量を意味するのではない。発生する浸透圧が外部から付加される操作パラメーター(圧力及び流量)により容易に制御される程度の大きさであれば良い。ただし、透析膜の各々の細孔内を流れる溶媒の移動速度に変動がないことが重要であるので、細孔径分布はできるだけ小さいものが良い。
ペクレ数の定義式から明らかなように、膜厚は本発明の透析を行う上で溶媒の移動速度と関連する重要なパラメーターである。実施例の結果から、好ましい膜厚は20μm以上、80μm以下、より好ましくは30μm以上、60μm以下である。
内径0.2 mm、長さ208 mm、膜厚40μm、分画分子量10000Daのポリスルホン中空糸膜を用いて醤油を透析するとき、浸透圧は18 kPaであった。一方、中空糸膜を流れる醤油の平均線速度が6.3 mm/sのとき圧力損失は1.5 kPa、10 mm/sのとき2.5kPa、17mm/sのとき7.7kPaであった。中空糸膜内の醤油に圧力を付加しない場合は、透析液が醤油側へ流入したのに対して、透析モジュール出口に設けた圧力調整弁により醤油に20〜42 kPaの圧力を付加することにより、見かけ上は透析液の流入を抑えることができた。醤油の入口流量が大きくて圧力損失が7.7 kPaと大きいときは、醤油供給圧が41.8kPaのとき醤油の入口流量と出口流量が等しくなった。見かけ上は、膜細孔内の溶媒の移動速度は0であるが、実際は中空糸膜の上流部分の膜間差圧は大きく、醤油の一部分は透析側に排出されている。一方、中空糸膜の下流部分では膜間差圧は小さく、透析液が醤油側に流入している。このような現象が起こるので試料溶液の圧力損失が大きい場合は低分子量成分の選択的透析除去が困難になる。
細孔内における溶媒の移動速度を制御する方法としては、次のような方法が考えられる。
膜間差圧の制御は、試料溶液排出口に差圧弁を設置することにより行うことができる。
あるいは、試料溶液排出口から排出される処理液を一時的に貯留する貯留槽と、排出される透析液の開口部の水頭圧差を制御することにより、差圧を発生させることができる。すなわち、処理された試料の貯留槽の設置位置と透析液の排出口の開口位置の落差により、膜間圧力を調整することができる。試料溶液の入口流量と出口流量の制御、あるいは透析液の入口流量と出口流量の制御によっても、細孔内の溶媒の移動速度を調整することができる。例えば、モノーポンプのような高度に流量制御可能で脈流を発生しないポンプを試料溶液の供給部と試料溶液の排出部にそれぞれ設置し、両ポンプの流量が僅かに異なる状態で運転することにより目的を達成することができる。あるいは、透析液について同様の制御を施すことによっても目的を達成することができる。
透析装置の設計にあたっては、透析膜のポリマー素材、分画分子量、膜厚、透析膜の開口率(空隙率)、中空糸膜の内径と長さ、膜透過速度(移流速度)の制御方法、試料溶液の流速と流れ方向、透析液の流速と流れ方向など、十分に考慮する必要がある。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
Spectrum Laboratories社製のSPポリスルホン中空糸膜を装着した透析モジュール(分画分子量10kD、内径200μm×外径280μm、中空糸膜本数5750本、膜表面積6500cm2(内面)・9100cm2(外面))を用いて、市販の濃口醤油の脱塩を行った。すなわち、中空糸膜の内部に醤油を流し、外部に透析液を向流方式で流すことにより、透析を行った。醤油および透析液の送液には、東京理化機器社製ローラーポンプRP-2100を使用した。図6のように、醤油の排出口に圧力調整用のバルブを取り付けることにより、醤油と透析液の間に差圧を発生させた。醤油の入口側に圧力センサーを取り付けて、醤油の供給圧力をモニターした。
醤油流量60 ml/min、透析液流量60 ml/minにおいて以下の実験を行った。
比較例1
実施例1−1)圧力調整バルブにより、醤油の供給圧力を9.0 kPaに調整して透析を行った。
実施例1−2)圧力調整バルブにより、醤油の供給圧力を20 kPaに調整して透析を行った。
実施例1−3)圧力調整バルブにより、醤油の供給圧力を32 kPaに調整して透析を行った。
比較例1)通常の透析では膜間差圧及び溶媒の膜透過を想定しないことから、醤油出口の圧力調整バルブを全開にして透析を行い、比較実験とした。このとき醤油供給圧力は1.5 kPaであった。
実施例1−1〜1−3及び比較例1における醤油の入口流量と出口流量ならびに透析液の入口流量と出口流量を表1に示す。醤油の入口流量と出口流量の差を透析膜面積で除することにより膜透過速度を算出した。さらに、実施例1−1〜1−3及び比較例1におけるNa+イオンとK+イオンの減少率ならびにアミノ態窒素の減少率を表1に示す。
比較例1;醤油出口に装着された圧力調整バルブを全開にしたときの醤油入口圧力は1.5 kPaであった。このとき醤油入口流量60 ml/minに対して出口流量は102 ml/minであり、透析液が醤油側へ毎分42 ml浸透流入しており、膜透過速度は0.0065 cm/minであった。このときNa+イオンンの減少率は僅かに1.4%、アミノ態窒素の減少はほとんど認められなかった。以上の結果、比較例1では、醤油のように浸透圧が高い試料から低分子量成分(イオン)を透析除去しようとしても、透析膜中における透析液の浸透速度が大きいためにこれに抗して拡散移動することは困難であった。すなわち、透析することができなかった。
そこで透析膜中の透析液の浸透速度を制御しながら透析を行った。
実施例1−1;醤油出口に装着された圧力調整バルブにより醤油の入口圧力を9.0 kPaに設定して透析を行ったところ、醤油入口流量60 ml/minに対して醤油出口流量は72 ml/minであった。この結果、醤油が中空糸膜を通過する間に透析液が醤油中に毎分12 ml浸透流入した。このときの膜透過速度は0.0018 cm/minであった。
実施例1−2;醤油の入口圧20 kPaにおいて醤油の入口流量と出口流量は等しく、透析液の流入は停止した(膜透過速度はゼロ)。したがって、本条件下における浸透圧は20 kPaである。
実施例1−3;醤油入口圧力32 kPaでは、醤油入口流量60 ml/minに対して出口流量は43 ml/minであり、醤油の一部が毎分17 ml透析液側へ排出された。このときの膜透過速度は-0.0026 cm/minであった。
Na+イオンの減少率は透析液が醤油側へ流入する膜透過速度が0.0065、0.0018、0.000、-0.0026 cm/minと小さくなるにつれて、1.4、20.9、39.3、54.7%と増大した。同条件下でのアミノ態窒素の減少率は、<0.1、0.8、7.3、23.2%であった。
表1(比較例1、実施例1−1〜1−3)の結果を図7に示す。図中、ナトリウムイオンおよびアミノ態窒素の減少率のプロットが各々四点あるが、これは右から順に比較例1、実施例1−1、1−2および1−3の結果を示している。
図7はNa+イオンの減少率及びアミノ態窒素の減少率に及ぼす透析液の浸透流速(膜透過速度)の影響を示している。正の値は透析液が醤油側に浸透流入する方向であり、負の値は醤油の一部分が透析液側へ流出するときの膜透過速度を表している。
比較例1;醤油に圧力を付加しないときの透析液の膜透過速度は0.0065 cm/minであり、Na+イオンもアミノ態窒素成分(アミノ酸)も濃度勾配にしたがって透析液側に実質的に拡散移動することができない。すなわち、透析は不可能であることを示している。
実施例1−1;醤油に9.0 kPaの圧力を付加して膜透過速度0.0018 cm/minで透析を行った。このときNa+イオンの減少率は20.9 %となったが、アミノ態窒素成分の減少はほとんど認められなかった。
実施例1−2;醤油に20 kPaの圧力を付加して膜中で透析液が静止した状態で透析を行った。このときNa+イオンの減少率は39.3 %、アミノ態窒素成分の減少率は7.3 %であった。
実施例1−3;醤油に付加する圧力を32 kPaに上げて膜透過流の向きを反転(-0.0026 cm/min)させ、醤油の一部が透析液側に排出(ろ過)される状況下で透析を行った。このときNa+イオンの減少率は54.7 %、アミノ態窒素成分の減少率は23.2 %であった。
以上のとおり、Na+イオン及びアミノ態窒素成分の移動に及ぼす拡散と溶媒の移流の影響を明瞭にすることができた。すなわち、拡散速度が移流速度より大きな領域(ペクレ数>1)においては、溶質の減少率と移流速度の間に直線関係が認められた。Na+イオンに関してペクレ数=1となる膜透過速度は約0.0045cm/min、アミノ態窒素成分では膜透過速度0.001cm/min近傍でペクレ数=1となることが判明した。
本実験において、Na+イン濃度はNa+イオン選択性電極(HORIBA B-722)により、K+イオン濃度はK+イオン選択性電極(HORIBA B-731)により測定した。アミノ態窒素はニンヒドリン反応生成物の570 nmでの吸光度より測定した。
醤油入口流量を120 ml/min、透析液入口流量を120 ml/minとして実施例1及び比較例1と同様の透析を行った。
実施例2−1)圧力調整バルブにより、醤油の供給圧力を15 kPaに調整して透析を行った。
実施例2−2)圧力調整バルブにより、醤油の供給圧力を25 kPaに調整して透析を行った。
実施例2−3)圧力調整バルブにより、醤油の供給圧力を35 kPaに調整して透析を行った。
比較例2)通常の透析では膜間差圧及び溶媒の膜透過を想定しないことから、醤油出口の圧力調整バルブを全開にして透析を行い、比較実験とした。このとき醤油の供給圧力は2.5kPaであった。
実施例2−1〜2−3及び比較例2の結果を表2に示す。
比較例2;醤油出口に装着された圧力調整バルブを全開にしたときの醤油入口圧力は2.5 kPaであった。このとき醤油入口流量120 ml/minに対して出口流量は150 ml/minであり、透析液が醤油側へ毎分30 ml浸透流入しており、膜透過速度は0.0046 cm/minであった。このときNa+イオンンの減少率は僅かに6.6 %、アミノ態窒素の減少はほとんど認められなかった。以上の結果、醤油への圧力付加なしに透析した場合、Na+イオンを選択性に排除することができたが、除去率は6.6 %と低いこと、さらに試料溶液が透析液で25%ほど希釈されることが明らかとなった。
そこで透析膜中の透析液の浸透速度を制御しながら透析を行った。
実施例2−1;醤油に15 kPaの圧力を付加して膜透過速度0.0009 cm/minで透析を行った。このときNa+イオンの減少率は39.5 %であったが、アミノ態窒素成分の減少率は4.2 %であった。
実施例2−2;醤油に25 kPaの圧力を付加して膜透過速度-0.0009 cm/minで透析を行った。このときNa+イオンの減少率は47.5 %であり、アミノ態窒素成分の減少率は13.1 %であった。
実施例2−3;醤油に35 kPaの圧力を付加して膜透過速度-0.0018 cm/minで透析を行った。このときNa+イオンの減少率は52.1 %となったが、アミノ態窒素成分の減少率は21.2 %であった。
透析液の膜透過速度が0.0046、0.0009、-0.0009、-0.0018 cm/minと減少するにつれて、Na+イオンの減少率は6.6、39.5、47.3、52.1%と増大した。同条件下でアミノ態窒素の減少率は、0.16、4.2、13.1、21.2%であった。また、同条件下で選択性は41、9.4、3.6、2.4であった。上記の結果は、ナトリウムイオンの除去率と選択性が逆比例することを示している。膜透過速度が負の値(実施例2−2、2−3)は、濾過透析が起こっていることを示す。移流拡散透析が行われているのは実施例2−1であり、ナトリウムイオンの除去率および選択性の両方を満たしていることがわかる。
表2(比較例2、実施例2−1〜2−3)の結果を図8に示す。図中、ナトリウムイオンおよびアミノ態窒素の減少率のプロットが各々四点あるが、これは右から順に比較例2、実施例2−1、2−2および2−3の結果を示している。
醤油に圧力を付加しないとき、Na+イオンの減少率は6.6%であり透析液の浸透流に抗してわずかながら拡散移動することができたが、アミノ態窒素成分の拡散速度はNa+イオンほど大きくないためにほとんど透析液側に排出されなかった。
膜透過速度0.0009 cm/minにおいてNa+イオンの減少率は39.5 %、アミノ態窒素成分の減少は4.2%であった。膜透過速度-0.0009 cm/minにおいて、Na+イオンの減少率は47.3%、アミノ態窒素成分の減少率は13.1 %であった。さらに、醤油に付加する圧力を増大して膜透過速度-0.0018 cm/minで透析を行ったところ、Na+イオンの減少率は52.1 %、アミノ態窒素成分の減少率は21.2 %であった。
以上のとおり、溶質の拡散速度が移流速度より大きな領域(ペクレ数<1)においては、溶質の減少率と移流速度の間に直線関係が認められた。
醤油入口流量を180 ml/min、透析液入口流量を180 ml/minとして実施例1及び比較例1と同様の透析を行った。
実施例3−1;圧力調整バルブにより、醤油の供給圧力を17.2 kPaに調整して透析を行った。
実施例3−2;圧力調整バルブにより、醤油の供給圧力を28.1 kPaに調整して透析を行った。
実施例3−3;圧力調整バルブにより、醤油の供給圧力を41.8 kPaに調整して透析を行った。
比較例3;通常の透析では膜間差圧及び溶媒の膜透過を想定しないことから、醤油出口の圧力調整バルブを全開にして透析を行い、比較実験とした。
実施例3−1〜3−3及び比較例3の結果を表3に示す。
比較例3:醤油出口に装着された圧力調整バルブを全開にしたときの醤油入口圧力は7.7 kPaであった。このとき醤油入口流量180 ml/minに対して出口流量は250 ml/minであり、透析液が醤油側へ毎分70 ml浸透流入しており、膜透過速度は0.011 cm/minであった。このときNa+イオンンの減少率は僅かに25.4 %、アミノ態窒素の減少はほとんど認められなかった。以上の結果、醤油への圧力付加なしに透析した場合、Na+イオンを選択性に排除することができたが、試料溶液が透析液で39%ほど希釈されることが明らかとなった。
そこで透析膜中の透析液の浸透速度を制御しながら透析を行った。
実施例3−1:醤油に17.2 kPaの圧力を付加して膜透過速度0.0065 cm/minで透析を行った。このときNa+イオンの減少率は32.5 %であったが、アミノ態窒素成分の減少率は2.9 %であった。
実施例3−2:醤油に28.1 kPaの圧力を付加して膜透過速度0.0046 cm/minで透析を行った。このときNa+イオンの減少率は40.9 %であったが、アミノ態窒素成分の減少率は6.5 %であった。
実施例3−3:醤油に41.8 kPaの圧力を付加して膜透過速度0.0000 cm/minで透析を行った。このときNa+イオンの減少率は52.5 %であったが、アミノ態窒素成分の減少率は13.0 %であった。
Na+イオンの減少率は透析液の膜透過速度が0.011、0.0065、0.0046、0.000 cm/minと減少するにつれて、25.4、32.5、40.9、52.5%と増大した。同条件下でアミノ態窒素の減少率は、0.9、2.9、6.5、13.0%であった。また、同条件下で選択性は、28.8、10.8、6.4、4.0と減少した。上記の結果は、ナトリウムイオンの除去率と選択性が逆比例することを示している。
表3(比較例3、実施例3−1〜3−3)の結果を図9に示す。図中、ナトリウムイオンおよびアミノ態窒素の減少率のプロットが各々四点あるが、これは右から順に比較例2、実施例2−1、2−2および2−3の結果を示している。
図9の結果は図7及び8の結果と異なった。すなわち、醤油に圧力を付加せず、透析液の浸透流入速度が0.011 cm/minと大きいにもかかわらず25.4%のNa+イオンが透析液側へ排出された。なお、このときアミノ態窒素成分は透析液側にほとんど排出されなかった。これは透析膜内における醤油の流速が増大したために、透析膜表面に形成される境界層の性質が変化したためと考えられる。
醤油の脱塩では、Na+イオンの減少率をアミノ態窒素成分(アミノ酸)の減少率で除した値(以後、選択係数と呼ぶ)は減塩醤油の品質に大きな影響を与える。そこで、醤油の透析における選択係数に及ぼす透析液の膜透過速度と透析モジュールへの醤油供給流量(透析速度)の影響を明らかにする必要がある。図10は透析速度をパラメーターとして、透析液の膜透過速度に対して選択係数をプロットしたものである。
選択係数=Na+イオンの除去率/アミノ態窒素の減少率
醤油の供給流量:△ 60ml/min; ▲ 120 ml/min; ○ 180 ml/min
図10より透析速度一定条件下で透析の選択性と透析液の膜透過速度の間に直線関係が成立することが明らかとなった。透析液の膜透過速度を大きくするほど選択係数を高くすることができるが低分子量溶質の排出速度は小さくなるので効率的な透析を行うためには、選択係数と透析速度のバランスを考慮して条件設定する必要がある。いずれの透析速度においても透析液の膜透過速度が-0.002近傍で選択係数は0.35程度になることが判明した。透析膜中の溶媒移動がない状況下では各成分の移動は各成分の拡散速度に依存するので、理想的には膜透過速度ゼロにおいて選択係数は一定値に収束すると考えられるが、実際の値と理論値の間に0.002cm/min程度の違いが生じた。また、各透析処理の直線の傾きも、理論的には等しくなることが予測されるが、実際には透析速度の影響を顕著に受けた。すなわち、透析速度が大きくなるほど選択係数に及ぼす透析液の膜透過速度の影響が小さくなる(直線の傾きが小さくなる)ことが判明した。
以上のように、理論的考察と実測値が一致しない理由として、中空糸内の醤油の流れによって中空糸膜内面に形成される境界層の厚さや電気二重層の電荷の強さが異なることに起因すると考えられる。
本法による醤油の脱塩を考える場合、選択係数を10程度に設定することは妥当と考える。そこで選択係数が10のところに破線を施したところ、透析速度が大きいほど透析液の膜透過速度も大きくなることが判る。
実施例1〜3及び比較例1〜3では、いずれも試料溶液の供給流量と透析液の供給流量を同等にして実験を行った。透析処理では透析液の流量を増やすほど透析対象成分の減少率を大きくすることができる。
そこで、図4に模式的に示した移流拡散透析装置を使用して醤油の脱塩に及ぼす透析液流量の影響を検討した。図6のシステムでは、処理された醤油出口に設置された圧力調整バルブにより中空糸膜を流れる醤油の圧力を制御することにより、透析膜中の溶媒の膜透過速度を制御したのに対して、図4のシステムでは、醤油供給流量と醤油排出流量を独立して制御することにより透析膜中の溶媒の膜透過速度を制御するものである。醤油の入口流速を180 ml/min、出口流量を220 ml/minとして、透析液の流量を180、270、360、450 ml/minと変化させて透析を行った。図11は、醤油供給流量180ml/minおよび醤油排出流量220ml/minにおけるNa+イオンの減少率とアミノ態窒素成分の減少率を透析液流量に対してプロットしたものである。
図11より明らかなように、Na+イオンの減少率は透析液の流量とともに上昇し醤油の2倍以上の透析液を流すことにより50%以上の脱塩を行うことができた。
一方、アミノ態窒素成分の減少率は透析液の流量にほとんど影響を受けず、いずれの透析液流量においても2%を超えることはなかった。以上の結果、醤油供給量の2倍の透析液流量において、高い脱塩効率(50%)と大きな選択係数(30)が得られることが判った。実際の適応においては、選択係数10程度を目安とするので透析液の膜透過速度をもっと小さく設定する(醤油供給流量と排出流量の差を小さくする)ことにより、50%以上の脱塩が可能となる。
実施例4
実施例1で使用した透析装置と同様のものを使用して白ワイン中のアルコールの低減化を試みた。ワイン流量を50 ml/min、透析液流量を100 ml/minとしてワイン中のアルコールの透析を行った。
実施例4−1)ワイン出口の圧力調整バルブを全開にて(ワイン供給圧力1.4 kPa)透析を行った。
実施例4−2)圧力調整バルブにより、ワインの供給圧力8.4 kPaで透析を行った。
実施例4−3)ワインの供給圧力18.4 kPaで行った。
本実施例の結果を表4に示す。
圧力調整バルブを全開にした時のワインの供給圧力は1.4 kPaであり、膜モジュールを
流れるときの圧力損失が1.4 kPaであることがわかる。次いで、ワインの入口圧力が8.4 k
Pa、18.4 kPaと高くなるにしたがって、ワインの出口流量は減少した。すなわち、供給圧
が低いときは透析液がワイン側へ流入するが、供給圧が高くなると逆にワインの一部が透
析液側に排出されることがわかる。ワインの入口圧力が8 kPa近傍で透析によるワインの体積変化が起こらないと判断される。すなわち、本発明における透析においてワインの浸透圧が8 kPa程度であることを示す。エタノールの減少率はワインの供給圧力が高くなるほど増加したがワインの透析液側への排出量も増大した。これは本条件下で濾過透析が起こっておることに起因する。ワイン供給圧力8.4 kPaで処理したワインのエタノール除去率は79.8%であり、その風味は良好に保たれていた。以上のように、本法がアルコール飲料からエタノールを低減する手法としても重要であることが判明した。
エタノールの定量は、マイクロ固相抽出(SPME)法(SUPELCO社製)でヘッドスペース中のエタノールを吸着捕集し、これをGC(島津GC-14A)分析することにより行った。
白ワイン中の香気成分の分析は、スペルコ社製Polyacrylate coating SPME Fiberを使用した固相マイクロ抽出法により行った。すなわち、ワイン20 mlを50 mlヘッドスペースガスサンプリングガラス容器に採取して、30℃、20分間恒温槽でインキュベートして香気成分の気液平衡を達成させた。次いで、SPME Fiberを20分間ヘッドスペース中に露出することにより、香気成分の捕集を行った。香気成分の分析はキャピラリーカラム(DB-WAX)を装着したGC-MS(島津製作所製GC-MS QP2010 plus)を使用して行った。
表5にワインの香りに重要と考えられる8成分について、原料中の濃度と透析ワイン中の濃度を何れもガスクロマトグラムのピーク面積として示す。さらに、原料ワインに対する透析ワイン中の各成分の残存率をカッコ内に示す。この結果、Ethyl octanoateを除いて83%以上が残存していることが判明した。Ethyl octanoateの減少は透析膜への収着が原因と考えられた。したがって、膜への収着平衡が達成されたのちは、本処理による減少は問題とならないと考えられる。
以上のように、本発明の透析方法によると55%以上(多くは80%以上)の香気成分が残存する、香りの低下が少ない約80%のエタノールが除去された脱アルコールワインを製造することができた。
本発明により、試料溶液中に含まれる低分子量成分を選択的に透析除去する方法が提供される。
30:複数透析モジュールシステム、40:移流拡散透析装置、
50:移流拡散透析装置、60:透析装置
401:試料溶液貯留槽、402:処理溶液貯留槽、403:透析液貯留槽、
404:排出透析液貯留槽、405:試料供給ポンプ、406:試料処理液排出ポンプ、
407:透析液供給ポンプ、408:圧力計、409:透析モジュール
507:透析液排出ポンプ、606:背圧調整弁

Claims (17)

  1. 透析膜を通過可能なa成分及びb成分を含む試料溶液から、b成分よりも低分子量のa成分を透析除去する方法であって、
    (a)試料溶液の供給流量と排出流量を独立に制御する工程、(b)透析液の供給流量と排出流量を独立に制御する工程、および(c)試料溶液に付加する圧力を透析液に付加する圧力よりも高くする工程からなる群から選ばれる少なくとも1つの工程を含み、
    透析液の透析膜内における移動方向を、a成分及びb成分の移動方向とは逆方向とし、かつ、透析液の移動速度を、a成分の移動速度よりも小さく、b成分の移動速度よりも大きい範囲の速度に調整することにより、a成分を透析することを特徴とする前記方法。
  2. 前記試料溶液の供給流量(A)と排出流量(B)との比(A/B)が0.7以上1.0未満の範囲にある、請求項に記載の方法。
  3. 前記試料溶液が調味料又はアルコール飲料である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記透析液が水である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記試料溶液の流路1、透析液の流路2及び前記流路1と流路2とを隔てる透析膜を有する透析装置において行われることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  6. 透析膜を通過可能なa成分及びb成分を含む試料溶液の流路1、透析液の流路2、前記流路1と流路2とを隔てる前記透析膜、並びに前記試料溶液の供給流量と排出流量を独立に制御する試料流量制御機構及び透析液の供給流量と排出流量を独立に制御する透析液流量制御機構から選ばれる少なくとも1つの流量制御機構を備えた透析装置であって、 前記流量制御機構は、透析液の前記透析膜内における移動方向を、a成分及びb成分の移動方向とは逆方向とし、かつ、透析液の移動速度を、a成分の移動速度よりも小さく、b成分の移動速度よりも大きい範囲の速度に調整することにより、b成分よりも低分子量のa成分を透析する、前記透析装置
  7. 透析膜を通過可能なa成分及びb成分を含む試料溶液の流路1、透析液の流路2、前記流路1と流路2とを隔てる前記透析膜、並びに前記試料溶液に付加する圧力及び透析液に付加する圧力を制御する圧力制御機構を備えた透析装置であって、
    前記圧力制御機構は、透析液の前記透析膜内における移動方向を、a成分及びb成分の移動方向とは逆方向とし、かつ、透析液の移動速度を、a成分の移動速度よりも小さく、b成分の移動速度よりも大きい範囲の速度に調整することにより、b成分よりも低分子量のa成分を透析する、前記透析装置
  8. 前記流量制御機構は、前記試料溶液の供給流量(A)と排出流量(B)との比(A/B)が0.7以上1.0未満の範囲となるように前記試料溶液の供給流量及び排出流量を独立して制御する、又は前記透析液の供給流量及び排出流量を独立して制御するものである請求項に記載の装置。
  9. 前記圧力制御機構は、前記試料溶液の供給流量(A)と排出流量(B)との比(A/B)が0.7以上1.0未満の範囲となるように圧力を制御するものである請求項に記載の装置。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載の方法を使用して、又は請求項のいずれか1項に記載の装置を用いて、試料溶液中に含まれる低分子量のa成分を透析除去し、得られる透析処理後の試料溶液を回収することを特徴とする、低分子量のa成分が除去された試料溶液の製造方法。
  11. 前記試料溶液が調味料又はアルコール飲料である請求項10に記載の方法。
  12. 調味料が醤油である請求項11に記載の方法。
  13. 透析膜を通過可能なa成分及びb成分を含む試料溶液から、前記b成分よりも低分子量の前記a成分を透析除去する透析装置であって、
    前記透析膜と、
    前記試料溶液及び/又は透析液の制御機構とを備え、
    前記制御機構は、
    (i)前記試料溶液の流量を制御して、前記透析膜内における前記透析液の移動方向を前記a成分及びb成分の移動方向とは逆方向とし、かつ、前記透析膜内における前記透析液の移動速度を前記a成分の移動速度よりも小さく前記b成分の移動速度よりも大きい範囲の速度に調整する試料流量制御機構、
    (ii)前記透析液の流量を制御して、前記透析膜内における前記透析液の移動方向を前記a成分及びb成分の移動方向とは逆方向とし、かつ、前記透析膜内における前記透析液の移動速度を前記a成分の移動速度よりも小さく前記b成分の移動速度よりも大きい範囲の速度に調整する透析液流量制御機構、並びに
    (iii)前記試料溶液及び/又は前記透析液に付加する圧力を制御して、前記透析膜内における前記透析液の移動方向を前記a成分及びb成分の移動方向とは逆方向とし、かつ、前記透析膜内における前記透析液の移動速度を前記a成分の移動速度よりも小さく前記b成分の移動速度よりも大きい範囲の速度に調整する圧力制御機構
    のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする前記透析装置。
  14. 前記試料流量制御機構は、前記試料溶液の供給流量を制御する試料供給ポンプと、前記透析膜からの排出流量を制御する試料処理液排出ポンプとを含み、
    前記試料流量制御機構は、前記透析液の供給流量を制御する透析液供給ポンプと、前記透析液の排出流量を制御する透析液排出ポンプを含む、請求項13に記載の透析装置。
  15. 前記圧力制御機構は、前記透析膜から前記試料溶液を排出する流路に設けられた差圧弁、及び/又は前記透析膜に前記透析液を供給する流路に設けられた差圧弁を含む、請求項13又は14に記載の透析装置。
  16. 前記試料溶液の供給流量(A)と排出流量(B)との比(A/B)が0.7以上1.0未満の範囲にある、請求項1315のいずれか1項に記載の透析装置。
  17. 透析膜を通過可能なa成分及びb成分を含む試料溶液から、b成分よりも低分子量のa成分を透析除去する透析装置であって、
    前記透析膜と、
    前記試料溶液及び/又は透析液の制御機構とを備え、
    前記制御機構は、
    (i)前記試料溶液の流量を制御して、前記透析膜内における前記透析液の移動方向を前記a成分及びb成分の移動方向とは逆方向とし、かつ、前記透析膜内における前記透析液の移動速度を前記a成分の移動速度よりも小さい範囲の速度に調整する試料流量制御機構、
    (ii)前記透析液の流量を制御して、前記透析膜内における前記透析液の移動方向を前記a成分及びb成分の移動方向とは逆方向とし、かつ、前記透析膜内における前記透析液の移動速度を前記a成分の移動速度よりも小さい範囲の速度に調整する透析液流量制御機構、並びに
    (iii)前記試料溶液及び/又は前記透析液に付加する圧力を制御して、前記透析膜内における前記透析液の移動方向を前記a成分及びb成分の移動方向とは逆方向とし、かつ、前記透析膜内における前記透析液の移動速度を前記a成分の移動速度よりも小さい範囲の速度に調整する圧力制御機構
    のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする前記透析装置。
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