JP6142342B2 - アキノノゲシ抽出物の新規な用途 - Google Patents
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Description
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のテストステロン5α−レダクターゼ阻害剤は、アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とし、5α−レダクターゼ2型の発現を阻害することができる。
本発明のCSF2(コロニー刺激因子2)発現促進剤は、アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とする。上述したように、アキノノゲシ抽出物は、コロニー刺激因子2(CSF2)の発現を促進できるため、CSF2(コロニー刺激因子2)発現促進剤への使用に好適である。なお、本発明のCSF2促進剤に用いるアキノノゲシ抽出物は、本発明のテストステロン5α−レダクターゼ阻害剤において説明したものと同一である。
本発明のCSF2発現促進剤において、上記アキノノゲシ抽出物の含有量は、CSF2の発現を促進する作用を発揮させる観点から、10〜50μg/mlであることが好ましい。
本発明のVEGF発現促進剤は、アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とする。本発明者は、アキノノゲシ抽出物がVEGF発現促進作用を示すことを見出した。よって、アキノノゲシ抽出物はVEGF発現促進剤への使用に好適である。なお、本発明のVEGF発現促進剤に用いるアキノノゲシ抽出物は、本発明のテストステロン5α−レダクターゼ阻害剤において説明したものと同一である。
なお、VEGFとは、血管内皮細胞増殖因子(Vascular endothelial growth factor)である。
本発明のVEGF発現促進剤において、上記アキノノゲシ抽出物の含有量は、VEGFの発現を促進する作用を発揮させる観点から、10〜50μg/mlであることが好ましい。
本発明のASIP発現阻害剤は、アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とする。本発明者は、アキノノゲシ抽出物がASIP発現阻害作用を示すことを見出した。よって、アキノノゲシ抽出物はASIP発現阻害剤への使用に好適である。なお、本発明のASIP発現阻害剤に用いるアキノノゲシ抽出物は、本発明のテストステロン5α−レダクターゼ阻害剤において説明したものと同一である。
なお、ASIPとは、アグチシグナルタンパク質(agouti signaling protein)であり、毛包で作られるパラクリンシグナル分子である。毛包のメラノサイトでユーメラニンと拮抗してフェオメラニンを合成する。
本発明のASIP発現阻害剤において、上記アキノノゲシ抽出物の含有量は、ASIPの発現を阻害する作用を発揮させる観点から、0.4〜50μg/mlであることが好ましい。
本発明の育毛促進剤は、アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とする。本発明者は、アキノノゲシ抽出物が育毛促進作用を示すことを見出した。よって、アキノノゲシ抽出物は育毛促進剤への使用に好適である。なお、本発明の育毛促進剤に用いるアキノノゲシ抽出物は、本発明のテストステロン5α−レダクターゼ阻害剤において説明したものと同一である。
本発明の育毛促進剤において、上記アキノノゲシ抽出物の含有量は、育毛促進作用を向上させる観点から、0.0001質量%以上含有していれば良く、0.0001〜10質量%であることが好ましく、0.0005〜8質量%であることがより好ましく、0.0005〜5質量%であることが特に好ましい。
本発明の毛髪につやを付与する組成物、毛髪にはりを付与する組成物、毛髪にコシを付与する組成物、毛髪をしなやかにする組成物及び毛髪の水分を保持する組成物は、アキノノゲシ抽出物を含有することを特徴とし、好ましくはアキノノゲシ抽出物を有効成分とする。本発明者は、アキノノゲシ抽出物を含有することによって、毛髪につや・はり・コシを付与し、毛髪をしなやかにし、毛髪の水分を保持することができることを見出した。よって、アキノノゲシ抽出物はこれらの効果を目的とする組成物への使用に好適である。なお、これら組成物に用いるアキノノゲシ抽出物は、本発明のテストステロン5α−レダクターゼ阻害剤において説明したものと同一である。
これら組成物中におけるアキノノゲシ抽出物の含有量は、0.0001質量%以上含有していれば良く、0.0001〜10質量%であることが好ましく、0.0005〜8質量%であることがより好ましく、0.0005〜5質量%であることが特に好ましい。
1.材料、サンプル調製及び試験方法
1−1.被験物質
株式会社坂本バイオ社製アキノノゲシ抽出物を用いた。なお、該アキノノゲシ抽出物は、中国産アキノノゲシ全草の乾燥原体12.6kgを10倍の質量の99%エタノールを用いて常温で24時間抽出し、その後、ろ過及び濃縮を行うことにより調製されたものである(収量:0.22kg)。
東洋紡株式会社より入手したCELL APPLICATION社製ヒト毛乳頭細胞(HFDPC,カタログNo.602−05a,ロットNo.1710,白人40歳女性由来)を使用した。
(i)毛乳頭細胞増殖培地(以下、PCGMと略す)(東洋紡社製)
(ii)リン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと略す)(Sigma社製)
(iii)トリプシンEDTA(Sigma社製)
(iv)コラーゲンコート溶液(東洋紡社製)
(v)RNeasy Mini Kit(Qiagen社製)
(vi)37℃CO2インキュベーター(ESPEC社製)
(vii)プレートリーダー(VARIOSKAN,Thermo electron社製)
(viii)75cm2培養フラスコ(以下、T75フラスコと称す)(IWAKI社製)
(ix)6ウェル培養プレート(IWAKI社製)
(x)96ウェル培養プレート(IWAKI社製)
(xi)顕微鏡(OLYMPUS社製,IX−70)
PCGMにアキノノゲシ抽出物(被験物質)を10mg/mLとなるように懸濁させ、その後、0.2μmフィルターで処理し、PCGMで段階希釈して試験に供した。
1−5−1.細胞の準備
(i)T75フラスコ、6ウェル培養プレート、96ウェル培養プレートにコラーゲンコート溶液をそれぞれ1ml、0.5ml、50μl入れ、2時間静置させた。
(ii)コラーゲンコート溶液を除去し、PBSで2回洗浄し、上記フラスコ及びプレートを密封した後、使用するまで冷蔵庫で保管した。
(iii)コラーゲンコートしたT75フラスコに、HFDPC(P5)を播種し、これを37℃の5%CO2インキュベーター内で4日間培養した。
(iv)上記T75フラスコをPBSで洗浄した後、HFDPCをトリプシン処理により浮遊させ、1.2×105cells/mLの細胞懸濁液を作製し、次いで、コラーゲンコートした6ウェル培養プレート、96ウェル培養プレートに、該細胞懸濁液をそれぞれ1ml、0.1ml入れ、37℃の5%CO2インキュベーター内で一晩培養した。
(i)上記「1−5−1.細胞の準備」に従い、96ウェル培養プレートで培養されたHFDPCの培地を除去し、その後、PBSで2回洗浄した。
(ii)上記「1−4.サンプル調製」に従い調製されたアキノノゲシ抽出物の濃度が300、100、33、11、3.7μg/mlであるサンプルを96ウェル培養プレート中のHFDPCに添加した。
(iii)24時間の培養後、96ウェル培養プレートをPBSで2回洗浄した。
(iv)無血清ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(シグマアルドリッチ社製)で30倍の体積に希釈したCell Counting Kit−8溶液(同仁化学研究所社製)を96ウェル培養プレートに100μl/ウェル添加した。
(v)37℃の5%CO2インキュベーター内に静置させ、適度に発色させた後、450nmにおける吸光度を測定した。
(vi)得られたデータを基に、下記式に従い、コントロールに対する割合(%コントロール)を算出した。
%コントロール=[(データサンプル−データブランク)/(データコントロール−データブランク)]×100
(i)上記「1−5−1.細胞の準備」に従い、6ウェル培養プレートで培養された毛乳頭細胞をPBSで2回洗浄し、上記「1−4.サンプル調製」に従い調製されたアキノノゲシ抽出物の濃度が3.7μg/mlであるサンプルを6ウェル培養プレートに添加し、24時間培養した。
(ii)培養後、6ウェル培養プレートを氷冷したPBSで2回洗浄し、その後、RNeasy Mini Kitに付属の細胞溶解バッファーを加えた。次いで、RNeasy Mini Kitの説明書に従い、RNAの抽出を行った。
(iii)抽出後、速やかに液体窒素に浸けて凍結させ、ディープフリーザーにて保管した。
ミルテニーバイオテク社でマイクロアレイ解析を行った。
マイクロアレイ解析の結果から、毛乳頭細胞で発現している遺伝子を抽出し、その遺伝子の発現量の変化を検討した。
2−1.細胞賦活作用
マイクロアレイ解析を行う際のアキノノゲシ抽出物の濃度を決定するため、様々な濃度のアキノノゲシ抽出物による毛乳頭細胞の賦活活性を調べた。各濃度のアキノノゲシ抽出物を含有するサンプルを添加した際の毛乳頭細胞の賦活活性を表1に示す。細胞賦活活性の最も大きい濃度が3.7μg/mlであったため、マイクロアレイ解析での濃度を3.7μg/mlにした。
マイクロアレイの結果より、アキノノゲシ抽出物により処理された毛乳頭細胞内における遺伝子の発現量の変化を解析したところ、アキノノゲシ抽出物により処理された毛乳頭細胞では、SRD5A2の倍率変化(フォールド・チェンジ)が−3.48を示しており、SRD5A2の発現量を低減することが分かった。また、CSF2の倍率変化は、2.74を示しており、アキノノゲシ抽出物により処理された毛乳頭細胞では、CSF2の発現量が増加することが分かった。
1.Stenn K. S. and Paus R, Control of hair follicle cycling, 2001, Physiol. Rev.,81, 449-494.(毛周期の総説に関する文献)
2.板見智, 男性型脱毛の発症メカニズムと治療戦略, 2004, 炎症・再生, 24, 118-120(男性型脱毛症の総説に関する文献)
3.Costin G. E. & Hearing V.J., Human skin pigmentation melanocytes modulate skin color in response to stress. 2007, FASEB J., 21, 976-994.(メラニン合成の総説に関する文献)
1.被験物質
株式会社坂本バイオ社製アキノノゲシ抽出物を用いた。なお、該アキノノゲシ抽出物は、中国産アキノノゲシ全草の乾燥原体12.6kgを10倍の質量の99%エタノールを用いて常温で24時間抽出し、その後、ろ過及び濃縮を行うことにより調製されたものである(収量:0.22kg)。
1)実験動物
(1)供与動物
日本エスエルシー株式会社において生産された雄性マウス(C57BL/6J系)を用いた。
(2)入手時週齢及び動物数
7週齢の雄性C57BL/6J系マウスを25匹入荷した。
(3)試験開始時週齢
8週齢
(1)飼育方法
(i)飼育環境
馴化期間
飼育期間:6日間
照明時間:12時間(8:00〜20:00)
ケージ:ポリカーボネイト製平底ケージ(W182×D260×H128mm)
床敷:木材チップ
収容:1ケージに2〜3匹収容した。
試験期間
飼育期間:30日間
照明時間:12時間(8:00〜20:00)
ケージ:ポリカーボネイト製平底ケージ(W182×D260×H128mm)
床敷:木材チップ
収容:1ケージに2〜3匹収容した。
(ii)動物の群分け
馴化期間終了後、健常な動物を体重がほぼ均一となるように各群に分け、試験に供した。
(2)飼料
馴化期間開始から試験期間終了まで、MF固形飼料(オリエンタル酵母工業株式会社)を自由に摂取させた。
(3)飲水
飲水は水道水を用いた。馴化期間開始から試験期間終了まで自由に摂取させた。
馴化期間終了後の雄性C57BL/6J系マウスを体重値に基づいて群分けした。マウス背面全体の毛をバリカン及びシェイバーを用いて除毛し、その翌日から除毛した背部に被験物質を29日間塗布した。
(1)投与経路
経皮(塗布)
(2)群構成
(1)被験物質懸濁液の調製方法
70体積%エタノールを溶媒として用いた。始めに純エタノールに溶解させた後に蒸留水を加え、よく混合し、表2に示される被験物質懸濁液を調製した。
(2)被験物質懸濁液の投与方法
マウス背面に除毛処理を施し、皮膚を露出させた部位にマイクロピペットを用いて被験物質懸濁液を200μL滴下した。ミクロスパーテルを用いて塗布した。
ジエチルエーテル麻酔下でバリカン及びシェイバーを用いて背部全体を除毛した。
(1)体重
動物用電子天秤にて、動物入荷日及び試験開始日(群分け時)に体重を測定した。
(2)育毛スコア評価(目視・写真判定)
試験開始日(0日目)、試験開始後8日目、15日目、22日目及び29日目に、被験物質懸濁液塗布前のマウス背部全体を写真撮影した。写真を用いてマウス背部を観察し、育毛状態(生えている面積)を目視により確認し、下表に基づいて6段階で評価した。評価は客観性を持たせるために3人のスコアの平均を最終評価とした。
得られた数値は、各群で平均値を算出した。また、コントロール群と他の群との2群間について、Mann−WhitnyのU検定(Wilcoxonの順位和検定)を行った。有意水準は、危険率5%及び1%とした。
育毛スコア評価の結果を図1に示す。また、各群に属するマウスに関して、試験0週目(0日目)及び試験4週目(29日目)の背部の写真を図2〜7に示す。
アキノノゲシ抽出物3%群においては、試験2週目(15日目)、試験3週目(22日目)及び試験4週目(29日目)の育毛スコアが、コントロール群と比較して有意に高い値を示した。
結果から、アキノノゲシ抽出物による育毛促進作用が示唆された。
1.アキノノゲシ抽出物
上述した「毛乳頭細胞の賦活活性及び毛乳頭細胞内における遺伝子発現量の変化」の「1−1.被験物質」に記載されるアキノノゲシ抽出物を用いた。
上述した「毛乳頭細胞の賦活活性及び毛乳頭細胞内における遺伝子発現量の変化」の「1−2.細胞」に記載されるヒト毛乳頭細胞を用いた。
上述した「毛乳頭細胞の賦活活性及び毛乳頭細胞内における遺伝子発現量の変化」の「1−3.試薬及び器具等」に記載される試薬及び器具等を用いた。
アキノノゲシ抽出物を10mg/mLとなるようにジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、これをPCGMで200倍に希釈し、DMSO濃度0.5体積%及びアキノノゲシ抽出物濃度50μg/mLの被験物質を調製した。同様に、アキノノゲシ抽出物の濃度が10、2、0.4μg/mLである被験物質(DMSO濃度0.5体積%)も調製した。
5−1.細胞培養
(i)75cm2フラスコに7.5mLのコラーゲンコート溶液を入れ、フラスコ培養面全体に該溶液が広がるようにフラスコを静かに揺らした。
(ii)室温で約1時間静置後、コラーゲンコート溶液を吸引除去し、7.5mLのPBSで2回洗浄を行った。
(iii)37℃、5%CO2インキュベーター内で、コラーゲンコートした75cm2フラスコを用いて、HFDPCをPCGMにより培養した。
(iv)トリプシン処理により浮遊させた細胞を、フラスコと同様にコラーゲンコート(コラーゲンコート溶液1mL/well、PBS洗浄1mL/well)した6ウェルプレートの各ウェルに1.0×105cells/wellとなるように播種した。
(v)CO2インキュベーター内で24時間前培養した。
(vi)各ウェルより培地を除去した後、アキノノゲシ抽出物の濃度が0.4、2、10、50μg/mLである被験物質を2mL添加し、CO2インキュベーター内で24時間培養した(N=3)。なお、コントロールには、アキノノゲシ抽出物を含有しない0.5体積%DMSO含有PCGMを添加した。
培養後、培養上清を除去し、RNeasy mini kit(QIAGEN社製)を用いて、毛乳頭細胞からRNAを回収し、次いで、QuantiTect Reverse Transcription kit(QIAGEN社製)を用いて、回収したRNAからcDNAを合成する。得られたcDNAを用いて、各遺伝子のmRNA発現量を測定する。
結果を図8〜11に示す。図8は毛乳頭細胞におけるCSF2の相対的発現量を示し、図9は毛乳頭細胞におけるSRD5A2の相対的発現量を示し、図10は毛乳頭細胞におけるASIPの相対的発現量を示し、図11は毛乳頭細胞におけるVEGFの相対的発現量を示す。なお、図8〜11において、縦軸は、各遺伝子の相対的発現量を示し、横軸の濃度は、培地中に含まれるアキノノゲシ抽出物の濃度(単位:μg/mL)を示す。
1.アキノノゲシ抽出物
上述した「毛乳頭細胞の賦活活性及び毛乳頭細胞内における遺伝子発現量の変化」の「1−1.被験物質」に記載されるアキノノゲシ抽出物を用いた。
表4に記載の処方に従い、アキノノゲシ抽出物を含有する組成物を調製した。具体的には、界面活性剤を溶解した水相に、エタノールとセバシン酸ジエチルにアキノノゲシエキスを溶解した油相を加え、撹拌・乳化した後、増粘剤と中和剤を添加した。
Claims (8)
- アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とするテストステロン5α−レダクターゼ阻害剤。
- アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とする育毛促進剤。
- アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とする毛髪につやを付与するための組成物。
- アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とする毛髪にはりを付与するための組成物。
- アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とする毛髪にコシを付与するための組成物。
- アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とする毛髪をしなやかにするための組成物。
- アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とする毛髪の水分を保持するための組成物。
- アキノノゲシ抽出物を有効成分とすることを特徴とする毛髪を保湿するための組成物。
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