JP6131665B2 - 弁開閉時期制御装置 - Google Patents
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内燃機関の始動時に、例えば、駆動側回転体と従動側回転体との相対位相が始動に適した中間ロック位相に固定されていないときは、駆動側回転体に対して従動側回転体をばた付き易くして迅速に中間ロック位相に固定する必要がある。
また、内燃機関の始動後における相対位相の変更は、進角室あるいは遅角室のいずれか一方に作動流体を供給してその容積を増大させながら、同時に、他方の進角室あるいは遅角室の容積を減少させることにより行う。
このため、容積を減少させるべき他方の進角室あるいは遅角室に作動流体が残留していると、その残留している作動流体を排出させながら、進角室あるいは遅角室のいずれか一方に作動流体を供給する必要がある。
駆動側回転体と従動側回転体との界面には、通常、進角室あるいは遅角室に残留している作動流体の外部への漏れ出しを許容し得る程度の隙間が存在しているので、この隙間を通して残留している作動流体を排出させながら、進角室あるいは遅角室のいずれか一方に作動流体を供給することは可能である。
しかしながら、そのような隙間を通した作動流体の排出速度が遅い場合は、進角室あるいは遅角室の容積の迅速な増大が妨げられ、進角室あるいは遅角室のいずれか一方への作動流体の供給速度が低下するので、相対位相を迅速に変更することができない。
この空気流入機構は、駆動側回転体の外部空間と進角室あるいは遅角室とを連通する空気流入路を前側壁部又は後側壁部に形成してあり、この空気流入路を開閉する弁体と、弁体を開き側に付勢するバネとを備えている。
弁体は、内燃機関の停止中にはバネの付勢力で空気流入路を開く側に移動して、作動流体の排出に係る進角室あるいは遅角室への空気の流入を許容し、内燃機関の始動により駆動側回転体が回転すると、バネの付勢力に抗する遠心力で空気流入路を閉じる側に移動して、空気の流入を阻止する。
このため、空気流入機構の構造が複雑で製造コストの低減を図り難い問題がある。
また、前側壁部又は後側壁部に形成した空気流入路に弁体や付勢バネを組み付けてあるので、前側壁部又は後側壁部の厚さが厚くなり、装置の小型化を図り難い問題もある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、空気流入機構を備えた製造コストの低減も装置の小型化も図り易い弁開閉時期制御装置を提供することを目的とする。
前記空気流入機構は、前記従動側回転体に設けた環状溝に取付けられると共に、前記環状溝に対してリング径方向から対向する駆動側回転体の内周面に対して前記回転軸芯の長手方向に沿って摺動可能なシールリングを備えており、前記シールリングの摺動に伴って開閉される空気流入路を、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間もしくは前記シールリングの少なくとも何れか一方に形成してある点にある。
すなわち、内燃機関の停止中に進角室及び遅角室から作動流体を排出する際に、これらの進角室及び遅角室の内部圧力が負圧になろうとする。このとき空気流入機構を介して進角室及び遅角室の少なくとも一方に空気が進入して、少なくとも一方の室の内部圧力が負圧になるのを阻止するため、作動流体が迅速に排出される。
つまり、進角室及び遅角室から作動流体を排出する際の、両室の内部圧力が負圧になろうとする現象を利用して、作動流体の排出に係る進角室あるいは遅角室への空気の流入を積極的に許容する。
したがって、本構成の弁開閉時期制御装置であれば、空気流入機構の構造を簡略化できるので、製造コストの低減を図り易く、装置の小型化も図り易い。
一方、内燃機関及び弁開閉時期制御装置の停止により、進角室及び遅角室の作動流体の流出が始まって両室の内部圧力が負圧になる場合には、シールリングは前記一方の壁部から離間するように移動して空気流入路が外部空間に連通するように開き操作される。
このように、比較的簡単な構成でありながら、シール効果及び空気の流入効果を確実に得ることができる。
一方、シールリングに溝部や孔部等を形成して空気流入路とすることも可能であるが、この場合は、シール機能と空気の取り入れ機能とを比較的細かな部材に併せて加工しなければならず、加工の自由度が少ない。
よって、本構成のごとく従動側回転体の側に加工を施すことで空気流入機構を合理的に構成することができる。
〔第1実施形態〕
図1〜図8は、内燃機関Bの内部に装備される本発明による弁開閉時期制御装置Aを示す。
弁開閉時期制御装置Aは、図1〜図3に示すように、内燃機関としての自動車用エンジンBのクランクシャフトB1と同期回転する駆動側回転体としての焼結金属やアルミ合金等の金属製のハウジング1と、ハウジング1に内包され、ハウジング1と同じ回転軸芯上で弁開閉用のカムシャフトB2と一体回転する従動側回転体としての焼結金属製のインナロータ2とを備えている。
リアプレート1cはタイミングスプロケット1bを一体に備えている。
カムシャフトB2は、エンジンBの吸気弁の開閉を制御するカム(不図示)の回転軸であり、エンジンBのシリンダヘッド(不図示)に回転自在に組み付けられている。
ハウジング1の回転に伴い、インナロータ2がカムシャフトB2と共に回転方向Sに従動回転し、カムシャフトB2に設けられたカムがエンジンBの吸気弁を開閉させる。
流体圧室3は、アウタロータ1dの内周側に回転方向Sで互いに離間して径方向内側に突出するように形成した四つの突出部4により区画されている。
進角流路6a及び遅角流路6bを介して、進角室3aと遅角室3bに対する作動流体
(作動油)の供給・排出を行う流体給排機構7を設けてある。
(進角室3aの容積が大きくなる方向)に移動するように付勢されている。
中間ロック位相は、エンジンBを始動するのに最適な所定の位相、若しくはエンジンBの始動が可能な範囲内で排ガスを低減するのに適した位相である。
第1ロック部材9bは、第1収容部9aに径方向内方側に向けて出退可能に収容され、先端部分が第1凹部9cに対して回転径方向から入り込んで係合するロック状態と、第1凹部9cに対して回転径方向から引退して係合を解除するロック解除状態とに切換えられる。
第2ロック部材10bは、第2収容部10aに径方向内方側に向けて出退可能に収容され、先端部分が第2凹部10cに対して回転径方向から入り込んで係合するロック状態と、第2凹部10cに対して回転径方向から引退して係合を解除するロック解除状態とに切換えられる。
第1凹部9c及び第2凹部10cの夫々の奥側底面には、インナロータ2に形成したロック解除用流路12が開口している。
ロック解除用流路12は、第1ロック部9及び第2ロック部10を対応する第1凹部9c及び第2凹部10cから引退させる作動流体を、第1凹部9c及び第2凹部10cに供給する。
遅角制御では、ハウジング1に対するインナロータ2の回転位相が遅角方向S2に変化するように、作動流体の遅角室3bへの供給及び進角室3aからオイルパン15への排出を行う。
したがって、ECU21が、進角室3aあるいは遅角室3bに作動流体を給排して、ハウジング1とインナロータ2との相対位相を制御する位相制御部を構成している。
各遅角室3bへの空気の流入を許容する第2空気流入機構C2は、リアプレート1cとインナロータ2との間に設けてある。
すなわち、第1空気流入路24は、第1環状溝22を形成する壁部のうちの、進角室3a及び遅角室3bの内部圧力が負圧になった際に第1シールリング23が近接する回転軸芯方向内側の壁部22aに設けてある。
このため、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相が最遅角位相にあるときでも、進角室3aと第1環状溝22とを連通させることができる。
第1空気流入路24は、図5に示すように、第1シールリング23が回転軸芯方向内側の壁部22aに当接するまで引き寄せられても、第1環状溝22の底面近くに連通している。
すなわち、第2空気流入路27は、第2環状溝25を形成する壁部のうちの、進角室3a及び遅角室3bの内部圧力が負圧になった際に第2シールリング26が近接する回転軸芯方向内側の壁部25aに設けてある。
このため、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相が最進角位相にあるときでも、遅角室3bと第2環状溝25とを連通させることができる。
第2空気流入路27は、図5に示すように、第2シールリング26が回転軸芯方向内側の壁部25aに当接するまで引き寄せられても、第2環状溝25の底面近くに連通している。
なお、第1シールリング23,第2シールリング26として、周方向の一カ所に切り込みを設けてある装着が容易なCリング状に形成したものを例示したが、一連に連続するリング状に形成したものであってもよい。
図9〜図11は、本発明の別実施形態を示す。
本実施形態では、図9,図10に示すように、第1空気流入路24と第2空気流入路27の夫々を形成する溝部を、第1環状溝22及び第2環状溝25の底面に到達しない短い長さでインナロータ2に形成してある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
図12,図13は、本発明の別実施形態を示す。
本実施形態では、第2実施形態で示した第1空気流入路24を形成する溝部を、フロント内周面16に開口するようにフロントプレート1aに形成し、第2実施形態で示した第2空気流入路27を形成する溝部を、リア内周面17に開口するようにリアプレート1cに形成してある。
また、ハウジング1とインナロータ2との相対回転位相が最進角位相にあるときでも、遅角室3bと第2環状溝25とを連通させることができる。
その他の構成は第2実施形態と同様である。
図14,図15は、本発明の別実施形態を示す。
本実施形態では、ハウジング1とインナロータ2との界面に従来から存在する隙間31を第1空気流入路24及び第2空気流入路27として利用する。
このため、第1軸部13の側の第1空気流入機構C1のみを設けてある。
その他の構成は第2実施形態と同様である。
図16〜図18は、第2〜第4実施形態の弁開閉時期制御装置に使用する第1シールリング23及び第2シールリング26の変形例を示す。
本実施形態では、図18に示すように、第1シールリング23及び第2シールリング26が、回転軸芯方向内側の端面における内周側に沿って一連の円環状凸部32を備え、円環状凸部32よりも外周側における回転軸芯方向内側の端面部分33に開口する複数の貫通孔34を形成してある。
本実施形態によれば、第1シールリング23又は第2シールリング26の形状を、凹凸部分が少ない製作が容易な形状に形成することができる。
1.本発明による弁開閉時期制御装置は、排気弁の開閉時期を制御するものであってもよい。
2.本発明による弁開閉時期制御装置は、進角室及び遅角室から作動流体を排出する際に、当該排出に係る進角室又は遅角室のいずれか一方への空気の流入のみを許容する単一の空気流入機構を備えていてもよい。
3.本発明による弁開閉時期制御装置は、進角室及び遅角室の内部圧力が負圧になるに伴って、シールリングが環状溝を形成する壁部のうちの回転軸芯方向内側の壁部の側に引き寄せられも、シールリングがその壁部に当接しないように、シールリングの壁部の側への移動範囲を規制するストッパーを設けてある空気流入機構を備えていてもよい。
4.本発明による弁開閉時期制御装置は、自動車その他の内燃機関に利用可能である。
1a 前側壁部
1c 後側壁部
1d 外周壁部
2 従動側回転体
3a 進角室
3b 遅角室
16,17 駆動側回転体の内周面
21 位相制御部
22,25 環状溝
22a,25a 壁部
23,26 シールリング
24,27 空気流入路
B 内燃機関
B1 クランクシャフト
B2 カムシャフト
C 空気流入機構
X 回転軸芯
Claims (2)
- 内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、
前記駆動側回転体を構成する外周壁部及び回転軸芯に沿った両端に設けられた前側壁部、後側壁部によって内包され、前記駆動側回転体の内側表面との間に進角室及び遅角室となる空間を形成しつつ、前記駆動側回転体と同じ回転軸芯上で弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、
前記進角室あるいは前記遅角室に作動流体を給排して、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との相対位相を制御する位相制御部とを備えると共に、
前記進角室及び前記遅角室から作動流体を排出する際に、当該排出に係る進角室及び遅角室の少なくとも一方への空気の流入を許容するよう、前記前側壁部及び前記後側壁部の少なくとも何れか一方と前記従動側回転体との間に空気流入機構を設け、
前記空気流入機構は、前記従動側回転体に設けた環状溝に取付けられると共に、前記環状溝に対してリング径方向から対向する駆動側回転体の内周面に対して前記回転軸芯の長手方向に沿って摺動可能なシールリングを備えており、
前記シールリングの摺動に伴って開閉される空気流入路を、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間もしくは前記シールリングの少なくとも何れか一方に形成してある弁開閉時期制御装置。 - 前記空気流入路が、前記従動側回転体に設けた環状溝を形成する壁部であって、前記進角室及び前記遅角室の内部圧力が負圧になった際に前記シールリングが近接する側の壁部に設けたリング径方向に沿う溝部で形成してある請求項1に記載の弁開閉時期制御装置。
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