以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態による放射線画像解析装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図である。図1に示すように、本実施形態による放射線画像撮影システムは、撮影装置10と、システムを制御する制御装置20と、画像解析装置30(放射線画像解析装置)とを備える。
撮影装置10は被検体KにX線を照射する放射線源12と、被検体Kを透過したX線を検出して被検体Kの放射線画像を取得する放射線検出器14とを備える。なお、本実施形態においては、被検体Kと放射線検出器14との間には、被検体Kを透過したX線のうち、被検体Kにより散乱した散乱線を除去するための散乱線除去グリッド(グリッド)は配置されない。
制御装置20は、設定された撮影条件に従って放射線源12を駆動制御する線源駆動制御部22と、放射線検出器14を制御し、被写体の放射線画像(例えば、被検体画像Ikや参照画像Ir)を取得して記憶部32に記憶する検出器制御部24とを備える。
画像解析装置30は、画像解析装置30に対する操作者の各種入力を受け付ける入力部38、表示部39、中央処理装置(CPU)、半導体メモリ、通信インターフェースおよびハードディスクやSSD等の記憶部32を備えたコンピュータであり、画像解析装置30には、本実施形態にかかる画像解析プログラムがインストールされている。そして、この画像解析プログラムの実行により、画像解析装置30の中央処理装置およびメモリが協働して、線源駆動制御部22と検出器制御部24を制御する撮影制御部31と、画像取得部33と、撮影条件取得部34と、補正分布取得部35と、体厚分布取得部36と、表示制御部37として機能する。なお、入力部38は、キーボード、マウス、タッチパネル等から構成される。また、表示部39は、CRT、液晶ディスプレイ等からなり、撮影装置10により取得された放射線画像の表示や各種その他の所望の処理に必要な情報の表示を行う。
記憶部32には、検出器制御部24および線源駆動制御部22を制御する撮影制御部31によって取得した被検体画像Ikと参照画像Irとそれぞれの撮影条件が記憶される。また、記憶部32には、複数の撮影条件ごとに濃度値(画素値)と体厚とを対応付けた対応付けテーブルLUTが予め作成されて記憶されている。また、記憶部32には、初期体厚分布T0 k(x,y)を有する被検体Kの仮想モデルMと初期体厚分布T0 rを有する撮影環境の仮想モデルMrが記憶される。さらに、記憶部32には、被検体画像用の仮想モデルMkに含まれる構造物(ここでは肺野、骨、臓器等の解剖学的構造物)と構造物の配置と、構造物の放射線に対する特性等を示す特性情報が、比較用被写体の胸腹部の肺野、骨等の解剖学的構造物の配置および組成に基づいて予め設定されて記憶される。なお、撮影環境の仮想モデルMrは、参照画像Irの撮影環境を表す仮想的な被検体である。また、記憶部32には、各処理で必要とされる各種パラメータ、生成された画像(推定一次線画像、推定散乱線画像など)が適宜記憶されるものとする。なお、本明細書における体厚は、照射された放射線の経路上における空気領域を除いた被写体領域の厚さの総計を意味する。
表示制御部37は、本実施形態による画像解析処理に必要な情報や、撮影制御部31の撮影制御処理に必要な情報などを、適宜表示部39に表示させる。
画像取得部33は、検出器制御部24または記憶部32などから、参照画像Irと被検体画像Ikを取得する。なお、本実施形態に限定されず、本発明は任意の種類の被検体について適用可能である。
被検体画像Ikは、所定の撮影環境において、所定の撮影条件を適用して被検体Kである人体を配置して撮影された放射線画像である。
上記「撮影環境」は、撮影場所に位置し、放射線画像に含まれる散乱線成分に実質的に影響を及ぼす全ての要素(ただし、被検体を除く)とそれらの相対的な配置によって特定される。例えば、撮影台は撮影環境を構成する要素であり、放射線源から放射された放射線が放射線検出器を通過して撮影室の壁や床によって散乱される場合には、放射線検出器を通過した放射線が到達した壁部分または床部分が撮影環境を構成する要素である。図1に示すように、撮影室17は、互いに対向する位置に配置された放射線源12および放射線検出器14と、放射線検出器14の背面を支持する臥位撮影用の撮影台16が配置されている。放射線検出器14は、放射線源12が配置された位置から放射線の照射方向に向かって、ガラス基板14aおよび放射線を光に変換する蛍光体層であるシンチレータ14bと必要な電子部品(不図示)がこの順に設けられている。ガラス基板には不図示の信号出力部およびセンサ部が配設されており、シンチレータから発光された光を、センサ部で電荷に変換して放射線画像を読み取る。この例では、撮影環境は、放射線源12と、放射線検出器14と、散乱線を生じさせる素材であるアクリル樹脂製の天板を備えた撮影台16と、放射線が照射される壁部分17Aとその相対的な配置によって特定される。また、シンチレータ14bと電子部品の間に電子部品を保護するための放射線遮蔽物が配置される場合があり、放射線遮蔽物の有無や材質も散乱線成分に影響を及ぼす要素となる。放射線遮蔽物は、例えば板形状とされ、材質として鉛(Pb)、銅(Cu)、タングステン(W)などが採用される場合が考えられる。
参照画像Irは、被検体画像Ikの撮影環境と同等の撮影環境において、被検体Kを配置しないで撮影された放射線画像である。本実施形態においては、まず、被検体を配置しない状態で、被検体画像Ikを撮影するための所定の撮影条件で放射線撮影を行って参照画像Irを取得し、その後、撮影室17に含まれる要素の有無や配置を変更しないで、撮影台16上に被検体を臥位に配置した状態で参照画像と同じ撮影条件で放射線撮影を行って被検体画像Ikを取得したものとする。
なお、参照画像Irと被検体画像Ikは、被検体が配置されたか否かが異なるものの、実質的に同等であるとみなせる撮影環境において撮影された画像を意味する。実質的に同等であるとみなせる撮影環境とは、撮影場所に位置する放射線画像に実質的に影響を及ぼす全ての要素が一致している場合だけでなく、撮影場所に位置する要素のうち放射線画像に実質的に影響を及ぼす要素がほぼ共通しているとみなせる場合も含む。例えば、撮影場所に位置する撮影台の材質とサイズ、放射線検出器を通過した放射線が照射される撮影室の壁部分の材質やサイズ、必要に応じて放射線検出器に備えられる放射線遮蔽物の有無や材質等の放射線検出器で検出される放射線に影響を与える各物体が類似し、各物体の相対的な距離や配置が類似する場合があげられる。
また、参照画像Irと被検体画像Ikは、実質的に同等であるとみなせる撮影条件が適用されて撮影された画像であることが好ましい。実質的に同等であるとみなせる撮影条件とは、全ての撮影条件が一致している場合だけでなく、放射線画像に実質的に影響を及ぼす要因となる撮影条件の要素がほぼ共通しているとみなせる場合も含む。ここでは、撮影線量、管電圧、管電流と照射時間の積および放射線源と放射線検出器の検出面との距離SIDが許容範囲内の差である場合に撮影条件が実質的に同等であるものとして扱う。
撮影条件取得部34は、記憶部32から、被検体画像Ikおよび参照画像Irについて、撮影線量、管電圧、管電流と照射時間の積および放射線源と放射線検出器の検出面との距離を撮影条件として取得する。撮影条件取得部34に取得された撮影条件は、後述の補正分布取得部35による処理、体厚分布取得部36による処理、その他各種所望の画像処理などに適宜利用される。
本実施形態に限定されず、「撮影条件」は、撮影線量、管電圧、管電流と照射時間の積、放射線源と放射線検出器の検出面との距離、線源のターゲットおよびフィルタの材質、撮影に使用される放射線検出器の種類、エアギャップ量(被写体から放射線検出器までの距離)、必要に応じて放射線検出器に備えられる放射線遮蔽物の有無および材質のうち少なくとも1つを含むものであればよい。
体厚分布取得部36は、被検体画像Ikに含まれる散乱線成分に基づいて被検体画像Ikの被検体Kの体厚分布Tkを取得し、後述の補正分布Trに応じて被検体Kの体厚分布Tkにおける各位置の体厚をそれぞれ補正した被検体Kの補正体厚分布Tk’を取得する。
体厚分布取得部36は、補正体厚分布Tkを取得するために、後述の補正分布に応じて体厚分布Tkにおける各位置の体厚をそれぞれ補正した被検体Kの補正体厚分布Tk’を取得可能な任意の方法を適用してよい。本実施形態では、体厚分布取得部36は、参照画像の各画素についての補正分布と、被検体画像の各画素についての体厚分布のいずれかまたは両方を、互いに対応する画素の位置が互いに一致するように適宜拡大縮小して、体厚分布から補正分布を減算することにより補正後の補正体厚分布を取得する。
また、体厚分布取得部36は、被検体画像Ikに含まれる散乱線成分に基づいて、被検体の放射線経路上の体厚が大きくなるほど散乱線成分が大きくなるように、被検体画像Ikの被検体Kの体厚分布Tkを取得可能な任意の方法を採用可能である。なお、本実施形態は、体厚分布取得部36が補正分布取得部35の機能を兼ね備える例であるため、本実施形態に係る体厚分布取得部36の詳細な機能については、補正分布取得部35の説明と合わせて後述する。
ここで、本願発明者らは、特願2013−229941などにも示されるように、被検体画像Ikの散乱線成分に基づいて被検体Kの体厚分布を推定する方法について研究を重ねている。そして、これらの研究過程において、被検体画像Ikは被検体Kから生じる散乱線成分と撮影環境自体から生じる散乱線成分の両方を含むものであることに注目した。さらに、被検体画像Ikの散乱線成分に基づいて被検体Kの体厚分布を推定する際に、被検体Kから生じる散乱線成分に基づいて被検体Kの体厚分布が推定されるべきであるところ、実際は、被検体Kから生じる散乱線成分と撮影環境自体から生じる散乱線成分とを含む散乱線成分に基づいて被検体Kの体厚分布が推定されることにより、撮影環境から生じる散乱線成分によって被検体画像Ikの散乱線成分に基づいて推定した体厚分布Tkに誤差が生じる可能性があるという問題を見出した。
例えば、図1の示す撮影環境においては、放射線源と放射線検出器の間に被検体を臥位で撮影するための撮影台16が配置され、この撮影台16の天板がアクリル樹脂などの散乱線を発生させる素材によって構成(または被覆)された撮影環境であれば、放射線源12から放射された放射線Xが、被検体Kと撮影台16の天板を通過して散乱光を発生させて、この散乱光が放射線検出器14に検出されるため、被検体画像Ikには、被検体Kによって生じた散乱線成分と撮影台16のアクリル樹脂製天板などの散乱線を発生させる素材による散乱線成分とが被検体画像Ikに含まれることになる。また、撮影室17の壁が散乱線を発生させる素材を含んでおり、放射線検出器14が撮影室17の壁の近傍に配置された場合には、被検体Kの放射線撮影の際に撮影室17の壁の放射線の照射される壁部分17Aから生じた散乱線成分が被検体画像Ikに含まれる可能性がある。
本発明者らは、鋭意検討により、被検体画像Ikと同等の撮影環境において被検体Kを配置しないで撮影した参照画像Irの散乱線成分を利用して、その撮影環境自体によって生じる散乱線成分による体厚分布の誤差の分布が算出できることを見出した。
すなわち、参照画像は被検体を配置しないで撮影された放射線画像であるため、参照画像に含まれる散乱線成分は、撮影環境を構成する1つ以上の要素から生じた散乱線成分と考えられる。このため、参照画像Irを、撮影環境を表す仮想的な被検体である仮想被検体が配置された画像とみなし、参照画像Irに含まれる散乱線成分を仮想被検体によって生じた散乱線成分とみなすと、被検体画像の散乱線成分に基づいて被検体の体厚分布を推定する場合と同様に、参照画像Irの散乱線成分に基づいて仮想被検体の体厚分布を推定することができる。すると、被検体Kが配置されていない状態で撮影された参照画像Irには、仮想被検体の厚さは現実には存在しないはずであるから、推定された体厚分布は撮影環境自体から生じる散乱線成分に基づいて生じる体厚の誤差の分布を表すものとなる。このため、参照画像Irの散乱線成分に基づいて、仮想被検体の体厚分布を推定し、この推定された体厚分布を、被検体画像Ikの体厚分布Tkを補正するための体厚補正量の分布である補正分布として取得することによって、撮影環境自体から生じる散乱線成分に基づいて生じる体厚の誤差を補正するための有益な情報を提供することができる。
このために、補正分布取得部35は、取得した参照画像Irに含まれる散乱線成分が、参照画像Irの撮影環境を表す仮想的な被検体である仮想被検体によって生じているとみなして、参照画像Irに含まれる散乱線成分に基づいて参照画像Irの仮想被検体の体厚分布を推定し、推定した仮想被検体の体厚分布を、撮影環境において所望の被検体を配置して撮影された放射線画像である被検体画像Ikの体厚分布の誤差を補正するための体厚補正量の分布である参照画像の補正分布として取得する。
また、「取得した参照画像に含まれる散乱線成分が、参照画像の撮影環境を表す仮想的な被検体である仮想被検体によって生じているとみなして、参照画像に含まれる散乱線成分に基づいて参照画像の仮想被検体の体厚分布を推定し」とは、参照画像中に何らかの被検体(仮想被検体)が配置され、その配置された被検体を放射線が通過することによって散乱線成分が発生しているとみなして、被検体画像においては放射線の経路上における被検体の体厚が大きくなるほど散乱線成分が多くなることに対応させて、参照画像の複数の位置において散乱線成分が多くなるほど仮想被検体の体厚が大きくなるように、散乱線成分に応じた体厚を推定することを意味する。
補正分布取得部35は、被検体画像においては放射線の経路上における被検体の体厚が大きくなるほど散乱線成分が多くなることに対応させて、参照画像の散乱線成分に応じて参照画像の複数の位置において散乱線成分が多くなるほど仮想被検体の体厚が大きくなるように、参照画像に含まれる被写体の体厚分布を算出可能なあらゆる方法を適用可能である。例えば、補正分布取得部35は、体厚分布取得部36と同じ方法によって参照画像から仮想被写体(撮影環境)の体厚分布を算出してもよく、体厚分布取得部36と異なる方法によって、参照画像から仮想被写体(撮影環境)の体厚分布を算出してもよい。
本実施形態においては、体厚分布取得部36が補正分布取得部35の機能を兼ね備え、体厚分布取得部36による体厚分布取得処理と同じ方法によって、補正分布取得部35が参照画像から仮想被写体(撮影環境)の体厚分布を算出して、補正分布として取得する例を説明する。つまり、体厚分布取得部36が体厚分布を取得する処理と補正分布取得部35による補正分布取得処理において、体厚分布取得部36が体厚分布を取得する処理において被検体画像Ikと被検体Kの仮想モデルMkを用いる点が、補正分布取得部35による補正分布取得処理においては、参照画像Irと撮影環境の仮想モデルMr(撮影環境を表す仮想被検体の仮想モデル)を用いる点となること以外は共通処理が実行される。
図2は、本発明の補正分布取得部35および体厚分布取得部36の概略構成を示すブロック図である。第1の実施形態における体厚分布取得部36は、仮想モデル取得部41と、推定画像生成部42と、修正部43と、体厚分布決定部44とを備える。体厚分布取得部36の各要素と各機能は、補正分布取得部35の各要素と各機能と共通するため、体厚分布取得部36と補正分布取得部35の共通部分については体厚分布取得部36と補正分布取得部35のいずれか一方について詳細な説明を省略する場合がある。
仮想モデル取得部41は、体厚分布取得部36が被検体画像Ikの体厚分布を取得する処理を実施する場合には、初期体厚分布T0 kを有する被検体Kの仮想モデルMkを取得する。また、仮想モデル取得部41は、体厚分布取得部36が補正分布取得部35として機能し、撮影環境の補正分布を取得する処理を実施する場合には、初期体厚分布T0 rを有する撮影環境の仮想モデルMrを取得する。
ここで、仮想モデルは、予め定められた初期体厚分布に従った体厚がxy平面上の各位置に対応付けられたデータであればよい。撮影環境の仮想モデルMrは、初期体厚分布T0 k(x,y)に従った体厚がxy平面上の各位置に対応付けられた被検体Kを仮想的に表すデータである。同様に、撮影環境の仮想モデルMrは、初期体厚分布T0 r(x,y)に従った体厚がxy平面上の各位置に対応付けられた撮影環境の仮想被検体を仮想的に表すデータである。なお、被検体画像用の仮想モデルMk、撮影環境の仮想モデルMrの各初期体厚分布は、補正分布取得処理の過程又は体厚分布取得処理の過程において、後述の修正部43により修正されるものであるため、任意の分布とされてよく、双方が異なる分布を有するものであってもよく、双方が類似または同じ分布を有するものであってもよい。また、参照画像Irおよび被検体画像Ikの初期体厚分布は、各仮想モデルMr、Mkの初期体厚分布を取得する処理の際に生成されて取得されてもよく、各仮想モデルMr、Mkの取得処理に先立って予め設定されていてもよい。
本実施形態においては、撮影環境の仮想モデルMrは、予め定められた値を有する一様分布とされている。また、被検体Kの体厚分布取得用の初期体厚分布T0 kは、仮想モデル取得部41によって生成されて取得される。
仮想モデル取得部41は、被検体画像Ikの撮影条件を取得し、記憶部32から被検体Kの撮影条件に応じた画素値と体厚とを対応付けたテーブルを取得する。図3に画素値と体厚とを対応付けたテーブルの例を示す。そして、仮想モデル取得部41は、図3に示すテーブルに基づいて、被検体画像Ikの各画素の画素値に対応する体厚を特定することにより、被検体画像Ikの初期体厚分布T0 kを取得する。以上の処理は下記の式(1)により表される。なお、式(1)における、Ik(x,y)は、被検体画像における各画素の画素値、T0(x,y)は各画素位置における初期体厚分布を示す。
推定画像生成部42は、仮想モデルとして撮影環境の仮想モデルMrを用いた場合には、撮影環境の仮想モデルMrの放射線撮影により得られる一次線画像を推定した推定一次線画像Ipと撮影環境の仮想モデルMrの放射線撮影により得られる散乱線画像を推定した推定散乱線画像Isとを合成した画像を、参照画像Irを推定した画像である参照画像Irの推定画像Imとして生成する。
また、推定画像生成部42は、仮想モデルとして被検体Kの仮想モデルMkを用いた場合には、仮想モデルMkの放射線撮影により得られる一次線画像を推定した推定一次線画像Ipと仮想モデルMkの放射線撮影により得られる散乱線画像を推定した推定散乱線画像Isとを合成した画像を、被検体画像Ikを推定した画像である被検体画像Ikの推定画像Imとして生成する。
下記に、推定画像生成部42が推定画像を生成する例を説明する。以下の説明において、仮想モデルが被検体Kの仮想モデルMrである場合については、初期体厚分布T0として被検体Kの仮想モデルMkの初期体厚分布T0 kを用い、被検体画像Ikを用いる。また、仮想モデルが撮影環境の仮想モデルMrである場合については、初期体厚分布T0として撮影環境の仮想モデルMrの初期体厚分布T0 rを用い、被検体画像Ikに替えて参照画像Irを用いる。
図4および図5は、推定画像Imの生成方法を説明するための図である。図4に示すように、推定画像生成部42は、仮想モデルMを、被検体画像Ikと同等の撮影条件で仮想モデルMを撮影した場合に得られる推定一次線画像Ipを、下記式(2)に従って生成し、生成した推定一次線画像Ipを用いて、式(3)に従って推定散乱線画像Isを生成する。そして、推定画像生成部42は、式(4)に示すように推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを合成することにより、推定画像Imを生成する。なお、推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを1回目に作成する際には、推定式(2)、式(3)において初期体厚分布T0(x,y)が用いられる(式(2)、(3)においてn=1である)。
ここで、(x,y)は被検体画像Ikの画素位置の座標、Ip(x,y)は画素位置(x,y)における推定一次線画像、Is(x,y)は画素位置(x,y)における推定散乱線画像、Io(x,y)は画素位置(x,y)における線量、Im(x,y)は画素位置(x,y)における推定画像、μは被写体の線減弱係数、Ks(x,y,Tn(x’,y’),θx’,y’)は画素位置(x,y)における被検体厚に応じた点拡散関数(Point Spread Function)を表す畳みこみカーネルである。なお、線量Io(x,y)は、被写体が存在しないと仮定した際に放射線が検出器で検出される線量であり、放射線源12と放射線検出器14の検出面との距離(SID)、管電圧および撮影線量に応じて変化する。また、θx’,y’は、撮影条件や仮想モデルMの特性情報によって特定されるパラメータを表している。
なお、推定画像Imは、仮想モデルM(Mr、Mk)を放射線撮影した場合に得られると推定される画像であればよく、推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを合成した画像と実質的にみなせるものであればよい。例えば、図5に示すように、式(2)〜(4)に替えて下記式(5)を用いて、一次線成分と散乱線成分を合わせたカーネルを畳み込み積分して推定画像Imを生成してもよい。ここで、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)は、一次線成分と散乱線成分を合わせた点拡散関数を表すカーネルである。また、放射線撮影により得られた画像から推定一次線画像および推定散乱線画像を合成した推定画像を生成可能であれば、任意のモデル関数を用いてよい。
なお、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)は、撮影条件等に応じて実験的に求めることができる。
本実施形態においては、撮影時の撮影条件に基づいてカーネルKs(x,y,Tn(x’,y’),θx’,y’)、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)を算出してもよいが、各種撮影条件とカーネルKs(x,y,Tn(x’,y’),θx’,y’)、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)とを対応付けたテーブルを記憶部32に記憶しておき、撮影時の照射野情報、被写体情報および撮影条件に基づいて、このテーブルを参照してカーネルKs(x,y,Tn(x’,y’),θx’,y’)、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)を求める。
修正部43は、推定画像Imが参照画像Irの推定画像である場合には、参照画像Irの推定画像Imと参照画像Irとに基づいて、参照画像Irの推定画像Imと参照画像Irの違いが小さくなるように撮影環境の仮想モデルMrの初期体厚分布T0 r(Tn−1 r)を修正する。
また、修正部43は、推定画像Imが被検体画像Ikの推定画像である場合には、被検体画像Ikの推定画像Imと被検体画像Ikとに基づいて、被検体画像Ikの推定画像Imと被検体画像Ikの違いが小さくなるように被検体Kの仮想モデルMkの初期体厚分布T0k(Tn−1 k)を修正する。
また、修正部43は、体厚分布Tn−1の修正処理を行うために、被検体画像Ik(参照画像Ir)と推定画像Imの違いが小さくなるように体厚分布Tn−1の各位置の修正値を取得できる任意の方法を適用可能である。本実施形態では、修正部43は、仮想モデルMk(Mr)の一画素以上の部分領域ごとに、仮想モデルMk(Mr)の体厚分布Tn−1を変動させて、推定画像Imと被検体画像Ik(参照画像Ir)との違いを小さくする部分領域の体厚を算出する処理を実施する。そして、算出された各部分領域の体厚によって仮想モデルの体厚分布を修正する。
下記に、生成された推定画像Imが被検体画像Ikの推定画像であり、仮想モデルMが被検体Kの仮想モデルMkである場合について修正部43の機能を説明する。また、修正部43の処理の説明において、生成された推定画像Imが被検体画像Ikの推定画像であり、仮想モデルが被検体Kの仮想モデルMkである場合には、下記体厚分布Tn−1として被検体画像Ikの体厚分布Tn−1 kを用いる。また、修正部43の処理の説明において、推定画像Imが参照画像Irの推定画像である場合には、体厚分布Tn−1として撮影環境の仮想モデルMrの体厚分布Tnー1 rを用い、被検体画像Ikに替えて参照画像Irを用いる。
修正部43は、最急降下法を用いて体厚分布Tn−1の体厚の修正値を求めるものとする。下記式(6)、(7)を用いて、仮想モデルMの画素のうち、Tn−1(x,y)において1つの特定の座標の体厚のみを変動させて、エラー関数ferrorの一次偏微分(勾配)に基づいて繰り返しdTn−1(x,y)を算出することにより、エラー関数ferrorの出力値を最小化することができる。そして、エラー関数ferrorの出力値を最小化した際の、1つの特定の座標の体厚を、その特定の座標の体厚の修正値として決定する。また、他の画素についても同様に、それぞれ体厚の修正値を求めることにより、各画素の体厚分布を修正し、修正した体厚分布Tnを取得する。
ただし、式(6)において、αは、体厚の更新速度を表すパラメータである更新係数である。式(7)に示すKp+sの微分値部分の算出方法の一例として、例えば、Tn−1(x,y)に極めて小さい値dtを加えたとき値の変化を式(8)によって算出して、式(7)のKp+sの値とすることができる。
体厚分布決定部44は、被検体画像Ikの推定画像Imに基づいて修正された被検体Kの仮想モデルMkの体厚分布Tn−1(nは自然数)を被検体画像Ikの体厚分布Tkに決定する。
また、体厚分布決定部44は、参照画像Irの推定画像Imに基づいて修正された撮影環境の仮想モデルMrの体厚分布Tn−1(nは自然数)を被検体画像Ikの補正分布Trに決定する。
また、体厚分布決定部44は、所定の終了条件を満たす場合に、修正された体厚分布Tn−1を被検体画像Ikの体厚分布Tkに決定する。また、体厚分布決定部44は、終了条件として設定された条件を満たす場合に、修正された体厚分布Tn−1を撮影環境の体厚分布として決定し、この決定した体厚分布を補正分布Trとして決定する。
被検体画像Ikの体厚分布を決定する処理を例として、体厚分布決定部44の終了条件の判定方法を説明する。下記処理において、撮影環境の体厚分布を決定する処理の場合には、被検体画像Ikに換えて参照画像Irを用い、被検体Kの仮想モデルMkの体厚分布(第1体厚分布)に換えて撮影環境の仮想モデルMrの体厚分布(第2体厚分布)を用いればよい。体厚分布決定部44は、式(9)および式(10)に示すように、下記の被検体画像Ikと推定画像Imとの違いを表すエラー値Verrorを定義し、終了条件としてエラー値Verrorがしきい値以下であるか否かを判定する。また、式(10)に示すように、被検体画像Ikから推定画像Imを減算した差分画像Idの各画素値の2乗和をエラー関数ferrorとして規定する。なお、終了条件として、被検体画像Ikと推定画像Imとの違いが許容可能な程度に十分小さくなったことを判定可能なあらゆる判定手法を適用可能である。
また、上記例に限定されず、エラー関数ferrorを、被検体画像Ik(または参照画像Ir)と推定画像Imとの違いを表すあらゆる方法で規定することができる。例えば、下記式(11)に示すように、被検体画像Ik(または参照画像Ir)から推定画像Imを減算した差分画像Idの各画素値の絶対値の総和をエラー関数ferrorとしてもよい。
なお、式(1)〜(11)において、同じ要素には同じ符号を付して、説明を省略する。被検体画像Ikと推定画像Imの違いを表すエラー値Verrorを最小化するあらゆる最適化手法を適用可能であり、例えば、シンプレックス法や最急降下法、共役勾配法を用いることができる。また、推定画像Imが参照画像Irの推定画像である場合には、式(7)、(9)、(10)および(11)において、被検体画像Ikに替えて参照画像Irを用いる。
図6は、画像解析装置30の処理の流れを示すフローチャートであり、図7は補正分布決定処理の流れを示すフローチャートであり、図8は体厚分布決定処理のフローチャートである。図6乃至8を用いて、画像解析装置30の処理の流れを説明する。
まず、図6に示すように、画像取得部33は、参照画像Irを取得する(S01)。そして、補正分布取得部35は、参照画像Irの散乱線成分に基づいて補正分布Trを取得する(S02)。
図7を用いてS02における補正分布取得処理を詳細に説明する。仮想モデル取得部41は、記憶部32から、初期体厚分布T0 rを有する撮影環境の仮想モデルMrを取得する(S11)。
次いで推定画像生成部42は、撮影環境の仮想モデルMrの放射線撮影により得られる一次線画像を推定した推定一次線画像Ipと撮影環境の仮想モデルMrの放射線撮影により得られる散乱線画像を推定した推定散乱線画像Isとを合成した画像を、参照画像Irを推定した画像である参照画像Irの推定画像Imとして生成する(S12)。
続いて、体厚分布決定部44は、条件式(9)、(10)を用いて参照画像Irの推定画像Imと参照画像Irとの違いが終了条件を満たすか否かを判定する(S13)。
体厚分布決定部44は、エラー値Verrorが終了条件を満たさない場合には(S13:No)、条件式(6)、(7)を用いて体厚分布Tn−1(n=1の場合には、初期体厚分布T0 r)を修正する修正処理を行う(S14)。
修正された体厚分布Tnを取得すると、体厚分布決定部44は、nの値を1つ増加して更新し(n=n+1とする)、仮想モデル取得部41は修正された体厚分布Tnを取得する(S11)。そして、取得された体厚分布Tnに対して、推定画像生成部42および体厚分布決定部44はS11〜S13の処理をそれぞれ上記と同様に実行する。そして、参照画像Irと参照画像Irの推定画像Imとの違いを示すエラー値Verrorが終了条件を満たすまで、上記同様に、体厚分布Tnの修正処理(S14)と、修正された体厚分布Tnを有する仮想モデルMrの取得処理(S11)と、体厚分布Tnを用いた新たな推定画像Imの生成処理(S12)と、新たに生成された推定画像Imと参照画像Irとの違いが終了条件を満たすかを判定する処理(S13)の処理とが繰り返される。
一方、体厚分布決定部44は、エラー値Verrorが終了条件を満たしていることを判定した場合には(S13:Yes)、終了条件を満たした際にエラー値Verrorに用いられた体厚分布Tnを参照画像Irの体厚分布として決定し、この体厚分布を補正分布Trとして取得して補正分布取得処理を終了する(S15)。
図6に戻って続く処理を説明する。画像取得部33は、被検体画像Ikを取得する(S03)。次いで、体厚分布取得部36は、被検体画像Ikの散乱線成分に基づいて体厚分布Tkを推定して取得する(S04)。
また、図8を用いてS04における補正分布取得処理を詳細に説明する。仮想モデル取得部41は、記憶部32から、初期体厚分布T0 kを有する被検体Kの仮想モデルMkを取得する(S21)。
次いで推定画像生成部42は、被検体Kの撮影環境の仮想モデルMrの放射線撮影により得られる一次線画像を推定した推定一次線画像Ipと被検体Kの仮想モデルMrの放射線撮影により得られる散乱線画像を推定した推定散乱線画像Isとを合成した画像を、被検体画像Ikを推定した画像である推定画像Imとして生成する(S22)。
続いて、体厚分布決定部44は、条件式(9)、(10)を用いて被検体画像Ikと推定画像Imとの違いが終了条件を満たすか否かを判定する(S23)。
体厚分布決定部44は、エラー値Verrorが終了条件を満たさない場合には(S23:No)、条件式(6)、(7)を用いて体厚分布Tn−1(n=1の場合には、初期体厚分布T0)を修正する修正処理を行う(S24)。
修正された体厚分布Tnを取得すると、体厚分布決定部44は、nの値を1つ増加して更新し(n=n+1とする)、仮想モデル取得部41は修正された体厚分布Tnを取得する(S21)。そして、取得された体厚分布Tnに対して、推定画像生成部42および体厚分布決定部44はS21〜S23の処理をそれぞれ上記と同様に実行する。そして、被検体画像Ikと推定画像Imとの違いを示すエラー値Verrorが終了条件を満たすまで、上記同様に、体厚分布Tnの修正処理(S24)と、修正された体厚分布Tnを有する仮想モデルMkの取得処理(S21)と、体厚分布Tnを用いた新たな推定画像Imの生成処理(S22)と、新たに生成された推定画像Imと被検体画像Ikとの違いが終了条件を満たすかを判定する処理(S23)の処理とが繰り返される。
一方、体厚分布決定部44は、エラー値Verrorが終了条件を満たしていることを判定した場合には(S23:Yes)、終了条件を満たした際にエラー値Verrorに用いられた体厚分布Tnを被検体画像Ikの体厚分布Tkとして決定して体厚分布取得処理を終了する(S25)。
そして、体厚分布取得部36は、被検体画像Ikと参照画像Irの対応する位置を互いに位置合わせし、被検体画像Ikの体厚分布と参照画像Irの補正分布に基づいて、互いに対応する位置において、体厚分布Tkの体厚の値から補正分布Trの体厚補正量の値を減算して、被検体画像Ikの補正体厚分布Tk’として決定し、本実施形態における画像解析処理を終了する(S05)。なお、上記画像解析処理において、S01とS02の処理と、S03とS04の処理は、互いに順番を変えて実行してもよく、並行して実行してもよい。
本実施形態によれば、予め定められた撮影環境において被検体を配置しないで撮影された放射線画像である参照画像Irを取得し、取得した参照画像に含まれる散乱線成分が、参照画像の撮影環境を表す仮想的な被検体である仮想被検体によって生じているとみなして、参照画像Irに含まれる散乱線成分に基づいて参照画像Irの仮想被検体の体厚分布を推定し、推定した仮想被検体の体厚分布を、撮影環境において所望の被検体を配置して撮影された放射線画像である被検体画像Ikの体厚分布Tkの誤差を補正するための体厚補正量の分布である参照画像の補正分布Trとして取得することにより、取得した補正分布Trを、撮影環境により生じる散乱線成分の影響による被検体画像Ikの体厚分布Tnの誤差を補正するための有益な情報として提供することができる。
また、体厚分布取得部36が、被検体画像Ikの散乱線成分に基づいて被検体画像Ikの体厚分布Tkを取得し、参照画像Irの散乱線成分に基づいて取得した補正分布Trに応じて体厚分布Tkにおける各位置の体厚をそれぞれ補正した被検体Kの補正体厚分布Tk’を取得するため、撮影環境によって生じる体厚分布の誤差を好適に補正して、好適に補正された被検体Kの補正体厚分布Tk’を求めることができる。さらに、補正分布取得部35が、体厚分布取得部36と共通の方法により参照画像Irから散乱線成分に基づいて撮影環境の体厚分布を取得し、取得した撮影環境の体厚分布を補正分布として取得しているため、上記効果をより高めることができる。
また、補正分布取得部35が、予め定められた体厚分布(第2体厚分布)を有する撮影環境の仮想モデルを取得する仮想モデル取得部41(第2仮想モデル取得部)と、参照画像の撮影条件を取得し、参照画像の撮影条件を適用して、撮影環境の仮想モデルから推定した推定一次線画像と撮影環境の仮想モデルの放射線撮影により得られる散乱線画像を撮影環境の仮想モデルから推定した推定散乱線画像とを合成した画像を、参照画像を推定した画像である参照画像の推定画像として生成する推定画像生成部42(第2推定画像生成部)と、参照画像の推定画像と参照画像の違いが小さくなるように撮影環境の仮想モデルの体厚分布を修正する修正部43(第2修正部)と、修正された撮影環境の仮想モデルの体厚分布を撮影環境に対応する補正分布として決定する体厚分布決定部44(第2体厚分布決定部)とを備えているため、参照画像Irから散乱線成分に基づいて撮影環境を表す仮想被検体の体厚分布が正確であり、この仮想被検体の体厚分布を補正分布とすることにより、撮影環境による散乱線成分によって生じた体厚分布の誤差を精度よく補正できる。
また、上記実施形態のように、体厚分布取得部36が、体厚分布取得部が、予め定められた体厚分布(第1体厚分布)を有する被検体Kの仮想モデルを取得する仮想モデル取得部41(第1仮想モデル取得部)と、被検体画像Ikの撮影条件を取得し、被検体画像Ikの撮影条件を適用して、被検体Kの仮想モデルの放射線撮影により得られる一次線画像を被検体Kの仮想モデルから推定した推定一次線画像と被検体Kの仮想モデルの放射線撮影により得られる散乱線画像を被検体Kの仮想モデルから推定した推定散乱線画像とを合成した画像を、被検体Kの放射線撮影により得られる放射線画像を推定した画像である被検体画像Ikの推定画像Imとして生成する推定画像生成部42(第1推定画像生成部)と、被検体画像Ikの推定画像Imと被検体画像Ikの違いが小さくなるように仮想モデルの体厚分布を修正する修正部43(第1修正部)と、修正された被検体Kの仮想モデルの体厚分布Tnを被検体Kの体厚分布Tkとして決定する体厚分布決定部44(第1体厚分布決定部)とを備えた場合には、被検体画像Ikから散乱線成分に基づく正確な体厚分布を取得することができる。
また、本実施形態に示すように、仮想モデル取得部41が、修正された体厚分布Tnを有する仮想モデルMk(またはMr)をさらに取得し、推定画像生成部42が、修正された体厚分布Tnを有する仮想モデルMk(またはMr)から推定画像Imをさらに生成し、修正部43が、さらに生成された推定画像Imと被検体画像Ik(または参照画像Ir)の違いが小さくなるように仮想モデルMの体厚分布Tnをさらに修正する場合には、修正された体厚分布Tnを有する仮想モデルに基づいて、体厚分布Tの修正を繰り返すことにより、推定画像Imが被検体画像Ik(または参照画像Ir)により近似するように体厚分布Tをより正確に修正できる。このため、修正した撮影環境の仮想モデルMrの体厚分布Tn+1を撮影環境の補正分布Trとすることで、さらに正確に参照画像Irの補正分布Trを決定することができる。また、修正した被検体Kの仮想モデルMの体厚分布Tn+1を被検体Kの体厚分布Tkとすることで、さらに正確に被検体画像Ikの体厚分布Tkを決定することができる。
また、本実施形態によれば、体厚分布取得部36が、推定画像Imと被検体画像Ik(または参照画像Ir)との違いが許容可能な程度に十分小さくなった場合に、仮想モデルMの体厚分布Tnを被検体Kの体厚分布Tk(または参照画像Irの補正分布Tr)として決定している。このため、推定画像Imと被検体画像Ik(または参照画像Ir)とが近似する体厚分布となるように、繰り返し体厚分布を修正して、非常に正確に被写体画像(または参照画像Ir)の体厚分布を決定することができる。また、体厚分布取得部36は、推定画像Imと被検体画像Ik(または参照画像Ir)との違いが閾値以下となったか否かを判定することにより、推定画像Imと被検体画像Ik(または参照画像Ir)との違いが許容可能な程度に十分小さくなったか否かを好適に判別して、推定画像Imと被検体画像Ik(または参照画像Ir)とが近似する体厚分布となるように、繰り返し体厚分布を修正して、非常に正確に被写体画像の体厚分布を決定することができる。なお、終了条件のしきい値は、被検体Kの仮想モデルを用いる場合と、撮影環境の仮想モデルを用いる場合とで、異ならせてもよく等しくしてもよい。
また、本実施形態に示すように、修正部43が、仮想モデルMの1画素以上の部分領域ごとに、仮想モデルMの体厚分布Tn−1のうち1つの部分領域の体厚を変動させて、推定画像Imと被検体画像Ikとの違いを最小化する場合のその1つの部分の体厚を算出し、算出された各部分の体厚によって仮想モデルMの体厚分布を修正する場合には、各画素の体厚の修正値を正確に算出でき、好適に修正された体厚分布Tnを取得することができる。
また、補正分布取得部35が、体厚分布取得部36と共通の方法により参照画像Irの散乱線成分に応じた体厚分布を取得し、取得した体厚分布を補正分布Trとしているため、体厚分布Tkを補正分布Trを用いて補正することにより、撮影環境による散乱線成分による体厚分布の誤差の影響を好適に低減して、精度よく被検体Kの体厚分布である補正体厚分布Tk’を得ることができる。また、補正分布取得部35と体厚分布取得部36は、仮想モデル取得部41、推定画像生成部42、修正部43、体厚分布決定部44の構成要素および機能を共通化することにより、画像処理装置の構成をより簡略化することができる。ただし、画像処理装置に求められる所望の事項のために、補正分布取得部35と体厚分布取得部36は、それぞれ個別に、仮想モデル取得部、推定画像生成部、修正部、体厚決定部を備えるようにしてもよく、それぞれが別の手法により散乱線成分に基づく体厚推定処理を行ってもよい。
上記実施形態において、推定画像生成部42は、推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを生成できる種々の方法を適用してよい。
また、上記実施形態において、撮影条件取得部34によって被検体画像Ikおよび参照画像Irの撮影条件を取得し、推定画像生成部42が、取得した撮影条件に応じて、推定画像Imの生成に用いられる、撮影条件によって変動するパラメータ(例えば、上記式(3)、(5)におけるθx’,y’など)を選択し、選択したパラメータを用いて推定画像Imの生成処理(S22、S32)を行うことが好ましい。
また、上記実施形態において、修正部43は、被検体画像Ik(または参照画像Ir)の撮影条件を取得し、取得した撮影条件に応じて、推定画像Imの生成に用いられる、撮影条件によって変動するパラメータ(例えば、上記式(7)、(8)におけるθx’,y’など)を選択し、選択したパラメータを用いて推定画像Imの体厚分布の修正処理(S14およびS24)を行うことが好ましい。この場合には、被検体画像Ik(または参照画像Ir)の撮影条件に応じて、撮影条件によって変動するパラメータを適切に設定して推定画像Imを生成することができるため、推定画像Imをより正確に推定して生成することができる。このため、結果として、被検体Kの体厚分布または(撮影環境の体厚分布)をより正確に決定することができる。
また、画像解析装置30において、画像取得部33は、1つの撮影環境において複数の参照画像を取得し、補正分布取得部35は、取得された複数の参照画像についてそれぞれ補正分布を取得し、体厚分布取得部36は、取得された複数の参照画像に対応する複数の補正分布Trを平均した平均補正分布に応じて被検体Kの体厚分布Tkにおける各位置の体厚をそれぞれ補正した被検体Kの補正体厚分布Tk’を取得してもよい。この場合には、体厚分布Tkの補正のために、1つの参照画像から取得した補正分布の代わりに、複数の参照画像から取得した複数の補正分布Trを平均した平均補正分布を用いることにより、撮影ごとの散乱線成分のばらつきの影響を抑制して、より精度よく撮影環境による体厚の誤差を反映した補正分布を用いることができ、より好適に被検体Kの体厚分布Tkを補正することができる。
また、画像解析装置30において、画像取得部33は、撮影環境において被検体を配置しないで撮影された複数の放射線画像を取得し、複数の放射線画像を平均した画像を参照画像として取得することが好ましい。この場合には、同等である撮影環境において被検体を配置しないで撮影された複数の放射線画像の平均画像を参照画像とすることにより、参照画像における撮影ごとの散乱線成分のばらつきの影響を抑制することができる。このため、結果としてより精度よく撮影環境による体厚の誤差を反映した補正分布を取得することができ、より好適に被検体Kの体厚分布Tkを補正することができる。
また、画像解析装置30において、補正分布取得部35が、互いに異なる撮影条件が適用された複数の参照画像Irについてそれぞれ補正分布Trを取得して、撮影条件と対応する補正分布を対応付けし、体厚分布取得部36は、被検体画像Ikの撮影条件に類似する撮影条件に対応付けられた補正分布を取得し、取得した補正分布Trに応じて被検体画像Ikの体厚分布Tkにおける各位置の体厚をそれぞれ補正した補正体厚分布Tk’を取得することが好ましい。例えば、第1〜第mの撮影室のそれぞれについて、互いに異なる第1〜第nの撮影条件で撮影された参照画像をそれぞれ取得して、参照画像ごとに補正分布をそれぞれ取得し、撮影室と撮影条件と補正分布を対応付けた対応付けテーブルを用意しておくことが考えられる。例えば、第1〜第nの撮影条件は、管電圧と管電流と照射時間の積を表すものとすることができる。そして、被検体画像の撮影時に、対応付けテーブルに基づいて、被検体画像の撮影室と被検体画像の撮影条件(または被検体画像の撮影条件に類似する撮影条件)に対応する補正分布を取得すればよい。この場合には、被検体画像Ikと参照画像Irにおいて撮影条件が類似しているため、被検体画像Ikの撮影条件と参照画像Irの撮影条件が互いに異なっている場合よりも、撮影条件による体厚分補正分布に対する変動が抑制された補正分布を用いて体厚分布を補正することができ、より正確に被検体Kの体厚分布を表す補正体厚分布を取得することができる。なお、撮影条件の類似の判定には、許容に撮影条件が類似していると判定可能な条件であれば、撮影条件の1以上の要素が共通または近似している条件を採用できる。
なお、補正分布取得部35は、撮影環境において特定の撮影条件が適用された参照画像Irについて補正分布Trを取得し、体厚分布取得部36は、取得した補正分布Trに応じて参照画像の撮影環境と同等の撮影環境において特定の撮影条件とは異なる撮影条件が適用された被検体画像の体厚分布における各位置の体厚をそれぞれ補正した補正体厚分布を取得してもよい。撮影条件による補正分布の変動が少ない場合などには、特定の撮影条件が適用された参照画像について取得された補正分布を用いて、特定の撮影条件とは異なる撮影条件が適用された被検体画像の体厚分布を補正することにより、簡易かつ好適に被検体画像の体厚分布を補正することができる。
また、複数の放射線撮影システムを有する規模の大きい医療機関などにおいて、複数の撮影室において、撮影台、撮影装置、撮影室の壁や床などの撮影環境の要素や配置が共通している場合もあり得る。このような場合には、特定の撮影室の撮影環境において予め定められた撮影条件で被写体を配置せずに撮影された参照画像に基づいた補正分布を取得し、取得した補正分布を他の同等の撮影環境を有する撮影室における被検体画像の体厚分布を補正するために用いてもよい。なお、撮影環境の要素のうち、撮影環境によって生じる散乱線発生の主たる要因となる要素や配置が実質的に共通である場合には、他の要素の種類や配置などが異なっていても、撮影環境が実質的に共通しているとみなせる。このため、互いに異なる複数の撮影室であっても、撮影環境の要素のうち、撮影環境によって生じる散乱線発生に寄与する1つ以上の主たる要素とその配置が実質的に共通である場合には、一つの撮影室の撮影環境において所定の撮影条件で被写体を配置せずに撮影された参照画像に基づいた補正分布を取得し、取得した補正分布を他の同等の撮影環境を有する撮影室における被検体画像の体厚分布を補正するために用いることができる。
また、例えば、本発明の補正分布Trを取得する処理を所定の撮影環境の設置時に行うことが考えられる。この場合、撮影環境の新規設置時に、その撮影環境において参照画像Irを撮影して取得し、取得された参照画像Irに基づいて補正分布Trを取得し、その後、同じ撮影環境(参照画像の撮影環境と同等の撮影環境)において撮影された、複数の互いに異なる被検体を撮影した複数の被検体画像について、各被検体画像の体厚分布を補正するために、取得した補正分布Trを用いることができる。なお、一旦補正分布を取得した撮影環境であっても、所望の期間をおいて補正分布Trを取得する処理を適宜実施し、補正分布Trを更新することが好ましい。この場合には、撮影環境に配置された放射線源などの各要素の劣化などの経時変化の影響を低減して、撮影環境に対応する補正分布を好適に取得して利用することができる。
また、本実施形態の変形例である第2の実施形態として、体厚分布取得部36は、被検体画像Ikに含まれる散乱線成分に基づいて被検体画像Ikの被検体の体厚分布を取得し、取得した体厚分布の少なくとも一部に撮影環境からの散乱線成分による誤差が生じている可能性があることを判別した場合に、補正分布Trに応じて被検体の体厚分布Tkにおける各位置の体厚をそれぞれ補正した被検体Kの補正体厚分布Tk’を取得するようにしてもよい。
例えば、図11に第2の実施形態に係る画像解析装置30の処理の流れを示すフローチャートを示す。図11において、S41、S42、S43、S44、S46の処理は、図6におけるS01、S02、S03、S04、S05の処理とそれぞれ同じ処理であるため、詳細な説明を省略する。図11に示すように、画像解析装置30は、図6と同様に、参照画像を取得する処理(S41)、参照画像に基づいて補正分布を取得する処理(S42)、被検体画像を取得する処理(S43)、被検体画像に基づいて体厚分布を取得する処理(S44)を順次実行する。次いで、体厚分布取得部36が、体厚分布の誤差が生じている可能性があるか否かを判別し、体厚分布の誤差が生じている可能性があると判別した場合には(S45、Y)、体厚分布を補正して補正体厚分布を取得する処理(S46)を行う。一方、体厚分布の誤差が生じている可能性がないと判別した場合には(S45、N)、体厚分布を補正して補正体厚分布を取得する処理(S46)を省略する。この場合には、必要な場合にのみ体厚分布を補正することができるため、計算負荷を低減することができる。
また、図12に第2の実施形態の変形例に係る画像解析装置30の処理の流れを示すフローチャートを示す。図12に示すように、参照画像を取得する処置(図6のS01に対応する処理)と参照画像に基づいて補正分布を取得する処理(図6のS02に対応する処理)は、被検体画像に基づいて体厚分布を取得する処理(図6のS04に対応する処理)の後に実行してもよい。図12において、S51、S52、S54、S55、S46の処理はS03、S04、S01、S02、S05の処理とそれぞれ同じ処理であるため、詳細な説明を省略する。図12に示すように、画像解析装置30は、被検体画像を取得する処理(S51)を実行し、次いで体厚分布を取得する処理(S52)を実行し、次に体厚分布取得部36により体厚分布の誤差が生じている可能性があるか否かを判別し、体厚分布の誤差が生じている可能性があると判別した場合には(S53,Y)、参照画像を取得する処置(S54)と参照画像に基づいて補正分布を取得する処理(S55)と体厚分布を補正して補正体厚分布を取得する処理(S56)をこの順に実行するようにすることができる。なお、体厚分布の誤差が生じている可能性がないと判別した場合には(S54,Y)、参照画像取得処置(S54)と参照画像に基づいて補正分布を取得する処理(S55)と体厚分布を補正して補正体厚分布を取得する処理(S56)を省略することができる。
なお、上記図11、12における体厚分布に誤差が生じているかを判別する処理(S45,S53)において、体厚分布取得部36は、被検体画像Ikから画素ごとに算出した体厚分布について、体厚分布に対応する各画素をそれぞれ対象画素として、対象画素の体厚を、対象画素と対象画素に隣接する画素からなる3×3画素の各体厚を平均した値とすることにより、体厚分布を平滑化する。そして、互いに対応する画素ごとに、平滑化前の体厚分布から平滑化後の体厚分布を減算する。そして、減算してえた差分値分布における差分値の絶対値が所定の基準値を超える場合に、取得した体厚分布に誤差が生じている可能性があると判別する。また、例えば、被検体領域のエッジにおける体厚分布の変化を撮影環境によって生じる体厚分布の誤差と誤って認識することを防ぐために、周知の手法により被検体画像Ikの被検体が存在する領域を特定し、被検体領域のエッジとエッジの近傍を除く領域を、体厚分布の判別の対象領域とし、対象領域に含まれる体厚分布ついてのみ上記判別処理を実行してもよい。なお、上記の基準値は、標準的な被検体の形状に基づいて近傍の2つの位置間の体厚の変化の最大値より大きい所定値を基準値として算出し、判別条件を体厚分布の近傍の2つの位置間の体厚の変化の絶対値が基準値を超える場合に、体厚分布が撮影環境による誤差を含む可能性があると判別するように設定することができる。近傍の2つの位置は、互いに隣接する画素の位置であってもよく、十分近傍に位置するものであれば互いに数画素から数十画素離れた位置であってもよい。
また、上記「体厚分布の少なくとも一部に撮影環境による散乱線成分による誤差が生じている可能性があることを判別」する方法は、被検体の体厚分布の少なくとも一部が、撮影環境からの散乱線成分が放射線検出器に到達することにより被検体の実際の体厚分布よりも大きく算出されて体厚分布の誤差が生じている可能性があることを判別できるものであればいかなる方法であってもよい。また、例えば、標準的な被検体の形状に基づいて想定される最大の体厚に所定の厚さを加えた体厚を基準値として取得し、体厚分布に含まれる最大の体厚が基準値よりも大きい場合に、体厚分布が撮影環境による誤差を含む可能性があると判別するように設定してもよい。
また、本発明にかかる放射線画像解析方法において処理時間を短縮化することが好ましい。このために、画像取得部33は、撮影環境において被検体を配置しないで撮影された放射線画像の解像度を予め定められた解像度に低減した縮小画像を生成し、生成した縮小画像を参照画像として取得することが好ましい。例えば、第1の実施形態の変形例として、図6の参照画像を取得する処理(S01)において、画像取得部33が、予め定められた撮影環境において被検体Kを配置しないで撮影された放射線画像の解像度を予め定められた解像度に低減した縮小画像を生成し、生成した縮小画像を参照画像として取得する。そして、補正分布取得部35が参照画像Irの補正分布を取得する処理(S02)において、縮小参照画像に対して、図7のS11〜S15の処理を行って撮影環境の補正分布Trを取得する。そして、その後補正分布Trを被検体画像Ikの解像度に合わせるように必要に応じて適宜補間して拡大すればよい。この場合には、参照画像の補正分布を取得する処理(例えば図6のS02)の処理負荷を低減して、処理時間を高速化することができる。
また、同様に、画像取得部33は、被検体を配置して撮影された放射線画像の解像度を予め定められた解像度に低減した縮小画像を生成し、生成した縮小画像を被検体画像Ikとして取得することが好ましい。例えば、第1の実施形態の変形例として、図6の被検体画像を取得する処理(S03)において、画像取得部33が、予め定められた撮影環境において被検体を配置して撮影された放射線画像の解像度を予め定められた解像度に低減した縮小画像を生成し、生成した縮小画像を被検体画像Ik(縮小被検体画像)として取得する。そして、体厚分布取得部36が縮小被検体画像Ikの体厚分布Tkを取得する処理(図6のS04)において、縮小被検体画像Ikに対して、図8のS21〜S25の処理を行って縮小被検体画像の体厚分布Tkを取得する。そして、その後体厚分布Tkを必要に応じて適宜補間して拡大して用いればよい。この場合には、被検体画像の体厚分布を取得する処理(例えば図6のS04)の処理負荷を低減して、処理時間を高速化することができる。なお、縮小参照画像、縮小被検体画像は、処理に必要な解像度を維持する範囲内で解像度をできるだけ小さくすることが好ましい。
体厚分布取得部36の体厚分取得処理の他の変形例を第3の実施形態として説明する。図9は、第3の実施形態における体厚分布取得部36の概略ブロック図であり、図10は、第3の実施形態における体厚分布取得部36の処理を表すフローチャートである。なお、第2および第3の実施形態における画像解析装置30は、体厚分布取得部36以外の構成および機能については、第1の実施形態と同じであるため、体厚分布取得部36以外の構成および機能については説明を省略する。
図9に示すように、第3の実施形態における体厚分布取得部36は、体厚分布取得部は、被検体とは異なる複数のモデルがそれぞれ撮影された放射線画像である複数のモデル画像と、モデル画像の散乱線成分に基づいて取得されたモデル画像の体厚分布とを対応付けたモデル情報をそれぞれ取得するモデル情報取得部51と、被検体画像とモデル画像の対応する位置を互いに位置合わせする位置合わせ部52と、被検体画像の被検体の特徴を表す撮影対象情報を取得し、複数のモデル情報に基づいて、複数のモデル画像のモデルの特徴を表す撮影対象情報をそれぞれ取得し、被検体画像の撮影対象情報と類似する前撮影対象情報を有するモデル画像を特定し、特定されたモデル画像に対応付けられた体厚分布を被検体画像の体厚分布として決定するあらたな体厚分布決定部53とを備える。以下、あらたな体厚分布決定部53を、体厚分布決定部53と記載する。
上記「モデル」は、被検体を仮想的に表すことのできる任意のモデルを用いることができる。例えば、被検体が人体である場合には、モデルを比較用の人体とすることが好ましい。また、撮影対象情報が互いに類似するモデル画像が複数存在する場合には、撮影対象情報が互いに類似するモデル画像のうち、被検体画像Ikと撮影部位や撮影条件が互いに一致するモデル画像に対応づけられた体厚分布を被検体画像の体厚分布として決定することが好ましい。
また、「撮影対象情報」は、撮影対象の骨格形状や骨格の大きさ、筋肉量や、脂肪量などの体格的な特徴など、撮影対象の特徴を表すものであれば、あらゆる方法によって特定されたものであってよい。例えば、放射線画像の信号値のヒストグラム幅(信号値のヒストグラムの最大値と最小値の差)、放射線画像における被検体の所定部位の代表長さ(例えば腹部などの幅)、被検体の身長、体重、性別、年齢(大人、子供)などを用いてもよい。また、撮影対象情報は1つであってもよく複数であってもよい。また、撮影対象情報は、ユーザ入力により入力されたものであってもよく、被写体画像とモデル画像から抽出された撮影対象情報であってもよい。
図10は、第3の実施形態における体厚分布取得部36の処理(図6のS04の処理に相当する処理)のフローチャートである。なお、第3の実施形態においては、体厚分布取得処理に先だって、記憶部32には、被検体Kとは異なる人体であるモデルGi(1<i<n)について、被検体画像Ikと同じ撮影環境において、同じ撮影条件を適用して、被検体画像Ikと重複する部位をそれぞれ放射線撮影して得られた放射線画像である複数のモデル画像Igi(1<i<n)と、モデル画像Igi(1<i<n)の被写体であるモデルGiの体厚分布Tgi(1<i<n)とを対応付けたモデル情報Cgi(1<i<n)が予め作成されて記憶されている。
また、モデルGiの体厚分布Tgi(x、y)(1<i<n)の算出は、モデル画像Igiの散乱線成分に基づいて取得されている。第3の実施例では、撮影条件と撮影対象部位の特性情報の組合せごとに、図3の例のように、モデル画像の画素値と被検体の体厚とを対応付けた対応付けテーブルを用意して記憶する。そして、モデル画像の撮影条件と撮影対象部位に対応する対応付けテーブルを取得し、対応付けテーブルに基づいて、モデル画像の各位置の画素値に対応する体厚を特定することにより、モデル画像の体厚分布を取得する。
図10を用いて、第3の実施形態における体厚分布取得部36の処理について以下に説明する。まず、モデル情報取得部51は、複数のモデル情報を取得する(S31)。そして、位置合わせ部52は、被検体画像Ikとモデル情報に含まれるモデル画像Igi(1<i<n)について相対的に移動、回転、拡大縮小などの処理を施して、互いに対応する位置を位置合わせする(S32)。次に、体厚分布決定部53は、被検体画像Ikの撮影対象情報である被検体画像Ikのヒストグラム幅を取得し(S33)、モデル画像Igi(1<i<n)からも同様に撮影対象情報である被検体画像Ikのヒストグラム幅を取得する(S34)。そして、体厚分布決定部53は、被検体画像Ikと複数のモデル画像Igiの信号値のヒストグラム幅を比較し、被検体画像Ikのヒストグラム幅と最も近いヒストグラム幅を有するモデル画像Igoを特定する(S35)。放射線画像においては、被写体の体格が大きくなるほど、信号値の分布の広がりが大きくなる傾向があるため、撮影対象情報として信号値のヒストグラム幅を用いることで、被検体画像Ikの被検体Kと体格が類似するモデルGoを被写体とするモデル画像Igoを特定することができる。
そして、体厚分布決定部53は、特定したモデル画像Igoに対応づけられた体厚分布Tgoを被検体画像Ikの体厚分布Tkとして決定し、第3の実施形態の体厚分布取得析処理を終了する(S36)。
第3の実施形態によれば、被検体画像Ikと同じ撮影環境において撮影されたモデル画像の体厚分布のうち、被検体Kの撮影対象情報と類似する撮影対象情報を有するモデル画像の体厚分布を、被検体画像Ikの体厚分布として決定できるため、精度よく決定された被検体Kの体厚分布を体厚分布として取得することができる。結果として、体厚分布を補正分布によって補正した補正体厚分布をより正確なものとすることができる。
また、上記各実施形態において、画像取得部33は、グリッドを用いないで撮影された被検体画像Ikを取得するものとしたが、これに限定されず、画像取得部33は、グリッドを用いて被検体Kを放射線撮影した放射線画像に対して、グリッドに起因する縞模様を除去する処理を施した画像を被検体画像Ikとして取得してもよい。グリッドに起因する縞模様を除去する処理は、グリッドに起因する縞模様を除去可能な種々の手法によって行われたものであってよく、例えば特開2012−203504号公報に記載された手法などが参照できる。
上記の各実施形態では、被検体の所定の撮影部位を透過した放射線を1つの放射線検出器を用いて放射線画像に変換する通常の放射線撮影を例に説明したが、被検体に対する種々の撮影方法としては、1枚の画像に収まりきらない長尺な撮影部位(例えば、被検体の体全体)の放射線画像を得るための長尺撮影(例えば、特開2011−224337号公報参照)と、放射線検出器の撮影領域を複数の領域に分割した分割領域を1つずつ用いて、分割領域毎に、放射線画像の撮影を行う分割撮影がある(例えば、特開2002−263089号公報参照)。本発明にかかる放射線画像解析方法は、長尺撮影や分割撮影に係る放射線画像に対しても好適に適用可能である。
長尺撮影においては、長尺な撮影領域を確保可能に複数の放射線検出器を連結して長手形状に組み合わせてなる放射線検出器を用いる場合がある。図13に、長尺撮影用の放射線検出器の例を示す。図13に示すように、略矩形平板状の放射線検出器14A、14B、14Cは、不図示の連結部により端部において互いに連結されて1つの長尺撮影用放射線検出器を構成している。各放射線検出器14A、14B、14Cは、撮影領域に放射線検出器が途切れず配置されるように端部が互いに重複するように配置されている。ここでは、放射線検出器14A、14B、14Cは、ISS方式(Irradiation Side Sampling方式)の放射線検出器である。ISS方式の放射線検出器14A、14B、14Cは、放射線の照射方向(図中一点鎖線矢印参照)に沿って、ガラス基板14Aa、14Ba、14Caおよび放射線を光に変換する蛍光体層であるシンチレータ14Ab、14Bb、14Cbがこの順に設けられたものである。ガラス基板には不図示の信号出力部およびセンサ部が配設されており、シンチレータから発光された光を、センサ部で電荷に変換して放射線画像を読み取る。また、ガラス基板14Aa、14Ba、14Caは略矩形平板状であり、シンチレータ14Ab、14Bb、14Cbはガラス基板14Aa、14Ba、14Caよりも若干小さい略矩形平板状に構成されている。
このような長尺撮影用放射線検出器では、特に放射線検出器が重複して配置される部分において放射線検出器同士が互いに近傍に位置しているため、一つの放射線検出器のガラス基板やシンチレータなどで発生した散乱線が他の放射線検出器に到達し、散乱線に基づく体厚分布の算出に誤差を及ぼしやすい状況となっている。図13の下方には、長尺撮影用放射線検出器の長尺方向において、放射線検出器14A、14B、14Cの各参照画像の画素ごとの補正分布TrA、TrB、TrCをそれぞれ示す。補正分布TrAに示すように、放射線検出器14Aは、近傍に配置された放射線検出器14B(特に端部14Bc)で生じた散乱線が到達することにより、特に放射線検出器14Bの近傍である端部14Acにおいて散乱線量が多く、Saに示すように体厚分布の誤差が多くなる。同様に、補正分布TrBに示すように、放射線検出器14Bは、近傍に配置された放射線検出器14A(特に端部14Ac)と放射線検出器14C(特に端部14Cc)で生じた散乱線が到達することにより、特に放射線検出器14Aの近傍である端部14Bcにおいて散乱線量が多く、Sb1に示すように体厚分布の誤差が大きくなり、特に放射線検出器14Cの近傍に位置する端部14Bdにおいて散乱線量が多く、Sb2に示すように体厚分布の誤差が大きくなる。また、同様に、補正分布TrCに示すように、放射線検出器14Cは、近傍に配置された放射線検出器14B(特に端部14Bd)で生じた散乱線が到達することにより、特に放射線検出器14Bの近傍に位置する端部14Ccにおいて散乱線量が多く、Scに示すように体厚分布の誤差が大きくなる。
上記のような、複数の放射線検出器を組み合わせてなる長尺撮影用の放射線検出器を用いた放射線撮影システムにおいて、ガラス基板の材質やシンチレータの材質によって、放射線検出器を放射線が通過する際に生じる散乱線量も大きくなる場合がある。このため、本発明の手法により参照画像の補正分布を取得し、取得した補正分布によって、体厚分布の誤差を補正することが大変有益である。この場合には、近傍に配置された放射線検出器で生じる散乱線による体厚分布の誤差を好適に抑制して、被検体の体厚分布を正確に算出することができる。また、複数の放射線検出器を組み合わせて1つの長尺撮影用放射線検出器として用いる場合に、個々の放射線検出器ごとに参照画像の補正分布(図13のTrA、TrB、Trc参照)と被検体画像の体厚分布を算出し、個々の放射線検出器ごとに、対応する体厚分布から補正分布を減算して補正分布を取得するようにしてもよい。また、各放射線検出器で得られる放射線画像を結合するように周知の画像処理をおこなって、長尺撮影の撮影領域全体の参照画像を生成して、参照画像の補正分布(図13のTrABC参照)を算出し、長尺撮影の撮影領域全体の被検体画像を生成して被検体画像の体厚分布を算出し、体厚分布から補正分布を減算して補正分布を取得するようにしてもよい。なお、図13の長尺撮影用放射線検出器の補正分布TrABCにおいて、放射線検出器14Aと14Bの重複領域は参照画像に用いられた放射線検出器14Aの重複領域に関する補正分布とされ、放射線検出器14Aと14Cの重複領域は、参照画像に用いられた放射線検出器14Cの重複領域に関する補正分布とされている。
また、分割領域に合わせて照射範囲を限定して分割領域ごとに異なる撮影時に放射線撮影を行う分割撮影においても、本発明による参照画像の補正分布を取得して、取得した補正分布によって、被検体画像の体厚分布の誤差を補正することが好ましい。図14に、分割撮影の際の放射線検出器14の分割領域の例を示す。図14に示す例では、被検体の関心部位を撮影可能な所定のサイズの5個の分割領域141、142、143、144、145が放射線検出器14に対して設定されている。分割撮影においては、例えば、分割領域に合わせて照射範囲を限定するために分割領域に対応する大きさの開口部を有する放射線遮蔽物(放射線遮蔽板など)を用いる。そして、被検体と放射線検出器の間に、分割領域と開口部が対向するように放射線遮蔽板を配置して放射線撮影することを、各分割領域に対して繰り返すことにより、各分割領域141、142、143、144、145に、所望の撮影対象部位を表す放射線画像がそれぞれ取得される。なお、各分割撮影後に放射線検出器の読み出しを行って、各分割領域の放射線画像を毎回取得してもよく、全ての分割領域に対する分割撮影が終了した後に一括して放射線検出器の読み出しを行って、全分割領域の放射線画像をまとめて取得してもよい。
分割撮影においては、各分割領域に対して参照画像の補正分布をそれぞれ取得して、各分割領域に対応する位置の補正分布を用いて、各分割領域で撮影された分割画像の体厚分布の補正を行ってもよい。また、各分割領域における補正分布がほぼ同等になるとみなせる場合には、1つの分割領域に対応する補正分布を取得し、全ての分割領域の補正分布として用いてもよい。この場合には、補正分布を取得する処理の計算負荷を低減し、処理の高速化のために好適である。
また、画像診断機器を用いて対象部位の観察を動画等で観察しながら検査・治療等を行うIVR(Interventional Radiology)技術において、放射線透視撮影装置を利用する際、開口部を有する放射線遮蔽物などを用いて、被検体の対象部位を含む所定の大きさの撮影領域に放射線を照射する範囲を限定して複数回の放射線撮影を行う場合がある。このような場合にも同様に、1つの撮影領域において補正分布を取得し、後続の放射線撮影の撮影領域の補正分布として共通して用いてもよい。また、被検体の処置の進行などに応じて、所定の大きさの撮影領域を少しずつずらしながら複数回の放射線撮影を行う場合にも、各ずれた撮影領域における補正分布がほぼ同等になるとみなせる場合には、1つの撮影領域において補正分布を取得して、各ずれた位置の撮影領域の補正分布として用いてもよい。この場合にも補正分布を取得する処理の計算負荷を低減し、処理の高速化のために好適である。
なお、本発明によって得られた補正後の被検体の体厚分布(補正体厚分布)は、被検体画像に対して、被検体の体厚に応じた画像処理条件を決定するための種々の処理に用いることができる。例えば、本発明によって得られた補正後の体厚分布を静止画像または動画像である被検体画像に対する、濃度、コントラストなどの階調処理、ノイズ抑制処理、ダイナミックレンジ調整処理、周波数強調処理などに用いることが考えられる。また、本発明により得られた補正後の体厚分布を、被検体画像に対して、体厚に応じた撮影条件を決定するためのあらゆる処理に用いることができる。本発明により得られた補正後の体厚分布を用いて各画像処理条件または撮影条件を決定した場合には、被検体画像に対する正確な体厚分布が適用されることにより、決定された画像処理条件または撮影条件による画質改善効果を高めることができる。
また、例えば、管電圧を異ならせて高エネルギーと低エネルギーの放射線をそれぞれ撮影して取得された2つの放射線画像の違いによって放射線画像を取得するエネルギーサブトラクション技術や経時サブストラクション技術(T−sub技術)において、本発明によって得られた被検体の補正後の体厚分布に応じて、高エネルギー画像から低エネルギー画像を減算する際に体厚の大きい位置における高エネルギー画像の重み付けを大きくするように重み係数を決定する処理を行ってもよい。この場合には、被検体画像に対する正確な体厚分布が適用されることにより、被検体の厚さに応じて放射線の線質が変動するビームハードニング現象の発生の影響を低減して、処理後画像の画質を好適に改善することができる。
また、放射線透視画像の適用技術や、トモシンセシス技術など同一の被検体を複数回撮影して複数の放射線画像を取得する技術分野においては、最初に撮影された被検体画像に対して本発明の手法により被検体の補正後の体厚分布を取得し、取得した体厚分布に基づいて後続して撮影される被検体の撮影条件を決定することが好ましい。後続して撮影される被検体画像を、体厚に応じた適切な撮影条件で撮影できるため、後続して撮影される被検体画像を診断に適した画質の画像とすることができる。また、例えば、トモシンセシス技術により得られた3次元画像からユーザ指定に応じたスライス位置における断層画像を生成表示する際に、被検体の補正後の体厚分布に基づいて、スライス位置の範囲をより正確に特定して、スライス位置を選択可能に示すスライダーバーなどのスライス間隔等を示す指標を表示することができる。また、放射線透視画像の適用技術など同一の被検体を同じ撮影位置から複数回撮影して複数の放射線画像を取得する技術分野においては、最初に参照画像を取得して本発明の手法により補正分布を取得し、取得した補正分布に基づいて後続して撮影される各被検体画像の体厚分布を補正して補正体厚分布を取得することが好ましい。
上記の各実施形態はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきものではない。本発明の態様は、上述した個々の実施例(第1〜第3実施形態、その他の変形例および応用例)に限定されるものではなく、個々の実施例の各要素のいかなる組合せも本発明に含み、また、当業者が想到しうる種々の変形も含むものである。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
また、上記の実施形態におけるシステム構成、ハードウェア構成、処理フロー、モジュール構成、ユーザインターフェースや具体的処理内容等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。たとえば、画像解析装置の構成要素の一部または全部は、1台のワークステーションにより構成されたものであってもよく、ネットワークを介して接続された一台以上のワークステーション、サーバ、記憶装置によって構成されたものであってもよい。
また、上記実施形態においては、放射線検出器14を用いて被写体の放射線画像(被検体画像または参照画像など)を撮影する撮影装置10において取得した放射線画像を用いて体厚分布決定処理と補正分布決定処理を行っているが、特開平8−266529号公報、特開平9−24039号公報等に示される放射線検出体としての蓄積性蛍光体シートに被写体の放射線画像情報を蓄積記録し、蓄積性蛍光体シートから光電的に読み取ることにより取得した放射線画像を用いた場合においても、本発明を適用できることはもちろんである。