ところで、上述した固体酸化物形燃料電池において良好な発電特性を引き出すためには、高温で作動させる必要がある。この場合、発電時の発熱によって燃料電池セルを構成する金属部材やセラミック部材などが膨張し、それら部材の熱膨張差によって部材が反ってしまうことが考えられる。そして、その反りによって、例えば電極と集電体との間の一部、特に電極のコーナー部において剥離が発生してしまうことがある。この結果、集電体と電極とを通じて三相界面(反応ガスと電極と固体電解質層との界面)に至るまでの電気抵抗(以下集電抵抗という)が大きくなり、また接触している部分にて電流集中が起こることでセル電圧が大きく低下してしまうといった問題が生じる。
また、特許文献1のように、電極の全体に格子状の導電層(導電性細条)を設置すると、ガス拡散性の低下によって抵抗が増大し、電圧ロスが大きくなってしまうといった問題が生じる場合がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電極と集電体との一部が離間した場合でも、セル特性の悪化を回避することができる燃料電池セルを提供することにある。また、別の目的は、上記燃料電池セルを用い、電圧ロスがなく効率よく発電することができる燃料電池セルスタックを提供することにある。
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、集電のための複数の突起を有する集電体に隣接して配置され、燃料極、空気極及び電解質層を有する平板状部材として構成され、前記燃料極及び前記空気極のうちの少なくとも一方の電極の表面上に、前記集電体の複数の突起が接触しうる集電体接触部位が散点状に設定された燃料電池セルであって、前記電極の表面上に設けられた導電層を備え、前記導電層は、複数の前記集電体接触部位の内部領域に各々設けられ、前記集電体の突起が当接する当接パッド部と、隣接する前記集電体接触部位の当接パッド部間を繋げるように設けられる結線部とを有し、前記当接パッド部の幅よりも前記結線部の幅が狭くなっていることを特徴とする燃料電池セル。
手段1に記載の発明によると、燃料極、空気極及び電解質層によって平板状部材として燃料電池セルが構成されている。このため、燃料電池セルの発電時には、構成部材の熱膨張差に基づいて燃料電池セルが変形し、そのセルの熱変形によって電極の特定部分に反りが生じることがある。そして、電極の反りによって特定部位に位置する集電体接触部位から集電体の突起が離間し、それらの接触がとれなくなる場合がある。本発明の燃料電池セルでは、電極の表面上における複数の集電体接触部位の内部領域に当接パッド部が各々設けられるとともに、隣接する集電体接触部位の当接パッド部間を繋げるように結線部が設けられている。従って、電極の反りによって特定部位の集電体接触部位と集電体の突起との接触がとれなくなった場合でも、それと隣接する集電体接触部位の当接パッド部や結線部を通じて十分な集電能力を確保することができる。また、導電層における結線部は、集電体接触部位の内部領域に設けられる当接パッド部よりも幅が狭いため、ガス拡散性の低下によるセル特性の低下を抑制することができる。このため、本発明の燃料電池セルを用いて燃料電池を構成すると、電圧ロスがなく効率よく発電することができる。
導電層を構成する結線部は、電極における特定部位に位置する集電体接触部位の当接パッド部と、それに隣接する集電体接触部位の当接パッド部とを繋ぐように形成されている。
電極は平面視で四角形状であり、結線部は、電極のコーナー部に位置する集電体接触部位の当接パッド部と、それに隣接する集電体接触部位の当接パッド部とを繋ぐように形成されていてもよい。燃料電池セルの電極が四角形状である場合、電極のコーナー部の反りが大きくなると、コーナー部に位置する集電体接触部位が集電体の突起から離間し易くなる。本発明の燃料電池セルでは、コーナー部の集電体接触部位とそれに隣接する集電体接触部位とが導電層の当接パッド部及び結線部を介して接続されている。このため、集電体は、コーナー部の集電体接触部位から離間した場合でも、コーナー部に隣接する集電体接触部位の当接パッド部及び結線部を介して、離間したコーナー部の集電体接触部位から集電することができる。従って、燃料電池セルにおける発電効率の悪化を回避することができる。
燃料電池セルにおいて、電極の外縁部や中央部の反りが大きくなる場合もある。この場合には、結線部は、電極の外縁部に位置する複数の集電体接触部位の当接パッド部を繋ぐように設けられるとともに、電極の対角線上に位置する複数の集電体接触部位の当接パッド部を繋ぐように設けられていてもよい。このように当接パッド部及び結線部を形成すると、集電体は、外縁部や中央部の集電体接触部位から離間した場合でも、隣接する集電体接触部位の当接パッド部及び結線部を介して外縁部や中央部の集電体接触部位から確実に集電することができる。従って、燃料電池セルにおける発電効率の悪化を回避することができる。
また、電極が平面視で円形状である場合もある。この場合、結線部は、同一円周上に位置する複数の集電体接触部位の当接パッド部を繋ぐように設けられていてもよい。このようにすると、集電体は、円周上にあるいずれかの集電体接触部位から離間した場合でも、隣接する集電体接触部位の当接パッド部及び結線部を介してその離間した集電体接触部位から集電することができる。従って、燃料電池セルにおける発電効率の悪化を回避することができる。
結線部の個々の太さ(幅)は、電極の平面方向に沿って供給される反応ガスの流入側よりも反応ガスの流出側のほうが太く(広く)なっていてもよい。電極の平面内において、結線部の太さを均一に形成すると、電極に供給される反応ガス(燃料ガス及び酸化剤ガス)の流れに応じて、反応ガスの流入側と流出側とで発電量が不均一となる(即ち、発電量ばらつきが発生する)場合がある。これに対して、反応ガスの流れに応じて、流入側よりも流出側のほうの結線部を太く形成することで、面内の電流密度を均一に近づけることが可能となり、電極の平面内においてガス流入側とガス流出側とで発電量ばらつきを抑えることができる。
導電層において集電体接触部位の当接パッド部を除く部分(集電体接触部位からはみ出る結線部などの部分)の面積割合は、集電体接触部位の面積を除いた電極の表面積に対して、1%以上10%以下である。ここで、導電層において当接パッド部を除く部分の面積割合が1%未満である場合、隣接する集電体接触部位の当接パッド部間を接続する結線部の幅が狭くなるため、結線部の集電抵抗が大きくなり、セル特性が低下してしまう。また、導電層において当接パッド部を除く部分の面積割合が10%を越える場合、結線部の面積が大きくなりすぎることで、電極におけるガス拡散性が低下し、セル特性が低下してしまう。従って、燃料電池セルにおいて、当接パッド部を除く部分の面積割合を1%以上10%以下とすることにより、セル特性の低下を回避しつつ、十分な集電能力を確保することができるため、効率よく発電することができる。因みに、特許文献1に開示されている従来の燃料電池では、格子状の導電性細条が集電体として機能するものであり、電極表面には、導電性細条(集電体)の接触部位からはみ出る導電層は設けられていない。
結線部は、集電体接触部位の当接パッド部間を最短距離で直線的に繋いでいてもよい。この場合、結線部の表面積が小さくなることから、導電層の設置に起因したガス拡散性の低下による電圧ロスを抑えることができる。
複数の集電体接触部位は、同一の形状及び面積を有し、電極の表面上において縦横に格子状に規則正しく設定されていてもよい。このようにすると、燃料電池セルにおいて集電体の突起と電極表面との間に反応ガスの流路を確保しつつ、本目的の達成が可能となる。
導電層は、電極の形成材料よりも低い抵抗値を有する導電材料を用いて形成される。具体的には、導電層は、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)の少なくとも1つを含む導電材料を用いて形成される。このような導電材料を用いて導電層を形成すると、導電層を介して電荷移動が容易となり、集電効率を高めることができる。
燃料電池セルは固体酸化物形燃料電池に用いられ、導電層が形成される電極は燃料極でも空気極でも良い。空気極である場合を例として挙げると、空気極及び集電体間での電子の授受が導電層を介して効率よく行われ、発電効率を十分に高めることができる。
燃料電池セルを構成する電解質層が固体酸化物層である場合、その形成材料としては、例えばZrO2系セラミック、LaGaO3系セラミックなどがある。
空気極は、酸化剤となる酸化剤ガスと接触し、燃料電池セルにおける正電極として機能する。ここで、空気極の形成材料としては、例えば、金属材料、金属の酸化物、金属の複合酸化物などを挙げることができる。金属材料の好適例としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh等やそれらの合金などがある。金属の酸化物の好適例としては、例えば、La、Sr、Ce、Co、Mn、Feの酸化物(La2O3、SrO、CeO2、Co2O3、MnO2、FeO)などがある。金属の複合酸化物の好適例としては、例えば、La、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe、Mnを含有する複合酸化物(La1−xSrxCoO3系複合酸化物、La1−xSrxFeO3系複合酸化物、La1−xSrxCo1−yFeyO3系複合酸化物、La1−xSrxMnO3系複合酸化物、Pr1−xBaxCoO3系複合酸化物、Sm1−xSrxCoO3系複合酸化物)などがある。
燃料極は、還元剤となる燃料ガスと接触し、燃料電池セルにおける負電極として機能する。ここで、燃料極の形成材料としては、例えば、希土類元素(Sc、Yなど)により安定化されたZrO2系セラミック、及び、希土類元素(Sm、Gdなど)をドープしたCeO2系セラミック等のうち、少なくとも1つのセラミック材料と、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh、Ni、Fe等の金属材料及びそれら金属材料の合金のうちの少なくとも1つと、を混合した金属セラミック材料の混合物(サーメット)を使用することができる。
また、上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、手段1に記載の燃料電池セルと、集電のための複数の突起を有し、前記複数の突起の先端面が前記電極の表面上に設定された前記集電体接触部位に接触するように配置される集電体とを備え、前記燃料電池セルと前記集電体とが複数個ずつ積層されていることを特徴とする燃料電池セルスタックがある。
手段2に記載の発明によると、手段1の燃料電池セルと集電体とが複数個ずつ積層されることで燃料電池セルスタックが構成されている。この燃料電池セルスタックでは、発電時の熱変形によって燃料電池セルにおける電極の特定部位の集電体接触部位と集電体の突起との接触がとれなくなった場合であっても、隣接する集電体接触部位の当接パッド部や結線部を通じて十分な集電能力を確保することができる。従って、本発明の燃料電池セルスタックでは、電圧ロスがなく効率よく発電することができる。
燃料電池セルスタックにおいて、集電体接触部位の内側領域に設けられた当接パッド部を介して突起の先端面が電極の表面上に接合されていてもよい。このようにすると、集電体の各突起と電極との間の接触抵抗を低く抑えることができ、集電効率を高めることができる。
また、上記の燃料電池セルスタックを用いて構成される燃料電池としては、固体酸化物形燃料電池(SOFC)が挙げられる。本発明の燃料電池セルとしては、固体酸化物形電解セル(SOEC)などの固体酸化物形電気化学セルを含むものとする。
以下、本発明を燃料電池に具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
本実施の形態の燃料電池300は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。図1に示されるように、燃料電池300は、発電の最小単位である燃料電池セル311を複数積層してなる燃料電池セルスタック312を備えている。
燃料電池セルスタック312は、例えば縦180mm×横180mm×高さ80mmの略直方体形状をなしている。本実施の形態において、燃料電池セルスタック312を構成する燃料電池セル311の積層数は、20枚程度となっている。また、燃料電池セルスタック312には、燃料電池セル311の積層方向における両端部(図1では上端部と下端部)に、エンドプレート14,15が配置されている。さらに、セルスタック312の周縁部には、同スタック312を厚さ方向に貫通する複数の貫通穴が形成されている。そして、各貫通穴に締結ボルト18を挿通させ、セルスタック312の下面から突出するボルト18の下端部分にナット19が螺着されている。このように締結ボルト18及びナット19を用いて各エンドプレート14,15を各燃料電池セル311の積層方向に締め付けることで、複数の燃料電池セル311が固定されるようになっている。また、セルスタック312の両端部に配置されるエンドプレート14,15が、セルスタック312から出力される電流の出力端子となっている。
図2に示されるように、セルスタック312を構成する燃料電池セル311は、空気極21、燃料極22及び固体電解質層23を有する平板状部材として構成され、発電反応により電力を発生する。また、セルスタック312には、燃料電池セル311に加えて、コネクタプレート24、セパレータ25、空気極側集電体27及び燃料極側集電体28等が設けられ、それらが複数個ずつ積層されている。
より詳しくは、コネクタプレート24は、ステンレスなどの導電性材料によって形成されており、燃料電池セル311の厚み方向の両側に一対配置される。各コネクタプレート24により板厚方向での燃料電池セル311間の導通が確保される。隣り合う燃料電池セル311の間に配置されるコネクタプレート24は、インターコネクタとなり、隣り合う燃料電池セル311を区分する。
セパレータ25は、ステンレスなどの導電性材料によって形成されており、矩形状の開口部29を中央部に有する略矩形枠状をなしている。セパレータ25は、燃料電池セル311間の仕切り板として機能する。
固体電解質層23は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミック材料(酸化物)によって矩形板状に形成されている。固体電解質層23は、セパレータ25の下面に固定されるとともに、セパレータ25の開口部29を塞ぐように配置されている。固体電解質層23は、酸素イオン伝導性固体電解質体として機能するようになっている。
また、固体電解質層23の上面には、セルスタック312に供給された酸化剤ガスに接する空気極21が貼付され、固体電解質層23の下面には、同じくセルスタック312に供給された燃料ガスに接する燃料極22が貼付されている。即ち、空気極21及び燃料極22は、固体電解質層23の両側に配置されている。また、空気極21は、セパレータ25の開口部29内に配置され、セパレータ25と接触しないようになっている。なお、本実施の形態の燃料電池セル311では、セパレータ25の下方に燃料室31が形成されるとともに、セパレータ25の上方に空気室32が形成されている。
本実施の形態の燃料電池セル311において、空気極21は、金属の複合酸化物であるLSCF(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3)によって矩形板状に形成されている。また、燃料極22は、ニッケルとイットリア安定化ジルコニアとの混合物(Ni−YSZ)によって矩形板状に形成されている。燃料電池セル311において、空気極21はカソード層として機能し、燃料極22はアノード層として機能する。
空気極21は、空気極側集電体27によってコネクタプレート24に電気的に接続され、燃料極22は、燃料極側集電体28によってコネクタプレート24に電気的に接続されている。空気極側集電体27は、例えばLa、Mn、Ti、Si、C、Ni、Al、Zr等を微量添加したSUS430系フェライト合金等の緻密な金属板からなる。一方、燃料極側集電体28は、燃料ガスの通過が可能なように、例えばニッケル製の多孔体からなる。
図2〜図4に示されるように、空気極側集電体27は、集電のための複数の突起35を有しており、それら突起35の先端面が空気極21の表面上にて散点状に設定された集電体接触部位37に接触するよう燃料電池セル311に隣接して配置されている。本実施の形態において、複数の集電体接触部位37は、例えば四角形状の領域であり、同一の形状及び面積を有し、空気極21の表面上において縦横に格子状に規則正しく設定されている。空気極側集電体27における複数の突起35は、同一の形状及びサイズを有する四角形状の突起であり、縦横に格子状に規則正しく配置されている。
図4に示されるように、本実施の形態の燃料電池セル311は、空気極21の表面上において、導電層338が設けられている。導電層338は、集電体接触部位37の内側領域に各々設けられ、空気極側集電体27の突起35が当接する当接パッド部339と、隣接する集電体接触部位37の当接パッド部339間を繋ぐように形成された結線部340とを有する。具体的には、空気極21は平面視で四角形状である。導電層338は、空気極21における特定部位としてのコーナー部41に位置する集電体接触部位37の当接パッド部339とそれに隣接する2つの集電体接触部位37の当接パッド部339とをそれぞれ繋ぐように、平面視L字状に形成されている。導電層338は、銀パラジウム合金(パラジウムの含有量が1〜10mol%の合金)からなり、その厚さは、例えば数十μm程度である。なお、空気極21の各コーナー部41以外に位置する集電体接触部位37の当接パッド部339間には、それら内側領域を繋ぐ結線部340は設けられていない。ここで、集電体接触部位37の内側領域とは、空気極側集電体27における四角形状の突起35が接触する領域であって、集電体接触部位37の中央部の領域、つまり四角形状の内側に位置する領域のことを言う。
燃料電池セル311において、空気極21の表面上にて散点状に設定された複数の集電体接触部位37の内部領域には、それら領域全体を覆うように当接パッド部339が形成されており、当接パッド部339を介して空気極21と空気極側集電体27とが接合されている(図2参照)。本実施の形態の燃料電池セル311では、各集電体接触部位37の内部領域に設けられる当接パッド部339の幅よりも結線部340の幅が狭くなっている。また、燃料電池セル311では、導電層338において集電体接触部位37の当接パッド部339を除く部分(集電体接触部位37の内側領域からはみ出ている結線部340)の面積割合は、集電体接触部位37の面積を除いた空気極21の表面積に対して5%程度となっている。なお、本実施の形態では、導電層338の結線部340は、集電体接触部位37の内側領域(当接パッド部339)から外側領域に延展する展開パターンであり、隣り合う集電体接触部位37の間に形成されている。つまり、結線部340は、各集電体接触部位37の当接パッド部339間を繋ぐ導線として機能する部分である。
そして、燃料電池300の発電時には、上記のように形成した導電層338(当接パッド部339及び結線部340)を介して空気極21と空気極側集電体27との間で発電反応に伴う電子の授受が行われるようになっている。
本実施の形態の燃料電池セルスタック312には、各燃料電池セル311の燃料室31に燃料ガスを供給する燃料供給経路(図示略)と、燃料室31から燃料ガスを排出する燃料排出経路(図示略)とが設けられている。また、セルスタック312には、各燃料電池セル311の空気室32に空気を供給する空気供給経路(図示略)と、空気室32から空気を排出する空気排出経路(図示略)とが設けられている。各供給経路及び各排出経路は、燃料電池セルスタック312の側面に設けられたジョイント部(図示略)を介して外部配管(図示略)に接続されている。
次に、本実施の形態における燃料電池セルスタック312の製造方法について説明する。
まず、例えばSUS430からなる板材を打ち抜いて、コネクタプレート24やセパレータ25を製造する。また、燃料極22のグリーンシート上に、固体電解質層23の材料を印刷し、その上に空気極21の材料を印刷した後焼成する。この焼成によって、空気極21、燃料極22及び固体電解質層23を有する平板状の燃料電池セル311が製造される。
その後、燃料電池セル311とセパレータ25とをロウ付けにて固定する。さらに、空気極側集電体27と燃料極側集電体28とを、それぞれ隣接する上部のコネクタプレート24と下部のコネクタプレート24とにロウ付けによって固定する。
また、Ag−Pd粉末(Pd:1mol%)とエチルセルロースと有機溶剤とを三本ロール混合することで、Ag−Pd導電性ペーストを作製する。次に、空気極21の表面に、その導電性ペーストをスクリーン印刷し、その後乾燥する。ここでは、各集電体接触部位37に対応する当接パッド部339のパターンとコーナー部41の集電体接触部位37を繋ぐ結線部340のパターンとを導電性ペーストによって形成する。
そして、上述したコネクタプレート24、セパレータ25をロウ付けした燃料電池セル311、空気極側集電体27、燃料極側集電体28などを一体に組み付けるとともに、燃料電池セル311を含むそれら部材を複数積層することで燃料電池セルスタック312を構成する。またこのとき、燃料電池セルスタック312において、貫通孔に締結ボルト18を嵌め込むとともにその先端にナット19を螺合させる。この結果、各燃料電池セル311をその積層方向に押圧した状態で一体化させることにより、燃料電池セルスタック312が組み付けられる。
上述した導電性ペーストは、燃料電池300の運転温度(例えば700℃)において、エチルセルロースなどが除去されることで導電層338(銀パラジウム合金)となる。また、燃料電池300の運転温度には、導電層338の銀パラジウム合金が軟化して空気極21と空気極側集電体27とが密着する。なお、運転停止時において、集電体接触部位37の当接パッド部339は、空気極21と空気極側集電体27とを接合して一体化している。
次に、本実施の形態の燃料電池300における燃料電池セル311の作用について説明する。
燃料電池300において、例えば、その燃料電池300を稼働温度に加熱した状態で、燃料供給経路から燃料室31に燃料ガスを供給するとともに、空気供給経路から空気室32に酸化剤ガスを供給する。このとき、燃料ガス中の水素と酸化剤ガス中の酸素とが固体電解質層23を介して反応(発電反応)し、空気極21を正極、燃料極22を負極とする直流の電力が発生する。
燃料電池300の稼動時には、各燃料電池セル311における発電反応によって温度が上昇し700℃の高温となる。このとき、空気極21、燃料極22及び電解質層23のセル部材やコネクタプレート24やセパレータ25等の金属部材が熱によって膨張する。そして、それら部材の熱膨張差に基づいて燃料電池セル311が変形し、空気極21のコーナー部41に反りが生じることがある。図5に示されるように、空気極21においてコーナー部41の反りが大きくなる場合、コーナー部41に位置する集電体接触部位37から空気極側集電体27の突起35が離間し、それらの接触がとれなくなる場合がある。本実施の形態の燃料電池セル311では、空気極21の表面上に導電層338(当接パッド部339及び結線部340)が設けられており、結線部340によってコーナー部41に位置する集電体接触部位37の当接パッド部339とそれに隣接する集電体接触部位37の当接パッド部339とが電気的に接続されている。このため、空気極側集電体27はコーナー部41の集電体接触部位37から離間した場合であっても、コーナー部41に隣接する集電体接触部位37の当接パッド部339及び結線部340を介してコーナー部41の集電体接触部位37から集電される。
本実施の形態のセルスタック312は、燃料電池セル311を複数積層して直列に接続している。このため、燃料電池300では、空気極21に電気的に接続される上側エンドプレート14(正極)と、燃料極22に電気的に接続される下側エンドプレート15(負極)とから直流電力が出力される。
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施の形態の燃料電池セル311では、空気極21の表面において、各コーナー部41に位置する集電体接触部位37と、それに隣接する2つの集電体接触部位37とをそれぞれ繋ぐように、平面視L字状の導電層338(当接パッド部339及び結線部340)が形成されている。このようにすると、燃料電池300の稼動時に、コーナー部41に位置する集電体接触部位37から空気極側集電体27の突起35が離間した場合でも、コーナー部41に隣接する集電体接触部位37の当接パッド部339及び結線部340を介してコーナー部41の集電体接触部位37の当接パッド部339から集電することができる。また、導電層338における結線部340は、集電体接触部位の内部領域に設けられる当接パッド部339よりも幅が狭いため、ガス拡散性の低下によるセル特性の低下を抑制することができる。従って、燃料電池セル311における発電効率の悪化を回避することができ、電圧ロスがなく効率よく発電することができる。
(2)本実施の形態の燃料電池セル311では、導電層338の結線部340(当接パッド部339を除く部分)の面積割合は、集電体接触部位37の面積を除いた空気極21の表面積に対して5%程度となっている。ここで、結線部340の面積割合が1%未満である場合、隣接する集電体接触部位37間を接続する結線部340の幅が狭くなるため、結線部340の集電抵抗が大きくなり、セル特性が低下してしまう。また、結線部340の面積割合が10%を越える場合、導電層338の面積が大きくなりすぎることで、空気極21におけるガス拡散性が悪化し、セル特性が低下してしまう。従って、本実施の形態の燃料電池セル311のように、導電層338における結線部340の面積割合を5%とすることにより、セル特性の低下を回避しつつ、十分な集電能力を確保することができ、効率よく発電することができる。
(3)本実施の形態の燃料電池セル311では、複数の集電体接触部位37の内部領域に当接パッド部339が設けられており、当接パッド部339を介して空気極21と空気極側集電体27とが接合されている。このように構成すると、空気極側集電体27の各突起35と空気極21との間の接触抵抗を低く抑えることができ、集電効率を十分に高めることができる。
(4)本実施の形態の燃料電池セル311において、結線部340は、集電体接触部位37の当接パッド部339間を最短距離で直線的に繋いでいる。この場合、結線部340の表面積が小さくなり、結線部340を設置することによるガス拡散性の低下を抑えることができる。
(5)本実施の形態の燃料電池セル311において、複数の集電体接触部位37は、同一の形状及び面積を有し、空気極21の表面上において縦横に格子状に規則正しく設定されている。このようにすると、燃料電池セル311において空気極側集電体27の突起35と空気極21の表面との間に酸化剤ガスの流路を確保しつつ、空気極側集電体27によって確実に集電することができる。
(6)本実施の形態の燃料電池セル311において、導電層338は、空気極21の形成材料よりも低い抵抗値を有する導電材料(具体的には銀パラジウム合金)を用いて形成される。このような導電材料を用いて導電層338を形成すると、導電層338を介して電荷移動が容易となり、燃料電池セル311の集電効率をより高めることができる。
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、空気極21の電極平面におけるコーナー部41にL字状の導電層338(当接パッド部339及び結線部340)を形成し、コーナー部41に位置する集電体接触部位37と、それに隣接する集電体接触部位37とを接続するようにしていたが、これに限定されるものではない。例えば、電極中央部21a及び電極外縁部21bのいずれかに位置する集電体接触部位37から空気極側集電体27の突起35から剥離する可能性がある場合には、図6に示されるような導電層343(当接パッド部344及び結線部345)を形成してもよい。図6においては、電極外縁部21bに配置している複数の集電体接触部位37の当接パッド部344間、及び空気極21の対角線上に配置している複数の集電体接触部位37の当接パッド部344間を繋げるように結線部345が形成されている。このように導電層343を形成すると、電極中央部21aまたは電極外縁部21bにある集電体接触部位37から空気極側集電体27の突起35が離間した場合でも、隣接する集電体接触部位37の当接パッド部344及び結線部345を介してその離間した集電体接触部位37の当接パッド部344から集電することができる。また、導電層343においても各集電体接触部位37の内部領域に設けられる当接パッド部344の幅よりも結線部345の幅が狭いため、ガス拡散性の低下によるセル特性の低下を抑制することができる。従って、導電層343を形成した場合でも、燃料電池セル311における発電効率の悪化を回避することが可能となる。
・上記実施の形態では、四角形状の空気極21(電極)に導電層338,343を形成するものであったが、電極形状は四角形状に限定されるものではなく、円形状や四角形以外の多角形状の空気極に導電層を形成してもよい。図7には、円形状の空気極351の電極表面に導電層352(当接パッド部353及び結線部354,355)を形成した具体例を示している。図7の空気極351においても、空気極側集電体が接触する複数の集電体接触部位356が散点状に設けられている。また、空気極351において、直径の異なる2つの円周上となる位置に複数の集電体接触部位356がそれぞれ配設されている。そして、空気極351において、同一円周上に位置する各集電体接触部位356について隣接する集電体接触部位356の当接パッド部353間をそれぞれ繋げるように結線部354が設けられている。さらに、空気極351において、電極外縁部側における右端、左端、上端及び下端の4つの箇所にある集電体接触部位356の当接パッド部353とその集電体接触部位356に対して内側に隣接する集電体接触部位356の当接パッド部353とをそれぞれ繋げるように結線部355が形成されている。このように導電層352を形成すると、特定部位の集電体接触部位356から空気極側集電体の突起が剥離した場合でも、それに隣接する集電体接触部位356の当接パッド部353及び結線部354,355を介して集電することができる。また、導電層352においても各集電体接触部位356の内部領域に設けられる当接パッド部353の幅よりも結線部354,355の幅が狭いため、ガス拡散性の低下によるセル特性の低下を抑制することができる。従って、円形状の空気極351の電極表面に導電層352を形成した場合でも、燃料電池セル311における発電効率の悪化を回避することができる。
・上記実施の形態の燃料電池セル311では、空気極21の表面において、各コーナー部41に位置する集電体接触部位37の当接パッド部339と、それに隣接する2つの集電体接触部位37の当接パッド部339とをそれぞれ繋ぐように、結線部340が形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、空気極21の表面上における全て集電体接触部位37の当接パッド部339を繋げるように結線部340を形成してもよい。また、結線部340の太さは、集電体接触部位37の内部領域における当接パッド部339の幅よりも狭く形成されるものであれば、それぞれ太さが異なっていてもよい。図8には、その導電層360(当接パッド部361及び結線部362)の具体例を示している。より詳しくは、図8の導電層360において、隣接する集電体接触部位37の当接パッド部361間を繋げる結線部362の個々の太さ(幅)は、電極の平面方向に沿って供給される反応ガス(燃料ガスF1及び酸化剤ガスA1)の流入側よりも反応ガスF1,A1の流出側のほうが太く(広く)なっている。なお、空気極21には、図8の右側から左側に向けて酸化剤ガスA1が供給される。また、空気極21の裏側に設けられた燃料極22には、図8の上側から下側に向けて燃料ガスF1が供給される。従って、導電層360では、右上にある結線部362が最も細く形成され、左下にある結線部362が最も太く形成されている。このように、電極の平面方向に沿って供給される反応ガスF1,A1の流れに応じて、結線部362の太さを変えて導電層360を形成すると、電極平面内における発電量ばらつきを抑えることができ、発電を効率よく行うことができる。
また、図8に示す導電層360は、空気極21の表面内において、電極に供給される反応ガスF1,A1の流れに応じて、結線部362に粗密を有するように形成されていたが、図9に示されるような導電層365を形成してもよい。図9に示されるように、導電層365は、集電体接触部位37の内部領域に各々設けられる当接パッド部366を有するとともに、各コーナー部41において隣接する2つの集電体接触部位37の当接パッド部366間を繋ぐように形成された結線部367を有している。さらに、導電層365は、当接パッド部366から集電体接触部位37の外側にはみ出るように設けられるパッド拡張部368を有している。
空気極21には、図9の右側から左側に向けて酸化剤ガスA1が供給される。また、空気極21の裏側に設けられた燃料極22には、上側から下側に向けて燃料ガスF1が供給される。導電層365は、酸化剤ガスA1及び燃料ガスF1の流れに応じて、流入側よりも流出側のほうが結線部367及びパッド拡張部368の面積が大きくなるよう形成されている。具体的には、コーナー部41において隣接する各集電体接触部位37の当接パッド部366間を繋ぐ結線部367の太さ(幅)は、流入側よりも流出側のほうが太く(広く)なっている。また、集電体接触部位37からはみ出ているパッド拡張部368の面積(幅)は、流入側よりも流出側のほうが大きく(広く)なっている。ここで、空気極21の表面内において導電層(結線部やパッド拡張部)を均一に形成すると、電極の平面方向に沿って供給される反応ガスF1,A1の向きに応じて、反応ガスF1,A1の流入側と流出側とで発電量が不均一となる場合がある。これに対して、図9に示されるように、電極の平面方向に沿って供給される反応ガスF1,A1の流れに応じて、結線部367及びパッド拡張部368の粗密が不均一となるよう導電層365を形成すると、電極平面内において発電量を均一にすることができる。なお、図9の導電層365においても、当接パッド部366を除く部分(結線部367及びパッド拡張部368)の面積割合を、集電体接触部位37の面積を除いた空気極21の表面積に対して、1%以上10%以下としている。このようにすると、ガス拡散性の低下を抑えつつ、効率よく発電することができる。
・上記実施の形態では、空気極21,351の表面に導電層338,343,352,360,365を形成するものであったが、燃料極22の表面に導電層を形成してもよい。なおこの場合でも、燃料極側集電体28は複数の突起を有し、燃料極22には燃料極側集電体28の突起が接触しうる集電体接触部位が散点状に設定される。そして、燃料極22の表面には、燃料極側集電体28が剥離し易い集電体接触部位と、それに隣接する集電体接触部位と繋げるように導電層(当接パッド部及び結線部)を形成する。このように燃料電池セル311を構成しても、発電効率の悪化を回避することができるため、電圧ロスがなく効率よく発電することができる。
・上記実施の形態では、集電体接触部位37(空気極側集電体27の各突起35)の形状は正四角形状であったが、長方形、円形や楕円形などの形状に変更してもよい。
・上記実施の形態では、固体酸化物形燃料電池300の運転温度によって、導電性ペーストを焼成して導電層338,343,352,360,365を形成していたが、導電層338,343,352,360,365を形成するための焼成工程を別途行うことで燃料電池セルスタック312を製造してもよい。また、燃料電池セル311における空気極21、燃料極22及び固体電解質層23の焼成工程と同時に導電層338,343,352,360,365を形成してもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)手段1において、前記結線部は、前記電極における特定部位に位置する前記集電体接触部位の前記当接パッド部と、それに隣接する前記集電体接触部位の前記当接パッド部とを繋ぐように形成されていることを特徴とする燃料電池セル。
(2)手段1において、前記結線部は、前記集電体接触部位の前記当接パッド部間を最短距離で直線的に繋いでいることを特徴とする燃料電池セル。
(3)手段1において、前記複数の集電体接触部位は、同一の形状及び面積を有し、前記電極の表面上において縦横に格子状に規則正しく設定されていることを特徴とする燃料電池セル。
(4)手段1において、前記導電層は、前記電極の形成材料よりも低い抵抗値を有する導電材料を用いて形成されることを特徴とする燃料電池セル。
(5)手段1において、前記導電層は、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)の少なくとも1つを含む導電材料を用いて形成されることを特徴とする燃料電池セル。
(6)手段1において、固体酸化物形燃料電池に用いられ、前記導電層が形成される前記電極が前記空気極であることを特徴とする燃料電池セル。