JP6119657B2 - 塗装方法 - Google Patents
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Description
しかし、フィルム貼着方法は、フィルムや接着剤等が紫外線や気温、湿度等の影響を受けて劣化し、色あせや割れ、剥がれ等が起こりやすいという問題があった。また、フィルム等は、塗装に比べ単価が高く、フィルム貼り付け時の位置決め等も難しく作業工数が多くかかることから、生産コストの面でも問題があった。
一方、マスキング塗装方法は、マスキング材による見切り線が曲がりやすいこと、見切り線で塗膜が欠けやすいことなどの品質上の問題があった。また、マスキング塗装に必要なマスキング材やテープ等の副資材費が高く、マスキング作業も自動化が難しく熟練した作業が必要であることから、生産コスト面の問題もあった。
特許文献1に開示された塗装装置は、スリットを長手方向で一定幅に形成すると、スリットの長手方向両端部の塗液が、表面張力等の影響を受けて長手方向中央部へ向けて引き寄せられ、流下するカーテンの幅が縮むことになる問題を解決するため、スリットの長手方向両端部にスリット幅を拡大した幅広部を設けたことを特徴とする。
すなわち、塗液の粘度が高い場合には、塗液の中央部へ向けて引っ張る表面張力が大きくなって、形成された塗膜の幅が狭く、膜厚が厚くなる傾向がある反面、塗液の粘度が低い場合には、塗液の中央部へ向けて引っ張る表面張力が小さくなって、形成された塗膜の幅が広く、膜厚が薄くなる傾向があった。特に、塗液の粘度が高い場合には、スリットの両端に幅広部を設けたことによって、塗膜の見切り部のみが盛り上がり、意匠上の見栄えを低下させる問題があった。
(1)ノズルヘッドに所定のピッチで形成した複数の微小孔から塗液を吐出して被塗布物に所定の幅の塗膜を形成する塗装方法であって、
前記ノズルヘッドの微小孔から吐出された塗液を、液柱状態のままで前記被塗布物に塗着させることを特徴とする。ここで、ノズルヘッドに形成した微小孔の配列は、一つの直線上に配列する場合に限らず、二つ以上の直線上に千鳥状に配列する場合等も含まれる。
また、塗液を微粒化させずに、液柱状態のままで被塗布物に塗着させるので、塗液が周囲に飛散することがなく、マスキングレスで塗膜の見切り部を鮮明に形成することができる。
また、液柱状態の塗液は、被塗布物の表面でノズルヘッドの移動方向と略直角方向へ均一に流れながら塗膜の見切り部を形成する。そのため、塗膜の見切り部は、被塗布物に向けてなだらかに湾曲した傾斜面を形成し、被塗布物に対して極端な段差が生じにくい。したがって、塗膜の見切り部において、塗膜割れや欠け等が生じにくく、塗膜の見切り部のみが盛り上がり、意匠上の見栄えを低下させることもない。
よって、被塗布物に対して、マスキングレスで、所定の幅の塗膜を略均一な膜厚で簡単に形成できる塗装方法を提供することができる。
前記ノズルヘッドの移動方向後方には、当該ノズルヘッドと所定の間隔を隔てた位置に、前記被塗布物に向けてエアを吐出するエア供給装置を備え、前記被塗布物に塗着された塗液が略均一な膜厚の塗膜を形成した後に、前記エア供給装置から吐出されるエアによって前記塗膜を乾燥させることを特徴とする。ここで、エア供給装置は、ノズルヘッドに連結してノズルヘッドと同時に移動させても良いし、ノズルヘッドとは別に把持して移動させても良い。エア供給装置から吐出されるエアは、常温のエアでも良いし、常温より温度が高いホットエアでも良い。ホットエアの温度は、40〜60℃程度が好ましい。
すなわち、ノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液は、所定のピッチと径を維持したまま被塗布物に到達して、複数列の蒲鉾状塗液として被塗布物に塗着される。その複数列の蒲鉾状塗液は、互いの隙間を埋める方向に流れ、波打ち状態を経て、全体として略均一な膜厚の塗膜を形成する。そのため、複数列の蒲鉾状塗液が略均一な膜厚の塗膜を形成するまでに、所定の時間が必要となる。したがって、被塗布物に塗着された塗液が略均一な膜厚の塗膜を形成するのを待って、エア供給装置から吐出されるエアによって塗膜を乾燥させることによって、被塗布物に対して、所定の幅の塗膜をより一層均一な膜厚で、より迅速に形成することができる。
前記ノズルヘッドと前記エア供給装置との間には、遮蔽板を設け、当該遮蔽板によって、前記エア供給装置から吐出されるエアと前記ノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液とを分離させることを特徴とする。
すなわち、ノズルヘッドの微小孔から吐出された塗液は、微小径の液柱であるので、液柱状態の塗液が被塗布物に塗着されるまでの間に、エア供給装置から吐出されるエアに当接すると、途中で変形したり微粒化しやすくなる。液柱状態の塗液が、途中で変形したり微粒化すると、被塗布物に形成される塗膜の幅や膜厚の均一性、塗膜の見切り線の明瞭性が低下する。これを防止するため、ノズルヘッドとエア供給装置との間に、遮蔽板を設けることよって、エア供給装置から吐出されるエアとノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液とを分離させる。その結果、ノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液を、被塗布物にそのままの状態で塗着させ、所定の幅の塗膜をより一層均一な膜厚で、より一層迅速に形成することができる。
なお、ノズルヘッドの移動に基づいて、気流が移動するが、遮蔽板の移動方向前方には、気流が動かないエア滞留層が形成される。そのため、遮蔽板の移動方向前方に形成されるエア滞留層の範囲内にノズルヘッドを設けることによって、ノズルヘッドを高速で移動させた場合でも、液柱状態の塗液の変形や微粒化を防止する効果を奏することができる。
前記ノズルヘッドの移動方向前方には、前方遮蔽板を設け、当該前方遮蔽板によって、前記ノズルヘッドの移動方向前方から流れる気流と前記ノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液とを分離させることを特徴とする。
なお、前方遮蔽板は、ノズルヘッドの幅と略同一の幅で中央部を移動方向前方へ突出させた湾曲形状に形成することが好ましい。上記形状の前方遮蔽板を設けることによって、ノズルヘッドから液柱状態の塗液が流下する範囲に、気流が動かないエア滞留層を確実に形成することができる。
前記ノズルヘッドの幅方向端部に形成した微小孔の孔径は、前記ノズルヘッドの幅方向中央部に形成した微小孔の孔径より小さいことを特徴とする。
まず、本実施形態に係る塗装装置及び塗装方法の全体構成を、図1〜図5を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態に係る塗装装置及び塗装方法を表す模式的斜視図を示す。図2に、図1に示す塗装装置におけるノズルヘッドの詳細図を示す。図3に、図2に示すノズルヘッドに形成した微小孔の詳細図を示す。図4に、図1に示すノズルヘッドとホットエア供給装置の詳細斜視図を示す。図5に、図1に示すノズルヘッドとホットエア供給装置の模式的側面図を示す。
なお、ノズルヘッド1に形成した微小孔14、15の配列は、一つの直線上に配列する場合に限らず、二つ以上の直線上に千鳥状に配列する場合でもよい。また、微小孔14、15は、任意のピッチに設定することによって、任意のパターン幅の塗膜を形成することができる。
ところが、複数列の蒲鉾状塗液42が略均一な膜厚の塗膜43を形成するまでに、所定の時間が必要となる。また、被塗布物Wの塗布面が傾斜したり湾曲している場合、所定の幅の塗膜43を略均一な膜厚で形成した後、そのまま放置しておくと、塗膜43のたれが生じて、塗膜43の幅や膜厚が不均一になりやすい。
その結果、ノズルヘッド1から吐出される液柱状塗液41を、そのままの状態で被塗布物Wに塗着させ、所定の幅の塗膜43を、より一層均一な膜厚で、より一層迅速に形成することができる。
次に、本塗装方法における液柱状塗液の気流による影響について、図6を用いて説明する。図6に、図1に示す塗装方法における気流の影響を説明する平面図を示す。
図6に示すように、ノズルヘッド1の移動に基づいて、気流が移動するが、遮蔽板2の移動方向前方には、気流が動かないエア滞留層が形成される。そのため、遮蔽板2の移動方向前方に形成されるエア滞留層の範囲内にノズルヘッド1を設けることによって、ノズルヘッド1を高速で移動させた場合でも、液柱状塗液41の変形や微粒化を防止する効果を奏することができる。また、遮蔽板2の移動方向の直ぐ後方にホットエア層が形成されるので、ホットエア層は、乱流層の影響を受けにくい。そのため、ホットエア層は、塗膜の波打ちを防止しつつ、塗膜43を迅速に乾燥させることができる。
仮に、ノズルヘッド1とホットエア供給装置3との間に、略矩形状の遮蔽板2を設けない場合においても、上記前方遮蔽板6を設けることによって、ノズルヘッド1から液柱状塗液41が流下する範囲に、気流が動かないエア滞留層を確実に形成することができる。そのため、前方遮蔽板6の移動方向後方に形成されるエア滞留層の範囲内にノズルヘッド1を設けることによって、ノズルヘッド1を高速で移動させた場合でも、液柱状塗液41の変形や微粒化を防止する効果をより一層高めることができる。
その結果、ノズルヘッド1から吐出される液柱状塗液41を、そのままの状態で被塗布物Wに塗着させ、所定の幅の塗膜43を、より一層均一な膜厚で、より一層迅速に形成することができる。
次に、本塗装方法における塗膜の形成過程とその断面形状について、図7〜図9を用いて説明する。図7に、図1に示す塗装方法によって塗膜を形成する塗膜形成過程を表す模式図を示す。図8に、比較例として、従来のマスキング塗装方法によって形成する塗膜の模式的断面図を示す。図9に、比較例として、特許文献1に示す塗装装置によって形成する塗膜の模式的断面図を示す。
図7(b)に示すように、図7(a)に示す各蒲鉾状塗液42は、流動性が高いため、時間とともに、塗液が略半円状断面の頂上から矢印の方向に移動して互いの隙間を埋める方向に流れ、隣接する蒲鉾状塗液42Bの両端が繋がった波打ち状態を形成する。
図7(c)に示すように、更に時間が経過すると、図7(b)に示す波打ち状態の蒲鉾状塗液42Bは、略均一な膜厚で中央部432が平坦な塗膜43を形成した段階で、流れを停止する。平坦な塗膜43を形成した後に、塗膜43全体にホットエア34を略均一に吐出する。ホットエア34を吐出された塗膜43は、迅速に乾燥固化される。このとき、塗膜43の見切り部431は、なだらかに湾曲しながら傾斜した傾斜面を形成する。
また、図9に示すように、特許文献1に示す塗装装置によって形成する塗膜8は、スリットの両端に幅広部を設けたことによって、塗膜の見切り部81のみが中央部82より一定の幅で盛り上がり、意匠上の見栄えが低下する場合がある。
よって、被塗布物Wに対して、マスキングレスで、所定の幅の塗膜43を略均一な膜厚で簡単に形成できる。
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る塗装方法によれば、ノズルヘッド1の微小孔14、15から吐出された塗液4を、液柱状態のままで被塗布物Wに塗着させるので、塗液4の表面張力による影響を受けにくく、所定の幅で略均一な膜厚の塗膜43を形成することができる。すなわち、液柱状塗液41には、周囲から均等な表面張力が液柱の中心部に向かって作用する。そのため、液柱の中心部に対して対向する各表面張力が互いに相殺して、表面張力の液柱への影響を大幅に軽減させることができる。したがって、液柱状塗液41は、塗液の粘度が多少変動しても、所定の径を維持したまま被塗布物Wに到達することができる。そして、被塗布物Wに到達して塗着された塗液4は、互いの隙間を埋める方向に流れ、所定の幅で略均一な膜厚の塗膜43を形成することができる。
また、塗液4を微粒化させずに、液柱状態のままで被塗布物Wに塗着させるので、塗液が周囲に飛散することがなく、マスキングレスで塗膜43の見切り部431を鮮明に形成することができる。
また、液柱状塗液41は、被塗布物Wの表面でノズルヘッド1の移動方向と略直角方向へ均一に流れながら塗膜43の見切り部431を形成する。そのため、塗膜の見切り部431は、被塗布物Wに向けてなだらかに湾曲した傾斜面を形成し、被塗布物Wに対して極端な段差が生じにくい。したがって、塗膜の見切り部431において、塗膜割れや欠け等が生じにくく、塗膜の見切り部のみが盛り上がり、意匠上の見栄えを低下させることもない。
よって、被塗布物Wに対して、マスキングレスで、所定の幅の塗膜43を略均一な膜厚で簡単に形成できる塗装方法を提供することができる。
すなわち、ノズルヘッド1から吐出される液柱状塗液41は、所定のピッチと径を維持したまま被塗布物Wに到達して、複数列の蒲鉾状塗液42として被塗布物Wに塗着される。その複数列の蒲鉾状塗液42は、互いの隙間を埋める方向に流れ、波打ち状態を経て、全体として略均一な膜厚の塗膜43を形成する。そのため、複数列の蒲鉾状塗液42が略均一な膜厚の塗膜43を形成するまでに、所定の時間が必要となる。したがって、被塗布物Wに塗着された塗液が略均一な膜厚の塗膜43を形成するのを待って、ホットエア供給装置3から吐出されるホットエア34によって塗膜43を乾燥させることによって、被塗布物Wに対して、所定の幅の塗膜43をより一層均一な膜厚で、より迅速に形成することができる。
2 遮蔽板
3 ホットエア供給装置
4 塗液
5 塗液供給装置
6 前方遮蔽板
10 塗装装置
11 本体部
13 下端
14、15 微小孔
31 ダクト本体
32 ホットエア供給口
34 ホットエア
41 液柱状塗液
42 蒲鉾状塗液
43 塗膜
431 見切り部
W 被塗布物
Claims (5)
- ノズルヘッドに所定のピッチで形成した複数の微小孔から塗液を吐出して被塗布物に所定の幅の塗膜を形成する塗装方法であって、
前記ノズルヘッドの微小孔から吐出された塗液を、液柱状態のままで前記被塗布物に塗着させること、
前記ノズルヘッドの移動方向後方には、当該ノズルヘッドと所定の間隔を隔てた位置に、前記被塗布物に向けてエアを吐出するエア供給装置を備え、前記被塗布物に塗着された塗液が略均一な膜厚の塗膜を形成した後に、前記エア供給装置から吐出されるエアによって前記塗膜を乾燥させることを特徴とする塗装方法。 - 請求項1に記載された塗装方法において、
前記ノズルヘッドと前記エア供給装置との間には、遮蔽板を設け、当該遮蔽板によって、前記エア供給装置から吐出されるエアと前記ノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液とを分離させることを特徴とする塗装方法。 - 請求項1又は請求項2に記載された塗装方法において、
前記ノズルヘッドの移動方向前方には、前方遮蔽板を設け、当該前方遮蔽板によって、前記ノズルヘッドの移動方向前方から流れる気流と前記ノズルヘッドから吐出される液柱状態の塗液とを分離させることを特徴とする塗装方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された塗装方法において、
前記ノズルヘッドの幅方向端部に形成した微小孔の孔径は、前記ノズルヘッドの幅方向中央部に形成した微小孔の孔径より小さいことを特徴とする塗装方法。 - ノズルヘッドに所定のピッチで形成した複数の微小孔から塗液を吐出して被塗布物に所定の幅の塗膜を形成する塗装方法であって、
前記ノズルヘッドの微小孔から吐出された塗液を、液柱状態のままで前記被塗布物に塗着させること、
前記ノズルヘッドの幅方向端部に形成した微小孔の孔径は、前記ノズルヘッドの幅方向中央部に形成した微小孔の孔径より小さいことを特徴とする塗装方法。
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