本発明の実施例を具体的に説明する前に、概要を述べる。実施例は、アイドリングストップ機能およびエネルギー回生機能を有する車両に搭載される車載用蓄電システムに関する。アイドリングストップ機能は、車両停止時に自動的にエンジンを停止させ、発進時に自動的にエンジンを再始動させる機能である。エネルギー回生機能は、主に減速する際の車両の運動エネルギーによりオルタネータを作動させ、オルタネータが発電したエネルギーにより車載用蓄電システム等に電力を供給する機能である。いずれの機能も燃費を向上させる効果がある。アイドリングストップ機能が搭載された車両ではエンジンの始動回数が多くなる。エンジンは通常、車載用蓄電システムにより駆動されるスタータにより始動される。したがってエンジンの始動回数が多くなるとバッテリの消費電力が大きくなり、放電回数が多くなる。またエネルギー回生機能が搭載された車両では、車両の減速時に集中的にオルタネータが発電されるため、大容量で効率的な充電が必要とされる。
車載用蓄電システムには鉛電池が多く使用されている。放電により鉛電池が放電下限電圧に到達した場合、オルタネータを稼動させ、鉛電池を充電する。これにより鉛電池の放電深度が深くなることを抑制し、鉛電池の劣化を抑制している。しかしながら、このような制御によりアイドリングストップ時間が短くなり、燃費改善効果が小さくなる。一方、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池は、鉛電池と比較し、深い放電深度まで利用することができるが、鉛電池よりもコストが高くなる。
これらの状況を考慮して、車載用蓄電システムでは、鉛電池とニッケル水素電池とが並列接続される。そのような構成によって、鉛電池とニッケル水素電池とが電装品へ電力を供給する。その際の電圧は、各電池の電圧の平均値である。一方、スタータを動作させる場合に、鉛電池とニッケル水素電池との接続が切断される。その結果、鉛電池がスタータへ電力を供給し、ニッケル水素電池が電装品へ電力を供給する。ニッケル水素電池の電圧は、鉛電池の電圧よりも高いので、単独で放電すると電装品への電力供給が多くなりすぎる。例えば、ライトが明るすぎるような現象が生じる。これに対応するために、本実施例では、鉛電池とニッケル水素電池との接続を切断する前に、ニッケル水素電池を放電させる。その結果、ニッケル水素電池の電圧が適度に低下して、電装品への電力を供給する際の電圧が適切な値になる。
図1は、本発明の実施例に係る車載用蓄電システム100の構成を示す。車載用蓄電システム100は、第1蓄電装置110、第2蓄電装置112、電源管理装置114、ダイオード126、並列接続用スイッチ128、放電用スイッチ130、抵抗132を含む。電源管理装置114は、電池状態監視部10、エンジン状態取得部12、決定部14、並列接続用スイッチ制御部16、放電用スイッチ制御部18を含む。車載用蓄電システム100には、スタータ116、スタータ用スイッチ118、オルタネータ120、電装品122、ECU124が接続される。ECU124は、エンジン動作管理部20、エンジン動作制御部22、オルタネータ動作制御部24を含む。
オルタネータ120は、図示しないエンジンにより交流電力を発電し、さらにエネルギー回生機能の車両においては減速時の運動エネルギーによっても発電する。ここでは主に減速中の発電について述べる。オルタネータ120が発電した交流は、図示しないレギュレータ、整流器等の回路により直流に変換され、オルタネータ120の電力が電装品122、車載用蓄電システム100に供給される。
スタータ116は、エンジン始動用モータである。スタータ116はスタータ用スイッチ118を介して、車載用蓄電システム100の出力系統に接続される。スタータ用スイッチ118にはリレーあるいは半導体スイッチが使用される。運転者の操作により図示しないイグニッションスイッチがオンされる場合、あるいはアイドリングストップの状態から復帰する場合、スタータ用スイッチ118がオンし、車載用蓄電システム100からスタータ116に電力が供給され、スタータ116が始動する。スタータ116によりエンジンが始動すると、スタータ用スイッチ118がオフされる。スタータ用スイッチ118のオンになってからオフとするまでの時間は通常約1秒以内である。
電装品122は、ヘッドライト、エアコン、デフォッガ、オーディオ、メータ、ストップランプ、フォグランプ、ウィンカ、パワーステアリング、パワーウインドウ、エンジン電装品などの車両内に搭載される各種電気負荷を示す総称である。ここでは、説明の便宜上、オルタネータ120、スタータ116、ECU124は電装品122とは別に扱っている。また電装品122は車載用蓄電システム100からも供給される電力により駆動されている。ECU124は、車両内に搭載される各種の補機、センサ、スイッチに接続され、エンジンおよび各種補機を電子制御する。ECU124による制御の詳細は後述する。
車載用蓄電システム100のうちの第1蓄電装置110は、オルタネータ120により発電された電力を蓄え、スタータ116および電装品122に給電するためのメインバッテリである。第1蓄電装置110の一例は、鉛電池である。鉛電池には、比較的安価、比較的広い温度範囲で動作可能、高出力などの長所があり、車両用の蓄電池として広く普及している。ただし充放電エネルギー効率が低い、過放電に弱い、サイクル寿命が短いなどの短所がある。
第2蓄電装置112は、オルタネータ120により発電された電力を蓄え、電装品122に給電するためのサブバッテリである。第1蓄電装置110と第2蓄電装置112は並列接続される。第2蓄電装置112は、第1蓄電装置110よりも電圧が高く、その一例は、ニッケル水素電池である。ニッケル水素電池には、充放電エネルギー効率が比較的高い、過充電および過放電に強い、使用温度範囲が広い、SOC(State Of Charge)範囲が広い、サイクル寿命が比較的長いなどの長所がある。また、ニッケル水素電池は、低劣化で放電深度の深い領域まで利用できる推奨放電深度(DOD:Depth of Discharge)が広い電池である。ただし、自己放電が大きい、メモリ効果がある、低電圧、鉛電池より高価などの短所がある。
図2は、第2蓄電装置112の特性を示す。横軸がSOCを示し、縦軸が電圧を示す。○印は、初期状態におけるSOCと電圧との関係を示しており、×印は、劣化後の充電処理におけるSOCと電圧との関係を示しており、□印は、劣化後の放電処理におけるSOCと電圧との関係を示す。劣化後の充電処理と劣化後の放電処理では、SOCが40%から50%において、電圧の変化が大きくなっている。また、同一のSOCであっても、充電後電圧より放電後電圧が低くなるヒステリシスが示されている。図1に戻る。
アイドリングストップ機能を採用する場合、スタータ116の使用回数が増えるため、蓄電池の容量を増大させる必要がある。その際、単純に鉛電池の容量を増大させるのではなく、性質が異なる複数種類の蓄電池を組み合わせて使用することにより、それぞれの蓄電池の短所を補いつつ蓄電池全体の容量を増大させる。ここでは、鉛電池とニッケル水素電池を組み合わせて使用する例を説明するが、鉛電池とリチウムイオン蓄電池を組み合わせて使用してもよい。リチウムイオン蓄電池は、エネルギー密度および充放電エネルギー効率が高く、高性能な蓄電池であるが、厳格な電圧・温度管理が必要である。
一般的に蓄電池はエンジンルームに設置される。エンジンルームに鉛電池と一体的に設置するには、ニッケル水素電池のほうがリチウムイオン蓄電池より適している。エンジンルームはエンジン作動時に温度が上昇するが、ニッケル水素電池のほうがリチウムイオン蓄電池より熱安定性がよい。なお、鉛電池と並列接続されるリチウムイオン蓄電池をエンジンルームから離れた位置に設置することも考えられるが、その場合、配線抵抗による損失が大きくなる。
並列接続用スイッチ128は、車載用蓄電システム100中において第1蓄電装置110と第2蓄電装置112とを並列接続するための経路に配置される。並列接続用スイッチ128がオンされている場合に、第1蓄電装置110と第2蓄電装置112とが並列に接続される。一方、並列接続用スイッチ128がオフされている場合に、第1蓄電装置110と第2蓄電装置112とが別々に配置される。また、並列接続用スイッチ128と並列にダイオード126が配置される。ダイオード126が配置されることによって、並列接続用スイッチ128がオフされている場合に、第2蓄電装置112から第1蓄電装置110への電流が抑止される。なお、並列接続用スイッチ128のオン/オフは、後述の電源管理装置114によって制御される。
第1蓄電装置110と第2蓄電装置112は、並列接続用スイッチ128がオンにされている場合、車両内の複数の負荷に給電可能であり、並列接続用スイッチ128がオフにされている場合、複数の負荷のうち、互いに異なった負荷に独立して給電可能である。具体的に説明すると、第1蓄電装置110は、並列接続用スイッチ128がオフにされている場合、スタータ116への給電を実行する。第2蓄電装置112は、並列接続用スイッチ128がオフにされている場合、車両内の電装品122への給電を実行する。
放電用スイッチ130は、第2蓄電装置112に接続されている。放電用スイッチ130がオンされている場合に、第2蓄電装置112が抵抗132に接続されることによって、第2蓄電装置112が放電される。抵抗132は、例えば、ヒータ抵抗である。一方、放電用スイッチ130がオフされている場合には、第2蓄電装置112が抵抗132に接続されないので、第2蓄電装置112は放電されない。このような抵抗132は、第2蓄電装置112を放電させるためだけの抵抗ともいえる。なお、放電用スイッチ130のオン/オフも、後述の電源管理装置114によって制御される。
電源管理装置114は、第1蓄電装置110、第2蓄電装置112を管理制御するとともに、並列接続用スイッチ128、放電用スイッチ130のオン/オフを制御する。電源管理装置114は、CAN(Controller Area Network)を介してECU124に接続されることによって、電源管理装置114とECU124との間において通信がなされる。電源管理装置114による制御の詳細は後述する。
以下では、ECU124および電源管理装置114における制御の概要を説明する。まず、図3(a)−(f)をもとに、制御の概要を説明する。図3(a)−(f)は、車載用蓄電システム100における動作タイミングの一例を示す。図3(a)は、車載用蓄電システム100が搭載された車両の速度変化を示す。ここでは、横軸に時間を示し、縦軸に速度を示す。一例として、時間の経過とともに、車両の速度が低下する。それにつづいて、一定期間にわたって車両が停止する。さらに、車両が発進することによって、車両の速度が増加する。図3(b)は、ECU124によって検出された図3(a)の車両の動作を示す。図示のごとく、ECU124は、「減速」、「停止」、「加速」の順に動作を検出する。図3(c)は、図3(b)に対応したオルタネータ120の制御を示す。ECU124は、「減速」の場合にオルタネータ120をオンさせ、「停止」および「加速」の場合に、オルタネータ120をオフさせる。図3(d)は、図3(b)に対応したエンジンの制御を示す。ECU124は、「減速」と「加速」の場合に、エンジンを動作させ、「停止」の場合に、エンジンのアイドリングを停止させる。
図3(e)は、図3(d)に対応した並列接続用スイッチ128の制御を示す。「エンジン動作」の状態から「アイドリングストップ」の状態にわたって、電源管理装置114は、並列接続用スイッチ128をオンさせる。その結果、第1蓄電装置110と第2蓄電装置112とが並列に接続される。前述のごとく、その際の電圧は、第1蓄電装置110の電圧と第2蓄電装置112の電圧との平均値近くになる。近くとは、誤差の範囲を含むという意味である。「アイドリングストップ」の状態から「エンジン動作」の状態に変わってから所定期間内において、電源管理装置114は、並列接続用スイッチ128をオフさせる。その結果、第1蓄電装置110と第2蓄電装置112との接続が切断される。図1に示されているように、第1蓄電装置110はスタータ116に電力を供給し、第2蓄電装置112は電装品122に電力を供給する。その際、第1蓄電装置110の電圧がスタータ116に印加され、第2蓄電装置112の電圧が電装品122に印加される。第2蓄電装置112の電圧が高い場合、電装品122には、規定の電圧よりも高い電圧が印加されるおそれがある。所定期間の経過後、電源管理装置114は、並列接続用スイッチ128をオフさせる。
図3(f)は、図3(d)に対応した放電用スイッチ130の制御を示す。「エンジン動作」の状態において、電源管理装置114は、放電用スイッチ130をオフさせる。「アイドリングストップ」の状態に遷移すると、電源管理装置114は、放電用スイッチ130をオンさせる。その結果、第2蓄電装置112は、抵抗132へ放電する。このような放電によって、第2蓄電装置112の電圧は低下する。その結果、並列接続用スイッチ128がオフされることによって、第2蓄電装置112の電圧が電装品122に印加される場合であっても、規定の電圧よりも高い電圧が電装品122に印加されるおそれが抑制される。放電用スイッチ130がオンされてから一定期間が経過すると、放電用スイッチ130はオフされる。図1に戻る。
次に、ECU124および電源管理装置114における制御の詳細を説明する。電池状態監視部10は、第2蓄電装置112の電圧、電流、温度を取得する。電池状態監視部10は、取得した電圧、電流、温度のうちの少なくともひとつをもとにSOCを導出する。SOCの導出には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。また、電圧、電流、温度の取得、SOCの導出は定期的になされている。電池状態監視部10は、電圧、電流、温度、SOC等の情報をエンジン動作管理部20、決定部14へ定期的に出力する。なお、電池状態監視部10は、第1蓄電装置110に対しても同様の処理を実行してもよいが、ここでは説明を省略する。
エンジン動作管理部20は、エンジンの動作あるいは停止、オルタネータ120の動作あるいは停止を決定するとともに、決定内容を管理する。エンジン動作管理部20は、第1蓄電装置110からの情報、特に第2蓄電装置112のSOCを受けつける。また、エンジン動作管理部20は、ブレーキ、車速センサ等からの信号も入力することによって、車両の減速、停止、加速を検出する。これは、図3(b)に示された車両の動作を検出することに相当する。エンジン動作管理部20は、検出した車両の動作をもとに、予め記憶したテーブルを参照しながらオルタネータ120のオン/オフを決定する。
図4は、エンジン動作管理部20に記憶されたテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、走行状態欄200、オルタネータ欄202が設けられている。エンジン動作管理部20は、減速を検出した場合に、オルタネータ120のオンを決定する。一方、エンジン動作管理部20は、停止あるいは加速を検出した場合に、オルタネータ120のオフを決定する。図1に戻る。エンジン動作管理部20は、決定した内容をオルタネータ動作制御部24に通知する。オルタネータ動作制御部24は、エンジン動作管理部20からの通知に応じて、オルタネータ120をオンあるいはオフさせる。ここで、エンジン動作管理部20は、通常走行時、原則的にオルタネータ120を停止させるようにオルタネータ動作制御部24に指示する。なお、車載用蓄電システム100の蓄電エネルギーが設定下限値より低い場合、エンジン動作管理部20は、通常走行時でもオルタネータ120を作動させるようにオルタネータ動作制御部24に指示してもよい。
エンジン動作管理部20は、検出した車両の動作と、第2蓄電装置112のSOCとをもとに、予め記憶した別のテーブルを参照することによって、アイドリングストップを実行するか否かを決定する。図5は、エンジン動作管理部20に記憶された別のテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、条件欄204、アイドリングストップ欄206が設けられている。エンジン動作管理部20は、停止を検出し、かつ第2蓄電装置112のSOCがアイドリングストップ用上限しきい値以上である場合、アイドリングストップを実行しないことを決定する。一方、エンジン動作管理部20は、停止を検出し、かつ第2蓄電装置112のSOCがアイドリングストップ用上限しきい値よりも低い場合、アイドリングストップを実行することを決定する。アイドリングストップ用上限しきい値の値に関しては、後述する。なお、車両の動作として停止以外が検出された場合、エンジン動作管理部20は、別のテーブルとの比較を実行しないので、アイドリングストップはなされない。図1に戻る。
エンジン動作管理部20は、アイドリングストップの実行を決定した場合、その旨をエンジン動作制御部22、エンジン状態取得部12へ通知する。エンジン動作制御部22は、エンジン動作管理部20からの通知を受けつけると、エンジンを停止させる。なお、エンジン動作管理部20は、エンジン停止の指示を受けつけた場合も、エンジン状態取得部12にエンジンを停止させる。
エンジン動作管理部20は、ブレーキの解除を検出したことでもって、車両が走行を開始したと判定する。エンジン動作管理部20は、アイドリングストップ機能を実行してエンジンが停止した後に、車両の走行開始を検出すると、エンジン動作管理部20にエンジンを再始動させるとともに、車両の加速をエンジン状態取得部12に通知する。エンジン動作制御部22は、スタータ用スイッチ118をオンして、車載用蓄電システム100からスタータ116に電力が供給されるよう制御し、スタータ116を作動させる。ここでは、ブレーキの解除を検出したことでもって、車両の走行開始を判定しているが、必ずしもこの構成に限定する必要はない。例えば、車速センサや、アクセルの状態をもとに車両の走行開始を判定するように構成してもよい。
エンジン状態取得部12は、エンジン動作管理部20から、エンジンの動作状態に関する通知を受けつける。この通知は、図3(d)に相当し、エンジン動作あるいはアイドリングストップを示す。エンジン状態取得部12は、エンジンの動作状態を決定部14へ出力する。前述のごとく、アイドリングストップは、車両が停止し、かつ第2蓄電装置112のSOCがアイドリングストップ用上限しきい値よりも低いことによってなされている。
決定部14は、エンジン状態取得部12からエンジンの動作状態に関する情報を受けつけ、電池状態監視部10から第2蓄電装置112のSOCを受けつける。決定部14は、エンジンの動作状態がアイドリングストップである場合、第2蓄電装置112のSOCとの比較を決定する。図6は、決定部14に記憶されたテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、アイドリングストップ欄208、放電用しきい値との比較欄210が設けられている。エンジン状態取得部12からの情報においてアイドリングストップが示されているか否かに応じて、SOCと放電用しきい値とを比較するか否かが決定される。
図7は、決定部14に記憶された別のテーブルのデータ構造を示す。これは、SOCと放電用しきい値との比較が決定された場合に使用すべきテーブルである。図示のごとく、条件欄212、放電用スイッチ欄214とが設けられる。決定部14は、第2蓄電装置112のSOCが放電用しきい値以上である場合、放電用スイッチ130のオンを決定する。一方、決定部14は、第2蓄電装置112のSOCが放電用しきい値よりも小さい場合、放電用スイッチ130のオフを決定する。なお、放電用しきい値の一例は、70%である。これは、図2に示したように、充電後電圧より放電後電圧が低くなるニッケル水素電池のヒステリシスを利用したものであり、特に、ニッケル水素電池の電圧が高くなるSOC70%以上では、放電処理による電圧調整が効果的になる。ここで、放電処理条件は、電流値が1A以上、20A以下、かつ、時間が1秒以上、20秒以下とすることが望ましい。このような放電処理条件は、実験あるいはシミュレーションにより導出される。図1に戻る。
決定部14は、決定した内容を放電用スイッチ制御部18に出力する。放電用スイッチ制御部18は、決定部14からの決定内容がオンである場合、放電用スイッチ130をオンさせる。これは、前述のごとく、第2蓄電装置112を放電させることに相当する。一方、放電用スイッチ制御部18は、決定部14からの決定内容がオフである場合、放電用スイッチ130をオフさせる。なお、エンジン動作の状態において、放電用スイッチ制御部18は、放電用スイッチ130をオフさせている。
ここで、前述のアイドリングストップ用上限しきい値について説明する。アイドリングストップ用上限しきい値は、放電用しきい値よりも大きくなるように設定される。アイドリングストップ用上限しきい値は、規定の期間にわたって規定の電流値にて第2蓄電装置112を放電させる場合の放電量を放電用しきい値に加えた値よりも小さい値として定められている。例えば、規定の期間は、前述の1秒以上、20秒以下とされ、規定の電流値は、1A以上、20A以下とされている。
決定部14は、放電用スイッチ130をオンさせてから一定期間経過すると、放電用スイッチ130のオフを決定する。一定期間は、前述の規定の期間に含まれるように設定される。なお、一定期間が経過する前に、アイドリングストップからエンジン動作へ遷移した場合も、決定部14は、放電用スイッチ130のオフを決定する。放電用スイッチ制御部18は、決定部14の決定内容に応じた制御を実行する。
つづいて、アイドリングストップがなされた後の動作を説明する。図8は、決定部14に記憶されたさらに別のテーブルのデータ構造を示す。条件欄216、並列接続用スイッチ欄218が設けられている。決定部14は、エンジン状態取得部12からの情報がアイドリングストップからエンジン動作へ遷移した場合、並列接続用スイッチ欄218のオフを決定する。このように、決定部14は、並列接続用スイッチ128がオンにされている状態において、第2蓄電装置112のSCOが放電用しきい値以上であれば、第2蓄電装置112を放電させてから、並列接続用スイッチ128をオフにする。一方、決定部14は、並列接続用スイッチ128をオフしてから一定期間経過後、並列接続用スイッチ128のオンを決定する。
図1に戻る。決定部14は、決定した内容を並列接続用スイッチ制御部16へ出力する。並列接続用スイッチ制御部16は、決定部14からの決定内容がオンである場合、並列接続用スイッチ128をオンさせる。並列接続用スイッチ制御部16は、決定部14からの決定内容がオフである場合、並列接続用スイッチ128をオフさせる。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
以上の構成による車載用蓄電システム100の動作を説明する。図9は、車載用蓄電システム100による処理手順を示すシーケンス図である。ECU124は、車両の減速中にオルタネータ120をオンにする(S10)。また、放電用スイッチ130はオフにされ(S12)、並列接続用スイッチ128はオンにされる(S14)。ECU124は、車両の停止によってオルタネータ120をオフにする(S16)。ECU124は、アイドリングストップを決定し(S18)、アイドリングストップの実行を電源管理装置114に通知する(S20)。電源管理装置114は、放電を決定し(S22)、放電の決定を放電用スイッチ130に通知する(S24)。放電用スイッチ130はオンにされる(S26)。一定期間経過後に電源管理装置114は放電停止を決定し(S28)、放電停止の決定を放電用スイッチ130に通知する(S30)。放電用スイッチ130はオフにされる(S32)。
ECU124は、エンジン動作への遷移を検出し(S34)、検出結果を電源管理装置114に通知する(S36)。電源管理装置114は、並列接続用スイッチ128の切断を決定し(S38)、切断の決定を並列接続用スイッチ128に出力する(S40)。並列接続用スイッチ128はオフにされる(S42)。電源管理装置114は、一定期間経過後に、並列接続用スイッチ128の接続を決定し(S44)、決定した接続を並列接続用スイッチ128に出力する(S46)。並列接続用スイッチ128はオンにされる(S48)。
図10は、ECU124による処理手順を示すフローチャートである。エンジン動作管理部20が車両の停止を検出した場合(S100のY)、エンジン動作管理部20は、オルタネータ動作制御部24に対して、オルタネータ120をオフにさせる(S102)。第2蓄電装置112のSOCがアイドリングストップ用上限しきい値より小さければ(S104のY)、エンジン動作管理部20は、エンジン動作制御部22に対して、アイドリングストップを実行させる(S106)。第2蓄電装置112のSOCがアイドリングストップ用上限しきい値より小さくなければ(S104のN)、ステップ106はスキップされる。エンジン動作管理部20が車両の停止を検出せず(S100のN)、減速を検出した場合(S108のY)、エンジン動作管理部20は、オルタネータ動作制御部24に対して、オルタネータ120をオンにさせる(S110)。減速を検出しない場合(S108のN)、エンジン動作管理部20は、オルタネータ動作制御部24に対して、オルタネータ120をオフにさせる(S112)。
図11は、電源管理装置114による処理手順を示すフローチャートである。エンジン状態取得部12は、エンジン動作からアイドリングストップへの遷移の情報を受けつける(S150)。第2蓄電装置112のSOCが放電用しきい値以上であれば(S152のY)、決定部14は、放電用スイッチ130をオフからオンにすることを決定する(S154)。一定期間経過後、決定部14は、放電用スイッチ130をオンからオフにすることを決定する(S156)。一方、第2蓄電装置112のSOCが放電用しきい値以上でなければ(S152のN)、決定部14は、放電用スイッチ130のオフの維持を決定する(S158)。エンジン状態取得部12は、アイドリングストップからエンジン動作への遷移の情報を受けつける(S160)。決定部14は、並列接続用スイッチ128をオンからオフにすることを決定する(S162)。一定期間経過しなければ(S164のN)、待機する。一定期間経過すれば(S164のY)、決定部14は、並列接続用スイッチ128をオフからオンにすることを決定する(S166)。
本発明の実施例によれば、並列接続用スイッチがオフにされている状態において、第2蓄電装置を放電させてから、並列接続用スイッチをオフにするので、第2蓄電装置が単独で電力を供給する際の電圧を低減できる。また、第2蓄電装置が単独で電力を供給する際の電圧が低減されるので、電装品の基準値を超えない電圧を出力できる。また、電装品の基準値を超えない電圧が出力されるので、複数種類の蓄電池からの電力供給を安定させることができる。また、第1蓄電装置が鉛電池であり、第2蓄電装置がニッケル水素電池であるので、第2蓄電装置の電圧を第1蓄電装置の電圧よりも高くできる。また、並列接続用スイッチがオフにされている場合、第1蓄電装置がスタータへの給電を実行し、第2蓄電装置が電装品への給電を実行するので、スタータ使用時に電装品への電力供給を安定化できる。
また、第2蓄電装置を放電させるためだけの抵抗をさらに備えるので、第2蓄電装置を効率的に放電できる。また、並列接続用スイッチがオンにされている状態において、第2蓄電装置のSOCが放電用しきい値以上である場合、第2蓄電装置を放電させるので、第2蓄電装置の電圧が高い状況を抑制できる。また、並列接続用スイッチがオンにされている状態において、第2蓄電装置のSOCが放電用しきい値以上でない場合、第2蓄電装置を放電させないので、第2蓄電装置の電圧として必要な値を維持できる。また、放電用しきい値は70%であるので、放電処理による電圧調整を効果的に実行できる。
また、第2蓄電装置のSOCがアイドリングストップ用上限しきい値よりも低いことによってアイドリングストップがなされるので、第2蓄電装置の電圧が高い状況の発生を抑制できる。また、アイドリングストップ用上限しきい値は、放電用しきい値よりも大きいので、アイドリングストップを実行機会を増加できる。また、アイドリングストップの実行機会が増加されるので、燃費を向上できる。また、アイドリングストップ用上限しきい値は、所定の期間にわたって規定の電流値にて第2蓄電装置を放電させる場合の放電量を放電用しきい値に加えた値よりも小さい値として定められているので、放電しても第2蓄電装置の電圧が高くなる場合に、アイドリングストップの実行を回避できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、第2蓄電装置112を放電するために抵抗132が備えられている。しかしながらこれに限らず例えば、電装品122に含まれた抵抗を使用しながら、第2蓄電装置112を放電させてもよい。本変形例によれば、抵抗132を別に備えなくてもよいので、装置構成を簡易にできる。
本発明の実施例において、車載用蓄電システム100と電装品122とが接続されている。しかしながらこれに限らず例えば、車載用蓄電システム100と電装品122とを接続するための経路に、DC−DCコンバータが備えられてもよい。本変形例によれば、電装品122への電圧をさらに安定化できる。
本発明の実施例において、車両に搭載されたエンジンを始動させるためのモータとして、スタータ116が備えられている。しかしながらこれに限らず例えば、スタータ116とオルタネータ120との代わりに、モータジェネレータが備えられてもよい。本変形例によれば、車載用蓄電システム100が搭載される車両の構成の自由度を向上できる。
本発明の実施例において、アイドリングストップを契機として、決定部14が放電用スイッチ130、並列接続用スイッチ128を制御する。しかしながらこれに限らず例えば、制御はエンジン停止、つまり運転者の操作によりイグニッションスイッチがオフされる場合を契機としてなされてもよい。本変形例によれば、本発明の適用範囲を拡大できる。
本発明の実施例において、車載用蓄電システム100は、アイドリングストップ、エネルギー回生システムを有する車両に搭載されている。しかしながらこれに限らず例えば、これらの機能を有しない車両へ搭載されてもよい。本変形例によれば、本発明の適用範囲を拡大できる。
本発明の実施例において、エンジン動作管理部20は、アイドリングストップ用上限しきい値を記憶し、アイドリングストップ用上限しきい値とSOCとを比較することによって、アイドリングストップを実行するか否かを決定している。しかしながらこれに限らず例えば、エンジン動作管理部20は、アイドリングストップ用下限しきい値も記憶し、アイドリングストップ用下限しきい値とSOCとを比較することによって、アイドリングストップを実行するか否かを決定してもよい。このようなアイドリングストップ用下限しきい値は、例えば、次のふたつの状況を想定して設定される。ひとつ目の想定は、スタータ116を動作させる際、並列接続用スイッチ128がオフにされることによって、第2蓄電装置112から電装品122へ一時的に電力が供給される場合である。その際、第2蓄電装置112のSOCが十分でなければ、電装品122への電力供給に支障がでるので、支障がでないような値として、アイドリングストップ用下限しきい値が設定される。
ふたつ目の想定は、第2蓄電装置112であるニッケル水素電池には使用に不適切なSOC範囲があり、これは、例えば、SOC30%〜SOC70%の範囲外に相当することである。第2蓄電装置112のSOCが、前述の範囲の下限を示している場合、第2蓄電装置112を電池として放電させたくないので、アイドリングストップを許可しないように、アイドリングストップ用下限しきい値が設定される。なお、前述の範囲の下限よりもSOCが小さい場合に放電すると、電圧のバラツキを生じてしまうおそれがある。これらの想定のように、アイドリングストップ用下限しきい値は、適宜、設定されればよい。本変形例によれば、不適切なアイドリングストップの実行を抑制できる。