実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による装置により構成される無線通信システムを示す全体構成図である。
当該無線通信システムは、センタサーバ11、インターネット網12、ゲートウェイ13、親機無線機14、複数の子機無線機15A〜15E、及び、複数のメータ16A〜16Eからなる。
センタサーバ11は、インターネット網12に接続され、遠隔地から複数のメータ16A〜16Eの監視や制御を行うためのサーバ装置であり、各メータ16A〜16Eに対して検針要求を行うことで各メータが持つ情報を取得したり、また子機無線機15A〜15Eが搭載する電池の残容量といった装置の状態を管理したりする機器である。ここでのメータが持つ情報とは、例えば、ガスメータの検針情報などである。尚、インターネット網12の代わりに、有線電話網や、有線電話網と移動体無線通信網を組み合わせた構成など、その他の多様な通信形態も許容するものとする。
インターネット網12は、通信インフラ設備として一般利用される広域網や、事業者の所有する特設網などのインターネット施設網である。
ゲートウェイ13は、インターネット網12と親機無線機14が構成するローカルネットワークとを相互に繋ぐための通信装置であり、センタサーバ11と親機無線機14との間で送受信されるデータを中継するための機器である。
親機無線機14は、ゲートウェイ13と、親機無線機14及び子機無線機15A〜15Eの複数の無線機で構成される無線ネットワークとを相互に繋ぐための通信装置であり、ゲートウェイ13との通信機能や複数の子機無線機15A〜15Eとの無線通信機能を備える機器である。更に、センタサーバ11からの各メータ16A〜16Eへの検針要求と、その応答である各メータ16A〜16Eからの検針情報とを中継するに当たって、子機無線機15A〜15Eで構成される通信経路のうち最適な経路となる転送先の子機無線機を選択する機能を備えることも可能である。ここで言う最適な経路とは、中継回数が最も少なくなる経路や、システムとしての消費電力が最も少なくなる経路など、目的によって異なるものとする。
子機無線機15A〜15Eは、センタサーバ11とメータ16A〜16Eとの間の通信を中継するための通信装置であり、接続されたメータ16A〜16Eと通信を行う機能や、親機無線機14、及び、子機無線機15A〜15Eとの間で相互に無線通信を行う機能を持つ機器である。更に、通信を中継するに当たって、親機無線機14と子機無線機15A〜15Eで構成される通信経路のうち最適な経路となる転送先の無線機を選択する機能を備えることも可能である。ここで言う最適な経路とは、中継回数が最も少なくなる経路や、システムとしての消費電力が最も少なくなる経路など、目的によって異なるものとする。また、子機無線機の台数については、5台とする以外にもネットワーク構成に応じて適宜に増減させることが可能である。
メータ16A〜16Eは、ガスメータや水道メータ等の計量器、または、温度や湿度等を計測する計測器であり、システムが扱う主要な情報の情報源となる装置に設けられ、当該装置から情報を取得するための機器である。
尚、図1では、親機無線機14と子機無線機15A〜15Eとの間の無線ネットワークとして、メッシュ型ネットワークの構成を取っているが、無線機の配置を適切に変えることでメッシュ型ネットワーク以外にも、スター型ネットワークやクラスタツリー型ネットワークの構成とすることも可能である。
また、メッシュ型ネットワークの構成においては、例えば、親機無線機14と子機無線機15Dとが直接に通信が行えない状況においても、双方の無線機と通信が可能な子機無線機15Aがこの間に存在することで、親機無線機14や子機無線機15Dからのデータを子機無線機15Aが転送をし、親機無線機14と子機無線機15Dは中継による通信が可能となる。このように、通信に中継を利用するネットワーク構成においては、メータを接続しない中継専用の子機無線機をネットワーク構成に含めることも可能である。
図1のシステムを、例えば、ガスメータの検針情報を自動収集する自動検針システムに適用すると、以下のように検針情報の収集が行えるようになる。
センタサーバ11がメータ16Eの検針データを取得する場合に、センタサーバ11から、検針対象となるメータ16Eが属する無線ネットワークに接続されるゲートウェイ13に対して検針要求データが送信され、当該データを受信したゲートウェイ13は親機無線機14に当該データを転送する。
当該データを受信した親機無線機14は、検針対象となるメータ16Eが接続される子機無線機15Eが直接に通信可能な範囲にないため、子機無線機15Eまで当該データを転送するのに、子機無線機15A〜15Dのうち1つ又は複数の子機無線機を中継させる必要がある。親機無線機14は、子機無線機15Eまでデータを転送する経路うち、ここでは中継回数が最小となるものを選定する場合に、子機無線機15Aを中継させる経路が最適との判定に基づいて、当該データを子機無線機15Aに送信する。
親機無線機14から当該データを受信した子機無線機15Aは、子機無線機15Eが直接に通信可能な範囲にないため、親機無線機14と同様に子機無線機15Eまで中継回数が最小となるようなデータ転送の経路を選定し、その結果に基づいて、当該データを子機無線機15Dに送信する。以降、中継動作を同様に繰り返すことで、子機無線機15Eまで当該データが転送される。
検針要求データを受信した子機無線機15Eは、接続されたメータ16Eと通信を行い、検針情報を取得する。メータ16Eの検針情報を取得した子機無線機15Eは、センタサーバ11に対して当該検針情報を含むデータを送信する。その際に、子機無線機15Eは、親機無線機14が直接に通信可能な範囲にないため、子機無線機15A〜15Dのうち1つ又は複数の子機無線機を中継させることで、親機無線機14まで当該データを転送することを試みる。この先に行われる中継動作は、親機無線機14から子機無線機15Eまでデータを転送したものと同様である。
子機無線機15Eから当該データを受信した親機無線機14は、ゲートウェイ13を中継してセンタサーバ11に当該データを転送する。当該データを受信したセンタサーバ11は、データに含まれるメータ16Eの検針情報を取得し、メータ16Eの検針情報の収集が完了する。その他のメータについても同様に検針情報の収集を行う。
システムを構成する親機無線機や子機無線機15A〜15Eは非同期で動作を行っても良いし、また後述する無線機の周期的な動作を同期させても良い。同期させた場合には、各々の無線機が効率的にデータを送受信することで、備える電池の電力消費を抑えて電池の寿命を延ばす効果が得られる。
実施の形態1では、子機無線機15A〜15Eが互いに通信するにあたり、ビーコン信号の送受信を行う。子機無線機は動作電源に電池を使用しており、電池の消耗を抑える為に、周期的に電力消費を抑えた動作状態(以下、スリープ状態と称する)をとる。その為、子機無線機がデータ送信を行う場合には、データを送信したい宛先の子機無線機がスリープ状態ではない事を知る必要があり、そのための判断として、子機無線機は周辺の子機無線機が送信するビーコン信号の受信動作を行う。
ビーコン信号の中には無線機を識別する固有の番号(以下、無線機番号と称する)が含まれており、子機無線機は受信したビーコン信号に含まれる無線機番号が、データを送信したい宛先の子機無線機のものと一致するかを判定する。無線機番号の判定により、宛先の子機無線機からのビーコン信号を受信したと判断した場合に、例えば「CSMA/CA(搬送波感知多重アクセス/衝突回避)方式」等を実施し、周辺の子機無線機と送信データが衝突しない事を確認した後に、ビーコン信号への応答として送信要求信号を送信する。送信要求信号を送信した子機無線機は、続けて宛先の子機無線機に対してデータの送信を行う。
このように、子機無線機は周期的にビーコン信号を送信することで、周辺の子機無線機からのデータを受信する機会を得ることができ、反対にビーコン信号を受信することで、周辺の子機無線機に対してデータを送信する機会を得ることができる。
また、ビーコン信号に含まれる無線機番号を取得することで、周辺に存在する子機無線機のリストを作成することが可能である。子機無線機は周期的にビーコン信号の連続受信動作を行うことで、その都度、当該リストを作成または更新をし、当該リストに基づいて目的に応じた最適なデータ転送経路の情報を持つことができる。
図2は、実施の形態1における子機無線機15A〜15Eの内部構成図である。
子機無線機は、無線通信用アンテナ21、無線部22、中央処理装置としてのCPU部23、メータインタフェース24、及び電池25からなる。さらに、無線部22は受信部221と送信部222からなる。また、CPU部23の内部にはROM(リードオンリメモリ)231、RAM(ランダムアクセスメモリ)232、及び、A/D変換器233が備わっている。
無線通信用アンテナ21は、無線部22に接続されており、子機無線機が周辺の無線機と無線通信を行うために通信電波を送受する通信用のアンテナである。
無線部22は、無線通信用アンテナ21、CPU部23、及び、電池25に接続されており、電池25を駆動電源としてCPU部23からの制御によって動作し、子機無線機が周辺の無線機と無線通信を行う際に、内部の受信部221や送信部222の制御を行う装置である。
CPU部23は、無線部22、メータインタフェース24、及び、電池25に接続されており、電池25を駆動電源として、無線部22、及び、メータインタフェース24に対して制御を行うことで、子機無線機の動作全般を司る装置である。
メータインタフェース24は、CPU部23とメータ16に接続されており、CPU部23からの制御によってメータ16から検針情報を取得する装置である。
電池25は、無線部22とCPU部23に接続されており、子機無線機を構成する装置に対して電流を供給する電源である。
受信部221は、無線部22の内部に備えられ、無線部22からの制御によって、子機無線機と周辺の無線機との無線通信におけるデータの受信を司る装置である。
送信部222は、無線部22の内部に備えられ、無線部22からの制御によって、子機無線機と周辺の無線機との無線通信におけるデータの送信を司る装置である。
電流I_BATT26は、CPU部23からの制御によって、無線部22内部の受信部221や送信部222に対して、電池25から供給される電流である。
ROM231は、CPU部23の内部に備えられ、電池25からの電流の供給有無によらず、プログラムやデータを格納する不揮発性記憶装置である。
RAM232は、CPU部23の内部に備えられ、一時的にデータを格納する記憶装置である。
A/D変換器233は、CPU部23の内部に備えられ、電池25を駆動電源として、CPU部23からの制御によって、電池25の電圧をA/D変換による数値化により測定を行う測定器である。
図3は、電池25が示す、通信時間と電圧差分に関する特性のグラフである。図3(A)と図3(B)はそれぞれ、横軸には時刻を、縦軸には各時刻における電池の電圧値をとる。時刻T1は、電池の放電負荷を伴う通信装置の通信動作を開始する時刻であり、時刻T2は、時刻T1で開始した通信動作を停止する時刻である。時刻T2と時刻T1の差分を時間ΔTとする。電圧V1は、時刻T1における電池の電圧値であり、電圧V2は、時刻T2における電池の電圧値である。電圧V1と電圧V2の電圧差分を降下電圧ΔVとする。ここで、図3(A)の電池残容量は、図3(B)の電池残容量より多いとする。
電池25に定常的な放電負荷を与え続けた場合に、図3に示すように、電池の電圧に変化が生じる。その電圧の変化における特徴の1つとして、時間ΔTと共に、降下電圧ΔVは急激に変化することなく徐々に電圧V1から電圧V2へと降下していく。放電負荷の停止後は時間の経過と共に電池の電圧が回復する。また、もう1つの特徴としては、電池の残容量が少ない場合、つまり、図3(A)に対して図3(B)の場合では、時間ΔTにおける降下電圧ΔVが大きくなる。
ここで扱う電池25は、負極にリチウムアルミ合金を用いた1次電池であり、当該電池は深い放電深度においても低い内部抵抗を維持するために、負極にリチウムアルミ合金を用いないリチウム1次電池などにはない図3の特性が得られる。なお、電池25として、図3と同等の特性を保有する電池を用いることも可能である。
上記の電池25の特性を、実施の形態1に適用した結果を図3に記載する。実施の形態1において、子機無線機がビーコン信号の収集処理として連続受信動作を20秒間だけ行った場合に、電池25に印加される放電負荷の電流値I_BATT26は定常的に20mAであったとする。この時、図3(A)は放電負荷を印加する前の電池の残容量が40%の状態とし、図3(B)は放電負荷を印加する前の電池の残容量が10%の状態とする。図3(A)と図3(B)の、時間ΔTは20秒間である。
図3(A)で、子機無線機が連続受信動作を開始した時刻T1の電圧V1は2.80Vとなり、連続受信動作を停止した時刻T2の電圧V2は2.75Vとなる。また、図3(B)で、子機無線機が連続受信動作を開始した時刻T1の電圧V1は2.69Vとなり、連続受信動作を停止した時刻T2の電圧V2は2.60Vとなる。
図4は、図3の電池25の特性に基づき実施の形態1を適用した結果を整理した表である。電池25の放電負荷を印加する前の残容量と、電池25に時間ΔTだけ放電負荷を印加した前後の電圧値である電圧V1及び電圧V2と、電圧V1と電圧V2との電圧差分である降下電圧ΔVとの関係を示す。ここで、CPU23内のA/D変換器は10ビットA/D変換器であり、入力電圧3.00Vでフルレンジの1023LSBとなる。ここで、LSB(Least Significant Bit)はA/D変換における量子化単位とする。
実施の形態1において、電池25の残容量が約80%、約40%、約10%の各状態をそれぞれ表のNo.1、No.2、No.3として代表ケースに扱い、図3と同様に子機無線機の連続受信動作に伴う電池25への放電負荷を時間ΔTを20秒として印加するとき、その負荷印加の開始直後と停止直前の電池25の電圧V1及び電圧V2と、その差分として得られる降下電圧ΔVと、CPU23内のA/D変換器233によりこれらの電圧V1、電圧V2、及び、降下電圧ΔVの値を数値化したA/D変換値は図4の通りとなる。
例えば、図4のNo.2のケースでは、電池25の残容量が約40%の場合に降下電圧ΔVの電圧値は0.05Vであり、その時のA/D変換値は17LSBとなる。また、図4のNo.3のケースでは、電池25の残容量が約10%の場合に降下電圧ΔVの電圧値は0.09Vであり、その時のA/D変換値は31LSBとなる。
この2つのケースで示されるように、電池の残容量に応じて、降下電圧ΔVのA/D変換値が変わってくる。なお、図3や図4に記載の数値は一例であり、使用する電池やA/D変換器により異なるものである。
図3及び図4の関係を用いれば、無線機の通信時間である時間ΔTと、それに伴って生じる電池の電圧差分である降下電圧ΔVとを入力として、当該電池の残容量の割合を導出することが出来る。更に、この電池の残容量の導出過程において、時間ΔTを例えば20秒に固定とした場合には、測定で得られた降下電圧ΔVの値に対応して、電池の残容量を求めることが出来る。
図5は、図3と同様に、実施の形態1での子機無線機の連続受信動作に伴い、時間ΔTを20秒として、電池25に対して電流値I_BATT26が定常的に20mAとなる放電負荷をかけたとき、この間にA/D変換器233で測定されるA/D変換値としての降下電圧ΔVから電池25の残容量を導出する表である。
電池25が満充電の状態を100%、また放電終止電圧の状態を0%というように電池25の残容量を百分率で表し、更にこの百分率で表した残容量を、判定を行うのに適切な範囲で区分けをする。図5の表の右列では、61%以上、60%〜31%、30%〜11%、10%以下の4つの範囲に、小数点以下を四捨五入として区分けを行っている。
そして、この百分率で表した電池残容量の各々の区分けに相当する電池25について、A/D変換器233を用いて降下電圧ΔVの値を実測から求めることで、図5の表が得られる。
この図5の表を参照することで、A/D変換器233を用いて電池25の降下電圧ΔVを求めれば、当該電池の残容量を導出することができる。例えば、降下電圧ΔVのA/D変換値が15LSBの場合に、電池25の残容量は60%〜31%程度と判定が行える。ここで、厳密に言えば図5を用いることで、電池25に降下電圧ΔVが生じる前の電池の残容量を導出することとなるが、本発明が適用されるシステムにおいては1度の連続通信動作では電池の残容量が殆ど変化しないと言えるため、降下電圧ΔVが生じた後もほぼ同じ電池残容量であると扱う。
また、図5の電池25の残容量と降下電圧ΔVとの区分けを更に細かい範囲とすることで、電池25の残容量をより細かく判定することが可能である。
図5の表は、使用する電池やA/D変換器、また、印加される負荷の条件などを、実際に運用されるものと同一として予め作成しておき、無線機内のROM231に保持しておく必要がある。
図6は、実施の形態1において、周辺の無線機に宛てたデータ送信処理がない待機中の子機無線機がとる周期的な動作を示すフローチャート図である。
ここで、子機無線機の待機中の周期的な動作とは、駆動用の電源に電池を使用する子機無線機が、数年間の連続動作を実現するために行う間欠的な動作をさす。間欠的な動作とは、例えば10秒おきに数ミリ秒間だけ無線部を動作させ、それ以外の期間は電力消費を抑えた状態をとることである。
また、電池の寿命により子機無線機が運用中に停止することがないように、子機無線機は間欠動作中に電池の残容量を反復して測定することで、新しい電池との交換時期を適宜検出し、電池容量が低下したと判断した場合には、例えば無線通信を介してサーバに通知を行うなど、外部に対して警報を発する必要がある。
子機無線機は、待機中の動作として先ず処理S11に遷移する。処理S11では、電池の消耗を抑えるため、無線部22及びCPU23を低消費電力で動作させるスリープ状態とする。ここで、子機無線機が最初に処理S11へ遷移すると同時にタイマ(a)を起動しており、当該タイマは処理S11の間も動作している。ここで、子機無線機がとるスリープ状態の継続時間を時間Ta(以下、10秒と扱う)とする。この時間Taは、適用されるシステムや使用する電池、または子機無線機の仕様に依存するものであり、これらを考慮して変更が可能である。その後、処理S12に遷移する。
処理S12では、スリープ状態が時間Taだけ経過した後に当該状態を解除するため、タイマ(a)が時間Taだけ経過したかの判定を行う。本処理でタイマ(a)が時間Taだけ経過したと判定されるまで、処理S11に遷移してスリープ状態を継続し、処理S11と処理S12とを交互に繰り返し行う。
処理S12で、タイマ(a)が時間Taだけ経過したと判定した場合に、処理S11に遷移せずに、処理S13に遷移し、スリープ状態を解除する。
処理S13では、子機無線機はデータ送信動作に切り替わり、周辺の子機無線機に対してビーコン信号を送信する。このビーコン信号の送信期間は2ms程度の短い時間である。また、処理S13ではタイマ(a)のリセットを行う。ビーコン信号を送信した後、子機無線機はデータ受信動作に切り替わり、処理S14に遷移する。
処理S14では、周辺の子機無線機からの送信要求信号を受信したかを判定する処理を行う。この送信要求信号とは、ビーコン信号を受信した子機無線機が、ビーコン信号の送信元の子機無線機に対してデータを送信したい場合に、ビーコン信号への応答として送信するものである。処理S14で当該送信要求信号を受信したと判定された場合は、処理S15へ遷移する。処理S14で当該送信要求信号を受信したと判定されない場合は、処理S15を行わずに処理S16に遷移する。
処理S15では、当該送信要求信号を送信した子機無線機から続いて送信されるデータの受信を行う。当該データは、送信要求信号の送信完了後に即時、送信されるものである。当該データの受信後、処理S16に遷移する。
処理S16では、子機無線機が周期的にビーコン信号の収集動作を行うための判定を行う。当該周期を時間Tb(以下、72時間と扱う)とし、処理S11においてタイマ(a)と合わせて起動されるタイマ(b)が時間Tbだけ経過した場合には、子機無線機は処理S17に遷移し、ビーコン信号収集動作を行う。タイマ(b)が時間Tbを経過していなければ、処理S11に遷移しスリープ状態をとる。ここで、時間Tbは、適用されるシステムや使用する電池、または子機無線機の仕様に依存するものであり、これらを考慮して変更が可能である。
処理S17では、ビーコン信号収集動作のための連続受信動作が行われる。この連続受信動作に伴い、電池25からは一定の電流値I_BATT26(以下、20mAと扱う)が流れることになり、本発明の実施の形態1では、この時の電池への放電負荷を利用して電池降下電圧ΔVの算出を行う。処理S17の各処理の詳細については、図7のフローチャート図に記載しており、これらの処理については図7の説明として後述するが、処理S17を経ることで、電池の降下電圧ΔVの算出結果が出力される。また、処理S17では、タイマ(b)のリセットを行う。処理S17の後に処理S18に遷移する。ここで、電流値I_BATT26は、適用されるシステムや使用する電池、または子機無線機の仕様に依存するものであり、これらを考慮して変更が可能である。
処理S18では、図5の表に基づいて、処理S17で出力された電池の降下電圧ΔVに対応した電池の残容量を導出する。処理S18の導出結果をもって、処理S19に遷移する。
処理S19では、処理S18で導出された電池残容量と、予め子機無線機に設定された閾値とを比較し判定する処理を行う。この閾値とは、電池25の電池容量が低下しており電池の交換が必要であると判断するための値である。例えば、閾値を電池残容量の10%と設定すると、当該残容量が10%以下となるときは電池容量が低下していると判断ができ、また同残容量が10%より大きいときは電池容量が低下していないと判断ができる。
処理S19で電池残容量が閾値より大きいと判定された場合は、処理S11に遷移しスリープ状態をとる。処理S19で電池残容量が閾値以下と判定された場合は、処理S20の電池容量低下アラーム処理に遷移する。ここで、電池容量の低下の判断基準とした閾値は、適用されるシステムや使用する電池、または子機無線機の仕様に依存するものであり、これらを考慮して変更が可能である。
処理S20では、子機無線機は電池容量が低下していることを通信手段によってセンタサーバ11に通知する。以降は、センタサーバ11への当該通知を受けて、システムの保守者が当該子機無線機の電池を交換するなどの措置が取られる。通信手段によるセンタサーバ11への通知以外にも、例えば、子機無線機がLED表示や音声出力などの外部とのインタフェース手段を備えることで、外部に対して電池容量が低下した旨の警報を発することが可能である。処理S20の後は、処理S11に遷移しスリープ状態をとるか、若しくは処理S11に遷移せずに装置の動作を停止させることも可能である。
図7は、図6の処理S17で行われる各処理の詳細を示すフローチャート図である。先ず処理S171では、CPU23が無線部22内の受信部221を制御し、子機無線機の受信動作を開始する。図6の処理S17で記載した通り、この受信動作に伴い、電池25からは一定の電流値I_BATT26が流れる。尚、受信動作を開始する前の電流値I_BATT26は1mA以下であり、また受信動作中の電流値の増減範囲は±1mA程度であり、電流値はほぼ一定で安定している。処理S171では受信動作の開始に合わせてタイマ(c)を起動する。受信動作を開始した後に、処理S172に遷移する。尚、当該受信動作は、後述する処理S176で停止されるまでの間、電池25の放電負荷が連続的かつ定常的となるように継続されるものであり、またこの受信動作の間は周辺の子機無線機からのビーコン信号を受信している。
処理S172では、CPU23内のA/D変換器233を用いて、1回目の電池電圧の測定を行う。この時の電池電圧は図4の電圧V1に相当する。電圧の測定後、処理S173に遷移する。
処理S173では、周辺の子機無線機からのビーコン信号の収集を行う。ここで収集したビーコン信号から取得した無線機番号は必要に応じて適宜、CPU23内のRAM232に保持される。ビーコン信号の収集を実施した後に、処理S174の判定処理に遷移する。
処理S174では、受信動作の開始と共に起動したタイマ(c)を用いて、受信動作が所定の時間だけ経過したことを判定する。この所定時間を時間Tcとすると、連続受信動作においてビーコン信号の収集が行われることから時間Tcは、周辺の子機無線機がとるスリープ状態の時間Taより長い時間とし、確実にビーコン信号の受信が行えるようにする必要がある。以下、時間Tcは時間Taの2倍の20秒とする。時間Tcは、適用されるシステムや使用する電池、または子機無線機の仕様に依存するものであり、これらを考慮して変更が可能である。
処理S174において、受信動作が時間Tcだけ経過していないと判定した場合は、処理S173に遷移し、ビーコン信号の収集を実施する。受信動作が時間Tcだけ経過したと判定した場合は、処理S175に遷移する。
処理S175では、CPU23内のA/D変換器233を用いて、2回目の電池電圧の測定を行う。この時の電池電圧は図4の電圧V2に相当する。電圧の測定後、処理S176に遷移する。
処理S176では、CPU23が無線部22内の受信部221を制御し、処理S171で開始した受信動作を停止する。受信動作の停止に合わせて、タイマ(c)の停止も行う。その後、処理S177に遷移する。
処理S177では、処理S173でRAM232に保持した無線機番号のリストを作成する。当該リストは、データの中継動作や電池容量低下のアラーム処理などを行う際に、データを送信する宛先の子機無線機を選定するために用いる。処理S177では、タイマ(b)のリセットも行う。その後に、処理S178に遷移する。
処理S178では、処理S172と処理S175での2回の電池電圧の測定結果から、連続受信動作で生じた電池25のA/D変換値としての降下電圧ΔVを算出し、処理S17の結果として出力を行う。
本発明での実施の形態1によれば、図6及び図7で説明した通り、無線通信システムにおいて無線機が周期的に行う連続通信動作と並行して電池の残容量の導出を行う事で、従来技術に見られるような、電池残容量を測定する目的で装置が余分に動作する時間を短縮できる。これにより、無線機が通信動作を行わない状況においては速やかに電力消費を抑えた状態を取ることが可能となり、電池の寿命を延ばす効果が得られる。
また、本発明では、図3、図4、及び、図5で説明した通り、放電負荷に伴う電池の降下電圧ΔVによって電池残容量の導出を行っており、電池の降下電圧は電池電圧の測定結果の差分であることからこの測定誤差は相殺されるために、電池残容量を導出するにあたって複雑な補正処理を行う必要がなくなり、その分の電池の電力消費が抑えられることから電池の寿命を延ばす効果が得られる。
実施の形態2.
実施の形態1では、電池の残容量を測定する際の放電負荷に、無線部22内の受信部221での連続受信動作を用いているが、この放電負荷に無線部22内の送信部222での連続送信動作を用いることも可能である。電池の残容量の測定に無線部22内の送信部222での連続送信動作を扱う形態を、本発明での実施の形態2とする。
尚、実施の形態2において、システム全体の構成及び子機無線機の構成は、実施の形態1と同様に、図1及び図2に示されるものとなる。ここで、実施の形態1と同様に、ネットワーク構成においてはメッシュ型ネットワーク以外の構成をとることが可能であり、また中継専用の子機無線機をネットワーク構成に含めることも可能である。
実施の形態2で扱う無線通信システムは、無線機間で通信を行うに際してキャリアセンス動作を伴うものであり、送信データを持つ子機無線機は当該送信データを送信する直前に、所定の時間だけ連続的に無線キャリア信号を送信する。この時の無線キャリア信号の連続送信動作を電池残容量を測定するための電池の放電負荷として利用するものである。
送信するデータを持たない子機無線機は周期的にスリープ状態をとっており、スリープ状態を解除した間にキャリアセンスを行うことで、周辺子機無線機からの無線キャリア信号の受信を行う。無線キャリア信号を受信した子機無線機は、当該信号の送信が停止した後に、当該信号の送信元の子機無線機に対して応答信号を送信する。
送信するデータを持つ子機無線機は、無線キャリア信号の送信後に送信動作を停止し、周辺の子機無線機からの応答信号を受信するために受信動作に切り替える。この受信動作中に、当該送信データの宛先となる子機無線機からの応答信号を受信した場合には再度、送信動作に切り替え、当該送信データの送信を開始する。
図8は、実施の形態2において、子機無線機が周辺子機無線機に対してデータ送信を行う動作と、その際に行われる無線キャリア信号の連続送信動作を示すフローチャート図である。
子機無線機が接続されたメータから検針情報を取得したり、周辺子機無線機から中継データを受信するなど、何らかの送信データを得たことを条件として送信動作を開始する。先ず、当該送信データを送信するため処理S801に遷移する。
処理S801では、CPU23が無線部22内の送信部222を制御し、子機無線機の送信動作を開始する。この送信動作の間、子機無線機は無線キャリア信号を送信し続ける。ここで、実施の形態1と同様に、この送信動作に伴い電池25から流れる一定の電流値はI_BATT26(20mA)である。また、送信動作を開始する前の電流値I_BATT26は1mA以下であり、送信動作中の電流値は増減範囲が±1mA程度でほぼ一定に安定している。
処理S801では、送信動作の開始に合わせてタイマ(c)を起動する。尚、当該送信動作は、後述する処理S805で停止されるまでの間、電池25の放電負荷が連続的かつ定常的となるように継続されるものとする。送信動作を開始した後に、処理S802に遷移する。
処理S802での1回目の電池電圧の測定処理は、実施の形態1での図7の処理S172と同一である。処理S802の後は処理S803に遷移する。
処理S803での送信動作が時間Tcだけ経過したことの判定処理は、実施の形態1での図7の処理S174と同一である。処理S803において、時間Tcだけ経過したと判定した場合は処理S804に遷移し、時間Tcだけ経過していないと判定した場合は、再び処理S803の判定処理を行う。
処理S804での2回目の電池電圧の測定処理は、実施の形態1での図7の処理S175と同一である。処理S804の後に処理S805に遷移する。
ここで、送信するデータがない子機無線機が周期的にとるスリープ状態の期間を時間Taとすると、無線キャリア信号を送信し続けるための連続送信動作の時間Tcは、周辺子機無線機がスリープ状態を解除しキャリアセンスにおいて確実に当該無線キャリア信号を受信するために時間Taより長い時間とする必要がある。ここでは、実施の形態1と同様に、時間Tcは時間Taの2倍としている。
処理S805では、CPU23が無線部22内の送信部222を制御し、処理S801で開始した送信動作を停止する。送信動作の停止に合わせて、タイマ(c)の停止も行う。その後、処理S806に遷移する。
処理S806では、周辺の子機無線機から送信される応答信号を受信し、その中に当該送信データの宛先となる子機無線機から送信された応答信号が含まれる場合には、処理S807に遷移する。宛先となる子機無線機からの応答信号がない場合には、処理S807は行わず処理S808に遷移する。
処理S807では、宛先となる子機無線機に対してデータ送信を行う。その後、処理S808に遷移する。
処理S808での電池残容量の算出処理は、実施の形態1での図7の処理S178と同一である。処理S808の後は処理S809に遷移する。
処理S809での電池残容量の導出処理は、実施の形態1での図6の処理S18と同一である。処理S809の後は処理S810に遷移する。
処理S810での電池残容量と閾値との比較判定処理は、実施の形態1での図6の処理S19と同一である。処理S810において、電池残容量が閾値以下であると判定した場合は処理S811に遷移し、閾値以下ではないと判定した場合は、送信動作を終了する。
処理S811での電池容量低下のアラーム処理は、実施の形態1の図6の処理S20と同一である。処理S811の後に、送信動作を終了する。
ここで、処理S809での電池残容量の導出の拠所となる図3の特性に関して、実施の形態1では連続受信動作としたところを、実施の形態2の連続送信動作と置き換えても、同様の電池電圧の降下特性が得られるものであり、図3に付随して図4及び図5についても、同様に実施の形態2への適用が可能である。
送信動作の終了後は受信動作に切り替わり、間欠受信動作を行う。間欠受信動作では、周期的にスリープ状態と、キャリアセンスを含むデータ受信のための動作を繰り返す。キャリアセンス時に周辺子機無線機から無線キャリア信号を検出した場合には、当該無線機に対して応答信号を返し、その後に当該無線機からの送信データがあればこれを受信する。その他、接続されたメータからの検針情報があればこれを受信する。間欠受信動作において送信するデータを得た場合には、送信動作を開始する。
また、処理S811での電池容量低下のアラーム処理を経て送信動作を終了した場合に、間欠受信動作を行わず装置の動作を停止させることも可能である。
本発明での実施の形態2によれば、電池の残容量を導出する過程での同電池への放電負荷として、子機無線機の連続送信動作を利用することが可能となる。これにより、実施の形態1と同様に、電池残容量を導出するために装置がとる動作を少なくすることができ、電池の電力消費を抑えられるために電池の寿命を延ばす効果が得られる。
また、無線通信システムの仕様において、ビーコン信号を用いない、若しくは、ビーコン信号は用いるが連続受信動作を行う必要がない場合であっても、連続送信動作を実施するのであれば、本発明の効果を得ることができる。
実施の形態3.
本発明での実施の形態1や実施の形態2において、電池残容量の導出を行う過程に、電池電圧の測定結果の差分を扱うことで、この測定結果に含まれる誤差の影響を抑える効果があることを説明したが、この測定結果に含まれる誤差自体を軽減する手段を、実施の形態3として提供する。
図2のA/D変換器233を用いて電圧を測定する際に含まれる測定誤差とは次のようなものである。
A/D変換器は一般に、電池から供給される駆動電圧によって、一定の基準となる信号を生成しており、電圧の測定とは、この基準となる信号と、電圧の測定で得られる入力信号とを比較することである。以下、基準となる信号を基準電圧と称し、電圧の測定で得られる入力信号を測定電圧と称する。
しかし、電池の供給する電圧は、例えば周囲温度などの時間経過に伴う外部環境の変化や、電池の経年劣化により緩やかに変動するものであり、これらの要因によってA/D変換器の駆動電圧に変動が生じた場合には、当該A/D変換器から得られる基準電圧と測定電圧は、変動が生じていない場合に比べて異なってくる。このような電池の供給電圧の変動に伴って生じる基準電圧及び測定電圧の変化が主な測定誤差となる。
上記の測定誤差に関して、電池の経年劣化に起因した電圧の変動については、劣化した電池を適切な時期で交換するか、経年劣化による特性の変化が少ない電池を使用するなどの対処が考えられる。適切な時期とは、例えば、電池からの装置への電圧供給が不十分となる前などを指す。
一方で、時間経過に伴う外部環境の変化に起因した電圧の変動については、この変動が周期的な性質を持つものであることから、当該周期における複数の電池電圧の測定結果を平均することで、測定誤差を少なくすることが可能となる。実施の形態3では、このように、ある周期に依存した変化を平均する過程を経て電池の残容量の導出を行う。
実施の形態1を基に実施の形態3を適用する場合には、子機無線機がビーコン信号を収集する周期である時間Tbを例えば80時間とすると、電池の降下電圧ΔVの測定は3日+8時間おきに行うこととなり、測定結果の時刻を毎回8時間だけずらすことができるため、平均に用いる電池の降下電圧ΔVの測定結果を直近の3回分と設定すれば、例えば0時と8時と16時の測定結果を平均するという具合に、時間帯の違いから生じる環境の変化による測定誤差を抑えることが可能となる。
実施の形態2を基に実施の形態3を適用する場合には、無線キャリア信号の送信頻度が子機無線機ごとに異なるため、電池の降下電圧ΔVの平均を求めるのに要する測定結果の回数は、システムごとに、又は、子機無線機ごとに適したものを設定する必要がある。
図9に、実施の形態1を基に実施の形態3を適用した場合のフローチャート図を示す。ここでは、時間Taは10秒、時間Tbは80時間、時間Tcは20秒、平均に用いる電池の降下電圧ΔVの測定結果は3回とする。
処理S901から処理S907までの処理は、実施の形態1の図6の処理S11から処理S17までの処理と同一である。処理S907の後に処理S908に遷移する。
処理S908では、処理S907での電池降下電圧ΔVの算出結果が直近の3回分あるかを判定する。3回分の算出結果がある場合は、処理S909に遷移する。3回分の算出結果がない場合は、処理S901に遷移する。
処理S909では、処理S907での電池降下電圧ΔVの算出結果のうち、直近の3回分を平均する。その後に処理S910に遷移する。
処理S910から処理S912までの処理は、実施の形態1の図6の処理S18から処理S20までの処理と同一である。
本発明での実施の形態3によれば、外部環境の周期的な変化に伴う電池電圧の測定結果への誤差の影響は、この周期において複数回の測定結果を平均することで抑えられ、実施の形態1及び実施の形態2よりも更に精度良く電池の残容量を導出する効果が得られる。
尚、実施の形態3では、電池の電圧測定を行う計器としてA/D変換器を使用しているが、その他の計器を使用した場合においても、その測定結果が外部環境の周期的な変化による影響を受けるものであれば、同様の効果が得られる。