[比較例1]
図1は、本発明の比較例1となるスイッチング電源装置の構成を示す回路ブロック図である。図1において、このスイッチング電源装置は、入力端子T1,T2、出力端子T3,T4、入力コンデンサ1、NチャネルMOSトランジスタ2、還流ダイオード3、インダクタL1、電流検出器4、出力コンデンサ5、および制御回路6を備える。
このスイッチング電源装置は、降圧チョッパ回路であり、入力端子T1,T2間に与えられた直流電圧Viを降圧して所望の直流電圧Voを生成し、その直流電圧Voを出力端子T3,T4間に出力するものである。出力端子T3,T4間には、内部負荷7が接続される。スイッチング電源装置および内部負荷7は、電気機器を構成する。
入力端子T1,T2は、それぞれ直流電源20の正極および負極に接続される。直流電源20は、電気機器の電源であり、入力端子T1,T2間に直流電圧Viを出力する。出力端子T3,T4間には、外部負荷21が接続される。外部負荷21は、電気機器に接続される周辺機器を示している。
外部負荷21は、スイッチ22,23、コンデンサ24、および抵抗素子25を含む。スイッチ22,23の一方端子は、それぞれ出力端子T3,T4に接続される。スイッチ22,23は、同時にオン/オフする。コンデンサ24は、スイッチ22,23の他方端子間に接続される。抵抗素子25は、コンデンサ24に並列接続される。コンデンサ24は、周辺機器の入力コンデンサを示している。抵抗素子25は、周辺機器の内部回路を示している。外部負荷21は、スイッチング電源装置の出力電圧Voによって駆動される。スイッチ22,23がオンされると、スイッチング電源装置の容量性負荷が急増することとなる。
入力コンデンサ1は、入力端子T1,T2間に接続され、入力された直流電圧Viを安定化させる。NチャネルMOSトランジスタ2のドレインは入力端子T1に接続される。NチャネルMOSトランジスタ2は寄生ダイオード2dを含む。寄生ダイオード2dのアノードおよびカソードは、それぞれNチャネルMOSトランジスタ2のソースおよびドレインに接続されている。NチャネルMOSトランジスタ2は、スイッチング素子を構成する。
NチャネルMOSトランジスタ2のゲートは、制御回路6からの制御信号CNTを受ける。制御信号CNTが「H」レベルにされるとNチャネルMOSトランジスタ2がオンし、制御信号CNTが「L」レベルにされるとNチャネルMOSトランジスタ2がオフする。
還流ダイオード3のアノードは入力端子T2および出力端子T4に接続され、そのカソードはNチャネルMOSトランジスタ2のソースに接続される。インダクタL1の一方端子はNチャネルMOSトランジスタ2のソースに接続され、その他方端子は出力端子T3に接続される。インダクタL1は、電磁エネルギーの蓄積および放出、電流の平滑化を行なう。NチャネルMOSトランジスタ2、還流ダイオード3、およびインダクタL1は、電流発生回路を構成する。
電流検出器4は、インダクタL1に流れるインダクタ電流ILの瞬時値を検出し、検出値を示す信号を制御回路6に出力する。出力コンデンサ5は、出力端子T3,T4間に接続され、出力端子T3,T4間の直流電圧Voを平滑化および安定化させる。
制御回路6は、出力電圧Voの瞬時値を検出し、その検出値が目標電圧になるように、NチャネルMOSトランジスタ2のゲートに制御信号CNTを与えてNチャネルMOSトランジスタ2をオン/オフ制御する出力電圧制御部を含む。制御信号CNTは、所定のスイッチング周期で交互に「H」レベルおよび「L」レベルにされる。「H」レベルになる時間とスイッチング周期の比はデューティ比と呼ばれる。この出力電圧制御部は、出力電圧Voが目標電圧になるように制御信号CNTのデューティ比を調整する。
また、制御回路6は、インダクタ電流ILが予め定められた上限値Ihに到達したことに応じて制御信号CNTを「L」レベルに固定し、NチャネルMOSトランジスタ2をオフ状態に固定する過電流保護部を含む。この過電流保護部は、NチャネルMOSトランジスタ2をオフ状態に固定にして電流を遮断することにより、直流電源20、スイッチング電源装置、内部負荷7、および外部負荷21を保護する。
次に、このスイッチング電源装置の動作について説明する。まず、外部負荷21のスイッチ22,23がオフされている場合について説明する。制御信号CNTが「H」レベルにされると、NチャネルMOSトランジスタ2がオンする。これにより、直流電源20の正極から入力端子T1、NチャネルMOSトランジスタ2、インダクタL1、出力コンデンサ5および内部負荷7の並列接続体、入力端子T2、および直流電源20の負極の経路で電流が流れ、インダクタL1に電磁エネルギーが蓄えられるとともに、出力コンデンサ5および内部負荷7の並列接続体に電流が供給される。
制御信号CNTが「L」レベルにされると、NチャネルMOSトランジスタ2がオフし、インダクタL1の一方端子(出力端子T3側の端子)から出力コンデンサ5および内部負荷7の並列接続体、還流ダイオード3を介してインダクタL1の他方端子に電流が流れ、インダクタL1の電磁エネルギーが放出されるとともに、出力コンデンサ5および内部負荷7の並列接続体に電流が供給される。このような経路で電流が流れる状態は、一般に還流と呼ばれる。
制御信号CNTのデューティ比を大きくすると出力電圧Voが上昇し、制御信号CNTのデューティ比を小さくすると出力電圧Voが下降する。したがって、制御信号CNTのデューティ比を調整することにより、出力電圧Voを目標電圧に一致させることができる。
この状態で外部負荷21のスイッチ22,23がオンされると、外部負荷21のコンデンサ24と抵抗素子25が出力コンデンサ5に並列接続され、出力コンデンサ5から外部負荷21に負荷電流が流れて出力電圧Voが低下する。
外部負荷21のコンデンサ24および抵抗素子25の並列接続体のインピーダンスが大きい場合は、出力電圧Voの低下の程度は小さく、制御信号CNTのデューティ比を再調整することにより、出力電圧Voを目標電圧に一致させることができる。
しかし、外部負荷21のコンデンサ24および抵抗素子25の並列接続体のインピーダンスが小さい場合(特にコンデンサ24の容量値が大きい場合)は、出力電圧Voが大きく低下し、NチャネルMOSトランジスタ2をオンさせたときにインダクタL1に過電流が流れる。インダクタL1に過電流が流れると、過電流保護機能によってNチャネルMOSトランジスタ2がオフ状態に固定され、内部負荷7および外部負荷21への直流電圧の供給が停止されてしまう。これは、動作中の電気機器に周辺機器が接続されたときに、電気機器の動作が停止してしまうことに相当する。
図2(a)(b)は外部負荷21のコンデンサ24および抵抗素子25の並列接続体のインピーダンスが大きい場合におけるスイッチング電源装置の動作を示すタイムチャートであり、特に、図2(a)は出力電圧Voを示し、図2(b)はインダクタ電流ILを示している。
図2(a)(b)において、NチャネルMOSトランジスタ2は所定の周期Tでオン/オフされている。トランジスタ2がオンされている期間Tonでは、インダクタ電流ILは時間の経過とともに直線的に増加する。トランジスタ2がオフされている期間Toffでは、インダクタ電流ILは時間の経過とともに直線的に減少する。インダクタL1の電磁エネルギーの放出が終了すると、インダクタL1に電流が流れない期間(インダクタ電流ILが0となる期間)Trが発生する。この期間Trでは出力コンデンサ5から負荷21に対して電力供給が行なわれる。
NチャネルMOSトランジスタ2がオンとオフを繰り返す1周期Tのうちに、インダクタ電流ILが0となる期間Trを持つ動作モードを不連続モードと呼び、インダクタ電流ILが0となる期間Trを持たない動作モードを連続モードと呼ぶ。制御回路7には通常、所定のスイッチング周期Tが予め設定されている。制御回路7は、オン時間およびオフ時間の和が予め定められたスイッチング周期Tに達したならば、NチャネルMOSトランジスタ2を再びオン状態にし、以後、このようなオン/オフ制御を繰り返す。
ここで、連続モードと不連続モードにおける素子の損失について説明する。還流ダイオード3は、NチャネルMOSトランジスタ2がオンする期間Tonは電流を阻止し、NチャネルMOSトランジスタ2がオフする期間ToffはインダクタL1に蓄えられた電磁エネルギーを放出させる方向に電流を流す。
還流ダイオード3の損失は、連続モードと不連続モードで異なる。すなわち、還流ダイオード3としては、ショットキダイオードまたはファーストリカバリーダイオードが使用されるが、これらの使い分けは耐圧によって決められる。還流ダイオード3に必要とされる耐圧が200V未満である場合は、主にショットキダイオードが還流ダイオード3として使用される。また、還流ダイオード3に必要とされる耐圧が200Vを越える場合は、ファーストリカバリーダイオ―ドが還流ダイオード3として使用される。
ダイオードの損失には、大きく分けて順方向損失と逆方向損失がある。順方向損失とは、ダイオードが本来電流を流す方向での損失を指し、ダイオードのアノードとカソードの間の電圧と電流との積で求められる。これに対して逆方向損失とは、本来ダイオードが電流を阻止する方向に流れる際の損失である。理想的なダイオードであれば、逆方向に電流は流れないが、実際のダイオードでは、順方向期間に流れていた電流の方向が逆転した際に速やかに電流を遮断することができず、一定の時間電流が流れてしまう。この期間を逆回復時間と呼ぶ。逆方向損失はダイオードにかかる逆電圧と逆電流の積で求まる。
ショットキダイオードでは、逆方向時間が発生する原因であるキャリアの蓄積がないために、逆方向損失はほとんど発生しない。これに対してファーストリカバリーダイオードでは逆方向損失が発生してしまう。一般的に耐圧が200Vを越えるショットキバリアダイオードはないので、高電圧用の降圧チョッパ回路の還流ダイオード3には、ファーストリカバリーダイオードを使用せざるを得ない。また逆方向損失はダイオードにかかる電圧と電流の積で求まるので、高電圧であればあるほど、この逆方向損失が大きくなってしまい、熱破壊を起こしてしまう。
この逆方向損失は、順方向電流が流れている期間から、極性を反転した際に発生する損失であり、順方向電流が予め流れていない場合は、突然逆方向の電圧を印加しても、逆方向損失は発生しない。そこで、スイッチング電源装置、特に高電圧を扱う降圧チョッパ回路では、ダイオードのこの特性を利用して不連続モードを積極的に採用する。不連続モードでは、還流ダイオード3の電流がゼロになる期間があるために、次のNチャネルMOSトランジスタ2がオンするタイミング、すなわち還流ダイオード3に逆方向の電流が流れるタイミングでも逆方向損失が発生しない。このため不連続モードを採用することにより、還流ダイオード3の損失を低減することができる。
また、インダクタL1の大きさとインダクタンスの関係について説明する。インダクタL1は磁性体あるいは空気などをコアにして、その周りに銅線を巻くことで形成できる。インダクタL1のインダクタンスは巻数の2乗に比例するので、インダクタンスを大きくするには、銅線の巻数を増やせばよい。しかし、コアの形状や銅線の線径などで制限されるので、コアの形状を大きくするなどの対応が必要となり、インダクタンスが大きくなればインダクタL1が大型化する。そこで、不連続モードで動作させるために積極的にインダクタンスを小さくするように設計すると、スイッチング電源装置の小形化を図ることができる。
図2(a)(b)では、時刻t0において外部負荷21のスイッチ22がオンされ、時刻t1においてトランジスタ2がオンされた場合が示されている。外部負荷21のスイッチ22は、トランジスタ2がオフされている期間にオンされるものとする。時刻t0において外部負荷21のスイッチ22がオンされると、負荷が急に増大して出力電圧Voが低下し、出力電圧Voを上昇させるために制御信号CNTのデューティ比が増大され、次のスイッチング周期Tにおけるトランジスタ2のオン期間Tonが長くなり、インダクタ電流ILが増大する。
ここで、インダクタL1のインダクタンスをLaとし、トランジスタ2のオン時間をt1とすると、インダクタ電流ILは、数式IL=[(Vi−Vo)/La]×t1に従って直線的に増加する。電圧Vi,Voが一定である期間では、直線の傾きを示す(Vi−Vo)/Laは一定であるので、スイッチ22,23がオンする前後でインダクタ電流ILの傾きは変わらない。しかし、制御信号CNTのデューティ比が増大されてトランジスタ2のオン時間t1が長くなると、インダクタ電流ILのピーク値が増大する。
図2(a)(b)においては、過電流保護機能が働く上限値Ihよりもインダクタ電流ILのピーク値が小さいので過電流保護機能は働かず、外部負荷21のコンデンサ24の充電が完了すると外部負荷21のインピーダンスは大きくなるので、やがてインダクタ電流ILは安定する。
また、図3(a)(b)は外部負荷21のコンデンサ24および抵抗素子25の並列接続体のインピーダンスが小さい場合におけるスイッチング電源装置の動作を示すタイムチャートであり、それぞれ図2(a)(b)と対比される図である。図3(a)(b)では、出力電圧Voが大きく低下したためトランジスタ2のオン時間が長くなり、時刻t2においてインダクタ電流ILが上限値Ihに到達する。このため、外部負荷21のコンデンサ24の充電が完了される前に過電流保護機能が働き、トランジスタ2がオフ状態に固定されて出力電圧Voが0Vまで低下する。
[比較例2]
図4は、本発明の比較例2となるスイッチング電源装置の構成を示す回路ブロック図であって、図1と対比される図である。図4を参照して、このスイッチング電源装置が図1のスイッチング電源装置と異なる点は、インダクタL1が可変インダクタンス回路30で置換され、制御回路8が制御回路31で置換されている点である。
可変インダクタンス回路30は、インダクタL1,L2およびスイッチSWを含む。インダクタL1,L2はトランジスタ2のソースと出力端子T3の間に直列接続される。スイッチSWは、インダクタL2に並列接続される。インダクタL1,L2のインダクタンスをそれぞれLa,Lbとする。スイッチSWは、通常はオンされている。スイッチSWがオンされている場合は、インダクタL2の端子間が短絡され、可変インダクタンス回路30のインダクタンスはLaとなる。スイッチSWがオフされると、可変インダクタンス回路30のインダクタンスはLa+Lbとなる。
制御回路31は、比較例1で説明した制御回路6の出力電圧制御部および過電流保護部に加え、出力電圧Voの低下分ΔVが予め定められたしきい値電圧VTHを越えたことに応じてスイッチSWをオフ状態に固定し、可変インダクタンス回路30のインダクタンスをLaからLa+Lbに増大させてインダクタ電流ILを抑制する電流抑制部を含む。
外部負荷21のコンデンサ24および抵抗素子25の並列接続体のインピーダンスが大きい場合は、外部負荷21のスイッチ22,23をオンしても出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越えないので、可変インダクタンス回路30のスイッチSWはオンしたままである。この場合における比較例2のスイッチング電源装置の動作は、図2(a)(b)で示した比較例1のスイッチング電源装置の動作と同じになる。
また、図5(a)(b)は外部負荷21のコンデンサ24の容量値が大きい場合におけるスイッチング電源装置の動作を示すタイムチャートであり、それぞれ図3(a)(b)と対比される図である。図5(a)(b)中の点線で示されるように、比較例1では外部負荷21のスイッチ22,23がオンされると、インダクタ電流ILが上限値Ihに到達して過電流保護機能が働き、トランジスタ2がオフ状態に固定された。
これに対して本比較例2では、外部負荷21のスイッチ22,23がオンされて出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越えると、可変インダクタンス回路30のスイッチSWがオフ状態に固定され、可変インダクタンス回路30のインダクタンスがLaからLa+Lbに増加する。このため、インダクタ電流ILの増大が抑制され、過電流保護機能が動作せず、トランジスタ2のオン/オフは継続される。外部負荷21のコンデンサ24の充電が終了すると、トランジスタ2のオン時間は減少し、スイッチング電源装置は不連続モードで動作する。
また、図6(a)(b)は外部負荷21の抵抗素子25の抵抗値が小さい場合におけるスイッチング電源装置の動作を示すタイムチャートであり、それぞれ図5(a)(b)と対比される図である。外部負荷21のスイッチ22,23がオンされて出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越えると、可変インダクタンス回路30のスイッチSWがオフ状態に固定され、可変インダクタンス回路30のインダクタンスがLaからLa+Lbに増加する。このため、インダクタ電流ILの増大が抑制され、過電流保護機能が動作せず、トランジスタ2のオン/オフは継続される。この場合は、抵抗素子25の抵抗値が小さいので、外部負荷21のコンデンサ24の充電が終了してもトランジスタ2のオン時間は短縮されず、スイッチング電源装置は連続モードで動作する。
しかし、スイッチング電源装置を連続モードで動作させると、還流ダイオード3に順方向電流が流れている場合に還流ダイオード3に印加する電圧の極性を反転させることとなり、還流ダイオード3において逆方向損失が発生する。したがって、還流ダイオード3の損失増大を招き、還流ダイオード3が破壊される恐れがある。
[実施の形態1]
図7は、本発明の実施の形態1によるスイッチング電源装置の構成を示す回路ブロック図であって、図4と対比される図である。図7を参照して、このスイッチング電源装置が図4のスイッチング電源装置と異なる点は、制御回路31が制御回路35で置換されている点である。
制御回路31は、比較例1で説明した制御回路6の出力電圧制御部および過電流保護部に加え、インダクタンス制御部を含む。このインダクタンス制御部は、予め定められた一定時間Tcを計時するタイマー36を含み、出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越えたか否かを判別する。そしてインダクタンス制御部は、出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越えていないと判別した場合は、スイッチSWをオン状態に維持する。またインダクタンス制御部は、出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越えたと判別した場合は、スイッチSWを一定時間Tcだけオフ状態にし、可変インダクタンス回路30のインダクタンスを一定時間TcだけLaからLa+Lbに増大させてインダクタ電流ILを制限する。
外部負荷21のコンデンサ24および抵抗素子25の並列接続体のインピーダンスが大きい場合は、外部負荷21のスイッチ22,23をオンしても出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越えないので、可変インダクタンス回路30のスイッチSWはオンしたままである。この場合における本実施の形態1のスイッチング電源装置の動作は、図2(a)(b)で示した比較例1のスイッチング電源装置の動作と同じになる。
外部負荷21のコンデンサ24の容量値が大きい場合、本実施の形態1のスイッチング電源装置の動作は、図5(a)(b)で示した比較例2の動作と同じになる。すなわち、外部負荷21のスイッチ22,23をオンすると、出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越え、可変インダクタンス回路30のスイッチSWが一定時間Tcだけオフ状態に固定され、可変インダクタンス回路30のインダクタンスがLaからLa+Lbに一定時間Tcだけ増加する。
このため、インダクタ電流ILの増大が抑制され、過電流保護機能は動作せず、トランジスタ2のオン/オフは継続される。一定時間Tcが経過すると、スイッチSWは再度オンし、可変インダクタンス回路30のインダクタンスがLa+LbからLaに減少する。可変インダクタンス回路30のインダクタンスがLa+Lbにされている期間に外部負荷21のコンデンサ24の充電が終了し、インダクタ電流ILは減少し、スイッチング電源装置は不連続モードで動作する。
また、図8(a)(b)は外部負荷21の抵抗素子25の抵抗値が小さい場合におけるスイッチング電源装置の動作を示すタイムチャートであり、それぞれ図6(a)(b)と対比される図である。外部負荷21のスイッチ22,23をオンすると、出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越え、可変インダクタンス回路30のスイッチSWが一定時間Tcだけオフ状態に固定され、可変インダクタンス回路30のインダクタンスがLaからLa+Lbに増加する。この期間では、インダクタ電流ILの増大が抑制され、過電流保護機能が動作せず、トランジスタ2のオン/オフは継続される。
一定時間Tcが経過して可変インダクタンス回路30のスイッチSWがオンされると、可変インダクタンス回路30のインダクタンスがLa+LbからLaに減少する。これにより、インダクタ電流ILが増大して上限値Ihに到達し、過電流保護機能が動作してトランジスタ2がオフ状態に固定される(時刻t3)。
この実施の形態1では、外部負荷21のスイッチ22,23がオンされた場合は、一定時間Tcだけ可変インダクタンス回路30のインダクタンスを増大させる。したがって、外部負荷21のコンデンサ24の容量値が大きい場合に、コンデンサ24の充電が終わるまで過電流保護機能が動作するのを防止することができ、コンデンサ24の充電の終了後は外部負荷21に直流電圧Voを正常に供給することができる。
また、外部負荷21の抵抗素子25の抵抗値が小さい場合は、一定時間Tcの経過後に過電流保護機能を動作させることができるとともに、連続モードに移行することによる還流ダイオード3の損失の増大を防止することができる。
また、最近の電気機器では、動作中の電気機器に周辺機器を接続する必要が生じている。たとえば、電気機器に含まれるスイッチング電源装置の出力端子T3,T4が外部接続端子対とされ、その外部接続端子対にメンテナンス用の周辺機器を取り付けて本電気機器の状態を把握する場合が挙げられる。
連続動作中の電気機器の電源を一旦落とすことができず、稼働状態の電気機器に周辺機器を接続する際、周辺機器の入力コンデンサが前もって充電されていない場合は、たとえその周辺機器の消費電流が小さくても、接続した瞬間に周辺機器の入力コンデンサを充電する状態(容量性負荷が急増、急変する状態)に陥る。しかし、このような現象は過渡状態であるので、その状態の間に過電流保護機能が動作して電気機器が停止してしまうと、電気機器の信頼性を損なう。そこで、本実施の形態1では、過渡状態の期間中に可変インダクタンス回路30のインダクタンスを一定時間Tcだけ大きくすることで、過電流保護機能が動作することを防止している。
また、電気機器に外付け機器を接続している場合において、何らかの原因で外付け機器が半故障状態になったときに、その状態を検知することができずに可変インダクタンス回路30のインダクタンスが大きくなった状態が継続され、連続モードが継続されて還流ダイオード3が破損する恐れがある。本実施の形態1では、外付け機器が半故障状態になってスイッチSWがオフした場合でも、一定時間Tcの経過後にスイッチSWがオンして可変インダクタンス回路30のインダクタンスが小さくなるので、過電流保護機能が動作し、還流ダイオード3の破損を防止することができる。
また、本実施の形態1では、通常はインダクタL2に電流を流さず、外部負荷21のスイッチ22,23を接続した場合もインダクタL2には一定時間Tcしか電流を流さないので、インダクタL2の温度上昇を小さくすることができる。このため、インダクタL2を冷却する手段は不要であるので、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。これに対して比較例2では、外部負荷21のスイッチ22,23を接続した場合はインダクタL2に電流が流れ続け、インダクタL2の温度上昇が大きくなるので、インダクタL2を冷却する手段が必要となり、装置の大型化、高コスト化を招く。
なお、本実施の形態1では、出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越えたことに応じて一定時間Tcだけ可変インダクタンス回路30のインダクタンスを増大させたが、これに限るものではなく、トランジスタ2のオン期間におけるインダクタ電流ILが予め定められたしきい値電流ITHを越えたことに応じて一定時間Tcだけ可変インダクタンス回路30のインダクタンスを増大させても構わない。ただし、ITH<Ihである。
また、トランジスタ2のオン期間におけるインダクタ電流ILの増加速度(A/s)がしきい値速度vthを越えたことに応じて一定時間Tcだけ可変インダクタンス回路30のインダクタンスを増大させても構わない。
また、本実施の形態1では、本願発明が降圧チョッパ回路に適用された場合について説明したが、これに限るものではなく、本願発明は他のスイッチング電源装置、たとえば昇圧回路、フォワード電源回路、フライバック電源回路にも適用可能である。
また、インダクタL1,L2としては、チョークコイルを使用してもよいし、変圧器の1次巻線を使用してもよい。たとえば、フライバック電源回路においては、インダクタL1としてフライバックトランスの1次巻線を用いてもかまわない。
また、可変インダクタンス回路30のスイッチSWを一定時間Tcだけオフさせるために、制御回路35内にタイマー36を設けたが、スイッチSWを一定時間Tcだけオフさせることが可能であれば、どのような手段を設けても構わない。たとえば、タイマー36が制御回路35の外部に設けられていても構わない。
また、可変インダクタンス回路30のスイッチSWをオフさせる一定時間Tcは、厳密に規定する必要はない。たとえば、過電流状態により破壊する恐れのある素子の一つとして還流ダイオード3があるが、過電流が流れ始めてから素子破壊が発生するまでには一定の猶予期間があり、また還流ダイオード3がヒートシンク等冷却器に接続される場合はさらにその猶予期間は増す。
したがって、外部負荷21のコンデンサ24が満充電状態になったときに速やかにスイッチSWをオンさせることは必ずしも必要でない。また逆に、外部負荷21のスイッチ22,23をオンしたときにおけるインダクタ電流ILの急激な増加はコンデンサ24の充電状況によるが、必ずしもコンデンサ24が満充電されるまでスイッチSWをオフさせる必要はなく、ある程度急激な電流増加が抑制されたときにスイッチSWをオンさせてもよい。
また、スイッチSWをオン/オフさせた場合には、次の一定時間(たとえば1分間)はスイッチSWをオン/オフさせる動作を停止させる機能を付加してもよい。この場合は、本実施の形態1のスイッチング電源装置の動作をより明確に保証することができる。
[実施の形態2]
図9は、この発明の実施の形態2によるスイッチング電源装置の構成を示す回路ブロック図であって、図7と対比される図である。このスイッチング電源装置が図7のスイッチング電源装置と異なる点は、可変インダクタンス回路30が可変インダクタンス回路40で置換されている点である。
可変インダクタンス回路40は、インダクタL11,L12とスイッチSWを含む。インダクタL11は、NチャネルMOSトランジスタ2のソースと出力端子T3の間に接続される。インダクタL12およびスイッチSWは、インダクタL11の2つの端子間に直列接続される。電流検出器4は、可変インダクタンス回路40に流れる電流の瞬時値を検出し、検出値を示す信号を制御回路35に与える。
次に、このスイッチング電源装置の動作について説明する。外部負荷21のスイッチ22,23がオフされている定常状態では、スイッチSWはオンされ、2つのインダクタL11,L12は並列接続される。インダクタL11,L12のインダクタンスをそれぞれLc,Ldとすると、可変インダクタンス回路40のインダクタンスはLc/(1+Lc/Ld)となる。
次に、外部負荷21のスイッチ22,23がオンされて出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越えると、スイッチSWが一定時間Tcだけオフされ、可変インダクタンス回路40のインダクタンスは一定時間だけLcに増大し、インダクタ電流ILの増大が抑制される。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。この実施の形態2でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
[実施の形態3]
図10は、この発明の実施の形態3によるスイッチング電源装置の構成を示す回路ブロック図であって、図7と対比される図である。このスイッチング電源装置が図7のスイッチング電源装置と異なる点は、制御回路35が制御回路35Aで置換されている点である。また、外部負荷21の代わりに、外部負荷21Aが出力端子T3,T4に接続される。
外部負荷21Aは、スイッチ22,23、コンデンサ24、および抵抗素子25を含み、スイッチ22,23がオンされているか否かを示す制御信号CNTAを出力する。たとえば、スイッチ22,23がオフされている場合は制御信号CNTAは「L」レベルにされ、スイッチ22,23がオンされている場合は制御信号CNTAは「H」レベルにされる。
制御回路35Aは、比較例1で説明した制御回路6の出力電圧制御部および過電流保護部に加え、インダクタンス制御部を含む。このインダクタンス制御部は、制御信号CNTAが「H」レベルにされているか否かに基づいてスイッチ22,23がオンされたか否かを判別する。そしてインダクタンス制御部は、スイッチ22,23がオンされたと判別した場合は、一定時間TcだけスイッチSWをオフさせ、可変インダクタンス回路30のインダクタンスを一定時間TcだけLaからLa+Lbに増大させる。また、インダクタンス制御部は、スイッチ22,23がオンされていないと判別した場合は、スイッチSWをオン状態に維持し、可変インダクタンス回路30のインダクタンスをLaに設定する。
次に、動作について説明する。外部負荷21Aのスイッチ22,23がオフされている場合は、制御信号CNTAが「L」レベルにされ、可変インダクタンス回路30のスイッチSWがオンされ、トランジスタ2がオン/オフされて出力電圧Voが目標電圧に維持される。
次いで外部負荷21Aのスイッチ22,23がオンされると、制御信号CNTAが「H」レベルにされ、可変インダクタンス回路30のスイッチSWが一定時間Tcだけオフされ、可変インダクタンス回路30のインダクタンスがLaからLa+Lbに一定時間Tcだけ増大され、インダクタ電流ILの増大が抑制される。
他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。この実施の形態3でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
また、出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越えるか否かに関係なく、制御信号CNTAの論理レベルに基づいて容量性負荷が急増したか否かを判別するので、実施の形態1よりも、容量性負荷が急増したか否かを迅速に判別することができる。
なお、本実施の形態3では、1つの外部負荷21Aが接続された場合について説明したが、複数の外部負荷21Aが並列接続され、それらのうちの予め定められた数以上の外部負荷21Aのスイッチ22,23がオンされた場合にスイッチSWを一定時間Tcだけオフさせるようにしてもよい。
また、外部負荷21Aが接続された場合に、コンデンサ24の容量値と抵抗素子25の抵抗値を含む外部負荷21Aの仕様を制御回路35Aが検知できるようにし、特定の外部負荷21Aのスイッチ22,23がオンされた場合だけスイッチSWを一定時間Tcオフさせるようにしてもよい。
さらに、仕様が異なる複数の外部負荷21Aが並列接続された場合に、コンデンサ24の容量値と抵抗素子25の抵抗値を含む各外部負荷21Aの仕様を制御回路35Aが検知できるようにし、外部負荷21Aの組合せに応じて、スイッチSWを一定時間Tcオフさせる動作を実施するか否かを判別するようにしてもよい。
[実施の形態4]
図11は、この発明の実施の形態4によるスイッチング電源装置の構成を示す回路ブロック図であって、図7と対比される図である。このスイッチング電源装置が図7のスイッチング電源装置と異なる点は、可変インダクタンス回路30が可変インダクタンス回路45で置換されている点である。可変インダクタンス回路45は、可変インダクタンス回路30のスイッチSWをNチャネルMOSトランジスタ46,47で構成したものである。
トランジスタ46のドレインはインダクタL2の一方端子(インダクタL1側の端子)に接続され、トランジスタ46,47のソースは互いに接続され、トランジスタ46のドレインはインダクタL2の他方端子(出力端子T3側の端子)に接続される。また、トランジスタ46,47のゲートは、互いに接続されて制御回路35からの制御信号CNTBを受ける。制御信号CNTBが「H」レベルにされている場合はトランジスタ46,47がオンし、制御信号CNTBが「L」レベルにされている場合はトランジスタ46,47がオフする。
次に、動作について説明する。外部負荷21のスイッチ22,23がオフされている場合は、制御信号CNTBが「H」レベルにされ、可変インダクタンス回路45のトランジスタ46,47がオンされ、トランジスタ2がオン/オフされて出力電圧Voが目標電圧に維持される。
次いで外部負荷21のスイッチ22,23がオンされると、制御信号CNTBが一定時間Tcだけ「L」レベルにされ、可変インダクタンス回路45のトランジスタ46,47が一定時間Tcだけオフされ、可変インダクタンス回路45のインダクタンスがLaからLa+Lbに一定時間Tcだけ増大され、インダクタ電流ILの増大が抑制される。
ここで、スイッチSWを2つのNチャネルMOSトランジスタ46,47で構成した理由について説明する。仮にトランジスタ46,47がないスイッチング電源装置を想定すると、トランジスタ2がオンされている場合はインダクタL1,L2の直列接続体に入力電圧Viと出力電圧Voの差の電圧Vi−Voが印加され、トランジスタ2がオフされている場合はインダクタL1,L2の直列接続体に−Voが印加される。つまり、トランジスタ2がオンされている期間とトランジスタ2がオフされている期間では、インダクタL1,L2の直列接続体に印加される電圧の向きが逆になる。
また、NチャネルMOSトランジスタの製造過程において、NチャネルMOSトランジスタには必ず寄生ダイオードができてしまう。このため、スイッチSWを1つのNチャネルMOSトランジスタで構成すると、トランジスタ2のオン期間またはオフ期間においてスイッチSWが必ずオンすることとなり、スイッチSWとしても役目を果たさない。
そこで本実施の形態4では、ソース同士が接続された2つのNチャネルMOSトランジスタ46,47でスイッチSWを構成した。この場合は、2つのNチャネルMOSトランジスタ46,47の2つの寄生ダイオード46d,47dのアノード同士が接続されるので、2つの寄生ダイオード46d,47dがオンすることがない。
また、NチャネルMOSトランジスタ46,47のソース同士を接続したので、1つの制御信号CNTBをNチャネルMOSトランジスタ46,47のゲート−ソース間に与えて制御することが可能なので、制御信号数を増やすことなく実現が容易に可能である。
[実施の形態5]
図12は、この発明の実施の形態5によるスイッチング電源装置の構成を示す回路ブロック図であって、図7と対比される図である。このスイッチング電源装置が図7のスイッチング電源装置と異なる点は、インダクタL1がスイッチングトランス50の1次巻線50aで構成され、ダイオード51、コンデンサ52、および絶縁回路53が追加されている点である。
NチャネルMOSトランジスタ2のオン/オフの基準電圧となるソースの電圧が制御信号CNTの「L」レベルの電圧(接地電圧)と異なる場合、制御信号CNTをNチャネルMOSトランジスタ2のゲートに直接供給することはできず、パルストランスのような絶縁回路53を介して供給する必要がある。
そこで、本実施の形態5では、スイッチングトランス50の1次巻線50aでインダクタL1を構成し、2次巻線50bに発生する交流電圧をダイオード51およびコンデンサ52によって整流して直流電圧を生成し、その直流電圧を絶縁回路53の電源電圧として使用している。したがって、スイッチング電源装置の外部から絶縁回路53用の直流電源電圧を供給する必要がない。
なお、本実施の形態5では、1つのスイッチングトランス50の1次巻線50aでインダクタL1を構成したが、これに限るものではなく、複数のスイッチングトランス50の1次巻線50aを用いてインダクタL1を構成し、複数のスイッチングトランス50の2次巻線50bに発生する電圧を整流して複数の直流電圧を生成してもよい。この場合は、スイッチング電源装置内の複数箇所に直流電圧を供給することが可能となる。
たとえば、図11のスイッチング電源装置では、制御信号CNTおよび制御信号CNTB用の2つの絶縁回路53が必要となる。この場合、2つのスイッチングトランス50の1次巻線50aを用いてインダクタL1を構成し、2つのスイッチングトランス50の2次巻線50bに発生する電圧を整流して2つの直流電圧を生成し、2つの直流電圧を2つの絶縁回路53に供給すればよい。
[実施の形態6]
図13は、この発明の実施の形態6によるスイッチング電源装置の構成を示す回路ブロック図であって、図7と対比される図である。このスイッチング電源装置が図7のスイッチング電源装置と異なる点は、制御回路35が制御回路35Bで置換され、出力端子T3,T4にコネクタCN1が接続されている点である。また、外部負荷21の代わりに、外部負荷21Bが使用される。
外部負荷21Bは、コネクタCN2、コンデンサ24、および抵抗素子25を含む。コネクタCN1にコネクタCN2を嵌め込むと、スイッチング電源装置の出力端子T3,T4間に外部負荷21Bのコンデンサ24および抵抗素子25の並列接続体が接続されるようになっている。
制御回路35Bは、比較例1で説明した制御回路6の出力電圧制御部および過電流保護部に加え、インダクタンス制御部を含む。このインダクタンス制御部は、インダクタ電流ILが予め定められたしきい値電流ITHを越えたことに応じて一定時間TcだけスイッチSWをオフさせ、可変インダクタンス回路30のインダクタンスを一定時間TcだけLaからLa+Lbに増大させる。
また、インダクタンス制御部は、インダクタ電流ILがしきい値電流ITHを越えていない場合は、スイッチSWをオン状態に維持し、可変インダクタンス回路30のインダクタンスをLaに設定する。ただし、しきい値電流ITHはインダクタ電流ILの上限値Ihよりも小さい(ITH<Ih)。インダクタ電流ILの定格値をIRとすると、たとえば、ITH=1.3×IRであり、Ih=2×IRである。
次に、動作について説明する。外部負荷21BのコネクタCN2がスイッチング電源装置のコネクタCN1に接続されていない場合は、可変インダクタンス回路30のスイッチSWがオンされ、トランジスタ2がオン/オフされて出力電圧Voが目標電圧に維持される。
次いで外部負荷21BのコネクタCN2がスイッチング電源装置のコネクタCN1に接続されると、外部負荷21Bのコンデンサ24に大きな電流が過渡的に流れる。このときにインダクタ電流ILがしきい値電流ITHを越えると、可変インダクタンス回路30のスイッチSWが一定時間Tcだけオフされ、可変インダクタンス回路30のインダクタンスがLaからLa+Lbに一定時間Tcだけ増大される。これにより、インダクタ電流ILの増大が抑制され、トランジスタ2が過電流保護部によってオフ状態に固定されることが防止される。
一定時間Tcの経過後は、可変インダクタンス回路30のスイッチSWがオンされ、可変インダクタンス回路30のインダクタンスがLaに設定される。このときには、コンデンサ24の充電電流が減少しており、インダクタ電流ILがしきい値電流IThよりも小さくなっているので、スイッチング電源装置は正常に動作する。
他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。この実施の形態6でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
なお、本実施の形態6では、インダクタ電流ILがしきい値電流ITHを越えたことに応じて一定時間Tcだけ可変インダクタンス回路30のインダクタンスを増大させたが、これに限るものではなく、インダクタ電流ILの増加速度(A/s)がしきい値速度vthを越えたことに応じて一定時間Tcだけ可変インダクタンス回路30のインダクタンスを増大させても構わない。また、出力電圧Voの低下分ΔVがしきい値電圧VTHを越えたことに応じて一定時間Tcだけ可変インダクタンス回路30のインダクタンスを増大させても構わない。
[実施の形態7]
図14は、この発明の実施の形態7によるスイッチング電源装置の構成を示す回路ブロック図であって、図7と対比される図である。このスイッチング電源装置が図7のスイッチング電源装置と異なる点は、制御回路35が制御回路35Bで置換されている点である。また、外部負荷21の代わりに、外部負荷21Cが使用される。
外部負荷21Cは、抵抗素子25を含む。外部負荷21Cは、動作中に抵抗素子25の端子間がショートする可能性がある負荷である。図14では、ショート部は抵抗素子25に並列接続されたスイッチ55で示されている。抵抗素子25の端子間がショートすることは、スイッチ55がオンすることと等価である。制御回路35Bは、実施の形態6で説明した通りである。
次に、動作について説明する。外部負荷21Cがスイッチング電源装置の出力端子T3,T4に接続され、ショートが発生していない場合(すなわちスイッチ55がオフしている場合)は、可変インダクタンス回路30のスイッチSWがオンされ、トランジスタ2がオン/オフされて出力電圧Voが目標電圧に維持される。
次いで外部負荷21Cにおいてショートが発生すると(すなわちスイッチ55がオンすると)、ショート部(すなわちスイッチ55)に電流が流れる。このときにインダクタ電流ILがしきい値電流ITHを越えると、可変インダクタンス回路30のスイッチSWが一定時間Tcだけオフされ、可変インダクタンス回路30のインダクタンスがLaからLa+Lbに一定時間Tcだけ増大され、インダクタ電流ILの増大が抑制される。
一定時間Tcの経過後は、可変インダクタンス回路30のスイッチSWがオンされ、可変インダクタンス回路30のインダクタンスがLaに設定される。このときスイッチ55がオンしたままなので、インダクタ電流ILが増大する。インダクタ電流ILが上限値Ihに到達すると、制御回路35Bの過電流保護部によってトランジスタ2がオフ状態にされ、電流の出力が停止される。
他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。この実施の形態7でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。