JP6097286B2 - Cd47とトロンボスポンジンファミリーに属する蛋白質との結合に対するアンタゴニストペプチド - Google Patents

Cd47とトロンボスポンジンファミリーに属する蛋白質との結合に対するアンタゴニストペプチド Download PDF

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Description

本発明は、二つの蛋白質間の分子相互作用の分野に関する。より具体的には、本発明は、トロンボスポンジンファミリーに属する細胞外蛋白質と細胞膜の表面上に位置する受容体であるCD47との間の相互作用に関する。
本発明は、主に腫瘍、血栓性および心血管疾患の分野で潜在的な応用を有することになるであろう。より具体的には、本発明は、トロンボスポンジンファミリーに属する蛋白質のCD47結合ドメインに、二つの物の間の結合を防ぐように特異的に結合する能力を有するペプチドに関する。
トロンボスポンジン(TSP)及び特にTSP1とTSP2は、CD47受容体に結合して、細胞の一部に対する細胞応答を誘導するシグナルを生成する能力を有することが知られている蛋白質である。このような相互作用が、アポトーシスや炎症としても知られているプログラム化細胞死の制御などの基本的な細胞プロセスに特に重要な役割を果たしていると思われている。
例えば、本発明者によって最近なされた仕事により、FTC細胞としても知られるヒト濾胞性甲状腺癌細胞に対するTSP1の抗アポトーシスの役割が明らかになった(Rath et al., 2006)。また、他の研究により、TPS1発現の減少は、アンチセンスストラテジーの使用による扁平上皮癌表現型の可逆性を導くことが示された。
しかしながら、乳癌細胞の発生におけるTPS1の役割を試して証明するために行われた更なる研究は矛盾する結果となり、実際に、いくつかの研究により、TSP1はプロアポトーシス効果を有すると結論付けされ、すなわち、TSP1が乳腺腫瘍の成長を阻害することが示唆されている(Esemuede et al., 2004; Manna and Frazier 2004)。しかしながら、それに反して、他の研究により、TSP1は抗アポトーシスの役割を果たし、及び/又は、これらの腫瘍細胞の浸潤特性を高めると見られる逆の概念が擁護されている(Wang et al., 1996a, 1996b)。
したがって、トロンボスポンジンファミリーに属する蛋白質とそれらの受容体との間の相互作用に至る分子メカニズの理解ならびにその後の細胞応答の検出が、癌細胞の発生及び増殖を阻害するように設計された治療ストラテジーを考案する上で重要なステップを構成する。
特定の先行技術文献は、癌性か否かに拘わらず細胞のアポトーシスの割合を減少もしくは上昇させるストラテジーを開発するためには、トロンボスポンジンとその受容体、特にCD47と間の相互作用の特性を使用することを勧めている。
かくして、従来技術、例えば米国特許第7582725号明細書においては、CD47受容体又はトロンボスポンジン−1のいずれかに結合する薬剤が、前記TSP1と前記CD47受容体との間の結合を阻害するために使用できることが知られている。この相互作用を防止することが、重要な役割を果たしている特に治癒過程に関与している線維芽細胞や上皮細胞などの特定の細胞のアポトーシスの割合を有意に低下させると考えられている。好ましくは、TSP1蛋白質により誘導されるアポトーシスの割合を減少させる目的で、一般構造式:R−A1−Y−V−V−Mのアミノ酸配列を有するペプチドが使用される。
しかしながら、本発明の場合には、標的化される細胞と到達すべき目標は全く異なる。実際、我々の場合の目的は、アポトーシスを停止させようとすることではなく、逆に、癌細胞の死(アポトーシス及び/又は壊死)を促進することである。したがって、前記文献で提案されたペプチドは、当該問題を解決するには、すなわち、特にアポトーシスへの参入を促進することにより癌細胞の浸潤能を阻害するためには適していない。
また、従来技術には、TSP蛋白質又はCD47受容体のいずれかに特異的なモノクローナル抗体の使用が含まれる。これは、これら二つの蛋白質間の相互作用を防止する、したがって、その後の細胞応答を阻害する結果を有する。
しかしながら、この技術の主な欠点は、蛋白質の一方又は他方に対するモノクローナル抗体がTSPとCD47との間の正確な結合部位に特異的に結合しないことである。かくして、二つの蛋白質間の相互作用のブロックは最適ではなく、TSP又はCD47のいずれかに抗体が固定することが、それら蛋白質とそれらの他の天然のリガンドとの相互作用を防ぐことができる。その結果、体内に必須であって前記の蛋白質の一方又は他方を使用する他の細胞プロセスを阻害又は防止することができる。さらに、このようなストラテジーの別の主要な欠点は、抗CD47抗体が特定の場合には受容体のアゴニストとして作用し、すなわち、それが相互作用により受容体を活性化することができるという事実に在る。
また、カナダ特許出願公開第2446391号明細書では、CD47受容体とそのリガンドであるTSP1蛋白質との間の結合特性が使用されている。より具体的には、結合特性は、免疫応答において、特に利用される炎症応答において、これら二つの分子の役割である。したがって、この特許は、特にサプレッサーT細胞の活性を阻害するためにCD47受容体に対するモノクローナル抗体の使用を開示している。このような阻害は、様々な細胞プロセス、特に感染性病原体の中和、アレルギー反応、自己免疫疾患、炎症性疾患などにおいて有益な役割を果たしていると考えられている。
しかしながら、前記で説明したように、二つの蛋白質の一方又は他方に対するモノクローナル抗体の使用は、満足のいく解決策を構成しない。
また、国際公開第2010/017332号は、CD47受容体とトロンボスポンジンとの間の相互作用の阻害に関する。特に、この特許は、腫瘍の外科的除去を容易にするために、放射線療法による患者の治療前にこの相互作用を阻害する非常に多様な薬剤の使用を提供している。実際、TSP1/CD47の相互作用の防止が、放射線への暴露によって引き起こされる損傷に対する免疫系における細胞の保護に有利に働くと考えられている。その結果、腫瘍細胞に対する免疫応答がかなり上昇すると考えられている。
しかしながら、使用される薬剤は、TSPのCD47受容体への結合を特異的にブロックするためには適していない。
本発明は、トロンボスポンジンファミリーに属する蛋白質、特にTSP1及びTSP2との間のCD47の相互作用のアンタゴニストペプチドを提案することにより、従来技術の様々な欠点を少なくとも部分的に克服する可能性を提供する。特に有利な面では、CD47受容体と相互作用するTSPのドメイン上にのみにペプチドが固定し、それによって、TSPの他のドメインとCD47の全細胞外ドメインをフリーにして、それらがそれらの天然のリガンドに結合できるようにする。本発明の本質、すなわちアンタゴニストペプチドは、活性物質の送達を容易にし、免疫原性を制限しながら標的細胞におけるそのバイオアベイラビリティを改善すると考えられる。別の利点は、アンタゴニストペプチドは、CD47とTSP1との結合及びTSP2との結合を一度に阻害することができるという事実に在る。
この趣旨で、本発明は、CD47受容体とトロンボスポンジンファミリー又はTSPに属する蛋白質との間の結合に対するアンタゴニストペプチドに関する。
本発明によるペプチドは、特に以下の配列S1を有する。
S1:R1−R2−R3−S−Q−L−L−K−G−R4−R5−R6
特に有利な面では、前記ペプチドは、前記CD47受容体とTSPとの間の相互作用を防止するように、TSPと前記CD47受容体との間の結合部位でTSPのC−末端と特異的に相互作用する。
一つの実施形態では、基R1、R3及びR5は、それぞれイソロイシン(I)及び/又はロイシン(L)及び/又はバリン(V)及び/又はアラニン(A)から選択される一つの非極性アミノ酸に対応する。
他の一つの興味ある実施形態では、基R2及びR4は、それぞれグルタミン酸(E)及び/又はアスパラギン酸(D)から選択される負荷電極性アミノ酸に対応する。
有利には、R6は、セリン(S)又はスレオニン(T)から選択されるヒドロキシ基を含む非荷電極性アミノ酸に対応する。
明らかに、これらの実施形態は本発明を限定するものではない。実際に、前記したように、ペプチドの環化を可能にするように基R1及びR6はシステイン(C)に対応することができる。
特に有利な面では、本発明によるペプチドの配列S1は、S2として同定される以下の配列に等しいものである。
S2:I−E−V−S−Q−L−L−K−G−D−A−S
特に好ましい実施形態では、前記の式の本発明によるペプチドは環化される。
さらにより優先的には、前記ペプチドの環化は、システインタイプ(C)の二つのアミノ酸の間のジスルフィド架橋によって達成される。
かくして、特に有利な面では、本発明によるペプチドは、配列S3として同定される以下の配列に等しい配列S1を有する。
S3:C−E−V−S−Q−L−L−K−G−D−A−C
有利な一つの実施形態では、本発明によるペプチドは、組換え製造によって得られる。
さらにより優先的には、前記ペプチドは化学合成により得られる。
また、本発明は癌の治療におけるペプチドの使用に関する。
より詳細には、該ペプチドは、特に濾胞性甲状腺癌、乳癌又は黒色腫の治療に使用することができる。
しかしながら、この例は網羅的なものではなく、本発明によるペプチドは、また、例えば、膵臓癌又は結腸癌などの他のタイプの癌を治療するのに有用であると見出すこともできる。
また、本発明は、トロンボスポンジン−1とCD47受容体との間の相互作用を防止し、そしてこの相互作用の癌細胞に対する抗アポトーシス効果を阻害するためのペプチドの使用に関する。
また、本発明は、トロンボスポンジン−2とCD47受容体との間の相互作用を防止し、そしてこの相互作用の癌細胞に対する抗アポトーシス効果を阻害するためのペプチドの使用に関する。
また、本発明は、50未満のいくつかのアミノ酸を含み、本発明による配列S2と少なくとも60%の相同性、好ましくは80%の相同性、さらに好ましくは95%の相同性を有するペプチドを含むポリペプチドに関する。
さらに、本発明は、本発明によるペプチドをコードする単離された核酸に関する。
本明細書では、アミノ酸についての国際的な一文字コードが使用される。したがって、Aはアラニン(Ala)に、Cはシステイン(Cys)に、Dはアスパラギン酸(Asp)に、Eはグルタミン酸(Glu)に、Fはフェニルアラニン(Phe)、Gにグリシン(Gly)に、Hはヒスチジン(His)に、Iはイソロイシン(Ile)に、Kはリシン(Lys)に、Lはロイシン(Leu)に、Mはメチオニン(Met)に、Nはアスパラギン(Asn)に、Pはプロリン(Pro)に、Qはグルタミン(Gln)に、Rはアルギニン(Arg)に、Sはセリン(Ser)に、Tはスレオニン(Thr)に、Vはバリン(Val)に、Wはトリプトファン(Trp)に、Yはチロシン(Tyr)に対応する。
本発明は多くの利点を有する。アンタゴニストペプチドは、一方では、CD47受容体と相互作用するTSPのドメイン上にのみ固定して、それによって、TSPの他のドメインとCD47の全細胞外ドメインをフリーにして、それらがそれらの天然のリガンドに結合できるようにする。これによって、活性物質、本明細書ではアンタゴニストペプチドの送達が容易にされ、免疫原性を制限しながら、標的細胞におけるそのバイオアベイラビリティを改善する。他方、アンタゴニストペプチドはまた、CD47とTSP1との結合及びTSP2との結合を一度に阻害する。実際に、大部分のことはTSP1上で行われているが、TPS1はTSP2と高度の相同性を示す。
さらに、TSP1とTSP2との間の相同性の割合は、特にそれらのカルボキシ末端(C−末端)において高く、より具体的には、一方ではCD47受容体に関してTSP1と同様の方法でTSP2は作用し、他方では本発明によるペプチドはTSP2蛋白質とD47受容体との間の相互作用を阻害すると信じるように導く問題の配列において、高い。
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、本発明の非限定的な実施形態についての以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
図1は、蛋白質(y軸)1μgにつき1時間当たりに放出されるパラ−ニトロアニリンの量を測定して得られた、アポトーシスのマーカーであるカスパーゼ−3活性を示す。カスパーゼ−3活性は、アポトーシスを誘導する抗癌分子であるカンプトテシン(Cpt)又はドキソルビシン(Dox)の存在下で、TSP1の存在下又は非存在下で、濾胞性甲状腺癌細胞で測定される。 図2は、TSP1のC末端ドメインに由来するペプチド4N1(K−R−F−Y−V−V−M−W−K)及びCD47受容体の、カンプトテシン(Cpt)又はドキソルビシン(Dox)により誘導されるアポトーシスの制御に対する役割を示している。これを達成するために、甲状腺癌細胞(FTC−133)を、薬剤の一方又は他方の5μM及びテストペプチド4N1の100μMと共に、CD47受容体をブロックするB6H12抗体(100μg/mL)有りもしくは無しで、インキュベートした。同じ実験を、CD47に結合することができない対照ペプチド4NGG(K−R−F−Y−G−G−M−W−K)を用いて行った。 図3は、そのアミノ酸がより濃い着色の丸で示されるペプチド4N1(K−R−F−Y−V−V−M−W−K)を示すTSP1蛋白質のC末端ドメインのオープニングダイナミクスの表示である。 図4は、TSP1のC末端ドメイン(図の左側)とCD47受容体の細胞外ドメイン(明るい灰色で示した細胞膜に結合している)と間の分子相互作用のモデルを示す。このモデルは、蛋白質−蛋白質ドッキング法により得られる。二つの蛋白質の間に見える矢印は、分子相互作用の領域に相当する。 図5は、TSP1とMDA−MB−231乳癌細胞のCD47受容体との間の生体分子相互作用の阻害を示す。細胞は、本発明によるアンタゴニストペプチドの100μMと共に(Ctrl)もしくは無し(pept.)で2時間インキュベートする。次いで、TSP1/CD47複合体を抗CD47抗体を用いて免疫沈降し、その後に、TSP1及びCD47の存在をウエスタンブロット法を用いて分析する。 図6は、マウスメラノーマ細胞に対する環化アンタゴニストペプチドの作用を示す。同系C57Bl/6マウスへの250,000B16−F1マウスメラノーマ細胞の皮下注射の後、3日目、5日目及び7日目に、アンタゴニストペプチドを10mg/kgで腹腔内投与した。次いで、マウスを犠牲にし、20日目に腫瘍を撮影した。 図7は、未処置の腫瘍(左側)及び目的の12日目の環化アンタゴニストペプチドで処理した腫瘍のMRI分析に対応する。矢印は壊死領域を指摘している。 図8は、100倍に拡大した位相差顕微鏡下で観察した細胞の写真に対応する。HUVEC細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞)を、抗有糸***分子であるマイトマイシン(10μg/mL)で、37℃で2時間、前処理し、次いでコンフルエントな細胞層に創傷を施す。次いで、細胞を、本発明に記載のペプチドと共に37℃で9時間インキュベートする。左側の写真は「コントロール」細胞に対応し、右側の写真が目的のペプチド(100μM)で処理された細胞を示す。
トロンボスポンジンファミリーに属する蛋白質及び特にトロンボスポンジン−1及びトロンボスポンジン−2、すなわちそれぞれTSP1及びTSP2は、細胞外マトリックスのマクロ分子である。それらは、該マトリックスと細胞との間及び細胞自体の間の多数の相互作用の調節に関与する。
より具体的には、トロンボスポンジンは、マルチドメイン構造を有する糖蛋白質であり、各ドメインは、非常に多くの細胞表面受容体に結合するその能力の結果として様々な機能に関与している。
トロンボスポンジンファミリーは、五つの蛋白質であるTSP1からTSP5を含み、二つのサブグループに分類される。TSP1とTSP2は、どちらも同様の構造を持っているので、これら二つのグループの最初のグループに属しており、それらは三つの同一のサブユニットからなるホモ三量体である。これらの三つのモノマーはそれぞれおよそ150,000ダルトンの分子量を有し、ジスルフィド架橋によってそれぞれ連結されている。TSP1モノマーとTSP2モノマーは、N−末端(32%の相同性)からC−末端(82%の相同性)に向かって徐々に増加する相同性を有している。さらに、TSP1の接着配列のほとんどは、またTSP2に見出される。その結果として、前記で指摘したように、TSP2はTSP1と同様の機能を有する可能性が高い。
TSP3からTSP5については、それらはホモ五量体である。したがって、それらの構造及び配列はTSP1及びTSP2とは異なっている。
既に分るように、トロンボスポンジンは細胞外マトリックス中に見られる蛋白質である。かくして、これらの蛋白質、特にTSP1は、それらが確立することができる相互作用による細胞表現型のみならず細胞外マトリックスの構造及び組成に影響を及ぼす。
インビトロでは、培養した血管壁の細胞、内皮細胞、平滑筋細胞及び線維芽細胞は、TSP1を合成して分泌し、それらは、また、細胞外マトリックス中で統合される。インビボでは、TSP1は、胚形成の初期段階で、次いで細胞遊走領域における胚発生の間に検出される。
成人では、TSP1は、組織修復プロセスの開始時の損傷組織もしくは炎症組織において高濃度での発現で特に見出される。また、TSP1は、血小板、単球、肺胞マクロファージなどの免疫応答に関与する細胞によって合成及び分泌されることができる。
トロンボスポンジン、特にTSP1は、様々な基本的な細胞プロセスに関与している。かくして、TSP1は、血小板活性化、血管新生、創傷治癒、プログラム細胞死、腫瘍進行などの多くの細胞機能に影響を及ぼす(Sid et al., 2004)。TSP2は、TSP1と同様のドメイン構造を有し、結果として、TSP2によって発揮される機能のいくつかはTSP1の機能と同様である。特に、これらの二つの蛋白質は、既存の血管からの新たな血管の成長を可能にするプロセスである血管新生を阻害する(Mirochnik et al., 2008)。
より具体的には、本発明者らの研究により、ヒト濾胞性甲状腺癌細胞に対するTSP1の抗アポトーシスの役割が明らかになった(Rath et al., 2006)。この点では、本発明者らは、化学療法剤、特にドキソルビシン及びカンプトテシンに対する腫瘍細胞の耐性においてTSP1が重要な役割を果たしていることを証明した。これら二つの薬剤は、多数の細胞型においてアポトーシスを誘導することによって細胞毒性効果を発揮する。
図1を参照すると、アポトーシスに入る細胞の良好なマーカーと考えられカスパーゼ−3活性は、ドキソルビシン又はカンプトテシンの存在下でしかしTSP1の非存在下での同じ活性と比較して、TSP1の存在下ではかなり阻害されることを見ることができる。したがって、TSP1は、抗癌療法の対象となる甲状腺癌細胞のアポトーシスの割合を低下させる。
また、著者らによって、TSP1の発現レベルは、異なる侵襲能力を有する(Sid et al., 2008)二つの癌細胞株(FTC−138及びFTC−133)を用いて、甲状腺癌細胞の浸潤能と相関することが示された。
その後、K−R−F−Y−V−V−M−W−K配列を有するペプチド4N1の使用により、TSP1のC末端が抗アポトーシス効果の原因として同定されることができた。実際に、このペプチドは、細胞の一部で応答を引き起こすCD47受容体との分子相互作用を確立することができる。
また、「インテグリン関連蛋白質」のIAPとしても知られているCD47は、大部分の細胞に発現される免疫グロブリンファミリーに属する膜貫通受容体である。CD47の細胞外ドメインは、TSP1又はTSP2のC末端部分に結合後に、ヒト細胞及び組織の応答において中心的な役割を果たす。
したがって、本発明者らは、癌細胞、特にヒト甲状腺癌のFTC−133細胞のアポトーシスの阻害におけるペプチド4N1及びCD47受容体の役割を理解しようと努めた(Rath et al., 2006)。
図2から分るように、外因性ペプチド4N1の存在下での腫瘍細胞の生存率は、二つの薬物であるカンプトテシン及びドキソルビシンの一方又は他方のみで処理した細胞又は対照ペプチド4NGGで処理した細胞のそれよりも大きい。
したがって、TSP1のC末端に由来するペプチド4N1は、カンプトテシン及びドキソルビシンタイプの抗癌分子に対する甲状腺癌細胞の耐性を誘導する抗アポトーシス特性を有する。しかしながら、対照ペプチド4NGGは、これら二つの薬物により誘導される腫瘍細胞の数の減少に対しては何ら効果を有しない。
さらに、目的のペプチド4N1の存在下で、CD47をブロックするB6H12抗体が添加されたときには、前記ペプチドはもはや使用された抗癌薬に対して腫瘍細胞を保護できない。
したがって、得られた異なる結果は、トロンボスポンジ、特にTSP1は、受容体であるCD47へC末端を介して結合することによって腫瘍細胞と相互作用することを証明している。したがって、CD47受容体は、TSP1のC末端に位置するペプチド4N1による腫瘍細胞のアポトーシスの負の調節において「リレー(relay)」として作用する膜蛋白質を演じている。
また、これらの結果は、ペプチド4N1のものと同一又は非常に類似の、従来技術で提案された多数のペプチド配列は、明らかにこの場合の用途には適していないことを示している。実際に、このペプチドは効果的にCD47受容体へ固定する能力を有し、その結果、CD47受容体とTSP1もしくはTSP2タイプの蛋白質との間の結合の阻害を引き起こす。しかしながら、前記の結果は、ペプチド4N1とCD47受容体との間のこのような結合は、腫瘍細胞の生存率及び特定の薬物に対する耐性を増加させることを証明している。したがって、ペプチド4N1はCD47受容体のアゴニストとして作用する。
次いで、独創的で発明的なステップの一部として、本発明者らは、前記した生物学的効果、特に腫瘍細胞に対する抗アポトーシス効果の原因であるCD47受容体とTSP1との間の分子相互作用について更に見出すように努めた。
したがって、TSP1のC末端の分子モデリング、より具体的には、4N1配列を含む領域とCD47受容体との間の相互作用のモデリングを行った。
次いで、TSP1のC末端部分の動きを同定するために、通常の分析技術を使用した(Floquet et al., 2008)。この技術は、古典的分子動力学シミュレーションのみと実験生物物理学的方法では満足な結果が得られないので、普遍的に好まれた。さらに、CD47受容体とTSP1との間の相互作用は、蛋白質データバンク(PDB)で利用可能なTSP1の結晶構造だけでは説明できない。実際に、X線回折によって得られる利用可能なTSP1構造によって、4N1配列はTSP1蛋白質の疎水性ポケット内に完全に埋め込まれ、それにより前記配列とリガンドとのいずれの相互作用も不可能となると説明できることのみが可能となる。
図3に示されるFloquetら(2008)によって得られた結果により、ペプチド4N1とCD47受容体との間の相互作用に導くメカニズムが説明できる。実際に、分析により、静電的「ベルクロ(velcro)」効果によりTSP1蛋白質がCD47受容体に近づくと、TSP1蛋白質の疎水性ポケットが開くことが具体的に示された。次いで、このオープニングが現れて、ペプチド4N1の生物学的に活性な配列が接近可能となり、前記ペプチドの仲介により、TSP1とCD47受容体との間の相互作用が起こることができる。
次いで、疎水性ポケットのオープニングの動きをより詳細に調査し、これにより、様々な程度に開いたTSP1蛋白質の異なる構造が生成されることが可能になった。
並行して、CD47受容体の細胞外部分のいくつかのモデルが、相同性モデリング技術を用いて生成された。
さらに、蛋白質−蛋白質ドッキング法を用いて実施した分析により、開いたTSP1構造とCD47受容体との間の相互作用の潜在的な領域を予測することも可能となった。得られた結果は図4に見ることができる。
次いで、得られた相互作用モデルにより、TSP1蛋白質との相互作用に関与するCD47受容体配列を模倣するペプチドフラグメントの提案が可能となった。
したがって、提案されたペプチドは、TSP1が利用可能になると、具体的には、CD47膜受容体に近づくと、TSP1のC末端上に、具体的には、ペプチド4N1によって構成される相互作用の領域に有利に固定することができる。換言すれば、本発明によるペプチドは、これらの二つ蛋白質間の結合部位でTSP1に非常に特異的に固定することによって、TSP1/CD47相互作用に拮抗することができる。
この方法においては、CD47細胞受容体は、フリーのままで、TSP1のみならず通常のリガンドと自由に相互作用することができる。さらに、TSP1蛋白質の他のドメインは、また、それらの結合能力を保持できる。したがって、これら二つの蛋白質TSP1及びCD47が多くの基本的な細胞プロセスにいかに重要であるかを知るとき、本発明によるペプチドは特に有利である。
特に興味ある実施形態では、TSP1蛋白質とCD47受容体との間の結合を拮抗するために選択されたペプチドは、前記受容体の細胞外ドメイン内の短い配列に対応し、特に以下の配列S1を有するドデカペプチドに対応する。
S1:R1−R2−R3−S−Q−L−L−K−G−R4−R5−R6
優先的には、R1は非極性アミノ酸基に属するアミノ酸に対応する、すなわち、イソロイシン(I)又はロイシン(L)又はバリン(V)又はアラニン(A)に対応する。同様のことが、R3とR5にも適用される。
興味ある実施形態では、R2のアミノ酸は負荷電極性アミノ酸基に属し、すなわち、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)である。同様のことが、R4に適用される。
有利には、R6のアミノ酸は、ヒドロキシル基(−OH)を有する非荷電極性アミノ酸基に属する。したがって、R6はセリン(S)又はスレオニン(T)のいずれかに対応する。
式:S−Q−L−L−K−Gを有するセントラルヘキサペプチドは、TSP1のC末端ドメインに対する本発明によるペプチドの結合を可能にするために特に有利である。配列S1においてそれに先行するかもしくは後に来るアミノ酸は修飾することができるが、TSP1蛋白質との最適な結合のためにこのヘキサペプチドを保持することが好ましい。
特に有利な実施形態では、本発明によるドデカペプチドは、S2として同定される以下の配列に対応する配列S1を有する。
S1:R1−R2−R3−S−Q−L−L−K−G−R4−R5−R6
実際に、この特定の配列S2は、TSP1蛋白質のCD47受容体との相互作用を拮抗するために最適である。
本発明者らによって行われた以前の研究の結果によって、TSP1/CD47結合のブロックがヒト甲状腺癌の癌細胞のアポトーシス阻害の解除を導くことを我々は知っている(Rath et al., 2006)。その結果、本発明によるペプチドの使用は、特にしかし限定的でなく、甲状腺癌の腫瘍細胞による組織浸潤の阻害を可能にする。
次いで、他のタイプの癌からの腫瘍細胞を用いて、これらの結果を確認するための仕事が行われた。かくして、乳癌からの細胞に対応するMDA−MB−231細胞を、本発明によるドデカペプチドと共にもしくは無しで、24時間インキュベートした。具体的には、用いた配列は、配列S2:I−E−V−S−Q−L−L−K−G−D−A−Sを有するものである。
CD47に対する抗体との複合体の免疫沈降、次いでウエスタンブロット法によるTSP1及びCD47蛋白質の分析を行った。結果を図5に示す。図5から分かるように、本発明によるアンタゴニストペプチドと共に癌細胞をインキュベートしたときの免疫沈降後のウェスタンブロット分析によっては、TSP1はもはや検出されない。これは、該ペプチドを用いた治療は、TSP1蛋白質とCD47受容体との間の分子相互作用を妨げることを意味する。
また、本発明は、50未満のいくつかのアミノ酸を含み、本発明による配列S2と少なくとも60%の相同性、好ましくは80%の相同性、より好ましくは95%の相同性を有するペプチドを含むポリペプチドに関する。
実際に、60%の相同性に対応する、12個の全部のうち7個のアミノ酸の割合が、TSP1とCD47受容体との間の結合を阻害するのに十分な最小活性配列を構成する。
本発明による配列の非ペプチド構造類似体の使用もTSP1/CD47結合を阻害することを想定できる。
特に興味ある実施形態では、本発明によるペプチドは環化する。実際に、本発明のペプチドに対応するCD47のセグメントが受容体内のループを形成することが見出された。かくして、そのような環化は、該ペプチドとTSP1蛋白質のC末端との間の相互作用を安定化させることができ、それが該ペプチドの生物学的活性と有効性を向上させる効果を有するため、有利である。さらに、異なるペプチドについての分子動力学計算により、前記ペプチドの環化を行うことで局所的な構造を安定化させることが可能であることが示された。
本発明によるアンタゴニストペプチドの環化は、この目的に適合し、当業者に公知のいずれの手段によっても行うことができる。特に、アミド結合によって環化を行うことが有利である。
さらにより優先的には、目的のペプチドの環化は、システイン(C)タイプの二つのアミノ酸のチオール基(−SH)を連結する強力な共有結合であるジスルフィド架橋により行われる。
シクロペプチドを得るためにジスルフィド架橋を選択することは、それがペプチドを生理的pHで両性イオンの形態で維持することを可能にするので、特に有利である。両性イオン形態の分子は、正電荷を有するアミノ基と負電荷を有するカルボキシル基を有する。両性イオン形態は、分子が水溶液中で良好な溶解性を保持することを可能にするため、有利である。
かくして、本発明の特に好ましい実施形態では、ドデカペプチドは、S3:C−E−V−S−Q−L−L−K−G−D−A−Cとして同定される配列に対応する配列S1を有する。両末端に存在するR1及びR6基は、それぞれ、システインで置換されている。ペプチドの両端の二つシステイン(C)アミノ酸により、それらのそれぞれのチオール基間のジスルフィド架橋(−S−S−)の形成が可能となる。
前記配列S3のペプチドは、抗CD47抗体を用いて実施したTSP1/CD47複合体免疫沈降実験に関する限り、配列S2を有する非環化ペプチドと同じ結果を有する。結論として、シクロペプチドもTSP1蛋白質とCD47受容体との間の分子相互作用を防ぐことができる。
配列S3:C−E−V−S−Q−L−L−K−G−D−A−Cの環化ドデカペプチドの作用も、同系C57Bl/6マウスに注射したB16−F1マウスメラノーマモデルで生体内で直接試験した。その結果を図6および図7に示す。
図6は、C57Bl/6マウスへのメラノーマ細胞の注射後20日目、及び目的の環化ペプチドを用いた動物の可能な処置後、腫瘍の出現を示している。前記ペプチドで処置した(図の右側)マウスの半分(4/8)は、腫瘍内に位置する大きな壊死領域を示し、他方、「対照」マウスのいずれも、そのような壊死を示さなかった。
図7では、磁気共鳴画像(RMI)分析により、未処置動物から採取した腫瘍と、腫瘍細胞注射後12日目のジスルフィド架橋による環化ペプチド処置動物から採取した腫瘍との比較が可能である。
この図では、本発明による環化ペプチドを用いた処置動物からの腫瘍は、矢印で表示した壊死領域を有することが分る。これに反して、処理されていない動物からの同じ腫瘍は、いかなる壊死領域も有していない。したがって、前記ペプチドは抗腫瘍活性を有する。
したがって、本発明によるペプチド、特に環化ペプチドは、濾胞性甲状腺癌、乳癌又は黒色腫の治療に使用することができる。しかしながら、このような用途は限定されるものではなく、本発明によるペプチドが前記のもののみならず多数の異なる癌を治療するために使用できることは容易に想像できる。
図8に示された本発明の別の利点は、目的のペプチドが腫瘍血管新生を阻害することである。血管新生は、例えば胚成長中に起こる正常な生理的過程である。しかしながら、血管新生はまた、悪性腫瘍の生長及び腫瘍転移において必須の病理学的過程に対応する。実際に、悪性細胞が成長するために酸素と栄養が必要とされる。それらを得るために、悪性細胞は、隣接する健康な組織における既存の血管を使用して、新しい血管の形成を誘導する。これらの新しい血管が形成されるとき、一方では、それらは腫瘍の生長だけでなく、遠隔器官への癌細胞の拡散を容易にする。
血管新生は、三つのフェーズで起こるプロセスである。すなわち、
−最初は基底膜及び周囲の細胞外マトリックスへの損傷を引き起こす細胞の活性化に対応し、次いで、内皮細胞の遊走に対応する萌芽である。細胞は増殖し、血管を形成するために毛細管様構造に分化する;
−既に形成された血管が拡大して分離される間の細胞壁の生長;及び
−内皮細胞が、別の管チャンネルを作る管の内側で成長する間の隔壁形成。
トロンボスポンジン、特にTSP1は、血管新生の調節において、特に腫瘍において、役割を果たすことが知られている。特に、CD47受容体とTSP1との間の相互作用は、抗血管新生効果を有することが知られている。したがって、本発明によるペプチドの腫瘍の場合での使用は、先験的には、この抗血管新生効果の阻害により危険となり、腫瘍の潜在的な血管新生のリスクとなることがある。しかしながら、本発明者らによって行われた研究により、予想できることに反してそして非常に驚くべきことに、本発明によるペプチドは、試験した細胞に対して抗血管新生効果を有することが示された。
実際に、TSP1はCD47受容体と相互作用するのみならず、CD36受容体と結合することもできる。したがって、TSP1/CD36相互作用は、腫瘍及び/又は内皮細胞に対する抗血管新生効果を有すると見られる。本発明のペプチドにより、そして我々はすでに見てきたように、TSP1/CD47の相互作用が防止される。しかしながら、TSP1とCD36受容体との間の結合は、TSP1が他のリガンドと結合することを防ぐことはできない、目的のペプチドの非常な特異性によって、依然として起きることができる。さらに、TSP1はもはやCD47受容体に結合することができないことを考慮すれば、多くの割合のTSP1はCD36上に固定することができ、それが腫瘍血管新生のより大きな阻害を導くであろう。
図8の写真には、HUVEC細胞がその輪郭が点線で示されている創傷に供された後の、アンタゴニストペプチドの存在下及び非存在下でのHUVEC細胞の遊走が示されている。結果は四つの別々の実験の代表であり、それらは、血管形成のプロセスの最初の段階、すなわち細胞遊走は、本発明によるアンタゴニストペプチドの存在下で阻害されることを示している。
かくして、本発明によるアンタゴニストペプチドの非常な特異性により、TSP1蛋白質は、依然としてCD36受容体に結合することができる。しかしながら、TSP1及び/又はCD47と膜又は可溶性蛋白質との間の他の相互作用もまた可能である。具体的には、HSPG(ヘパリン硫酸プロテオグリカン)、SIRP(シグナル調節タンパク質)タイプなどのインテグリンの膜蛋白質との相互作用は、アンタゴニストペプチドの抗腫瘍効果及び/又は抗血管新生効果におそらく関与し強化することができる。
本発明による目的のペプチドの合成に関する限り、特にしかし限定的ではないが、組換え製造により行うことができる。この趣旨で、前記ペプチドをコードする核酸配列、優先的にはDNAを、優先的にはベクターにより宿主細胞に導入することができる。
かくして、さらに本発明は、本発明によるペプチドをコードする単離された核酸に関する。優先的には、これはDNAであろうが、しかし、それはまた、RNAでもあり得る。
さらにより優先的には、また、前記ペプチドは当業者に公知の古典的な化学合成技術によって取得することもできる。
したがって、本発明によるペプチドは多種多様な利点を有する。例えば、その短い配列は、特に古典的な化学合成技術により得ることが容易である。
しかしながら、最も大きな利点は、該ペプチドが特異的にTSP1/CD47結合をブロックするという事実にある。より具体的には、ブロックされるのはTSP1のC末端であることである。かくして、TSP1蛋白質の他のドメインは、そのそれぞれのリガンドと相互作用し続けることができる。具体的には、I型繰り返しドメイン(プロペリジン相同ドメイン)を含むTSP1ドメインは、CD36細胞受容体と相互作用することができ、それが血管新生の阻害を導く。かくして、我々は、腫瘍の血管新生の減少、そして結果として、癌細胞浸潤の阻害を得る。また、CD47受容体はフリーのままで、そしてその天然リガンドに結合することができる。さらに、TSP1/CD47の相互作用をブロックするために既に従来技術で使用された抗CD47抗体又はペプチド4N1などの分子があり得るように、本発明によるペプチドがCD47受容体のアゴニストであることの危険性がない。
かくして、該アンタゴニストペプチドは、種々の疾患、特に腫瘍そして濾胞性甲状腺癌、乳癌又は黒色腫のために多くの潜在的な応用を有し、そこでは該アンタゴニストペプチドは腫瘍の発生及び/又は癌細胞の転移を制限しなければならない。例えば、前記ペプチドは、特定の種類の癌細胞においてアポトーシスを誘導する化学療法の効果の増強を可能にすると考えられ、実際に、目的のペプチドは、これらの治療に対する癌細胞の抵抗を減少するのに貢献するであろう。
最後に、多くの参照文献が、TSP蛋白質は高い血管収縮能があるとみなしていること、そして本発明によるペプチドは血管新生促進ストラテジーの開発に影響を与えることを考慮すると、心血管や脳疾患の分野での潜在的な応用がまた想定される。
参照文献

Claims (17)

  1. 以下の配列S1のみを有することを特徴とする、CD47受容体とトロンボスポンジン又はTSPファミリーに属する蛋白質との間の結合に対するアンタゴニストペプチド。
    S1:R1−R2−R3−S−Q−L−L−K−G−R4−R5−R6
    (ここで、R1からR6はアミノ酸である。)
  2. 基R1、R3及びR5は、それぞれイソロイシン(I)及び/又はロイシン(L)及び/又はバリン(V)及び/又はアラニン(A)から選択される一つの非極性アミノ酸であることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
  3. 基R2及びR4は、それぞれグルタミン酸(E)及び/又はアスパラギン酸(D)から選択される負荷電極性アミノ酸であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のペプチド。
  4. R6は、セリン(S)又はスレオニン(T)から選択されるヒドロキシ基を含む非荷電極性アミノ酸であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のペプチド。
  5. 前記ペプチドの配列S1は、配列S2として同定される以下の配列に等しいことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のペプチド。
    S2:I−E−V−S−Q−L−L−K−G−D−A−S
  6. 前記ペプチドは環化されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のペプチド。
  7. 前記ペプチドは、システイン(C)の二つのアミノ酸の間のジスルフィド架橋によって環化されており、配列S3として同定される以下の配列S1を有することを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
    S3:C−E−V−S−Q−L−L−K−G−D−A−C
  8. 前記ペプチドは組み換え製造により得られることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のペプチド。
  9. 前記ペプチドは化学合成により得られることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のペプチド。
  10. 癌の治療のための、請求項1から9のいずれか1項に記載のペプチド。
  11. 濾胞性甲状腺癌の治療のための、請求項10に記載のペプチド。
  12. 乳癌の治療のための、請求項10に記載のペプチド。
  13. 黒色腫の治療のための、請求項10に記載のペプチド。
  14. トロンボスポンジン−1とCD47受容体との間の相互作用を防止し、そしてこの相互作用の癌細胞に対する抗アポトーシス効果を阻害するための、請求項10から13のいずれか1項に記載のペプチド。
  15. トロンボスポンジン−2とCD47受容体との間の相互作用を防止し、そしてこの相互作用の癌細胞に対する抗アポトーシス効果を阻害するための、請求項10から13のいずれか1項に記載のペプチド。
  16. 50未満のいくつかのアミノ酸を含み、請求項5による配列S2と少なくとも95%の同一性を有し、CD47受容体とトロンボスポンジン又はTSPファミリーに属する蛋白質との間の結合に対するアンタゴニスト活性を有するポリペプチドを含む、CD47受容体とトロンボスポンジン又はTSPファミリーに属する蛋白質との結合阻害剤
  17. 請求項1から8のいずれか1項に記載のペプチドをコードする単離された核酸。
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