以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施の形態に係る部材設置判定システムは、予め3次元CAD上における部材の設計データから面の集合データ(部材面データ)を抽出する。
施工現場における部材の設置を判定する際には、まず、下方の部材を撮影するための観測装置をクレーンで吊り、又は、クレーンに設置し、建物の最上階に基準点を設け、クレーンを移動させながら、観測装置により上方から最上階を撮影する。その基準点を含む撮影結果及び基準点の位置から、観測装置の位置を特定する。次に、撮影結果から施工現場の3次元点群データ(現場点群データ)を取得し、部材面データ及び施工誤差を用いて絞り込み、部材ごとに分類する。そして、部材ごとに絞り込んだ3次元点群データの点群密度及び観測装置からの距離に基づいて、建方の完了、未了(すなわち、部材の設置、未設)を判定する。さらに、判定結果を表示するとともに、判定結果に基づいて施工歩掛を計算し、記憶する。
なお、部材設置判定システムは、複数の平面からなる(例えば、直方体形状の)部材を設置判定の対象とし、観測装置の位置及び設計データ上の部材の位置(観測装置に対する部材の相対位置)が撮影画像ごとに把握されるものとする。部材には、柱、梁、床、デッキプレート、型枠、鉄筋等が含まれる。
これによれば、施工現場において、設計データ上の部材が設置されているか否かをもれなく判定することができる。そして、施工歩掛を確認することにより、翌日の作業計画を立てることができる。
≪システムの構成と概要≫
図1は、部材設置判定システム1の構成を示す図である。部材設置判定システム1は、観測装置2及びサーバ3を備える。観測装置2は、対象部材4を含む施工現場を撮影し、その撮影した画像から3次元点群データを取得し、サーバ3に送信する装置であり、実際の装置としては、複数台のレーザースキャナやステレオカメラ、1台の単眼カメラ等が施工現場で用いられる。サーバ3は、観測装置2から対象部材4の3次元点群データを受信し、そのデータを処理することにより、対象部材4の設置、未設を判定する。
図1に示すように、対象部材4の位置を特定する座標系として、各観測装置2に固有の観測装置座標系(X、Y、Z)と、施工現場に固有の現場ローカル座標系(x、y、z)とが設定される。次に、3つの基準点MK1、MK2及びMK3が設置され、それぞれの現場ローカル座標位置を(xm1、ym1、zm1)、(xm2、ym2、zm2)及び(xm3、ym3、zm3)とする。そして、観測装置2から基準点MK1、MK2及びMK3を撮影することにより、実際のマーカのサイズ及び撮影したマーカのサイズから、観測装置2及び各基準点を結ぶ直線と、各基準点を含むx−y平面との角度が計算され、3つの基準点から観測装置2を見た方向が特定される。
さらに、3つの基準点から観測装置2を見た方向が特定されることにより、それら3つの方向と、3つの基準点の現場ローカル座標系の位置とに基づいて、観測装置2の現場ローカル座標系の位置(xc、yc、zc)が計算される。
観測装置2の現場ローカル座標系の位置(xc、yc、zc)を用いることにより、図1に示す観測装置座標系(X、Y、Z)から現場ローカル座標系(x、y、z)への変換が可能になる。その変換は、次の式1で行われる。
x=xc+X
y=yc+Y
z=zc−Z ・・・式1
図2は、観測装置座標系を示す図である。観測装置2は、ステレオカメラである場合、右レンズLr及び左レンズLlを備えており、両レンズは、基線長Bの間隔を空けて固定される。右レンズLrは、右光軸上焦点距離fの位置に右撮像面を有し、対象点を撮影すると、右撮像面上の2次元座標系にある点の座標(xr、yr)が特定される。一方、左レンズLlは、左光軸上焦点距離fの位置に左撮像面を有し、対象点を撮影すると、左撮像面上の2次元座標系にある点の座標(xl、yl)が特定される。このとき、視差として、右撮像面上にある点と、左撮像面上にある点との間の距離dが、次の式2により求められる。そして、観測装置座標系のZ軸として、左レンズLlの左光軸を適用すれば、対象点の座標位置は、式3により求められる。
d=B+xr−xl ・・・式2
Z=Bf/(B−d)=Bf/(xl−xr)
X=Zxl/f=Bxl/(xl−xr)
Y=Zyl/f=Byl/(xl−xr) ・・・式3
以上によれば、まず、観測装置2を用いて対象点を撮影した際に、右撮像面上にある点の座標(xr、yr)及び左撮像面上にある点の座標(xl、yl)を取得する。次に、式2及び式3を用いて、(xr、yr)及び(xl、yl)から観測装置座標系の位置(X、Y、Z)を計算する。そして、式1を用いて、観測装置座標系の位置(X、Y、Z)から現場ローカル座標系の位置(x、y、z)を計算する。これにより、対象点の現場ローカル座標系の位置を求めることができる。
図3は、部材設置判定システム1を実際の施工現場に適用した例を示す図である。タワークレーン5は、例えば、高層ビルの建設現場に設置され、ブーム51、ワイヤ52及びフックブロック53を備える。ブーム51の先端部にはワイヤ52が掛けられ、ワイヤ52の下部にはフックブロック53が設けられる。フックブロック53にはワイヤ54が掛けられ、ワイヤ54により吊り天秤55が吊り下げられる。
吊り天秤55は、荷物を運搬するための吊り治具であるが、部材設置判定用として、観測装置2、旋回制御装置6及びGPS(Global Positioning System)装置7が固設される。観測装置2は、ステレオカメラであり、吊り天秤55の下面両端に設けられる。そして、鉛直方向下方にある鉄骨梁、鉄骨柱等の対象部材4を撮影し、その撮影した画像データを、タワークレーン5の所定箇所に設置されたサーバ3に送信する。観測装置2の撮影方向は、基本的には下向きであり、部材の上面に基づいて有無が判断される。ただし、撮影方向は、斜め下向きであってもよい。斜めに撮影することにより、部材の上面に加えて側面が見えるので、上面に基づいて基本的な判断を行った上で、側面も補完的な判断に用いることができる。吊り天秤55を固定した状態で、ブーム11を移動させることにより、観測装置2の撮影範囲を変更して、広範囲の画像データを取得できる。
旋回制御装置6及びGPS装置7は、必ずしも基本的な構成ではないので、その詳細は後記する。
図4は、観測装置2により画像データを取得すべき領域を示す図である。建物の最上階を撮影する際に、フロアを1回で撮影するのが無理である場合に、複数回に分けて撮るために、例えば、4箇所の撮影指示領域をサーバ3に設定する。撮影指示領域は、水平面上の2次元座標(以下、簡単に「2次元座標」という)による範囲を示す。ブーム51を移動させながら、撮影指示領域の範囲内に、図3に示すフックブロック53の軸(すなわち、観測装置2の撮影範囲の中心)が位置付いたときに、観測装置2がシャッタを切って撮影を行うように、サーバ3が制御する。これによれば、クレーンのオペレータの手を煩わせることなく、1フロアについて、複数の撮影画像を自動で取得できる。
なお、複数の撮影範囲同士に重複部分があってもよいので、撮影指示領域の範囲は、それほど厳密である必要はない。また、撮影指示領域は、水平面上の2次元座標であるので、一度設定すれば、対象部材4の設置される階数や高さが変わっても、そのまま適用することができ、複数の撮影画像を1つに合わせる処理を共通化することができる。
図5は、観測装置2の位置を求める方法の一例を示す図である。タワークレーン5に観測装置2を吊るす方式において、観測装置2による撮影範囲の中心の2次元座標は、ブーム51の先端部の2次元座標と同じである。図5(a)は、側方から見たブーム51の外観を示す。図5(b)は、上方から見たブーム51の外観を示す。ブーム51の長さをL、水平面との角度である起伏角をθ、水平面上のx軸との角度である旋回角をφとすれば、ポイントPを2次元座標の原点とした場合に、ブーム51の先端部(すなわち、図3に示すフックブロック53の軸)の2次元座標は、次の式4により求められる。
x=Lcosθcosφ
y=Lcosθsinφ ・・・式4
これによれば、ポイントPの位置を示す2次元座標を予め把握しておくことにより、ブーム51が移動したときの、観測装置2による撮影範囲の中心位置を特定することができる。なお、固定値であるブーム長L、変動値である起伏角θ及び旋回角φは、2台以上のタワークレーン5の衝突を防止するための監視システム(センサ)から取得することが可能である。
図6は、サーバ3のハードウェア構成を示す図である。サーバ3は、通信部31、表示部32、入力部33、処理部34及び記憶部35を備え、各部がバス36を介してデータを送受信可能なように構成される。通信部31は、無線ネットワークを介して観測装置2や監視システムとIP(Internet Protocol)通信等を行う部分であり、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。表示部32は、処理部34からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部33は、オペレータがデータ(例えば、基準点MK1、MK2、MK3の座標位置等のデータ)や指示を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等によって実現される。処理部34は、所定のメモリを介して各部間のデータの受け渡しを行うととともに、サーバ3全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部35は、処理部34からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置によって実現される。
≪データの構成≫
図7は、サーバ3の記憶部35に記憶されるデータの構成を示す図である。記憶部35には、建物の施工階ごとに、部材モデルデータ351、面モデルリストデータ352、座標変換式データ353、3次元点群データ354、施工誤差データ355、撮影指示領域データ356、施工完了データ357及び施工歩掛データ358が記憶される。
部材モデルデータ351は、施工現場に設置される部材の3次元CADデータであり、立体である部材を平面図、立面図、断面図、透視図等の図面として表現したデータである。
図8は、4本の柱及び4本の大梁が設置された状態を示す図であり、部材モデルデータ351の例を示す。図8(a)は平面図を示し、図8(b)は正面図を示す。それぞれにおいて、現場ローカル座標系における、各部分の座標位置が示される。例えば、柱CX1Y1は、x座標の−300から300までの間にあり、y座標の−300から300までの間にあり、z座標の0から4000までの間にある直方体である。一方、大梁GY1X1は、x座標の300から5700までの間にあり、y座標の−200から200までの間にあり、z座標の3000から4000までの間にある直方体である。
面モデルリストデータ352は、部材モデルデータ351により表現される部材のうち、外部の観測装置2から撮影可能な面を定義し、その中から所定値以上の面積を持つ面を抽出したもの(面リスト)である。詳細には、現場ローカル座標系のx軸、y軸、z軸を法線ベクトルとする部材の各面を矩形とみなし、それらの各矩形面に関して、現場ローカル座標系における範囲(各座標の始点及び終点)を規定する。
図9は、面モデルリストデータ352の例を示す図である。面モデルリストデータ352は、部材名、法線ベクトル、x始点、x終点、y始点、y終点、z始点及びz終点を含む、部材の個数分及び各部材の面数分のレコードからなる。図8(a)及び(b)を参照しながら図9を説明すると、例えば、柱CX1Y1において、x軸を法線ベクトルとする平面は2つあり、x座標はそれぞれ−300及び300であり、y座標は−300〜300、z座標は0〜4000であることが規定されている。また、大梁GY1X1において、y軸を法線ベクトルとする平面は2つあり、y座標はそれぞれ−200及び200であり、x座標は300〜5700、z座標は3000〜4000であることが規定されている。
座標変換式データ353は、観測装置2ごとに、観測装置座標系の位置(X、Y、Z)を現場ローカル座標系の位置(x、y、z)に変換する式を示すデータであり、例えば、式1が記憶される。3次元点群データ354は、観測装置2により取得された、建築現場の施工状況を示すデータであり、詳細には、大量の対象点(撮影画像における各画素)の座標値が所定の時間間隔ごとに複数組記憶される。3次元点群データ354としては、観測装置座標系及び現場ローカル座標系のそれぞれの座標位値が記憶される。
施工誤差データ355は、設計情報である面モデルリストデータ352と、実際に設置された対象部材4の位置との間における座標値の誤差を示すデータであり、所定の部材面に対して当該誤差の範囲内にあるピクセルは、当該部材面を構成するピクセルとみなされる。撮影指示領域データ356は、建物の各階における、撮影を行うべき観測装置2の位置の範囲を示すデータであり、水平面上の2次元座標により表わされる。
施工完了データ357は、当該施工階において、施工が完了した箇所と、未了の箇所とを明示したデータである。施工歩掛データ358は、部位ごと及び当該部位の部材ごとに、施工状況を示すデータである。施工完了データ357及び施工歩掛データ358に関しては、具体例を後記する。
≪システムの処理≫
図10は、部材設置判定システム1(観測装置2及びサーバ3)の処理を示すフローチャートである。本処理は、対象となる建物の階ごとに行われ、主として、サーバ3において、処理部34が、通信部31により観測装置2との間でデータ通信を行い、記憶部35のデータを参照、更新しながら、観測装置2から取得した3次元点群データを処理して、対象部材4の建方の完了、未了を判定し、判定結果を表示するものである。
なお、事前に、建物の階ごとに、設置判定すべき部材やエリアの3次元CADモデルを作成し、部材モデルデータ351としてサーバ3の記憶部35に記憶させておく。次に、サーバ3は、部材モデルデータ351から各部材のデータを面の集合モデルとして作成する。そして、作成した面の集合モデルのうち、所定値以上の面積を持つ面リストを各部材ごとに作成し、面モデルリストデータ352として記憶する。以上の処理により、施工現場において部材の建方が完了しているか否かを判定するための基礎データがサーバ3の記憶部35に設定される。
まず、オペレータが、現場ローカル座標が既知である基準点を設置する(S1001)。すなわち、建物の最上階に、図1に示すような基準点MKを3点以上設置し、各基準点MKの現場ローカル座標を特定し、サーバ3に入力し、記憶させる。次に、荷物を運搬する通常の作業として、タワークレーン5を動作させる(S1002)。
サーバ3は、吊り天秤55に設置された観測装置2が撮影指示領域を通過したか否かを判定する(S1003)。具体的には、所定時間ごとに上記の監視システムからブーム51の長さL、起伏角θ及び旋回角φを取得し、式4を用いてブーム51の先端部の2次元座標を求め、その2次元座標が撮影指示領域データ356の範囲に含まれるか否かを判定する。観測装置2が撮影指示領域を通過していないと判定したとき(S1003のNo)、タワークレーン5の動作(S1002)を続けながら、観測装置2の位置を監視する(S1003)。これは、建物の当該階に設定された撮影指示領域のすべて(例えば、図4の例では、4箇所)を観測装置2が通過するまで行われる。
観測装置2が撮影指示領域を通過したと判定したとき(S1003のYes)、サーバ3は、観測装置2に下方の画像撮影を指示するメッセージを送信し、そのメッセージに対する応答として、観測装置2からステレオ画像データを取得し、3次元点群データ354として記憶部35に記憶する(S1004)。このとき、観測装置2は、サーバ3からの撮影指示のメッセージを受信し、そのメッセージに従って建物の最上階を上方から撮影し、その撮影した画像データをサーバ3に送信する。ただし、3点以上の基準点MKを含む画像データが有効になる。
次に、サーバ3は、ステレオ画像データに含まれる基準点MK1、MK2及びMK3の計測データを用いて、観測装置2の現場ローカル座標系の位置(xc、yc、zc)を特定し、この位置データを用いて、観測装置座標系の位置を現場ローカル座標系の位置に変換する式(例えば、式1)を設定し、座標変換式データ353として記憶部35に記憶する(S1005)。そして、観測装置座標系の位置を示す3次元点群データ354を、座標変換式データ353により現場ローカル座標系の位置に変換し、観測装置座標系の位置及び現場ローカル座標系の位置を記憶部35に記憶する(S1006)。
続いて、サーバ3は、設計情報として、法線ベクトルがz軸に平行である面モデルリストデータ352に含まれる座標値に対して、±施工誤差データ355の値の範囲内にある3次元点群データ354を抽出し、部材ごとに分類する(S1007)。例えば、図9の面モデルリストデータ352のうち、下から1番目のレコードに示される、大梁GY1X1の、z軸を法線ベクトルとし、z座標が4000である面に関しては、施工誤差を10とすれば、z座標が3990〜4010であり、x座標が300〜5700であり、y座標が−200〜200である座標値を抽出する。そして、抽出した座標値を大梁GY1X1の点群データとして分類する。
次に、サーバ3は、3次元点群データ354を3次元CADデータ上の面モデルに正射影する(S1008)。詳細には、点群データの座標値には、設計情報に基づく面モデルリストデータ352で規定される平面上だけでなく、施工誤差の範囲内に含まれるものもあるので、その範囲内にある座標値を観測装置2の方向に沿って上記平面に射影する。これにより、施工誤差の範囲内にある点群データを設計上の部材面に集約することができる。例えば、施工誤差を10とすれば、z座標が4000±10の範囲(すなわち、3990〜4010)のデータをz座標の4000に集約する。
続いて、サーバ3は、正射影により集約した3次元点群データ354と、面モデルリストデータ352とを照合し、観測装置2からの距離に応じた点群密度が所定値以上であるか否かを判定する(S1009)。この判定方法は、観測装置2で取得した対象部材4の点群数は、観測装置2と、対象部材4との間の距離に応じて変化することに基づく。すなわち、対象部材4が同じであっても、観測装置2との間の距離が短ければ、点群が密になって点群数は多くなり、その距離が長ければ、点群が疎になって点群数は少なくなる。そこで、点群密度及び距離に基づいて、部材が設置されているか否かを判定する。
詳細には、面モデルリストデータ352から、対象となる部材面の面積を取得して点群密度を計算し、点群密度×観測装置2からの距離が所定値以上であるか否かを判定する。例えば、図9の面モデルリストデータ352のうち、下から1番目のレコードに係る設計面積は、(x終点−x始点)×(y終点−y始点)=(5700−300)×(200+200)=5400×400=2160000と計算される。
ここで、対象部材4の上に人がいることはあるが、上方から撮影するので、人によって隠れる部分が小さいため、部材面の大方の点群データを取得できることから、部材面の面積として面モデルリストデータ352の設計値を用いることができる。なお、3次元点群データ354を用いて、点群が存在する画素領域の面積である点群支配面積を画像処理により計算し、その点群支配面積を部材面の面積としてもよい。一方、対象点群の観測装置2からの距離(例えば、平均距離)を計算する際には、3次元点群データ354のうち、観測装置座標系の座標値を用いる。
点群密度が所定値未満であれば(S1009のNo)、サーバ3は、部材が設置されていないとして、施工未了と判定する(S1010)。そして、施工未了の箇所が区別できるデータを表示部32に表示する(S1011)。
一方、点群密度が所定値以上であれば(S1009のYes)、部材が設置されているとして、施工完了と判定する(S1012)。そして、施工完了の箇所が区別できるデータを表示部32に表示する(S1013)。さらに、作業日報等のデータから工数を抽出して、対象となる工区分の施工完了データ357を作成し、記憶部35に記憶し(S1014)、工程表に含まれる、施工現場の部位及び部位ごとの施工予定データから施工歩掛データ358を作成し、記憶部35に記憶する(S1015)。
以上によれば、S1007〜S1013の処理を、設計情報から作成した面モデルリストデータ352を参照しながら、施工現場に設置される予定の部材ごとに行うことにより、当該部材が既に設置されているか否かを把握し、その結果を表示することができる。
図11は、部材設置判定システム1の処理を示すフローチャートである。本処理は、図10が示す処理と基本的に同様であるが、施工の完了又は未了の判定方法が少々異なる。
具体的には、図11のS1101〜S1106及びS1111〜S1116の処理は、図10のS1001〜S1006及びS1010〜S1015の処理と同様であるので、簡単に説明する。一方、図11のS1107〜S1110の処理は、図10のS1007〜S1009の処理とは異なるので、詳細に説明する。
まず、オペレータが、現場ローカル座標が既知である基準点を設置する(S1101)。次に、荷物を運搬する通常の作業として、タワークレーン5を動作させる(S1102)。
サーバ3は、吊り天秤55に設置された観測装置2が撮影指示領域を通過したか否かを判定する(S1103)。撮影指示領域を通過していないと判定したとき(S1103のNo)、タワークレーン5の動作(S1102)を続けながら、観測装置2の位置を監視する(S1103)。これは、建物の当該階に設定された撮影指示領域のすべて(例えば、図4の例では、4箇所)を観測装置2が通過するまで行われる。
観測装置2が撮影指示領域を通過したと判定したとき(S1103のYes)、サーバ3は、観測装置2に下方の画像撮影を指示するメッセージを送信し、観測装置2からステレオ画像データを取得し、3次元点群データ354として記憶部35に記憶する(S1104)。
次に、サーバ3は、ステレオ画像データに含まれる基準点MK1、MK2及びMK3の計測データを用いて、観測装置2の現場ローカル座標系の位置(xc、yc、zc)を特定し、この位置データを用いて、観測装置座標系の位置を現場ローカル座標系の位置に変換する式(例えば、式1)を設定し、座標変換式データ353として記憶部35に記憶する(S1105)。そして、観測装置座標系の位置を示す3次元点群データ354を、座標変換式データ353により現場ローカル座標系の位置に変換し、観測装置座標系の位置及び現場ローカル座標系の位置を記憶部35に記憶する(S1106)。
続いて、サーバ3は、設計情報として、法線ベクトルごとに、面モデルリストデータ352に含まれる座標値に対して、±施工誤差データ355の値の範囲内にある3次元点群データ354を抽出し、部材ごとに分類する(S1107)。例えば、図9の面モデルリストデータ352のうち、上から3番目のレコードに示される、柱CX1Y1の、y軸を法線ベクトルとし、y座標が−300である面に関しては、施工誤差を10とすれば、y座標が−310〜−290であり、x座標が−300〜300であり、z座標が0〜4000である座標値を抽出する。そして、他の5面に関して抽出した座標値とともに、柱CX1Y1の点群データとして分類する。
次に、サーバ3は、3次元点群データ354を3次元CADデータ上の面モデルに正射影する(S1108)。詳細には、点群データの座標値には、設計情報に基づく面モデルリストデータ352で規定される平面上だけでなく、施工誤差の範囲内に含まれるものもあるので、その範囲内にある座標値を観測装置2の方向に沿って上記平面に射影する。これにより、施工誤差の範囲内にある点群データを設計上の部材面に集約することができる。例えば、施工誤差を100とすれば、y座標が300±100の範囲(すなわち、200〜400)のデータをy座標の300に集約する。
続いて、サーバ3は、正射影により集約した3次元点群データ354と、法線ベクトルがz軸に平行である面モデルリストデータ352とを照合し、観測装置2からの距離に応じた点群密度が所定値以上であるか否かを判定する(S1109)。詳細には、面モデルリストデータ352から、対象となる部材面の面積を取得して点群密度を計算し、点群密度×観測装置2からの距離が所定値以上であるか否かを判定する。例えば、図9の面モデルリストデータ352のうち、下から1番目のレコードに係る設計面積は、(x終点−x始点)×(y終点−y始点)=(5700−300)×(200+200)=5400×400=2160000と計算される。なお、部材面の面積は、3次元点群データ354を用いて、点群が存在する画素領域の面積である点群支配面積を画像処理により計算してもよい。また、対象点群の観測装置2からの距離(例えば、平均距離)を計算する際には、3次元点群データ354のうち、観測装置座標系の座標値を用いる。
点群密度が所定値未満であれば(S1109のNo)、サーバ3は、正射影により集約した3次元点群データ354と、法線ベクトルがx軸及びy軸に平行である面モデルリストデータ352とを照合し、観測装置2からの距離に応じた点群密度が所定値以上であるか否かを判定する(S1110)。点群密度が所定値未満であれば(S1110のNo)、部材が設置されていないとして、施工未了と判定する(S1111)。そして、施工未了の箇所が区別できるデータを表示部32に表示する(S1112)。
一方、点群密度が所定値以上であれば(S1109のYes又はS1110のYes)、部材が設置されているとして、施工完了と判定する(S1113)。そして、施工完了の箇所が区別できるデータを表示部32に表示する(S1114)。さらに、作業日報等のデータから工数を抽出して、対象となる工区分の施工完了データ357を作成し、記憶部35に記憶し(S1115)、工程表に含まれる、施工現場の部位及び部位ごとの施工予定データから施工歩掛データ358を作成し、記憶部35に記憶する(S1116)。
以上によれば、S1107〜S1114の処理を、設計情報から作成した面モデルリストデータ352を参照しながら、施工現場に設置される予定の部材ごとに行うことにより、当該部材が既に設置されているか否かを把握し、その結果を表示することができる。
≪出力データの具体例≫
図12〜14は、施工完了データ357の具体例を示す図である。各図は、PCa部材の施工進捗状況を示すものであり、図10のS1009及び図11のS1109、S1110における、施工完了又は未了の判定結果に応じて、サーバ3の表示部32に表示される。なお、ある部材が設置されたと判定した場合には、点群密度の判定を行った面だけでなく、部材の表面全体を色付けるものとする。
図12(a)は、当日の建方予定を示す。図12(b)は、前日の建方完了及び当日の建方予定を示す。図12(c)は、前日とそれ以前の建方完了及び当日の建方予定を示す。
図15〜17は、施工歩掛データ358の具体例を示す図である。図15は、部位が柱である場合のデータを示す。図16は、部位が梁である場合のデータを示す。図17は、部位が床である場合のデータを示す。施工歩掛データ358は、部位ごとに集計され、部材名称、施工状況、施工順、施工予定日及び施工完了日を含む、部材ごとのレコードからなる。施工状況は、施工の進捗状況を数値コードで示すものであり、2が施工完了を示し、1が施工予定を示し、0が施工未了を示す。
上記実施の形態では、図6に示すサーバ3の各部を機能させるために、処理部34で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る部材設置判定システム1が実現されるものとする。この場合、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
以上説明した本発明の実施の形態によれば、部材設置判定システム1を用いることにより、以下の効果が得られる。
(1)図3に示すように、上方から建物の最上階を観測することにより、水平方向からの観測では、他の部材や障害物等により3次元点群データ354が取得できなかった部材の施工状況を、確実に把握することができる。また、ステレオカメラ等の観測装置2をタワークレーン5で吊るす方式とすることにより、タワークレーン5の延伸とともに観測装置2が上昇したとしても、撮影指示領域(図4)は、水平面上の2次元座標の範囲であり、共通化することができる。これによれば、タワークレーン5のクライミングステップによらず、観測装置2による施工現場の撮影範囲を一定にすることができる。
(2)観測装置2をタワークレーン5に吊るすか、固定することにより、安全に撮影可能であり、付け替える必要がなく、タワークレーン5を伸ばすのは全体作業の中で必要なことであり、タワークレーン5とともに観測装置2も上昇するので、別途観測装置2を上げる必要はない。
(3)図4に示すように、複数回に分けて3次元点群データ354を取得する際に、データを取得すべき観測装置22のポイントを撮影指示領域として事前に記憶しておくことにより、荷物を運搬する通常の作業におけるタワークレーン5の動作に伴って、観測装置2が撮影指示領域の範囲内に位置付いたときに、サーバ3が観測装置22に撮影を指示する。これによれば、観測装置22による撮影位置を任意に決めることができ、点群データを自動的に取得することができる。
(4)図10のS1009及び図11のS1109、S1110に示すように、サーバ3は、「点群密度×観測装置2からの平均距離」に基づく判定を行うことにより、観測装置2及び対象部材4の間の距離に拠らず、部材の建方完了、未了を精度よく判断することができる。また、図10のS1007に示すように、部材ごとに、その各面のうち、法線ベクトルがzである面だけを残すことにより、下方に向く観測装置2に対して最も正対する面だけで部材の建方完了、未了を判断でき、すべての面を処理する必要がないので、システムの負荷軽減を図ることができる。そして、図10のS1007及び図11のS1107に示すように、施工誤差を加味して建方完了、未了を判断するので、多少の施工誤差があっても適切な判定を行うことができる。
(5)図1、図10のS1001及び図11のS1101に示すように、基準点MK1、MK2、MK3を用いることにより、GPSデータが受信できないエリアであっても、観測装置2の位置を測定することができる。
(6)図12〜図14に示すように、設置が完了した部材と、未了の部材とを異なる色で表示することにより、施工現場の進捗状況(完了/未了)が分かりやすくなるので、多人数の施工関係者の間において、施工現場に関する情報を共有することが可能になる。
(7)図15〜図17に示すように、自動的に施工歩掛データ358を収集することが可能になり、施工見積等の各種データに反映することができる。
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
(1)図3において、旋回制御装置6は、吊り天秤55の下面中心に設けられ、フックブロック53の鉛直方向軸を中心に吊り天秤55を回転させることにより、観測装置2を回転させる。この場合、観測装置2の撮影方向を斜め下向きにすることにより、広範囲の画像データを取得できる。GPS装置7は、観測装置2の3次元位置情報を取得し、その位置情報を、タワークレーン5の所定箇所に設置されたサーバ3に送信する。例えば、移動式クレーンを用いる際には、図4に示すポイントPの2次元座標が変化するので、GPS装置7による位置の取得が有効である。
なお、観測装置2として、3次元画像を撮影可能な単眼カメラ(以下、簡単に「単眼カメラ」という)1台を用いるようにしてもよい。この場合、単眼カメラを、吊り天秤55の下面のうち、旋回制御装置6から離れた箇所に設置してもよい。この場合、ブーム51を固定した状態で、旋回制御装置6により吊り天秤55を回転させることにより、単眼カメラを回転させて、広範囲の画像データを取得できる。
また、単眼カメラを回転させる回転装置を吊り天秤55の下面中心に設けた上で、撮影方向が所定の角度(例えば、鉛直方向下方から45度)になるように、単眼カメラを回転装置に設置してもよい。この場合、ブーム51及び吊り天秤55を固定した状態で、回転装置により単眼カメラを回転させながら、斜め下方向を撮影することにより、広範囲の施工現場の画像データを取得できる。
(2)上記実施の形態では、部材設置判定にタワークレーン5を用いる際に、ステレオカメラや単眼カメラ等の観測装置2を吊り天秤55に設置するように説明したが、観測装置2をブーム51に設置してもよい。この場合、観測装置2の撮影方向を下向き又は斜め下向きにして、ブーム51を移動させることにより、観測装置2の撮影範囲を変更しながら、広範囲の画像データを取得できる。
また、観測装置2を回転させる回転装置をブーム51に設置し、その回転装置に観測装置2を設置してもよい。この場合、ブーム51を固定した状態で、回転装置により、観測装置2を回転させる。このとき、観測装置2の撮影方向を斜め下向きにすることにより、広範囲の画像データを取得できる。
(3)上記実施の形態では、サーバ3が、撮影指示領域データ356を記憶し、観測装置2が当該領域に位置した場合に、撮影指示を出すように説明したが、観測装置2が、撮影指示領域データ356を記憶して、自身の位置が当該領域に入った場合に、撮影を行うようにしてもよい。
(4)上記実施の形態では、サーバ3が、点群密度及び観測装置2からの平均距離の乗算値を所定の閾値と比較することにより、部材の建方完了、未了を判定するように説明したが、それらの乗算値に限ることなく、上記点群密度が大きいほど、かつ、上記平均距離が大きいほど、大きく算出される評価値であれば、そのような評価値を用いて判定してもよい。
(5)上記実施の形態では、図10のS1007〜S1008及び図11のS1107〜S1108に示すように、法線ベクトルの座標軸に関してだけ施工誤差を適用し、その誤差範囲に含まれる点群データを面モデルに正射影するように説明したが、面モデルの当該平面上の範囲に関しても施工誤差を適用し、その誤差範囲内で外れた点群データも画素数のカウントに含めるようにしてもよい。