JP6093553B2 - 炭素材及びその製造方法、並びに複合材 - Google Patents

炭素材及びその製造方法、並びに複合材 Download PDF

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Description

本発明は、炭素材及びその製造方法、並びに複合材に関する。
非水電解質二次電池としてリチウム塩の有機電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、軽量でエネルギー密度が高く、携帯電話やノートパソコンの電源として利用され、今後はハイブリッド車など電動自動車等の移動体用の電源として期待されている。また、携帯電話やノートパソコンのリチウムイオン二次電池の負極材には炭素材が用いられており、特に黒鉛が用いられている。黒鉛は、その粒子を有機系結着剤及び溶剤と混合して、黒鉛ペーストとし、この黒鉛ペーストを銅箔の表面に塗布した後に、溶剤を乾燥して成形したものが、リチウムイオン二次電池用負極として用いられる。
黒鉛には高価な人造黒鉛もあれば、比較的安価な黒鉛もある。後者の例として、天然から産出される天然黒鉛、又は、コークスやタールピッチなどの原料を用いて人工的に製造される黒鉛は安価である。このような安価な黒鉛は、比較的省エネルギーで製造される黒鉛であり、すでに大量に製造されている。黒鉛粒子を負極材に用いたリチウムイオン二次電池は、容量が大きく、比較的安定したサイクル特性が得られる。しかしながら、その電池は、短時間で放電及び充電を行う入出力特性について難点がある。入出力特性は、例えば、動力源としてエンジンとモーターとを組み合わせて用いるハイブリッド車においては、エネルギー回生及び高速放電を行うために要求される機能である。かかるハイブリッド車の需要の高まりに伴い、優れた入出力特性を有する電池を提供可能な負極材が望まれるようになっている。
こうした要望に応える炭素系負極材としては、(1)黒鉛粒子の表面を低結晶性の炭素質で被覆した複層構造を有する炭素材(例えば、特許文献1参照)、及び(2)難黒鉛化性炭素材(例えば、特許文献2参照)が提案されている。また、本発明者らは、窒素を高濃度で含有する難黒鉛化性の炭素材を見出し(特許文献3参照)、該炭素材が入出力特性及びサイクル特性に優れていることを見出している(特許文献4参照)。特許文献3には、窒素を高濃度で含有する窒素含有炭素材料の前駆体としてアズルミン酸が開示され、アズルミン酸を炭素化(炭化)することによって窒素含有炭素材料を製造する方法が開示されている。さらに、アズルミン酸を溶解する溶媒が見つかったことにより、アズルミン酸の加工性が飛躍的に向上し、様々な新規炭素材への応用が期待されている(特許文献5、6参照)。
特開平04−368778号公報 再表2007−040007号公報 再表2007−043311号公報 再表2008−123380号公報 特開2010−260773号公報 特開2011−256348号公報
最近、アズルミン酸の加工性が向上したことにより、アズルミン酸と他の素材との複合化を検討する余地が生じている。有用な複合化の例として、黒鉛とアズルミン酸との複合化が挙げられる。安価且つ大量に生産されている黒鉛と、アズルミン酸とを複合化させることにより、黒鉛に優れたサイクル特性及び入出力特性を付与することができ、低コスト且つ大量に製造できる可能性がある。
しかしながら、本発明者らが上記の文献を参考にして、黒鉛とアズルミン酸との複合化を試みたところ、黒鉛上にわずかな量しかアズルミン酸を担持できなかったり、均一にアズルミン酸を担持することが困難だったりしたため、黒鉛のサイクル特性及び入出力特性は大して向上せず、満足のいく性能を有するものを得ることができなかった。
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、サイクル特性及び入出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を、低コスト且つ大量に提供可能な負極に用いられる炭素材及びその製造方法、並びに複合材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、例えばアズルミン酸を原料とする窒素含有炭素材料である、窒素原子を有する難黒鉛化性炭素材料により黒鉛を被覆すれば、難黒鉛化性炭素材料の優れた入出力特性を効率的に活用できると共に、得られた炭素材の大部分を黒鉛で占めることもできるため、その炭素材を低コスト且つ大量に製造することも可能であると考え、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
[1]黒鉛と、その黒鉛を被覆する、窒素原子を有する難黒鉛化性炭素材料と、を含有する、炭素材であって、前炭素材が、波数1000〜2000cm-1のレーザーラマンスペクトル図において、1300〜1390cm-1の間に第1のピークを有し、1550〜1620cm-1の間に第2のピークを有し、前記第1のピークと前記第2のピークとの間にベースラインよりも大きい裾を有する形状を示す、炭素材。
]黒鉛と、その黒鉛を被覆するアズルミン酸とを含有する、複合材であって、前記複合材は、前記黒鉛100質量部に対して、前記アズルミン酸を5〜40質量部含有する、複合材
]黒鉛と、その黒鉛を被覆するアズルミン酸とを含有する複合材に600℃〜1500℃の熱処理を施す工程を有する、炭素材の製造方法であって、前記複合材は、前記黒鉛100質量部に対して、前記アズルミン酸を5〜40質量部含有する、炭素材の製造方法
]前記アズルミン酸と有機酸とを含有する混合液に前記黒鉛を浸漬する工程と、前記黒鉛を浸漬している前記混合液から液体を除去して前記複合材を得る工程と、を更に有する、上記の製造方法。
]前記有機酸が蟻酸を含む、上記の製造方法
[6]上記の炭素材を含有する、リチウムイオン二次電池用負極。
本発明によれば、サイクル特性及び入出力特性に優れたリチウムイオン二次電池を、低コスト且つ大量に提供可能な負極に用いられる炭素材及びその製造方法、並びに複合材を提供することができる。
本実施形態の炭素材についてレーザーラマンスペクトル図の一例を示す模式図である。 実施例の充放電特性を示すグラフである。 比較例の充放電特性を示すグラフである。 実施例及び比較例の放電容量のサイクル特性を示すグラフである。 実施例及び比較例のクーロン効率のサイクル特性を示すグラフである。 実施例及び比較例の入出力特性を示すグラフである。 実施例の炭素材のレーザーラマンスペクトル図である。 比較例の炭素材のレーザーラマンスペクトル図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。すなわち、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
本実施形態の炭素材は、黒鉛と、その黒鉛を被覆する窒素原子を有する難黒鉛化性炭素材料(以下、「窒素含有難黒鉛化性炭素材料」という。)とを含有するものであり、その炭素材の前駆体は、好ましくは、黒鉛とその黒鉛を被覆するアズルミン酸とを含有する複合材である。
黒鉛は天然から産出される、又は、コークスやタールピッチから人工的に製造されるために、炭素材の中では比較的省エネルギーで大量に製造することができ、製造コストも低く抑えることができる。そこで、本発明者らは、例えばアズルミン酸の炭素化物である、窒素含有難黒鉛化性炭素材料で黒鉛、例えば黒鉛粒子を被覆した炭素材を考えた。そのような炭素材が製造可能であれば、窒素含有難黒鉛化性炭素材料の優れた入出力特性を効率的に活用できると共に、得られた炭素材の大部分を黒鉛で占めることもできるため、その炭素材を低コスト且つ大量に製造することも可能である。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、アズルミン酸と有機酸とを含有する混合液を黒鉛に浸漬し、次いで、混合液中の液体成分を除去することによって、アズルミン酸で被覆された黒鉛、すなわち本実施形態に係る複合材を得られることを見出した。また、得られた複合材に熱処理を施して炭素化すること等によって、黒鉛とその黒鉛を被覆する、例えばアズルミン酸の炭素化物である、窒素含有難黒鉛化性炭素材料を含有する炭素材(以下、「黒鉛被覆炭素材」ともいう。)が得られ、得られた黒鉛被覆炭素材が、サイクル特性及び入出力特性、並びにクーロン特性に優れたリチウムイオン二次電池を構成する負極となることを見出した。さらには、その黒鉛被覆炭素材は、リチウムイオン二次電池負極の集電体である銅箔との密着性にも優れ、リチウムイオン二次電池の製造に有利であることも判明した。
本実施形態の黒鉛被覆炭素材の製造方法の一例は、黒鉛と、その黒鉛を被覆するアズルミン酸とを含有する複合材に熱処理を施す工程を有するものである。その製造方法は、アズルミン酸と有機酸とを含有する混合液に黒鉛を浸漬する工程、及び/又は、黒鉛を浸漬している混合液から液体を除去して複合材を得る工程を更に有していてもよい。
アズルミン酸とは、主として青酸(シアン化水素)を重合して得られる重合物の総称である。青酸は、公知の方法で製造されたものを用いることができ、その製造方法は特に限定されない。例えば、青酸は、プロピレン、イソブチレン、tert−ブチルアルコール、プロパン又はイソブタン等をアンモニア及び酸素含有ガスと触媒存在下で反応させる気相接触反応によってアクリロニトリルやメタクリロニトリルを製造する方法において副生する。この方法によれば、青酸を非常に安価に得ることが可能である。なお、この種の気相接触反応は公知の反応であるため、その反応条件も公知のものであればよい。また、副生する青酸を増産するために、例えば、アンモ酸化反応によって青酸を生成するような原料(例えば、メタノール等)を、アクリロニトリルやメタクリロニトリルを合成する反応器に供給してもよい。
青酸は、天然ガスの主成分であるメタンをアンモニア及び酸素含有ガスと触媒存在下で反応させるアンドリュッソー法によっても生成する。この方法も、青酸を非常に安価に得ることが可能である。
もちろん、青酸は、青化ソーダ等を用いる実験室的な製造方法によっても生成し、このようにして得られたものも用いることも可能である。ただし、青酸を多量且つ安価に製造できる観点から、青酸の製造方法は、アクリロニトリルやメタクリロニトリルの製造及びアンドリュッソー法のような工業的な製造方法が好ましい。
アズルミン酸を製造する工程では、上述のようにして得られる青酸を含む原料を重合して、黒色から黒褐色の重合物であるアズルミン酸を得る。アズルミン酸は、青酸及び場合によっては少量のそれ以外の重合性物質を種々の方法で重合させることにより製造することができる。その重合方法としては、例えば、液化青酸又は青酸水溶液を加熱する方法、それらを長時間放置する方法、それらに塩基を添加する方法、それらに光を照射する方法、それらに高エネルギーの放射をする方法、それらの存在下で種々の放電を行う方法、シアン化カリウム水溶液を電気分解する方法が挙げられる。プロピレン等のアンモ酸化工程で副生する青酸の精製工程で、装置の付着物を回収することによってアズルミン酸を得ることもできる。
アズルミン酸の組成は、CHN分析計を用いて測定することができる。アズルミン酸中の炭素原子のモル数に対する窒素原子のモル数の比((窒素原子のモル数)/(炭素原子のモル数))は、炭素化後の窒素含有炭素材料における窒素残存率を高くする観点から、0.4〜1.0であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0、更に好ましくは0.6〜0.95である。
本実施形態で用いるアズルミン酸は、波数1000〜2000cm-1のレーザーラマン分光分析によるスペクトル図において、ラマンシフトが1300〜1400cm-1、1500〜1600cm-1のいずれの位置にもピークを示すことが好ましく、1360〜1380cm-1、1530〜1550cm-1のいずれの位置にもピークを示すことが特に好ましい。
本実施形態で用いるアズルミン酸は、N1sのXPSスペクトル図において、399.0±0.7eVに主ピークを有することが好ましく、より好ましくは399.0±0.4eVに、更に好ましくは399.0±0.2eVに主ピークを有する。
なお、アズルミン酸は、その製造方法、組成及び製造ロットが異なるもの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
次いで、アズルミン酸と有機酸とを含有する混合液(以下、「アズルミン酸混合液」という。)について説明する。
有機酸としては、例えば、カルボキシル基を有する有機化合物、及びスルホン基を有する有機化合物が挙げられる。
より具体的には、カルボキシル基を有する有機化合物としては、例えば、蟻酸、グリコール酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、サリチル酸、トリヒドロキシ安息香酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ケイ皮酸、メリト酸、ピルビン酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸、アクリル酸、及びメタアクリル酸が挙げられる。
スルホン基を有する有機化合物としては、例えば、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びシクロヘキサンスルホン酸が挙げられる。
これらの中で、アズルミン酸を溶解するのに好ましい有機酸は、蟻酸である。有機酸は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
従来、アズルミン酸やアズルミン酸を原料とする窒素含有炭素材料は、溶媒に難溶であると考えられていた。本発明者らは、アズルミン酸がエチレンジアミン、アンモニア水及び濃硫酸に対して僅かに溶解性を示すことを見出している(特許文献5及び特許文献6参照)。ところが、本発明者らの更なる検討によれば、上述の中で最も優れた溶解性を示すエチレンジアミンでさえも、黒鉛、特に黒鉛粒子に被覆することを考えると、アズルミン酸の溶解力は極めて低いことが分かった。また、アズルミン酸と濃硫酸との混合液を黒鉛に浸漬して、最終的に窒素含有炭素材料を黒鉛に被覆することも試みたが、濃硫酸が不揮発性であるため、アズルミン酸を黒鉛に被覆することは困難であった。それに対して、有機酸は、アズルミン酸を、上述の溶媒よりも良好に溶解することが可能である。
アズルミン酸混合液中の有機酸のモル数は、アズルミン酸の青酸単位のモル数に対してモル比で1以上であることが好ましい。ここでアズルミン酸の青酸単位のモル数とは、アズルミン酸の質量(g)を青酸の分子量である27で割って得られた値である。上記有機酸のモル数は、上記モル比でより好ましくは5以上であり、更に好ましくは10以上である。一方、上記有機酸のモル数は、上記モル比で10万以下が好ましく、より好ましくは1万以下であり、更に好ましくは1000以下である。
アズルミン酸混合液は液体として有機酸のみを含んでもよく、有機酸以外の液体、例えば、水や有機溶媒を更に含んでもよい。有機酸と水とを含む水溶液を液体として用いる場合、その水溶液中の有機酸の濃度は特に限定されないが、一般的には10〜90体積%が好ましく、より好ましくは20〜80体積%である。
アズルミン酸混合液の具体的な製造方法について、以下、例示的に説明する。
アズルミン酸混合液を製造する前の段階で、アズルミン酸は粉末又は塊状であってもよい。粉末又は塊状のアズルミン酸は、予めボールミル等で粉砕してから混合液の原料とすることが好ましい。
アズルミン酸混合液を製造するに際し、まず、容器内でアズルミン酸に有機酸及び必要に応じてそれ以外の液体を添加、又は有機酸及び必要に応じてそれ以外の液体にアズルミン酸を添加した後、それらを収容した容器を振とうしたり攪拌したり超音波をかけたりすることが好ましい。合わせて、このときに容器を加熱をしてもよい。
それらを混合する際の温度は特に限定されないが、0〜200℃が好ましく、より好ましくは10〜150℃であり、更に好ましくは20〜80℃である。また、容器内の圧力は特に限定されないが、2Mpa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましく、更に好ましくは0.2MPa以下である。また、混合時間としては特に限定されないが、例えば、1分間〜10時間であってもよく、好ましくは10分間〜3時間であり、より好ましくは30分間〜1時間である。
以上のようにして、アズルミン酸混合液を製造するが、得られたアズルミン酸混合液はアズルミン酸が溶解した状態であることが好ましい。また、アズルミン酸混合液のろ過を行い、得られた濾液を用いてもよい。ただし、アズルミン酸はその一部が溶解していなくてもよい。
本実施形態の製造方法は、アズルミン酸混合液に黒鉛を浸漬する工程を有してもよい。これにより、アズルミン酸−黒鉛分散液が得られる。
黒鉛としては、特に限定されず、例えば、天然黒鉛、鱗片上黒鉛、コークス・タールピッチ・有機系高分子材料を黒鉛化した人造黒鉛、これらを粉砕した黒鉛粒子を用いることができる。黒鉛を粉砕して黒鉛粒子を得る方法については、ジェットミル、振動ミル、ピンミル、ハンマーミル等の公知の方法を用いればよい。黒鉛粒子の平均粒径は、好ましくは10〜30μmである。
本実施形態の製造方法は、得られたアズルミン酸−黒鉛分散液から液体を除去する工程を有してもよい。
液体の除去は、例えば、液体を蒸発させることによって行うことができる。液体を除去する際の温度は、液体が揮発する条件であればよいが、300℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以下であり、更に好ましくは100℃以下である。液体を除去する際の雰囲気の圧力は、特に限定されず、常圧又は減圧のいずれであってもよいが、好ましくは減圧である。
こうして、黒鉛と、その黒鉛を被覆するアズルミン酸とを含有する複合材が得られる。その複合材における黒鉛とアズルミン酸との質量比率について、黒鉛100質量部に対して、アズルミン酸が0.1〜80質量部であること好ましく、より好ましくは0.5〜50質量部であり、更に好ましくは5〜40質量部である。黒鉛100質量部に対して、アズルミン酸が0.1質量部以上であることにより、最終的に得られる黒鉛被覆炭素材を二次電池の負極として用いた場合の電池の入出力特性が更に優れたものになり、80質量部以下であることにより、二次電池製造の更なる低コスト化及び省エネルギー化が可能となる。
本実施形態の黒鉛被覆炭素材について、窒素含有難黒鉛化性炭素材料の原料は、炭素化によって窒素含有難黒鉛化性炭素材料を生成するものであれば特に限定されない。その原料は、窒素原子を有すること、及び、炭素化の過程で溶融し難いことが好ましい。その原料における窒素原子の含有割合は、入出力特性及び電極として汎用的に用いられる銅箔との密着性の観点から、原料全体に対して35質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは60質量%以上である。炭素化の過程で溶融しているかどうかは目視により確認してもよい。ただし、目視が困難である場合は、上記原料を粉末にし、不活性ガス中で400℃まで昇温して加熱した後に冷却し、加熱後のものが、原料と同様に粉末状の形態を有しているか、あるいは、その粉末状の形態を有していないかで判断できる。加熱により溶融していれば粉末が融着するため、多くの場合、融着した形状、あるいは、融着した後に部分的に融着が壊れた構造を有しているため、原料のような粉末状の形態を有していない。
上記の観点から、窒素含有難黒鉛化性炭素材料の原料として、アズルミン酸が好ましい。
以下、上記原料としてアズルミン酸を用いた場合を例にして、黒鉛被覆炭素材の製造方法について説明する。
この黒鉛被覆炭素材の製造方法は、上述のようにして得られた複合材に熱処理を施して炭素化する工程を有する。
熱処理の方法は、下記のものに限定されないが、例えば、回転炉、トンネル炉、管状炉及び流動焼成炉等を用い、複合材を、好ましくは不活性ガス雰囲気下で好ましくは600〜1500℃、より好ましくは700〜1300℃、更に好ましくは800〜1100℃、特に好ましくは850〜1050℃の範囲で加熱(焼成)することにより行われる。熱処理の温度が600℃〜1500℃であることにより、本発明による効果をより有効且つ確実に奏することのできる黒鉛被覆炭素材が得られる。
上記不活性ガスとしては、下記のガスに限定されないが、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、二酸化炭素等の不活性ガスが挙げられ、これらの中では窒素ガスが好ましい。不活性ガス雰囲気は不活性ガスが静止していても流通していてもよいが、熱処理により発生したガスを系内から取り除き、良好な不活性ガス雰囲気を維持する観点から、流通しているのが好ましい。不活性ガス中の酸素濃度は1%以下が好ましく、より好ましくは0.1%以下である。また、不活性ガス雰囲気下での熱処理の際、雰囲気の圧力を減圧(真空)にしてもよい。
熱処理時間としては、特に限定されないが、本発明による効果をより有効且つ確実に奏する観点から、10秒間〜100時間であると好ましく、より好ましくは5分間〜10時間、更に好ましくは15分間〜5時間、特に好ましくは30分間〜2時間の範囲である。同様の観点から、熱処理における雰囲気の圧力は、0.01〜5MPaであると好ましく、より好ましくは0.05〜1MPa、更に好ましくは0.08〜0.3MPa、特に好ましくは0.09〜0.15MPaである。
なお、本実施形態の黒鉛被覆炭素材の製造方法は、上記炭素化する工程の前に、複合材に酸素含有ガス雰囲気下で熱処理を施す工程を有してもよい。この工程での熱処理における諸条件としては、下記の条件が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この工程では、例えば、回転炉、トンネル炉、管状炉、流動焼成炉、マッフル炉等を用い、複合材に好ましくは空気中で熱処理を施す。熱処理の温度は140℃以上であると好ましく、170℃以上であるとより好ましい。また、熱処理の温度は600℃以下であると好ましく、500℃以下であるとより好ましく、400℃以下であると更に好ましく、350℃以下であると特に好ましい。
酸素含有ガスとして、空気に不活性ガスを添加して酸素濃度を希釈したものを用いてもよく、空気に酸素ガスを添加して酸素濃度を高めたものを用いてもよい。酸素含有ガス中の酸素濃度は5〜30体積%が好ましく、15〜25体積%であるとより好ましい。省エネルギーの点から、酸素含有ガスとして空気をそのまま用いるのが特に好ましい。雰囲気中の酸素含有ガスは静止していても流通していてもよいが、熱処理に伴い消費した酸素を効率よく供給できる観点から、流通しているのが好ましい。
酸素含有ガス雰囲気下での熱処理の時間としては、1分間〜100時間であると好ましく、30分間〜10時間であるとより好ましく、1時間〜5時間であると更に好ましい。また、酸素含有ガス雰囲気下での熱処理の際の雰囲気の圧力は、0.01〜5MPaであると好ましく、0.05〜1MPaであるとより好ましく、0.08〜0.3MPaであると更に好ましく、0.09〜0.15MPaであると特に好ましい。
以上のようにして、本実施形態の黒鉛被覆炭素材が得られる。
本発明の効果をより有効且つ確実に奏する観点から、本実施形態の黒鉛被覆炭素材は、X線光電子分光分析(XPS)により表面の炭素原子及び窒素原子の定量を行ったときに、炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)が、好ましくは0.01〜0.5であり、より好ましくは0.02〜0.4、更に好ましくは0.03〜0.35であり、特に好ましくは0.05〜0.3である。なお、XPSは、X線源:Al管球(Al−Kα線)、管電圧:15kV、管電流:10mA、分析面積:600μm×300μm楕円、取り込み領域:N1s,C1s、Pass−Energy:20eV、にて測定したときの値として定義される。
本実施形態の黒鉛被覆炭素材は、好ましくは、波数1000〜2000cm-1のレーザーラマンスペクトル図において、1300〜1390cm-1の間にピークP1と、1550〜1620cm-1の間にピークP2という少なくとも2つの主要なピークを有する。1320〜1380cm-1の間にピークP1、1560〜1590cm-1の間にピークP2という2つの主要なピークを有することがより好ましい。P1はアモルファス性炭素に起因するピーク、P2は結晶性炭素に起因するピークと考えられる。
本実施形態の好ましい黒鉛被覆炭素材は、P1とP2の間に、レーザーラマンスペクトル図において、ベースラインよりも大きい裾を有する形状をしていることが特徴である。
この裾を以下の(L/H1)の比、(L/H2)の比によって定義することができる。
図1は、本実施形態の黒鉛被覆炭素材のレーザーラマンスペクトル図の一例の模式図を示す。なお、図1は、本実施形態で用いる(L/H1)の比、(L/H2)の比を説明するための図であって、本実施形態の黒鉛被覆炭素材から得られるレーザーラマンスペクトル図を何ら限定するものではない。
本実施形態の黒鉛被覆炭素材のレーザーラマンスペクトル図において、(L/H1)の比は0.3〜0.8であり、好ましくは0.4〜0.7であり、特に好ましくは0.5〜0.6である箇所を有する。レーザーラマンスペクトル図における(L/H1)の比とは、ピークの半値幅と関連する値である。半値幅が小さいと(L/H1)の値が小さくなり、半値幅が大きいと(L/H1)の値が大きくなる。
本実施形態の黒鉛被覆炭素材のレーザーラマンスペクトル図において、(L/H2)の比は、0.05〜0.3が好ましく、より好ましくは0.07〜0.2であり、特に好ましくは0.10〜0.15である箇所を有する。ここで、本実施形態の黒鉛被覆炭素材のレーザーラマンスペクトル図における(L/H2)の比とは、ピークの半値幅と関連する値である。半値幅が小さいと(L/H2)の値が小さくなり、半値幅が大きいと(L/H2)の値が大きくなる。
本実施形態の黒鉛被覆炭素材のレーザーラマンスペクトル図において、(H1/H2)の比は、0.1〜0.4が好ましく、より好ましくは0.15〜0.35であり、更に好ましくは0.2〜0.3である。
なお、L、H1及びH2は、グリーンレーザー(波長532nm、100mW)を用い、ビームサイズ0.3mm、操作範囲1000〜2000cm-1、積算回数5分、露光時間5秒で測定したときに得られるレーザーラマンスペクトル図から測定される。
図1に示すように、B1は、1000〜1300cm-1の最小の強度値であり、B2は1700〜2000cm-1の間の最小の強度値である。なお、本実施形態で用いるレーザーラマンスペクトル図におけるベースラインは、B1とB2とを結んだ直線である。また、ベースラインにはノイズによる振幅があるため、最小の強度値といっても、ノイズの影響を考慮し、1000〜1300cm-1の線幅の中間を最小値とし、1700〜2000cm-1の線幅の中間を最小値とする。さらに、以下の説明においても、値を求める場合は、線幅の中間の値を読み込んだ値を採用する。
次に、図1に示すC1及びC2は、それぞれ、ピークP1及びP2からラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインとの交点である。
Dは、ピークP1とP2との間の、ベースラインから最も低い高さを有する最小点Mからラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインとの交点である。最小点Mの高さLは、その最小点Mから、ラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインの交点までの長さである。具体的には、図1に例示するレーザーラマンスペクトル図では線分MDの長さである。
一方、高さH1は、ピークP1からラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインの交点までの長さである。図1に例示するレーザーラマンスペクトル図では、線分P1C1の長さが高さH1に相当する。高さH2は、ピークP2からラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインの交点までの長さである。図1に例示するレーザーラマンスペクトル図では線分P2C2の長さが高さH2に相当する。
本実施形態の黒鉛被覆炭素材は、黒鉛と、その黒鉛を被覆する窒素含有難黒鉛化性炭素材料とを含有するので、黒鉛化条件(2500〜3000℃での不活性ガス雰囲気での焼成)でも、レーザーラマンスペクトル図の特徴を満たす。一方、黒鉛とその黒鉛を被覆する易黒鉛化性炭素材料を含有する炭素材の場合は、易黒鉛化性炭素材料が黒鉛化するため、上記レーザーラマンスペクトル図の特徴を満たさない。
本実施形態において、以上のようにして得られた黒鉛被覆炭素材を、リチウムイオン二次電池用負極に用いることができる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極は、上記黒鉛被覆炭素材と、必要に応じて、結着材と、導電助剤と、集電体とを備える。黒鉛被覆炭素材は、主に活物質として機能するが、本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極は、上記黒鉛被覆炭素材以外の活物質を含んでもよい。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極に用いられる結着材としては、特に限定されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴムなどのビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル系フッ素ゴム、熱可塑性フッ素ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。リチウムイオン二次電池用電極におけるこの結着材の含有割合は、黒鉛被覆炭素材に対して1〜20質量%であると好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。結着材の含有割合が1質量%以上であると電極の強度がより十分になり、結着材の含有割合が20質量%以下であると電気抵抗の増大や容量の低下を更に抑制できる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極に用いられる導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック及びカーボンナノチューブが挙げられる。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。導電助剤の含有割合は、黒鉛被覆炭素材に対して1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であるとより好ましい。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極に用いられる集電体としては、電極の電気的接続を可能にするものであれば特に限定されず、その材質として、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン及びステンレスが挙げられる。これらのうち、薄膜に加工しやすいという観点及びコストの観点から、銅が好ましい。集電体の形状としては、例えば、箔状、穴開け箔状及びメッシュ状が挙げられる。また、集電体として、多孔性材料、例えばポーラスメタル(発泡メタル)及びカーボンペーパーなども用いることができる。
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法を説明する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極の製造方法は、炭素材として本実施形態の黒鉛被覆炭素材を用いる以外は、公知の方法であれば特に限定されない。例えば、黒鉛被覆炭素材を含む炭素材に、結着材、導電助材及び溶媒を加えてスラリーとし、そのスラリーを集電体に塗布し、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、リチウムイオン二次電池用負極を製造する方法が挙げられる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法に用いる溶媒は、水系、非水系のいずれでもよい。非水系の溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド及びトルエンが挙げられる。
上記スラリーは、撹拌機、加圧ニーダー、ボールミル及びスーパーサンドミル等の分散装置により混練して調製される。
また、上記スラリーに、粘度を調整するための増粘剤を添加してもよい。増粘剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ及びカゼインが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記スラリーを集電体に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、ドクターブレード法、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、グラビアコート法及びスクリーン印刷法などの公知の方法が挙げられる。スラリーの塗布後、そのスラリーの乾燥処理に次いで、必要に応じて、平板プレス、カレンダーロール等による圧延処理を行う。こうして、シート状、ペレット状等の形状に成形した電極材スラリーを、集電体と、例えば、ロール、プレス又はこれらの組み合わせ等、公知の方法により一体化することで、リチウムイオン二次電池用負極を得ることができる。
こうして得られたリチウムイオン二次電池用負極は、黒鉛被覆炭素材が集電体との密着性、特に銅箔との密着性に優れる点で有利な負極である。また、この負極を備えたリチウムイオン二次電池は、優れたサイクル特性、入出力特性及びクーロン効率を有する。
以下、本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極を備えるリチウムイオン二次電池の一例を説明する。ただし、リチウムイオン二次電池に用いられ得る材料や製造方法等は、下記の具体例に限定されるものではない。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、負極として本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極を備える以外の構成について特に限定されず、リチウムイオン二次電池用負極以外は公知のものであってもよい。例えば、このリチウムイオン二次電池は、セパレータと、そのセパレータを介して対向して配置された本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極と、正極と、それらに接触した電解液とを備える。このリチウムイオン二次電池は、上述のように配置された負極及び正極間の空間に電解液を注入することにより得ることができる。
本実施形態の黒鉛被覆炭素材を用いると、リチウムイオン二次電池用負極の集電体、特に銅箔との密着性が向上する。その理由は詳細には明らかにされていないが、窒素原子は金属原子、特に銅原子との間に化学的な親和性があるため、黒鉛被覆炭素材が、集電体との密着性の向上に寄与していると推測される。ただし、理由はこれに限定されない。
正極は、負極と同様にして、集電体上に正極活物質を含有する正極層を形成することにより、製造することができる。
正極の集電体としては、例えば、電解液中での陽極酸化によって表面に不動態皮膜を形成する金属又はその合金を用いるのが好ましい。このような集電体としては、例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、及びこれらの金属を含む合金などを例示することができる。これらの中で、アルミニウム、チタン、タンタル及びこれらの金属を含む合金からなる群より選ばれるものが好ましく、特にアルミニウム及びその合金からなる群より選ばれるものは軽量であるため、エネルギー密度が高く好ましい。また、正極の集電体として、ステンレス鋼等の合金を用いることもできる。これらの金属や合金を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にしたものを正極の集電体として用いることができる。
正極活物質としては、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能なものであれば特に限定されず、そのような金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、又は導電性高分子材料が挙げられる。より具体的には、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、及びこれらの複酸化物(LiCoxNiyMnz2、X+Y+Z=1)、リチウムマンガンスピネル(LiMn24)、リチウムバナジウム化合物、オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe)、バナジウム酸化物(V25、V23)、硫化物(TiS2、FeS2、Nb34、Mo34、CoS2)、酸化クロム(CrO3)、酸化テルル(TeO2)、酸化ゲルマニウム(GeO2)、酸化リン(P25)が挙げられる。また、有機化合物である導電性高分子材料としては、例えばポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセンや公知の特許文献に記載の導電性ポリマーが挙げられる。なお、正極活物質に金属酸化物や金属硫化物等を用いる場合、導電剤として、グラファイト、アセチレンブラック及びケッチェンブラック等の炭素質材料等を更に含有させることが好ましい。
電解液は、リチウム含有電解質を非水溶媒に溶解して調製する。リチウム含有電解質としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiCF(CF35、LiCF2(CF34、LiCF3(CF33、LiCF4(CF32、LiCF5(CF3)、LiCF3(C253、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiN(C25CO)2、LiI、LiAlCl4、LiBC48が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。なかでもLiPF6を用いることが好ましい。さらに、これらのリチウム塩濃度は、好ましくは0.1〜3.0mol/L、より好ましくは0.5〜2.0mol/Lである。
非水溶媒としては、例えば、カーボネート類、エーテル類、ケトン類、ラクトン類、ニトリル類、アミン類、アミド類、硫黄化合物、ハロゲン化炭化水素類、エステル類、ニトロ化合物、リン酸エステル系化合物、スルホラン系炭化水素類、イオン性液体から適宜選択することができる。これらのうちでも、カーボネート類、エーテル類、ケトン類、エステル類、ラクトン類、ハロゲン化炭化水素類、スルホラン系炭化水素類、イオン性液体が好ましい。より具体的な非水溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、モノグライム、4−メチル−2−ペンタノン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、1,2−ジクロロエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メチルフォルメイト、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルチオホルムアミド、スルホラン、3−メチル−スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、ホスファゼン誘導体及びこれらの混合溶媒が挙げられる。また、イオン性液体としては、カチオンとして1−エチル−3メチルイミダゾリウム、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、アニオンとしてビスフルオロスルフォニルイミド、ビストリフルオロスルフォニルイミド、テトラフルオロボレート、CF3SO3、(CF3SO2)N2、(C25SO2)N2が挙げられる。これらの中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、及びジエチルカーボネートが好ましく、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
特に、上記非水溶媒として、エチレンカーボネートを必須の成分とし、他の溶媒を1種類以上添加した混合溶媒を用いることが好ましい。その混合溶媒における各溶媒の混合比率は、通常、エチレンカーボネート/他の溶媒=5/95〜70/30(体積比)とすることが好ましい。エチレンカーボネートは凝固点が高く、常温では固化しているため、凝固点の低い他の溶媒を1種類以上添加することにより、混合溶媒の凝固点が低くなり、用いることが可能となる。他の溶媒としては、エチレンカーボネートの凝固点を低くできるものであれば特に限定されず、例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−パレロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,3−ジオキソラナン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキサン、ブチレンカーボネート、蟻酸メチルが挙げられる。
また、上記電解質中に、ビニレンカーボネートやブチレンカーボネートなどのカーボネート類、ビフェニルやシクロヘキシルベンゼンなどのベンゼン類、プロパンスルトンなどの硫黄類、エチレンサルファイド、フッ化水素、トリアゾール系環状化合物、フッ素含有エステル類、テトラエチルアンモニウムフルオライドのフッ化水素錯体及びこれらの誘導体、ホスファゼン及びその誘導体、アミド基含有化合物、イミノ基含有化合物、及び窒素含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有した電解液も用いることができる。
また、電解質として、固体又はゲル状のイオン伝導性電解質の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。イオン伝導性電解質としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール又はこれらの誘導体、LiI、Li3N、Li1+xxTi2-x(PO43(M=Al、Sc、Y、La)、Li0.5-3x0.5+xTiO3(R=La、Pr、Nd、Sm)、あるいは、Li4-xGe1-xx4に代表されるチオリシコンを用いることができる。さらに、LiI−Li2O−B25系、Li2O−SiO2系などの酸化物ガラス、又はLiI−Li2S−B23系、LiI−Li2S−SiS2系、Li2S−SiS2−Li3PO4系などの硫化物ガラスをイオン伝導性電解質として用いることができる。またリチウム塩を高分子中に溶解させた電解質、例えばポリエチレンオキサイドにリチウム塩を溶解させた、電解液を全く含まない電解質をイオン導電性電解質として用いることもできる。
セパレータは、通常のリチウムイオン二次電池に用いられるものであれば、材質や形状は特に制限されない。このセパレータは正極と負極とが物理的に接触しないように分離するものであり、イオン透過性が高いものであるのが好ましい。セパレータとしては、例えば、合成樹脂微多孔膜、織布、不織布などが挙げられ、合成樹脂微多孔膜が好ましい。合成樹脂微多孔膜の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン、ポリアミド、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。これらの中ではポリエチレン及びポリプロピレンが好ましい。なお、作製するリチウムイオン二次電池の正極と負極とを直接接触させない構造にした場合は、セパレータを用いる必要はない。
本実施形態のリチウムイオン二次電池の構造は、特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレータとを、扁平渦巻状に巻回して巻回式極板群としたり、これらを平板状として積層して積層式極板群とし、これら極板群を外装体中に封入した構造とするのが一般的である。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、ペーパー型電池、ボタン型電池、コイン型電池、積層型電池、円筒型電池などの形態を有する。
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。したがって、当業者は以下に示す実施例に様々な変更を加えて本発明を実施することができ、かかる変更は本願の特許請求の範囲に包含される。
<製造例>
(アズルミン酸の製造)
水350gに青酸150gを溶解させた水溶液を容器中で調製し、この水溶液を攪拌しながら、25%アンモニア水溶液120gを10分かけて添加し、得られた混合液を35℃に加熱した。すると、青酸の重合が始まり黒褐色の重合物が析出し始め、温度は徐々に上昇し45℃となった。重合が始まって2時間後から30質量%青酸水溶液を200g/時間の速度で添加し始め、4時間かけて800g添加した。青酸水溶液の添加中は容器を冷却して反応温度が50℃を維持するように制御した。この温度で100時間攪拌した。得られた黒色沈殿物をろ過によって分離した。このときの沈殿物の収率は、用いた青酸の全量に対して96質量%であった。分離後の沈殿物を水洗した後、乾燥器にて120℃で4時間乾燥させてアズルミン酸を得た。
<アズルミン酸の分析>
(CHN分析)
ジェイサイエンスラボ社製の元素分析装置(商品名「MICRO CORDER JM10」)を用い、2500μgのアズルミン酸試料を試料台に充填してCHN分析を行った。試料炉の温度を950℃、燃焼炉(酸化銅触媒)の温度を850℃、還元炉(銀粒+酸化銅のゾーン、還元銅のゾーンと酸化銅のゾーンとからなる)の温度を550℃に設定した。また、酸素流量を15mL/分、He流量を150mL/分に設定した。検出器としてTCDを用いた。アンチピリン(Antipyrine)を用いてマニュアルに記載の方法でキャリブレーションを行った。
その結果、上記のようにして得られたアズルミン酸の組成は、炭素元素40.0質量%、窒素元素29.8質量%、水素元素4.1質量%であった。ここで、上述の乾燥条件では吸着水が残存するため、差分は主に吸着水中の酸素元素と水素元素とに由来するものと考えられる。
<レーザーラマンスペクトルの測定>
試料をメノウ乳鉢で粉末用セルにマウントして下記の条件でレーザーラマンスペクトルを測定した。
装置:JASCO社製商品名「NRS−3100」、光源:グリーンレーザー(波長532nm、100mW)、ビームサイズ:0.3mm、操作範囲:1000〜2000cm-1、積算回数:5分、露光時間:5秒
<リチウムイオン二次電池用負極の作製>
スチレンブタジエンゴム(結着材)を純水に溶解させて5質量%の溶液を調製し、これにアセチレンブラック(導電助剤)を添加し、次いで、活物質(実施例においては黒鉛被覆炭素材、比較例においては黒鉛)を添加し、次いで、カルボキシメチルセルロース(増粘剤)を添加し、スラリー状の負極混合物を調製した。このときに純水を適宜加えることによって、スラリーの粘度を調整した。活物質とアセチレンブラックとカルボキシメチルセルロースとスチレンブタジエンゴムとの質量比は、活物質:アセチレンブラック:カルボキシメチルセルロース:スチレンブタジエンゴム=93:3:2:2になるようにした。
得られた負極混合物をドクターブレードを用いて銅箔(集電体)上に塗布した。その後、80℃で24時間真空乾燥した。真空乾燥後、乾燥物をロールプレスを通して加圧成形し、直径12mmのサイズに打ち抜いて負極を得た。
<リチウムイオン二次電池の作製>
露点−70℃以下の雰囲気中において、上記「リチウムイオン二次電池用負極の作製」により作製した負極を作用極とした。対極(正極)としてリチウム金属対極を用いた。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)=1/1(体積比)の混合液を溶媒とした1M−LiPF6電解液に、ビニレンカーボネートを1M−LiPF6電解液に対して2質量%添加したものを用いた。セパレータとしてポリプロピレン微多孔膜(商品名「Celgard3501」、Celgard社製)を用いた。セルとしてフラットセル(宝泉製)を用い、そのセル内に、負極とセパレータと正極とを順に積層するように収容し、更に電解液を注入して、セル内を真空脱気することにより、電解液を各部材に染み込ませ、実験用のリチウムイオン二次電池を作製した。
<充放電試験>
活物質(実施例においては黒鉛被覆炭素材、比較例においては黒鉛)を作用極とした。充電時のモードは、C.C.−C.V.法(C.C.はconstant current、C.V.はconstant voltageの略)とし、充電時のC.V.モードは設定電流密度に対して1/10までとした。放電時はC.C.モードとした。C.C.モードでの設定電流密度は1サイクル目は74.4mA/g、2サイクル目以降は372mA/gとした(以下、電流密度372mA/gを1Cと定義する。)。カットオフ電圧は下限を5mV、上限を2000mVとした。
なお、容量維持率及びクーロン効率は下記式によって算出した。
容量維持率(%)=((51サイクル目の放電容量(mAh/g))/(2サイクル目の放電容量(mAh/g)))×100
クーロン効率(%)=((放電容量(mAh/g))/(充電容量(mAh/g)))×100
<入出力試験>
活物質(実施例においては黒鉛被覆炭素材、比較例においては黒鉛)を作用極とした。充電時のモードはC.C.−C.V.法(C.C.はconstant current、C.V.はconstant voltageの略)とし、充電時のC.V.モードは設定電流密度に対して1/10までとした。放電時はC.C.モードとした。C.C.モードでの設定電流密度は1サイクル目は74.4mA/g、2サイクル目以降は372mA/gとした(ここで電流密度372mA/gを1Cと定義する。)。充電レートは1C、4C、7C、10Cとし、この順番で実施した。放電レートは1Cとした。レートを変更後に1Cでの充放電を2回実施した。入出力試験に先立ち、0.2Cにて1サイクル充放電を行った。
なおレート維持率は次の式によって算出した。
レート維持率(%)=((10Cでの放電容量(mAh/g))/(1サイクル目の1Cでの放電容量(mAh/g)))×100
[実施例1]
<黒鉛被覆炭素材の製造>
上記「アズルミン酸の製造」により得られたアズルミン酸3gを容器に入れ、そこに溶媒として蟻酸を300g添加し、50℃で1時間攪拌してアズルミン酸混合液を得た。得られたアズルミン酸混合液に、鱗片状黒鉛(日本黒鉛社製、商品名「PAG1」)20gを添加し、アズルミン酸−黒鉛分散液を得た。得られたアズルミン酸−黒鉛分散液を還流器を備えるナスフラスコ中に入れ、100℃で3時間還流した。その後、アズルミン酸−黒鉛分散液をエバポレーターに移して、回転させながら真空ポンプでエバポレーター内をを減圧条件に調整し、突沸しないように20℃から徐々に温度を上昇させ、最終的には70℃で蟻酸を除去した。こうして、黒鉛と、その黒鉛を被覆するアズルミン酸とを含有する複合材を得た。複合材を真空乾燥機に移し、120℃で1時間、更に乾燥させた。
乾燥後の複合材に空気雰囲気下、170℃で5時間熱処理を施した。次いで、熱処理後のもの5gを石英管に充填し、窒素ガスを500Ncc/分流通しながら、管状炉にて900℃まで1時間で昇温し、更に1時間、900℃に保持して熱処理を施し、黒鉛被覆炭素材を得た。
<負極の作製>
上記「リチウムイオン二次電池用負極の作製」に従って、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
<二次電池の作製>
上記「リチウムイオン二次電池の作製」に従って、リチウムイオン二次電池を作製した。電解液を負極に浸み込ませる際に、電解液に負極に浸漬し、次いで真空脱気を行うが、このときに何度真空脱気を繰り返してみても、銅箔上に塗布された黒鉛被覆炭素材とアセチレンブラックとカルボキシメチルセルロースとポリフッ化ビニリデンとを含む複合体は、銅箔から剥離することがなかった。また、ピンセットで負極を電解液から取り出しても、複合体が銅箔から剥離されることがなかった。これらのことより、本実施形態の黒鉛被覆炭素材によって銅箔との密着性が向上していることが分かった。
<サイクル特性評価>
上記「充放電試験」の方法で二次電池の51サイクルの充放電試験を実施した。得られた結果を表1に示す。2サイクル目以降の容量維持率及びクーロン効率とも高く、極めて安定に充放電できていることが分かる。
<入出力特性>
上記「入出力試験」の方法で二次電池の入出力特性を評価した。得られた結果を表1に示す。10Cでの放電容量が大きく、レート維持率も大きく、入出力特性に優れていることが分かった。
[実施例2]
<黒鉛被覆炭素材の製造方法>
アズルミン酸3gを5gに変更した以外は実施例1の「黒鉛被覆炭素材の製造」と同様にして、黒鉛被覆炭素材を得た。
<負極の作製>
上記「リチウムイオン二次電池用負極の作製」に従って、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
<二次電池の作製>
上記「リチウムイオン二次電池の作製」に従って、リチウムイオン二次電池を作製した。実施例1において観察されたことと同様に、銅箔との密着性が向上していることが分かった。
<サイクル特性評価>
上記「充放電試験」の方法で二次電池の51サイクルの充放電試験を実施した。得られた結果を表1に示す。また、充放電特性のグラフを図2に示す。2サイクル目以降は全てほぼ同じような特性を示しており、極めて安定に充放電できていることが分かった。なお、1サイクル目にはSEI(Solid Electrolyte Interface)形成のための不可逆容量が発生するが、これはリチウムイオン二次電池に共通する基本的な現象である。
<入出力特性>
上記「入出力試験」の方法で二次電池の入出力特性を評価した。得られた結果を表1に示す。10Cでの放電容量が大きく、レート維持率も大きく、入出力特性に優れていることが分かった。
[実施例3]
<黒鉛被覆炭素材の製造>
アズルミン酸3gを7gに変更した以外は実施例1の「黒鉛被覆炭素材の製造」と同様にして、黒鉛被覆炭素材を得た。
<負極の作製>
上記「リチウムイオン二次電池用負極の作製」に従って、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
<二次電池の作製>
上記「リチウムイオン二次電池の作製」に従って、リチウムイオン二次電池を作製した。実施例1において観察されたことと同様に、銅箔との密着性が向上していることが分かった。
<サイクル特性評価>
上記「充放電試験」の方法で二次電池の51サイクルの充放電試験を実施した。得られた結果を表1に示す。2サイクル目以降の容量維持率及びクーロン効率とも高く、極めて安定に充放電できていることが分かった。
<入出力特性>
上記「入出力試験」の方法で二次電池の入出力特性を評価した。得られた結果を表1に示す。10Cでの放電容量が大きく、レート維持率も大きく、入出力特性に優れていることが分かった。
[実施例4]
<黒鉛被覆炭素材の製造>
管状炉での900℃での焼成を1000℃に変更した以外は、実施例2の「黒鉛被覆炭素材の製造」と同様にして、黒鉛被覆炭素材を得た。
<負極の作製>
上記「リチウムイオン二次電池用負極の作製」に従って、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
<二次電池の作製>
上記「リチウムイオン二次電池の作製」に従って、リチウムイオン二次電池を作製した。実施例1において観察されたことと同様に、銅箔との密着性が向上していることが分かった。
<サイクル特性評価>
上記「充放電試験」の方法で二次電池の51サイクルの充放電試験を実施した。得られた結果を表1に示す。2サイクル目以降の容量維持率及びクーロン効率とも高く、極めて安定に充放電できていることが分かった。
<入出力特性>
上記「入出力試験」の方法で二次電池の入出力特性を評価した。得られた結果を表1に示す。10Cでの放電容量が大きく、レート維持率も大きく、入出力特性に優れていることが分かった。
[比較例1]
<負極の作製>
負極の活物質として黒鉛被覆炭素材に代えて鱗片状黒鉛(日本黒鉛社製、商品名「PAG1」)をそのまま用いた以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極を作製した。
<二次電池の作製>
上記「リチウムイオン二次電池の作製」に従って、リチウムイオン二次電池を作製した。真空脱気をする際、一部又は全部の、銅箔上に塗布された鱗片状黒鉛とアセチレンブラックとカルボキシメチルセルロースとポリフッ化ビニリデンとを含む複合体が、銅箔から剥離してしまうことがあった。また、ピンセットで負極を電解液から取り出すと、複合体が銅箔から剥離することがあった。
<サイクル特性評価>
上記「充放電試験」の方法で二次電池の51サイクルの充放電試験を実施した。得られた結果を表1に示す。また、充放電特性のグラフを図3に示す。初回充放電における不可逆容量の影響を除いた2サイクル目以降も容量が劣化してきていることが分かった。実施例2及び比較例4の充放電容量のサイクル特性を比較したグラフを図4に、クーロン効率のサイクル特性を比較したグラフを図5に示す。
<入出力特性>
上記「入出力試験」の方法で二次電池の入出力特性を評価した。得られた結果を表1に示す。
表1、図2、図3、図4、図5及び図6から、本実施形態の黒鉛被覆炭素材は、黒鉛に比べて、リチウムイオン二次電池用負極として、優れたサイクル特性、クーロン効率及び入出力特性を示すことが分かった。特に、入出力特性については、高レートにおいての効果が顕著に優れていることが分かった。
また、実施例2の黒鉛被覆炭素材のレーザーラマンスペクトルを図7に、比較例1の鱗片状黒鉛のレーザーラマンスペクトルを図8に示す。本実施形態の黒鉛被覆炭素材は、P1とP2との間に、ベースラインよりも大きい裾を有する形状であり、実施例2のL/H1は0.57であり、比較例1のL/H1は0.00である。
本発明の黒鉛被覆炭素材は、リチウムイオン二次電池用負極として優れたサイクル特性、クーロン効率及び入出力特性を有する。また、集電体、特に銅箔との密着性も高く、これらの点で、リチウムイオン二次電池用負極として産業上の利用可能性がある。
また、本発明の複合材は上記リチウムイオン二次電池用負極の原料として産業上の利用可能性がある。

Claims (6)

  1. 黒鉛と、その黒鉛を被覆する、窒素原子を有する難黒鉛化性炭素材料と、を含有する、炭素材であって、
    前記炭素材が、波数1000〜2000cm -1 のレーザーラマンスペクトル図において、1300〜1390cm -1 の間に第1のピークを有し、1550〜1620cm -1 の間に第2のピークを有し、前記第1のピークと前記第2のピークとの間にベースラインよりも大きい裾を有する形状を示す、炭素材
  2. 黒鉛と、その黒鉛を被覆するアズルミン酸とを含有する、複合材であって、
    前記複合材は、前記黒鉛100質量部に対して、前記アズルミン酸を5〜40質量部含有する、複合材
  3. 黒鉛と、その黒鉛を被覆するアズルミン酸とを含有する複合材に600℃〜1500℃の熱処理を施す工程を有する、炭素材の製造方法であって、
    前記複合材は、前記黒鉛100質量部に対して、前記アズルミン酸を5〜40質量部含有する、炭素材の製造方法
  4. 前記アズルミン酸と有機酸とを含有する混合液に前記黒鉛を浸漬する工程と、前記黒鉛を浸漬している前記混合液から液体を除去して前記複合材を得る工程と、を更に有する、請求項に記載の炭素材の製造方法。
  5. 前記有機酸が蟻酸を含む、請求項に記載の炭素材の製造方法。
  6. 請求項1に記載の炭素材を含有する、リチウムイオン二次電池用負極。
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