以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本発明に係る真円度測定機の全体構成を示した斜視図である。
同図に示す真円度測定機1は、測定部10と演算処理部50とを有する。測定部10と演算処理部50とは、各種信号の送受可能に電気的に接続される。
測定部10において、ベース12は、最下部に配置され、測定部10全体を一体的に支持する。また、ベース12は、上面が水平となるように傾き調整されて所望の測定台等の上に載置される。このベース12の上面側にはXYテーブル14が配置され、XYテーブル14よりも後側には鉛直方向(Z軸方向)に沿って延びるコラム16が配置される。
なお、同図のようにベース12に対して固定された方向に直交座標系のX軸、Y軸、Z軸を想定し、X軸とY軸は、XYテーブル14のテーブル面14Aに平行する方向とし、Z軸はテーブル面14Aに直交する方向とする。そして、X軸及びY軸が地面に対して実際に水平方向に一致するか否かに関わらず、X軸及びY軸の方向を水平方向、Z軸の方向を鉛直方向というものとする。
XYテーブル14は、説明を省略する支持機構によりベース12に対して水平方向に移動自在に支持される。また、XYテーブル14は、その上側に水平方向に沿ったテーブル面14Aを有し、そのテーブル面14Aに測定対象となるワーク(被測定物)Wが載置される。同図においてテーブル面14Aには、円柱状のワークWが載置された様子が示されている。
コラム16は、四角柱状に形成されており、その下端部がベース12に固定されて鉛直方向(Z軸方向)に沿って立設される。コラム16の前面には、Zガイド18が設置される。
Zガイド18は、例えば平行する2本の長手状のガイドレール18A、18Bからなり、それらのガイドレール18A、18Bがコラム16の前面に鉛直方向に沿って設置される。このZガイド18により、コラム16の前面に沿ってキャリッジ20が鉛直方向に移動可能に支持される。
キャリッジ20は、モータ等のキャリッジ駆動手段60を有し、キャリッジ駆動手段60の動力により鉛直方向に移動する。また、キャリッジ20の鉛直方向の位置を検出する位置センサ62を備える。キャリッジ20の前面には、Zテーブル22が固着される。
Zテーブル22は、下部から一部が突出するスピンドル24(回転軸部材)を回転自在に支持すると共に、スピンドル24を回転させるモータ等のスピンドル駆動手段64を内蔵する。また、Zテーブル22は、スピンドル24の回転角度(回転位置)を検出する回転角度センサ66を内蔵する。
スピンドル24は、円柱状に形成されており、その中心軸の方向が鉛直方向と一致するように配置される。また、スピンドル24は、スピンドル駆動手段64の動力によりスピンドル24の中心軸の周りに回転する。スピンドル24の中心軸は、後述の検出器34のワークW(XYテーブル14)に対する回転の回転中心(回転軸)A0となる。スピンドル24の下端部には支持アーム26が固着される。
支持アーム26は、水平方向に長寸の形状を有し、その中央部がスピンドル24に固着される。また、支持アーム26は、その下面に沿ってスライドブロック28を水平方向に直線移動自在(水平一軸移動自在)に支持するとともに、スライドブロック28の回転中心A0からの距離を検出する位置センサ68を備える。
ここで、図2は、以下のスライドブロック28から検出器34までの間に連設される回転動作部の構成要素のみを拡大して示した斜視図であり、図1と共に参照するものとする。
スライドブロック28は、本実施の形態では手動により支持アーム26の下面に沿って水平方向に直線移動する。ただし、電動により水平方向に直線移動するようにしてもよい。このスライドブロック28の下側には鉛直方向に延びる検出器ガイド30が取り付けられる。
検出器ガイド30は、柱状に形成されており、その上端がスライドブロック28にネジなどにより固定される。また、検出器ガイド30は、その軸方向が鉛直方向と一致するように配置される。この検出器ガイド30には、検出器ホルダ32が検出器ガイド30に沿って鉛直方向に移動自在に設けられる。
検出器ホルダ32は、モータ等のホルダ駆動手段70を備えており、そのホルダ駆動手段70の動力により、検出器ガイド30に沿って鉛直方向に移動する。また、検出器ホルダ32は、検出器ガイド30に対する検出器ホルダ32の鉛直方向の位置を検出する位置センサ72を備える。この検出器ホルダ32には、検出器34が固定される。
検出器34は、ワークWに接触させる測定子36を有し、測定子36の先端の基準位置からの水平方向の変位量を検出する。
測定子36は、鉛直面に沿って揺動可能に検出器34に支持されると共に、外力が加えられていない状態では、基準位置に復帰するように構成される。
以上の測定部10の構成によれば、キャリッジ駆動手段60によりキャリッジ20を鉛直方向に移動させることにより、検出器34の鉛直方向の位置を変更して測定子36の先端の鉛直方向の位置を変更することができる。
同様に、ホルダ駆動手段70により検出器ホルダ32を鉛直方向に移動させることにより、検出器34の鉛直方向の位置を変更して、測定子36の先端の鉛直方向の位置を変更することができる。
一方、スライドブロック28を手動で水平方向に移動させることによって、検出器34の回転中心A0からの距離(水平方向の距離)を変更することができる。
また、スピンドル駆動手段64によりスピンドル24を回転させることにより、検出器34を回転中心A0の周りに回転移動させて測定子36の先端を回転中心A0の周りに回転移動させることができる。
ここで、円柱状のワークWの形状(形状データ)を測定する際の測定時における上記測定部10の動作、及び、ワークWの形状(形状データ)を高精度に測定する測定原理について説明する。
測定開始時のユーザの設定において、円柱状のワークWは、図1、図2のように、その中心軸が鉛直方向となるように一方の端面を下に向けてXYテーブル14のテーブル面14A上に載置される。このとき、ワークWの中心軸と回転中心A0とが略同軸上となるように設定される。
また、検出器34の測定子36(測定子36の先端)がワークWの表面(外周面)に接触するように、スライドブロック28が位置調整されて検出器34の回転中心A0からの距離が設定される。
一方、測定時において、検出器34が鉛直方向の所定位置に設定された状態で、検出器34がスピンドル24の回転により回転中心A0の周りに360度に渡って回転移動する。これによって、測定子36の先端が、鉛直方向の所定位置における水平面内で回転移動すると共に、その水平面でワークWを切断した水平断面(測定断面)において測定子36の先端がワークWの表面に摺接しながら移動する。
このとき、回転中心A0の周りの所定回転角度ごとの回転位置における測定子36の先端の回転中心A0からの距離、即ち、ワークWに対して測定子36が接触する測定点の回転中心A0からの距離は、検出器34により検出される測定子36の変位量と、検出器34の回転中心A0からの距離とに基づいて求めることができる。検出器34の回転中心A0からの距離は、位置センサ68により検出されるスライドブロック28の回転中心A0からの距離に基づいて求めることができる。
したがって、測定断面においてワークWの表面に摺接しながら回転移動した測定子36の先端の軌跡上の各点のXY座標値を得ることができ、その軌跡上の各点のXY座標が測定断面におけるワークWの表面の形状を示す形状データとなる。
即ち、測定断面上において回転中心A0の位置をXY座標の原点として測定子36の先端のXY座標上の位置を極座標(動径r、偏角θ)で表すとする。このとき偏角θ(測定子36の先端の位置ベクトルとX軸とのなす角)は、回転角度センサ66により検出されるスピンドル24の回転角度に基づいて決定される。そして、測定子36の先端を回転中心A0の周りに回転移動させて偏角θを変化させたときの各偏角θにおける動径rは、測定子36の先端の回転中心A0からの距離として上記のように求めることができる。
これによって、測定断面においてワークWの表面に摺接しながら回転移動した測定子36の先端の軌跡上の各点のXY座標値を、X座標値x=r・cosθ、Y座標値y=r・sinθとして得ることができる。そして、このようにして得られた測定子36の先端の軌跡上の各点のXY座標値は、測定断面におけるワークWの表面の周方向に沿った各点のXY座標値であり、測定断面におけるワークWの形状データを示す。
以上のように特定位置の測定断面における形状データの測定は、測定断面の鉛直方向の位置を変更して行われ、各位置の測定断面において測定されたワークWの2次元的な形状データを統合することによって、ワークWの3次元的な形状データが得られる。
このとき、測定断面の鉛直方向の位置を変更する形態として、上記測定部10では、キャリッジ駆動手段60によりキャリッジ20を鉛直方向に移動させることによってスピンドル24と共に検出器34を鉛直方向に移動させて測定断面の鉛直方向の位置を変更する第1形態と、ホルダ駆動手段70により検出器ホルダ32を鉛直方向に移動させることによってスピンドル24を鉛直方向に移動させることなく検出器34を鉛直方向に移動させて測定断面の鉛直方向の位置を変更する第2形態とが可能である。
本測定では、第1形態により測定断面の鉛直方向の位置を変更して各位置の測定断面におけるワークWの形状データを測定する第1測定と、第2形態により測定断面の鉛直方向の位置を変更して各位置の測定断面におけるワークWの形状データを測定する第2測定とが順に行われ、それらの測定により得られた形状データが1つの形状データとして合成される。これによって、キャリッジ20を鉛直方向に移動させるZガイド18の直線運動誤差と、検出器ホルダ32を鉛直方向に移動させる検出器ガイド30の直線運動誤差とを排除した精度の高い形状データが取得される。
第1測定について説明すると、第1測定では、まず、測定開始時において、図3(A)に示すように、検出器ホルダ32は、検出器ガイド30に対する鉛直方向の移動可能範囲のほぼ下端となる位置に設定される。また、図3では不図示のキャリッジ20は、測定子36の先端の鉛直方向の位置、即ち、測定断面の鉛直方向の位置が、測定を行う測定範囲の下端位置となるように、コラム16(Zガイド18)に対して鉛直方向の位置が設定される。
なお、このときの検出器ホルダ32の鉛直方向の位置とキャリッジ20の鉛直方向の位置の各々を基準位置というものとする。また、このときの測定断面の鉛直方向の位置を示すZ座標値をz1とし、このときの回転中心A0の位置をX軸及びY軸の原点とする。ただし、原点は任意の位置とすることができる。
続いて、スピンドル24の回転により測定子36の先端が回転中心A0の周りに360度に渡って回転移動する。これによって、Z座標値z1の測定断面におけるワークWの形状データが上記のように取得される。
図4(A)には、Z座標値z1の測定断面におけるワークWの形状データの様子が示されている。同図に示すように、Z座標値z1におけるXY座標面上において、回転中心A0の位置を原点(0、0)として、原点(0、0)の周りの所定回転角度ごとの角度方向のワークWの表面の位置(測定点)が上述のようにXY座標値として取得される。同図において、それらの測定点R1n1(nは1〜測定点の数N)の角度方向のX軸とのなす角度がθnで表され、角度θnの角度方向の測定点R1n1のXY座標値が(X1n1、y1n1)として表されている。
Z座標値z1の測定断面におけるワークWの形状データの測定が終了すると、続いて、図3(B)に示すように、検出器ホルダ32が検出器ガイド30に対して基準位置に固定された状態で、キャリッジ20が鉛直方向に移動する。これにより、スピンドル24と共に検出器34が鉛直方向に所定距離分移動する。即ち、検出器ガイド30に対する検出器34の鉛直方向の位置が変更されることなく、検出器34がコラム16に対して鉛直方向に所定距離分移動する。これにより、測定断面の鉛直方向の位置が上側に所定距離分移動した位置に変更される。そして、上述と同様にして、スピンドル24の回転により測定子36の先端が回転中心A0の周りに360度に渡って回転移動し、新たに設定された位置の測定断面において上記のように形状データの測定が行われる。
このようにして測定断面の鉛直方向の位置が測定範囲の下端から上側に所定距離分ずつ移動した位置に順次設定され、各設定位置の測定断面において形状データの測定が行われる。そして、図3(C)のように測定断面の鉛直方向の位置が測定範囲の上端に到達して形状データの測定が行われると、第1測定が終了する。
なお、上記のように測定断面が設定される位置のZ座標値をzm(mは1〜測定断面の設定数M)で表すものとし、図4(B)に示すようにZ座標値zmの測定断面において測定された角度θnの角度方向の測定点をRmn1とし、そのXY座標値を(xmn1、ymn1)として表すものとする。図3(A)〜(C)は、測定断面の設定数Mが3である場合を示すものではなく、第1測定における検出器34の鉛直方向の移動の様子を示したものであり、設定数Mは任意の値とすることができる。
ここで、第1測定により測定された形状データは、キャリッジ20を鉛直方向に移動させるZガイド18の直線運動誤差を含む。
即ち、キャリッジ20を鉛直方向に移動させることによってスピンドル24と共に検出器34を鉛直方向に移動させた場合、検出器34(スライドブロック28)の回転中心A0からの距離は一定に維持されるが、Zガイド18の直線運動誤差によって、スピンドル24の中心軸の水平方向の位置が微小に変位する。これによって、回転中心A0の位置には、Zガイド18の直線運動誤差に対応した変位量分の水平方向の変位が生じ、また、検出器34の水平方向の位置にもその変位量分の水平方向の変位が生じる。なお、Zガイド18の直線運動誤差に起因した回転中心A0の水平方向への変位の大きさを誤差変位量というものとする。
図5(A)には、検出器ガイド30に対して検出器ホルダ32を鉛直方向の基準位置に設定したときの回転中心A0の位置に相当するX軸及びY軸の原点(0、0)の位置(即ち、Z軸の位置)と、ワークWの中心軸A1の位置と、Zガイド18の直線運動誤差により回転中心A0とともに水平方向に変位する検出器34の鉛直方向の移動軌跡A2が示されている。
これによれば、検出器34の鉛直方向の移動軌跡A2は、鉛直方向の位置に応じた誤差変位量分の水平方向への変位により湾曲しており、第1測定により各Z座標値zmの測定断面において測定された各測定点Rmn1のXY座標値(xmn1、ymn1)は、検出器34の鉛直方向の移動軌跡A2と同様に水平方向に変位した回転中心A0を原点として得られる座標値となる。そのため、各測定点Rmn1のXY座標値(xmn1、ymn1)は、回転中心Xの水平方向への変位と反対方向に誤差変位量分変位させた座標値として得られることになる。
したがって、各Z座標値zmの測定断面において測定された各測定点Rmn1のXY座標値(xmn1、ymn1)は、同図(B)に示すように実際のワークWに対して、中心軸A1の位置を回転中心A0の変位と反対方向に誤差変位量分変位させたワーク、即ち、本来の中心軸A1にない歪みが生じたワークWを測定したときの座標値となる。
図4(B)には、Z座標値zmの測定断面において測定された測定点Rmn1が示されており、それらの測定点Rmn1のXY座標値(xmn1、ymn1)は、実際のXY座標値に対してZ座標値zmに応じた誤差変位量分の変位を含む座標値である。そして、それらの測定点Rmn1が示す円形状の中心点Cm1のXY座標値(xm01、ym01)は、Z座標値zmの測定断面におけるワークWの中心軸A1の位置を示す本来のXY座標値に対してZ座標値zmに応じた誤差変位量分を変位させた座標値となっている。
一方、各Z座標値zmの測定断面において測定された各測定点Rmn1のXY座標値(xm01、ym01)は、上記のようにZ座標値zmに応じた誤差変位量分を一様に変位させた座標値であるため、異なるZ座標値の測定断面における測定点の位置関係を考慮することなく、同一のZ座標値の測定断面における測定点の位置関係のみを考慮すれば、ワークWの形状(ワークWの径など)を正しく表したものとなっている。
続いて、第2測定について説明すると、第2測定では、まず、測定開始時において、図6(A)に示すように、第1測定の測定開始時における図3(A)の状態と同じ状態に設定される。即ち、検出器ホルダ32は、検出器ガイド30に対する鉛直方向の位置と、コラム16(Zガイド18)に対するキャリッジ20の鉛直方向の位置とが基準位置に設定される。
続いて、スピンドル24の回転により測定子36の先端が回転中心A0の周りに360度に渡って回転移動する。これによって、第1測定と同様にしてZ座標値z1の測定断面におけるワークWの形状データが取得される。
図7(A)には、Z座標値Z1の測定断面におけるワークWの形状データの様子が示されており、図4(A)に示した形状データと全く同じ形状データが得られる。なお、Z座標値z1の測定断面における形状データの測定は、第1測定と第2測定のいずれかにおいてのみ行うものとすることができる。
Z座標値z1の測定断面におけるワークWの形状データの測定が終了すると、続いて、図6(B)に示すように、キャリッジ20がコラム16(Zガイド18)に対して基準位置に固定された状態で、検出器ホルダ32が検出器ガイド30に対して鉛直方向に移動する。これにより、検出器34が鉛直方向に第1測定と同じように所定距離分移動する。即ち、コラム16に対するスピンドル24の鉛直方向の位置が変更されることなく、検出器34がコラム16に対して鉛直方向に所定距離分移動する。これにより、測定断面の鉛直方向の位置が上側に所定距離分移動した位置に変更される。そして、上述と同様にして、スピンドル24の回転により測定子36の先端が回転中心A0の周りに360度に渡って回転移動し、新たに設定された位置の測定断面において形状データの測定が行われる。
このようにして測定断面の鉛直方向の位置が測定範囲の下端から上側に所定距離分ずつ移動した位置に順次設定され、第1測定と同じ各Z座標値zmの測定断面において形状データの測定が行われる。そして、図6(C)のように測定断面の鉛直方向の位置が測定範囲の上端に到達して形状データの測定が行われると、第2測定が終了する。
なお、図7(B)に示すように第2測定によりZ座標値zm(mは1〜測定断面の設定数M)の測定断面において測定された角度θnの角度方向の測定点をRmn2とし、そのXY座標値を(xmn2、ymn2)として表すものとする。
ここで、第2測定により測定された形状データは、検出器ホルダ32を鉛直方向に移動可能に支持する検出器ガイド30の直線運動誤差を含む。
即ち、検出器ホルダ32を鉛直方向に移動させることによって検出器34を鉛直方向に移動させた場合、回転中心A0の位置は一定位置に維持されるが、検出器34の位置には、検出器ガイド30の直線運動誤差に対応した変位量分の水平方向の変位が生じる。従って、検出器ガイド30の回転中心A0からの距離には、検出器ガイド30の直線運動誤差に対応した変化量分の変化が生じる。
なお、検出器34の水平方向の変位は回転中心A0の方向以外にも生じるが、説明を簡単にするために回転中心A0の方向のみの変位を考慮するものとし、検出器ガイド30の直線運動誤差に対応した検出器34の回転中心A0からの距離の変化量を誤差変化量(増加する場合には正値、減少する場合には負値をとる)というものとする。
図8(A)には、図5と同様に、検出器ガイド30に対して検出器ホルダ32を鉛直方向の基準位置に設定したときの回転中心A0の位置に相当するX軸及びY軸の原点(0、0)の位置(即ち、Z軸の位置)と、ワークWの中心軸A1の位置と、検出器ガイド30の直線運動誤差により水平方向に変位する検出器34の鉛直方向の移動軌跡A3が示されている。
これによれば、回転中心A0の位置は、スピンドル24が鉛直方向に移動しないため、検出器34の鉛直方向の位置に関係なく常に一定位置(Z軸の位置)に固定される。
一方、検出器34の鉛直方向の移動軌跡A3は、鉛直方向の位置に応じた変位量分の水平方向への変位により湾曲しているため、検出器34の回転中心A0からの距離に誤差変位量分の増加が生じる。そのため、第2測定により各Z座標値zmの測定断面において測定された各測定点Rmn2のXY座標値(xmn2、ymn2)は、回転中心A0の位置である原点からの距離を誤差変位量分減少させた位置に変位させた座標値として得られることになる。
したがって、各Z座標値zmの測定断面において測定された各測定点Rmn2のXY座標値(xmn2、ymn2)は、同図(B)に示すように実際のワークWに対して、表面の各点の回転中心A0からの距離を誤差変位量分減少させたワーク、即ち、実際のワークWと直径が異なる形状のワークWを測定したときの座標値となる。図7(B)には、Z座標値zmの測定断面において測定された測定点Rmn2が示されており、それらの測定点Rmn2のXY座標値(xmn2、ymn2)は、実際のXY座標値に対して原点からの距離をZ座標値zmに応じた誤差変化量分減少させた位置の座標値となっている。そのため、ワークWの形状(ワークWの径など)を正しく表したものとなっていない。
一方、ワークWは、中心軸A1が、回転中心A0とほぼ同軸上となるようにXYテーブル14に載置され、各Z座標値zmの測定断面における回転中心A0の位置が検出器ガイド30の直線運動誤差に影響されることなく原点に固定されるため、各Z座標値zmの測定断面において測定された測定点Rmn2が示す円形状の中心点Cm2のXY座標値(xm02、ym02)は、ワークWの中心軸A1の位置を示す正しく表した座標値となっている。
次に、形状データの合成処理について説明する。上述のように第1測定により得られた各Z座標値zm(mは1〜M)の測定断面における形状データ(各測定点Rmn1のXY座標値(xmn1、ymn1))は、Zガイド18の直線運動誤差の影響により、ワークWの中心軸A1の位置を正しく表していないが、ワークWの形状を正しく表したものとなっている。一方、第2測定により得られた各Z座標値zm(mは1〜M)の測定断面における形状データ(各測定点Rmn2のXY座標値(xmn2、ymn2))は、検出器ガイド30の直線運動誤差の影響により、ワークWの形状を正しく表していないが、ワークWの中心軸A1の位置を正しく表したものとなっている。
そこで、第1測定により得られた形状データからは、各Z座標値zm(mは1〜M)の測定断面におけるワークWの形状に関する情報を抽出し、第2測定により得られた形状データからは、各Z座標値zm(mは1〜M)の測定断面におけるワークWの中心軸A1の位置に関する情報を抽出する。そして、同じZ座標値の測定断面において抽出されたそれらの情報を合成することによって、Zガイド18の直線運動誤差と、検出器ガイド30の直線運動誤差との影響を排除した精度の高い形状データを取得する。なお、Z座標値z1の測定断面における形状データは、上述のように第1測定により得られるものと第2測定により得られるものとが同じであるため、いずれかの形状データをそのまま合成後の形状データとする。
図9、図10、図11は、この形状データの合成処理の内容を示した説明図である。
図9(A)の形状データは、図4(B)と同様に、第1測定により得られたZ座標値zm(mは2〜Mのうちの任意の値)の測定断面における形状データを示し、図10(A)は、図7(B)と同様に、第2測定により得られた図9(A)と同じZ座標値zmの測定断面における形状データを示す。
まず、図9(A)に示す第1測定の各測定点Rmn1(nは1〜N)のXY座標値(xmn1、ymn1)に基づいて、同図(B)に示すように、それらの測定点Rmn1が示す円形状の中心点Cm1のXY座標値(xm01、ym01)を、例えば最小二乗中心法により求める。
具体的には、各測定点Rmn1(nは1〜N)の位置を極座標(rmn1、θn)で表すとすると、各測定点Rmn1が示す円形状に最も合致する円の平均径rm1、中心点のXY座標値(xm01、ym01)は、最小二乗中心法に基づき次式により得られる。
これにより求められるXY座標値(xm01、ym01)が中心点Cm1の座標値となる。
この中心点Cm1は、ワークWの中心軸A1の位置を示すが、正しい位置を示していない。
続いて、同図(C)に示すように中心点Cm1のXY座標値(xm01、ym01)を原点(0、0)とした座標系に変換したときの各測定点Rmn1のXY座標値(xmn1−xm01、ymn1−ym01)を求める。そして、それらの各測定点Rmn1のXY座標値(xmn1−xm01、ymn1−ym01)の情報(半径軌跡の情報)のみを抽出する。なお、変換後の各測定点Rmn1の位置を極座標(r、θ)により求めるようにしてもよく、その場合の各測定点Rmn1の極座標は(r′mn1、θ′n)であるものとする。
次に、図10(A)に示す第2測定の各測定点Rmn2(nは1〜N)のXY座標値(xmn2、ymn2)に基づいて、同図(B)に示すように、それらの測定点Rmn2が示す円形状の中心点Cm2のXY座標値(xm02、ym02)を、例えば最小二乗中心法により求める。
具体的には、各測定点Rmn2(nは1〜N)の位置を極座標(rmn2、θn)で表すとすると、各測定点Rmn2が示す円形状に最も合致する円の平均径rm2、中心点のXY座標値(xm02、ym02)は、最小二乗中心法に基づき次式により得られる。
これにより求められるXY座標値(xm02、ym02)が中心点Cm2の座標値となる。
この中心点Cm2は、ワークWの中心軸A1の位置を示し、正しい位置を示す。そして、その中心点Cm2のXY座標値(xm02、ym02)の情報のみを抽出する。
次に、図11(A)に示すように、図10(B)において抽出したXY座標値(xm02、ym02)の中心点Cm2をワークWの中心軸A1の位置とし、また、図9(C)において抽出した各測定点Rmn1が示す円形状の中心点が中心点Cm2と一致するように各測定点Rmn1を配置したXY座標系を生成し、Z座標値zmの測定断面におけるワークWの形状データを示すXY座標系とする。このとき、各測定点Rmn1のXY座標値は(xmn1−xm01+xm02、ymn1−ym01+ym02)として求めることができる。
なお、図11(A)の処理は、図9(C)のXY座標面において、各測定点Rmn1が示す円形状の中心点が中心点Cm2のXY座標値(xm02、ym02)となるように、各測定点Rmn1の位置を一律に(同一方向及び同一シフト量で)シフトさせることに相当する。
また、図11(A)のように生成したXY座標系における原点(0、0)、即ち、回転中心A0の位置を基準にして各測定点Rmn1の位置を極座標により表す場合には、同図(B)に示すように各測定点Rmn1のXY座標値(xmn1−xm01+xm02、ymn1−ym01+ym02)に基づいて、各測定点Rmn1の極座標(r′′mn1、θ′′n)を算出する。
以上の合成処理を、m=2〜Mの全てのZ座標値zmの測定断面における形状データに対して行う。これによって、Zガイド18の直線運動誤差と、検出器ガイド30の直線運動誤差との影響を排除した精度の高いワークWの3次元的な形状データを得ることができる。
次に、図1における演算処理部50の構成について説明する。なお、図1において、演算処理部50は、測定部10に対して別体の装置として示されているが、測定部10と一体の装置として構成されていてもよい。
図12は、演算処理部50の内部構成を示したブロック図である。
同図に示すように、演算処理部50は、第1測定部80、第2測定部82、合成処理部84、形状精度算出部86、駆動部88、記憶部90等を備える。なお、演算処理部50は、ユーザインターフェースとしてユーザが各種情報を入力する入力部や、各種情報を出力するモニタやプリンタなどの出力部を備えているが、それらは省略している。
駆動部88には、測定部10における位置センサ62、回転角度センサ66、位置センサ72の各々から、キャリッジ20のコラム16(Zガイド18)に対する鉛直方向の位置を示す検出信号、スピンドル24の回転角度(回転位置)を示す検出信号、検出器ホルダ32の検出器ガイド30に対する鉛直方向の位置を示す検出信号が与えられる。
また、駆動部88には、後述のように第1測定部80、又は、第2測定部82から出力されるキャリッジ20、スピンドル24、検出器ホルダ32の各々の設定すべき目標位置を示す指示情報が与えられる。
駆動部88は、測定部10におけるキャリッジ駆動手段60、スピンドル駆動手段64、ホルダ駆動手段70の各々に対して、それらを動作させる駆動信号を出力して、キャリッジ20の鉛直方向への移動と停止、スピンドル24の回転と停止、検出器ホルダ32の鉛直方向への移動と停止を制御する。そして、位置センサ62、回転角度センサ66、位置センサ72の各々から与えられる検出信号が示すキャリッジ20の鉛直方向の位置、スピンドル24の回転角度(回転位置)、検出器ホルダ32の鉛直方向の位置を、第1測定部80、又は、第2測定部82から与えられる目標位置に一致させる。
第1測定部80は、上述の第1測定時における測定部10の動作を指示すると共に、第1測定における形状データを生成し、第2測定部82は、上述の第2測定時における測定部10の動作を指示すると共に、第2測定における形状データを生成する。第1測定及び第2測定についての詳細は上述した通りであり、以下、簡単に説明する。
第1測定部80及び第2測定部82は、駆動部88に対してキャリッジ20及び検出器ホルダ32の各々の設定位置を駆動部88に指定すると共に、その設定位置を順次変更する。
これによって、キャリッジ20及び検出器ホルダ32の鉛直方向の位置を事前に決められた所期の位置に設定・変更して、測定子36の鉛直方向の位置を所期の位置に設定・変更する。この設定・変更は、測定断面のZ座標値zmの設定・変更に相当する。
また、第1測定部80及び第2測定部82は、測定子36の鉛直方向の位置を所期の位置に設定している状態において、スピンドル24の設定位置(回転角度)を駆動部88に指定すると共に、その設定位置を順次変更する。これによって、スピンドル24の回転位置(回転角度)を事前に決められた所期の回転位置に設定・変更して、測定子36の回転中心A0の周りの回転角度を所期の回転角度に設定・変更する。この設定・変更は、各Z座標値zmの測定断面における形状データの測定時において測定点とする角度θnの設定・変更に相当する。
更に、第1測定部80及び第2測定部82は、測定子36の鉛直方向の位置及び回転中心A0の周りの回転角度を所期の位置及び回転角度に設定している状態において、位置センサ68と検出器34とから、スライドブロック28の水平方向の位置(回転中心A0からの距離)を示す検出信号と、測定子36の変位量を示す検出信号を取得する。そして、それらの検出信号に基づいて、測定子36(測定子36の先端)の回転中心A0からの距離を取得する。
これによって、図4及び図7に示した各測定点における回転中心A0からの距離、即ち、動径rを取得することができる。そして、その情報と、駆動部88に指示した回転中心A0の周りの回転角度(角度θn)とから、各測定点のXY座標値を求めて、上述のように各Z座標値zmの測定断面におけるワークWの形状データを生成する。
第1測定部80及び第2測定部82は,このようにして第1測定と第2測定とを順に行って、生成した形状データを記憶部90に格納する。
合成処理部84は、記憶部90に格納された第1測定による形状データと第2測定による形状データとを用いて、上述の合成処理を実施し、高精度な形状データを生成する。そして、合成後の形状データを記憶部90に格納する。なお、形状データの合成処理の詳細については上述した通りであるため、説明を省略する。
形状精度算出部86は、記憶部90に格納された合成後の形状データに基づいて、真円度や真直度などのユーザ指定の形状精度に関する情報を算出して、不図示の出力部に出力する。なお、上記説明では円柱状のワークWを測定対象としたが、円筒面を有するワークを測定対象とすることができる。円筒面はワークの外周側に形成されている場合に限らず、円筒状のワークのように内周側に設けられている場合であっても内周側の円筒面の形状データも同様に測定することができる。従って、真円度や真直度に限らず円筒度などの他の形状精度に関する情報も算出して出力部に出力することができる。
以上、上記実施の形態では、第1測定を行った後、第2測定を行うものとしたが、第2測定を行ってから第1測定を行ってもよい。
また、上記実施の形態では、キャリッジ20、スピンドル24、検出器ホルダ32の各々をキャリッジ駆動手段60、スピンドル駆動手段64、ホルダ駆動手段70により演算処理部50からの駆動信号に従って電動で駆動するようにしたが、手動で駆動するものであってもよい。
また、上記実施の形態では、第1測定及び第2測定において、鉛直方向の位置が異なる測定断面ごとに検出器34をワークWの周りに回転移動させてワークWの形状データを測定(回転測定)するようにしたが、測定手順はこれに限らない。例えば、検出器34の回転中心A0周りの異なる回転位置ごとに検出器34を鉛直方向に直線移動させて形状データを測定(直動測定)するようにしてもよい。