原動機によって駆動される圧縮機本体に気体を吸い込むと共に圧縮し,空気作業機等が接続された消費側に圧縮気体を供給する圧縮機には,圧縮機本体の二次側圧力に応じて圧縮機本体の吸気量を制御する容量制御装置が設けられており,この容量制御装置により圧縮機本体の吸気量を制御することで圧縮機本体の二次側圧力を所定の目標圧力に近付ける制御(容量制御)を行い,消費側に安定した圧力の圧縮気体を供給できるようにしている。
一例として,図5に示すエンジン駆動型の油冷式スクリュ圧縮機100では,圧縮機本体140の二次側に圧縮機本体140より吐出された圧縮気体を貯留するレシーバタンク160を設けると共に,圧縮機本体140の吸気口143を開閉するバタフライバルブから成る弁体112と,この弁体112の動作を制御するレギュレータ114によって常時開型の容量制御弁110を構成し,この容量制御弁110のレギュレータ114に前述のレシーバタンク160内の圧縮気体を導入する導入回路163を連通すると共に,前記導入回路163を開閉する圧力調整弁である圧力レギュレータ164を設け,これらによって容量制御装置を構成している。
上記の容量制御装置を備えた図5の圧縮機100では,レシーバタンク160内の圧力が圧力レギュレータ164の作動開始圧力未満であり,導入回路163が閉じている時には容量制御弁110のレギュレータ114に対し圧縮気体の導入は行われず,容量制御弁110の弁体112は,レギュレータ114のリターンスプリングの付勢力によって吸気口143を開いた状態にある。
一方,レシーバタンク160内の圧力が圧力レギュレータ164の作動開始圧力以上となって導入回路163が開くと,容量制御弁110のレギュレータ114にはレシーバタンク160からの圧縮気体が導入され,容量制御弁110は導入された圧縮気体の圧力に応じて吸気口143を絞り又は閉じることで,レシーバタンク160の圧力が所定の目標圧力を維持するよう抑制する。
なお,図5中の符号180は圧縮機本体140の二次側圧力とレシーバタンク160内の圧力をパイロット圧として作動するオートレリーフバルブであり,圧縮機本体140が停止して圧縮機本体140の二次側圧力がレシーバタンク160内の圧力未満に低下すると,放気回路166を開放してレシーバタンク160内の圧縮気体を放気する。
以上のように構成された圧縮機において,吸気口143を開いた状態で圧縮機本体140を始動させると,圧縮機本体140は大量の気体を吸い込んで圧縮することで大きな負荷を発生し,これを駆動する原動機150に対しても大きな負荷がかかることから,原動機150の始動がもたつく始動渋滞が生じたり,始動直後の低回転速度で不安定な運転状態にある原動機150を停止させたりしてしまう等の始動不良が発生する。
そこで,圧縮機100の始動時に圧縮機本体140の吸気口143を閉じて,圧縮機本体140に大量の気体が吸い込まれることを防止することで,原動機150に加わる負荷を軽減する,始動負荷軽減装置120が提案されている。
このような始動負荷軽減装置120として,図5の圧縮機100にあっては,導入回路163に圧力レギュレータ164をバイパスするバイパス回路122を設けると共に,このバイパス回路122を開閉する始動バルブ121を設けている。
この構成では,圧縮機100の始動前に始動バルブ121を手動操作してバイパス回路122を開くことで,レシーバタンク160内の圧力が圧力レギュレータ164を介さずに容量制御弁110のレギュレータ114に導入でき,その結果,圧縮機100の始動により圧縮機本体140が圧縮気体の吐出を開始してレシーバタンク160内の圧力が,容量制御弁110のレギュレータ114の作動開始圧力迄上昇すると,バタフライバルブ112によって吸気口143が閉ざされ,以降,原動機150に加わる負荷が軽減できるようになっている。
そして,圧縮機100が始動して原動機150が安定した運転状態となった後に始動バルブ121を再度手動操作してバイパス回路122を閉じることで,レシーバタンク160内の圧力が圧力レギュレータ164の作動開始圧力になるまで圧縮機本体140の吸気口143を全開状態とし,その後レシーバタンク160内の圧力が圧力レギュレータ164の作動開始圧力以上となったら容量制御弁110のレギュレータ114に導入された圧縮気体の圧力に応じて吸気口143を絞り又は閉じる容量制御が開始されるようになっている。
また,別の始動負荷軽減装置の構成として,前掲の図5を参照して説明した圧縮機と同様に圧縮機本体の吸気口を開閉するバタフライバルブと,このバタフライバルブをレシーバタンク内の圧力によって開閉操作するレギュレータによって構成した容量制御弁を備えた圧縮機において,容量制御弁にレギュレータの他にバタフライバルブを開閉制御するためのソレノイドを設け,始動直後からの所定時間,前記ソレノイドに対する通電を継続することで,バタフライバルブを閉状態に維持する始動負荷軽減装置も提案されている(特許文献1の図1,図7等)。
更に,同様にバタフライバルブとレギュレータによって構成された容量制御弁を備えた圧縮機において,容量制御弁のレギュレータとレシーバタンクとを連通する導入回路にミニコンプレッサの吐出口を連通し,圧縮機の始動前に予めミニコンプレッサを運転してレギュレータを作動させてバタフライバルブで吸気口を閉じておくことで,圧縮機の始動を負荷の軽減された状態で行うことができるようにすることも提案されている(特許文献2参照)。
なお,前述した構成の容量制御装置を備えた圧縮機100では,圧縮機本体140の吐出口とレシーバタンク160とを連通する吐出回路141に逆止弁144を設け,圧縮機本体140を停止した際にレシーバタンク160内の圧縮気体が圧縮機本体140側に逆流しないようにする必要がある(図5,特許文献1の図6中の符号15,引用文献2の図3中の符号15を参照)。
また,圧縮機本体140が油冷式である場合,レシーバタンク160内に回収された潤滑油を圧縮機本体140の作用空間に給油するための給油回路142を設け,レシーバタンク160内の圧力を利用してレシーバタンク160内に回収された潤滑油を圧縮機本体140に給油可能と成すと共に,この給油回路142中に圧縮機本体140の二次側圧力を作動圧力として給油回路142を開くオイルチェックバルブ145を設け,圧縮機本体140の二次側圧力が低下する圧縮機100の停止時には,このオイルチェックバルブ145が給油回路142を閉じるように構成して,停止後の,レシーバタンク160内の圧力によって圧縮機本体140に急激に潤滑油が導入されることを防止している(図5参照)。
以上で説明した始動負荷軽減装置中,図5を参照して説明した始動負荷軽減装置120では,始動毎に手動で始動バルブ121を操作する必要があり操作が煩雑である。
しかも,図5に示した始動負荷軽減装置120の構成では,原動機150の始動から容量制御弁110のレギュレータ114が作動する迄,吸気口143は開いたままの状態にあるため,始動時及び始動直後における圧縮機本体140の負荷を低減することができない。
一方,特許文献1,2に記載の発明では,例えばソレノイドの励磁やミニコンプレッサの始動を,圧縮機本体の始動スイッチ等と連動させて自動化することが可能で,図5を参照して説明した始動負荷軽減装置120のような手動操作の煩雑さからは開放され,さらに始動時,及び始動直後における圧縮機本体140の負荷を軽減することができる。
しかし,特許文献1,2に記載の構成では,圧縮機本体の吸気口の閉塞を,電力の供給を受けて作動するソレノイドやミニコンプレッサに依存するため,圧縮機の始動時,原動機がエンジンである場合にはセルモータの使用により電気回路内の急激な電圧降下が生じ,また,原動機が電動機である場合には,電動機の始動に大きな始動電流を必要とすることで,電源電圧の急激な降下が起こる等して,供給電圧が不安定になると,ソレノイドやミニコンプレッサがバタフライバルブを閉状態に維持できずに吸気口を開いてしまい,原動機の始動負荷を十分に軽減できない場合が生じる。
しかも,前掲の特許文献2に記載の構成では,ミニコンプレッサの始動から容量制御弁のレギュレータに所定圧力の圧縮気体が導入されるまでの間,吸気口の閉塞は行われないことから,吸気口を閉じた状態で原動機を始動しようとすれば,原動機の始動に先立ち,予めミニコンプレッサを始動させておく必要があり,原動機を始動させる迄に,所定の待機時間が必要となる。
なお,図5に示す容量制御弁110を備えた構成では,圧縮機本体140からレシーバタンク160に至る吐出回路141に逆止弁144を設けると共に,給油回路142中にオイルチェックバルブ145を設けて圧縮機100の停止時に給油回路142を閉じることができるようにしており,これにより圧縮機本体140の停止によって圧縮機本体140側の圧力が低下した場合であっても,レシーバタンク160内の高圧の圧縮気体や潤滑油が圧縮機本体140内に急激に流れ込むことが無いようになっている。
しかし,このように逆止弁144やオイルチェックバルブ145を回路中に設ける構成の採用により,圧縮機の構成部品数が増える。特に,オイルチェックバルブ145にあっては給油回路142中に単にオイルチェックバルブ145を取り付けるだけでなく,パイロット圧を得るための配管を吐出回路141に連通する等の配管作業も必要となるため,このような部品点数の増加や組み立て工数の増加が,圧縮機100のコストを押し上げることとなる。
しかも,このような逆止弁144やオイルチェックバルブ145を設けてレシーバタンク160からの圧縮気体や潤滑油の導入を防止したとしても,圧縮機本体140が停止すれば圧縮機本体140内で圧縮途中にあった圧縮気体が急激に膨張を起こすため,圧縮機本体140の吸気口143側に向かう圧縮気体や潤滑油の逆流を完全には防止できない。
そして,このような逆流が生じ得るにも拘わらず,図5を参照して説明した圧縮機100,及び,前掲の特許文献1,2に記載の圧縮機の構成では,圧縮機100の停止時に容量制御弁110のバタフライバルブ112は吸気口143を全開とした状態にあるため,逆流した圧縮気体や潤滑油は,吸気口143及びバタフライバルブ112を越えてエアフィルタ170を通過して,圧縮機100の防音箱内に吹き出すおそれがあり,前述した逆止弁144やオイルチェックバルブ145を設けることにより逆流する圧縮気体や潤滑油の量や勢いを低減できたとしても,エアフィルタ170に対する潤滑油の付着や,防音箱内に収容された機器類に対する潤滑油の付着を完全には防止することができない。
なお,特許文献1,2に記載の構成において,このような圧縮気体や潤滑油の逆流による吹き出しを防止しようとすれば,圧縮機の停止時にもソレノイドやミニコンプレッサに対する通電を継続して圧縮機本体の吸気口を閉じた状態に維持することも考えられるが,このような構成の採用は,装置の消費電力を増加させることとなり経済的でないだけでなく,装置の電源がバッテリーである場合には,バッテリー上がりを発生させる原因にもなる。
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたもので,比較的簡単な構成でありながら,始動時に電気系の回路に急激な電圧降下等が生じた場合であってもこれに影響されることなく圧縮機本体の吸気口を確実に閉塞した状態に維持することができ,従って原動機が始動渋滞を起こしたり,安定運転に移行する前に停止する等の始動不良を起こすことをより確実に防止できると共に,吐出回路に対する逆止弁の設置や,給油回路に対するオイルチェックバルブの設置を省略しても,圧縮機の停止時において圧縮気体や潤滑油が吹き出すことを防止できる圧縮機の吸気部構造を提供することを目的とする。
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
上記目的を達成するために,本発明の圧縮機1の吸気部構造は,エンジンや電動機等の原動機50によって駆動される油冷式の圧縮機本体40と,前記圧縮機本体40が潤滑油と共に吐出した圧縮気体を貯留するレシーバタンク60と,前記レシーバタンク60内の圧力が所定の容量制御開始圧力以上となったときに前記圧縮機本体40の吸気口43を絞り又は閉じる容量制御を行う,常時開型の容量制御弁10を備えた圧縮機において,
前記圧縮機本体40の吸気口43に連通する吸入通路30を設け,前記吸入通路30に前記容量制御弁10を配置すると共に,前記容量制御弁10に,開弁時,一次側から二次側に対する気体の通過のみを許容する逆止機能を備えた弁体12を設け,
前記レシーバタンク60に,該レシーバタンク60内の潤滑油を内部圧力によって吐出させる補助給油回路65を連通し,
前記容量制御弁10の一次側,又は二次側の前記吸入通路30に常時閉型の補助開閉弁20を設け,該補助開閉弁20の閉弁受圧室23を前記補助給油回路65に連通すると共に,前記補助開閉弁20の開弁開始圧力を,前記容量制御開始圧力よりも低圧の所定の通常運転開始圧力に設定したことを特徴とする(請求項1)。
前記構成の圧縮機1の吸気部構造において,前記レシーバタンク60内の潤滑油を前記圧縮機本体40に供給する給油回路42を分岐し,該分岐によって得られた回路を前述の補助給油回路65とすることができる(請求項2)。
更に,前記補助開閉弁20による前記吸入通路30の閉塞時に前記補助開閉弁20の一次側と二次側とを連通する微小連通路39を,圧縮機1の始動後,所定の回転速度(原動機50の運転状態が安定する回転速度,例えば原動機がエンジンである場合のアイドル回転速度)以上に上昇した後に,前記レシーバタンク60内の圧力が前記通常運転開始圧力以上に上昇する圧縮機本体40の吸気量を生じさせる流路面積に形成することができる(請求項3)。
又は,前記原動機50の運転状態が安定する所定の回転速度(例えばアイドル回転速度)以上となったときに前記補助給油回路65を開く図示せざる電磁弁等の開閉弁を設けるものとしても良い(請求項4)。
以上説明した本発明の構成により,本発明の吸気部構造を備えた圧縮機1によれば,圧縮機1の始動からレシーバタンク60内の圧力が所定の通常運転開始圧力以上に上昇する迄,又は,レシーバタンク60内の圧力が所定の通常運転開始圧力以上に上昇し,且つ前記原動機の回転速度が原動機の運転状態が安定する所定の回転速度以上に上昇する迄,圧縮機本体40の吸気口43が補助開閉弁20によって閉ざされた状態にあることから,容量制御弁10が開いた状態にあるものの,圧縮機1の始動を,吸気口43を閉じた負荷の軽減された状態で行うことができた。
また,このような吸気口43の閉塞は,常時閉型の補助制御弁20によって行うものであることから,原動機50であるエンジンの始動時におけるセルモータの使用や,原動機である電動機を始動するための始動電流の投入によって電気回路内の電圧に大きな変動が生じた場合であっても,これに影響されることなく確実に吸気口43を閉状態に維持することができた。
一方,圧縮機1の停止時,レシーバタンク60内の圧縮気体や潤滑油は圧縮機本体40に急激に流れ込み,吸気口43や吸入通路30,及びエアフィルタ70等を通過して防音箱内に吹き出そうとするが,容量制御弁10が逆止機能付の弁体12を備えることにより容量制御弁10を越えて圧縮気体や潤滑油が逆流することが無い。
その結果,図5を参照して説明した従来の圧縮機の構成とは異なり,圧縮機本体40より吐出された圧縮気体をレシーバタンク60内に導入する吐出回路41に逆止弁を設ける必要がなく,また,レシーバタンク60で回収された潤滑油を圧縮機本体40に供給する給油回路42中にオイルチェックバルブやそのパイロット回路を設ける必要がなくなり,部品点数の減少と組み立て工数の減少によって圧縮機1の製造コストの低下を図ることができた。
しかも,レシーバタンク60より供給される潤滑油を補助開閉弁20の作動流体としたことで,圧縮空気を作動流体とした場合に生じ得る,圧縮空気中の水分による補助開閉弁20の構成部品の発錆や,寒冷地での使用における結露水の凍結による作動不良の発生を防止できた。
特に,本発明の吸気部構造を備えた圧縮機を寒冷地において使用する場合,特に,この圧縮機の原動機がエンジンである場合には,温暖な条件下において使用する場合に比較して原動機は始動し難い状態となっており,圧縮機の始動後,原動機が暖まる等して安定した運転状態に達する迄に要する時間は長くなる。
しかし,本願のように補助開閉弁20の作動流体をレシーバタンク60内の潤滑油としたことで,始動直後にあっては潤滑油の温度も低く,高粘度となっていることから,潤滑油の粘度上昇によって補助開閉弁20の作動開始圧力が自動的に高圧側にシフトすることとなり,特に調整等を行うことなく,補助開閉弁20の開弁動作に好ましい遅れを生じさせることができた。
前述の補助給油回路65を,レシーバタンク60内の潤滑油を圧縮機本体40に供給する給油回路42を分岐して形成することで,レシーバタンク60の構造を変更することなく,比較的容易に補助給油回路65を設けることができた。
更に,補助開閉弁20による前記吸入通路30の閉塞時に前記補助開閉弁20の一次側と二次側とを連通する微小連通路39を,圧縮機1の始動後,所定の回転速度(例えば原動機50の運転状態が安定する回転速度,例えば原動機がエンジンである場合のアイドル回転速度)以上に上昇した後に,前記レシーバタンク60内の圧力が前記通常運転開始圧力以上に上昇する圧縮機本体40の吸気量を生じさせる流路面積に形成したことで,原動機の回転速度が上昇する前に補助開閉弁20が吸入通路を開いてしまうことがなく,圧縮機本体40の負荷トルクの上昇を抑制し,これにより原動機50が停止等することを防止できた。
同様に,原動機の運転状態が安定する所定の回転速度(例えばアイドル回転速度)以上となったときに前記補助給油回路65を開く,電磁弁等の開閉弁(図示せず)を設けた場合にも,原動機の回転速度が上昇する前に補助開閉弁20が吸入通路を開いてしまうことが防止できた。
以下に,添付図面を参照しながら本発明の圧縮機について説明する。
〔圧縮機の構成〕
図1中の符号1は本発明の圧縮機であり,この圧縮機1は,圧縮機本体40,前記圧縮機本体40を駆動するエンジンや電動機等の原動機50,前記圧縮機本体40より吐出された圧縮気体を貯留するレシーバタンク60を備え,圧縮機本体40より吐出された圧縮気体を,レシーバタンク60内に貯留した後,レシーバタンク60に連通された供給回路62を介して図示せざる空気作業機等が接続された消費側に供給することができるようになっている。
前述の圧縮機本体40は,潤滑,冷却及び密封のための潤滑油と共に被圧縮気体を圧縮する油冷式のスクリュ圧縮機であり,レシーバタンク60内には,吐出回路41を介して潤滑油との気液混合流体として導入された圧縮気体から油分を分離するためのセパレータ61が設けられていると共に,レシーバタンク60内で回収された潤滑油を再度圧縮機本体40に供給するための給油回路42が設けられている。
前述の圧縮機本体40の吸気口43には内部に吸入通路30が形成されたボディ3を取り付けると共に,このボディ3内に形成された吸入通路30をレシーバタンク60内の圧力に応じて開閉して容量制御を行う容量制御弁10と,圧縮機1の始動時,容量制御弁10の一次側又は二次側(図1では二次側)において吸入通路30を閉じる補助開閉弁20が設けられており,図示の実施形態では,前述のボディ3が,容量制御弁10と補助開閉弁20の共通の弁箱となっている。
なお,説明の便宜のため,図2に示すようにボディ3内に形成された吸入通路30を,容量制御弁10の一次側の部分31,容量制御弁10の二次側の部分(補助開閉弁20の一次側の部分)32,補助開閉弁20の二次側の部分33にそれぞれ異なる符号を付して説明する。
本実施形態にあっては,この容量制御弁10を常時開型のものとして形成し,レシーバタンク60内の圧力が所定の容量制御開始圧力以上になったときに吸入通路30を絞り始め,更に圧力が上昇すると,容量制御弁10を完全に閉ざすよう構成した。
この容量制御弁10には,開弁時,一次側から二次側に対する気体の通過を許容するが,二次側から一次側への気体の流れを阻止する,逆止機能付きの弁体12を設けている。
このような逆止機能を備えた容量制御弁10として,本実施形態にあっては,図2に示すピストンバルブ式の容量制御弁を採用した。
図2に示すピストンバルブ式の容量制御弁10は,弁箱であるボディ3内に一体的に形成され,弁体12の一次側にあたる吸入通路30の部分31を,エアフィルタ70を介して圧縮機1の防音箱(図示せず)内に大気開放すると共に,二次側を成す吸入通路30の部分32を,後述する補助開閉弁20の弁体(バタフライバルブ)21を介して圧縮機本体40の吸気口43に連通している。
この容量制御弁10の弁体12は,弁軸12aと,弁軸12aの一端に取り付けられた円板状のフランジ12bを備えたキノコ形を有しており,この弁体12のフランジ12b周縁部を吸入通路30中に設けた弁座13に圧接することで,吸入通路30を閉じることができるようになっている。
前述のボディ3内には,吸入通路30と円筒状のスリーブ34を介して連通するシリンダ35が設けられており,このスリーブ34内に,前述の弁体12の弁軸12aが先端をシリンダ35側に向けて進退移動可能に挿入されている。
一方,このスリーブ34を介して吸入通路30(吸入通路30の部分32)と連通する前述のシリンダ35には,ピストン軸14aとこのピストン軸14aの一端に取り付けられた円板状のフランジ14bを備えたピストン14が収容され,このピストン14のピストン軸14aの先端部が,弁体12に向けて前記スリーブ34内に進退移動可能に挿入されている。
前述のシリンダ35内において,ピストン14はピストンスプリング15によって弁体12より離間する方向に付勢されていると共に,シリンダ35の端部を塞ぐカバー36によって後退位置が規制されている。
また,弁軸12aの先端とピストン軸14aの先端間には,両先端間を比較的弱い力で離間する方向に付勢する弁体付勢スプリング16が取り付けられており,開弁時,この弁体付勢スプリング16の付勢力によって弁体12のフランジ12bは吸入通路30中に設けた弁座13に緩やかに押し付けられている。
なお,前述のカバー36には,入口36a及び出口36bが設けられており,入口36aを介して,カバー36とピストン14のフランジ14b間に形成された受圧室37に作動圧を導入することができるようになっていると共に,出口36bを介して受圧室37内の作動圧を逃がすことができるようになっている。
なお,図2中の符号12cは弁体12の弁軸12a中に形成された逃がし通路であり,この逃がし通路12cによりピストン軸14aと弁軸12a間の間隔が変化した際に,両軸端間の間隔に吸入通路30内の気体を吸排気できるようにすることで,弁体12及びピストン14の進退移動が円滑に行われるようにしている。
以上のように構成された容量制御弁10では,受圧室37に対する圧縮気体の導入が行われていない開弁時には,弁体12のフランジ12bは弁座13に緩やかに押し当てられた状態にあるため,弁体12の一次側の圧力に対し二次側の圧力が低くなると,弁体12のフランジ12bが弁座13から離れて気体の通過を許容する,開弁状態にあるが,この開弁状態においても弁体12の二次側から一次側に向かって気体が逆流しようとすると,弁体12のフランジ12bが弁座13に押し当てられて吸入通路30を閉ざすため,このような逆流は阻止されている。
そして,このように構成された容量制御弁10を閉弁状態と成す場合には,受圧室37内に圧縮気体を導入してピストンスプリング15及び弁体付勢スプリング16の付勢力に抗してピストン14を弁体12側にスライドさせると,ピストン軸14aの先端が弁軸12aの先端に突合して,弁体12のフランジ12bは弁座13より離れることができなくなり,これにより吸入通路30が完全に閉塞する。
このような容量制御弁10を備えた本実施形態にあっては,図1に示すようにカバー36に設けた入口36aを,圧力調整弁である圧力レギュレータ64を備えた容量制御用導入回路63を介してレシーバタンク60に連通すると共に,出口36bを絞り72を備えた逃がし回路71を介して大気開放(図示の例ではエアフィルタ70を介して大気開放)している。
従って,後述する補助開閉弁20が吸入通路30を開放した通常運転に移行した状態では,レシーバタンク60内の圧力が圧力レギュレータ64の作動圧力未満の状態では容量制御弁10に対する圧縮気体の導入は無く,吸入通路30を開いた状態にあり,圧縮機本体40に対して外気が吸気される。
一方,レシーバタンク60内の圧力が圧力レギュレータ64の作動圧力である容量制御開始圧力以上となって容量制御弁10の受圧室37に圧縮気体の導入が開始されると,受圧室37に対する導入圧力に応じてピストン14が前進して弁体12の移動範囲を制限し,更に,レシーバタンク60内の圧力が上昇すると,ピストン14のピストン軸14aの先端が弁体12の弁軸12aの先端に突合し,弁体12のフランジ12bは弁座13より離れることができなくなって,吸入通路30が完全に塞がれるようになっている。
このように本発明では,容量制御弁10の弁体12に,開弁時に一次側から二次側に対する気体の流れのみを許容する逆止弁の機能を付与したことにより,図5を参照して説明した従来の圧縮機の回路構成では不可欠な構成であった吐出回路の逆止弁,及び給油回路のオイルチェックバルブのいずれも設ける必要が無くなっている。
以上のように構成された容量制御弁10の一次側,又は二次側(図1,2に示す例では二次側)には,吸入通路30を開閉制御する常時閉型の補助開閉弁20を更に設ける。
図1及び図2に示す実施形態にあっては,この補助開閉弁20を,弁体であるバタフライバルブ21と,このバタフライバルブ21を開閉するピストン型のレギュレータ22の組合せによって形成している。
このピストン型のレギュレータ22は,レギュレータボディ内に形成したシリンダ内にリターンスプリング24で付勢された状態でピストン28を収容すると共に,このピストン28とバタフライバルブ21とを連結するロッド27を備えており,ピストン28外周に形成した溝内に嵌合されたOリングによってシリンダ内周とピストン28外周間をシールし,閉弁受圧室23とスプリング室とを隔絶することで,閉弁受圧室23内の圧力が上昇してリターンスプリング24の付勢力に抗してピストン28が移動すると,ピストン28と共に進退移動するロッド27の突出長さに応じてバタフライバルブ21が開くようになっており,バタフライバルブ21はこのレギュレータ22に設けたリターンスプリング24によって常時閉方向に付勢されている。
このようなレギュレータ22のピストン28の動作は,レギュレータ22の閉弁受圧室23に対してレシーバタンク60内の潤滑油を導入することにより行われ,図示の実施形態にあっては,レシーバタンク60内に回収された潤滑油を圧縮機本体40に供給する給油回路42を分岐して形成した補助給油回路65を設け,この補助給油回路65をレギュレータ22の閉弁受圧室23に連通することで,レシーバタンク60内の圧力が前述の容量制御開始圧力よりも低い,所定の通常運転開始圧力以上に上昇すると,閉弁受圧室23に導入された潤滑油の圧力によって前記リターンスプリング24の付勢力に抗してレギュレータ22が作動し始め、その後圧力の上昇に応じてバタフライバルブ21の開度を拡大し,やがて全開となるようになっている。
なお,図示の実施形態にあっては,前述したように給油回路42を分岐して形成した補助給油回路65を介してレシーバタンク60内の潤滑油をレギュレータ22の閉弁受圧室23内に導入できるように構成したが,この構成に限定されず,給油回路42とは独立して設けた補助給油回路65の一端を油溜まり位置においてレシーバタンク60内に連通させると共に,他端をレギュレータ22に連通しても良い。
図2に示す実施形態において,前述の補助開閉弁20は,容量制御弁10と同様,前述のボディ3を弁箱とするもので,ボディ3内に形成された吸入通路30のうち,容量制御弁10の二次側の部分32に前述のバタフライバルブ21を設けると共に,前記ボディ3に形成されたブラケット38にレギュレータ22を取り付けた構成としている。
なお,図1,2に示す例では補助開閉弁20を容量制御弁10の二次側に設けるものとしているが,図4に示すように,補助開閉弁20を容量制御弁10の一次側に設けるものとしても良い。
図2に示す構成例において,バタフライバルブ21の支軸25は前述のボディ3に設けた軸孔(図示せず)に回動可能に軸支されていると共に,ボディ3を貫通させて支軸25を突出させており,このボディ外に突出した支軸25にレバー26を取り付け,更に,このレバー26にレギュレータ22に設けたロッド27を連結することで,レギュレータ22のロッド27の進退移動に伴って,バタフライバルブ21を開閉操作できるようになっている。
前述のバタフライバルブ21による閉弁時,バタフライバルブ21の一次側と二次側の空間は微小連通路39によって僅かに連通しており,このような微小連通路39は,図3(a)に示すように補助開閉弁20の閉弁時,バタフライバルブ21の外縁とボディ3の内壁との間に隙間が形成されない構成を採用しつつ,ボディ3やバタフライバルブ21に貫通孔を形成し,又は両空間を連通する配管(図示せず)を設ける等してこれを前述の微小連通路39としても良く,又は,図3(b)に示すようにバタフライバルブ21の全閉時,バタフライバルブ21の外周とボディ3の内壁との間にわずかな隙間δが生じるように形成し,この隙間δを前述の微小連通路39としても良い。
バタフライバルブ21が閉じた状態で前述の微小連通路39を介して圧縮機本体40に吸い込ませる気体の量,即ち,微小連通路39の流路面積は,圧縮機本体40を駆動する原動機50の回転速度の立ち上がりの状態に応じて実験的に求めることができる。
ここで,原動機50の始動後,圧縮機本体40が吸い込む気体の量が多いと,圧縮機本体40の二次側圧力の上昇も急激なものとなるために,短時間で圧縮機本体40の負荷トルクが上昇するために原動機の回転速度の上昇が鈍くなり,始動渋滞や原動機の停止といった動作不良が発生し得る。
これとは反対に,原動機50の始動後,圧縮機本体40が吸い込む外気の量がゼロ,又はこれに近い状態であると,圧縮機本体40を駆動するために必要な動力は低く抑えることができるために,始動渋滞や原動機の停止は回避できるものの,圧縮機本体に対する給油をレシーバタンク60内の圧力を利用して行っているため,圧縮機本体40の各部に対する給油不足が生じるおそれがあり,上記観点より前述した微小連通路39を適切な吸気量を発生し得る流路面積で形成することが好ましい。
このような吸気量の決定は,圧縮機1の始動から原動機の運転状態が安定する所定の回転速度以上に上昇した後に,レシーバタンク60内の圧力が通常運転開始圧力となるように微小連通路39の流路面積を決定する。
以上のように構成した補助開閉弁20のレギュレータ22の閉弁受圧室23は,図1に示すように補助給油回路65及び給油回路42を介してレシーバタンク60に連通されており,レシーバタンク60内の圧力が,レギュレータ22の作動開始圧力以上に上昇すると,レシーバタンク60より導入された潤滑油の圧力に応じてレギュレータ22のピストン28がリターンスプリング24の付勢力に抗して移動を開始し,このピストン28の移動がロッド27を介してバタフライバルブ21を動かし,バタフライバルブ21が吸入通路30を開き始め,所定の通常運転開始圧力以上に上昇すると,レギュレータ22はバタフライバルブ21を全開にして,補助開閉弁20による吸気の制御が終了して,前述した容量制御弁10のみで容量制御が行われるようになっている。
なお,図1及び図2に示す実施形態にあっては,補助開閉弁20の作動開始圧力がレギュレータ22に設けたリターンスプリング24の付勢力によって決定される構成となっているが,レギュレータ22のリターンスプリング24の他に,バタフライバルブ21を閉方向に付勢する,図示せざる補助スプリングを設け,リターンスプリング24の付勢力と補助スプリングの付勢力の総和によってバタフライバルブ21を閉方向に付勢するものとしても良い。
このように補助スプリングを設けた構成にあっては,補助スプリングの着脱によって,又は,補助スプリングを異なる付勢力のものに交換することにより,更には補助スプリングに取り付けた図示せざる張力調整ネジ等によって補助スプリングの張力を変更することにより,バタフライバルブ21を閉位置に付勢する付勢力を変化させることができるようにしても良く,これにより,補助開閉弁20の作動開始圧力を変更乃至は調整することで,通常運転開始圧力の設定を変更でき,圧縮機1の使用環境の変化等に対応して,圧縮機1の始動から容量制御が開始されるまでの時間を変更することが可能となる。
なお,前述した実施形態の説明では,補助開閉弁20の動作開始が,レシーバタンク60内の圧力の上昇にのみ応じて動作する構成を説明したが,圧縮機1の始動後,原動機50の運転状態が安定する所定の回転速度以上となったときに補助開閉弁20が前述の吸入通路30を開き始めるように構成することが好ましい。
このように,原動機50が所定の回転速度以上となったときに補助開閉弁20の開弁動作を開始させるための構成としては,前述したように,微小連通路39の開孔面積を比較的狭く形成して始動時におけるレシーバタンク60内の圧力上昇を緩やかなものとすることで,原動機の回転速度が前記所定の回転速度に迄上昇した後,これに遅れてレシーバタンク60内の圧力が補助開閉弁20の作動圧力迄上昇するように構成するものとしても良いが,例えば,前述した補助給油回路65に電磁弁等の開閉弁を設け,回転速度計等によって測定された原動機50の回転速度が所定の回転速度未満の場合には,レシーバタンク60内の圧力に拘わらず補助開閉弁20が閉状態を維持するように構成するようにしても良い。
なお,圧縮機1が,レシーバタンク60内の圧力を目標圧力に近づくように原動機50の回転速度を制御する可変速度制御型のものである場合,前述の所定の回転速度は,原動機50の可変速度制御範囲における下限回転速度以上であって,前記可変速度制御範囲における上限回転速度未満の回転速度として設定するものとしても良く,例えばレシーバタンク60内の圧力が目標圧力に到達し,容量制御弁10の弁体12が完全に閉じた状態のときの原動機50の回転速度であるアンロード回転速度と同一の速度に設定するものとしても良い。
なお,図1中の符号80は容量制御弁10の二次側圧力をパイロット圧とするオートレリーフバルブであり,このオートレリーフバルブ80をレシーバタンク60に連通された放気回路66中に設け,圧縮機本体の停止に伴う容量制御弁10の二次側圧力の上昇により放気回路66を開放して,レシーバタンク60内の圧縮気体を放気できるようにしている。
〔圧縮機の動作等〕
始動時
図1〜4は,停止した状態の圧縮機1の各部の状態を示している。
この状態から原動機50を始動して圧縮機本体40を回転させると,圧縮機本体40は吸気口43から吸気を行おうとするが,圧縮機本体40の吸気口43に連通された吸入通路30は,補助開閉弁20のバタフライバルブ21によって閉ざされているため,図3(a)(b)に示した微小連通路39によって許容されるわずかな量の気体しか吸入できず,その結果,負荷が軽減された状態で圧縮機の始動を開始することができる。
容量制御弁10の弁体12に設けたフランジ12bは,レシーバタンク60内の圧力が低い状態,従って,容量制御弁10の受圧室37に対する圧縮気体の導入が行われていない開弁時においても弁座13に当接しているが,この当接は弁体付勢スプリング16による緩やかな当接であり,容量制御弁10の一次側から二次側に対する気体の通過を制限するものとはなっていない。
従って,前述した微小連通路39を介して圧縮機本体40による吸引が開始されて,この吸引によって弁体12の二次側にある吸入通路30の部分32が負圧になると容量制御弁10の弁体12が弁座13より離間して,わずかに外気の吸入が行われる。
このように,原動機50の始動直後では補助開閉弁20のバタフライバルブ21が吸入通路30を閉じていて圧縮機本体40に対する外気の吸い込み量が大幅に規制されていることから,圧縮機本体40の吐出側圧力(レシーバタンク60内の圧力)の上昇は極めて緩やかとなるため,圧縮機本体40の負荷トルクの上昇も緩やかなものとなり,始動直後の状態にあり,未だ回転速度が低く不安定な運転状態にある原動機50に加わる負荷の上昇を緩やかなものとすることができる。
その結果,微小連通路39の流路面積を適切に設定することで,原動機50が安定した運転状態となる回転速度まで,補助開閉弁20を閉じておくことで圧縮機本体40の負荷トルクの上昇を抑制し,これにより始動渋滞や原動機50の停止が発生することを好適に防止することができる一方,圧縮機本体40に対する給油をレシーバタンク60内の圧力を利用して行う場合であっても,給油を適切に行うことができるようになっている。
以上のようにして,レシーバタンク60内の圧力が緩やかに上昇すると,補助開閉弁20のレギュレータ22に導入される潤滑油の圧力も徐々に上昇し,この圧力がレギュレータ22の作動圧力を超えると,レギュレータ22はレシーバタンク60内の圧力上昇に伴いバタフライバルブ21の開度を拡大する。
そして,レシーバタンク60内の圧力が更に上昇して所定の通常運転開始圧力に迄上昇すると,補助開閉弁20は吸入通路30を開き,補助制御弁20による吸気の制御が終了する。
これにより,圧縮機本体40の吸気制御は,容量制御弁10,容量制御弁10の受圧室37とレシーバタンク60とを連通する容量制御用導入回路63,及び前記容量制御用導入回路63中に設けられた圧力レギュレータ64によって構成される容量制御装置のみにより行われる既知の容量制御に移行する。
停止制御
以上のようにして運転されていた圧縮機1の原動機50を停止すると,圧縮機本体40も回転を停止するため,圧縮機本体40の二次側に設けられたレシーバタンク60内の圧縮気体と潤滑油が,圧縮機本体40及びその一次側に向かって急激に流れ込もうとする。
しかし,前述したように本発明の圧縮機1では容量制御弁10の弁体12に逆止機能を持たせているため,このようにして圧縮気体や潤滑油が流れ込むことにより容量制御弁10の二次側の圧力が上昇すると,容量制御弁10の弁体12に設けたフランジ12bは弁座13に押し当てられて吸入通路30を閉じるため,容量制御弁10を越えて圧縮気体や潤滑油が逆流することが無く,従って,エアフィルタ70を介して防音箱内に潤滑油が吹き出してエアフィルタ70や圧縮機1の構成機器等を汚染することがない。
また,このように容量制御弁10の弁体12に逆止機能を持たせたことで,本発明の圧縮機1では,図5を参照して説明した従来の圧縮機とは異なり,吐出回路41に逆止弁を設ける必要が無く,また,給油回路42にオイルチェックバルブを設ける必要もない。
一方,圧縮機本体40の停止時には,レシーバタンク60内の圧縮気体や潤滑油が圧縮機本体40や容量制御弁10の二次側にある吸入通路30の部分32迄導入されることで,圧縮機本体40が回転しているときには負圧の状態にあった容量制御弁10の二次側の圧力が急激に上昇する。
その結果,容量制御弁10の二次側圧力の上昇をパイロット圧とするオートレリーフバルブ80が放気回路66を開き,このオートレリーフバルブ80の動作によってレシーバタンク60内の圧縮気体がエアフィルタ70を介して圧縮機1の防音箱内で放気される。
エアフィルタ70を介して放気されるレシーバタンク60内の圧縮気体は,レシーバタンク60に設けたセパレータ61によって油分の除去が行われることから,この放気によりエアフィルタ70や防音箱内に収容された圧縮機の構成機器が潤滑油によって汚染されることはない。
このようにして,レシーバタンク60内の圧縮気体の放気が行われることでレシーバタンク60内の圧力が低下し,レシーバタンク60内の圧力によってレギュレータ22に供給されていた潤滑油の圧力がレギュレータ22の作動開始圧力未満に迄低下すると,補助開閉弁20のバタフライバルブ21は吸入通路30を閉じる。
そして,レギュレータ22に設けたリターンスプリング24の付勢力によって常時閉型に形成された補助開閉弁20は,電力等の供給を受けることなく,以後,吸入通路30を閉状態に維持すると共に,圧縮気体や潤滑油のエアフィルタ70側への流入は,補助開閉弁20と容量制御弁10によって二重に阻止される。