JP6068335B2 - 治療用磁気刺激装置および該装置に用いるカスタムデータ対の生成方法 - Google Patents

治療用磁気刺激装置および該装置に用いるカスタムデータ対の生成方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁場を対象者(例えば、患者や検査受検者などの被験者)の特定部位に作用させて磁気刺激を与えるための治療用磁気刺激装置、及び該装置にて用いられるカスタムデータ対を対象者ごとに生成する方法に関する。
近年、薬物治療が必ずしも有効でない数多くの神経疾患患者に対する治療法として、経頭蓋磁気刺激療法への関心が高まっている。この経頭蓋磁気刺激療法は、患者の頭皮表面に配置した磁場発生源により脳の特定部位(例えば、脳内神経)に磁気刺激を加えることによって、治療及び/又は症状の緩和を図ることができる比較的新しい治療法であり、開頭手術が必要で患者の抵抗感が非常に強い留置電極を用いる従来の電気刺激法とは違って、非侵襲的で患者への負担が少なくて済む治療法として普及が期待されている。
かかる経頭蓋磁気刺激療法の具体的な手法としては、患者の頭皮表面に設置したコイルに電流を流して、局所的に微小なパルス磁場を生じさせ、電磁誘導の原理を利用して頭蓋内に渦電流を起こすことにより、コイル直下の脳内神経に刺激を与える方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1においては、かかる方法で施した経頭蓋磁気刺激治療により難治性の神経障害性疼痛が有効に軽減され、更に、より正確な局所刺激がより高い疼痛軽減効果を実現することが確認されている。但し、最適刺激部位は個々の患者によって微妙に異なることも明らかにされている。
従って、経頭蓋磁気刺激療法によるより高い効果を得るためには、個々の患者毎に、患者頭部の最適刺激部位を如何にして特定するか、すなわち患者頭部に対する磁気コイルの正確な3次元の位置決めを如何にして行うかが重要である。尚、磁気コイルの位置が同じでも、その方位(姿勢)によって得られる効果に差が生じることも知られている。
かかる磁気コイルの位置決めについては、例えば赤外線を用いた光学式トラッキングシステムを利用して患者頭部に対する磁気コイルの位置決めを行う構成のものが公知であり(例えば、特許文献2,3参照)、既に一部には市販され臨床応用されている。更に、特許文献4には、多関節ロボットを用いて患者頭部に対する磁気コイルの位置決めを行う装置が開示されている。
また、前記特許文献1においては、上述の経頭蓋磁気刺激治療を行うと、疼痛軽減効果は、数時間程度は持続するが、数日間あるいはそれ以上持続するまでには至らないことが明らかにされている。従って、あまり時間間隔を空けずに、できれば毎日、継続的に上記療法を行うことが疼痛軽減の観点からは望ましいとされている。このような継続的な治療を、患者に過度の身体的,時間的等の様々な負担を強いること無く行えるようにするには、在宅、或いは近所のかかりつけの医院等での治療を可能とすることが理想的である。
しかしながら、上記従来のコイル位置決め用の装置やシステム等を含む経頭蓋磁気刺激装置は何れも、熟練した専門医師等による検査や研究用に、比較的大規模な病院や研究機関で用いることを前提としているので、取り扱い及び操作が複雑で、使用するには熟練を要し、また、かなり大掛かりで高価なものとなる。このため、患者あるいはその家族、又は必ずしも専門ではない近所のかかりつけの医師などが操作して治療にあたることは一般に難しく、また、患者個人の自宅や比較的小規模な医院や診療所等では、コスト負担が過大であるばかりでなく、設置スペースを確保することも一般に困難である。
従って、経頭蓋磁気刺激治療を受ける患者は、やはり、治療の度に大掛かりな磁気刺激装置が設置され熟練した専門医師等が居る大規模な病院まで通うか、若しくは入院せざるを得ず、継続反復して治療を受けるためには、様々な面で大きな負担が強いられるのが実情であった。
そこで、本願発明者等は、特許文献5にて、患者が、自宅や近所のかかりつけの医院などで、日常的に継続反復して経頭蓋磁気刺激療法を行えることができるように、取り扱いや操作が簡単で、且つ、より小型で安価な磁気刺激装置を提案した。また、かかる磁気刺激装置を用いて磁気刺激を加えるべき最適の位置および姿勢に対応した3次元位置および姿勢に磁気コイルを誘導する手法として、例えば、磁気コイルのコイルホルダに永久磁石等の磁場発生手段を付設しておき、この磁場発生手段の少なくとも位置の(好ましくは、位置及び姿勢の)データと、当該位置で発生した磁場を磁気センサ等の磁場検出手段が検出した磁場強度及び方向に関する各データと、を対にして組み合わせたデータの組み合わせを利用することにより、最適の刺激位置及び姿勢に対応した3次元位置及び姿勢に磁気コイルを誘導する手法を提案した。尚、本明細書においては、上述のデータの組み合わせを、適宜、「データ対」又は「データセット」と言うものとする。
このデータセットを利用して磁気コイルを誘導する手法では、事前に病院にて、患者ごとに大量に(少なくとも500個程度)データセットを収集しておく必要があり、このデータセットの収集が医師にとってかなりの負担になるという難点がある。
この点に関して、前記特許文献5には、データセット収集作業を、医師にしかできないことと、医師でなくてもできることとに分けて行い、最適刺激位置及び姿勢の特定以外のデータセット収集作業は、病院での医師による最適刺激位置及び姿勢の特定とは別途に、例えば、磁気刺激装置の製造業者(メーカ)の出荷前検査の一環として行うことが提案されている。
国際公開第2007/123147号 特開2003−180649号公報 特開2004−000636号公報 特開2006−320425号公報 国際公開第2010/147064号
最適刺激位置及び姿勢の特定に要する比較的少数のデータセット(以下、適宜、サンプル・データセットと言う)の収集を除いて、大量のデータセットの収集作業を、病院での医師によるデータセットの収集とは別途に行うことにより、データセット収集に伴う医師の負担を大幅に軽減することができるのであるが、医師が収集したサンプル・データセットと例えばメーカで予め収集された大量のデータセットとを対比参照して、最適刺激位置及び姿勢に対応した磁気コイルの3次元位置及び姿勢を得るにしても、大量のデータセットの全てと単純に対比参照したのでは、磁気コイルの誘導に長時間を要し、実用性に欠けるという難点がある。
そこで、例えばメーカで予め収集された大量のデータセットから、最適刺激位置及び姿勢に対応した3次元位置及び姿勢に磁気コイルを誘導するのに必要な適正範囲のデータセットを抽出し、この抽出した範囲のデータセットと医師が収集したサンプル・データセットとを対比参照することで、磁気コイルの誘導に要する時間の短縮を図ることが考えられる。この場合、予め収集された大量のデータセットから前述の適正範囲のデータセットを如何に抽出するかが重要である。
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、データセットを利用して最適の刺激位置及び姿勢に対応した3次元位置及び姿勢に磁気コイルを誘導するに際して、予め収集された大量のデータセットから、患者の頭皮表面形状に応じて、最適刺激位置及び姿勢に対応した磁気コイルの3次元位置及び姿勢を得るのに必要な適正範囲のデータセットを抽出できるようにすることを、基本的な目的としてなされたものである。
このため、本願発明に係る治療用磁気刺激装置は、磁場を対象者の特定部位に作用させて磁気刺激を与えるための治療用磁気刺激装置であって、治療用磁場、または少なくとも位置情報を含む情報を検出する検出用磁場を発生するための磁場発生手段と、前記治療用磁場または前記検出用磁場の、少なくとも2つの検出位置における複数方向での各成分強度を検出するため、対象者に対して少なくとも特定の相対位置となるようそれぞれ配置された磁場検出手段と、(1)前記磁場発生手段を対象者の前記特定部位近傍の複数のサンプリング箇所にそれぞれ位置させた状態で、前記各成分強度検出をそれぞれ行なったサンプリング検出の結果、及び、(2)あらかじめ記録されてある、(a)前記磁場発生手段の少なくとも3次元位置情報と(b)前記少なくとも3次元位置情報を有する位置における前記磁場各成分強度の情報とを対にした複数の母データ対、を用い、前記各成分強度から前記磁場発生手段の少なくとも位置の情報を導出するためのカスタムデータ対を対象者ごとに生成する、データ生成手段と、を備えたことを特徴としたものである。
この場合において、前記生成されたカスタムデータ対と、治療に際して行なわれる前記磁場各成分強度の検出結果とを用いて、(A)前記磁場発生手段が操作に応じて移動可能に構成された場合の、前記特定部位への磁気刺激のためにこの磁場発生手段を移動させる操作を教示する情報、または、(B)前記磁場発生手段を前記特定部位への磁気刺激のための位置まで移動させる移動手段を有するよう構成された場合の、前記移動制御のための情報、を生成する情報生成手段を更に備えることができる。
以上の場合において、前記特定部位が対象者の頭部内にある特定の刺激位置であり、前記データ生成手段は、前記サンプリング検出結果に基づいて母データ対を参照し、対象者の頭皮表面形状を近似し、この近似した頭皮形状に近い複数のデータ対を前記母データ対から抽出して前記カスタムデータ対とすることができる。
この場合において、対象者の頭皮表面形状の近似はドロネー三角形分割に基づいて行うことができる。或いは、楕円体近似に基づいて行うこともできる。
また、以上の場合において、前記検出用磁場は位置情報と角度情報とを検出するものであり、前記磁場検出手段は、対象者に対して特定の相対位置及び相対角度となるよう配置され、前記母データ対は、(a’)前記磁場発生手段の3次元位置及び傾斜角度情報と(b’)前記位置及び傾斜角度における前記磁場各成分強度の情報とを対にしたものであり、前記データ生成手段は、前記磁場発生手段の位置及び傾斜角度の情報を導出するためのカスタムデータ対を対象者ごとに生成することができる。
或いは、前記検出用磁場は位置情報を検出するものであり、前記磁場検出手段は、対象者に対して特定の相対位置及び相対角度となるよう配置され、前記母データ対は、(a’)前記磁場発生手段の3次元位置及び傾斜角度情報と(b’)前記位置及び傾斜角度における前記磁場各成分強度の情報とを対にしたものであり、前記データ生成手段は、前記磁場発生手段の位置及び傾斜角度の情報を導出するためのカスタムデータ対を対象者ごとに生成し、前記磁場発生手段の傾斜角度の検出は、前記検出用磁場の発生および検出とは別途に、磁場発生手段の傾斜角度を測定する測定手段によって行われるようにしてもよい。
更に、本願発明に係るカスタムデータ対の生成方法は、治療用磁場、または少なくとも位置情報を含む情報を検出する検出用磁場を発生するための磁場発生手段と、前記治療用磁場または前記検出用磁場の、少なくとも2つの検出位置における複数方向での各成分強度を検出するため、対象者に対して少なくとも特定の相対位置となるようそれぞれ配置された磁場検出手段とを備え、前記磁場発生手段を用いて、磁場を対象者の特定部位に作用させて磁気刺激を与えるための治療用磁気刺激装置に用いるカスタムデータ対の生成方法であって、前記磁場発生手段を対象者の前記特定部位近傍の複数のサンプリング箇所にそれぞれ位置させた状態で、前記各成分強度検出をそれぞれ行なうサンプリング検出ステップと、前記サンプリング検出結果に基づいて、(a)前記磁場発生手段の少なくとも3次元位置情報と(b)前記少なくとも3次元位置情報を有する位置における前記磁場各成分強度の情報とを対にした、予め記録されてある複数の母データ対を参照するステップと、前記各成分強度から前記磁場発生手段の少なくとも位置の情報を導出するためのカスタムデータ対を対象者ごとに生成するステップと、を備えることを特徴としたものである。
この生成方法において、前記特定部位が対象者の頭部内にある特定の刺激位置であり、前記データ生成手段は、前記サンプリング検出結果に基づいて母データ対を参照し、対象者の頭皮表面形状を近似し、この近似した頭皮形状に近い複数のデータ対を前記母データ対から抽出して前記カスタムデータ対とすることができる。
この場合において、対象者の頭皮表面形状の近似はドロネー三角形分割に基づいて行うことができる。或いは、楕円体近似に基づいて行うこともできる。
また、以上の生成方法において、前記検出用磁場は位置情報と角度情報とを検出するものであり、前記磁場検出手段は、対象者に対して特定の相対位置及び相対角度となるよう配置され、前記母データ対は、(a’)前記磁場発生手段の3次元位置及び傾斜角度情報と(b’)前記位置及び傾斜角度における前記磁場各成分強度の情報とを対にしたものであり、前記カスタムデータ対を生成するステップでは、前記磁場発生手段の位置及び傾斜角度の情報を導出するためのカスタムデータ対を対象者ごとに生成することができる。
或いは、前記検出用磁場は位置情報を検出するものであり、前記磁場検出手段は、対象者に対して特定の相対位置及び相対角度となるよう配置され、前記母データ対は、(a’)前記磁場発生手段の3次元位置及び傾斜角度情報と(b’)前記位置及び傾斜角度における前記磁場各成分強度の情報とを対にしたものであり、前記カスタムデータ対を生成するステップでは、前記磁場発生手段の位置及び傾斜角度の情報を導出するためのカスタムデータ対を対象者ごとに生成し、前記磁場発生手段の傾斜角度の検出は、前記検出用磁場の発生および検出とは別途に、磁場発生手段の傾斜角度を測定する測定手段によって行われるようにしてもよい。
本願発明によれば、磁場を対象者の特定部位に作用させて磁気刺激を与えるに際して、磁場発生手段を対象者の前記特定部位近傍の複数のサンプリング箇所にそれぞれ位置させた状態で、各成分強度検出をそれぞれ行なうサンプリング検出の結果に基づいて、(a)前記磁場発生手段の少なくとも3次元位置情報と(b)前記少なくとも3次元位置情報を有する位置における前記磁場各成分強度の情報とを対にした、予め記録されてある複数の母データ対を参照し、前記各成分強度から前記磁場発生手段の少なくとも位置情報を導出するためのカスタムデータ対を対象者ごとに生成することにより、対象者に応じて、少なくとも最適刺激位置に対応した磁場発生手段の少なくとも3次元位置を得るのに必要な適正範囲のデータ対を抽出することができる。そして、磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に各磁場検出手段が検出した磁場強度及び方向に関する各情報と、前記カスタムデータ対とを対比することにより、従来のように多大の時間を要することなく、少なくとも最適刺激位置に対応した3次元位置に磁場発生手段を誘導することが可能になる。
本発明の一実施形態に係る経頭蓋磁気刺激装置の全体構成を概略的に示す説明図である。 前記実施形態で用いられる磁気コイル及びコイルホルダの一例を示す斜視図である。 前記実施形態で用いられるデータセット解析ユニットの構成を概略的に示すブロック構成図である。 前記実施形態で用いられる表示装置による画像表示例を示す説明図である。 専門医師が居る病院で行われる初期診療時の前記経頭蓋磁気刺激装置の操作方法を説明するためのフローチャートである。 在宅治療時の前記経頭蓋磁気刺激装置の操作方法を説明するためのフローチャートである。 前記実施形態に係る眼鏡座標系を示す説明図である。 前記実施形態に係る磁気コイル及びコイル座標系を示す説明図である。 工場産データセットの直方体状の作成範囲の一例を示す説明図である。 工場産データセットの半球体状の作成範囲の一例を示す説明図である。 工場産データセットの作成範囲と磁場センサ及びサンプル位置を示す説明図である。 データセット抽出手順の全体の流れを説明するためのフローチャートである。 サンプル近傍のデータセット抽出手順を説明するためのフローチャートである。 サンプル位置及び姿勢近傍のデータセット抽出結果を示す説明図である。 ドロネー三角形分割に関連して三角形の外心の位置を示す説明図である。 同一円周上に4点以上のサンプルが存在する場合のドロネー三角形分割を示す説明図である。 10個のサンプルに対するドロネー三角形分割の分割結果を示す説明図である。 三角形に対するデータセットの位置を表すパラメータの説明図である。 データセット抽出の死角を示す説明図である。 分割された三角形を構成する3つのサンプルの姿勢の平均値を示す説明図である。 ドロネー三角形分割に基づいた近似頭皮表面近傍のデータセット抽出手順を説明するためのフローチャートである。 前記近似頭皮表面近傍のデータセット抽出結果を示す説明図である。 前記近似頭皮表面近傍のデータセット抽出を行った際のデータセットの分布を示す説明図である。 10個のサンプルに対するドロネー三角形分割で分割された三角形の番号と位置を示す説明図である。 疎密差調整を行った場合のデータセット抽出結果を示す説明図である。 疎密差調整を行う場合のデータセット抽出手順を説明するためのフローチャートである。 疎密差調整を行ったデータセット抽出時のデータセットの分布を示す説明図の一部である。 疎密差調整を行ったデータセット抽出時のデータセットの分布を示す説明図の一部である。 楕円体近似に基づいた近似頭皮表面近傍のデータセット抽出手順を説明するためのフローチャートである。 10個のサンプルを用いたデータセット抽出結果を示す説明図で、(a)は楕円体近似を用いた抽出結果であり、(b)はドロネー三角形分割を用いた抽出結果である。 サンプル配置を変化させた場合のデータセット抽出結果を示す説明図で、(a)はドロネー三角形分割を用いた抽出結果であり、(b)は楕円体近似を用いた抽出結果である。 ナビゲーション実験の実験結果を示す説明図で、(a)は実測値と推定値の偏差を示すグラフであり、(b)は実測値とターゲットの偏差を示すグラフである。
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る経頭蓋磁気刺激装置の全体構成を概略的に示す説明図である。この図において、その全体が数字符号10で表示される経頭蓋磁気刺激装置(以下、適宜、「磁気刺激装置」或いは単に「装置」と略称する)は、治療用の椅子2に固定的に着座した患者M(被験者)の頭皮表面に配置した磁気コイル11により脳内神経に磁気刺激を加えることによって、治療及び/又は症状の緩和を図るものである。尚、前記磁気コイルは、本願請求項に記載した「磁場発生手段」に相当するものである。
前記磁気コイル11は、患者Mの少なくとも脳の特定部位に磁気刺激を加えるための動磁場を発生するものであり、患者Mの頭部表面に対して変位可能に操作することができるコイルホルダ12に取り付けられている。
尚、図1においては、コイルホルダ12を把持し磁気コイル11を患者頭皮に沿って変位させ、当該コイル11の位置決めを行った後、当該コイル11が不用意に移動することがないように、より好ましくは、コイルホルダ12をホルダ固定具3に固定した状態が示されている。
前記磁気コイル11としては、種々のタイプの公知の磁気コイルを使用することができる。図2は、本実施形態の経頭蓋磁気刺激療法において動磁場発生手段として用いることができる磁気コイル及びコイルホルダの一例を示す斜視図である。この図2に示す磁気コイル11は、2つの渦巻き形コイルを同一平面上で数字の「8」の字型に並べた、所謂、8の字型渦巻きコイルであり、8の字の交点に相当する点直下にて誘導電流密度が最大となる。このタイプの磁気コイル11は、その姿勢の特定を含めて固定がやや難しいが、限局した刺激をもたらすのに好適である。かかる磁気コイル11は、合成樹脂製のコイルホルダ12の成形時に、該コイルホルダ12と共に一体的に樹脂成形されることが好ましい。また、前記2つの渦巻き形コイルの各々について、8の字の交点に相当する方向に巻線が密になるように偏心したコイルを用いてもよい。この場合、8の字の交点に相当する点の直下に、より効率よく誘導電流を発生させることができる。
前記磁気コイル11は、ケーブル15を介して磁気刺激制御装置16に電気的に接続されている。この磁気刺激制御装置16は、磁気コイル11への電流パルスの供給を制御するもので、従来公知の種々のタイプのものを用いることができる。磁気刺激制御装置16のオン/オフ(ON/OFF)操作は操作者によって行われる。また、磁気刺激の強度やサイクルを決定付ける電流パルスの強度やパルス波形の設定等も、操作者によって行うことができる。
本実施形態では、磁気コイル11が発生させた磁場を検出し得る磁場検出手段として、例えば所謂3軸センサとされた磁場センサ13が、患者Mが装着した眼鏡14の左右のフレーム部分にそれぞれ前後一対に2個ずつ(計4個)取り付けられている。これにより、患者Mの頭部を囲む前後左右の4箇所で、磁場を検出(磁場強度および磁場の方向を検出)することができる。
かかる磁場センサ13としては、例えば、所謂サーチコイルなどの誘導型センサ,ホール効果を利用したホールセンサ,磁気抵抗(Magnetoresistance)効果を利用したMRセンサ,磁気インピーダンス(Magneto-impedance)を用いたMIセンサ、更にはフラックスゲート型センサなど、様々なタイプの公知の磁場センサ(磁気センサ)を用いることができる。数ミリ(mm)角のサイズで数グラム(g)の重量の量産品であれば、1個当たり数百円程度の価格での入手が期待できるものも少なくない。経頭蓋磁気刺激療法に用いるものとしては、十分な小型・軽量・低価格が達成可能であると言える。
前記眼鏡14は、複数(本実施形態では、例えば4個)の磁場センサ13の患者頭部に対する位置を固定する固定手段(つまり、磁場センサ固定具)としての役割を果たすものである。患者Mの頭部に対する磁場センサ13の固定位置には再現性が求められ、患者Mに対して磁場センサ13を常に同じ位置に固定する必要があるが、このような固定位置の繰り返し再現性を確保した上で、患者Mに不快感や違和感を及ぼすことなく、比較的自然に患者頭部に対して磁場センサ13を固定する手段としては、日常的に身に付けて用いられる機会が多く馴染みのある装具(身体装着具)が望ましい。この点、眼鏡14は好適である。尚、一般的な眼鏡では上下に微妙に位置ズレが生じる場合もあるが、所謂、保護用(安全用)眼鏡やスポーツ用眼鏡などは、かかる位置ズレが生じ難い設計になっており、磁場センサ13の取付装具として特に好適である。また、イヤホン,ヘッドホン及びヘッドバンドなどの身体装身具も好適に用いることができる。
本実施形態では、4個の磁場センサ13を磁場センサ固定具としての眼鏡14に取り付けて使用されていたが、磁場センサ13の個数は4個に限定されるものではない。周知のように、センサ個数が多い程、測定精度を高める上で一般に好ましい。ただし、それだけ、システムが複雑化しコスト高にもなる。このため、できるだけセンサ個数を減らすことが望まれるが、その場合でも、一定以上の測定精度を確保するためには、少なくとも2個以上のセンサを用いることが好ましく、また、これらセンサを、患者の頭部に関し等方的に配置して用いることがより好ましい。
本実施形態では、データセットを利用して最適の刺激位置及び姿勢に対応した3次元位置及び姿勢に磁気コイルを誘導するに際し、後で詳しく説明するように、最適刺激位置及び姿勢の特定に要する比較的少数の磁場データの収集を除いて、大量のデータセットの収集作業を、病院での医師による磁場データの収集とは別途に行うことにより、従来のデータセット収集に伴う医師の負担を大幅に軽減するようにしている。病院での医師による磁場データの収集とは別途に行う大量のデータセットの収集は、例えば、当該磁気刺激装置の製造業者(メーカ)の出荷前検査の一環として行われる。本明細書では、このようにしてメーカにて大量に収集されるデータセットを、「工場産データセット」と言うものとする。この工場産データセットは、本願請求項に記載した「母データ対」に相当するものである。
尚、病院での医師による磁場データの収集とは別途に行う大量のデータセットの収集は、メーカ自体で行う場合に限定されるものではなく、例えば、メーカ若しくは病院が委託する外注機関などで行うようにしてもよい。
ここに、「最適刺激位置及び姿勢」とは、例えば、神経障害性疼痛の治療に適用される場合を例にとって説明すれば、磁気コイル11を用いて患者Mの脳の特定部位に磁気刺激を加える際に、患者Mの神経障害性疼痛が最も軽減される最適のコイル位置(所謂スイートスポット)および姿勢であり、初期診療時など病院で診療を行う際に特定される。
病院では、磁気コイル11の磁場を磁場センサ13で検出して得られた磁場データ(磁場の強度および方向に関するデータ)から、前記工場産データセットを対比参照することにより、発生している磁場に対する磁気コイル11の位置及び姿勢を知ることができ、磁気コイル11の磁場データを記録する。具体的には、従来の手法で医師が特定した最適刺激位置及び姿勢ならびにその周辺の複数(比較的少数、例えば10個程度)の位置及び姿勢について、磁場データを収集し記録する。本明細書では、このようにして病院にて医師が収集した磁場データを、適宜、「サンプル磁場データ」と言うものとする。
メーカ側にて十分に高い密度で工場産データセットが用意されている場合には、医師が病院にて、磁気コイル11及び磁場センサ13を用いて最適刺激位置および姿勢を決定すれば、メーカ側で用意された工場産データセットを参照して、そのときの磁場に対応する3次元位置および姿勢(工場産データセットから呼び出した値)を、座標変換プロセス等を経ることなく、そのまま最適刺激位置および姿勢とすることができる。この場合、メーカ側での座標系と病院側での座標系との座標変換プロセスを、データセットを用いて行ったことになる。
尚、以上のように磁気コイル11が発する動磁場を検出する代わりに、磁気コイル11を保持するコイルホルダ12に例えば永久磁石を取り付けておき、この永久磁石が発する静磁場を磁場センサ13で検出して、磁場データを得るようにすることもできる。
本実施形態に係る経頭蓋磁気刺激装置10は、前記データセットを利用することにより、最適の刺激位置および姿勢に対応した3次元位置および姿勢に磁気コイルを誘導するために、データセット解析ユニットを備えている。
図3は、本実施形態で用いられるデータセット解析ユニット20の構成を概略的に示すブロック構成図である。データセット解析ユニット20は、例えば、CPU(中央演算処理装置)を備えた所謂パーソナルコンピュータを主要部として構成され、図3のブロック構成図に示されるように、信号解析部22と記録部23と比較部24とユーザ情報出力部25とを備えている。
また、このデータセット解析ユニット20には、例えば液晶タイプの表示パネルを備えた表示装置28が付設されている。この表示装置28は、データセットを利用して磁気コイル11の現在位置および姿勢を把握した後、このコイル11の現在位置および姿勢をユーザに報知し、磁気コイル11を最適位置(つまり、最適刺激部位に相当する位置)および姿勢まで誘導するインタフェースの役割を果たすものである。尚、この場合、「ユーザ」とは、例えば、患者,その家族,かかりつけの医院等の医師や医療従事者などである。
前記信号解析部22は、好ましくは無線信号として入力される前記複数の磁場センサ13(センサ1,センサ2,…,センサN)から入力される検出信号に基づいて(図3:矢印Y1参照)、磁気コイル11が発する磁場の磁場データ(磁場の強度および方向に関するデータ)を取得し、記録部23に入力する(図3:矢印Y2参照)。
この記録部23は、読み出し可能なメモリ装置で構成され、メーカで予め収集された大量の工場産データセットが、メーカ出荷時点で予め記録されている。また、この記録部23には、初期診療時など病院で診療を行う際に、従来の手法で医師が特定した最適刺激位置及び姿勢ならびにその周辺の複数(例えば10個程度)の位置及び姿勢について収集した磁場データ(サンプル磁場データ)が記録される(図3:矢印Y8参照)。
尚、前記工場産データセットとしては、好ましくは、あらゆる患者に対応可能とすべく、極めて大量のデータセットが収集されている。
前記比較部24では、共に記録部23に記録されているサンプル磁場データと工場産データセットを用いて、工場産データセットから、前記サンプル磁場データに対応するデータセット群を含み工場産データセットよりも小さいデータセットを抽出する(以下、これを「抽出データセット」と言うものとする)。
この抽出データセットは、前記サンプル磁場データに対応するデータセット群の各データセットの3次元位置に基づいて前記被験者の頭皮表面形状を近似した頭皮表面形状に近いデータセット群として、抽出されたものである。この抽出データセットも、記録部23に記録される。
そして、比較部24では、前記磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に、前記各磁場センサ13が検出し信号解析部22に入力された磁場データ(磁場の強度及び方向に関する各情報)が、記録部23に記録された前記抽出データセットと対比参照される(図3:矢印Y3,Y4参照)。これにより、信号解析部22で得られた磁場データに対応するデータセットの最適刺激位置及び姿勢のデータセットからの偏差(ずれ)を検知することができる。
そして、この比較部24での対比参照結果によって検知された前記偏差データが、ユーザ情報出力部25を介してユーザ・インタフェース部28(本実施形態では、前述の表示装置)に信号出力される(図3:矢印Y5,Y6参照)。ユーザ・インタフェース部28は、このユーザ情報出力部25からの出力信号に基づいて、操作手段(コイルホルダ12)を用いて行うべき変位の操作を教示するための教示情報(前述の表示装置の場合には、例えば映像信号等の表示のための信号)を生成してユーザに報知するようになっている。
装置10の操作者(ユーザ)は、表示装置28を視認しながら(図3:矢印Y7参照)、表示装置28の画面上に表示された偏差が極力ゼロ(零)となるように、コイルホルダ12を患者Mの頭皮に沿って変位操作する。そして、表示装置28の画面上に表示された偏差がゼロ(零)若しくは限りなくゼロに近くなった磁気コイル11の位置および姿勢で、当該磁気コイル11の変位操作を停止し、その状態を保持する。尚、このとき、図1に示すように、ホルダ固定具3を用いてコイルホルダ12を固定するようにすれば便利である。
本実施形態では、表示装置28での画像表示のために、グラフィック用のプログラム・インタフェースOpen GLがインストールされており、図4に示すように、最適刺激位置に対応するコイルホルダ画像55(図4:一点鎖線)と現在位置のコイルホルダ画像56(図4:実線)とが同じ画面内に表示されるようになっている。尚、より好ましくは、センサ固定具(眼鏡)画像57も同じ画面内に表示される。
従って、コイルホルダ12の操作者(ユーザ)は、ユーザ・インタフェース部(表示装置)28の画面を視認しながら、画面上に表示された実線のコイルホルダ画像56(現在位置)が、一点鎖線のコイルホルダ画像55(最適刺激位置)にできるだけ重なるように、コイルホルダ12を患者の頭皮に沿って変位操作すればよい。
以上のように構成されたデータセット解析ユニット20を備えた磁気刺激装置の操作方法を、図5及び図6のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、病院において(図5参照)、初期診療に際して、ステップ#11で、磁場センサ固定具14を患者Mに装着してもらう。つまり、複数(本実施形態では4個)の磁場センサ13を取り付けた眼鏡14を患者Mが装着する。これに伴って、前記複数の磁場センサ13(センサ1,センサ2,…,センサN)から検出信号が信号解析部22に入力される(図3:矢印Y1参照)。そして、医師が、患者Mが痛みを感じる領域での筋肉の反応を参照しながら、従来の手法で最適刺激位置を特定する(ステップ#12)。その後、ステップ#13で、最適刺激位置およびその周辺の複数(本実施形態では、10個程度)の位置について磁場データ(サンプル磁場データ)を収集し、このサンプル磁場データがデータセット解析ユニット20の記録部23に記録される。
次に、在宅治療時には(図6参照)、病院の場合と同様に、まず、磁場センサ固定具14を患者Mに装着してもらう(ステップ#21)。その後、ユーザは、ユーザ・インタフェース部(表示装置)28の画面を視認しながら磁気コイル11をできるだけ最適位置及び姿勢に合わせ(ステップ#22)、データセット解析ユニット20のユーザ・インタフェース部28のナビゲーション機能を利用して、表示画面を見ながらコイルホルダ12を移動操作し、最適の刺激位置および姿勢に磁気コイル11を誘導して治療を行う(ステップ#23)。つまり、その時点の磁気コイル11の位置および姿勢で、当該磁気コイル11の変位操作を停止し、その状態を保持する。このとき、前述のように、ホルダ固定具3(図1参照)を用いてコイルホルダ12を固定するようにすれば便利である。
以上、説明したように、本実施形態によれば、データセットを利用することにより、磁気刺激装置10の使用者(ユーザ)は、ユーザ・インタフェース28で報知される偏差がゼロ(零)となるようにコイルホルダ12を変位操作するだけで、特別な熟練性を要することもなく、かなり容易に、磁気刺激を加えるべき最適の位置および姿勢に対応した磁気コイル11の3次元位置および姿勢を検出することができる。つまり、患者Mあるいはその家族、又は必ずしも専門ではない近所のかかりつけの医師などでも、比較的容易に操作して使用することができる。また、かかる磁気コイル11の3次元位置および姿勢を検出するのに、従来のような大掛かりで高価な装置を用いる必要がないので、コスト負担が小さくて済み、しかも患者個人の自宅や比較的小規模な医院や診療所等でも設置スペースの確保が容易である。すなわち、取り扱いや操作が簡単で、且つ、より小型で安価な磁気刺激装置10を提供することができ、これにより、患者Mが、自宅や近所のかかりつけの医院などで日常的に継続反復して経頭蓋磁気刺激療法を行うことが可能になる。
この場合において、最適刺激位置及び姿勢の特定に要する比較的少数の磁場データ(サンプル磁場データ)の収集を除いて、大量のデータセット(工場産データセット)の収集作業を、病院での医師による磁場データの収集とは別途に行うことにより、従来のようなデータセット収集に伴う医師の負担を大幅に軽減することができる。
尚、以上の実施形態では、データセット解析ユニット20で得られた3次元データの3次元基準データからの偏差を報知する報知手段としてのユーザ・インタフェース部28には、視覚情報により前記偏差を報知する例えば液晶タイプの表示パネルを備えた表示装置28が用いられていたが、この代わりに、或いはこれに加えて、スピーカ等による聴覚情報によって前記偏差を報知するようにすることも可能である。この場合には、前記偏差の大きさ(コイルホルダ12が行うべき変位量)に応じて、つまり、刺激用コイル11が最適位置に近付くに連れて、音量,音階および音色の少なくとも一つを変化させるように構成することで、刺激用コイル11の最適の位置および姿勢への誘導がより容易になり、利便性をより高めることができる。
本実施形態では、データセットを利用して最適の刺激位置及び姿勢に対応した3次元位置及び姿勢に磁気コイルを誘導するに際して、磁気コイルの誘導に要する時間の短縮を図るべく、極めて大量に収集された工場産データセットから、個々の患者毎に、最適刺激位置及び姿勢に対応した磁気コイルの3次元位置及び姿勢を得るのに必要な適正範囲のデータセット(以下、これを、患者毎の「カスタムデータセット」と称する)を抽出し、この抽出したカスタムデータセットを参照することで、磁気コイルの誘導を行うようにしている。以下、このカスタムデータセットの抽出方法等について、詳しく説明する。
本実施形態におけるデータセットの例を表1に示す。1〜nの添字を用いて表示したデータは、それぞれデータセット番号1〜nに対応したものを表している。磁場センサは、それぞれx,y,zの3方向の値を計測するため、磁場データは3次元ベクトルであり、それぞれの方向の値をx,y,zの添字を付して表示している。同様に、位置データも3次元ベクトルであり、それぞれの方向の値をx,y,zの添字を付して表示している。姿勢データも3次元ベクトルであり、ロール角を「roll」,ピッチ角を「pitch」,ヨー角を「yaw」で表示している。
Figure 0006068335
また、本実施形態に係る工場産データセットの生成、並びに検討や確認のために行ったシミュレーションに用いた、コンピュータのCPU(中央演算処理装置)及び使用ソフトウェア等を表2に示す。
Figure 0006068335
[データセットの準備]
<データセットの成分>
表1に示したように、データセットを構成するパラメータは、磁気コイルの三次元位置を表すx,y,z[m]、磁気コイルの姿勢を表すroll, pitch, yaw [rad]、各磁場センサが感知する磁場のそれぞれの各方向成分Bx,By,Bz[T]である。磁場センサの数は、前述の通り4個とした。磁気コイルの三次元位置を表すx,y,zは、図7に示す眼鏡14のレンズやフレームの高さの中心位置を原点としたメガネ座標系に対する、図8に示すコイル座標系原点の位置である。
磁気コイル11の姿勢を表すroll, pitch, yaw は、メガネ座標系に対するコイル座標系の傾きの角度であり、それぞれメガネ座標系のz軸回り,y軸回り,x軸回りの回転角に対応している。コイル11の刺激面が真下を向くとき、pitch=0, yaw=0 となり、コイル11の刺激面が頭皮表面方向に向くかどうかは、pitch, yaw が関係する。
<磁場の順解析>
工場産データセットの磁場は,さまざまなx,y,z, roll, pitch, yaw に対してそれぞれ磁場の順解析を行なって各磁場センサが感知すると思われる磁場を各成分について計算して生成した。
磁気コイルの形状は、図8に示すように、2つの渦巻き形コイルの各々について、8の字の交点に相当する方向に巻線が密になるように偏心したコイルを用い、この2つの偏心コイルを上下に重ねた形とし、前述のメガネ座標系に対するコイル座標系の位置及び姿勢をコイルの位置及び姿勢とした。この場合、8の字の交点に相当する点の直下に、より効率よく誘導電流を発生させることができる。
半径ai,電流Iの円環電流により円環中心から(x,y,z)の位置で発生する磁場の多角形近似解は数1の式で表すことができる。以下、ベクトルの添字のc,gは、それぞれコイル座標系,メガネ座標系を表すものとする。
また、数1の式において、K=μI/2Nであり、真空の透磁率μ=4π×10−7[H/m],多角形近似の辺の数N=36,多角形近似の際の辺の角度θn=2nπ/N,コイルに流れる電流I=4600[A]とした。
Figure 0006068335
また、円環半径aiは数2の式で表すことができ、円環中心から見た磁場センサの位置(s)は、数4,数5,数6の各式に示す円環中心(ci±,c),センサ座標(s),データセット上のコイルの姿勢 roll=ψ’, pitch=θ’, yaw=φ’ を用いた回転行列(R)と,データセット上でのコイルの位置(p=(x,y,z))を用いて、数3の式のように表すことができる。ここで、コイルの片側の巻き数K=10,(0≦i≦K−1)とした.尚、数6の式においては、cos α= Cα, sin α= Sα のように表した。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
このようにして各磁場センサ13について全ての円環により発生する磁場の総和をとり、回転行列(R)を用いてメガネ座標系に変換すると、各磁場センサ13における磁場が求められる。尚、コイルにより発生する磁場の逆解析は、磁場センサ13が2つ以上であれば可能であるため、刺激コイルの特定の位置及び姿勢に対しての磁場、並びにその逆は一意的に決まる。また、磁場センサ13の位置は、一般的なヒト(人)の頬弓幅や乳様突起間幅を元にして定めた。
<工場産データセットの位置姿勢の間隔と作成範囲>
ナビゲーションの要求精度は位置x,y,zに関しては5[mm]程度,姿勢 roll, pitch, yaw に関しては5[deg]程度である。この精度を実現するために,データセットの間隔の設定は、位置に関しては2.5[mm]間隔,姿勢に関しては2.5[deg]間隔とした。
データセット作成範囲に関して、図9において2点鎖線で示すように、ヒトの頭の大きさに合わせた直方体全体のコイルが取り得る姿勢全部を作成範囲に含めた場合、データセットとして実際にはありえない頭の内部や、コイルが頭からかなり離れている若しくはコイルの刺激面が頭皮表面に向いていないなど、必要性の薄いデータセットを大量に含むことになる。仮に作成範囲を、以下のように定めた場合、
・ −0.1≦x≦0.1,−0.12≦y≦0.12,0≦z≦0.15
・ −π≦ roll ≦π,−π≦ pitch ≦π,−π/2≦ yaw ≦π/2
データセット数は、81×97×61×144×144×72=357,778,363,392 個となる。
一方、作成範囲を図10に示すように、位置をヒトの頭の大きさに合わせた球体の一部(図10:2点鎖線参照)とし、姿勢をコイルの刺激面が頭皮表面に向く角度近傍に絞ることにした場合(図10:破線参照)、無駄なデータセットを大幅に削減できる。本実施形態では、x=r sin θ,y=r cos θ sin φ,z=r cos θ cos φ として、作成範囲は以下のように定めた。
・ 0.085≦r≦0.105,−π/6≦θ≦π/6,−π/6≦φ≦π/6
・ −π/6≦ roll ≦π/6,θ−π/6≦ pitch ≦θ+π/6,
φ−π/6≦ yaw ≦φ+π/6
尚、roll に関しては、磁気コイルが頭皮表面を向くかどうかには影響しないが、データセットが過度に多くなりすぎることを防止するため、実用性を考慮して範囲を限定することとした。
実際に工場産データセットを生成する際には、x,y,z, roll, pitch, yaw をそれぞれ格子状に、2.5[mm],2.5[deg]間隔で変化させ,この作成範囲内にあるデータセットのみを工場産データセットとして認めて作成している。この作成結果を、図11に模式的に示す。なお,この場合のデータセット数は174,425,400 個となり,直方体状に作成範囲をとった場合の1/2000以下にまで減少した。
尚、以上の工場産データセットの生成において、前述の「ヒト(人)の頭」としては、人間の頭部を模した頭部模型、例えば、日本人の成人の標準的頭部構造に基づく頭部模型を用いた。
<模擬サンプル>
本実施形態では、工場産データセットの生成以外に、データセット抽出の検討や確認のためにシミュレーションを行ったが、このシミュレーションを行うために、病院で医師が収集するサンプル磁場データについて模擬サンプルを用意した。サンプル磁場データは患者の頭皮表面から収集する磁場情報であるため、それぞれの模擬サンプルの位置は頭皮表面上にあり、姿勢はコイル刺激面が頭皮表面の法線方向を向くものでなければならない。本実施形態でのシミュレーションでは、患者の頭の形状を、メガネ座標系原点を中心とする半径r=0.09[m]の球形と仮定し、それに基づいて工場産データセットの中からサンプルを選択した。
なお、本実施形態でのシミュレーションでは、サンプル磁場としては、特に注記しない限り、下記表3と前述の図11に示した共通の位置及び姿勢から計算した磁場情報を10個使用し、このうちNo.1のサンプルを最適刺激位置及び姿勢のものとした。尚、表3には、サンプルが患者の頭の形に沿っていることを示すために、メガネ座標系原点からの距離r=√(x+y+z)も示した。何れのサンプルも、r=0.09[m]に近いことがわかる。
Figure 0006068335
[抽出プログラム]
<データセット抽出の流れ>
データセット抽出の流れを図12に示す。サンプルの磁場情報に最も近い工場産データセットを探し、サンプルの位置及び姿勢を特定する。その位置及び姿勢に対して、工場産データセットの中で位置及び姿勢が或る一定の条件を満たしているものを、患者のデータセットとして抽出する。
<サンプルに磁場が近い工場産データセットの探し方>
図12には、サンプルの位置及び姿勢を特定する手順が示されている。工場産データセットの磁場がサンプル磁場に近いかどうかを判定するパラメータとして、数7の式に示すf値を用いている。f値とは磁場の各成分の差の二乗和であり、サンプル磁場,工場産データセットの磁場をそれぞれ、ベクトルB(B,B,…,B12),ベクトルB'(B'i1,B'i2,…,B'i12)として、数7の式で表す。尚、ここでは、磁場を表すベクトルB,B'4個のセンサ全ての各方向成分を合わせて、12次元としている。サンプル毎に、このf値を全ての工場産データセットについて計算し、最もf値の小さい工場産データセットを1個選択する。その位置及び姿勢をサンプルの位置及び姿勢とする。
Figure 0006068335
<抽出データセット数>
ナビゲーションに使用するデータセット数が多ければ多いほど、ナビゲーション精度は向上するのであるが、多くなりすぎると計算量が多くなり、システムの動作が重くなり、それだけナビゲーションに要する時間が長くなる。従来では、ナビゲーション精度として、位置x,y,zに関して5[mm]程度、姿勢 roll, pitch, yaw に関して5[deg]程度のナビゲーション精度を得るのには、最低500個程度のデータセットを必要とするが、最大何個のデータセットまで用いてナビゲーションが可能であるかについては示されていなかった。
そこで、扱えるデータセットの最大個数を調べる簡単な実験を行なった。データセット数を1000個,2000個,5000個と変化させて、実際にシステムを稼働させてみた結果、1000個,2000個ではナビゲーションがスムーズに行われたが、5000個にまで増やすと若干動作の遅延が認められ、これ以上データセットを増やすとナビゲーションが困難になると判断した。そこで、本実施形態では、抽出データセット数は最大5000個を目安とした。
<データセット抽出条件>
本実施形態では、主にデータセット抽出条件を変えてシミュレーションを行い、それぞれの抽出条件について、抽出されたデータセットを評価した。尚、抽出条件を決定するにあたり、抽出されるデータセットは当然ナビゲーションを行うのに適したものでなければならないが、それだけでは目標があいまいになってしまうので、抽出されるデータセットに以下のような一定の基準を設けて、できるだけそれに近づけるように、シミュレーションを行う毎に抽出条件を改善していくものとした。優先度が高いものから順に、次の通りである。
イ)頭皮表面に沿う位置に存在し、かつ刺激面が頭皮表面に向く姿勢を主に抽出
ロ)頭皮内部よりも頭皮表面上を優先的に抽出
ハ)ナビゲーション精度を確保するために、最適刺激位置姿勢近傍はデータセットを密に抽出
ニ)上記以外で意図しない極端な疎密差はつけないで均等に抽出
ホ)その他ナビゲーション精度を高めるための条件を適宜追加
[サンプル位置及び姿勢近傍のデータセットの抽出]
<条件設定>
まず、最も単純な抽出条件として、サンプルの三次元位置からの距離が一定以下かつサンプルの姿勢と近い工場産データセットを抽出することを考えた。抽出データセット選択の流れを図13に示し、抽出条件を数8,数9の式に示す。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
ここで、添字の(f),(s)は、それぞれ工場産データセットの成分,サンプルの成分を表し、i,jはデータセットの番号を表し、工場産データセットの3次元位置,サンプルの3次元位置をそれぞれ数10,数11の式で表す。また、数8,数9の式において、P,Aは、それぞれ位置,姿勢の抽出範囲を決定する閾値であり、表4に示す6通りに変化させ抽出を行い、抽出データセットの位置及び姿勢と抽出数を評価した。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
<抽出結果>
抽出されたデータセットの位置を、グラフ作成ツールGNUPLOT を用いてプロットしたものを図14に示す。また、抽出されたデータセット数を表5に示す。
Figure 0006068335
表5を参照すれば、実際に各サンプル近傍においてデータを抽出できており、局所的にはナビゲーション精度は確保できている。しかし、近くにサンプルのない位置に関しては全くデータセットがなく、非常にムラのある結果となっている。また、抽出データセット数から考えると、位置,姿勢を決定するパラメータがそれぞれ3次元であるため、少し抽出範囲を広げただけでかなり大きく変動してしまう。また、P=1.0×10−4の場合を考えると、A=π/72とした場合(表4:閾値パターンNo.2)、抽出データセット数が60000個を超えており、明らかにナビゲーション可能な限界データセット数をオーバーしている。また、A=π/144とした場合(表4:閾値パターンNo.1)、すなわち各位置に対して姿勢を1通りしか抽出しないように姿勢の抽出範囲をかなり狭くした場合でも、頭皮表面の約半分を覆うのに必要なデータセット数が2000個以上もあるのは、現行システムが500個のデータセットでナビゲーションを行えることを考えれば、やはり抽出に無駄があるものと考えられる。
サンプルの数を40個に増やした場合や狭い範囲に限定した場合には、必要なデータセットをよく抽出できるのであるが、これでは汎用性があるとはいえない。また,P=3.0×10−5でA=π/72とした場合(表4:閾値パターンNo.4)、抽出データセット数は8910個であり、やはりデータセット数を5000個以下に抑えることはできていない。
以上の結果から、本実施形態では、サンプル1個ずつに対してそれぞれ抽出条件を設定するのではなく、全サンプルから頭皮表面の形状を推測し、その表面に沿ったデータセットの抽出を行うことにした。
[近似頭皮表面に沿ったデータセットの抽出]
<ドロネー三角形分割>
まず、サンプルから頭皮表面形状を推測する方法について説明する。頭皮表面は実際には数式化の困難な曲面で構成されており、また、その形状も人によってさまざまである。しかし、凹凸の激しい複雑な曲面ではないため、単純な図形を用いた近似が可能である。そこで、サンプルの各点を結び複数の三角形を生成して、頭皮表面に近似する手法として、所謂、ドロネー三角形分割を用いた。
このドロネー三角形分割とは、ある点の集合をそれぞれ頂点としてなるべく小さな三角形群に分割したとき、全三角形中最小の内角が最大となるような分割法である。この手法によって分割された三角形の外接円内には、他の頂点を含まないという幾何学的性質がある。この分割法では、細長い三角形が生成されにくく、激しい凹凸の少ない比較的単純な形状の曲面の近似に適している。
本実施形態への適用を考えた場合、サンプルの3次元位置のうち、zの変化がx,yの変化に対して小さいため、前述のドロネー三角形分割の条件を満たすかどうかを、x,yのみを用いて2次元的に判定し、三角形の生成はx,y,zを用いて3次元的に行うことで、頭皮表面形状を複数の三角形に近似した。
本実施形態で用いたプログラムでは、ドロネー三角形分割を、以下のアルゴリズムに基づいて行った。
まず、サンプルから任意の3点を選択し、その外心と外接円半径を求める。選択した3点以外の全てのサンプルから外心までの距離と、外接円半径の大きさとを比較し、全てのサンプルにおいて外接円半径の方が小さければ、選択した3点をドロネー三角形分割を構成する三角形と見なす。これを全ての3点の組み合わせに対して行なった。
頂点の位置が既知である三角形の外心は、以下のようにして求めることができる。
図15に示す△OABに対し、ベクトルOA=ベクトル(a),ベクトルOB=ベクトル(b),ベクトル(a)の絶対値=a,ベクトル(b)の絶対値=b,角度AOB=θとし、点Q,Rをそれぞれ、ベクトルOQ=X(a),ベクトルOR=Y(b)となるようにとり、外心Pを数12の式で表し、外心Pから辺OA,辺OBに降ろした垂線との交点を、それぞれC,Dとする、数13,数14の各式が成り立ち、更に、これらの式を用いて、数15,数16の関係式を導くことができる。以上から、数17,数18の式を用いて、係数X,Yを、数19の式から求めることができる。そして、数12に数19を代入することで、点Oの座標から外心Pの座標を得ることができる。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
尚、ごく稀に、同一円周上に4点以上のサンプルが存在するが、その円内に他のサンプルが存在しない場合がある。このような場合、どのように三角形に分割しても最小の内角の大きさは一定であるため、ドロネー三角形分割の定義には反しない。そこで、本実施形態では、例外的に図16に示すように、円上のある点を始点として、そこから反時計回りに走査し、サンプルに、それぞれ検出した順に1,2,3,…の番号をつけるとすると、(1,2,3),(1,3,4),(1,4,5),…のような三角形に分割していくものとした。
また、本実施形態で共通して用いる10個のサンプル(表3参照)に対して行ったドロネー三角形分割の結果を、図17に示す。図17(a)に示すように、この10点のうち下側の4点(表3のNo.2,3,9,10のサンプル)は同一円周上に存在しており、これらの点に対しても正しく三角形分割が行われていることがわかる。また、図17(b)は、分割された三角形を3次元的に見た図であり、サンプルの生成で定義した仮想患者の頭(つまり、人間の頭部を模した頭部模型)の形にある程度沿っていることがわかる。尚、サンプル数を40個とした場合でも、同じプログラムを用いてドロネー三角形分割が問題なく分割できることも確認した。
<三角形平面に近いデータセットの抽出>
次に、ドロネー三角形分割を適用して分割した三角形に対して、三角形平面上のデータセットをどのように抽出するかについて説明する。
図18に示す△OABに対し、ベクトルOA=ベクトル(a),ベクトルOB=ベクトル(b),△OABの+z方向の単位法線ベクトルをベクトル(c)、更に、工場産データセットの位置を点Pとして、ベクトルOP=ベクトル(x)とする。各工場産データセットに対して、ベクトルxを数20の式のように、ベクトル(a),(b),(c)成分に分解する。数20の式において、係数a,bは、それぞれ辺OA,辺OBの長さに対する割合となるので無次元であり、係数cは、単位法線ベクトル(c)に対する割合となるので、単位は[m]となる。
Figure 0006068335
ここで、ある工場産データセットを考えたとき、例えば係数a,bが、数21の式を満たしていれば、この工場産データセットは、△OABの真上に存在することになる。また、係数cの絶対値が小さいほど、この工場産データセットは△OABに近い位置に存在し、c<0であれば頭の中に存在し、c>0であれば頭の上に存在すると考えられる。
Figure 0006068335
実際のプログラムでは、係数a,b,cをガウスの消去法によって求め,以下のような条件に沿うものを抽出することにした。係数a,bについての条件を以下に示す。
扱っている三角形群が頭皮表面に近似したものであるため、それぞれの三角形は上に凸になるように接している。そのため、数21の式の条件でデータセットを抽出した場合、図19において実線の楕円形で示すように、三角形の辺上に抽出の死角ができてしまう。これを回避するため、数22の式で示すように、閾値Rを決めて抽出範囲を広げた。
Figure 0006068335
ここで、閾値R=0とすれば、数21の式は前記数20の式に等しくなり、閾値Rを大きくすれば、それに比例して抽出範囲は広がる。本実施形態では、基本的には、閾値R=0.1とした。
係数cに関しては、c≧0を満たし、且つcが小さいものを抽出したが、こちらは条件を変えながらシミュレーションを行なった。最初は閾値Wを与え、0≦c≦Wを満たすデータセットを抽出した。実際に1つの三角形に対して、閾値をR=0,W=0.003[m]としてデータセットの抽出を行なった結果、正しく三角形の真上のデータセットを抽出できていることを確認した。
<条件設定>
以上のように、頭皮表面をドロネー三角形分割によって複数の三角形に近似し、得られたそれぞれの三角形平面に対して近い工場産データセットを抽出することで、頭皮表面に近いデータセットを抽出することができるようになった。
次に、この手法を主に用いることを前提にして、抽出条件を変化させる場合について、説明する。抽出データセット選択の流れを図21に示す。まず、位置に関する条件は、分割された三角形からの距離を表すパラメータcの閾値Wを決めて、それを満たす工場産データセットを抽出するものとした。
姿勢に関する条件は、数23,数24の式と、図20に示すように、分割された三角形を構成する3つのサンプルの姿勢の平均値をとり、前述の閾値Aを設けて、平均値に姿勢の近い工場産データセットを抽出した。数23,数24の式において、添字の(f),(s),(a)は、それぞれ工場産データセット,サンプル,分割された三角形を構成するサンプル3点の平均を表し、iは工場産データセットの番号,jは分割された三角形の番号,jの後の数字は三角形の頂点の番号を表している。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
前述のように、姿勢に関する抽出範囲を少し広げただけで抽出データセット数は大きく増えるため、この条件でのシミュレーションでは姿勢の評価は行わず、表6に示すように、各位置に対して姿勢を1通りしか抽出しないように、閾値AはA=π/144に固定した。このため、抽出データセット数は、最終目標の5000個に対して、500個前後の抽出を目安とした。閾値Wの値は、データセット間隔2.5[mm]に対して1倍,1/2倍,1/4倍の3通りに変化させた。以上の条件で、各試行について抽出データセットの位置と数を評価した。
Figure 0006068335
<抽出結果>
抽出されたデータセットの位置を、グラフ作成ツールGNUPLOT を用いてプロットしたものを図22に示す。また、パターン1、すなわち閾値W=2.5[mm]とした場合における抽出データセットの分布を図23に示す。
図23(a)は、前述のように、仮想患者の(つまり、人間の頭部模型の)頭皮表面形状を、メガネ座標系原点を中心とする半径r=√(x+y+z)=0.09[m]の球としたのに対して、仮想患者の頭皮表面に沿うデータセットを抽出できているかを確認するために、抽出データセットをrの値で分類したものである。縦軸が抽出データセット数,横軸がr である。この図から、r=0.09[m]近傍のデータセットのみを抽出できており、且つ、頭皮表面の外側となるrが大きいデータセットの方をより多く抽出できていることが分かる。
図23(b)は、抽出データセットの最適刺激位置からの距離で分類したものである。縦軸が抽出データセット数,横軸が最適刺激位置からの距離である。この図からは、最適刺激位置近傍のデータセットを多く抽出できているとはいえないが、最適刺激位置に近くなればなるほど対象となる範囲の体積が距離の3乗オーダで小さくなるため、これではあまり比較にならないと考え、抽出データセット数を対象範囲の体積で割った抽出密度を縦軸にしたグラフを図23(c)として作成した。この図から、最適刺激位置近傍のデータセットを若干多く抽出できているといえる。図22の結果と併せて、図14の抽出結果との違いは一目瞭然であり、ドロネー三角形分割によって近似された頭皮表面上のデータセットの抽出が、非常に有効であることが確認された。
しかし、次のような問題もある。図22(a)に示すように、閾値Wの幅をデータセット間隔と同じだけ取れば、近似頭皮表面全体を抽出データセットで覆うことができるが、表7に示すように、抽出データセット数が若干多くなる。図22(b),(c)のように閾値Wの幅を狭くすれば、抽出データセット数を抑えることができるが、抽出されるデータセットの位置は均等に疎になっていくのではなく、三角形のある辺や頂点の周辺に偏ったり、三角形によっては抽出データセット数が極端に減少してしまう。抽出データセットの偏りは、工場産データセットがx,y,z軸方向に格子状に並んでいるのに対して、三角形の面が格子方向に斜めに交差していることによって生じるものと思われる。各試行で三角形No.12,13での抽出数が少なくなっていることや、Wを小さくすると縞状に抽出されたり、特定の辺や頂点に抽出が偏るのもそのためである。表7中、三角形No.は、図24に示された数字符号に基づく番号である。
Figure 0006068335
以上の結果から、前述の<データセット抽出条件>で考えた理想的な抽出データセットの条件に基づいて、次のような新たな抽出条件を考えた。ただし、サンプルに対してドロネー三角形分割を用いて頭皮表面近似を行い、その表面上のデータセットを抽出するという基本的な手法は変えない。まず、三角形の面の向きによって抽出データセット数に差が生じることを防止するため、閾値Wを設けるのではなく、三角形から各工場産データセットまでの距離cが小さいものから順に一定個数のデータセットを抽出することを考える。これにより、少なくともある特定の三角形での抽出データセット数や抽出密度が極端に減ることはなくなる。更に、ある特定の辺や頂点に抽出が偏るのを防止するため、今まで考えた抽出条件とは無関係な数値的条件を追加する。これにより、特定の辺や頂点に偏った抽出を減らすことができ、上で述べたように抽出データセット数を固定したことで減らした分を、他の位置のデータセットの抽出に回せるため、抽出データセットの偏りを軽減できる。
[疎密差調整を行った場合のデータセットの抽出]
−疎密差調整と条件設定−
<データセットの分散>
前述の特定の辺や頂点への抽出の偏りをなくすため、以下のような数値的な抽出条件を追加した。工場産データセットは、x,y,z軸方向に、それぞれ格子状に0.0025[m]間隔で並んでいるため、数25の式に示すDは必ず整数となる。このDが偶数のデータセットのみ抽出するという条件の追加を考えた。これにより、特定の辺や頂点に偏っていた抽出データセットをまんべんなく半減でき、抽出を減らした分他のデータセットの抽出に回すことができるようになる。
Figure 0006068335
<最適刺激位置姿勢近傍のデータセットの優先抽出>
上述の手法によって、偏った抽出データセットの分散ができるようになったが、これだけでは抽出の対象となる工場産データセットを半減しただけに過ぎず、2.5[mm]間隔で工場産データセットを用意した意味がなくなり、ナビゲーション精度が落ちてしまうことになる。このため、最適刺激位置姿勢の近傍だけ優先的にデータセットの抽出を行うことを考えた。
位置に関する抽出条件を数28,数29の式に示す。ここで、数28,数29の式中、添字の(f),(o)は、それぞれ工場産データセット、最適刺激位置及び姿勢を表し、添字iは工場産データセットの番号を表している。また、工場産データセットの3次元位置,最適刺激位置を、それぞれ数26,数27の式で表す。
位置に関しては、前述の「サンプル位置姿勢近傍のデータセットの抽出」で用いたものを最適刺激位置姿勢となるサンプルNo.1にだけ適用する。数28の式に示すように、x,y,zの各方向について格子1つ分だけ抽出できるよう,閾値P=0.0025とし,数29の式に示すように、頭皮内部となる−z方向に存在するデータセットの抽出は行わない。すなわち,位置に関しては最適刺激位置,上,前後左右の計6箇所での抽出を行うようにした。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
また、姿勢に関する抽出条件を数30の式に示す。姿勢に関しては、抽出条件設定にあたって簡単な実験を行なった。すなわち、頭部模型の頭頂部に磁気コイルを当て、それを少しずつ傾けて行く。このとき、どれだけ傾ければ明らかにコイル刺激面が頭皮表面方向に向いていないことがわかるかを確認した。結果的に15[deg]以上傾けると、明らかにコイル刺激面は頭皮表面方向に向いていないと分かったので、これ以上、傾いた姿勢をもつデータセットは必要性が薄いと判断した。そして、最適刺激姿勢近傍としての優先抽出は、最適刺激姿勢から±15[deg]以内とした。尚、磁気コイルの傾斜は、当該コイルに対して固定した公知の角度メータを用いて測定した。このように、磁気コイルの傾斜については、角度メータ等の公知の傾斜角測定器や公知の傾斜センサ等を用いてデータを得るようにしてもよい。
しかし、工場産データセットはroll, pitch, yaw 各成分について、2.5[deg]刻み,すなわち、±15[deg]の中に13段階もの姿勢が存在している。このため,この範囲内のデータセット全ての抽出を行うと,抽出データセット数は6×13 =13182個となり,前述の抽出データセット数目標の5000個を最適刺激位置姿勢近傍だけで大幅に超えてしまう。そこで、数30の式に示すように、抽出を各成分について、0,±2.5,±7.5,±15[deg]の7段階に限定した。
実際に、ユーザは、最適刺激姿勢よりある方向に傾いていると分かれば、それを修正しようとするが、詳細にどの程度傾いているかはユーザにとってあまり重要ではない。そのため、傾いているかどうかを判定するために、0,±2.5[deg]のデータセットを抽出し、後は傾きが少し大きい場合のために、±7.5,±15[deg]のデータセットを抽出する。これにより、最適刺激位置姿勢近傍の抽出データセット数は、6×7=2058個となる。尚、9段階以上の場合も検討したが、この場合、抽出データセット数は最低でも6×9=4374個となり、ほぼ5000個に達してしまうため、最適刺激姿勢での抽出は、各成分7段階に止めた。
Figure 0006068335
<抽出データセット数の固定>
前述の試行結果で問題のあった、三角形ごとの抽出データセット数の偏りをなくすため、閾値を設けるのではなく、パラメータcが小さいものから順に一定個数のデータセットを抽出する手法に切り替えた。これにり、次のようなメリットが得られる。
・三角形間のデータセット抽出数の意図しない偏りをなくせる
・他の条件(姿勢など)をどう設定しても、抽出データセット数を固定できる
・三角形ごとに抽出データセット数を調整することで自在に疎密差を操作できる
全体の抽出データセット数は前述のように5000個とし、最初に、前述の数30の式に関連して説明したような最適刺激位置姿勢近傍のデータセット2058個の抽出を行い、残り2942個を各三角形で分配して、各三角形の抽出データセット数を決定するようにした。
実際のプログラムでは、閾値Wを少し大きめに設定し、条件を満たすデータセットを、クイックソート法を用いてパラメータcの小さい順に並び替え、配列の先頭から一定数のデータセットだけ抽出するという処理を行なった。クイックソート法は、並び替える要素内に同値のものが存在した場合の並び替え方が一定でない、いわば不安定ソートであるが、データセット抽出での使用において不都合はないため、平均的に処理時間が最も短いこの手法を採用した。また、最適刺激位置に近い三角形ほど抽出データセット数が多くなるように疎密差をつけるために、各三角形ごとの抽出データセット数は、三角形の面積に比例し、最適刺激位置から重心までの距離に反比例するように分配した。
<姿勢に関する抽出条件>
上述の手法によって抽出データセット数を固定したことにより、姿勢に関する抽出条件を変化させても抽出データセット数に影響しなくなった。そこで、今まで余り考慮しなかった姿勢に関する抽出条件を考える。
前述のように、磁気コイルが頭皮表面方向を向くかどうかは pitch, yaw が関係するため、pitch, yaw は今までと同様に1通りしか抽出せず、roll のみを数パターン抽出するようにした。
pitch, yaw に関しては、数31,数32の式に示すように、分割された三角形のpitch, yaw の平均値に最も近い姿勢のみを抽出した。ここで、添字の(f),(s),(a)はそれぞれ,工場産データセット,サンプル・データセット,分割された三角形を構成するサンプル3点の平均を表し、iは工場産データセットの番号,jは分割された三角形の番号,jの後の数字は三角形の頂点の番号を表す。
roll に関しては、数33の式に示す整数D’が3の倍数の場合のみに抽出を行う。すなわち、7.5[deg]間隔で抽出を行う。ここに、抽出条件として3の倍数としたのは、偶数の倍数とした場合、前述の<データセットの分散>の説明で述べた抽出条件によってx,y,zの組み合わせが限定されており,あらゆる roll が均等に抽出されなくなってしまうことと、5以上の倍数とした場合には、1つの位置に対する抽出データセット数が減りすぎてしまうためである。
以上、説明した抽出条件で抽出を実行する。抽出プログラムの流れを図26に示す。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
<抽出結果>
抽出されたデータセットの位置を、グラフ作成ツールGNUPLOT を用いてプロットしたものを図25に示す。また、全体と各三角形ごとの抽出データセット数を表8に示す。
Figure 0006068335
特定の三角形,辺,頂点へのデータセットの偏りについて考察すれば、図25から、まだ若干抽出に穴がある部分が存在するが、全体的に特定の辺や頂点への抽出の偏りを軽減できていることが分かる。また、表8から、最適刺激位置に近い三角形に多めにデータセットを抽出できていることが分かる。更に、前述の表7では三角形12,13における抽出だけが極端に少なかったが、今回は(表8では)、他の三角形と比較して極端にデータセット抽出数の少ない三角形はなくなっている。
また、抽出データセットの分布図を図27及び図28に示す。図27(a)〜(c)は、前述の図23(a)〜(c)と同様に、半径r=√(x+y+z)と最適刺激位置からの距離で、抽出データセットを分類したものである。図27(a),(b)の縦軸は抽出データセット数であり、図27(c)の縦軸は、抽出データセット数を対象範囲の体積で割った抽出密度である。
図28(a)〜(c)は、roll, pitch, yaw の各成分で抽出データセットを分類したもので、縦軸が抽出データセット数であり、横軸は、姿勢の値を[deg]で表したものである。ただし、pitch, yaw に関しては、実際のデータセット中の値ではなく、磁気コイルが頭皮表面に向く姿勢を0(ゼロ)としたときの相対的な値であり、実際のデータセット中の値であるPitch, Yaw によって表される数34,数35の式に示す値である。また、図27,図28の棒グラフにおいて、実線のハッチングは最適刺激位置姿勢で優先的に抽出したデータセット、破線のハッチングは、ドロネー三角形分割による頭皮表面近似後に抽出したデータセットである。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
図23に示した抽出結果と同様に、図27(a)から、半径r=9[cm]の球形である仮想患者の頭皮表面に沿ったデータセットを抽出できていることが分かる。また、図27(c)から、最適刺激位置姿勢近傍での優先抽出を行なったことにより、図23(c)の場合よりも更に最適刺激位置近傍のデータセットを多く抽出できていることが分かる。また、図28(a)から、優先抽出されたデータセットを除いて、さまざまなroll値をもつデータセットが均等に抽出されていることが分かる。図28(b),(c)からは、頭皮表面に向く姿勢をもつデータセットを中心に抽出できていることが分かる。
以上の結果から,この抽出条件であれば、前述の<データセット抽出条件>で述べた、ナビゲーションに必要と思われるデータセット群が満たす条件に沿った抽出ができることが確認された。
尚、以上の実施形態では、工場産データセットは、表2に示すCPU(中央演算処理装置)を搭載し、同じく表2に示す使用ソフトウェア等を実装したコンピュータによって生成するようにしていたが、この代わりに、従来のデータセット収集手法と同様に、光学式トラッキングシステム等の3次元計測システムと磁気センサとの同時計測により、工場産データセットを収集するようにしてもよい。
以上の説明では、大量に収集された工場産データセットから、個々の患者毎に、最適刺激位置及び姿勢に対応した磁気コイルの3次元位置及び姿勢を得るのに必要な適正範囲のデータセット(患者毎の「カスタムデータセット」)を抽出するに際して、病院で医師が患者の頭皮表面から収集する限られた数のサンプル磁場データ(具体的には、その模擬サンプル)から頭皮表面の形状を推測し、その表面に沿ったデータセットの抽出を行うに際して、サンプルから頭皮表面形状を推測するために、所謂、ドロネー三角形分割を用いるようにしていた。
このようなサンプルから頭皮表面形状を推測する方法としては、前記ドロネー三角形分割を用いて頭皮表面に近似する手法に限られることはなく、他の形状を利用した手法も適用可能である。
例えば、三角形群よりも頭部形状に似た形状としては楕円体があり、これを利用するものとして、楕円体近似に基づく手法が考えられる。次に、この「患者頭部の楕円体近似に基づく手法」を用いて、頭皮表面の形状を推測し、その表面に沿ったデータセットを抽出する方法について説明する。
尚、以下に説明するデータセット抽出方法においては、工場産データセットを収集するに際し、光学式トラッキングシステム等の3次元計測システムと磁気センサとの同時計測により工場産データセットを収集する、従来のデータセット収集手法を採用した。
[患者頭部の楕円体近似]
1つの楕円体を決定するのに必要なパラメータは、楕円体の中心座標(x,y,z)と、各軸方向の半径a,b,cの6個であり、これらのパラメータを用いて、楕円体は、数36の式で表すことができる。
Figure 0006068335
病院で医師が収集したサンプルに対して最も誤差の小さい楕円体のもつ6個のパラメータを、最小二乗法を応用して求める。近似楕円体を数36の式で表すとして、各サンプルの3次元位置を(x,y,z)、サンプル数をn、各サンプルの位置と近似楕円体との誤差となるパラメータをεとし、このパラメータεを数37で表される式のように定義する。このとき、数38の式で表されるΨの値が最小となる楕円体の6個のパラメータ(x,y,z,a,b,c)を求める。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
パラメータを線形化するために、以下のように変数変換を行うと、数37の式は数39の式に書き換えられる。
・A=1/a
・A=−2x/a
・B=1/b
・B=−2y/b
・C=1/c
・C=−2z/c
・D=(x /a)+(y /b)+(z /c
そして、数40の式が成立するように、線形化パラメータ(A,A,B,B,C,C,D)を求める。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
連立方程式にすると、数41の式が得られるが、このまま解を求めると、
=A=B=B=C=C=0,D=1
となってしまうので、移項して数42の連立方程式とする。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
数42の式で表される連立方程式をガウスの消去法を用いて解き、得られた線形化パラメータ(A,A,B,B,C,C,D)を再び元の楕円体パラメータ(x,y,z,a,b,c)に変換する。まず、近似楕円体の中心座標(x,y,z)は、線形化パラメータ(A,A,B,B,C,C,D)の前述の変数変換式に基づいて、数43,数44,数45の各式で表される。更に、各軸方向の半径a,b,cは、数46,数47,数48の各式で表される。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
以上のようにして求めた頭部形状近似楕円体モデルを基準として、各工場産データセットの3次元位置成分(x,y,z)を極座標(r,θ,φ)に変換して、対象とする工場産データセットがナビゲーションに必要かどうかを判定する。極座標変換は、数49,数50,数51の各式で表される関係を用いて行うことができる。
Figure 0006068335
Figure 0006068335
Figure 0006068335
数49の式において、r=1であれば、数36の式と一致し、対象とする工場産データセットがちょうど近似楕円体上に存在していることを示す。また、r<1であれば対象とする工場産データセットが頭の内部に存在していることを示し、更に、また、r>1であれば対象とする工場産データセットが頭の外部に存在していることを示す。
数50の式および数51の式で示すパラメータ(θ,φ)は、頭皮表面上における直交座標を表し、最適刺激位置となるデータセットの(θ,φ)の値に近いほど、対象とする工場産データセットが最適刺激位置に近い位置に存在することを示す。
抽出データセット選択の流れを図29に示す。図9において、iは工場産データセットの番号であり、rは、数49の式を満たす値である。各工場産データセットについて(1−r)の絶対値を求め、この絶対値を例えば昇順に並べて、小さいものから順に500個のデータセットを抽出するようにした。
[磁場式ナビゲーションシステムの精度評価]
経頭蓋磁気刺激療法による治療効果を確実なものとするためには、最適刺激位置に対応するターゲット部位に対する治療用コイルの磁界的中心位置の偏差を5[mm]以内とし、最適コイル姿勢(ロール角,ピッチ角,ヨー角)に対する治療用コイルの姿勢の偏差を5[deg]以内とすることが求められる。
磁場式ナビゲーションシステムの実用化に向けて、ナビゲーション完了時の位置決め精度という観点から、システムとしてのトータルの精度評価を実施した。具体的には、コイルの最適刺激位置を「ターゲット」、ナビゲーション完了時の実際のコイルの位置を「実測値」、データセットを用いてシステムが推定したナビゲーション完了時のコイルの位置を「推定値」と称するものとし、以下の4点の検証を行った。
イ)実測値とターゲットの偏差(システムのナビゲーション精度)
ロ)実測値と推定値の偏差(ナビゲーション完了時のシステムの計測精度)
ハ)データセット数がナビゲーション精度にもたらす影響
ニ)刺激コイルによる磁場の印加がセンサにもたらす影響
なお、ターゲット及び実際のコイルの位置(実測値)は、光学式3次元計測装置Polarisにより計測した(すなわち、磁場式ナビゲーションシステムの精度評価用のシステムとしてPolarisを用いた)。また、ナビゲーションは、「距離誤差1[mm]以内、角度誤差5[deg]以内」の設定で実施した。
[刺激位置決めシステム]
<コイル位置決めシステム(患者頭部の楕円体近似に基づく方法)>
「楕円体近似を用いたデータセット抽出手法」と、前述の「ドロネー三角形分割を用いたデータセット抽出手法」それぞれにおいて、抽出データセット位置をプロットすることによる視覚検証と、抽出したデータセットを用いての頭部模型上でのナビゲーションによる実践検証を実施し、両者の性能を比較する実験を行った。
視覚検証では、まず、磁気センサ4個(愛知製鋼製AMI302)を用いて、工場産データセットを15,000個、頭部模型の表面から取得したサンプルを30個用意した。その中からデータセット抽出に使用するサンプルをランダムに10個選択し、それぞれの手法で同一のサンプルを用いて、同一の工場産データセットから500個のデータセットを抽出する実験を行った。ランダムに変化するサンプルの配置による抽出データセットの影響を手法ごとに比較した。
図30は、任意のサンプル10個を用いたデータセット抽出結果の一例を3次元的にプロットしたものである。図30(a)は楕円体近似を用いた場合を示し、図30(b)はドロネー三角形分割を用いた場合を表しており、左が上面図、右が側面図である。使用した工場産データセットおよびサンプルはどちらも同じである。
この一例では、データセット抽出結果を比較すると、プロットした図からは大きな差異は認められないものの、ドロネー三角形分割での結果には若干の抽出の偏りがある。また、楕円体近似の方が、より頭部形状にフィットしたデータセットを抽出できている傾向がある。
図31は、サンプルの配置をランダムに変化させた場合のデータセット抽出結果(計3パターン)を図示したものである。ドロネー三角形分割の場合、サンプルの配置の影響が比較的大きいのに対して、楕円体近似の場合には、図31(b)に示すように、サンプルの配置による影響が非常に小さかった。この結果より、楕円体近似に基づく方法は、ドロネー三角形分割を用いる方法よりもサンプルの配置に自由度をもたせることができ、初診時の医師の負担をより大きく軽減できる(医師が適当にサンプルを収集しても常に安定した抽出結果が得られ易い)と言える。
また、実践検証においても、楕円体近似の場合の方がナビゲーションをスムーズに行うことができた。ドロネー三角形分割の場合では、サンプルの位置から離れたところでは、適切なデータセットが抽出されていないために刺激コイルの位置を把握できない場合もあった。なお、どちらの場合も最適刺激位置近傍のデータセットは優先的に抽出しているため、最終的なナビゲーション精度は変わらないことに留意すべきである。
<磁場式ナビゲーションシステムの精度評価>
[実験1]ナビゲーション終了時の計測精度とナビゲーション精度の評価
正常な4個の磁気センサ(愛知製鋼製AMI302)を用い、同一の最適刺激位置に対して、「距離誤差1[mm]以内、角度誤差(ロール・ピッチ・ヨー角それぞれ)5[deg]以内」という共通の終了条件の下で、次のようなプロセスで、合計13回のナビゲーション実験を実施した。
イ)データセットを手動で500個収集(パターン1)した後、このパターン1のデータセットを用いてナビゲーションを5回実施
ロ)データセットを手動で500個収集(パターン2)した後、このパターン2のデータセットを用いてナビゲーションを5回実施
ハ)データセットを手動で500個収集(パターン3)した後、このパターン3のデータセットを用いてナビゲーションを3回実施
以上の各ナビゲーションについて、光学式計測装置Polarisを用いて、最適刺激位置(ターゲット:各試行共通)及び各ナビゲーション終了後のコイルの3次元位置姿勢(実測値)を計測した。また、データセットを用いてシステムが推定したナビゲーション完了時のコイルの3次元位置姿勢(推定値)も試行ごとに記録した。
実験結果を図32に示す。図32(a)は実測値と推定値の偏差を示し、図32(b)は実測値とターゲットの偏差を示している。尚、図32(b)における括弧内の数値は、システムが推定したターゲットとの距離(単位[mm])である。ナビゲーションの終了条件が「誤差1[mm]以内」であるので、この数値は常に1[mm]以下となることに留意すべきである。
13回の全ての試行において、実測値と推定値の偏差(つまり、ナビゲーション終了時の計測精度)は4[mm]以内であり、実測値とターゲットの偏差(つまり、距離誤差についてのナビゲーション精度)も5[mm]以内であった。また、図32(a)及び(b)においては図示していないが、角度誤差についてのナビゲーション精度も、全ての試行においてロール角,ピッチ角およびヨー角の何れも、5[deg]以内であった。
以上のように、本実施形態によれば、距離誤差および角度誤差の何れについても、経頭蓋磁気刺激療法による治療効果を確実なものとするために必要とされるナビゲーション精度が達成されていることが確認された。
データセット収集が手動のため学習効果が見られ、パターン1よりもパターン2の方が、また、パターン2よりもパターン3の方が、距離誤差,誤差分散ともに低減される傾向にあった。
500個のデータセット抽出は、実際には、楕円体近似を用いた手法等によりシステムが自動抽出することが想定されるため、パターン3並みのナビゲーション精度(距離誤差2[mm]以内)が期待される。
[実験2]データセット数がナビゲーション精度にもたらす影響ならびに刺激コイルによる磁場の印加が磁気センサにもたらす影響の検証
磁気センサ上に刺激コイルを載せることによって、予め刺激コイルにより磁場を印加した磁気センサ1個を含む計4個の磁気センサ(愛知製鋼製AMI302)を用い、同一の最適刺激位置に対して、「距離誤差1[mm]以内、角度誤差(ロール角,ピッチ角,ヨー角それぞれ)5[deg]以内」という共通の終了条件の下で、次のようなプロセスで、2回のナビゲーション実験を実施した。
イ)データセットを手動で200個収集した後、同データセットを用いてナビゲーションを1回実施
ロ)データセットを手動で500個収集した後、同データセットを用いてナビゲーションを1回実施
光学式計測装置Polarisを用いて、最適刺激位置(ターゲット:各試行共通)及び各ナビゲーション終了後のコイルの3次元位置姿勢(実測値)を計測した。また、データセットを用いてシステムが推定したナビゲーション完了時のコイルの3次元位置姿勢(推定値)も試行ごとに記録した。
[実験結果]
データセット200個を手動収集した場合には、距離誤差(実測値とターゲットの偏差)は5.30[mm]、500個を手動収集した場合には、距離誤差は2.11[mm]であった。角度誤差については、何れの条件においても、ロール角,ピッチ角およびヨー角の全てについて、誤差5[deg]以内であった。
上記の結果より、刺激コイルで磁場を印加した磁気センサも他の磁気センサと同様、正常に動作しているものと思われる。ただし、本実験の場合、データセット200個では「距離誤差5[mm]以内」を達成することは困難であり、ナビゲーションにおけるデータセット数としては不充分であることが示唆された。データセット数は、500個あるいはそれ以上であることが望ましい。
本実施形態では、データセット型磁場ナビゲーションシステムにおいて、医師の負担になる恐れのあった,患者ごとのデータセット収集のプロセスでの手間を大幅に軽減するために、工場産データセットという、どの患者にも対応できると思われるデータセット群を予め大量に用意しておき、特定の患者の頭皮表面から得た磁場のサンプルの情報を用いて、その患者でのナビゲーションに必要なデータセットを抽出するようにした。
様々な抽出結果から、中でもドロネー三角形分割を用いた近似頭皮表面上のデータセット抽出が非常に有効であり、他にもいくつかの条件を組み合わせることで、ナビゲーションに必要と思われるデータセット群の抽出を行えることを確認した。
また、患者の頭皮表面形状の近似を楕円体近似に基づいて行うことで、ドロネー三角形分割を用いた近似頭皮表面上のデータセット抽出と同等もしくはそれ以上に有効なデータセット抽出が行えることも確認した。
また、以上の実施形態は、基本的には、固定された患者頭部に対し磁気コイルを操作して相対変位させるものであったが、この代わりに、磁気コイルを固定しておき、この固定された磁気コイルに対し患者の頭部を相対変位させるように構成することもできる。或いは、患者頭部と磁気コイルの両者が動作して相対変位する場合でも、本発明を有効に適用することができる。
その実施形態の一例として、特に、在宅での治療時における最適刺激位置への位置決め手順を例示すれば、次の通りである。
まず、これまでの実施形態と同様に、磁場検出手段としての磁場センサを、眼鏡などの固定手段を用いて患者の頭部に固定する。一方、磁気コイルを、頭部のおおまかな刺激位置(例えば、一次運動野に相当する領域)に相対するようにホルダ固定具で固定する。以上のセッティング完了後は、最適刺激位置に合うように、患者が自らの頭部を移動させることになる。そして、これまでの実施形態と同様に、磁気コイルの最適刺激位置および姿勢からの偏差(ずれ)が検出される。
この場合、ユーザ・インタフェース部は、患者が自らの頭部をどのように移動すべきかを報知する。つまり、磁気コイルが最適位置および姿勢となるように、患者の頭部移動をナビゲーションする。このプロセスを通じて、これまでの実施形態と同様、最適刺激位置での治療が可能となる。
尚、患者が自らの頭部を移動させると共に磁気コイルも併せて変位操作するようにしてもよい。この場合には、ユーザ・インタフェース部が、磁気コイルの変位操作の誘導のための報知手段と患者の頭部の移動の誘導のための報知手段として機能することで、磁気コイルの最適刺激位置および姿勢への効果的なナビゲーションを行うことが可能になる。
更に、以上の実施形態は、全て、患者の頭皮表面に配置した磁気コイルにより、脳内神経に磁気刺激を加えて神経障害性の疼痛を緩和する経頭蓋磁気刺激療法に用いる場合についてのものであったが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、他の磁気刺激用途においても、有効に適用できるものである。
このように、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更や設計上の改良等を行い得るものであることは、言うまでもない。
本発明は、磁場を対象者の特定部位に作用させて磁気刺激を与えるための治療用磁気刺激装置に関するもので、例えば、患者の頭皮表面に配置した磁気コイルにより例えば脳内神経に磁気刺激を加える経頭蓋磁気刺激治療法に用いる装置として、また、該装置にて用いられるカスタムデータ対を対象者ごとに生成する方法として、有効に利用することができる。
10 経頭蓋磁気刺激装置
11 磁気コイル
12 コイルホルダ
13 磁場センサ
14 眼鏡
16 磁気刺激制御装置
20 データセット解析ユニット
22 信号解析部
23 記録部
24 比較部
25 ユーザ情報出力部
28 ユーザ・インタフェース部
M 患者

Claims (7)

  1. 磁場を対象者の頭部特定部位に作用させて磁気刺激を与えるための治療用経頭蓋磁気刺激装置であって、
    治療用磁場発生手段と、
    前記治療用磁場発生手段、または前記治療用磁場発生手段に取り付けられて検出用磁場を発生する検出用磁場発生手段が生成する磁場について、少なくとも2つの検出位置における複数方向の各成分強度を検出するため、対象者に対して特定の相対位置となるようそれぞれ配置された磁場検出手段と、
    (a)前記治療用磁場発生手段または前記検出用磁場発生手段の少なくとも3次元位置の情報と、(b)前記3次元位置にある前記治療用磁場発生手段または前記検出用磁場発生手段が生成する磁場を前記磁場検出手段が検出した各成分の強度である記録成分強度の情報と、を対にした複数のデータを母データ対として予め記録した記録手段と、
    治療用磁場発生手段、または前記検出用磁場発生手段を対象者の前記頭部特定部位近傍の複数のサンプリング箇所にそれぞれ位置させた状態で、前記磁場検出手段が行ったサンプリング強度の検出の結果である第1サンプリング成分強度を用いて、前記予め記録された母データ対から対象者の頭皮表面形状を近似し、この近似した頭皮形状に近い複数のデータ対であるカスタムデータ対を対象者ごとに抽出する、データ抽出手段と、
    前記磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に前記磁場検出手段が検出した磁場の強度である第2サンプリング成分強度を前記抽出されたカスタムデータ対と対比参照して、前記治療用磁場発生手段の最適刺激位置からの偏差を検知し、前記治療磁場発生手段を用いて行うべき変位操作の教示情報を生成する手段、とを備えたことを特徴とする治療用経頭蓋磁気刺激装置。
  2. 前記抽出されたカスタムデータ対の数を、500個以上5000個以下としたことを特徴とする、請求項1に記載の治療用磁気刺激装置。
  3. 磁場を対象者の頭部特定部位に作用させて磁気刺激を与えるための治療用経頭蓋磁気刺激装置であって、
    治療用磁場発生手段と、
    前記治療用磁場発生手段、または前記治療用磁場発生手段に取り付けられて検出用磁場を発生する検出用磁場発生手段が生成する磁場について、少なくとも2つの検出位置における複数方向の各成分強度を検出するため、対象者に対して特定の相対位置となるようそれぞれ配置された磁場検出手段と、
    (a)前記治療用磁場発生手段または前記検出用磁場発生手段の少なくとも3次元位置の情報と、(b)前記3次元位置にある前記治療用磁場発生手段または前記検出用磁場発生手段が生成する磁場を前記磁場検出手段が検出した各成分の強度である記録成分強度の情報と、を対にした複数のデータを母データ対として予め記録した記録手段と、
    前記治療用磁場発生手段、または前記検出用磁場発生手段を対象者の前記頭部特定部位近傍の複数のサンプリング箇所にそれぞれ位置させた状態で、前記磁場検出手段が行ったサンプリング強度の検出の結果である第1サンプリング成分強度を用いて、前記予め記録された母データ対から対象者の頭皮表面形状を近似し、この近似した頭皮形状に近い複数のデータ対であるカスタムデータ対を対象者ごとに抽出する、データ抽出手段と、
    前記抽出されたカスタムデータ対と、前記磁気刺激に先立って若しくは磁気刺激中に前記磁場検出手段が検出した磁場の強度である第2サンプリング成分強度とを用いて、前治療用磁場発生手段を前記頭部特定部位への磁気刺激のための位置まで移動させる移動手段を有するよう構成された場合の、前記移動制御のための情報、を生成する情報生成手段を更に備えることを特徴とする治療用経頭蓋磁気刺激装置。
  4. 前記データ抽出手段が前記カスタムデータ対の抽出に際して行う、対象者の頭皮表面形状の近似はドロネー三角形分割に基づいて行われることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の治療用経頭蓋磁気刺激装置。
  5. 前記データ抽出手段が前記カスタムデータ対の抽出に際して行う、対象者の頭皮表面形状の近似は楕円体近似に基づいて行われることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の治療用経頭蓋磁気刺激装置。
  6. 前記記録成分強度、前記第1サンプリング成分強度、および前記第2サンプリング成分強度は位置情報と角度情報とを検出するものであり、前記磁場検出手段は、対象者に対して特定の相対位置及び相対角度となるよう配置され、前記母データ対は、(a’)前記治療用磁場発生手段または検出用磁場発生手段の3次元位置及び傾斜角度情報と(b’)前記位置及び傾斜角度における前記記録成分強度の情報とを対にしたものであり、前記データ抽出手段は、前記治療用磁場発生手段または検出用磁場発生手段の位置及び傾斜角度の情報を導出するためのカスタムデータ対を対象者ごとに生成することを特徴とする、請求項1から5の何れかに記載の治療用経頭蓋磁気刺激装置。
  7. 前記記録成分強度、前記第1サンプリング成分強度、および前記第2サンプリング成分強度は位置情報を検出するものであり、前記磁場検出手段は、対象者に対して特定の相対位置及び相対角度となるよう配置され、前記母データ対は、(a’)前記治療用磁場発生手段または検出用磁場発生手段の3次元位置情報と(b’)前記位置における前記記録成分強度の情報とを対にしたものであり、前記データ抽出手段は、前記治療用磁場発生手段または検出用磁場発生手段の位置の情報を導出するためのカスタムデータ対を対象者ごとに生成し、前記治療用磁場発生手段の傾斜角度の検出は、前記磁場の発生および検出とは別途に、治療用磁場発生手段の傾斜角度を測定する測定手段によって行われることを特徴とする、請求項1から5の何れかに記載の治療用経頭蓋磁気刺激装置。
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