以下、本発明について図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエアフィルタを示す。図1に示すように、エアフィルタ10は、濾材パック11と、濾材パック11を取り巻くように配置される枠状部材12とを備える。
枠状部材12は、矩形又は方形の四角枠形状を呈する枠本体14と、枠本体14の一方の開口側の端面の外縁部から全周にわたって外周側に突出するフランジ部(突出部)15を備える。フランジ部15は、枠本体14に垂直に連設される四角枠形の板状の部材であり、枠本体14の端面とともに、枠状部材12の一方の開口側の端面を構成する。枠本体14及びフランジ部15は、エラストマーによって一体に形成された弾性体である。
濾材パック11は、ガラス繊維等から成る濾紙や、ポリエステル等の不織布から成るシート状濾材がひだ折りされ、直方体に形成される。濾材パック11の各側面を構成する端部11A〜11Dは、枠本体14の各辺に埋設されつつ接着され、これにより、枠本体14は、全周にわたって、濾材パック11の外周に接着されることになる。
弾性体である枠状部材12(すなわち、枠本体14及びフランジ部15)の硬度は、20〜80度、好ましくは40〜80度である。枠状部材12の硬度がこのような範囲となることにより、後述するようにフランジ部15によってエアフィルタ10と当たり面との間の気密性を確保することが可能になるとともに、枠本体14に一定の強度を持たせることが可能になる。なお、本明細書において硬度とは、JIS K6253に準拠にして測定するアスカーA型である。
図2は、本実施形態に係るエアフィルタが適用されたファンフィルタユニットを示す。ファンフィルタユニット20は、ケーシング(ケース部材)21と、ケーシング21の内部に配置されるエアフィルタ10及びファン(送風機)22を備える。ケーシング21は、天井面23に設けられた開口23Aを上から塞ぐように、天井面23に取り付けられる。
ケーシング21は、下方が開口した四角形の箱体であって、その上面21Aの中央に通風口21Bがある。また、ケーシング21は、その下端から全周にわたって外周側に垂直に突出するケースフランジ部25を備える。
ケーシング21内部において、通風口21Bの下方にファン22が配置され、そのファン22の下方にさらにエアフィルタ10が配置される。そして、ファン22が回転されると、外気が通風口21Bから導入され、この導入された外気がエアフィルタ10で浄化された上で、開口23Aを通って天井面23下方の室内に流される。
エアフィルタ10は、枠状部材12の一方の開口側の端面を構成するフランジ部15が、天井面23の開口23A周縁に当接するように、天井面23上に載置される。ケーシング20は、ケースフランジ部25がフランジ部15に当接するように、フランジ部15の上に載置される。また、ケーシング20は、箱体の各側面の内周面が枠本体14の四辺の外周面それぞれに沿うように配置される。ケーシング20及びエアフィルタ10は、ケースフランジ部25及びフランジ部15のネジ穴25H、15Hに通されたネジ26により、天井面23に取り付けられる。
本実施形態では、枠状部材12(すなわち、フランジ部15)は、弾性体で構成されるため、フランジ部15はガスケットとしての役割を果たす。すなわち、弾性を有するフランジ部15は、その全周にわたって、ケースフランジ部25によって天井面23に押さえ付けられることにより、ケースフランジ部25及び天井面23に密着し、これらの間をシールして空気が漏洩するのを防止する。
図3〜5は、本実施形態に係るエアフィルタの製造方法を説明するための図である。本実施形態に係るエアフィルタ10は、図5に示すように矩形又は方形の四角枠形状の枠状型30が使用されて成形される。以下、まず枠状型30の構造を説明する。
図5に示すように、枠状型30は、四角形の各辺を構成する第1〜第4の枠部材31〜34を組み立てたものである。第1〜第4の枠部材31〜34はそれぞれ、その長手方向における一端31A〜34Aの端面が、隣接する第2〜第4及び第1の枠部材32〜34、31それぞれの他端32B〜34B、31Bの内面に突き合わされ、隣接する枠部材に接続される。
第1の枠部材31は、図3に示すように、枠状型30の内周面を構成する一面(内面)41に溝42が設けられたものである。溝42は、第1の枠部材31の長手方向に沿って延在する。溝42は、枠状部材12の一辺を成形するものであり、枠状部材12(図1参照)の一辺に対応した形状を有する。そのため、溝42は、その幅方向における一端側が、フランジ部15を成形するために、他の部分より凹んだ凹部43となる。
溝42は、第1の枠部材31において一端31Aの端面31Cまで延在し、端面31Cにおいて開口する一方、他端31Bの端面までは延在しない。また、他端31B側の溝42の端部においては、凹部43が設けられた幅方向における一端側が、他の部分より、長手方向に延出し延出部44となる。延出部44は、凹部43とともにフランジ部15を成形するためのものである。なお、第2〜第4の枠部材32〜34は、第1の枠部材31と同様の形状を有するので、その説明は省略する。
各枠部材31〜34の一端31A〜34Aが、隣接する枠部材32〜34、31の他端32B〜34B、31Bに接続するとき、それら枠部材に設けられた溝42、42同士も接続し、これにより、枠状型30の内周面には、全周にわたって溝が延在することになる。そして、後述するように、その溝内部に充填された注型材料によって、枠状部材12(図1参照)が成形される。また、溝42、42同士が接続するとき、他端31B〜34B側の延出部44は、一端31A〜34A側の端面に開口する凹部43に接続し、これにより、図1に示すように、枠状部材12には、その全周にわたってフランジ部15が設けられる。
次に、本実施形態に係るエアフィルタの製造方法を説明する。本製造方法では、まず図3に示すように、第1の枠部材31の溝42の内部に注型材料50が注入されるとともに、溝42の内部に濾材パック11の端部11Aが挿入される。
次いで、図4に示すように、第2の枠部材32の溝42内部に、注型材料が注入されるとともに、端部11Aが第1の枠部材31に挿入された濾材パック11の端部11Bが、第2の枠部材32の溝42内部に挿入される。そして、第1の枠部材31の一端31Aが、第2の枠部材32の他端32Bに接続され、これら一端31Aと他端32Bが、不図示のネジによって固定される。
このとき、濾材パック11の端部11A、11Bは、その隙間に注型材料50が浸入されて、注型材料50の内部に埋設されたような状態となる。また、濾材パック11は、溝42の内部において、端部11A、11Bが溝42の底面42Dから離間するように適宜保持される。これにより、エアフィルタ10において、濾材パック11の端部11A、11Bは、枠本体14の内部に埋設されるようにして枠本体14の内周に接着されるとともに、濾材パック11が枠本体14の外周面に露出することが防止される。
各枠部材の溝42内部に注入される注型材料は、揺変性(チキソトロピー)を有するものである。揺変性とは、力が加えられ変形が続いている間は高い流動性を示すが、静止した状態では大きな力が加わらなければ流動しない性質をいう。揺変性を有する接着剤としては、例えば、公知の硬化型エラストマーに、揺変性を発現させるために、公知の揺変剤が加えられたものである。なお、硬化型エラストマーとしては、硬化後に弾性を有するものであり、例えばウレタン、シリコーン等が使用される。
図4において濾材パック11は、第1の枠部材31に対して移動しないように適宜保持される。これにより、濾材パック11は、枠部材31の溝42内部の注型材料50に大きな力を与えず、注型材料50に実質的に流動性を発現させない。そのため、図4に示すように、濾材パック11の端部11Bが、第2の枠部材32の溝42内部に挿入されるとき、第1の枠部材31は例えば直立した状態となり、枠部材31の溝42の開口は下向き及び横向きにされるが、溝42内部の注型材料50は流動せず、垂れたりすることはない。
上記工程が繰り返され、第3及び第4の枠部材33、34の溝42、42内部に、上記した注型材料が注入されつつ濾材パック11の端部11C、11Dが挿入されるとともに、第1〜第4の枠部材31〜34から枠状型30が組み立てられる。これにより、濾材パック11は、その外周が全周にわたって溝42内部に挿入され、かつ、図5に示すように枠状型30の内側に配置された状態となる。また、枠状型30の内周面の溝には、全周にわたって注型材料50が注入されることになる。
図5の状態では、枠状型30の溝の開口は横向きになるが、溝内部の注型材料は、実質的に流動しない状態に保たれ、垂れたりすることはない。なお、図5の状態において、濾材パック11は、その端部11A〜11Dが例えば溝42の側面42E(図3、4参照)に支持され、下方に移動されることはない。ただし、濾材パック11は、その下側に設けられた支持部材(不図示)によって支持されても良い。
その後、図5の状態で、必要に応じて加熱等されることにより注型材料が硬化され、濾材パック11が注型材料50に一体化される。硬化された注型材料は、四角枠形状の枠状部材12(図1参照)を構成する。次いで、ネジ(不図示)が外されて、枠状型31が第1〜第4の枠部材31〜34に分解され、これにより、注型材料50と一体となった濾材パック11が枠状型30から離型され、図1に示すエアフィルタ10が得られる。
以上のように、本実施形態では、濾材パック11を支持する枠状部材12が弾性体で構成される。そのため、ガスケットを別途設けなくても、枠状部材12自体を取付部(天井面)の当たり面に密着させることにより、エアフィルタ10と取付部との間の気密性を確保することが可能になる。なお、枠状部材12が別部材であるガスケットを介さずに取付部に密着されるため、シール面は一面となり、シール性は向上されやすくなる。また、枠状部材12が板部材ではなく注型材料によって成形されるので、枠状部材12を安価に製造できるとともに、枠状部材12と濾材パック11との間のシール性を確保するために、別途シール材を用いる必要もない。
さらに、本実施形態では、枠状部材12にはフランジ部15が設けられ、そのフランジ部15が、枠状部材12の外周側に配置されるケースフランジ部25によって押さえ付けられて気密性が確保される。そのため、濾材パック11を支持する枠本体14自体は、ケーシング21によって押さえ付けられず変形等することがないので、濾材パック11は枠本体14によって安定的に支持される。
次に、図6、7を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係るエアフィルタは、小型フィルタであって、マスク用に使用されるものである。マスクは、吸気エアを浄化するための吸気用マスクであり、例えば防毒、防塵マスクである。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。
図6に示すように、本実施形態に係るエアフィルタ60は、丸形の小型フィルタであって、円柱形の濾材パック61と、エラストマーから形成され弾性体である枠状部材62とを備える。枠状部材62は、濾材パック61を取り巻くように配置される円筒状の枠本体64とフランジ部65とを有する。フランジ部65は、枠本体64の一方の開口側の端面から、全周にわたって外周側に突出するものであり、円環状を呈する。
枠状部材62の硬度は、第1の実施形態と同様に20〜80度であるが、本実施形態では、マスク用で使用される小型のフィルタであるため、硬度は比較的低くても良く、好ましくは20〜40度である。なお、エアフィルタ60は、ここで説明した以外の構成は、第1の実施形態に係るエアフィルタと同様であり、その説明は省略する。
図7に示すように、顔面に装着されるマスクの保護具本体52には、外周面に雄ネジ部がある円筒状の取付部53が設けられる。取付部53の先端面53Aは、エアフィルタ60が押し当てられて取り付けられるための当たり面となる。
エアフィルタ60は、ケース部材71の内部に収納されて、ケース部材71とともに、エアフィルタユニット70を構成する。ケース部材71は、図7に示すように、一方の端部が開口73とされるとともに、他方の端部に不図示の通気口がある底部72が設けられた有底の筒状部材である。なお、底部72の通気口を通気した空気は、エアフィルタ60で浄化されたうえで、保護具本体52側に通気される。
ケース部材71の筒状部71Dは、底部72側に配置された円筒状の小径部71Aと、小径部71Aより径が大きく開口側に配置された円筒状の大径部71Bと、これら小径部71A及び大径部71Bを接続する接続部71Cによって構成される。接続部71Cは、ケース部材71の軸方向に垂直に配置された円環状の部材であり、小径部71Aの軸方向における一端から全周にわたって外周側に突出するように形成されたものである。また、大径部71Bは、その内周面に雌ネジが設けられる。
エアフィルタ60は、フランジ部65が接続部71Cに沿って配置されるとともに、枠本体64の外周面が小径部71Aの内周面に沿うように配置され、これにより、ケース部材71内部に嵌合されて取り付けられる。また、フィルタユニット70は、大径部71Bが取付部53に螺着されて取り付けられる。
このように、フィルタユニット70が取付部53に取り付けられると、接続部71C上に配置されたフランジ部65は、接続部71Cと、取付部53の先端面53Aとに挟み込まれる。そしてフランジ部65は全周にわたって、先端面53A及び接続部71Cに押し付けられる。これにより、フランジ部65は、枠状部材62と取付部53を気密的に接続し、これらの間からエアが漏れるのを防止する。
本実施形態に係るエアフィルタ60は、例えばインサート成形により製造されるものであるが、その製造方法は、従来の小型フィルタと同様であるので、その説明は省略する。なお、インサート成形に使用される注型材料は、揺変剤が加えられない点以外、第1の実施形態における注型材料と同じである。ただし、第1の実施形態と同様に、枠状型によって成形されたものであっても良い。
以上のように、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、ガスケット等のシール材を別途設けず、また枠本体自体を変形させずに、エアフィルタ60と取付部53との間の気密性を確保できる。
次に、図8を用いて本発明の第3の実施形態について説明する。図8は、第3の実施形態に係るエアフィルタが取り付けられるマスクの一部を示す模式的な断面図である。以下、第3の実施形態について、第2の実施形態との相違点を説明する。
図8に示すように、本実施形態に係るエアフィルタ80は、フランジ部が省略された点を除いて第2の実施形態と同様であり、円筒形の枠状部材82と濾材パック81によって構成される。また、ケース部材83は、一方の端部が開口84とされるとともに、他方の端部に不図示の通気口がある底部85が設けられた有底円筒部材であり、その開口84側の端部の内周面には、雌ネジが設けられる。
保護具本体の取付部87は、筒状のベース部87Aと、ベース部87Aの先端面87Bに連設され、内径がベース部87Aより大きくされた円筒状の取付先端部87Cとを備える。ベース部87Aの先端面87Bは、ベース部87Aの内周面と、取付先端部87Cの内周面とを接続する面となる。また、先端面87Bは、ケース部材83の軸方向に垂直な面であり、枠状部材82の一方の開口側の端面82Aが押し当てられる当たり面となる。
エアフィルタ80は、枠状部材82の他方の開口側の端面82Bが、ケース部材83の底部85に接着されてケース部材83に取り付けられ、ケース部材83とともにエアフィルタユニット86を構成する。枠状部材82の外周面と、筒状のケース部材83の内周面の間には隙間があり、この隙間に挿入された取付先端部87Cが、ケース部材83の内周面に螺着され、これにより、エアフィルタユニット86が取付部87に取り付けられる。
ここで、エアフィルタ80の枠状部材82は、先端面87Bと底部85の間に挟み込まれるように配置されている。そして、枠状部材82は、ケース部材83の底部85に押圧されることにより、全周にわたって先端面87Bに押し付けられ、これにより、エアフィルタ80の枠状部材82と取付部87との間の隙間から空気が漏洩するのが防止される。
本実施形態では、フランジ部が省略されたことにより、濾材パック81を保持する枠状部材82全体がケース部材83の底部85によって押圧される。そのため、枠状部材82がそのような押圧により座屈しないように、枠状部材82の硬度は、第2の実施形態より高いほうが良く、例えば40〜80度、好ましくは60〜80度である。
以上のように、本実施形態では、フランジ部を省略することによりエアフィルタの構造を単純にしつつ、エアフィルタと当たり面との間の気密性を容易に確保することが可能になる。
次に、図9を用いて第4の実施形態について説明する。上記各実施形態では、エアフィルタにおいて濾材パックは、枠状部材のみによって支持されていたが、本実施形態では、枠状部材と外側枠状部材とによって一体的に構成された複合枠体によって支持される。以下、第4の実施形態について、第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
本実施形態に係るエアフィルタ90は、円柱形の濾材パック91と、枠状部材94と、外側枠状部材93によって構成される。枠状部材94は、エラストマーから形成される弾性体であり、円筒形の枠本体95と、膨出部96とが一体となって構成される。枠本体95は、濾材パック91の外周を埋設させつつ濾材パック91の外周に接着し、濾材パック91を取り巻くように配置される。
外側枠状部材93は、枠本体95の外周側に配置され、その内周面が全周にわたって、枠状部材94の外周面に接着され、枠状部材94と一体となって複合枠体98を形成する。外側枠状部材93は、円筒形であるとともに、硬質のプラスチック等で構成され、実質的に弾性を有しない。
枠本体95の軸方向における一方の端部は、軸方向に沿って外側枠状部材93の端面93Aより上側に延出し、その延出した部分には、外周側に膨出する膨出部96が連設される。膨出部96は、外側枠状部材93の端面93Aの上に配置され、端面93Aに接着される。このように、複合枠体98の一方の開口側における端部98Aは、膨出部96と枠本体95とが一体になって構成され、断面略半円形を呈する。
本実施形態では、取付部87及びケース部材83は、第3の実施形態と同一の構成を有する。エアフィルタ90は、複合枠体98の他方の開口側の端面98Bが、ケース部材83の底部85に接着され、ケース部材83とともにエアフィルタユニット99を構成する。エアフィルタユニット99は、第3の実施形態と同様に、取付部87に取り付けられる。
本実施形態では、複合枠体98が、先端面87Bと底部85の間に挟み込まれるように配置される。そして、複合枠体98の端部98A(すなわち膨出部96)は、ケース部材83の底部85からの押圧により、全周にわたって、外側枠状部材93によって先端面87Bに押し付けられ、複合枠体98と取付部87との間のシール性が確保される。
次に、第4の実施形態に係るエアフィルタの製造方法について図10を用いて説明する。第1〜第3の実施形態において、エアフィルタは、枠状型を用いた成形又はインサート成形により製造されたが、本実施形態では、遠心が用いられて成形される。
本製造方法で使用されるエアフィルタ製造装置100は、回転治具101と、回転治具101の上に載せられる金型102とを備える。金型102は、円筒形の枠状部104の下側の開口が底部103で塞がれた金型本体106と、金型本体106の上に載せられ、枠状部104の上側の開口を塞ぐ蓋部109とを備える。
金型102の底部103の中央には、上方から見ると円形を呈し、かつ径が下方に向かうに従って小さくなるすり鉢状の凹部105が設けられる。凹部105は、液状の注型材料107が溜められるためのものである。また、底部103において、中央の凹部105を取り巻く外周部108は、上面が平面とされている。
蓋部109には、2つの空気孔109A、109Bが穿設される。金型102の内部は、空気孔109A、109Aを介して外部に連通するため、金型102内部における注型材料107の流動性が良好になる。また、蓋部109の下面には、複合枠体98の端部98Aを成形するための円環状の環状溝109Cが設けられる。環状溝109Cは、上方から見ると、後述するように、金型102内部に配置される外側枠状部材93に重なる位置に設けられる。
本実施形態では、まず、凹部105の内部に注型材料107が溜められるとともに、金型102の内部に、外側枠状部材93が配置される。外側枠状部材93は、外周部108上に載せられるとともに、その外周面が枠状部104の内周面に沿うように配置される。このとき、外側枠状部材93の内部には、外周部108に載せられた濾材パック91が収納されている。なお、注型材料107は、第2の実施形態の注型材料と同様である。
次いで、金型本体106の上に蓋部109が載せられ、蓋部109が金型本体106に固定された後、金型本体106が、内部に収納された外側枠状部材93及び濾材パック91とともに、回転治具101により例えば700〜1500rpm程度で回転される。この回転により、凹部105に溜められた液状の注型材料107は、遠心力により凹部105の傾斜面を伝わって上方に進む。そして、注型材料107は、外側枠状部材93の内周側及び環状溝109Cの内部に注入される。
その後、注型材料107が固化され、外側枠状部材93の内周側に注入された注型材料は、濾材パック91の外周が内部に埋設された枠状部材95となる。枠状部材95は、外側枠状部材93と一体化され複合枠体98を構成する。また、環状溝108内部に充填された注型材料は、膨出部96を含む複合枠体98の端部98Aを構成する。
注型材料107が固化されると、回転治具101の回転が停止され、金型102内部から、注型材料107によって一体化された外側枠状部材93及び濾材パック91が取り出され、図9に示すようなエアフィルタ90が得られる。
以上のように、第4の実施形態でも、上記各実施形態と同様に、比較的簡単な構造を有するエアフィルタにより、エアフィルタと当たり面との間の気密性を容易に確保することが可能になる。また、エアフィルタを支持する複合枠体98は、実質的に弾性を有しない硬質の外側枠状部材93を備えるので、弾性体で構成される枠状部材のみで形成される場合に比べて、高強度となる。
次に、本発明の第5の実施形態に係るエアフィルタについて図11を用いて説明する。
図11に示すように、本実施形態に係るエアフィルタ110は、濾材パック111の一部にエラストマーが充填され、そのエラストマーにより枠状部材130が形成されるものである。濾材パック111は、直方体に形成されたものであるとともに、エラストマーは、後述するように、注型材料が固化されたものである。
エアフィルタ110において、濾材パック111の中央部分121にはエラストマーが充填されておらず、濾材パック111の中央部分121は、空気が通るための円形(具体的には、円柱形)の通気部分となる。一方、濾材パックの外側部分122、すなわち中央部分121以外の部分は、エラストマーが充填され、エラストマーによって埋設された状態となり、空気を通さない非通風部分となる。すなわち、濾材パック111の外側部分122に充填されたエラストマーは、内周面が円形で、外周面が四角形の枠状部材130を構成し、その枠内側を濾材パック111の通気部分とするものである。枠状部材130を構成するエラストマーは、第2の実施形態と同様であり、枠状部材130は弾性体となる。
なお、エラストマーは、濾材パック111の正面111E及び背面111Fの両方において各ひだ山間に充填され、通気部分(中央部分121)の両開口を取り囲む枠状部材130の各端面130A、130Bは、エラストマーにより略平面とされる。また、エラストマーは、ひだ山間だけではなく、濾材パック111の各側面を構成する端部111A〜111D上にも薄く積層された状態となっており、これにより、エアフィルタ110は、縦横の寸法が濾材パック11の縦横の寸法よりも僅かに大きくなった略直方体となっている。
本実施形態に係るエアフィルタ110は、図12に示すように、例えば、第3の実施形態と同様に、ケース部材83内部に収納されエアフィルタユニット135として、取付部87に取り付けられる。すなわち、第3の実施形態と同様に、枠状部材130は、先端面87Bと底部85の間に挟み込まれて配置される。そして、枠状部材130は、弾性体であるため、底部85によって先端面87Bに押し付けられて取り付けられることにより、エアフィルタ110と取付部87の間をシールすることになる。なお、枠状部材130の端面130A、130Bは、それぞれ先端面87A(当たり面)に押し当てられる面、底部85に接着される面となる。
次に、図13、14を用いて本実施形態に係るエアフィルタの製造方法を説明する。なお、本実施形態に係る製造方法は、第4の実施形態と同様に、遠心を利用した製造方法である。以下、本実施形態におけるエアフィルタの製造方法について、第3の実施形態との相違点を中心に説明する。
本実施形態における金型140は、枠状部が枠状型143として底部142から分離可能とされたものであり、底部142には、第4の実施形態と同様に、凹部146と、凹部146を取り巻く外周部147とが設けられる。また、凹部146の中心には、上方に向けて突出する突出部148が設けられる。突出部148の上面は、外周部147の上面と同一平面上に配置される。本実施形態では、突出部148が設けられたことにより、濾材パック111が底部142上に載せられたとき、濾材パック111の中央が自重により下方に沈み込むことが防止される。
枠状型143は、上下が開口する矩形又は方形の四角枠形状を呈しており、底部142の外周部147の上に載置される。枠状型143は、四角形の各辺を構成する4つの枠部材143A〜143Dを、ネジ穴143Fに通されたネジにより組み立てたものである。蓋部144は、四角形板状に形成されるとともに、第4の実施形態と同様に空気孔149A、149Bが穿設される。
次に、フィルタ製造装置を用いたエアフィルタの製造方法を説明する。本製造方法では、まず、凹部146内部に液状の注型材料150が溜められる。次に、底部142の上にネジ孔147Aに通されたネジにより枠状型143が固定されるとともに、枠状型143の内部に濾材パック111が収納される。このとき、濾材パック111は、その背面111F側が下方に向けられるとともに、各端部111A〜111Dが、各枠部材143A〜143Dに対向する。ただし、濾材パック111の端部111A〜111Dと枠状型143の間には、僅かな隙間Sがある。
次いで、枠状型143の上部に、ネジ穴144A、143Hに通されたネジ等により、蓋部144が固定される。その後、底部142が、回転治具141によって回転させられ、これにより、底部142、枠状型143及び蓋部144は、一体となって回転させられる。この回転により、凹部146内部の液状の注型材料150は、遠心力により上方に進み、枠状型143内側の外周側に注入され、濾材パック111の外側部分に充填される。
具体的には、注型材料150は、濾材パック111の背面111F側から各ひだ山間に充填されるとともに、端部111A〜111Dと枠状型143の間の隙間Sに充填される。また注型材料150は、その隙間Sを通って、端部111B、111Dから濾材パックの正面側に回り込み、正面111E側においてひだ山間に充填される。
その後、注型材料150が固化されると、図11に示すように、濾材パック111の外側部分122は、エラストマーに埋設された状態となり、そのエラストマーにより枠状部材130が構成される。一方、濾材パック111の中央部分121には、注型材料150が充填されず、円形の通風部分となる。また、隙間Sに充填された注型材料150は、端部111A〜111D上に薄く積層される部分となる。
注型材料150が固化されると、回転治具141による回転が停止される。その後、蓋部144が枠状型143から取り外されるとともに、枠状型143が4つの枠部材143A〜143Dに分解されて、濾材パック111とエラストマー112が一体となって形成されたエアフィルタ110が、金型140から離型される。
以上のように本実施形態では、フィルタが比較的簡易的な金型で製造できるとともに、濾材パックも作製が容易な直方体で良いので、フィルタの製造コストや製造工数を低減させることができる。また、枠状部材130は弾性を有するので、別途パッキンを設けなくても、取付部87とエアフィルタ110との間をシールすることができる。
なお、本実施形態でも、濾材パック111は円柱形であっても良い。濾材パック111が円柱形であれば、金型140の枠状型143も円筒形となるとともに、枠状部材130も円筒形となり、エアフィルタ110の形状は、第3の実施形態と同様になる。また、金型140には適宜凹部等が設けられて、第2の実施形態のように、枠状部材130にフランジ部が設けられても良い。
次に、図15、16を用いて本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態においては、濾材パックは、変形可能な構造を有し、枠状部材と共に湾曲変形可能なものとなっている。以下、本実施形態に係るエアフィルタについて、第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
本実施形態に係るエアフィルタ220は、丸形の小型フィルタであり、図15に示すように第2の実施形態と同様に、枠本体224及びフランジ部225を有する枠状部材222と、濾材パック221とによって構成され、枠状部材222は、エラストマーで形成された弾性体である。
濾材パック221は、図16に示すように、シート状濾材がひだ状に折られ、ジグザグにされたものであり、濾材パック221の正面221A及び背面221B側それぞれには、線状のセパレータ225が接着される。セパレータ225は、ジグザグを呈するシート状濾材に合わせて、折目方向Xに直交する直交方向Y(濾材パックのひだ山42が並べられる方向)に沿ってジグザグに延在する。
セパレータ225は、糸の外周が合成樹脂等の接着剤で被膜された糸セパレータである。濾材パック221の正面及び背面それぞれにおいて、濾材パック111の隣接するひだ山231、231間でセパレータ225は自身に接着され、セパレータ225によりひだ山231、231間が離間させられる。
各セパレータ225において、糸の表面に被膜される接着剤は弾性を有するとともに、糸自身も径方向に圧縮・復元可能なものである。これにより、セパレータ225は、弾性を有し、直向方向Yに伸縮可能なものとなる。そのため、ひだ折りされた濾材パック221は、折目を起点に伸縮可能となり、全体として弾性を有するものとなる。これにより、エアフィルタ220は、濾材パック221及び枠状部材222のいずれもが弾性を有することになり、全体として湾曲変形可能となり、例えば湾曲された状態でマスクの保護具本体(不図示)に取り付けられる。
具体的には、エアフィルタ220は、例えば、図15に示すように、直交方向Yにおける両端部が背面221B側に曲げられ、中央部分が凸となるように弧状に湾曲させられ、その弧状にされた状態でマスクの保護具本体(不図示)に取り付けられる。このとき、エアフィルタ220は、背面221B側が保護具本体側に配置される。これにより、エアフィルタ220は、顔の形状に沿ったものとすることができ、エアフィルタ220によって視界が遮蔽されるのが防止される。勿論、エアフィルタは、上記各実施形態と同様に、ケース部材に収納された状態でフィルタユニットとして取り付けられても良い。なお、濾材パック221は、図15に示すように湾曲されるとき、背面221B側において各ひだ山231、231間の距離が短くされるとともに、正面221A側において各ひだ山231、231間の距離が長くされている。
以上のように、本実施形態では、エアフィルタが湾曲可能であるため、用途に応じて所望の形状とすることができる。また、濾材は、シート状濾材がひだ状に折られて成る濾材パックであるため、エアフィルタの濾材表面積が比較的大きくなり、フィルタ性能を良好にすることができる。
なお、本実施形態では、フランジ部225は、上記各実施形態と同様に、取付部の当たり面に押し付けられて、シール材として使用されても良いが、そのように使用されなくても良い。勿論、第3の実施形態のようにフランジ部225は省略されても良い。また、第5の実施形態に係るエアフィルタも、本実施形態と同様に、濾材パックが弾性変形可能なものにされ、全体として湾曲変形可能なものとされても良い。
なお、上記各実施形態では、濾材としては、シート状濾材がひだ状に折られた濾材パックが使用されたが、例えばウレタンフォーム等の発泡体や、有機繊維や無機繊維から構成される繊維状基材等の三次元網目構造体であっても良い。この場合、三次元網目構造体には、活性炭等の無数の吸着剤が付着されており、その吸着剤により、空気中の汚染物質が除去される。もちろん、濾材としては、三次元網目構造体以外の濾材が使用されても良い。