JP6059677B2 - 顔料分散液、これに用いるa−bブロックコポリマーの製造方法、樹脂処理顔料及び顔料分散液の製造方法 - Google Patents

顔料分散液、これに用いるa−bブロックコポリマーの製造方法、樹脂処理顔料及び顔料分散液の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、難分散性顔料を微分散する場合に有用な技術に関し、具体的には、新規なA−Bブロックコポリマーを顔料分散剤とした顔料分散液、これに用いるA−Bブロックコポリマーの製造方法、該ブロックコポリマーで処理された樹脂処理顔料、及び、該樹脂処理顔料を用いた顔料分散液の製造方法に関する。
近年、画像表示や画像記録剤として用いられるインク、塗料、コーティング剤は、高画質・高画像・高印字性などが求められており、そのために顔料がより微細に、且つ、均一に微分散した顔料分散液が求められてきている。その具体的な用途としては、カラーフィルター着色剤用、紫外線硬化型インクジェットインク用、グラビアインキ用などが挙げられる。本発明でいう顔料分散液とは、有機溶剤や重合性化合物中に顔料が分散含有されているもののことであり、例えば、顔料が高濃度に分散含有されている顔料分散液を着色剤として用い、これを油性媒体に含有させることで、顔料が微分散されたインクや塗料等の顔料分散液組成物である製品を得ることができる。
上記のインク等には顔料着色剤として顔料分散液が使用されているが、特に上記に挙げた用途においては、顔料を高度に分散し、これを維持することが要望されている。このため、様々な構造の顔料分散剤が開発されており、その要求性能として、より高い、微分散性、高安定性、高流動性を示すものが求められている(例えば、特許文献1、2、3参照)。また、これらの顔料分散剤の一つとしてアクリル系ポリマーを利用したものがあるが、アクリル系ポリマーの製造方法においては、その構造を制御するために、様々なリビングラジカル重合方法が発明されており、顔料分散剤だけでなく、粘着剤やエラストマーなどの製造にも応用されている(例えば、特許文献4)。
特開2008−298967号公報 特開2007−270089号公報 特開平9−176511号公報 特開2011−68865号公報
しかしながら、顔料においては、それらの性能を達成できる顔料種はあるが、微分散と高保存安定性を取ることが難しい顔料があり、その使用が制限される場合がある。そのような顔料とは、その分子内に水素結合を有することで結晶を強固に形成する水素結合型の顔料であり、難分散性顔料と呼ばれる場合がある顔料である。具体的には、縮合多環系化合物などの分子内の環状構造中にカルボニル基(−C(=O)−)とアミノ基(−NH2、−NHR、−NRR’)、これらが結合したアミド基(RCONH−)やウレイド基(H2NCONH−)、イミド基の極性基を有しており、顔料粒子の結晶になると、そのカルボニル基とアミノ基にてC=O・・・HNという水素結合が形成され、強固な結晶となっている。これらの顔料は、その強い水素結合のため微分散と高保存安定性を得ることが難しい場合があった。このような使用が制限される場合のある難分散性顔料に対しても、良好な微分散と、その保存安定性が可能になれば、所望される多様な色調の画像や画素の実現や、形成した画像や画素等のより高い耐候性等にも対応できると考えられ、非常に有用である。
したがって、本発明の目的は、前記したような難分散性の顔料に対しても微細に分散させることができ、且つ、その分散された状態が経時によっても変化しない、微分散性且つ高保存安定性に優れる顔料分散液を提供することである。特に、本発明の目的は、上記優れた顔料分散液の実現を可能にできる新たな高分子分散剤を提供することにある。
上記課題に対し、発明者らは鋭意研究を行った結果、一方の鎖のみに、ある特定のモノマー成分をモノマー単位とする特定の構造を満たすA−Bブロックコポリマーを、顔料分散剤や顔料の表面処理用樹脂として使用することで、顔料、中でも特に前記した難分散性の顔料を微細に分散することができ、且つ、その分散された状態が経時によっても変化しないという、微分散性且つ高保存安定性が達成されることを見出して本発明を達成した。更に、本発明者らは、得られた微細な顔料を微分散した顔料分散液は、これを着色剤として用いた場合に、高彩度、高透明性、高グロスを保ちつつ、発色性が良好な、高品質の画像や画素の形成を可能にできることを見出して、本発明に至った。
前記した本発明の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、少なくとも顔料、顔料分散剤及び有機溶剤を有する顔料分散液において、顔料分散剤が、ポリマーを構成するモノマー単位の90質量%以上がメタクリル酸系モノマーからなるA−Bブロックコポリマーであって、且つ、該A−Bブロックコポリマーを構成する一方のポリマーブロック(Bのポリマーブロック)のみに、モノマー単位として、下記式(1)で表される2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレートを含み、該環状ウレイドメタクリレートによって導入された環状ウレイド基をBのポリマーブロック中に有することを特徴とする顔料分散液を提供する。
Figure 0006059677
上記本発明の顔料分散液の好ましい形態としては下記のものが挙げられる。前記顔料が、その分子内の環状構造中に、カルボニル基及び/又はアミノ基を独立の基として有する有機顔料であるか、或いは、カルボニル基とアミノ基とが結合した、アミド基、ウレイド基及びイミド基の群から選択される少なくともいずれかの基を有する有機顔料であること;前記有機溶剤が、非プロトン性溶剤であり、且つ、誘電率εが25以下であること;更に、塩基性官能基を有する色素誘導体又は酸基性官能基を有する色素誘導体を含有し、且つ、該色素誘導体が塩基性官能基を有する場合には、前記A−Bブロックコポリマーの構成を、前記Bのポリマーブロックが、モノマー単位として、更に、カルボキシ基又はリン酸基を有するメタクリル酸系モノマーを含み、該モノマーによって導入されたカルボキシ基又はリン酸基を有するものとし、該色素誘導体が酸性官能基を有する場合には、前記A−Bブロックコポリマーの構成を、前記Bのポリマーブロックが、モノマー単位として、更に、アミノ基を有するメタクリル酸系モノマーを含み、該モノマーによって導入されたアミノ基を有するものとすること;前記A−Bブロックコポリマーを構成する他方のポリマーブロック(Aのポリマーブロック)は、そのゲルパークロマトグラフにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が1000〜10000で、且つ、その分子量の分布を示す分散度(重量平均分量/数平均分子量)が1.5以下であり、前記Bのポリマーブロック中における前記2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレートの含有量が、5〜30質量%であり、更に、前記A−Bブロックコポリマーの数平均分子量が3000〜15000であり、且つ、その分散度が1.6以下であること;前記顔料と、前記顔料分散剤と、前記有機溶剤とが、顔料が5〜20質量%、顔料分散剤が0.5〜30質量%、有機溶剤が50〜94.5質量%の範囲内で配合されていること;前記顔料が、ジケトピロロピロール系顔料、キノフタロン系顔料及びアントラキノン系顔料からなる群から選択される少なくとも1種であること;前記A−Bブロックコポリマーが、重合開始化合物を使用するリビングラジカル重合を利用して得られたものであることが挙げられる。
また、本発明は、別の実施形態として、上記した顔料分散液を構成する前記A−Bブロックコポリマーを製造するためのA−Bブロックコポリマーの製造方法であって、少なくとも、重合開始化合物と触媒との存在下、リビングラジカル重合する工程を有し、該工程で使用する重合開始化合物が、ヨウ素又はヨウ素化合物の少なくともいずれかであり、該工程で使用する触媒が、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート化合物、イミド系化合物、フェノール系化合物、ジフェニルメタン系化合物及びシクロペンタジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とするA−Bブロックコポリマーの製造方法を提供する。
本発明は、別の実施形態として、顔料を、A−Bブロックコポリマーからなる顔料分散剤によって処理して顔料に分散性を付与した樹脂処理顔料であって、顔料分散剤が、上記いずれかの顔料分散液を構成するA−Bブロックコポリマーであり、且つ、顔料100質量部に対して、該A−Bブロックコポリマーが10〜150質量部の範囲で含有されてなることを特徴とする樹脂処理顔料を提供する。
本発明は、別の実施形態として、上記いずれかの顔料分散液を得るための顔料分散液の製造方法であって、上記の樹脂処理顔料を、有機溶剤に分散することを特徴とする顔料分散液の製造方法を提供する。
本発明の顕著な効果は、一方の鎖のみに、ある特定のモノマー成分をモノマー単位としたことで、一方の鎖にウレイド基を導入したA−Bブロックコポリマーを、顔料分散剤や顔料の表面処理用樹脂として使用したことによって得られる。具体的には、そのモノマー成分として2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレートを有することで、特定の基が導入されたポリマーブロック(便宜上、Bのポリマーブロックとする)を有するA−Bブロックコポリマーを顔料分散剤に用いたことで、本発明では、下記の顕著な効果を実現した。すなわち、Bのポリマーブロックを形成する際に用いた2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレートによってB鎖に導入されたオキソイミダゾリン−1−イル基(以下、環状ウレイド基と称す)が、顔料、特にその顔料骨格に、環状構造内にカルボニル基とアミノ基を独立に、または、それらが複数個結合したアミド基、ウレイド基、イミド基を有している水素結合をし得る基を有する顔料に対して、水素結合して強い吸着力を発揮し、この結果、本発明によれば、上記した難分散性とされている顔料に対しても微分散性且つ高保存安定性を達成した顔料分散液の提供が可能になる。本発明の顔料分散液を特徴づけるA−Bブロックコポリマーは、モノマー単位の90質量%以上がメタクリル酸系モノマーからなり、且つ、もう一方のポリマーブロック(Aのポリマーブロックとする)には環状ウレイド基が導入されていないため、Aのポリマーブロックが併用する有機溶剤に溶解して、立体障害、立体反発することによって、顔料を有機溶剤中に高度に微分散且つ高保存安定性する性能が発揮される。
上記した本発明の顕著な効果は、本発明を特徴づける顔料分散剤を構成するA−Bブロックコポリマーの構造を、上記したように、そのBのポリマーブロックに特有の環状ウレイド基を導入したことによって達成できるが、本発明者らの検討によれば、このような構造のA−Bブロックコポリマーは、本発明で規定する、特有のモノマーを特定の条件でリビングラジカル重合することで初め実現でき、実用化が可能になる。すなわち、リビングラジカル重合は、酸性基やアミノ基を有するビニル系モノマーの重合が可能なものであるが、特に本発明で利用するリビングラジカル重合方法は、特殊な材料を必要とすることなく、従来のラジカル重合に重合開始化合物と触媒を添加するだけでできる容易な重合方法であり、特殊な製造設備や材料の精製が必要でないために、コスト的にも有利であり、環境にも優しいという利点がある。
次に、本発明の好ましい形態を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明者らは、先に述べた従来技術の課題について鋭意検討を進めた結果、リビングラジカル重合によって形成される特有な構造を有するA−Bブロックコポリマーが、従来技術の課題を解決できる顔料分散剤として極めて有用な特性を有するものになることを見出して本発明に至った。より具体的には、当該ポリマーからなる本発明の顔料分散剤を使用することで、顔料に対して少量の添加で優れた効果が発揮でき、媒体中における顔料の、高微分散性、高安定性、高流動性の全ての性能の実現を可能とする顔料分散液とできることを見出した。また、この顔料分散液を顔料着色剤として使用してなるインク等の製品、特に、カラーフィルター用着色剤を使用したカラーレジストやインクジェットインクは、高画質・高画像・高印字性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
以下に好ましい実施形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明は、少なくとも顔料、顔料分散剤及び有機溶剤とからなる顔料分散液に関し、該顔料分散剤が、ポリマーを構成するモノマー単位の90質量%以上がメタクリル酸系モノマーからなるA−Bブロックコポリマーであり、該コポリマーを構成する一方のポリマーブロック(Bのポリマーブロック)が、下記の構成を有するものであることを特徴とする。すなわち、Bのポリマーブロックのみに、モノマー単位として、下記式(1)で表される2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレート(以下、環状ウレイドメタクリレートと称す)を含み、該環状ウレイドメタクリレートによって導入された環状ウレイド基をBのポリマーブロック中に有するA−Bブロックコポリマーであることを特徴とする。
Figure 0006059677
本発明では、上記した特定の顔料分散剤によって分散する顔料が、その分子内の環状構造中に、カルボニル基及び/又はアミノ基を独立の基として有する有機顔料であるか、或いは、カルボニル基とアミノ基とが結合した、アミド基、ウレイド基及びイミド基の群から選択される少なくともいずれかの基を有する有機顔料である顔料分散液である場合に、より顕著な効果が得られる。更には、これらの顔料及び顔料分散剤と併用する有機溶剤が、非プロトン性溶剤であり、且つ、誘電率εが25以下である場合に、より顕著な効果が得られる。
先に述べたように、本発明の顕著な効果は、本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーを構成するBのポリマーブロックに含まれる環状ウレイド基が、顔料と水素結合を強力にすることで吸着を促進して、Bのポリマーブロックが顔料に吸着する作用をすることによって得られる。環状ウレイド基は、従来公知であるが、水素結合によって基材への密着性向上の作用があることが知られている。この環状ウレイド基を導入したポリマーは、アルキッド樹脂、ステンレススティール、ポリアミド、ポリイミドなどの基材に対し、密着性が大きく向上する。これはポリマーの環状ウレイド基と、それらの基材のカルボキシ基、アミド基、エステル基、金属酸化物基、水酸化物基と水素結合の作用で密着性が向上することによる(例示すると、M.Okubo et.al Colloid Polym.Sci.,2003,282,88-91、Rhodia社”Sipomer”技術カタログ)。この作用を利用することで、水素結合し得る官能基を有する顔料と、本発明を特徴づけるBのポリマーブロックに含まれる環状ウレイド基が水素結合することで、より強固な顔料との吸着性を実現できたものと考えられる。
すなわち、本発明の一番の技術的特徴は、A−BブロックコポリマーのB鎖に導入した環状ウレイド基によって、顔料、特に顔料骨格に環状構造内に前記したような水素結合をし得る基を有している顔料と著しく、水素結合の作用によって吸着することを実現した点にあり、加えて、他方のA鎖が分散媒体である有機溶剤に親和する結果、本発明の顔料分散液において、高度な微分散性と高安定性を達成したものである。
更に、本発明を構成する有機溶剤は、この水素結合を解離させない、壊さない有機溶剤であることが好ましく、そのためには、有機溶剤が、非プロトン性溶剤であり且つ誘電率εが25以下であることが好ましい。プロトン性溶媒、すなわち、水酸基等の活性水素を有する溶媒の場合は、本発明を特徴づける分散剤と顔料の水素結合を阻害し、その有機溶剤と分散剤、有機溶剤と顔料で水素結合が起こり、本発明を特徴づける顔料と分散剤との間の水素結合の作用を阻害させる可能性がある。また、誘電率が高い場合も、その水素結合を解離させる方向に働く可能性があるので、できるだけ低極性溶剤、具体的には、誘電率εが25以下であることが好ましい。以下、本発明の顔料分散液を構成する、顔料分散剤、顔料、有機溶剤について、それぞれ詳細に説明する。
まず、本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーは、メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位を90質量%以上含むことを要し、好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%からなるものである。後述するが、本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーの好適な製造方法(重合方法)であるリビングラジカル重合では、モノマーとしてメタクリレート系モノマーを用いることが特に好ましい。これに対し、後述する製造方法において、スチレン等のビニル系モノマー、アクリレート系モノマー、及びビニルエーテル系モノマーなどを用いた場合は、重合末端に結合したヨウ素が安定化し過ぎてしまい、解離させるのに加温する必要がある、或いは、解離しないなどの不都合が生ずる可能性がある。このため、メタクリレート系モノマー以外のモノマーを多量に用いた場合は、本発明において目的とする特有の構造にならない、或いは、分子量分布が広がってしまうなどの不具合が生ずる可能性がある。ただし、メタクリレート系モノマー以外のモノマーであっても、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で用いてもよい。
本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーは、一方のポリマーブロックのみに環状ウレイド基を有するブロックコポリマーであって、先に述べたように、本発明では、便宜的にこの環状ウレイド基を有するポリマーブロックをBのポリマーブロックとする。本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーは、Aのポリマーブロックを重合した後、Bのポリマーブロックを重合してもよいし、Bのポリマーブロックを重合した後、Aのポリマーブロックを重合してもよいが、より好ましくは、Aのポリマーブロックを重合した後、Bのポリマーブロックを重合してA−Bブロックコポリマーとする。重合方法の詳細は後記するが、環状ウレイドメタクリレートを用いて一方のポリマーブロックを先に重合して、次に、他方のポリマーブロックを形成するモノマーを添加して重合した場合、先に重合したポリマーブロックの重合率が悪いと環状ウレイドメタクリレートが残存し、後で重合したポリマーブロックにも導入されてしまう場合がある。その場合は、環状ウレイド基が両方のポリマーブロックに導入されてしまうので、両方のポリマーブロックが顔料に吸着してしまい、微分散、高保存安定性の本発明の効果が十分に発揮できないことになる。ただし、煩雑ではあるものの、環状ウレイドメタクリレートを用いてBのポリマーブロックを先に重合して、残存モノマー、特に環状ウレイドメタクリレートをなくし、その後にAのポリマーブロックを重合して、一方のポリマーブロックのみに環状ウレイド基を有する構造のA−Bブロックコポリマーとすることも可能である。
[Aのポリマーブロックの構成]
まず、本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーにおいて、併用する有機溶剤に、溶解、親和する機能を担うポリマーブロックであるAのポリマーブロックについて説明する。すなわち、顔料吸着性の環状ウレイド基が導入されたBのポリマーブロックが顔料に吸着する一方で、このAのポリマーブロックは、有機溶剤に親和、溶解して、立体障害、立体反発によって顔料の凝集を阻害する働きをする。また、顔料分散液や、用途に応じて使用される他のポリマー成分と相溶する性質を有するものである。
Aのポリマーブロックを構成するモノマー成分としては、前記したように、その主成分をメタクリル酸系モノマーとするが、このメタクリル酸系モノマーは特に限定はなく、従来公知のものが1種類以上使用される。具体的には、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−メチルプロパンメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ベへニルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート、シクロデシルメチルメタクリレート、トリシクロデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどの(シクロ)アルキルメタクリレート;
フェニルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなどのアリールメタクリレート;アリルメタクリレートなどのアルケニルメタクリレート;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールモノラウリルエーテルメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコ−ルモノメチルエーテルメタクリレートなどのグリコールモノ系メタクリレート;
テトラヒドロフルフリルメタクリレートなどの環状メタクリレート;オクタフルオロオクチルメタクリレート、テトラフルオロエチルメタクリレートなどのハロゲン元素含有メタクリレート;2−(4−ベンゾキシ−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルメタクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線を吸収するメタクリレート;トリメトキシシリル基やジメチルシリコーン鎖を持ったケイ素原子含有メタクリレートなどを挙げることができる。また、これらのモノマーを重合して得られるオリゴマーの片末端に(メタ)アクリル基を導入して得られるマクロモノマーなどを用いることができる。
また、カルボキシ基を有するメタクリル酸系モノマーを使用することができる。例えば、メタクリル酸;メタクリル酸2−ヒドロキシエチルやメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有メタクリレートにフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、コハク酸、それらの酸無水物、酸クロライドなどの二塩基酸を反応して得られる二塩基酸やトリメリット酸などの多カルボキシ化合物のハーフエステル型メタクリレートが挙げられる。また必要に応じて反応性の官能性基であるイソシアネート基やグリシジル基、アミノ基などを有するメタクリレートを使用してもよい。
[Bのポリマーブロックの構成]
次に、本発明で使用するA−Bブロックコポリマーにおいて、前記した特定の構造を有する環状ウレイドメタクリレートを用いることによって、本発明を特徴づける環状ウレイド基を導入したBのポリマーブロックについて説明する。このBのポリマーブロックは、導入した環状ウレイド基由来の強力な水素結合を示すポリマーブロックであり、顔料と水素結合して吸着作用したり、カプセル化したりするための機能を有するポリマーブロックである。このポリマーブロックには、環状ウレイド基が導入されていることが必須であるため、本発明では、この環状ウレイド基を有するメタクリレートとして、下記式(1)で表される2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレート(環状ウレイドメタクリレート)が少なくとも構成成分として使用されることを必須とした。
Figure 0006059677
環状ウレイド基を有するメタクリレートとしては、様々な構造がある。例えば、メタクリル酸クロライド、メタクリル酸無水物、グリシジルメタクリレートやメタクリロイロキシエチルイソシアネートの反応性メタクリル酸系モノマーに、アミノベンツイミダゾールや2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エタノールなどを反応させて得ることができ、本発明でも使用することはできる。しかし、この場合は、別にモノマーの製造工程必要となってしまう、また、昨今の世界規模での化学品規制において、新規物質となる可能性があり、登録に多大なコストがかかってしまうなどの観点から、従来から市販され使用されている本発明で規定する環状ウレイドメタクリレートが非常に好適である。この環状ウレイドメタクリレートを使用したことが、本発明の一つの特徴である。
すなわち、上記した環状ウレイドメタクリレートを少なくとも含有するモノマー成分を重合してBのポリマーブロックとしたことが必須であり、上記した特定の環状ウレイドメタクリレートを有していればよく、前記した他のメタクリレートを共重合させてBのポリマーブロックとしてもよい。後述するが、Bのポリマーブロック中における上記した特定の環状ウレイドメタクリレートの含有量は、5〜30質量%であることが好ましい。
[顔料について]
次に、顔料分散液に使用される顔料について説明する。本発明で使用される顔料としては、有機顔料、無機顔料、金属粉末又は微粒子などの金属系顔料、無機フィラーなどを用いることができる。有機顔料としては、その結晶状態、混合結晶物、固溶体など限定はされない。有機顔料及び無機顔料の具体例としては、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニンブルー系顔料、フタロシアニングリーン系顔料、イソインドリノン系顔料、インジゴ・チオインジゴ顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、カーボンブラック顔料、複合酸化物系黒色顔料、酸化鉄ブラック顔料、酸化チタン系黒色顔料、アゾメチンアゾ系黒色顔料、及び酸化チタン系顔料からなる群より選択される、赤色、緑色、青色、黄色、橙色、紫色、黒色、及び白色顔料を挙げることができる。金属系顔料の具体例としては、銅粉末、アルミフレークなどを挙げることができる。また、無機フィラーの具体例としては、マイカ系顔料、天然鉱物、シリカなどを挙げることができる。これらの顔料の平均粒子径は特に限定はないが、好ましくは、有機顔料であれば、平均一次粒子径が150nm未満であり、無機顔料やフィラーであれば300nm未満である。
先にものべたように、特に、より顕著に本発明の効果が得られる点で、本発明で用いる顔料は、上記した本発明を特徴づけるBのポリマーブロックに含まれる環状ウレイド基と水素結合する基を有する顔料が好ましい。具体的には、分子内の環状構造中に、カルボニル基及び/又はアミノ基を独立の基として有する有機顔料、或いは、カルボニル基とアミノ基とが結合した、アミド基、ウレイド基及びイミド基の少なくともいずれかの基を有する有機顔料が特に好ましい。これらの顔料は強い水素結合によって結晶が強固であり、難分散性の顔料として知られている。このような難分散性の顔料を分散するために、水素結合であり且つ同類の構造ある本発明のBのポリマーブロックに含まれる環状ウレイド基が、良好な顔料吸着性を示し、その結果、本発明の顕著な効果である顔料微分散性、高保存安定性を達成できたものと考えられる。
本発明によって、より顕著な効果が発現される、分子内の環状構造中に、カルボニル基及びアミノ基を独立に、或いは、アミド基、ウレイド基、イミド基として有する有機顔料としては、例えば、多環縮合系顔料、複素環式顔料、環状ウレイド基を有する顔料が挙げられる。より具体的には、下記に挙げるような、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、インダントロン系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料等が該当する。
ジケトピロロピロール系顔料は、下記式(2)で示される構造の顔料であり、具体的には、ピグメントレッド254、ピグメントレッド255、ピグメントレッド264、ピグメントレッド283、ピグメントオレンジ71、ピグメントオレンジ73などが挙げられる。
Figure 0006059677
(R、R’は任意の有機基であって、同じであっても異なっていてもよい。m、nはそれぞれ独立に0〜5の数を示し、その置換基の数を示す。なお、m、nが0の場合は置換していないことを示す。)
キナクリドン系顔料は、下記式(3)で示される構造の顔料であり、具体的には、ピグメントバイオレット19、ピグメントレッド122、ピグメントレッド202、ピグメントレッド209、ピグメントオレンジ48、ピグメントオレンジ49などが挙げられる。
Figure 0006059677
(R、R’は任意の有機基であって、同じであっても異なっていてもよい。m、nはそれぞれ独立に0〜4の数を示し、その置換基の数を示す。なお、m、nが0の場合は置換していないことを示す。)
イソインドリン系顔料は、下記式(4)で示される構造の顔料であり、具体的には、ピグメントエロー139、ピグメントエロー185、ピグメントレッド260、ピグメントオレンジ66、ピグメントオレンジ69、ピグメントブラウン38などが挙げられる。
Figure 0006059677
(R1〜R4は、少なくとも1個がカルボニル基を有する有機基であり、その他の置換基は任意の有機基であり、同じであっても異なっていてもよい)
イソインドリノン系顔料は、下記式(5)で示される構造の顔料であり、具体的には、ピグメントエロー109、ピグメントエロー110、ピグメントオレンジ61、ピグメントエロー177、ピグメントエロー179などが挙げられる。
Figure 0006059677
(R、R’は任意の有機基であって、同じであっても異なっていてもよい。m、nはそれぞれ独立に0〜4の数を示し、その置換基の数を示す。なお、m、nが0の場合は置換していないことを示す。また、Xは任意の連結可能な有機基を示す。)
キノフタロン系顔料は、下記式(6)で示される構造の顔料であり、具体的には、ピグメントエロー138、ピグメントエロー139、ピグメントエロー185などが挙げられる。
Figure 0006059677
(Rは任意の有機基であり、n=0〜4の数を示し、その置換基の数を示す。なお、0の場合は置換していないことを示す。また、Yは、水素原子であるか、任意の有機基を示す。)
アントラキノン系顔料は、下記式(7)で示される構造の顔料であり、具体的には、ピグメントレッド83、ピグメントレッド89、ピグメントレッド177などが挙げられる。
Figure 0006059677
(Zは、水素または任意の有機基を示す。)
インダントロン系顔料は、下記式(8)で示される構造の顔料であり、具体的には、ピグメントブルー60などが挙げられる。
Figure 0006059677
ベンツイミダゾロン系顔料は、下記式(9)又は下記式(10)で示される構造の顔料であり、具体的には、ピグメントエロー120、151、154、175、176、150、181、185、194、ピグメントレッド185、280などが挙げられる。
Figure 0006059677
(Aは、構造中に−N=N−であるアゾ基を有する任意の有機基を示す。)
[有機溶剤について]
次に、顔料分散液に使用される有機溶剤について説明する。本発明で使用される有機溶剤としては、下記に挙げるようなものが使用できる。すなわち、ヘキサン、オクタン、デカン、イソデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ジプロピリングリコールジメチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルトリエチレングリコール、メチルジプロピレングリコール、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルシクロプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、カプロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、琥珀酸ジメチル、マロン酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、カプロラクタムなどのアミド系溶剤の他、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、また、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル系などの重合性モノマーを分散媒体の有機溶剤として使用することができる。なお、これらの有機溶剤は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
より好ましくは、本発明で用いられる有機溶剤としては、非プロトン性溶剤であり、且つ誘電率εが25以下であることが好ましい。これは、プロトン性溶剤、すなわち、活性水素である水酸基、カルボキシ基等の水素結合を示す有機溶剤を使用した場合、本発明の分散剤の環状ウレイド基と顔料との水素結合を阻害し、有機溶剤と分散剤の環状ウレイド基、有機溶剤と顔料の水素結合が優先的に働き、本発明である環状ウレイド基と顔料の水素結合が達成されず、本発明の効果である微分散性、高保存安定性が得られない場合がある。また、誘電率が高いと、水素結合の解離を促進し、同様に効果が見られない場合がある。そこで、本発明では、非プロトン性極性溶媒であり且つ比較的誘電率が低い誘電率εが25以下であることが好ましい。誘電率が25以上であると、水素結合の解離を促すことが考えられ、より好ましくは誘電率εが20以下である。
この誘電率εが25以下の非プロトン性極性溶媒として具体的に例示すると、ヘキサン、トルエン、キシレンなどのアルカン、アリール系の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤などが挙げられ、イソボルニルアクリレートなどの重合性モノマーもなども分散媒体である有機溶剤として使用される。これらは、炭素数2以上のアルキル、アリール、そのカルボニル基、エステル基、エーテル基を有する有機溶剤である。これらの一種以上が使用される。
以上の説明の如く、本発明の顔料分散液は、上記で説明した、顔料、特定のA−Bブロックコポリマーからなる顔料分散剤、有機溶剤を有してなるが、より好ましい形態として、更に、色素を含有してなるものが挙げられる。以下、このような構成の顔料分散液について詳細に説明するが、色素誘導体が、誘導体塩基性官能基を有するものである場合と、酸基性官能基を有するものである場合とで、顔料分散剤として含有させる、本発明を特徴づける特定のA−BブロックコポリマーのBのポリマーブロックの構成を、それぞれ下記のように構成する。
具体的には、色素誘導体が塩基性官能基を有する場合には、前記A−Bブロックコポリマーの構成を、特定の環状ウレイド基が導入された前記Bのポリマーブロックが、モノマー単位として、更に、カルボキシ基又はリン酸基を有するメタクリル酸系モノマーを含み、該モノマーによって導入されたカルボキシ基又はリン酸基を有するものとする。
また、色素誘導体が酸性官能基を有する場合には、前記A−Bブロックコポリマーの構成の構成を、特定の環状ウレイド基が導入された前記Bのポリマーブロックが、モノマー単位として、更に、アミノ基を有するメタクリル酸系モノマーを含み、該モノマーによって導入されたアミノ基を有するものとする。
本発明では、前記したように、環状ウレイド基と顔料の水素結合によってBのポリマーブロックが顔料に吸着して、良好な顔料分散液を得るが、上記したいずれかの構成とすることで、より高い、顔料の微分散性、高保存安定性を得ることができる。上記したように、環状ウレイド基と顔料の水素結合に加えて、Bのポリマーブロックに更に酸性基又はアミノ基を導入することで、顔料の表面に、Bのポリマーブロックが酸性基の場合は、塩基性基を有する色素誘導体(塩基性シナジスト)を、Bのポリマーブロックが塩基性の場合は、酸性基を有する色素誘導体(酸性シナジスト)を吸着処理し、このようにすることで、顔料に塩基性基又は酸性基を導入させ、Bのポリマーブロックと顔料とをイオン結合させることによって、より強固な顔料吸着を施し、高微分散性、高保存安定性が達成される。前記したように、本発明の顔料分散液を上記した構成とすることで、顔料の中でも、分子内の環状構造中にカルボニル基及びアミノ基を独立に、或いはこれらが結合した、アミド基、ウレイド基、イミド基として有する有機顔料を用いた場合に、特に効果を発揮する。以下、本発明において、Bのポリマーブロックに酸性基を導入した分散剤を酸性分散剤と称し、Bのポリマーブロックに塩基性基を導入した分散剤を塩基性分散剤と称す。
色素誘導体とは、顔料の構造と同一なもの;顔料の構造と類似の構造のもの;顔料を形成する原料と同一または類似のものであり、例えば、アゾ系色素骨格、フタロシアニン系色素骨格、アントラキノン系色素骨格、トリアジン系色素骨格、アクリジン系色素骨格、ペリレン系色素骨格などを挙げることができ、その構造の一部に官能基が1つ以上結合しているものである。色素骨格に直接結合していてもよいが、アルキル基やアリール基などの炭化水素基;エステル、エーテル、スルホンアミド、ウレタン結合を介して色素骨格に結合していてもよい。本発明に使用する顔料の類似構造が好ましいが、特に限定はされない。これらの色素誘導体は、顔料合成時や顔料の結晶化時、顔料の微細化時に添加して、顔料と同一または類似構造であるので、顔料表面に吸着して顔料表面を官能基化させることができる。また、色素誘導体の量は顔料に対して、3〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。これらは従来公知の化合物、表面処理方法、添加量がとられ、特に限定されない。本発明では、この色素誘導体を顔料の一部として扱い、色素誘導体で処理された顔料を顔料とする場合がある。
[塩基性シナジストと酸性分散剤の組み合わせ]
まず、塩基性基を有する色素誘導体(塩基性シナジスト)について説明する。塩基性基を有する色素誘導体としては、前記した色素骨格に塩基性基が1つ以上置換結合している化合物がある。本発明では、例えば、その塩基性基がアミノ基である官能基を有する色素誘導体が使用できる。アミノ基としては、特に限定はなく、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のアミノ基であり、第4級アンモニウム塩も含まれる。特に好ましくは、炭素数4以上のアルキル基、シクロアルキル基が結合した2級アミノ基であり、例えばt−ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基が挙げられ、更には炭素数1〜10のアルキル基が結合している3級アミノ基であり、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基などが挙げられる。
本発明で規定したように、このような塩基性シナジストに対する顔料分散剤には、酸性基を吸着性のポリマーブロック、すなわちBのポリマーブロックに有する酸性分散剤を用いる。この酸性分散剤としては、前記した顔料分散剤の構成に加え、Bのポリマーブロックに、本発明の特徴である環状ウレイド基が導入されているとともに、酸性基としてカルボキシ基又はリン酸基を有するメタクリル酸系モノマーを共重合したものを用いる。この際に使用するカルボキシ基を有するメタクリル酸系モノマーとしては、前記したものが使用できる。また、リン酸基を有するメタクリル酸系モノマーとしては、リン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、メタクリル酸3−クロロ−2−(ホスホノオキシ)プロピル、リン酸2−(メタクリロイルオキシ)プロピル、メタクリル酸2−(フェノキシホスホニルオキシ)エチル、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられる。また、リン酸ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)のような2官能メタクリレートもゲル化しない範囲で使用することができるが、特に限定されない。この酸性基であるカルボキシ基又はリン酸基が塩基性シナジストのアミノ基とイオン結合して、且つ、前記した環状ウレイド基との水素結合により、より高吸着性を示し、その結果、高微分散性、高分散安定性を示すものとなる。本発明において、Bのポリマーブロックは、環状ウレイドメタクリレートと酸性基を有するメタクリル酸系モノマーだけで構成されてもよいが、前記した他のメタクリル酸系モノマーを共重合させてもよい。また、その酸性基の量は限定されない。
[酸性シナジストと塩基性分散剤の組み合わせ]
次に、酸性基を有する色素誘導体、酸性シナジストを使用する場合について説明する。酸性基を有する色素誘導体としては、前記した色素骨格に酸性基が1つ以上置換結合している化合物がある。その酸性基は、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基であり、それらの基について限定はない。しかし、イオン吸着を強固にするために強塩基性であるスルホン酸基であるものが好ましい。
次に、このような酸性シナジストを用いた場合、顔料分散剤としては、酸性基を吸着性のポリマーブロック、すなわちBのポリマーブロックに有する塩基性分散剤を用いる。この際に用いる塩基性分散剤としては、前記した顔料分散剤の構成に加え、Bのポリマーブロックに本発明の特徴である環状ウレイド基が導入されているとともに、塩基性基としてアミノ基を有するメタクリル酸系モノマーを共重合したものを用いる。アミノ基としては、特に限定はなく、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のアミノ基であり、第4級アンモニウム塩も含まれる。特に好ましくは、炭素数4以上のアルキル基、シクロアルキル基が結合した2級アミノ基であり、例えば、t−ブチルアミノ基が挙げられ、更には炭素数1〜10のアルキル基が結合している3級アミノ基であり、例えば、ジメチルアミノ基、ジエタルアミノ基などが挙げられる。これらの3級アミノ基を塩化ベンジルなどで第4級塩化して使用してもよい。このアミノ基を有するメタクリル酸系モノマーとしては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノメタクリレート、t−ブチルアミノメタクリレートなどが用いられる。Bのポリマーブロックは、環状ウレイドメタクリレートとアミノ基を有するメタクリル酸系モノマーだけで構成されてもよいが、前記したメタクリル酸系モノマーを共重合させてもよい。また、そのアミノ基の量は限定されない。このアミノ基である塩基性基が酸基性シナジストの酸基とイオン結合して、且つ、前記した環状ウレイド基との水素結合により、高吸着性を示し、その結果、高微分散性、高分散安定性を示すものとなる。
[A−Bブロックコポリマーの好ましい形態]
前記した顔料分散剤として、更に、酸性分散剤や塩基性分散剤として使用する本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーの、より好ましい構成を説明する。モノマー単位として、本発明で規定する環状ウレイドメタクリレートを有しないAのポリマーブロックは、そのゲルパークロマトグラフ(以下、GPCと略記)におけるポリスチレン換算の数平均分子量(以下、Mnと略記)が1000〜10000であり、且つ、その分子量の分布を示す分散度(重量平均分量/数平均分子量、以下、PDIと略記)が1.5以下であることが好ましい。更に、もう一方のBのポリマーブロックは、そのモノマー単位である下記式(1)で示される特定の環状ウレイドメタクリレートのBのポリマーブロック中における含有量が、5〜30質量%であことが好ましい。
Figure 0006059677
本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーの、より好ましい構成としては、上記に加え、A−Bブロックコポリマーの数平均分子量が3000〜15000であり、且つ、分散度が1.6以下であることが好ましい。以下、上記した各要件についてそれぞれ説明する。
まず、前記したように、有機溶剤に溶解性を示すAのポリマーブロックは、Mnが1000〜10000であり、且つ、PDIが1.5以下であることが好ましい。本発明の顔料分散液において、顔料分散剤であるA−Bブロックコポリマーを構成するAのポリマーブロックは、もう一方のBのポリマーブロックが顔料に吸着した後、有機溶剤に溶解して反発して分散安定化を施すものである。この場合に、AのポリマーブロックのMnが1000未満であると、十分な反発が得られず、顔料か凝集してしまう可能性があるので好ましくない。一方、Mnが10000超であると、溶解した後、粘度が高くなってしまう場合があるので好ましくない。より好ましくは、AのポリマーブロックのMnが2000〜8000である。加えて、AのポリマーブロックのPDIは1.5以下であることが好ましい。これは、分子量のバラツキを示す指標であり、1であると完全に分子量が同じであり、大きい値ほど分子量が小さいものから大きいものまで含むことを示している。ここで、PDIが1.5以下であるということは、比較的分子量が揃っており、大きい分子量や小さい分子量を含まないことを示す。これは前記した分子量範囲に影響を与え、小さい分子量、具体的には1000未満、大きい分子量、具体的には10000より大きい、を含まないように分子量分布が狭いことが好ましい。より好ましくは、1.3以下である。
本発明の顔料分散液において分散剤として使用するA−Bブロックコポリマーを構成する、もう一方のBのポリマーブロックは、本発明で規定する特定の環状ウレイドメタクリレートを含むモノマーによって形成されるが、Bのポリマーブロックに含まれる特定の環状ウレイドメタクリレートの含有量が5〜30質量%であることが好ましい。5%未満であると十分な水素結合が発揮されず保存安定性を示さない場合があるし、Bのポリマーブロック中に30%超含むと、前記した有機溶剤である非プロトン性極性溶媒に溶解しない場合がある。より好ましくは10〜20質量%である。
また、本発明の顔料分散液において分散剤として好適に使用されるA−Bブロックコポリマーは、そのMnが3000〜15000であり、且つPDIが1.6以下であることが好ましい。Mnが3000より小さいと、前記したAのポリマーブロックの分子量から判断するとBのポリマーブロックの分子量は1000より小さくなってしまう。すなわち、Bのポリマーブロックの分子量は、A−BブロックコポリマーのMnから、AのポリマーブロックのMnを引くことによって算出され、これをBのポリマーブロックの数平均分子量としている。Bのポリマーブロックの数平均分子量が1000より小さいと顔料の吸着性が弱く、微分散性、保存安定性が発揮できない場合があるので好ましくない。また、A−Bブロックコポリマーの分子量が15000より大きいと、添加量に対して分散剤の分子数が少なくなり、顔料に対する分散剤の量が多く必要となる場合がある。より好ましくは、Mnが5000〜12000である。また、そのPDIは、1.6以下であり、分子量が比較的揃っていることが特徴である。前記したが、分布が1.6より広いと本発明の範囲外の分子量を含む可能性があり好ましくない。好ましくは1.55以下、より好ましくは1.5以下である。
[A−Bブロックコポリマーの製造方法]
本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーは、以下の重合方法で得ることが好ましい。先に述べたように、本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーは、分子量が特定の範囲にあり、その分布が揃ったA−Bブロックコポリマーであるが、このようなポリマーを得る方法としては、リビングラジカル重合方法を使用することが好ましい。本発明のA−Bブロックコポリマーを得るためのリビングラジカル重合としては、下記の方法が好ましい。具体的には、本発明で使用するリビングラジカル重合は、重合開始化合物及び触媒の存在下、前記に挙げたようなメタクリレート系モノマー類を含有するモノマー成分をリビングラジカル重合する工程を含み、使用する重合開始化合物が、ヨウ素或いはヨウ素化合物の少なくともいずれかであり、触媒が、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート化合物、イミド系化合物、フェノール系化合物、ジフェニルメタン系化合物、及びシクロペンタジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
ここで、リビングラジカル重合としては、様々な方法が発明されている。例えば、アミンオキシドラジカルの解離と結合を利用するニトロキサイド法(Nitroxide mediated polymerization:NMP法)、銅、ルテニウム、ニッケル、鉄等の重金属と、これらの重金属と錯体を形成するリガンドとを使用し、ハロゲン化合物を開始化合物として用いて重合する原子移動ラジカル重合(Atom transfer radical polymerization:ATRP法)、ジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物等を開始化合物として使用するとともに、付加重合性モノマーとラジカル開始剤を使用して重合する可逆的付加開裂型連鎖移動重合(Reversible addition- fragmentation chain transfer:RAFT法)及びMADIX法(Macromolecular Design via Interchange of Xanthate)、有機テルル、有機ビスマス、有機アンチモン、ハロゲン化アンチモン、有機ゲルマニウム、ハロゲン化ゲルマニウム等の重金属を用いる方法(Degenerative transfer:DT法)などが挙げられる。これらの方法も重合開始化合物を用いており、本発明に適応可能である。
しかしながら、上記の方法では、本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーを簡便に安定して得るには問題がある。例えば、NMP法では、テトラメチルピペリジンオキシドラジカルなどのアミンオキシドを使用するが、100℃以上の高温条件下で重合することが必要とされるし、メタクリレート系モノマーを用いた場合には、重合が進行しないといった問題もある。
ATRP法では、重金属を使用する必要があるし、酸化還元を伴う重合方法なので、酸素の除去が必要であるし、アミン化合物をリガンドとして錯体を形成させて重合する方法では、重合系に酸性物質が存在すると錯体の形成が阻害されてしまうので、酸基を有する付加重合性モノマーをそのまま重合させることは困難である。保護基で酸基を保護したモノマーを重合し、重合後に保護基を脱離させる必要があるが、煩雑であり、酸基をポリマーブロックに導入することは容易なことではない。
RAFT法及びMADIX法では、先ず、ジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物などの特殊な化合物が必要であり、これらは硫黄系の化合物であるので、得られるポリマーには硫黄系の不快な臭気が残りやすく、着色されている場合もある。このため、得られたポリマーから臭気や着色を除去する必要がある。メタクリレート系モノマーの重合もうまくいかない場合がある。また、そのジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物などの硫黄エステルはアミノ基で分解する可能性があり、ポリマーが低分子量化したり、硫黄臭が発生したりする。
更に、DT法では、ATRP法と同様に重金属を使用する必要がある。このため、得られたポリマーから重金属を除去する必要があるとともに、発生した重金属を含む廃水を浄化しなければならないといった問題がある。
上記した状況に対して、本発明に好適なA−Bブロックコポリマーを得るための本発明で規定する重合方法では、重金属化合物の使用が必須でなく、ポリマーの精製が必須でなく、特殊な化合物を合成する必要がなく、市場にある比較的安価な材料を用いるだけで容易に製造することができるので、非常に有用である。更に、この方法は、重合条件が穏和であり、従来のラジカル重合方法と同様の条件で重合することができる方法であり、特筆すべきは、カルボキシ基などを有するモノマーをそのままリビングラジカル重合できるところにある。
本発明に好適なA−Bブロックコポリマーを製造する本発明の製造方法では、先に述べたように、重合開始化合物及び触媒の存在下、メタクリレート系モノマーを含有するモノマー成分をリビングラジカル重合する工程(重合工程)を含み、重合開始化合物として、ヨウ素とヨウ素化合物の少なくともいずれかを用いる。このリビングラジカル重合では、後述するように、様々な官能基が使用できる。
上記重合工程では、ヨウ素とヨウ素化合物の少なくともいずれかを重合開始化合物として使用し、メタクリレート系モノマーを含有するモノマー成分をリビングラジカル重合によって重合させるが、その際の反応は以下のように進行する。まず、重合開始化合物として用いられるヨウ素やヨウ素化合物に熱や光を与えると、ヨウ素ラジカルが解離する。そして、ヨウ素ラジカルが解離した状態でモノマーが挿入された後、直ちにヨウ素ラジカルがポリマー末端ラジカルと再度結合して安定化し、停止反応を防止しながら重合反応が進行する。
上記で用いるヨウ素化合物の具体例としては、2−アイオド−1−フェニルエタン、1−アイオド−1−フェニルエタンなどのアルキルヨウ化物;2−シアノ−2−アイオドプロパン、2−シアノ−2−アイオドブタン、1−シアノ−1−アイオドシクロヘキサン、2−シアノ−2アイオド−2,4−ジメチルペンタン、2−シアノ−2−アイオド−4−メトキシ−2,4−ジメチルペンタンなどのシアノ基含有ヨウ化物などを挙げることができる。
これらのヨウ素化合物は、市販品をそのまま使用してもよいが、従来公知の方法で調製したものを使用することもできる。例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物とヨウ素とを反応させることで、ヨウ素化合物を得ることができる。また、上記のヨウ素化合物のヨウ素が臭素または塩素などのハロゲン原子に置換した有機ハロゲン化物に、第4級アンモニウムアイオダイドやヨウ化ナトリウムなどのヨウ化物塩を反応させ、ハロゲン交換させることでもヨウ素化合物を得ることができる。
重合工程では、重合開始化合物とともに、更に重合開始化合物のヨウ素を引き抜くことができる触媒を使用してもよい。触媒としては、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート化合物などのリン系化合物;イミド系化合物などの窒素系化合物;フェノール系化合物などの酸素系化合物;ジフェニルメタン系化合物、シクロペンタジエン系化合物などの炭化水素系化合物を用いることが好ましい。なお、これらの触媒は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
リン系化合物の具体例としては、三ヨウ化リン、ジエチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、エトキシフェニルフォスフィネート、フェニルフェノキシフォスフィネートなどを挙げることができる。窒素系化合物の具体例としては、スクシンイミド、2,2−ジメチルスクシンイミド、マレイミド、フタルイミド、N−アイオドスクシンイミド、ヒダントインなどを挙げることができる。酸素系化合物の具体例としては、フェノール、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t−ブチルフェノール、カテコール、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンなどを挙げることができる。炭化水素系化合物の具体例としては、シクロヘキサジエン、ジフェニルメタンなどを挙げることができる。触媒の使用量(モル数)は、重合開始化合物の使用量(モル数)未満とすることが好ましい。触媒の使用量(モル数)が多過ぎると、重合が制御され過ぎてしまい、重合が進行しにくくなる場合があるので好ましくない。
また、リビングラジカル重合の際の温度(重合温度)は30〜100℃とすることが好ましい。重合温度が高過ぎると、重合末端のヨウ素が分解してしまい、末端が安定せずにリビング重合とならない場合があるので好ましくない。またこの重合方法では、末端はヨウ素が結合しており、このヨウ素をラジカルとして解離させてラジカルが発生して、その末端が安定であることが好ましい。ここで、モノマーがアクリレートやビニル系などの場合、末端は2級のヨウ化物であり、比較的安定でヨウ素ラジカルとして外れず、重合が進行しない、または分布が広くなってしまうという可能性がある。この問題に対しては温度を上げて解離することができるが、好ましは、上記温度範囲で温和に重合することが、環境、エネルギーの点で好ましい。従って、ラジカルが発生しやすく、比較的安定な3級のヨウ化物の方が好ましく、本発明で使用するリビングラジカル重合は、メタクリレート系のモノマーの重合に適しており、この点からも本発明に有用である。
また、重合工程においては、通常、ラジカルを発生し得る重合開始剤を添加する。重合開始剤としては、従来公知のアゾ系開始剤や過酸化物系開始剤が使用される。なお、上記の重合温度の範囲で十分にラジカルが発生する重合開始剤を用いることが好ましい。具体的には、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤を用いることが好ましい。当該重合開始剤の使用量は、モノマーに対して0.001〜0.1モル倍とすることが好ましく、0.002〜0.05モル倍とすることが更に好ましい。この重合開始剤の使用量が少な過ぎると重合反応が十分に進行しない場合がある。一方、重合開始剤の使用量が多過ぎると、リビングラジカル重合反応ではない通常のラジカル重合反応が副反応として進行してしまう場合がある。
リビングラジカル重合は、有機溶剤を使用しないバルク重合であってもよいが、前記した有機溶剤を使用する溶液重合とすることが好ましい。使用した有機溶剤をそのまま顔料分散液の溶剤として使用することができる。有機溶剤としては、重合開始化合物、触媒、モノマー成分、及び重合開始剤などの成分を溶解し得るものであることが好ましい。
また、これらの重合に使用した有機溶剤は、そのままA−Bブロックコポリマーの溶液として使用することができるが、必要に応じて、溶液からポリマーを取り出して固形とすることもできる。ポリマーを取り出す方法としては特に限定はなく、例えば、貧溶剤に析出させて濾過、乾燥したり、溶液を乾燥してポリマーだけを取り出したりして、ポリマーの固形物として得ることもできる。得られた固体のポリマーは、そのまま本発明のポリマー溶液として使用してもよい
溶液重合する場合において、重合液の固形分濃度(モノマー濃度)は5〜80質量%とすることが好ましく、20〜60質量%とすることが更に好ましい。重合液の固形分濃度が5質量%未満であると、モノマー濃度が低過ぎて重合が完結しない場合があるので好ましくない。一方、重合液の固形分濃度が80質量%超またはバルク重合であると、重合液の粘度が高過ぎてしまい、撹拌が困難になって重合収率が低下する傾向にある。リビングラジカル重合は、モノマーがなくなるまで行うことが好ましい。具体的には、重合時間は0.5〜48時間とすることが好ましく、実質的には1〜24時間とすることが更に好ましい。また、重合雰囲気は特に限定されず、通常の範囲内で酸素が存在する雰囲気であっても、窒素気流雰囲気であってもよい。また、重合に使用する材料(モノマーなど)は、蒸留、活性炭処理、またはアルミナ処理などにより不純物を除去したものを用いてもよいし、市販品をそのまま用いてもよい。更に、遮光下で重合を行ってもよいし、ガラスなどの透明容器中で重合を行ってもよい。
上記した重合方法で得られるA−Bブロックコポリマーは、リビングラジカル重合する際のメタクリレート系モノマー類と、重合開始化合物の使用バランスをモル比で調整することによって、主鎖の分子量が制御されてなるものになる。具体的には、重合開始化合物のモル数に対して、モノマーのモル数を適切に設定することで、その主鎖が、任意の分子量であるポリマーを得ることができる。例えば、重合開始化合物を1モル使用し、分子量100のモノマーを500モル使用して重合した場合、「1×100×500=50000」の理論分子量を有するポリマーを得ることができる。すなわち、主鎖のポリマーの理論分子量を下記式(1)で算出することができる。なお、上記の「分子量」は、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)のいずれをも含む概念である。
「主鎖のポリマーの理論分子量」=「重合開始化合物1モル」×「モノマー分子量」×「モノマーのモル数/重合開始化合物のモル数」・・・(1)
重合開始化合物の量は前記した通りである。
なお、重合工程においては、二分子停止や不均化の副反応を伴う場合があるので、上記の理論分子量を有する主鎖のポリマーが得られない場合がある。これらの副反応が起こらずに得られたものであることが好ましい。また、重合率は100%でなくてもよい。更に、重合を一旦終了した後、重合開始化合物や触媒を添加して残存するモノマーを消費させて重合を完結させてもよい。すなわち、本発明を特徴づける顔料分散剤は、先に述べたような製造方法で、特定の主鎖を有する前記した構造のA−Bブロックコポリマーが生成して、これを主成分として含んでいればよい。
先述したように、本発明の顔料分散液は、顔料に、難分解性の顔料を用いた場合により顕著な効果が得られるものとなる。難分解性の顔料としては、分子内の環状構造中にカルボニル基及びアミノ基を独立に、或いは、これらの基が結合してアミド基、ウレイド基、イミド基として有する有機顔料が挙げられるが、その中でも、特にジケトピロロピロール系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料を用いた場合に顕著な効果が得られる。これらの顔料は、微分散性、高透明性、高コントラスト性が求められるカラーフィルター用の顔料であるが、従来の顔料分散剤では微分散することが難しかったため、本発明によって提供されるこれらの顔料が微分散された顔料分散液は極めて有用であり、カラーフィルター用着色剤としての利用が期待される。
本発明の顔料分散液を、例えば、上記したようなカラーフィルター用着色剤に使用する場合、併用する有機溶剤の好適なものとして、安全性、環境面からプロピレングリコール系の溶剤が挙げられる。中でも特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(誘電率8.3)が好ましい。この溶剤は、本発明で所望する非プロトン性極性溶剤で且つ低誘電率という条件に適合しており、本発明の顔料分散液に、このような特性の溶剤系を使用することで、より高い、顔料の微分散性、高保存安定性、低粘度が得られ、本発明のより優れた効果が実現される。
[顔料分散液]
本発明は、上記したA−Bブロックコポリマーを顔料分散剤としたことで、優れた効果が得られる顔料分散液の提供を達成している。本発明の顔料分散液は、顔料と顔料分散剤と有機溶剤とを有してなるが、これらの配合割合は、顔料が5〜20質量%、顔料分散剤が0.5〜30質量%、有機溶剤質量が50〜94.5%、の範囲内とすることが好ましい。顔料分は0.5〜20質量%であり、より好ましくは10〜18質量%である。0.5%より少ないと着色剤としての性能が足りず色が薄く、20質量%超であると粘度が高くなりすぎる場合があるので好ましくない。顔料分散剤は、0.5〜30質量%の範囲で使用される。顔料分散剤は、顔料100質量部に対して10〜150質量部の範囲内で使用することが好ましい。10部より少ないと顔料の保存安定が足りない場合があり、150部より多いと分散剤が過剰となって、粘度が上がったりする場合があるので好ましくない。上記は、本発明の顔料分散液中における顔料に対する分散剤の量であり、顔料分散液中で上記の比率の配合で使用されればよい。残りが有機溶剤である。
また、本発明の顔料分散液には、他の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、レベリング剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防腐剤、抗菌剤、染料、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。また、被膜を形成したり、カラーフィルター製造時にアルカリ現像させたりするためのバインダー成分を添加してもよく、ポリアクリレート(アクリル樹脂)、ポリスチレンアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタンなどのポリマー構造であり、特に限定されない。その量も任意であり、特に限定されないが、好ましくは顔料100質量部に対して10〜200質量部、より好ましくは20〜150質量部である。
本発明の顔料分散液は、顔料、顔料分散剤、有機溶剤及び必要に応じて使用する添加剤を従来公知の方法で分散して得られることができ、その方法は特に限定されない。その際に使用する分散機としては、例えば、ニーダー、二本ロール、三本ロール、ミラクルKCK(浅田鉄鋼株式会社、商品名)といった混練機や、超音波分散機や、高圧ホモジナイザーである、マイクロフルイダイザー(みずほ工業株式会社、商品名)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会社、商品名)、スターバースト(スギノマシン株式会社、商品名)、G−スマッシャー(リックス株式会社、商品名)等が挙げられる。また、ガラスやジルコンなどのビーズメディアを使用したものでは、ボールミル、サンドミルや横型メディアミル分散機、コロイドミルなどが使用できる。その分散方法は特に限定されない。
本発明では、所望の粒度や分布を有する顔料の分散体を得るために、分散機の粉砕メディアのサイズを小さくする、粉砕メディアの充填率を大きくする、また、処理時間を長くする、吐出速度を遅くする、粉砕後フィルターや遠心分離機などで分級するなどの手法を用いることができる。または、それらの手法の組み合わせが挙げられる。次いで、得られた顔料分散液は、そのままでもよいが、遠心分離機にかけたり、任意のフィルターを通したりして、粗大粒子を除去することが好ましい。以上のようにして、本発明の顔料分散液を得ることができる。
得られる本発明の顔料分散液の物性に関しては、粘度などの物性については特に限定されず任意である。粘度の範囲としては、1〜100mPa・s、好ましくは3〜20mPa・sが挙げられるが、要望される顔料濃度や用途によって違ってくるのでまったく限定はない。その他の物性についても特に限定はない。
[樹脂処理顔料]
本発明では、本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーを使用して、より高度な安定性を得るために、顔料表面に分散剤を堆積、カプセル化させる方法を取り、樹脂処理顔料とすることも好ましい実施形態である。すなわち、顔料をあらかじめ本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーで樹脂処理することで、顔料と顔料分散剤を接触・密着させることによって、強固に水素結合による吸着を施し、より高微分散、高分散安定性を得ることできる。また、従来、微細化された顔料は乾燥、粉砕されて使用される。この乾燥において、微細化された顔料自体が接触して乾燥凝集して大きな粒子径である二次凝集体となってしまい、微細化された顔料に分散するのに多大なエネルギーが必要である。その点において、あらかじめ樹脂で処理しておくことで、樹脂が顔料粒子自体の接触による凝集を防止し、二次凝集を防止し、より容易に微細化された顔料粒子径に分散することができる。
この樹脂処理顔料の構成は、本発明の顔料分散液で好適であるとした顔料と顔料分散剤の比率になるように、顔料100質量部に対し、A−Bブロックコポリマーが10質量部〜150質量部の範囲内である。前記したが、この10質量部より少ないと顔料の保存安定が足りない場合があり、150質量部より多いと分散剤が過剰となって、粘度が上がったりする場合があるので好ましくない。
樹脂処理顔料の製造方法としては、従来公知の方法が利用でき、特に限定されない。例えば、相転移やpH変換によって処理用のポリマーを析出させて顔料を処理する方法、或いは、顔料を微細化する際にポリマー又はその溶液を添加して一緒に混錬し、微細化と被覆を同時に行い、ついで貧溶剤に析出させたり、中和させたりして顔料を樹脂で処理する方法などがある。
より具体的に例示すれば、下記に挙げる方法を利用できる。例えば、顔料、好ましくは顔料ペースト、を水にて解膠し、重合溶液を添加して本発明を特徴づけるA−Bブロックコポリマーを析出させつつ顔料に処理してもよいし、酸性基や塩基性基を有するA−Bブロックコポリマーであれば、中和してイオン化してA−Bブロックコポリマーを水溶液化し、添加して、撹拌、混合、又は分散した後、pHを中性に戻してA−Bブロックコポリマーを水不溶化し析出させて顔料を処理する方法、顔料の水スラリーに有機溶剤に溶解させた、好ましくは水に不溶の有機溶剤、A−Bブロックコポリマーを添加して、顔料と有機溶剤に溶解したA−Bブロックコポリマーを合一化させる方法、顔料の微細化工程において、水可溶無機塩をメディア、水、有機溶剤と共に磨砕する際に、A−Bブロックコポリマー、その有機溶剤溶液、または中和された水溶液を加えて磨砕し、磨砕後、水析出したりpHを戻したりして表面処理する方法などがある。更に、上記のようにして得られた樹脂処理顔料を、前記した有機溶剤中に前記した従来公知の方法で分散して、本発明の顔料分散液を得ることができる。このように構成することで、より容易に顔料を微分散することができる効果が得られる。
本発明の顔料分散液は、様々な物品の着色剤として使用することができる。例えば、塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、インクジェットインク、コーティング剤、文具用カラーなどの顔料着色剤組成物として用いることができる。特に、低粘度化と顔料の高微細化が可能であるとともに、長期保存安定性が良好であることから、カラーフィルター用着色剤や紫外線硬化型インクジェットインク用着色剤、油性インクジェットインク用着色剤として好適である。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは断りのない限り質量基準である。
[合成例1:実施例で用いる酸性の樹脂溶液UP−1の合成]
まず、撹拌機、逆流コンデンサー、温度計及び窒素導入管を取り付けた1リッターのセパラブルフラスコの反応装置に下記のものを仕込み、下記のようにしてAのブロックコポリマーを合成した。具体的には、上記反応装置に、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMAcと略記)を380.2部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るための、ヨウ素を2.0部と、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、V−70と略記)を7.4部、触媒としてジフェニルメタン(以下、DPMと略記)を0.3部、更に、メタクリル酸メチル(以下、MMAと略記)を40.1部、メタクリル酸ブチル(以下、BMAと略記)を56.9部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。2時間後、ヨウ素の褐色が消え、この間に、重合開始剤であるV−70がヨウ素と反応してヨウ素化合物である重合開始化合物となったことが確認できた。
その後、更に上記の温度を維持して3時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ19.9%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。以下、重合率は、上記と同様の方法で算出した。また、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)を展開溶媒とするGPCにて分子量を測定したところ、数平均分子量(以下、Mnと記載する場合がある)が4600、分散度が1.29であった。以下、数平均分子量はTHF溶媒を展開溶媒とするGPCの示差屈折率検出器の測定値である。以上のようにして、ブロックコポリマーを構成するAのポリマーブロック溶液を得た。
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、メタクリル酸(以下、MAAと略記)を17.2部、MMAを89.3部、2−(2−オキソイミダゾリジン−3−イル)エチルメタクリレート(以下、OEMAと略記)を59.4部、V−70を4.5部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。B鎖中の酸価を計算により求めると67.6mgKOH/gである。
なお、上記B鎖中の酸価は、以下のように算出した。まず、B鎖組成1部あたりのMAA量を求めると、以下のようになる。
17.2/(17.2+89.3+59.4)=0.1037部
次いで、MAAの分子量を86.1、KOHの分子量を56.1として用い、B鎖の酸価を求めると以下のように算出される。以下、B鎖中の酸価は、同様の方法にて算出した。
(0.1037/86.1)×56.1×1000=67.6mgKOH/g
このポリマー溶液は固形分40.0%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。また、Mnは13400、分散度は1.48、ピークトップ分子量は19800であった。Aのポリマーブロックを形成した際よりも分子量が高分子量側にずれていることが確認されたことより、A−Bブロックコポリマーが形成されたと考えられる。そして、Bのポリマーブロックの数平均分子量は、A−Bブロックコポリマーの分子量からAのポリマーブロックを引いた値として算出することができ、これより、Bのポリマーブロックの数平均分子量は8800と算出された。
更に、サンプリング物をトルエン、エタノールにて希釈した後、フェノールフタレイン溶液を指示薬として、0.1%エタノール性水酸化カリウム溶液を用いた酸塩基滴定によってA−Bブロックコポリマー全体の実測の酸価を求めたところ、実測の酸価は、42.2mgKOH/gであった。なお、以下、実測の酸価は、いずれも上記と同様の操作を行い、算出した値である。
次いで、上記で得た反応溶液を2Lのビーカーに移し、固形分が25%になるようにPGMAcを394.3部加え、均一になるまで撹拌した。この液体の固形分を測定したところ24.9%であった。この樹脂溶液をUP−1と称する。
[合成例2:実施例で用いる酸性の樹脂溶液UP−2の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、下記の材料を用い、合成例1で行ったと同様にして、A−Bブロックコポリマーを合成し、顔料分散剤の樹脂溶液を得た。具体的には、合成例1と同様の装置に、溶剤としてPGMAcを405.3部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るための、ヨウ素を2.0部と、V−70を7.4部、DPMを0.3部、更に、MMAを40.1部、BMAを56.9部、MAAを8.6部仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ20.2%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。また、分子量を測定したところ、Mnが4500、分散度が1.36であった。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、フタル酸系ハーフエステル型メタクリレートであるフタル酸1−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル](以下、PAと略記)を55.7部、MMAを79.2部、OEMAを39.6部、V−70を5.2部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。B鎖中の酸価を計算により求めると64.3mgKOH/gであった。
このポリマー溶液は固形分40.4%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。また、Mnは10400、分散度は1.47、ピークトップ分子量は15300であった。Bのポリマーブロックの数平均分子量は、5900と算出された。実測の酸価は、42.5mgKOH/gであった。
次いで、上記で得た反応溶液を2Lのビーカーに移し、固形分が25%になるようにPGMAcを420.1部加え、均一になるまで撹拌した。この液体の固形分を測定したところ24.8%であった。この樹脂溶液をUP−2と称する。
[合成例3:実施例で用いる酸性の樹脂溶液UP−3の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、下記の材料を用い、合成例1で行ったと同様にして、A−Bブロックコポリマーを合成し、顔料分散剤の樹脂溶液を得た。具体的には、合成例1と同様の装置に、溶剤としてPGMAcを385.4部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るため、ヨウ素を2.0部と、V−70を7.4部、DPMを0.3部、更に、MMAを40.1部、BMAを56.9部、MAAを8.6部仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ21.0%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。また、分子量を測定したところ、Mnが4400、分散度が1.32であった。以上のようにして、Aのブロックコポリマーを構成するAのポリマーブロック溶液を得た。
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、リン酸系ハーフエステル型メタクリレートであるリン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル(以下、P1Mと略記)を42.0部、MMAを79.2部、OEMAを39.6部、V−70を4.5部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。B鎖中の酸価を計算により求めると139.4mgKOH/gであった。
このポリマー溶液は固形分40.3%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。またMnは9900、分散度は1.51、ピークトップ分子量は15100であった。Bのポリマーブロックの数平均分子量は、4500と算出された。実測の酸価は、86.3mgKOH/gであった。
次いで、上記で得た反応溶液を2Lのビーカーに移し、固形分が25%になるようにPGMAcを404.1部加え、均一になるまで撹拌した。この液体の固形分を測定したところ25.2%であった。この樹脂溶液をUP−3と称する。
表1に、上記の合成例1〜3で得た、実施例の顔料分散液の分散剤に用いる本発明の樹脂溶液の物性を示した。
Figure 0006059677
[比較合成例1:ランダム重合による酸性の樹脂溶液RUP−1の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、溶剤としてPGMAcを365.8部投入し、70℃に加温した。これに、予め別容器に調製しておいた、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、V−65と略記)10部溶解させたMMAを119.6部、BMAを85.3部、MAAを25.8部、OEMAを19.8部含有するモノマー溶液を、上記の反応装置中に1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、更に同温度で5時間重合させて、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は40.1%であった。ポリマーのMnは9600、分散度は1.98、実測の酸価は66.9mgKOH/gであった。この樹脂溶液をRUP−1と称する。これは合成例1で得た樹脂と同組成であるが、ランダム構造のランダムコポリマーであり、比較例を構成する。その組成及び物性を表2にまとめて示した。
Figure 0006059677
[比較合成例2:B鎖に水酸基を有する酸性の樹脂溶液RUP−2の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、下記の材料を用い、合成例1で行ったと同様にして、A−Bブロックコポリマーを合成したが、この例では、モノマー単位に、環状ウレイドメタクリレートであるOEMAを用いなかった。具体的には、合成例1で使用したと同様の装置に、PGMAcを372.0部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るため、ヨウ素を2.0部と、V−70を7.4部、DPMを0.3部、更に、MMAを60.1部、BMAを85.3部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ27.5%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。また、分子量を測定したところ、Mnが6600、分散度が1.28であった。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、MAAを25.8部、MMAを59.5部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、HEMAと略記)を26.0部、V−70を3.3部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。B鎖中の酸価を計算により求めると151.0mgKOH/gであった。
このポリマー溶液は固形分39.9%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。またMnは12500、分散度は1.45、ピークトップ分子量は17900であった。Bのポリマーブロックの数平均分子量は、5900と算出された。実測の酸価は、65.8mgKOH/gであった。
次いで、上記で得た反応溶液を2Lのビーカーに移し、固形分が25%になるようにPGMAcを385.1部加え、均一になるまで撹拌した。この液体の固形分を測定したところ25.3%であった。この樹脂溶液をRUP−2と称する。これは、合成例1では、Bのポリマーブロックの合成の際に、モノマー単位としてOEMAを使用して環状ウレイド基を導入した代わりに、HEMAを使用することで、顔料表面に水素結合可能な水酸基を導入したブロックコポリマーである。
[比較合成例3:B鎖に水素結合に必要な基がない酸性の樹脂溶液RUP−3の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、下記の材料を用い、合成例1で行ったと同様にして、A−Bブロックコポリマーを合成したが、この例では、モノマー単位に、OEMAもHEMAも使用しなかった。具体的には、合成例1で使用したと同様の装置に、PGMAcを363.2部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るため、ヨウ素を2.0部と、V−70を7.4部、DPMを0.3部、更に、MMAを60.1部、BMAを85.3部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ27.9%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。また、分子量を測定したところ、数平均分子量が6700、分散度が1.27であった。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、MAAを25.8部、MMAを79.5部、V−70を3.2部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。B鎖中の酸価を計算により求めると159.6mgKOH/gであった。
このポリマー溶液は固形分40.2%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。また、Mnは11500、分散度は1.41、ピークトップ分子量は16200であった。Bのポリマーブロックの数平均分子量は、4800と算出された。実測の酸価は、67.2mgKOH/gであった。
次いで、上記で得た反応溶液を2Lのビーカーに移し、固形分が25%になるようにPGMAcを376部加え、均一になるまで撹拌した。この液体の固形分を測定したところ25.1%であった。この樹脂溶液をRUP−3と称する。これは、本発明では、Bのポリマーブロックに、顔料表面に吸着するための水素結合可能な環状ウレイド基を導入することを規定しているのに対し、水素結合に必要な環状ウレイド基も水酸基も導入されていないブロックコポリマーである。
表3に、上記の比較合成例2、3で得た、比較例の顔料分散液の分散剤に用いる樹脂溶液の物性を示した。
Figure 0006059677
[合成例4:実施例に用いる塩基性の樹脂溶液UP−4の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、下記の材料を用い、合成例1で行ったと同様にして、A−Bブロックコポリマーを合成し、その樹脂溶液を得た。具体的には、合成例1と同様の装置に、溶剤としてPGMAcを343.1部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るため、ヨウ素を2.0部と、V−70を7.4部、DPMを0.3部、更に、MMAを40.1部、BMAを56.9部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ21.5%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。また、分子量を測定したところ、Mnが4500、分散度が1.26であった。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル(以下、DMAEMAと略記)を31.3部、MMAを89.3部、OEMAを19.8部、V−70を3.3部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。B鎖中のアミン価を計算により求めると101.1mgKOH/gである。
なお、B鎖中のアミン価は、以下のように算出した。
まず、B鎖組成1部あたりのDMAEMA量を求める。
31.3/(31.3+59.5+19.8)=0.2830部
次いで、DMAEMAの分子量を157.1、KOHの分子量を56.1として用いると、B鎖の酸価は以下のようにして算出される。以下、B鎖中のアミン価は、同様の方法にて算出した値である。
(0.2830/157.1)×56.1×1000=101.1mgKOH/g
このポリマー溶液は固形分40.0%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。また、Mnは9800、分散度は1.46、ピークトップ分子量は14200であった。Bのポリマーブロックの数平均分子量は、5300と算出された。更に、サンプリング物を、トルエン、エタノールにて希釈した後、0.1Nの、2−プロパノール性塩酸溶液を用い電位差滴定装置(AT−510、京都電子工業社製)によってA−Bブロックコポリマー全体の実測のアミン価を求めたところ、アミン価は、47.3mgKOH/gであった。以下、実測のアミン価は、いずれも上記と同様の操作を行い算出した値である。
次いで、上記で得た反応溶液を2Lのビーカーに移し、固形分が25%になるようにPGMAcを356.1部加え、均一になるまで撹拌した。この液体の固形分を測定したところ25.2%であった。この樹脂溶液をUP−4と称する。
[合成例5:実施例に用いる塩基性の樹脂溶液UP−5の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、下記の材料を用い、合成例1で行ったと同様にして、A−Bブロックコポリマーを合成し、その樹脂溶液を得た。具体的には、合成例1と同様の装置に、溶剤としてPGMAcを333.7部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るための、ヨウ素を2.0部と、V−70を7.4部、DPMを0.3部、更に、MMAを40.1部、BMAを56.9部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ22.0%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。また、分子量を測定したところ、Mnが4500、分散度が1.28であった。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、DMAEMAを15.7部、MMAを59.5部、OEMAを59.4部、V−70を4.0部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。B鎖中のアミン価を計算により求めると41.6mgKOH/gである。
このポリマー溶液は固形分40.0%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。またMnは13600、分散度は1.48、ピークトップ分子量は20200であった。Bのポリマーブロックの分子量は、9100と算出された。実測のアミン価は、24.4mgKOH/gであった。
次いで、上記で得た反応溶液を2Lのビーカーに移し、固形分が25%になるようにPGMAcを347.4部加え、均一になるまで撹拌した。この液体の固形分を測定したところ25.1%であった。この樹脂溶液をUP−5と称する。
[合成例6:実施例に用いる塩基性の樹脂溶液UP−6の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、合成例1と同様に顔料分散剤であるA−Bブロックコポリマーを合成し、その樹脂溶液を得た。具体的には、合成例1と同様の装置に、溶剤としてPGMAcを375.4部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るため、ヨウ素を2.0部と、V−70を7.4部、DPMを0.3部、更に、MMAを40.1部、BMAを113.8部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ28.5%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。また、分子量を測定したところ、Mnが7200、分散度が1.32であった。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、DMAEMAを15.7部、MMAを59.5部、OEMAを29.7部、V−70を3.1部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。B鎖中のアミン価を計算により求めると53.6mgKOH/gであった。
このポリマー溶液は固形分40.0%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。またMnは11300、分散度は1.48、ピークトップ分子量は16800であった。Bのポリマーブロックの数平均分子量は、4100と算出された。実測のアミン価は、21.4mgKOH/gであった。
次いで、上記で得た反応溶液を2Lのビーカーに移し、固形分が25%になるようにPGMAcを388.2部加え、均一になるまで撹拌した。この液体の固形分を測定したところ25.0%であった。この樹脂溶液をUP−6と称する。
表4に、上記の合成例4〜6で得た、実施例の顔料分散液の分散剤に用いる樹脂溶液の組成及び物性を示した。
Figure 0006059677
[比較合成例4:ランダム重合による塩基性の樹脂溶液RUP−4の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、溶剤としてPGMAcを371.1部投入し、70℃に加温した。これに、予め別容器に調製しておいた、V−65を10部溶解させたMMAを129.4部、BMAを56.9部、DMAEMAを31.3部、OEMAを19.8部含有するモノマー溶液を、上記の反応装置中に1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、更に同温度で5時間重合させて、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分は40.0%であった。ポリマーのMnは9400、分散度は1.99、実測のアミン価は47.0mgKOH/gであった。この樹脂溶液をRUP−4と称する。これは、合成例4で得た樹脂と同組成であるが、ランダム構造のランダムポリマーであり、比較例を構成する。得られたランダムポリマーの組成及び物性を表2にまとめて示した。
Figure 0006059677
[比較合成例5:B鎖に水酸基を有する塩基性の樹脂溶液RUP−5の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、下記の材料を用い、合成例1で行ったと同様にして、A−Bブロックコポリマーを合成したが、この例では、モノマー単位に、環状ウレイドメタクリレートであるOEMAを用いなかった。具体的には、合成例1で使用したと同様の装置に、PGMAcを307.7部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るため、ヨウ素を2.0部と、V−70を7.4部、DPMを0.3部、更に、MMAを40.1部、BMAを56.9部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して3時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ23.4%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。また、分子量を測定したところ、Mnが4600、分散度が1.28であった。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、DMAEMAを31.3部、MMAを59.5部、HEMAを26.0部、V−70を3.3部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。B鎖中のアミン価を計算により求めると95.7mgKOH/gであった。
このポリマー溶液は固形分40.2%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。また、Mnは10700、分散度は1.44、ピークトップ分子量は18200であった。Bのポリマーブロックの数平均分子量は、6100と算出された。実測のアミン価は、43.4mgKOH/gであった。
次いで、上記で得た反応溶液を2Lのビーカーに移し、固形分が25%になるようにPGMAcを320.7部加え、均一になるまで撹拌した。この液体の固形分を測定したところ25.1%であった。この樹脂溶液をRUP−5と称する。これは、合成例4〜6で合成したBのポリマーブロックでは、モノマー単位としてOEMAを使用することで、環状ウレイド基を導入したのに替わり、水素結合する水酸基を導入したブロックコポリマーである。
[比較合成例6:B鎖に水素結合に必要な基がない塩基性の樹脂溶液RUP−6の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、下記の材料を用い、合成例1で行ったと同様にして、A−Bブロックコポリマーを合成したが、この例では、モノマー単位に、OEMAもHEMAも使用しなかった。具体的には、合成例1で使用したと同様の装置に、PGMAcを298.7部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るため、ヨウ素を2.0部と、V−70を7.4部、DPMを0.3部、更に、MMAを40.1部、BMAを56.9部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ23.9%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。また、分子量を測定したところ、Mnが4700、分散度が1.25であった。以上のようにして、Aのポリマーブロック溶液を得た。
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、DMAEMAを31.3部、MMAを79.5部、V−70を3.3部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。B鎖中のアミン価を計算により求めると100.9mgKOH/gであった。
このポリマー溶液は固形分39.8%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。またMnは10200、分散度は1.46、ピークトップ分子量は14900であった。Bのポリマーブロックの数平均分子量は、5600と算出された。実測のアミン価は、53.6mgKOH/gであった。
次いで、上記で得た反応溶液を2Lのビーカーに移し、固形分が25%になるようにPGMAcを311.7部加え、均一になるまで撹拌した。この液体の固形分を測定したところ24.9%であった。この樹脂溶液をRUP−6と称する。これは、本発明では、Bのポリマーブロックに、顔料表面に吸着するための水素結合可能な環状ウレイド基を導入することを規定しているのに対し、樹脂溶液をRUP−6は、水素結合に必要な環状ウレイド基も水酸基も導入されていないブロックコポリマーである。
表6に、上記の比較合成例5、6で得た、比較例の顔料分散液の分散剤に用いる樹脂溶液の組成及び物性を示した。
Figure 0006059677
[合成例7:実施例で用いる中性の樹脂溶液UP−7の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、下記の材料を用い、合成例1で行ったと同様にして、A−Bブロックコポリマーを合成し、顔料分散剤の樹脂溶液を得た。本合成例では、溶剤として二塩基酸ジエステル(マロン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル混合溶剤、インビスタ社製、商品名:DBE)を325.3部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るための、ヨウ素を2.0部と、V−70を7.4部、DPMを0.3部、更に、MMAを40.1部、BMAを56.9部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ22.4%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。また、分子量を測定したところ、Mnが4500、分散度が1.27であった。以上のようにして、Aのブロックコポリマーを得た。
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液に、MMAを89.3部、OEMAを39.6部、V−70を3.9部添加して、更に45℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。このポリマー溶液は固形分40.1%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。また、Mnは10200、分散度は1.43、ピークトップ分子量は14500であった。Bのポリマーブロックの数平均分子量は、5700と算出された。
次いで、反応溶液を2Lのビーカーに移し、固形分が25%になるようにDBEを338.8部加え、均一になるまで撹拌した。この液体の固形分を測定したところ25.4%であった。この樹脂溶液をUP−7と称する。UP−7は、顔料に対して吸着性を示すBのポリマーブロックに、酸性基や塩基性基を有しない中性のブロックコポリマーである。
[合成例8:実施例で用いる酸性の樹脂溶液UP−8の合成]
合成例1と同様の装置を使用し、下記の材料を用い、合成例1で行ったと同様にして、A−Bブロックコポリマーを合成し、顔料分散剤の樹脂溶液を得た。本合成例では、溶剤として、ジエチレングリコールメチルエーチルエーテル(DEGME)を363.8部、重合開始化合物としてのヨウ素化合物を得るため、V−70を7.4部、DPMを0.3部、更に、MMAを60.1部、BMAを85.3部、仕込んで撹拌し、45℃に加温した。上記の温度を維持して5時間重合を行い、この時点で反応溶液の一部をサンプリングした。このサンプリング物の固形分を測定したところ27.9%であり、これに基づいて算出した重合率はほぼ100%であった。また、分子量を測定したところ、Mnが6500、分散度が1.31であった。以上のようにして、Aのブロックコポリマーを得た。
次いで、上記で得たAのポリマーブロック溶液を40℃に降温した後、MAAを25.8部、MMAを59.5部、OEMAを19.8部、V−70を3.2部添加して、更に40℃で4時間重合し、Bのポリマーブロックを形成した。B鎖中の酸価を計算により求めると158.9mgKOH/gであった。
このポリマー溶液は固形分40.1%であり、ほぼ100%の重合率であることが確認できた。また、Mnは12800、分散度は1.49、ピークトップ分子量は19100であった。Bのポリマーブロックの数平均分子量は、6300と算出された。実測の酸価は、67.2mgKOH/gであった。
次いで、反応溶液を2Lのビーカーに移し、固形分が25%になるようにDEGMEを374.8部加え、均一になるまで撹拌した。液体の固形分を測定したところ25.2%であった。この樹脂溶液をUP−8と称する。
表7に、合成例7、8で得た、実施例の顔料分散液の分散剤に用いる本発明の樹脂溶液の組成及び物性を示した。
Figure 0006059677
<顔料着色剤組成物への適用>
(実施例1〜4、比較例1〜4:酸性の樹脂溶液を用いた顔料分散液)
(a)顔料の微細化処理
カラーフィルター用の顔料として、PR254、PR177、PY138、PB15−6、PG−58を準備し、以下に示す方法で微細化処理をそれぞれ行なった。顔料100部、塩化ナトリウム400部、及びジエチレングリコール130部を、加圧時に使用する密閉用の蓋を装着したニーダー(モリヤマ社製加圧ニーダー)に仕込んだ。ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合した。加圧蓋を閉じて、圧力6kg/cm2で内容物を押さえ込みながら、7時間混練及び摩砕処理を行って摩砕物を得た。得られた摩砕物を2%硫酸3000部に投入し、1時間撹拌処理した。その後、ろ過して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去した後、十分水洗し、次いで、乾燥及び粉砕して顔料粉末を得た。得られた顔料粉末の平均粒子径は約30nmであった。
(b)顔料分散液の調製−1
上記で微細化処理した顔料をそれぞれに含む表8に示した各成分を、表8に示した量(部)で配合し、ディゾルバーで2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理して顔料分散液を調製した。なお、表8中、「シナジスト1」は下記式(11)、「シナジスト2」は下記式(12)、「シナジスト3」は下記式(13)で示される化合物を用いた。これらのシナジスト(色素誘導体)は、いずれも塩基性官能基を有するものである。また、表8中の「アクリル樹脂」には、モノマー組成がBzMA/MAA=80/20(質量比)であり、GPC測定によるMnが5500、PDIが2.02であるもの(固形分濃度が30%のPGMAc溶液で測定)を使用した。
Figure 0006059677
Figure 0006059677
Figure 0006059677
Figure 0006059677
(c)顔料分散液の評価−1
上記で調製した表8に示した組成の各顔料分散液について行った、顔料分散液に含まれる顔料の平均粒子径の測定結果、顔料分散液の初期の粘度、及び45℃で3日間放置した後の粘度(保存後の粘度)の測定結果を、表9にまとめて示した。なお、粘度測定には、E型粘度計を用い、60rpm、25℃にて測定した。
Figure 0006059677
表9に示したように、実施例1〜4の顔料着色剤組成物(顔料分散液)に含まれる顔料の平均粒子径は、いずれも約35nmであり、微細化された顔料が十分に微分散されていることが判明した。また、実施例1〜4の顔料分散液のいずれも、初期の粘度は10mPa・s以下であった。また、初期の粘度と保存後の粘度を比較すると、粘度変化が極めて小さいことが分かる。以上の結果から、実施例1〜4の顔料分散液は十分な分散安定性を有することが明らかとなった。
これに対して、比較例1の顔料分散液は、実施例1の顔料分散液と比較した場合、顔料の平均粒子径が大きく、十分に微分散されていないことが分かる。更に、分散液の流動性がなく、初期から粘度測定できなかった。これは、比較例1で分散剤に用いた樹脂溶液の樹脂の構造がランダムであり、すなわち分散安定化させるだけの立体効果を発揮することができなかったため、分散できなかったためと考えられる。
表9に示したように、比較例2、3の顔料分散液は、平均粒子径、初期粘度ともに実施例2、3と同様の良好な値を示したが、保存後の粘度が増加した。これは、分散剤に使用した樹脂溶液が、顔料の吸着性鎖であるBのポリマーブロックに、OEMAが導入されていないか、または、OEMAではなく、HEMAが導入されていたため、顔料との相互作用が弱く、経時で顔料凝集したと考えられる。
一方、モノマー単位に、OEMAもHEMAも使用しない樹脂溶液を分散剤として用いた比較例4の顔料分散液では、平均粒子径、初期粘度ともに実施例4と同様に良好な値を示した。実施例4と比較例4とは、分散対象とした顔料が、分子内の環状構造中に、カルボニル基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、イミド基のいずれも有していない有機顔料であるPB15−6を用いた例であることから、このような系においては、本発明の特徴であるBのポリマーブロックにOEMAを含む実施例の分散剤を使用した場合は勿論、含まない比較例の分散剤を使用した場合も、十分な分散性が得られることが分かった。
(応用例1〜3:カラーフィルター用レジストへの応用)
(a)カラーフィルターレジストインクの調製
実施例1〜3の顔料分散液を含む表10に示す各成分を、表10に示す量(部)で配合し、混合機で十分に混合して、カラーレジストである各色のカラーフィルター用顔料着色剤組成物(顔料インク)を得た。なお、表10中の「感光性アクリル樹脂ワニス」は、BzMA/MAA共重合物にメタクリル酸グリシジルを反応させて得られたアクリル樹脂を含むワニスである。このアクリル樹脂は、Mnが6000、PDIが2.38であり、酸価が110mgKOH/gであった。また、表10中の「TMPTA」はトリメチロールプロパントリアクリレートを示し、「HEMPA」は2−ヒドロキシエチル−2−メチルプロピオン酸を示し、「DEAP」は2,2−ジエトキシアセトフェノンを示す。
Figure 0006059677
(b)カラーフィルターレジストインクの評価
シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットした。応用例1の赤色顔料インク−1を300rpmで5秒間の条件でガラス基板上にスピンコートした。80℃で10分間プリベークした後、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2の光量で露光し、赤色ガラス基板−1を製造した。また、応用例2の赤色顔料インク−2、応用例3の黄色顔料インク−1をそれぞれ用いたこと以外は、上記の赤色ガラス基板を製造した場合と同様にして、赤色ガラス基板−2、黄色ガラス基板−1を製造した。
得られた各色のガラス基板(カラーガラス基板)は、いずれも優れた分光カーブ特性を有するとともに、耐光性や耐熱性等の堅牢性に優れていた。また、いずれのカラーガラス基板も、光透過性やコントラスト比等の光学特性に優れていた。
(実施例5〜8、比較例5〜8:塩基性の樹脂溶液を分散剤に用いた顔料分散液)
(a)顔料分散液の調製−2
表11に示す各成分を、表11に示した量(部)で配合し、ディゾルバーで2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理して顔料分散液を調製した。なお、表11中の、「シナジスト4」は下記構造式(14)、「シナジスト5」は下記構造式(15)(n=1〜2)でそれぞれ表される、いずれもスルホン酸基を有する色素誘導体である。また、表11中の「アクリル樹脂」には、モノマー組成がBzMA/MAA=80/20(質量比)であり、GPC測定によるMnが5500、PDIが2.02であるもの(固形分濃度が30%のPGMAc溶液で測定)を使用した。
Figure 0006059677
Figure 0006059677
Figure 0006059677
(d)顔料分散液の評価−2
上記で調製した表11に示した組成の各顔料分散液について行った、顔料分散液に含まれる顔料の平均粒子径の測定結果、顔料分散液の初期の粘度、及び45℃で3日間放置した後の粘度(保存後の粘度)の測定結果を、表12にまとめて示した。なお、粘度測定には、E型粘度計を用い、60rpm、25℃にて測定した。
Figure 0006059677
表12に示したように、実施例5〜8の顔料分散液に含まれる顔料の平均粒子径は、いずれも約35nmであり、微細化された顔料が十分に微分散されていることが判明した。また、合成例4〜6で得た顔料分散剤を用いた実施例5〜8の顔料分散液のいずれも、初期の粘度は10mPa・s以下であった。また、初期の粘度と保存後の粘度を比較すると、粘度変化が極めて小さいこと確認された。以上の結果から、合成例4〜6で得た塩基性の樹脂溶液を分散剤に用いた実施例5〜8の顔料分散液は十分な分散安定性を有することが明らかである。
これに対して、ランダム重合による塩基性の樹脂溶液を分散剤として用いた比較例5の顔料分散液は、実施例7の同様の顔料とシナジストを用いた顔料分散液と比較した場合に、顔料の平均粒子径が大きく、十分に微分散されていないことが分かる。更に、保存後の粘度が大きく増加していることから、分散安定性も不十分であることが分かった。これは、比較例5で分散剤に用いた樹脂溶液の樹脂の構造がランダムであり、すなわち分散安定化させるだけの立体効果を発揮することができなかったため分散できなかったためと考えられる。
表12に示したように、比較例6、7の顔料分散液は、平均粒子径、初期粘度ともに実施例6、7と同様の良好な値を示したが、保存後の粘度が増加した。これは、分散剤に使用した樹脂溶液が、顔料の吸着性鎖であるBのポリマーブロックに、OEMAが導入されていないか、または、OEMAではなく、HEMAが導入されていたため、顔料との相互作用が弱く、経時で顔料凝集したと考えられる。
一方、モノマー単位に、OEMAもHEMAも使用しない樹脂溶液を分散剤として用いた比較例8の顔料分散液では、平均粒子径、初期粘度ともに実施例8と同様に良好な値を示した。実施例8と比較例8とは、分散対象とした顔料が、分子内の環状構造中に、カルボニル基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、イミド基のいずれも有していない有機顔料であるPPG58を用いた例であることから、このような系においては、本発明の特徴であるBのポリマーブロックにOEMAを含む実施例の分散剤を使用した場合は勿論、含まない比較例の分散剤を使用した場合も、十分な分散性が得られることが分かった。
(応用例4〜6:カラーフィルター用レジストへの応用)
(a)カラーフィルターレジストインクの調製
実施例4〜6の顔料分散液を含む表13に示す各成分を、表13に示した量(部)で配合し、混合機で十分混合して、カラーレジストである各色のカラーフィルター用顔料着色剤組成物(顔料インク)を得た。なお、表13中の「感光性アクリル樹脂ワニス」は、BzMA/MAA共重合物にメタクリル酸グリシジルを反応させて得られたアクリル樹脂を含むワニスである。このアクリル樹脂は、Mnが6000、PDIが2.38であり、酸価が110mgKOH/gであった。また、表13中の「TMPTA」はトリメチロールプロパントリアクリレートを示し、「HEMPA」は2−ヒドロキシエチル−2−メチルプロピオン酸を示し、「DEAP」は2,2−ジエトキシアセトフェノンを示す。
Figure 0006059677
(b)カラーフィルターレジストインクの評価
シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットした。応用例4の赤色顔料インク−3を300rpmで5秒間の条件でガラス基板上にスピンコートした。80℃で10分間プリベークした後、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2の光量で露光し、赤色ガラス基板−3を製造した。また、応用例5〜6についても同様の操作を行い、各色のガラス基板を製造した。
得られた各色のガラス基板(カラーガラス基板)は、いずれも優れた分光カーブ特性を有するとともに、耐光性や耐熱性等の堅牢性に優れていた。また、いずれのカラーガラス基板も、光透過性やコントラスト比等の光学特性に優れていた。
(応用例7:紫外線硬化型インクジェットインク用着色剤への応用)
(a)顔料分散液の調製
先に合成例7で合成した中性の樹脂溶液UP−7を39.4部、イソボルニルアクリレート60.7部、酸化チタン(JR−405、テイカ社製、平均粒子径240nm)100部を添加混合して、ディゾルバーで2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理して顔料分散液を調製した。得られた白色(W)顔料分散液を10μmのフィルターおよび5μmのフィルターを通した。この際、フィルターのつまりはまったくなかった。
(b)顔料分散液の評価
上記で得られた白色顔料分散液に含まれる顔料の平均粒子径は241nmであり、粘度は10.7mPa・sであった。得られた白色顔料分散液を、遮光のガラス瓶に入れ、60℃に設定された恒温槽に一カ月放置し、粘度と粒子径の変化、上澄みの有無と沈降物の有無の確認、沈降物が振とうでなくなるかを試験した。その結果、平均粒子径は242nmであり、粘度は10.8mPa・sであった。保存による物性の変化は見られず、高度な分散安定性を保持していることが確認できた。上澄みはまったく見られなかった。若干の沈降物が確認されたが、スパチュラで掻いてみたところ、若干粘稠な沈降物が観察された。次いで、浸透させたところ、ほとんど沈降物はなくなり、もとの顔料分散液の状態に戻った。この平均粒子径を測定したところ、244nmであり、沈降物が凝集した分、若干平均粒子径が大きくなったが、沈降物は再度分散して、良好な顔料分散状態になることが確認できた。
応用例7の白色の顔料分散液は、高度に分散され、安定性も高いことから、紫外線硬化型インク、特に顔料の凝集がなく、微粒子分散しており、高度に安定で、沈降しても再度分散が回復することから、吐出安定性や高速印字性が要求される紫外線硬化型インクジェットインクに最適であると考えられる。
(応用例8:油性インクジェットインクへの応用)
(a)顔料分散液の調製
先に合成例8で合成した酸性の樹脂溶液UP−8を31.7部、下記構造式(16)で表される「シナジスト6」を2部、溶剤としてDEGMEを79.6部、PR122(大日精化工業社製、平均粒子径100nm)20部を添加混合して、ディゾルバーで2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理して顔料分散液を調製した。得られたマゼンタ色顔料分散液を10μmのフィルターおよび5μmのフィルターを通した。この際、フィルターのつまりはまったくなかった。
Figure 0006059677
(b)顔料分散液の評価
得られたマゼンタ色顔料分散液に含まれる顔料の平均粒子径は101nmであり、粘度は11.5mPa・sであった。1週間、70℃で保存後においても顔料分散液の平均粒子径と粘度の変化はなく、非常に安定していた。
上記で得られた顔料分散液を油性のインクジェットインク用カラーとして使用してインク化し、インクカートリッジに充填し、インクジェットプリンターにより、表面処理された50μmのPETフィルムにベタ印刷を行った。得られた印画物は、高い光学濃度、グロス値を有し、また、印字ヨレがなく、耐擦過性も良好であった。
本発明によれば、環状ウレイド基が導入されたポリマーブロックを有するA−Bブロックコポリマーを顔料分散剤とすることで、顔料、特に、難分散性の顔料である、分子内の環状構造中に、カルボニル基及び/又はアミノ基を独立の基として有する有機顔料、或いは、カルボニル基とアミノ基とが結合した、アミド基、ウレイド基及びイミド基の群から選択される少なくともいずれかの基を有する有機顔料に対して、高度な微分散性と保存安定性を与える顔料分散液が提供される。具体的には、従来の分散剤では実現できなかった高いレベルで微分散された、保存安定性が高い顔料分散液を得ることができる。この顔料分散液は、塗料、インク、コーティング剤などの着色剤、特に高いレベルの微粒子化と保存安定性が求められているインクジェットインクやカラーフィルター用着色剤として非常に好適であり、その広範な利用が期待される。

Claims (11)

  1. 少なくとも顔料、顔料分散剤及び有機溶剤を有する顔料分散液において、
    更に、塩基性官能基を有する色素誘導体又は酸基性官能基を有する色素誘導体を含有してなり、
    前記顔料分散剤が、ポリマーを構成するモノマー単位の90質量%以上がメタクリル酸系モノマーからなるA−Bブロックコポリマーであって、且つ、
    該A−Bブロックコポリマーを構成する一方のポリマーブロックであるBのポリマーブロックのみに、モノマー単位として、下記式(1)で表される2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレートを含み、該環状ウレイドメタクリレートによって導入された環状ウレイド基をBのポリマーブロック中に有し、
    前記色素誘導体が塩基性官能基を有する場合には、前記A−Bブロックコポリマーの構成を、前記Bのポリマーブロックが、前記モノマー単位として、更に、カルボキシ基又はリン酸基を有するメタクリル酸系モノマーを含み、該モノマーによって導入されたカルボキシ基又はリン酸基を有するものとし、
    前記色素誘導体が酸性官能基を有する場合には、前記A−Bブロックコポリマーの構成を、前記Bのポリマーブロックが、前記モノマー単位として、更に、アミノ基を有するメタクリル酸系モノマーを含み、該モノマーによって導入されたアミノ基を有するものとすることを特徴とする顔料分散液。
    Figure 0006059677
  2. 前記顔料が、その分子内の環状構造中に、カルボニル基及び/又はアミノ基を独立の基として有する有機顔料であるか、或いは、カルボニル基とアミノ基とが結合した、アミド基、ウレイド基及びイミド基の群から選択される少なくともいずれかの基を有する有機顔料である請求項1に記載の顔料分散液。
  3. 前記有機溶剤が、非プロトン性溶剤であり、且つ、誘電率εが25以下である請求項1又は2に記載の顔料分散液。
  4. 前記A−Bブロックコポリマーを構成する他方のポリマーブロックであるAのポリマーブロックは、そのゲルパークロマトグラフにおけるポリスチレン換算の数平均分子量が1000〜10000で、且つ、その分子量の分布を示す分散度(重量平均分量/数平均分子量)が1.5以下であり、
    前記Bのポリマーブロック中における前記2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレートの含有量が、5〜30質量%であり、更に、
    前記A−Bブロックコポリマーの数平均分子量が3000〜15000であり、且つ、その分散度が1.6以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の顔料分散液。
  5. 前記顔料と、前記顔料分散剤と、前記有機溶剤とが、顔料が5〜20質量%、顔料分散剤が0.5〜30質量%、有機溶剤が50〜94.5質量%の範囲内で配合されている請求項1〜のいずれか1項に記載の顔料分散液。
  6. 前記顔料が、ジケトピロロピロール系顔料、キノフタロン系顔料及びアントラキノン系顔料からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜のいずれか1項に記載の顔料分散液。
  7. 前記有機溶剤が、プロピレングリコール系の有機溶剤である請求項1〜のいずれか1項に記載の顔料分散液。
  8. 前記顔料及び前記顔料分散剤が、前記顔料表面に前記顔料分散剤が堆積、カプセル化された、顔料100質量部に対して、前記A−Bブロックコポリマーが10〜150質量部の範囲で含む、顔料分散剤によって顔料に分散性が付与された樹脂処理顔料の形態である請求項1〜のいずれか1項に記載の顔料分散液。
  9. 請求項1又は4に記載のA−Bブロックコポリマーを製造するためのA−Bブロックコポリマーの製造方法であって、
    少なくとも、重合開始化合物と触媒との存在下、A−Bブロックコポリマーを構成するモノマー単位をリビングラジカル重合する工程を有し、該工程で使用する重合開始化合物が、ヨウ素又はヨウ素化合物の少なくともいずれかであり、該工程で使用する触媒が、ハロゲン化リン、フォスファイト系化合物、フォスフィネート化合物、イミド系化合物、フェノール系化合物、ジフェニルメタン系化合物及びシクロペンタジエン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
    前記A−Bブロックコポリマーを構成するモノマー単位の90質量%以上がメタクリル酸系モノマーであり、
    Bのポリマーブロックのモノマー単位のみに、下記式(1)で表される2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレートを用い、且つ、Bのポリマーブロックのモノマー単位に、更にカルボキシ基又はリン酸基を有するメタクリル酸系モノマー用いるか、或いは、更にアミノ基を有するメタクリル酸系モノマーを用いることを特徴とするA−Bブロックコポリマーの製造方法。
    Figure 0006059677
  10. 請求項に記載の顔料分散液を得るための顔料分散液の製造方法であって、
    前記樹脂処理顔料を、前記有機溶剤に分散する工程を有することを特徴とする顔料分散液の製造方法。
  11. 色素誘導体で処理した顔料の表面に顔料分散剤が堆積、カプセル化されてなる顔料に分散性を付与した樹脂処理顔料であって、
    顔料分散剤が、ポリマーを構成するモノマー単位の90質量%以上がメタクリル酸系モノマーからなるA−Bブロックコポリマーであり、
    該A−Bブロックコポリマーを構成する一方のポリマーブロックであるBのポリマーブロックのみに、下記式(1)で表される2−(2−オキソイミダゾリジン−1−イル)エチルメタクリレートによって導入された環状ウレイド基を有し、且つ、前記Bのポリマーブロックが、前記色素誘導体が塩基性官能基を有する場合はカルボキシ基又はリン酸基を有するものであり、或いは、前記色素誘導体が酸性官能基を有する場合はアミノ基を有するものであり、
    顔料100質量部に対して、前記A−Bブロックコポリマー10〜150質量部の範囲で含んでなることを特徴とする樹脂処理顔料。

    Figure 0006059677
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