以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
撮像装置の一形態である本実施形態に係るデジタルカメラは、高い解像度を保ったまま、一の撮像素子で、複数の視点からの被写体光束を撮像して画像データを生成する。互いに視点の異なるそれぞれの画像を視差画像と呼ぶ。
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ10の構成を説明する図である。デジタルカメラ10は、撮影光学系としての撮影レンズ20を備え、光軸21に沿って入射する被写体光束を撮像素子100へ導く。撮影レンズ20は、デジタルカメラ10に対して着脱できる交換式レンズであっても構わない。デジタルカメラ10は、撮像素子100、駆動部230、制御部201、A/D変換回路202、メモリ203、画像処理部205、メモリカードIF207、操作部208、表示部209、LCD駆動回路210およびAFセンサ211を備える。
なお、図示するように、撮像素子100へ向かう光軸21に平行な方向をz軸プラス方向と定め、z軸と直交する平面において紙面手前へ向かう方向をx軸プラス方向、紙面上方向をy軸プラス方向と定める。以降のいくつかの図においては、図1の座標軸を基準として、それぞれの図の向きがわかるように座標軸を表示する。
撮影レンズ20は、複数の光学レンズ群から構成され、シーンからの被写体光束をその焦点面近傍に結像させる。なお、図1では撮影レンズ20を説明の都合上、瞳近傍に配置された仮想的な1枚のレンズで代表して表している。
撮像素子100は、撮影レンズ20の焦点面近傍に配置されている。撮像素子100は、二次元的に複数の光電変換素子が配された、例えばCCD、CMOSセンサ等のイメージセンサである。以下、CMOSの例で説明するが、CCDに適用することもできる。
駆動部230は、撮像素子100の光電変換素子からの画像信号を読み取るべく駆動する読取駆動部232と、後述する開閉駆動部234とを有する。撮像素子100は、読取駆動部232によりタイミング制御されて、受光面上に結像された被写体像を画像信号に変換してA/D変換回路202へ出力する。
A/D変換回路202は、撮像素子100が出力する画像信号をデジタル画像信号に変換してメモリ203へ出力する。画像処理部205は、メモリ203をワークスペースとして種々の画像処理を施し、画像データを生成する。
画像処理部205は、他にも、撮像素子100の画素配列に即して、入力される画像信号から、視差画像データ、非視差画像データとしての2D画像データ等を生成したり、選択された画像フォーマットに従って画像データを調整する機能も担う。
生成された画像データは、LCD駆動回路210により表示信号に変換され、表示部209に表示される。また、メモリカードIF207に装着されているメモリカード220に記録される。
AFセンサ211は、被写体空間に対して複数の測距点が設定された位相差センサであり、それぞれの測距点において被写体像のデフォーカス量を検出する。一連の撮影シーケンスは、操作部208がユーザの操作を受け付けて、制御部201へ操作信号を出力することにより開始される。撮影シーケンスに付随するAF,AE等の各種動作は、制御部201に制御されて実行される。例えば、制御部201は、AFセンサ211の検出信号を解析して、撮影レンズ20の一部を構成するフォーカスレンズを移動させる合焦制御を実行する。なお、以下の撮像素子100をAFセンサ211の代わりに用いてもよく、その場合には別個のAFセンサ211は設けなくてよい。
図2は、撮像素子100の断面を表す概略図である。図3は、図2の撮像素子100を被写体側からみた概略を示す概略図である。
図2に示すように、撮像素子100は、被写体側から順に、マイクロレンズ101、カラーフィルタ102、開閉部300、配線層105および光電変換素子108が配列されて構成されている。光電変換素子108は、入射する光を電気信号に変換するフォトダイオードにより構成される。光電変換素子108は、基板109の表面に二次元的に複数配列されている。また、図3に示すように、基板109には光電変換素子108に隣接して、当該光電変換素子108からの電荷を蓄積するフローティングディフュージョン142、および、選択トランジスタ、増幅トランジスタ等の回路が配された回路領域140が配される。
光電変換素子108が設けられた層の上には絶縁層144を介して配線層105が配される。光電変換素子108により変換された画像信号、光電変換素子108を制御する制御信号等は、配線層105に設けられた配線106を介して送受信される。
絶縁層144の上には光電変換素子108への入射する被写体光束を規定する開閉部300が配される。開閉部300は、光電変換素子108に対応して設けられた可動部310と駆動部350の組と、可動部310の可動を許容する空間を形成する支柱302とを有する。
図2および図3に示す例において、一つの光電変換素子108に対して、可動部310と駆動部350とを有する開閉部300、および、可動部312と駆動部352とを有する開閉部300が設けられる。可動部310と駆動部350との組、および、可動部312と駆動部352との組は、対応する光電変換素子108に対してx方向に配列される。
カラーフィルタ102は、開閉部300上に設けられる。カラーフィルタ102は、各光電変換素子108に対して特定の波長帯域を透過させるように着色され、光電変換素子108のそれぞれに一対一に対応して設けられる。カラー画像を出力するには、互いに異なる少なくとも2種類のカラーフィルタが配列されれば良いが、より高画質のカラー画像を取得するには3種類以上のカラーフィルタを配列すると良い。例えば赤色波長帯を透過させる赤フィルタ、緑色波長帯を透過させる緑フィルタ、および青色波長帯を透過させる青フィルタを格子状に配列すると良い。
マイクロレンズ101は、カラーフィルタ102上に設けられる。マイクロレンズ101は、入射する被写体光束のより多くを光電変換素子108へ導くための集光レンズである。マイクロレンズ101は、光電変換素子108のそれぞれに一対一に対応して設けられる。マイクロレンズ101は、撮影レンズ20の瞳中心と光電変換素子108の相対的な位置関係を考慮して、より多くの被写体光束が光電変換素子108に導かれるようにその光軸がシフトされていることが好ましい。
このように、各々の光電変換素子108に対応して一対一に設けられる開閉部300、カラーフィルタ102およびマイクロレンズ101の一単位を画素と呼ぶ。例えば、撮像素子100の有効画素領域が24mm×16mm程度の場合、画素数は1200万程度に及ぶ。
なお、集光効率、光電変換効率が良いイメージセンサの場合は、マイクロレンズ101を設けなくても良い。また、裏面照射型イメージセンサの場合は、配線層105が光電変換素子108とは反対側に設けられる。
説明のため、図2および図3の2つの画素の内の−x側については可動部310が湾曲した開状態で、可動部312は平坦な閉状態にある。また、+x側については可動部310が閉状態で、可動部312は開状態にある。
図3に示すように、可動部310は遮光部320を有する。可動部310が開状態にあるとき、遮光部320は平面視において光電変換素子108が配された領域から退避している。一方、可動部310が閉状態において、遮光部320は平面視において光電変換素子108が配された領域の一部、例えば図3に示す例においては−x側の略半分を覆う。
同様に、可動部312も遮光部330を有する。可動部312が開状態にあるとき、遮光部330は平面視において光電変換素子108が配された領域から退避している。一方、可動部310が閉状態において、遮光部330は平面視において光電変換素子108が配された領域における、遮光部320が覆うのとは別の領域を覆う。例えば図3に示す例においては、遮光部320が−x側の略半分を覆うことに対応して、遮光部330は+x側の略半分を覆う。
よって、図3の−x側の画素においては、光電変換素子108に向かう被写体光束の断面領域のうち、+x側の略半分が遮光部330により遮られ、−x側に光学的に有効な開口104lが形成される。同様に、+x側の画素においては、光電変換素子108に向かう被写体光束の断面領域のうち、−x側の略半分が遮光部330により遮られ、+x側に光学的に有効な開口104lが形成される。
なお、配線層105の配線106が作る開口107によっても被写体光束は制限される。ただし、本実施形態においては光学系の瞳上において開口107は光電変換素子108および遮光部320、330よりも十分に大きいとし、当該開口107は実質的に有効な開口の形成に寄与しない。
図4は、開閉部300の一例であって、遮光部320の開状態を示す。また、図5は、遮光部320の閉状態を示す。開閉部300は、光電変換素子108に近い側に配された駆動部350と、当該駆動部350に対して可動する可動部310とを有する。
駆動部350は、多層構造をなす。駆動部350は、可視光に対して透明なガラス基板360と、当該ガラス基板360上に設けられた遮光層362および絶縁層364を有する。遮光層362は、画素の周縁にパターニングされており、例えばアルミ膜等の可視光に対して不透明な材料により形成され、画素毎の光のクロストークを避ける。絶縁層364は当該遮光層362および、ガラス基板360において遮光層362が配されてない領域を覆う。当該絶縁層364は可視光に対して透明であって電気的に絶縁性を有する材料、例えば、シリコン酸化膜により形成される。
駆動部350はさらに、絶縁層364上に配された駆動電極366と、透明電極372と、駆動電極366の一部を除いて当該駆動電極366および透明電極372を覆う絶縁層380とを有する。駆動電極366は、導電性を有する材料、例えばアルミ膜で形成され、開閉駆動部234に電気的に接続される。透明電極372は、導電性を有するとともに可視光に対して透明な材料、例えばITO膜で形成され、開閉駆動部234に電気的に接続される。また、絶縁層380は絶縁層364と同様に、シリコン酸化膜により形成される。
可動部310は、駆動電極366上に設けられたポスト部370と、ポスト部370から延伸した遮光部320と、遮光部320の一部の領域に配された絶縁層374とを有する。遮光部320は導電性を有して可視光に対して不透明な材料、例えばアルミ膜により形成される。遮光部320は、ポスト部370に近い側の平坦部376と、逆側の先端378とを有する。これら平坦部376と先端378との間に絶縁層374が配される。絶縁層374は例えばシリコン窒化膜により形成される。遮光部320の当該領域と絶縁層374とにより梁部321が形成される。
図4に示すように、梁部321は、駆動力を受けていない状態で、自身の保有する応力によって、駆動部350に対して離間する方向に湾曲している。よって、図4に示す開状態において、梁部321が湾曲していることにより、遮光部320が図中Wの領域から退避しており、当該領域から光Aが入射して駆動部350を通過する。
遮光部320は、図5に示すように閉状態になった場合に、先端378が図中に一点鎖線で示された中央より手前に位置する長さを有する。梁部321は駆動力を受けることによって平坦になり、図5に示す閉状態となる。これにより、遮光部320は閉状態において光を遮る。なお、先端378は中央ちょうどまで伸びていてもよいし、中央より先まで伸びていてもよい。
開状態と閉状態とは静電力を用いて切り替えられる。すなわち、開閉駆動部234が駆動電極366と透明電極372との間に電圧をかけることにより、遮光部320上の電荷と透明電極372上の電荷が引き合い、可動部310が駆動部350に引き寄せられる。この場合、可動部310の絶縁層374と駆動部350の絶縁層380が当接して閉状態での位置が決まる。また、開閉駆動部234が駆動電極366と透明電極372との間の電圧をなくすことにより、梁部321の自身の保有する応力によって、可動部310が駆動部350に対して離間する方向に湾曲して開状態が維持される。
図6は、一の画素における遮光部320、330の開閉状態と、それにより形成される開口104との関係を示す説明図である。遮光部320、330がいずれも開状態である場合には、中央に大きな開口104cが形成される。開口104cは、遮光部320、330以外の、遮光層362または配線層105の開口107等により規定され、その重心が光学系の瞳上において被写体光束の中心に位置する。よって、当該開口104cを用いて被写体を撮像した場合には、視差を生じない。視差を生じさせない画素を視差なし画素ということがある。
遮光部320が閉状態かつ遮光部330が開状態の場合には、面積が上記開口104cの略半分で図中の右側にシフトした開口104rが形成される。すなわち、開口104rは、その重心が光学系の瞳上において被写体光束の中心に対して右側に変位し、被写体光束の右半分の領域を透過させる。よって、当該開口104rを用いて被写体を撮像した場合には、視差を生じる。視差を生じさせる画素を視差画素ということがある。
遮光部320が開状態かつ遮光部330が閉状態の場合には、面積が上記開口104cの略半分で図中の左側にシフトした開口104lが形成される。すなわち、開口104lは、その重心が光学系の瞳上において被写体光束の中心に対して左側に変位し、被写体光束の左半分の領域を透過させる。
遮光部320、330がいずれも閉状態である場合には、中央に狭い開口104xが形成される。当該開口104xに対応する画素は視差なし画素であって、開口104cよりも光量が小さくかつ焦点深度の大きい画像を得る。ただし、閉状態において遮光部320と遮光部330の先端が接しているか、オーバーラップしている場合には、開口は形成されず、光電変換素子108に被写体光束は入射しない。
図7は、撮像素子100の一部を拡大した様子を表す概略図である。開閉部300の開閉により形成される有効な開口104と、生じる視差の関係について説明する。ここでは、説明を簡単にすべく、カラーフィルタ102の配色については後に言及するまで考慮しない。カラーフィルタ102の配色に言及しない以下の説明においては、同色のカラーフィルタ102を有する視差画素のみを寄せ集めたイメージセンサであると捉えることができる。したがって、以下に説明する繰り返しパターンは、同色のカラーフィルタ102における隣接画素として考えても良い。なお有効な開口の周りの有効な遮光部を103で示した。
図7に示す例は、図2および図3に対応して、開閉部300により2種類の開口104l、104rが形成された状態を示す。開口104l、104rはいずれもy方向に長い長方形である。開口104lは−x側にシフトしており、開口104rは+x側にシフトしている。また、開口104lと開口104rとは、形状および大きさが同じであって、シフトの方向は反対であるが、シフト量の絶対値は同じである。
撮像素子100の全体は、開口104l、104rを有する2つの視差画素がx方向に並んだ光電変換素子群が、二次元的かつ周期的に配列されている。すなわち、撮像素子100は、上記光電変換素子群を含む繰り返しパターン110が、周期的に敷き詰められている。図7に示す例においては、開口104lのy方向に隣接した画素も開口104lとなるように並べられているが、他の開口が隣接するように並べられてもよい。ここで、x方向は、例えば、デジタルカメラ10を横位置で撮像する場合における水平方向である。この場合に撮像素子100上の二次元上の位置と開閉部300の開閉状態とが対応付けられたテーブルがメモリ203等に予め記録されており、開閉駆動部234が当該テーブルを参照することにより、対応する画素のそれぞれに開口104l、104rを形成する。
図8は、図7に対応した、視差画素と被写体の関係を説明する概略図である。特に図8(a)は撮像素子100のうち光軸21と直交する中心に配列されている繰り返しパターン110tの光電変換素子群を示し、図8(b)は周辺部分に配列されている繰り返しパターン110uの光電変換素子群を模式的に示している。
また、図8(a)、図8(b)における被写体30は、撮影レンズ20に対して合焦位置に存在する。図8(c)は、図8(a)に対応して、撮影レンズ20に対して非合焦位置に存在する被写体30を捉えた場合の関係を模式的に示している。
まず、撮影レンズ20が合焦状態に存在する被写体30を捉えている場合の、視差画素と被写体の関係を説明する。被写体光束は、撮影レンズ20の瞳を通過して撮像素子100へ導かれるが、被写体光束が通過する全体の断面領域に対して、2つの部分領域PlおよびPrが規定されている。そして、例えば繰り返しパターン110t、110uを構成する光電変換素子群の+x側の視差画素は、拡大図からもわかるように、部分領域Prから射出された被写体光束のみが光電変換素子108へ到達するように、開閉部300により開口104rが形成される。同様に、−x側の視差画素に向かって、部分領域Plに対応して開口104lが形成される。
別言すれば、例えば部分領域Prと+x側の視差画素の相対的な位置関係によって定義される、部分領域Prから射出される被写体光束の主光線Rrの傾きにより、開口104rの位置が定められていると言っても良い。そして、合焦位置に存在する被写体30からの被写体光束を、開口104rを介して光電変換素子108が受光する場合、その被写体光束は、点線で図示するように、光電変換素子108上で結像する。同様に、−x側の視差画素に向かって、主光線Rlの傾きにより開口104lの位置が、定められていると言える。
図8(a)で示すように、合焦位置に存在する被写体30のうち、光軸21と交差する被写体30上の微小領域Otから放射される光束は、撮影レンズ20の瞳を通過して、繰り返しパターン110tを構成する光電変換素子群の各画素に到達する。すなわち、繰り返しパターン110tを構成する光電変換素子群の各画素は、それぞれ2つの部分領域PrおよびPlを介して、一つの微小領域Otから放射される光束を受光している。微小領域Otは、繰り返しパターン110tを構成する光電変換素子群の各画素の位置ずれに対応する分だけの広がりを有するが、実質的には、ほぼ同一の物点と近似することができる。
同様に、図8(b)で示すように、合焦位置に存在する被写体30のうち、光軸21から離間した被写体30上の微小領域Ouから放射される光束は、撮影レンズ20の瞳を通過して、繰り返しパターン110uを構成する光電変換素子群の各画素に到達する。すなわち、繰り返しパターン110uを構成する光電変換素子群の各画素は、それぞれ2つの部分領域PrおよびPlを介して、一つの微小領域Ouから放射される光束を受光している。微小領域Ouも、微小領域Otと同様に、繰り返しパターン110uを構成する光電変換素子群の各画素の位置ずれに対応する分だけの広がりを有するが、実質的には、ほぼ同一の物点と近似することができる。
つまり、被写体30が合焦位置に存在する限りは、撮像素子100上における繰り返しパターン110の位置に応じて、光電変換素子群が捉える微小領域が異なり、かつ、光電変換素子群を構成する各画素は互いに異なる部分領域を介して同一の微小領域を捉えている。そして、それぞれの繰り返しパターン110において、対応する画素同士は同じ部分領域からの被写体光束を受光している。つまり、図においては、例えば繰り返しパターン110t、110uのそれぞれの+x側の視差画素は、同じ部分領域Prからの被写体光束を受光している。
光軸21と直交する中心に配列されている繰り返しパターン110tにおいて+x側の視差画素が部分領域Prからの被写体光束を受光する開口104rの位置と、周辺部分に配列されている繰り返しパターン110uにおいて+x側の視差画素が部分領域Prからの被写体光束を受光する開口104rの位置は厳密には異なる。しかしながら、機能的な観点からは、部分領域Prからの被写体光束を受光するための開口という点で、これらを同一種類の開口として扱うことができる。
次に、撮影レンズ20が非合焦状態に存在する被写体30を捉えている場合の、視差画素と被写体の関係を説明する。この場合も、非合焦位置に存在する被写体30からの被写体光束は、撮影レンズ20の瞳の2つの部分領域PrおよびPlを通過して、撮像素子100へ到達する。ただし、非合焦位置に存在する被写体30からの被写体光束は、光電変換素子108上ではなく他の位置で結像する。例えば、図8(c)に示すように、被写体30が被写体30よりも撮像素子100に対して遠い位置に存在すると、被写体光束は、光電変換素子108よりも被写体30側で結像する。逆に、被写体が図8(a)および(b)の被写体30よりも撮像素子100に対して近い位置に存在すると、被写体光束は、光電変換素子108よりも被写体30とは反対側で結像する。
したがって、非合焦位置に存在する被写体30のうち、微小領域Ot'から放射される被写体光束は、2つの部分領域PrおよびPlのいずれを通過するかにより、異なる組の繰り返しパターン110における対応画素に到達する。例えば、部分領域Plを通過した被写体光束は、図8(c)の拡大図に示すように、主光線Rl'として、繰り返しパターン110t'に含まれる、開口104lを有する光電変換素子108へ入射する。そして、微小領域Ot'から放射された被写体光束であっても、他の部分領域を通過した被写体光束は、繰り返しパターン110t'に含まれる光電変換素子108へは入射せず、他の繰り返しパターンにおける対応する開口を有する光電変換素子108へ入射する。換言すると、繰り返しパターン110t'を構成する各光電変換素子108へ到達する被写体光束は、被写体30の互いに異なる微小領域から放射された被写体光束である。すなわち、−x側の開口104lに対応する光電変換素子108へは主光線をRl'とする被写体光束が入射し、+x側の開口104rに対応する光電変換素子108へは主光線をRr+とする被写体光束が入射するが、この被写体光束は、被写体30のOt'とは異なる微小領域から放射された被写体光束である。このような関係は、図8(b)における周辺部分に配列されている繰り返しパターン110uにおいても同様である。
すると、撮像素子100の全体で見た場合、例えば、開口104lに対応する光電変換素子108で被写体30を捉えた−x側の視差画像と、開口104rに対応する光電変換素子108で被写体30を捉えた+x側の視差画像は、合焦位置に存在する被写体に対する画像であれば互いにずれが無く、非合焦位置に存在する被写体に対する画像であればずれが生じることになる。そして、そのずれは、非合焦位置に存在する被写体が合焦位置に対してどちら側にどれだけずれているかにより、また、部分領域Prと部分領域Plの距離により、方向と量が定まる。つまり、−x側の視差画像と+x側の視差画像は、互いに視差像を形成する。したがって、このように構成されたそれぞれの繰り返しパターン110において、互いに対応する画素の出力を寄せ集めると、複数の視差画像が得られる。
ここで互いに異なる一対の視差画像上の視差によって、画像上の被写体の奥行き情報を得ることができる。この場合に、視差以外の条件はなるべく同じで、視差が大きくとれる視差画像を一対とすることが好ましい。よって、繰り返しパターン内で、開口の大きさが互いに同じでシフト量の絶対値が同じでシフト方向が異なる画素が対となることが好ましい。そのような画素の対に対応する視差の対を視差対と表記することがある。
図9は、繰り返しパターン110、111の例を示す。繰り返しパターン110において、開閉部300により全ての画素に対応して開口104lが形成される。言い換えると、開口104lを有する画素が二次元的に繰り返し配されている。一方、繰り返しパターン111において、開閉部300により全ての画素に対応して開口104rが形成されている。
開閉駆動部234が開閉部300を駆動して繰り返しパターン110、111のいずれか一方を形成した状態で被写体を撮像し、その後、開閉駆動部234が開閉部300を駆動して繰り返しパターン110、111の他方を形成した状態で被写体を撮像することにより、一の撮像素子100を用いて一対の視差画像を得ることができる。画像処理部205は、撮像時の開閉部300の開閉状態に基づいて、視差画像を生成する。この例において、画像処理部205は、いずれの視差画像も撮像素子100の全ての画素からの画像信号を寄せ集めて生成するので、空間分解能の高い視差画像を得ることができる。
図10は、他の繰り返しパターン112、113の例を示す。繰り返しパターン112は4画素で形成され、左上および右下が開口104rを有し、右上および左下が開口104lを有する。また、繰り返しパターン113も4画素で形成され、左上および右下が開口104lを有し、右上および左下が開口104rを有する。図9の場合と同様に、開閉駆動部234によりこれらの繰り返しパターン112、113を形成して撮像することにより、一の撮像素子100を用いて一対の撮像画像を得ることができる。
この場合に、画像処理部205は、繰り返しパターン112の開口104rの画素と繰り返しパターン113の開口104rの画素を寄せ集めて一方の視差画像を生成し、繰り返しパターン112の開口104lの画素と繰り返しパターン113の開口104lの画素を寄せ集めて他方の視差画像を生成する。これにより、空間分解能の高い視差画像を得ることができる。また、いずれの撮像時においても二種類の開口のそれぞれが用いられるので、撮影の時間差による被写体のブレを視差画像のそれぞれに分配して目立たなくすることができる。また、二回の撮像時のいずれか一方で撮像に支障があっても、他方の撮像により得られたそれぞれの開口の画素を補完することにより、一対の視差画像を生成することができる。
図11は、他の繰り返しパターン114、115、116、117の例を示す。繰り返しパターン114、115、116、117はいずれも4画素により形成される。繰り返しパターン114において、左上および右下の画素は開口104rを有し、右上および左下の画素は開口104cを有する。繰り返しパターン115は、繰り返しパターン115を左右反転したものに対応する。繰り返しパターン116は、繰り返しパターン115を上下反転したものに対応する。繰り返しパターン117は、繰り返しパターン114を上下反転したものに対応する。
開閉駆動部234によりこれらの繰り返しパターン114、115、116、117を形成して撮像することにより、一の撮像素子100を用いて一対の撮像画像および視差なし画像を得ることができる。繰り返しパターン114の開口104rの画素と繰り返しパターン117の開口104rの画素を寄せ集めて一方の視差画像を生成する等により、空間分解能の高い視差画像を得ることができる。同様に、空間分解能の高い視差なし画像を得ることができる。ここで、4回の撮像によって開口104cについて一の画素に対して2つの値を得ることができるが、それらを平均して用いてもよいし、いずれか一方を用いてもよい。
図12から図16は、撮像素子100の製造方法を示す概略断面図である。まず図12に示すように、基板109に光電変換素子108を設けるとともに、その上に絶縁層144を介して配線層105を設ける。これらを形成するには既知の方法を用いればよいので、説明を省略する。この場合に、絶縁層144の上面を平坦化しておく。
次に、図13に示すように、絶縁層144の平坦な上面に、成膜工程、露光工程、エッチング工程を繰り返すことにより多層構造を有する駆動部350、352を形成する。さらに犠牲層382を設けてその上面を平坦化して、成膜工程、露光工程、エッチング工程を繰り返すことにより、図14に示すように、多層構造を有する可動部310、312を設ける。
さらに、図15に示すように、支柱302および犠牲層384を形成する。支柱302の高さは、可動部310、312が湾曲した開状態においてその先端が接しない余裕をもって設定される。犠牲層384は当該支柱302の高さまで形成され、平坦面が形成される。
当該平坦面上に、図16に示すように、カラーフィルタ102およびマイクロレンズ101が形成される。その後、犠牲層382、384が除去される。これにより、可動部310、312が生成時の残留応力で湾曲し、図2に示す撮像素子100が形成される。
図1から図16に示す例において、各画素には一対の開閉部300が設けられているが、開閉部300の個数に制限はない。例えば、各画素に一つの開閉部300を設けてもよい。この場合に、開状態で開口104cを形成し、閉状態で開口104lを形成する画素と、開状態で開口104cを形成し、閉状態で開口104rを形成する画素とを繰り返しパターン112のように配置してもよい。また、三つ以上の開閉部300を設けてもよい。一対の開閉部300を設けた画素と、一つまたは三つ以上の開閉部300を設けた画素とを混在させてもよい。
図17は、他の撮像素子118を示す概略断面図であり、図18は、撮像素子118の開口マスク123と可動部313の関係を示す。撮像素子118において、各画素には開口マスク123および一つの開閉部300が配される。
開口マスク123は、絶縁層144の上面に固定して配され、例えば配線106と同じ材料のアルミ等で形成される。開口マスク123には、変位した開口124が設けられる。開口124は、瞳上で被写体光束の変位した領域に対応する。図18に示す例において、開口124は−x側に変位している。可動部313の遮光部322は、開口324が設けられた枠体323を有する。開口324の大きさは開口124よりも小さい。図18に示す例において、開口324は、開口124よりも細いスリット状である。
よって、図18に示す例において、開状態においては開口124で規定される被写体光束の部分領域が光電変換素子108に入射する。また、閉状態においては開口124と開口324とが重なった合成開口125で規定される被写体光束が光電変換素子108に入射する。これにより、被写体光束の断面領域内の、異なる部分を透過した二種類の視差画像を得ることができる。
なお、図17に示す例において、互いに隣接する画素の開口マスク123の開口124および開閉部300は対称に配される。また、開口324は貫通した穴であってもよいし、可視光に対して透明な膜で覆われていてもよい。
図19は、カラーフィルタ102のベイヤー配列を説明する図である。図示するように、ベイヤー配列は、緑フィルタが左上と右下の2画素に、赤フィルタが左下の1画素に、青フィルタが右上の1画素に割り当てられる配列である。ここでは、緑フィルタが割り当てられた左上の画素をGb画素と、同じく緑色フィルタが割り当てられた右下の画素をGr画素とする。また、赤色フィルタが割り当てられた画素をR画素と、青色が割り当てられた画素をB画素とする。そして、Gb画素およびB画素が並ぶ横方向をGb行とし、R画素およびGr画素が並ぶ横方向をGr行とする。また、Gb画素およびR画素が並ぶ縦方向をGb列とし、B画素およびGr画素が並ぶ縦方向をGr列とする。例えば、図9から図11に示す繰り返しパターン110等の4つの画素に、図19のベイヤー配列を割り当ててもよい。
図20は、カラーフィルタ102の他の配列を説明する図である。図20の例において、緑フィルタが左上の1画素に、赤フィルタが左下の1画素に、青フィルタが右上の1画素に、フィルタ無しまたは色無しフィルタが右下の1画素に割り当てられる。例えば、図9から図11に示す繰り返しパターン110等の4つの画素に、図20の配列を割り当ててもよい。
上記実施形態において、遮光に用いられる材料はアルミであったが、これに代えて他の金属、例えばCuを用いてもよい。また、駆動部350において、透明電極372に代えて、アルミ等の導電性を有する材料を用いてもよい。この場合には開状態において当該電極が有効な光束を妨げない位置に配されることが好ましい。
また、上記実施形態において、開閉部300は、絶縁層144とカラーフィルタ102との間に配されているが、配置場所はこれに限られない。例えば、開閉部300は、光電変換素子108の直上、配線層105の直上、マイクロレンズ101とカラーフィルタとの間、等に配されてもよい。また、可動部310は静電力により開閉駆動されるが、これに代えて、可動部310をバイモルフで形成し、電流による発熱で開閉駆動してもよい。
また、上記実施形態において、各画素には個別の可動部310が配されている。これに代えて、互いの可動部310が連結していて、対応する複数の画素に対して一括して開閉してもよい。また、全ての画素に対して開閉部300を設ける代わりに、いくつかの画素については開閉部300を設けなくてもよい。
可動部310における光電変換素子108から遠い面(図中の上面)に、反射防止膜を設けてもよい。これにより、可動部310で反射した光が迷光となって隣接する光電変換素子108に入射するのを防ぐことができる。
また、開閉部300は天地反対に設けられ、開状態において可動部310が光電変換素子108の側に湾曲してもよい。この場合に、可動部310の絶縁層374が設けられている側の面に反射膜を設けてもよい、これにより可動部310を光導路として機能させることができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。